間欠型揺動式粒子表面処理装置および方法
【課題】 揺動により攪拌する方式の間欠型揺動式粒子表面処理装置および方法を提供する。
【解決手段】 内部に粒子5と表面処理化合物を入れた処理容器1を揺動回転軸部2aで揺動させ粒子が移動することによって攪拌翼4が攪拌翼回転軸部2bで稼動する。この動作により、攪拌翼の端部4aから粒子が平面状に落下して、揺動の往復運動の双方向にて粒子が表面処理化合物と効率的に接することにより粒子への均質な表面処理が行える。
【解決手段】 内部に粒子5と表面処理化合物を入れた処理容器1を揺動回転軸部2aで揺動させ粒子が移動することによって攪拌翼4が攪拌翼回転軸部2bで稼動する。この動作により、攪拌翼の端部4aから粒子が平面状に落下して、揺動の往復運動の双方向にて粒子が表面処理化合物と効率的に接することにより粒子への均質な表面処理が行える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動により攪拌する方式の間欠型の揺動式粒子表面処理装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体及び粒状物の表面改質剤としてクロロシラン系化合物を使用することにより、プロセスの効率化、コスト低減、及び、品質の向上を図る方法が知られている。カップリングにより、単分子での表面処理が可能となることが大きな特徴である。その際に、クロロシラン系化合物は液体のままではなく、気化した状態にて使用することによって、高速に処理を実現できるプロセスが考案されている。
【0003】
従来の表面処理装置の一例としては、表面改質する対象が粉体、或いは粒状物であることから、低圧状態にて、クロロシラン化合物の蒸気を利用すると同時に、回転ドラムを用いて攪拌する方式のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。土砂を含めて、粉体及び粒状物に撥水性を付与することを目的に、表面改質剤として粗シランを使用して、プロセスの効率化を図っている。材料を密閉ドラム内に入れて、300〜350mmHgに減圧した後、クロロシラン蒸気と混合して、表面改質を行っている。ドラムは10rpm程度で回転させている。
【0004】
このような回転ドラムを使用する場合に、回転ドラムとしては、攪拌のために内部に、攪拌羽を有するものが多い(例えば、特許文献2参照)。図5に示すように、粒径が75μmを超え、425μm以下の粉末を攪拌しているが、原料投入口61を中心軸上に有する円筒状攪拌容器62を含む攪拌装置として、ロッキングミキサーを用いた方法が示されている。粉末の攪拌を効果的に行うために、円筒状攪拌容器62は中心軸を揺動させることが可能であるが、基本的には円筒状攪拌容器62を中心軸回りに回転させる方式である。回転は、8〜30rpmであるが、円筒状攪拌容器62内に設けてある攪拌羽63が効果的に機能しており、攪拌羽63による粉末の掻き上げを有効に利用している。
【0005】
また、図6に示すように、鋤状の羽69を有する混合容器71からなる機能性粒子製造装置70が提案されている(例えば、特許文献3参照)。粒子を表面処理するための材料72に関して、噴霧器73を経由して噴霧74にして供給し、回転軸75を中心として鋤状の羽69を有する混合容器71内で処理を行う構成である。処理後は、排出口76から粒子を取り出すことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−296070号公報
【特許文献2】特許第4235412号公報
【特許文献3】US 2009/0030222 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した構成の表面処理装置にも課題がある。
【0008】
特許文献1の方法では、粉体或いは粒状物を回転ドラム内に入れて攪拌しつつ表面処理を行う構成となっているため、粉体或いは粒状物の各々の表面を均質に処理することが可能である。しかしながら、特許文献2の図5に示すような回転ドラムの場合にも同様に、必ず、原料投入口61のように非回転部分が存在する。非回転部分は回転部分とのスムーズなスライド性能と共に、回転ドラム内の機密性を維持するための密閉性能の両方が求められる。しかしながら、クロロシラン系化合物のように、雰囲気中の水分の存在で反応が促進される場合には、回転ドラムの外部からの空気の流入は大きな課題となる。この空気の流入を防止するために、一般的には、O−リング、或いはV−リング等のパッキングが開発されている。しかし、回転ドラム内が真空状態、或いは低圧下では、外からの空気の流入は完全には防止することが困難であるという課題を有している。また、これは、図5に示すような構成ではなくて、例えば、フッ素含有クロロシラン系化合物を入れた円筒状攪拌容器62又は付随する加熱用ヒータ等を、円筒状攪拌容器62と共に回転させることが可能であると仮定しても、その加熱ヒータへの電源供給等の配線に回転、非回転との接続を可能とするような電気系のブラシ構造が必要となり、信頼性が低下すると共に、円筒状攪拌容器62の回転に伴う気化装置としての品質、蒸気の供給が不安定になったりすることが予想され、処理プロセス全体としての効率が低下する。従って、粒子表面処理装置として十分な性能を維持することが困難である。さらに、図5に示したような従来の回転ドラム式では、攪拌羽63による攪拌方式においては、粉体或いは粒状物は攪拌羽によって一部掻き上げられてから、落下することによる混合効果を狙っていた。しかしながら、掻き上げ時の粉体或いは粒状物へのせん断応力、また落下の際の衝撃による粉体或いは粒状物へのダメージは、悪影響が多かった。特に、粉体或いは粒状物が再分割されることによって表面積が急に増加して、表面処理に必要な化合物の量が増加したり、処理時間が増加したりする課題が有った。
【0009】
特許文献3の方法では、図6に示したように、鋤状の羽69を有する混合容器71は回転しないため、表面処理の材料72を気化して供給する噴霧器73との接続部分も回転しない構成を実現できているが、回転軸75を中心に攪拌するための鋤状の羽69を有する混合容器71内で処理を行うことから、回転部分と混合容器71の非回転部分との接続部を有している点から、前記の図5と同様に、外部からの空気の侵入を完全には防止できない欠点がある。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、揺動により攪拌する方式の間欠型揺動式粒子表面処理装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、表面処理気体の雰囲気中において、粒子を収納可能な処理空間を有する容器と、
前記容器を揺動可能に支持し、前記粒子を前記容器の内部で往復移動可能とする揺動支持部と、
前記容器の内壁底面に設けられた攪拌翼回転軸部を軸心として揺動自在な攪拌翼とを備えて、
前記容器を揺動することにより前記粒子を往復移動させると前記攪拌翼が揺動し、前記攪拌翼の端部から前記粒子を前記容器の前記内壁底面の平面上に落下させて粒子表面処理を行うことを特徴とする粒子表面処理装置を提供する。
【0013】
本発明の別の態様によれば、表面処理気体の雰囲気中において、粒子を処理空間内に収納する容器を揺動部を支点に揺動させて前記粒子を前記容器の内部で往復移動させ、前記容器の揺動により、前記容器の内壁底面に設けられた攪拌翼回転軸部の軸心周りに攪拌翼を揺動させ、前記攪拌翼の端部から前記粒子を前記容器の前記内壁底面の平面上に落下させて粒子表面処理を行う、粒子表面処理方法を提供する。
【0014】
