説明

間質性膀胱炎の治療用細胞調節性ペプチド

本方法及び組成物は、膀胱の疾病の治療に関する。特に、該方法は、間質性膀胱炎及び関連する疾病の治療を提供する。該方法は、間質性膀胱炎に関連する様々な病徴に影響する治療を含み、ヒスタミン放出の低減、P物質発現調節、神経成長因子発現の調節、様々なサイトカインのレベルの調節、及び尿/血液関門の統合性の維持を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2.技術分野
[0002] 本発明は、膀胱疾病の治療方法及び治療用組成物に一般的に関する。特に、間質性膀胱炎及びそれに関連する病気の治療に関する。
【0002】
1.関連出願へのクロスリファレンス
[0001] 本出願は、2002年11月15日に出願された米国仮出願第60/426,684号及び2003年5月15日に出願された米国仮出願第60/470,839号の利益を主張する。両出願は、本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0003】
3.背景技術
[0003] 膀胱は、尿を貯蔵し、尿組成を維持し、そして適切な間隔で尿を排出するために使用される膜状の筋肉の臓器である。膀胱の構造は、上皮、粘膜固有層、筋固有層(つまり、排尿筋)、及び膀胱周囲柔組織(perivesical soft tissue)を含む4つの基本層から構成される。上皮は、膀胱の内側を覆い、そして尿と接触しており、移行上皮又は尿路上皮と呼ばれ、そして血液と尿との間の化学的勾配を維持するように機能する。上皮の下に沿って粘膜固有層、つまり結合組織と血管の層が存在する。薄く、しばしば不連続である平滑筋の層、つまり粘膜筋板は、粘膜固有層内に横たわっている。この平滑筋の表層は、膀胱の壁を形成する厚い平滑筋束からなる深い筋層である筋固有層、つまり排尿筋とは区別される。膀胱周囲柔組織は、膀胱の外層を含み、そして脂肪、繊維性組織、及び血管からなる。膀胱機能不全は、一般的であり、そして患った患者を衰弱させる。
【0004】
[0004] 間質性膀胱炎(IC)は、原因不明の膀胱疾病である。臨床症状は、慢性頻尿、尿意切迫、夜間頻尿、及び膀胱/骨盤痛を含む。主に中年女性がかかると通常考えられているが、ICは両方の性別で全ての年齢で発症する。
【0005】
[0005] 膀胱鏡検査試験に基いて、二つのICの型が文献に記載される。非潰瘍性ICは、最も一般的な形態であり、膀胱の水圧拡張の際にグロメルレーション(glomerulations)(つまり、点状出血)が存在することにより特徴付けられる。潰瘍性ICは、患者の約10%に見られ、そして膀胱壁上の星型粘膜潰瘍形成であるヒューナー潰瘍(Hunner's ulcers)の存在により定義される。かなりの数のIC患者は、膀胱鏡検査試験の際に症状を示さず、そして膀胱鏡検査による重篤度と、臨床症状との間の信頼できる相関はない。
【0006】
[0006] 組織病理学的兆候は、上皮細胞の剥離、粘膜固有層における目立った白血球及び血漿細胞の浸潤、血管鬱血、及び排尿筋の繊維症である(MacDermott, J.P. et al., J. Urol. 145: 274-278 (1991))。これらの特徴は、膿尿症及び低膀胱容量と診断された患者の小サブグループに限られているようだ。好中球は、潰瘍形成と関連しているときのみ見られる(Lynes, W. L. et al., Amer. J. Surg. Pathol. 14: 969-976 (1990))。マクロファージは、炎症部位にはめったに存在せず、炎症性浸潤は、排尿筋層ではめったに起こらない。臨床症状を示す多くの患者において、慢性炎症は存在しない。この多様で一致しない組織病理のため、ICの診断は、あらゆる兆候を使用することもある。
【0007】
[0007] ICの原因については、上皮の統合性の疾患、感染、神経性炎症、マスト細胞活性化、及び自己免疫などを含む様々な説が存在する。幾つかの研究により、IC患者において上皮の透過性が増大していると示