本構成によって、回転部分が存在しないため処理容器内が完全に外部と隔離でき、外部からの空気等の流入を遮断することにより、均質で効率的な粒子表面処理プロセスを実行できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の間欠型揺動式粒子表面処理装置および方法によれば、気密性の向上と、粒子への衝撃が少なく再分割を抑制しているので表面積の増加もなく、均質な表面処理によって、高効率、高品質な粒子表面処理プロセスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】本発明の実施形態1における間欠型揺動式粒子表面処理装置の構成を示す概略透視側面図
【図1B】本発明の実施形態1における間欠型揺動式粒子表面処理装置において、処理容器が揺動する際の角度、攪拌翼が回転動作可能な角度範囲などを示す概略透視側面図
【図1C】図1BのA−A線断面図
【図1D】図1Cの断面の一部拡大図
【図1E】本発明の実施形態1における間欠型揺動式粒子表面処理装置の攪拌翼の動作を示す断面図
【図2A】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動と粒子の攪拌状態を示す図
【図2B】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動と粒子の攪拌状態を示す図
【図2C】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動と粒子の攪拌状態を示す図
【図2D】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動と粒子の攪拌状態を示す図
【図3A】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動角度と粒子の流量を示す図
【図3B】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動角度と粒子の流量を示す図
【図3C】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動角度と粒子の流量との関係を示す図
【図4】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の薬液容器、加熱ヒータ、真空ポンプ等を加えた実施例を示す図
【図5】従来の粒子表面処理装置の構成を示す図
【図6】従来のクロロシラン系化合物による粒子表面処理装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
【0019】
本発明の第1態様によれば、表面処理気体の雰囲気中において、粒子を収納可能な処理空間を有する容器と、
前記容器を揺動可能に支持し、前記粒子を前記容器の内部で往復移動可能とする揺動支持部と、
前記容器の内壁底面に設けられた攪拌翼回転軸部を軸心として揺動自在な攪拌翼とを備えて、
前記容器を揺動することにより前記粒子を往復移動させると前記攪拌翼が揺動し、前記攪拌翼の端部から前記粒子を前記容器の前記内壁底面の平面上に落下させて粒子表面処理を行うことを特徴とする粒子表面処理装置を提供する。
【0020】
本発明の第2態様によれば、前記揺動支持部は、
前記容器に設けた揺動回転軸部と、
前記揺動回転軸部を回転自在に支持する支持部とを備える、第1の態様に記載の粒子表面処理装置を提供する。
【0021】
本発明の第3態様によれば、前記容器の揺動に伴う前記粒子の往復移動時に、前記粒子の重力で前記攪拌翼を前記攪拌翼回転軸部の軸心周りに回転させる、第1又は2の態様に記載の粒子表面処理装置を提供する。
【0022】
本発明の第4態様によれば、前記容器は、前記容器の前記処理空間内に前記表面処理気体を導入する気体導入部を備える、第1〜3のいずれか1つの態様に記載の粒子表面処理装置を提供する。
【0023】
本発明の第5態様によれば、前記粒子は、砂である、第1〜4のいずれか1つの態様に記載の粒子表面処理装置を提供する。
【0024】
本発明の第6態様によれば、前記攪拌翼の終端傾斜角度φと、前記容器の揺動傾斜角度θとにおいて、前記容器内で前記粒子が前記揺動傾斜角度θにより移動開始後に、前記粒子が前記攪拌翼を稼動させる時点での前記揺動傾斜角度θが前記終端傾斜角度φより小である第1〜5のいずれか1つの態様に記載の粒子表面処理装置を提供する。
【0025】
本発明の第7態様によれば、前記表面処理気体の表面処理化合物として、クロロシラン系化合物を使用する第1〜6のいずれか1つの態様に記載の粒子表面処理装置を提供する。
【0026】
本発明の第8態様によれば、表面処理気体の雰囲気中において、粒子を処理空間内に収納する容器を揺動部を支点に揺動させて前記粒子を前記容器の内部で往復移動させ、前記容器の揺動により、前記容器の内壁底面に設けられた攪拌翼回転軸部の軸心周りに攪拌翼を揺動させ、前記攪拌翼の端部から前記粒子を前記容器の前記内壁底面の平面上に落下させて粒子表面処理を行う、粒子表面処理方法を提供する。
【0027】
(実施形態1)
図1Aは、本発明の実施形態1における間欠型揺動式粒子表面処理装置の構成を示した図である。
【0028】
図1A及び図1Cにおいて、気密性の高い例えば四角筒形状の処理容器1が、揺動させるための左右一対の揺動回転軸部2aにより回転可能な構成である。左右一対の揺動回転軸部2aは、それぞれ円柱状部材であって、一対の三角板状の揺動回転軸支持部3に揺動可能に設けられて揺動支点部30を構成しており、処理容器1の中央部の下面の左右に連結されて、処理容器1の全体を揺動回転軸支持部3に対して揺動可能に支持している。処理容器1内には、縦断面が三角形の攪拌翼4を有しており、攪拌翼4の基端は、処理容器1内の左右一対の円柱状の攪拌翼回転軸部2bに設けられて、所定の角度範囲にて自由に回転動作できる構成となっている。
【0029】
処理容器1は、表面処理化合物と粒子5とを収納可能な処理空間1bを有して、表面処理気体の雰囲気中に粒子5を収納可能な構成となっている。
【0030】
図1Bには、揺動回転軸部2aにより処理容器1が揺動する際の角度、及び攪拌翼回転軸部2bにより、攪拌翼4が回転動作可能な所定の角度範囲を示している。前者の処理容器1が揺動する際の角度については、処理容器1の底部の内壁底面1aの水平面Hからの傾き角度として揺動傾斜角度θを定義している。後者の攪拌翼4が回転動作可能な所定の角度範囲については、攪拌翼4の処理容器1の底面1aからの角度として終端傾斜角度φを定義している。また、図1Bには、攪拌翼4と攪拌翼回転軸部2bとのトルクτを示している。攪拌翼4は、処理容器1内に収められた粒子5の動きにより稼動するため、トルクτは、揺動傾斜角度θに対する終端傾斜角度φを決定している非常に大きな重要パラメータである。また、図1Bには、攪拌翼回転軸部2bの揺動中心から攪拌翼4の先端までの攪拌翼4の長さLを定義しており、トルクτと長さLとは実用上、関連するパラメータであるが、詳細説明は後述する。
【0031】
図1Cは、図1Bに示したA−A線断面図を提示している。揺動回転軸部2aは、処理容器1と揺動回転軸支持部3とを回転可能に連結しており、攪拌翼回転軸部2bは攪拌翼4と処理容器1とを回転可能に連結している様子を示している。さらに、図1Dには、図1C断面の拡大図を示しており、攪拌翼回転軸部2bと攪拌翼4の近傍の詳細を示している。攪拌翼回転軸部2bと攪拌翼4とは処理容器1の内部に設けられており、揺動回転部2aと揺動回転支持部3とは処理容器1の外部に設けられている。攪拌翼回転軸部2bの外側固定部の下端と揺動回転部2aの外側固定部の上端とは、それぞれ、処理容器1に溶接等で固定されており、攪拌翼回転軸部2bの外側固定部内で回転自在な内側可動部は攪拌翼4に、揺動回転部2aの外側固定部内で回転自在な内側可動部は揺動回転支持部3に各々、溶接等で固定されている。
【0032】
図1Eには攪拌翼4の動作を断面図で示す。処理容器1の底面1aに固定された蝶番で構成される攪拌翼回転軸部2bに固定された攪拌翼4が、一対のストッパ40で挟まれた所定の角度の範囲内でだけ揺動する構成となっている。蝶番としては、粉体にも耐える内蔵式ボールベアリング入りの蝶番が適している。
【0033】
かかる構成によれば、処理容器1を揺動させることにより粒子5が移動することによって攪拌翼4が稼動し、攪拌翼4の端部4aから粒子5が平面状に落下するよう構成している。つまり、連続的に回転する部分が無いために、従来、回転部と非回転部の接続部分で課題であった外部からの空気の侵入を完全に防止できて、処理装置1の気密性を向上させることができる。
【0034】
なお、表面処理化合物と粒子5との処理容器1への投入、および粒子5の処理容器1からの取り出しに関しては、図4にて後述する。
【0035】
さらに、揺動の往復運動の双方向(図1Aでの時計方向と反時計方向の両方向)にて粒子5が表面処理化合物と効率的に接することにより、従来の回転ドラム等の攪拌羽と同様な攪拌効果が簡単に得られるため、効率的で高品質な表面処理を行うことができる。
【0036】
図5に示したような従来の回転ドラム式では、粉体或いは粒状物が再分割されることによって表面積が急に増加して、表面処理に必要な化合物の量が増加したり、処理時間が増加したりする課題が有った。しかしながら、本実施形態にかかる図1に示した構成によれば、処理容器1の揺動による粒子5の移動によって攪拌翼4が稼動し、攪拌翼4の端部4aから粒子5が処理容器1の底面1a上に平面状に落下することから、粒子5へのせん断応力とか落下衝撃と言ったダメージは非常に少なくすることが可能となっている。さらに、図1Aに示した攪拌翼4上での粒子5の動きは平面状であることから、表面処理化合物との接触確率が向上する。そして、従来は掻き上げが一部で発生していたので、全ての粉体或いは粒状物への接触確率は、回転数を増加することで補完していた。しかし、図1Aでは、一回の揺動毎に全ての粒子5が攪拌翼4の端部4aから処理容器1の底面1a上に平面状に落下して表面処理化合物と接触しており、非常に効率的な表面処理プロセスが構築できている。落下も短い距離に低減でき、衝撃も抑制され、再分割の影響は小さくできており、効率的な表面勝利が可能である。
【0037】
特に、表面処理化合物の一例として、クロロシラン系化合物を使用することにより、一層、粒子との接触確率の向上が重要である。クロロシラン系化合物は、粒子5の表面に接するだけで短時間にカップリング被覆を実現するためである。また、被覆された部分には、重複して被覆されることが無い性質があるため、単分子での表面処理が可能で、効率的な処理プロセスとなる。そのためには、図5の示した従来のような回転ドラム式における混合目的での攪拌は全く不要であり、図1Aに示したような間欠型揺動式による表面処理化合物と粒子5との接触が優先される。
【0038】
次に、攪拌翼4の終端傾斜角度φと、処理容器1の揺動傾斜角度θと、及び攪拌翼4と攪拌翼回転軸部2bのトルクτとに関して、記述する。図2A〜2Dには、粒子5の異なる性状と攪拌翼4の動作と、さらにトルクτとの関係を示した。
【0039】
図2Aのφ−θ>0の場合、次のようなケースが考えられる。
・トルクτが小さく、攪拌翼4の終端傾斜角度φを小さく設定しても攪拌翼4は稼動する場合、
・粒子5も移動し易い性状の場合には、処理容器1の揺動傾斜角度θが小さくても攪拌翼4は稼動する。
【0040】
その結果、図2Aの左側の図から右側の図に状態が変わるとき、反対側に稼動後の攪拌翼4が、水平面Hよりも上に向くために、粒子5がキープされて、ラッシュしない。ここで、「ラッシュ」とは、攪拌翼4上を通過する粒子5が瞬間的に増加するため、本来、攪拌翼4の端部4aから平面状に落下する粒子5が、厚みのある直方体状になることを示している。ラッシュした状態では、粒子5と表面処理化合物との接触確率は大幅に低下してしまうため、好ましくない状態を指す。
【0041】
図2Bに示したφ−θ<0の場合として、次のようなケースが考えられる。
・トルクτが小さいので、攪拌翼4の終端傾斜角度φを小さく設定しても攪拌翼4は稼動する。
・しかし、この構成でも粒子5が移動し難い性状の場合には、処理容器1の揺動傾斜角度θが大きくないと攪拌翼4は稼動しない。
【0042】
その結果、図2Bの左側の図から右側の図に状態が変わるとき、反対側に稼動後の攪拌翼4が、水平面Hよりも下に向くために、粒子5がラッシュしてしまう。
【0043】
図2Cのφ−θ>0の場合として、次のようなケースが考えられる。
・攪拌翼4の終端傾斜角度φを大きく設定した場合には、攪拌翼4は稼動し易い。
・この構成において、もしトルクτも小さく、粒子5が動き易い性状の場合は、処理容器1の揺動傾斜角度θが小さくても攪拌翼4は稼動する。
【0044】
この場合には、図2Cの左側の図から右側の図に状態が変わるとき、反対側に稼動後の攪拌翼4が、水平面Hよりも上に向くために、粒子5はキープされ、ラッシュしない。
【0045】
そして、図2Dのφ−θ<0となるケースとして、次のようなケースが考えられる。
・攪拌翼4の終端傾斜角度φを大きく設定した場合には、攪拌翼4は稼動し易い。
・しかし、もしトルクτが大きい、或いは、粒子5が動き難い性状の場合には、処理容器1の揺動傾斜角度θが大きくならないと攪拌翼4は稼動しない。
【0046】
この場合には、図2Dの左側の図から右側の図に状態が変わるとき、反対側に稼動後の攪拌翼4が、水平面Hよりも下に向くために、粒子5はラッシュしてしまう。
【0047】
以上の結果から、攪拌翼4の終端傾斜角度φと、処理容器1の揺動傾斜角度θとにおいて、φ−θ>0、つまり処理容器1の揺動傾斜角度θが攪拌翼4の終端傾斜角度φより小であることが粒子表面処理装置には必要である。
【0048】
ここで、攪拌翼4の長さLに関して、トルクτと長さLとは実用上、関連するパラメータである。長さLが比較的大の場合は、トルクτは比較的大でも攪拌翼4の動作には影響が小さい。逆にトルクτが比較的小の場合には、長さLは比較的小でも良い。しかしながら、トルクτが比較的大きい場合に、もし長さLが比較的小の場合、粒子5の重量による攪拌翼4に働く力は比較的小さくなるため、トルクτに対抗できず、結果として、攪拌翼4の動作が遅延する、或いは、動作が困難となってしまうことがある。トルクτは、比較的小さくなるように、つまり、スムーズな揺動が可能な構成にすることが必要である。スムーズな揺動が可能な構成例として、図1Dにおける攪拌翼回転軸部2bは、粉体にも耐える内蔵式ボールベアリング入りの蝶番が適する。
【0049】
最後に、上述した「ラッシュ」に関して、図3A〜図3Cを使用して補足説明する。ラッシュは、非定常的には上述したような粒子5の急激な動きによるものであるが、図3A〜図3Cでは定常的な状態での評価を行った。つまり、図3Aに示したように、長さLの攪拌翼4が処理容器1の底面1aと垂直に固定された場合を想定して、つまり、攪拌翼4の終端傾斜角度φが90度に固定された場合であるが、その位置からスタートして処理容器1が、当初、処理容器1の揺動傾斜角度θ=20度から開始して、処理容器1の揺動傾斜角度θを徐々に増加させているとする。図3Aでは既に処理容器1の揺動傾斜角度θは45度程度まで増加した時点を示している。次に、処理容器1がさらに傾いた場合には、図3Bに示したように、太い破線Gより上方の粒子5は、攪拌翼4の左側に移動する。この様子を、図3Cにおいて、角度と単位幅当たりの粒子の流量とにて示す。図3Cにおける角度は図3Aに示した角度と定義しており、当初約70度から開始して、徐々に減少している。この仮定の下、図3Cから、角度が大きい場合には粒子の流量は非常に多いが、角度の低下に伴って急激に流量は減少していることが分かる。この結果、「ラッシュ」に相当する現象が、処理容器1の揺動開始の直後に大きく発生することが説明できる。
【0050】
なお、本実施形態において、攪拌翼回転軸部2bは軸受けを採用することが多いが、フレキシブルなフィルムにて接着固定しておくこととしても良い。或いは、攪拌翼4の材質が柔軟で、その攪拌翼回転軸部2bに接する部分を薄くした構成で接合されていることでも代用が可能である。
【実施例1】
【0051】
図4に、本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の薬液容器、加熱ヒータ、真空ポンプ等を加えた実施例1を示す。図1と同様な構成については説明を省略する。処理容器1には、その側面の攪拌翼4の付近に設けられたフレキシブル配管6を経由して、表面処理化合物を処理容器1内に供給する。フレキシブル配管6は、処理容器1の揺動範囲では気密性を維持し得るものである。フレキシブル配管6には真空配管7を接続してあり、真空配管7の先には、2つに分岐して、一方の配管7aには、薬液容器用バルブ8と薬液容器9、及び加熱ヒータ10を設けており、片方の配管7bには真空ポンプ用バルブ11を経由して真空ポンプ12を設けている。ここで、処理容器1内への粒子5の投入は、処理容器1の上部に設けた粒子投入口13から投入する。処理容器1からの粒子5の取出しには、処理容器1の前面下方に設けた粒子排出口14を利用する。処理容器1の揺動の駆動源(揺動駆動装置)には、一例として、空圧により伸縮制御可能な空圧駆動装置15を適用している。空圧駆動装置15には種々のものが使用可能であるので、ここでは詳細は省略するが、スムーズな揺動を簡単に実現できる空圧アームの使用が望ましい。
【0052】
ここでは、表面処理化合物の一例としてのクロロシラン系化合物としてオクタデシルトリクロロシラン(OTS)を使用して、粒子5としては、土砂、粉体及び粒状物を対象としている。対象粒子の表面は、すべて水酸基が有ることを前提としている。これらの種々の粒子5に撥水性を付与する為の表面処理化合物としてOTSを使用しているが、クロロシラン系化合物であれば他のものでも同様な効果が得られる。その結果、通常の土木材料ばかりでなく、廃棄物の再利用にも応用できる汎用性を持った表面処理方法を実現できる。
【0053】
最初に、粒子5を粒子投入口13から処理容器1の収めた後に、処理容器1は気密性を維持したまま真空ポンプ12によって減圧される。処理容器1の圧力は350mmHg以下で設定されるが、通常は50mmHg以下が望ましい。なお、処理容器1の内容積は約50L(リットル)で、粒子5は一回の処理の際に、25L程度まで投入可能である。減圧後に、真空ポンプ用バルブ11を閉じる。同時に、表面処理化合物は、薬液容器9において加熱ヒータ10により80℃程度で加熱される。処理容器1は空圧駆動装置15により揺動を開始するが、約0.1Hzのゆっくりした揺動が適する。その後、薬液容器用バルブ8を開き、表面処理気体の一例としてのOTS蒸気を、薬液容器9から、真空配管7a,7及び気体導入部の一例として機能するフレキシブル配管6を経由して処理容器1内に供給される。
【0054】
このように処理容器1が空圧駆動装置15により揺動されかつ処理容器1内に表面処理気体が供給されることにより、表面処理気体の雰囲気中において、粒子5が処理容器1内で往復移動して攪拌翼4を揺動させ、攪拌翼4の端部4aから粒子5を処理容器1の内壁底面1aの平面上に平面状に落下するように制御して、表面処理を行う。粒子5の種類に依存するが、概ね、処理に要する時間は約10分間以内である。
【0055】
なお、空圧アームを適用した空圧駆動装置15の制御における波形は、基本的にはサイン曲線であるが、これに限定しない。矩形波、あるいはV字波形も可能である。ただし、ラッシュを防止するために複雑な揺動運動が最適であることは言うまでも無い。表面処理後の粒子5は、粒子排出口14から取り出す。
【0056】
ここで、攪拌翼4の終端傾斜角度φは、通常は20度〜30度での設定が多い。粒子5への落下ダメージも少なく、攪拌翼4の通過後の平面状での表面処理にも適する。
【0057】
また、本実施例1では処理容器1は50Lの内容積のものを使用しているが、高さが20cmである。この場合に、攪拌翼4の長さLは10cmを用いた。攪拌翼回転軸部2bにはボールベアリング式蝶番を利用した構成であり、攪拌翼4はスムーズに稼動した。ただ、攪拌翼4の長さLを5cm以下にした場合には、稼動が不十分であったりラッシュしたりするケースが多かった。使用した粒子5は、比重が約1.5、平均粒径が150μmである。
【0058】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明にかかる間欠型揺動式粒子表面処理装置および方法は、粒子と表面処理化合物を収めた処理容器を揺動させ、攪拌翼と攪拌翼を稼動させるための攪拌翼回転軸部を備え、処理容器を揺動させることにより粒子が移動することによって攪拌翼が稼動し、攪拌翼の端部から粒子が平面状に落下するよう構成して、処理装置の気密性を向上させ、揺動の往復運動の双方向にて粒子が表面処理化合物と効率的に接することにより、効率的で高品質な表面処理が可能とすることができるものであり、粉体及び粒状物の表面処理装置および方法として有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 処理容器
1a 内壁底面
2a 揺動回転軸部
2b 攪拌翼回転軸部
3 揺動回転軸支持部
4 攪拌翼
5 粒子
6 フレキシブル配管
7 真空配管
8 薬液容器用バルブ
9 薬液容器
10 加熱ヒータ
11 真空ポンプ用バルブ
12 真空ポンプ
13 粒子投入口
14 粒子排出口
15 空圧駆動装置
30 揺動支持部
40 ストッパ
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動により攪拌する方式の間欠型の揺動式粒子表面処理装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体及び粒状物の表面改質剤としてクロロシラン系化合物を使用することにより、プロセスの効率化、コスト低減、及び、品質の向上を図る方法が知られている。カップリングにより、単分子での表面処理が可能となることが大きな特徴である。その際に、クロロシラン系化合物は液体のままではなく、気化した状態にて使用することによって、高速に処理を実現できるプロセスが考案されている。
【0003】
従来の表面処理装置の一例としては、表面改質する対象が粉体、或いは粒状物であることから、低圧状態にて、クロロシラン化合物の蒸気を利用すると同時に、回転ドラムを用いて攪拌する方式のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。土砂を含めて、粉体及び粒状物に撥水性を付与することを目的に、表面改質剤として粗シランを使用して、プロセスの効率化を図っている。材料を密閉ドラム内に入れて、300〜350mmHgに減圧した後、クロロシラン蒸気と混合して、表面改質を行っている。ドラムは10rpm程度で回転させている。
【0004】
このような回転ドラムを使用する場合に、回転ドラムとしては、攪拌のために内部に、攪拌羽を有するものが多い(例えば、特許文献2参照)。図5に示すように、粒径が75μmを超え、425μm以下の粉末を攪拌しているが、原料投入口61を中心軸上に有する円筒状攪拌容器62を含む攪拌装置として、ロッキングミキサーを用いた方法が示されている。粉末の攪拌を効果的に行うために、円筒状攪拌容器62は中心軸を揺動させることが可能であるが、基本的には円筒状攪拌容器62を中心軸回りに回転させる方式である。回転は、8〜30rpmであるが、円筒状攪拌容器62内に設けてある攪拌羽63が効果的に機能しており、攪拌羽63による粉末の掻き上げを有効に利用している。
【0005】
また、図6に示すように、鋤状の羽69を有する混合容器71からなる機能性粒子製造装置70が提案されている(例えば、特許文献3参照)。粒子を表面処理するための材料72に関して、噴霧器73を経由して噴霧74にして供給し、回転軸75を中心として鋤状の羽69を有する混合容器71内で処理を行う構成である。処理後は、排出口76から粒子を取り出すことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−296070号公報
【特許文献2】特許第4235412号公報
【特許文献3】US 2009/0030222 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した構成の表面処理装置にも課題がある。
【0008】
特許文献1の方法では、粉体或いは粒状物を回転ドラム内に入れて攪拌しつつ表面処理を行う構成となっているため、粉体或いは粒状物の各々の表面を均質に処理することが可能である。しかしながら、特許文献2の図5に示すような回転ドラムの場合にも同様に、必ず、原料投入口61のように非回転部分が存在する。非回転部分は回転部分とのスムーズなスライド性能と共に、回転ドラム内の機密性を維持するための密閉性能の両方が求められる。しかしながら、クロロシラン系化合物のように、雰囲気中の水分の存在で反応が促進される場合には、回転ドラムの外部からの空気の流入は大きな課題となる。この空気の流入を防止するために、一般的には、O−リング、或いはV−リング等のパッキングが開発されている。しかし、回転ドラム内が真空状態、或いは低圧下では、外からの空気の流入は完全には防止することが困難であるという課題を有している。また、これは、図5に示すような構成ではなくて、例えば、フッ素含有クロロシラン系化合物を入れた円筒状攪拌容器62又は付随する加熱用ヒータ等を、円筒状攪拌容器62と共に回転させることが可能であると仮定しても、その加熱ヒータへの電源供給等の配線に回転、非回転との接続を可能とするような電気系のブラシ構造が必要となり、信頼性が低下すると共に、円筒状攪拌容器62の回転に伴う気化装置としての品質、蒸気の供給が不安定になったりすることが予想され、処理プロセス全体としての効率が低下する。従って、粒子表面処理装置として十分な性能を維持することが困難である。さらに、図5に示したような従来の回転ドラム式では、攪拌羽63による攪拌方式においては、粉体或いは粒状物は攪拌羽によって一部掻き上げられてから、落下することによる混合効果を狙っていた。しかしながら、掻き上げ時の粉体或いは粒状物へのせん断応力、また落下の際の衝撃による粉体或いは粒状物へのダメージは、悪影響が多かった。特に、粉体或いは粒状物が再分割されることによって表面積が急に増加して、表面処理に必要な化合物の量が増加したり、処理時間が増加したりする課題が有った。
【0009】
特許文献3の方法では、図6に示したように、鋤状の羽69を有する混合容器71は回転しないため、表面処理の材料72を気化して供給する噴霧器73との接続部分も回転しない構成を実現できているが、回転軸75を中心に攪拌するための鋤状の羽69を有する混合容器71内で処理を行うことから、回転部分と混合容器71の非回転部分との接続部を有している点から、前記の図5と同様に、外部からの空気の侵入を完全には防止できない欠点がある。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、揺動により攪拌する方式の間欠型揺動式粒子表面処理装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、表面処理気体の雰囲気中において、粒子を収納可能な処理空間を有する容器と、
前記容器を揺動可能に支持し、前記粒子を前記容器の内部で往復移動可能とする揺動支持部と、
前記容器の内壁底面に設けられた攪拌翼回転軸部を軸心として揺動自在な攪拌翼とを備えて、
前記容器を揺動することにより前記粒子を往復移動させると前記攪拌翼が揺動し、前記攪拌翼の端部から前記粒子を前記容器の前記内壁底面の平面上に落下させて粒子表面処理を行うことを特徴とする粒子表面処理装置を提供する。
【0013】
本発明の別の態様によれば、表面処理気体の雰囲気中において、粒子を処理空間内に収納する容器を揺動部を支点に揺動させて前記粒子を前記容器の内部で往復移動させ、前記容器の揺動により、前記容器の内壁底面に設けられた攪拌翼回転軸部の軸心周りに攪拌翼を揺動させ、前記攪拌翼の端部から前記粒子を前記容器の前記内壁底面の平面上に落下させて粒子表面処理を行う、粒子表面処理方法を提供する。
【0014】
本構成によって、回転部分が存在しないため処理容器内が完全に外部と隔離でき、外部からの空気等の流入を遮断することにより、均質で効率的な粒子表面処理プロセスを実行できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の間欠型揺動式粒子表面処理装置および方法によれば、気密性の向上と、粒子への衝撃が少なく再分割を抑制しているので表面積の増加もなく、均質な表面処理によって、高効率、高品質な粒子表面処理プロセスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】本発明の実施形態1における間欠型揺動式粒子表面処理装置の構成を示す概略透視側面図
【図1B】本発明の実施形態1における間欠型揺動式粒子表面処理装置において、処理容器が揺動する際の角度、攪拌翼が回転動作可能な角度範囲などを示す概略透視側面図
【図1C】図1BのA−A線断面図
【図1D】図1Cの断面の一部拡大図
【図1E】本発明の実施形態1における間欠型揺動式粒子表面処理装置の攪拌翼の動作を示す断面図
【図2A】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動と粒子の攪拌状態を示す図
【図2B】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動と粒子の攪拌状態を示す図
【図2C】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動と粒子の攪拌状態を示す図
【図2D】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動と粒子の攪拌状態を示す図
【図3A】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動角度と粒子の流量を示す図
【図3B】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動角度と粒子の流量を示す図
【図3C】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の揺動角度と粒子の流量との関係を示す図
【図4】本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の薬液容器、加熱ヒータ、真空ポンプ等を加えた実施例を示す図
【図5】従来の粒子表面処理装置の構成を示す図
【図6】従来のクロロシラン系化合物による粒子表面処理装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
【0019】
本発明の第1態様によれば、表面処理気体の雰囲気中において、粒子を収納可能な処理空間を有する容器と、
前記容器を揺動可能に支持し、前記粒子を前記容器の内部で往復移動可能とする揺動支持部と、
前記容器の内壁底面に設けられた攪拌翼回転軸部を軸心として揺動自在な攪拌翼とを備えて、
前記容器を揺動することにより前記粒子を往復移動させると前記攪拌翼が揺動し、前記攪拌翼の端部から前記粒子を前記容器の前記内壁底面の平面上に落下させて粒子表面処理を行うことを特徴とする粒子表面処理装置を提供する。
【0020】
本発明の第2態様によれば、前記揺動支持部は、
前記容器に設けた揺動回転軸部と、
前記揺動回転軸部を回転自在に支持する支持部とを備える、第1の態様に記載の粒子表面処理装置を提供する。
【0021】
本発明の第3態様によれば、前記容器の揺動に伴う前記粒子の往復移動時に、前記粒子の重力で前記攪拌翼を前記攪拌翼回転軸部の軸心周りに回転させる、第1又は2の態様に記載の粒子表面処理装置を提供する。
【0022】
本発明の第4態様によれば、前記容器は、前記容器の前記処理空間内に前記表面処理気体を導入する気体導入部を備える、第1〜3のいずれか1つの態様に記載の粒子表面処理装置を提供する。
【0023】
本発明の第5態様によれば、前記粒子は、砂である、第1〜4のいずれか1つの態様に記載の粒子表面処理装置を提供する。
【0024】
本発明の第6態様によれば、前記攪拌翼の終端傾斜角度φと、前記容器の揺動傾斜角度θとにおいて、前記容器内で前記粒子が前記揺動傾斜角度θにより移動開始後に、前記粒子が前記攪拌翼を稼動させる時点での前記揺動傾斜角度θが前記終端傾斜角度φより小である第1〜5のいずれか1つの態様に記載の粒子表面処理装置を提供する。
【0025】
本発明の第7態様によれば、前記表面処理気体の表面処理化合物として、クロロシラン系化合物を使用する第1〜6のいずれか1つの態様に記載の粒子表面処理装置を提供する。
【0026】
本発明の第8態様によれば、表面処理気体の雰囲気中において、粒子を処理空間内に収納する容器を揺動部を支点に揺動させて前記粒子を前記容器の内部で往復移動させ、前記容器の揺動により、前記容器の内壁底面に設けられた攪拌翼回転軸部の軸心周りに攪拌翼を揺動させ、前記攪拌翼の端部から前記粒子を前記容器の前記内壁底面の平面上に落下させて粒子表面処理を行う、粒子表面処理方法を提供する。
【0027】
(実施形態1)
図1Aは、本発明の実施形態1における間欠型揺動式粒子表面処理装置の構成を示した図である。
【0028】
図1A及び図1Cにおいて、気密性の高い例えば四角筒形状の処理容器1が、揺動させるための左右一対の揺動回転軸部2aにより回転可能な構成である。左右一対の揺動回転軸部2aは、それぞれ円柱状部材であって、一対の三角板状の揺動回転軸支持部3に揺動可能に設けられて揺動支点部30を構成しており、処理容器1の中央部の下面の左右に連結されて、処理容器1の全体を揺動回転軸支持部3に対して揺動可能に支持している。処理容器1内には、縦断面が三角形の攪拌翼4を有しており、攪拌翼4の基端は、処理容器1内の左右一対の円柱状の攪拌翼回転軸部2bに設けられて、所定の角度範囲にて自由に回転動作できる構成となっている。
【0029】
処理容器1は、表面処理化合物と粒子5とを収納可能な処理空間1bを有して、表面処理気体の雰囲気中に粒子5を収納可能な構成となっている。
【0030】
図1Bには、揺動回転軸部2aにより処理容器1が揺動する際の角度、及び攪拌翼回転軸部2bにより、攪拌翼4が回転動作可能な所定の角度範囲を示している。前者の処理容器1が揺動する際の角度については、処理容器1の底部の内壁底面1aの水平面Hからの傾き角度として揺動傾斜角度θを定義している。後者の攪拌翼4が回転動作可能な所定の角度範囲については、攪拌翼4の処理容器1の底面1aからの角度として終端傾斜角度φを定義している。また、図1Bには、攪拌翼4と攪拌翼回転軸部2bとのトルクτを示している。攪拌翼4は、処理容器1内に収められた粒子5の動きにより稼動するため、トルクτは、揺動傾斜角度θに対する終端傾斜角度φを決定している非常に大きな重要パラメータである。また、図1Bには、攪拌翼回転軸部2bの揺動中心から攪拌翼4の先端までの攪拌翼4の長さLを定義しており、トルクτと長さLとは実用上、関連するパラメータであるが、詳細説明は後述する。
【0031】
図1Cは、図1Bに示したA−A線断面図を提示している。揺動回転軸部2aは、処理容器1と揺動回転軸支持部3とを回転可能に連結しており、攪拌翼回転軸部2bは攪拌翼4と処理容器1とを回転可能に連結している様子を示している。さらに、図1Dには、図1C断面の拡大図を示しており、攪拌翼回転軸部2bと攪拌翼4の近傍の詳細を示している。攪拌翼回転軸部2bと攪拌翼4とは処理容器1の内部に設けられており、揺動回転部2aと揺動回転支持部3とは処理容器1の外部に設けられている。攪拌翼回転軸部2bの外側固定部の下端と揺動回転部2aの外側固定部の上端とは、それぞれ、処理容器1に溶接等で固定されており、攪拌翼回転軸部2bの外側固定部内で回転自在な内側可動部は攪拌翼4に、揺動回転部2aの外側固定部内で回転自在な内側可動部は揺動回転支持部3に各々、溶接等で固定されている。
【0032】
図1Eには攪拌翼4の動作を断面図で示す。処理容器1の底面1aに固定された蝶番で構成される攪拌翼回転軸部2bに固定された攪拌翼4が、一対のストッパ40で挟まれた所定の角度の範囲内でだけ揺動する構成となっている。蝶番としては、粉体にも耐える内蔵式ボールベアリング入りの蝶番が適している。
【0033】
かかる構成によれば、処理容器1を揺動させることにより粒子5が移動することによって攪拌翼4が稼動し、攪拌翼4の端部4aから粒子5が平面状に落下するよう構成している。つまり、連続的に回転する部分が無いために、従来、回転部と非回転部の接続部分で課題であった外部からの空気の侵入を完全に防止できて、処理装置1の気密性を向上させることができる。
【0034】
なお、表面処理化合物と粒子5との処理容器1への投入、および粒子5の処理容器1からの取り出しに関しては、図4にて後述する。
【0035】
さらに、揺動の往復運動の双方向(図1Aでの時計方向と反時計方向の両方向)にて粒子5が表面処理化合物と効率的に接することにより、従来の回転ドラム等の攪拌羽と同様な攪拌効果が簡単に得られるため、効率的で高品質な表面処理を行うことができる。
【0036】
図5に示したような従来の回転ドラム式では、粉体或いは粒状物が再分割されることによって表面積が急に増加して、表面処理に必要な化合物の量が増加したり、処理時間が増加したりする課題が有った。しかしながら、本実施形態にかかる図1に示した構成によれば、処理容器1の揺動による粒子5の移動によって攪拌翼4が稼動し、攪拌翼4の端部4aから粒子5が処理容器1の底面1a上に平面状に落下することから、粒子5へのせん断応力とか落下衝撃と言ったダメージは非常に少なくすることが可能となっている。さらに、図1Aに示した攪拌翼4上での粒子5の動きは平面状であることから、表面処理化合物との接触確率が向上する。そして、従来は掻き上げが一部で発生していたので、全ての粉体或いは粒状物への接触確率は、回転数を増加することで補完していた。しかし、図1Aでは、一回の揺動毎に全ての粒子5が攪拌翼4の端部4aから処理容器1の底面1a上に平面状に落下して表面処理化合物と接触しており、非常に効率的な表面処理プロセスが構築できている。落下も短い距離に低減でき、衝撃も抑制され、再分割の影響は小さくできており、効率的な表面勝利が可能である。
【0037】
特に、表面処理化合物の一例として、クロロシラン系化合物を使用することにより、一層、粒子との接触確率の向上が重要である。クロロシラン系化合物は、粒子5の表面に接するだけで短時間にカップリング被覆を実現するためである。また、被覆された部分には、重複して被覆されることが無い性質があるため、単分子での表面処理が可能で、効率的な処理プロセスとなる。そのためには、図5の示した従来のような回転ドラム式における混合目的での攪拌は全く不要であり、図1Aに示したような間欠型揺動式による表面処理化合物と粒子5との接触が優先される。
【0038】
次に、攪拌翼4の終端傾斜角度φと、処理容器1の揺動傾斜角度θと、及び攪拌翼4と攪拌翼回転軸部2bのトルクτとに関して、記述する。図2A〜2Dには、粒子5の異なる性状と攪拌翼4の動作と、さらにトルクτとの関係を示した。
【0039】
図2Aのφ−θ>0の場合、次のようなケースが考えられる。
・トルクτが小さく、攪拌翼4の終端傾斜角度φを小さく設定しても攪拌翼4は稼動する場合、
・粒子5も移動し易い性状の場合には、処理容器1の揺動傾斜角度θが小さくても攪拌翼4は稼動する。
【0040】
その結果、図2Aの左側の図から右側の図に状態が変わるとき、反対側に稼動後の攪拌翼4が、水平面Hよりも上に向くために、粒子5がキープされて、ラッシュしない。ここで、「ラッシュ」とは、攪拌翼4上を通過する粒子5が瞬間的に増加するため、本来、攪拌翼4の端部4aから平面状に落下する粒子5が、厚みのある直方体状になることを示している。ラッシュした状態では、粒子5と表面処理化合物との接触確率は大幅に低下してしまうため、好ましくない状態を指す。
【0041】
図2Bに示したφ−θ<0の場合として、次のようなケースが考えられる。
・トルクτが小さいので、攪拌翼4の終端傾斜角度φを小さく設定しても攪拌翼4は稼動する。
・しかし、この構成でも粒子5が移動し難い性状の場合には、処理容器1の揺動傾斜角度θが大きくないと攪拌翼4は稼動しない。
【0042】
その結果、図2Bの左側の図から右側の図に状態が変わるとき、反対側に稼動後の攪拌翼4が、水平面Hよりも下に向くために、粒子5がラッシュしてしまう。
【0043】
図2Cのφ−θ>0の場合として、次のようなケースが考えられる。
・攪拌翼4の終端傾斜角度φを大きく設定した場合には、攪拌翼4は稼動し易い。
・この構成において、もしトルクτも小さく、粒子5が動き易い性状の場合は、処理容器1の揺動傾斜角度θが小さくても攪拌翼4は稼動する。
【0044】
この場合には、図2Cの左側の図から右側の図に状態が変わるとき、反対側に稼動後の攪拌翼4が、水平面Hよりも上に向くために、粒子5はキープされ、ラッシュしない。
【0045】
そして、図2Dのφ−θ<0となるケースとして、次のようなケースが考えられる。
・攪拌翼4の終端傾斜角度φを大きく設定した場合には、攪拌翼4は稼動し易い。
・しかし、もしトルクτが大きい、或いは、粒子5が動き難い性状の場合には、処理容器1の揺動傾斜角度θが大きくならないと攪拌翼4は稼動しない。
【0046】
この場合には、図2Dの左側の図から右側の図に状態が変わるとき、反対側に稼動後の攪拌翼4が、水平面Hよりも下に向くために、粒子5はラッシュしてしまう。
【0047】
以上の結果から、攪拌翼4の終端傾斜角度φと、処理容器1の揺動傾斜角度θとにおいて、φ−θ>0、つまり処理容器1の揺動傾斜角度θが攪拌翼4の終端傾斜角度φより小であることが粒子表面処理装置には必要である。
【0048】
ここで、攪拌翼4の長さLに関して、トルクτと長さLとは実用上、関連するパラメータである。長さLが比較的大の場合は、トルクτは比較的大でも攪拌翼4の動作には影響が小さい。逆にトルクτが比較的小の場合には、長さLは比較的小でも良い。しかしながら、トルクτが比較的大きい場合に、もし長さLが比較的小の場合、粒子5の重量による攪拌翼4に働く力は比較的小さくなるため、トルクτに対抗できず、結果として、攪拌翼4の動作が遅延する、或いは、動作が困難となってしまうことがある。トルクτは、比較的小さくなるように、つまり、スムーズな揺動が可能な構成にすることが必要である。スムーズな揺動が可能な構成例として、図1Dにおける攪拌翼回転軸部2bは、粉体にも耐える内蔵式ボールベアリング入りの蝶番が適する。
【0049】
最後に、上述した「ラッシュ」に関して、図3A〜図3Cを使用して補足説明する。ラッシュは、非定常的には上述したような粒子5の急激な動きによるものであるが、図3A〜図3Cでは定常的な状態での評価を行った。つまり、図3Aに示したように、長さLの攪拌翼4が処理容器1の底面1aと垂直に固定された場合を想定して、つまり、攪拌翼4の終端傾斜角度φが90度に固定された場合であるが、その位置からスタートして処理容器1が、当初、処理容器1の揺動傾斜角度θ=20度から開始して、処理容器1の揺動傾斜角度θを徐々に増加させているとする。図3Aでは既に処理容器1の揺動傾斜角度θは45度程度まで増加した時点を示している。次に、処理容器1がさらに傾いた場合には、図3Bに示したように、太い破線Gより上方の粒子5は、攪拌翼4の左側に移動する。この様子を、図3Cにおいて、角度と単位幅当たりの粒子の流量とにて示す。図3Cにおける角度は図3Aに示した角度と定義しており、当初約70度から開始して、徐々に減少している。この仮定の下、図3Cから、角度が大きい場合には粒子の流量は非常に多いが、角度の低下に伴って急激に流量は減少していることが分かる。この結果、「ラッシュ」に相当する現象が、処理容器1の揺動開始の直後に大きく発生することが説明できる。
【0050】
なお、本実施形態において、攪拌翼回転軸部2bは軸受けを採用することが多いが、フレキシブルなフィルムにて接着固定しておくこととしても良い。或いは、攪拌翼4の材質が柔軟で、その攪拌翼回転軸部2bに接する部分を薄くした構成で接合されていることでも代用が可能である。
【実施例1】
【0051】
図4に、本発明の実施形態1における粒子表面処理装置の薬液容器、加熱ヒータ、真空ポンプ等を加えた実施例1を示す。図1と同様な構成については説明を省略する。処理容器1には、その側面の攪拌翼4の付近に設けられたフレキシブル配管6を経由して、表面処理化合物を処理容器1内に供給する。フレキシブル配管6は、処理容器1の揺動範囲では気密性を維持し得るものである。フレキシブル配管6には真空配管7を接続してあり、真空配管7の先には、2つに分岐して、一方の配管7aには、薬液容器用バルブ8と薬液容器9、及び加熱ヒータ10を設けており、片方の配管7bには真空ポンプ用バルブ11を経由して真空ポンプ12を設けている。ここで、処理容器1内への粒子5の投入は、処理容器1の上部に設けた粒子投入口13から投入する。処理容器1からの粒子5の取出しには、処理容器1の前面下方に設けた粒子排出口14を利用する。処理容器1の揺動の駆動源(揺動駆動装置)には、一例として、空圧により伸縮制御可能な空圧駆動装置15を適用している。空圧駆動装置15には種々のものが使用可能であるので、ここでは詳細は省略するが、スムーズな揺動を簡単に実現できる空圧アームの使用が望ましい。
【0052】
ここでは、表面処理化合物の一例としてのクロロシラン系化合物としてオクタデシルトリクロロシラン(OTS)を使用して、粒子5としては、土砂、粉体及び粒状物を対象としている。対象粒子の表面は、すべて水酸基が有ることを前提としている。これらの種々の粒子5に撥水性を付与する為の表面処理化合物としてOTSを使用しているが、クロロシラン系化合物であれば他のものでも同様な効果が得られる。その結果、通常の土木材料ばかりでなく、廃棄物の再利用にも応用できる汎用性を持った表面処理方法を実現できる。
【0053】
最初に、粒子5を粒子投入口13から処理容器1の収めた後に、処理容器1は気密性を維持したまま真空ポンプ12によって減圧される。処理容器1の圧力は350mmHg以下で設定されるが、通常は50mmHg以下が望ましい。なお、処理容器1の内容積は約50L(リットル)で、粒子5は一回の処理の際に、25L程度まで投入可能である。減圧後に、真空ポンプ用バルブ11を閉じる。同時に、表面処理化合物は、薬液容器9において加熱ヒータ10により80℃程度で加熱される。処理容器1は空圧駆動装置15により揺動を開始するが、約0.1Hzのゆっくりした揺動が適する。その後、薬液容器用バルブ8を開き、表面処理気体の一例としてのOTS蒸気を、薬液容器9から、真空配管7a,7及び気体導入部の一例として機能するフレキシブル配管6を経由して処理容器1内に供給される。
【0054】
このように処理容器1が空圧駆動装置15により揺動されかつ処理容器1内に表面処理気体が供給されることにより、表面処理気体の雰囲気中において、粒子5が処理容器1内で往復移動して攪拌翼4を揺動させ、攪拌翼4の端部4aから粒子5を処理容器1の内壁底面1aの平面上に平面状に落下するように制御して、表面処理を行う。粒子5の種類に依存するが、概ね、処理に要する時間は約10分間以内である。
【0055】
なお、空圧アームを適用した空圧駆動装置15の制御における波形は、基本的にはサイン曲線であるが、これに限定しない。矩形波、あるいはV字波形も可能である。ただし、ラッシュを防止するために複雑な揺動運動が最適であることは言うまでも無い。表面処理後の粒子5は、粒子排出口14から取り出す。
【0056】
ここで、攪拌翼4の終端傾斜角度φは、通常は20度〜30度での設定が多い。粒子5への落下ダメージも少なく、攪拌翼4の通過後の平面状での表面処理にも適する。
【0057】
また、本実施例1では処理容器1は50Lの内容積のものを使用しているが、高さが20cmである。この場合に、攪拌翼4の長さLは10cmを用いた。攪拌翼回転軸部2bにはボールベアリング式蝶番を利用した構成であり、攪拌翼4はスムーズに稼動した。ただ、攪拌翼4の長さLを5cm以下にした場合には、稼動が不十分であったりラッシュしたりするケースが多かった。使用した粒子5は、比重が約1.5、平均粒径が150μmである。
【0058】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明にかかる間欠型揺動式粒子表面処理装置および方法は、粒子と表面処理化合物を収めた処理容器を揺動させ、攪拌翼と攪拌翼を稼動させるための攪拌翼回転軸部を備え、処理容器を揺動させることにより粒子が移動することによって攪拌翼が稼動し、攪拌翼の端部から粒子が平面状に落下するよう構成して、処理装置の気密性を向上させ、揺動の往復運動の双方向にて粒子が表面処理化合物と効率的に接することにより、効率的で高品質な表面処理が可能とすることができるものであり、粉体及び粒状物の表面処理装置および方法として有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 処理容器
1a 内壁底面
2a 揺動回転軸部
2b 攪拌翼回転軸部
3 揺動回転軸支持部
4 攪拌翼
5 粒子
6 フレキシブル配管
7 真空配管
8 薬液容器用バルブ
9 薬液容器
10 加熱ヒータ
11 真空ポンプ用バルブ
12 真空ポンプ
13 粒子投入口
14 粒子排出口
15 空圧駆動装置
30 揺動支持部
40 ストッパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理気体の雰囲気中において、粒子を収納可能な処理空間を有する容器と、
前記容器を揺動可能に支持し、前記粒子を前記容器の内部で往復移動可能とする揺動支持部と、
前記容器の内壁底面に設けられた攪拌翼回転軸部を軸心として揺動自在な攪拌翼とを備えて、
前記容器を揺動することにより前記粒子を往復移動させると前記攪拌翼が揺動し、前記攪拌翼の端部から前記粒子を前記容器の前記内壁底面の平面上に落下させて粒子表面処理を行うことを特徴とする粒子表面処理装置。
【請求項2】
前記揺動支持部は、
前記容器に設けた揺動回転軸部と、
前記揺動回転軸部を回転自在に支持する支持部とを備える、請求項1に記載の粒子表面処理装置。
【請求項3】
前記容器の揺動に伴う前記粒子の往復移動時に、前記粒子の重力で前記攪拌翼を前記攪拌翼回転軸部の軸心周りに回転させる、請求項1又は2に記載の粒子表面処理装置。
【請求項4】
前記容器は、前記容器の前記処理空間内に前記表面処理気体を導入する気体導入部を備える、請求項1〜3のいずれか1つに記載の粒子表面処理装置。
【請求項5】
前記粒子は、砂である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の粒子表面処理装置。
【請求項6】
前記攪拌翼の終端傾斜角度φと、前記容器の揺動傾斜角度θとにおいて、前記容器内で前記粒子が前記揺動傾斜角度θにより移動開始後に、前記粒子が前記攪拌翼を稼動させる時点での前記揺動傾斜角度θが前記終端傾斜角度φより小である請求項1〜5のいずれか1つに記載の粒子表面処理装置。
【請求項7】
前記表面処理気体の表面処理化合物として、クロロシラン系化合物を使用する請求項1〜6のいずれか1つに記載の粒子表面処理装置。
【請求項8】
表面処理気体の雰囲気中において、粒子を処理空間内に収納する容器を揺動部を支点に揺動させて前記粒子を前記容器の内部で往復移動させ、前記容器の揺動により、前記容器の内壁底面に設けられた攪拌翼回転軸部の軸心周りに攪拌翼を揺動させ、前記攪拌翼の端部から前記粒子を前記容器の前記内壁底面の平面上に落下させて粒子表面処理を行う、粒子表面処理方法。
【請求項1】
表面処理気体の雰囲気中において、粒子を収納可能な処理空間を有する容器と、
前記容器を揺動可能に支持し、前記粒子を前記容器の内部で往復移動可能とする揺動支持部と、
前記容器の内壁底面に設けられた攪拌翼回転軸部を軸心として揺動自在な攪拌翼とを備えて、
前記容器を揺動することにより前記粒子を往復移動させると前記攪拌翼が揺動し、前記攪拌翼の端部から前記粒子を前記容器の前記内壁底面の平面上に落下させて粒子表面処理を行うことを特徴とする粒子表面処理装置。
【請求項2】
前記揺動支持部は、
前記容器に設けた揺動回転軸部と、
前記揺動回転軸部を回転自在に支持する支持部とを備える、請求項1に記載の粒子表面処理装置。
【請求項3】
前記容器の揺動に伴う前記粒子の往復移動時に、前記粒子の重力で前記攪拌翼を前記攪拌翼回転軸部の軸心周りに回転させる、請求項1又は2に記載の粒子表面処理装置。
【請求項4】
前記容器は、前記容器の前記処理空間内に前記表面処理気体を導入する気体導入部を備える、請求項1〜3のいずれか1つに記載の粒子表面処理装置。
【請求項5】
前記粒子は、砂である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の粒子表面処理装置。
【請求項6】
前記攪拌翼の終端傾斜角度φと、前記容器の揺動傾斜角度θとにおいて、前記容器内で前記粒子が前記揺動傾斜角度θにより移動開始後に、前記粒子が前記攪拌翼を稼動させる時点での前記揺動傾斜角度θが前記終端傾斜角度φより小である請求項1〜5のいずれか1つに記載の粒子表面処理装置。
【請求項7】
前記表面処理気体の表面処理化合物として、クロロシラン系化合物を使用する請求項1〜6のいずれか1つに記載の粒子表面処理装置。
【請求項8】
表面処理気体の雰囲気中において、粒子を処理空間内に収納する容器を揺動部を支点に揺動させて前記粒子を前記容器の内部で往復移動させ、前記容器の揺動により、前記容器の内壁底面に設けられた攪拌翼回転軸部の軸心周りに攪拌翼を揺動させ、前記攪拌翼の端部から前記粒子を前記容器の前記内壁底面の平面上に落下させて粒子表面処理を行う、粒子表面処理方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−699(P2013−699A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136403(P2011−136403)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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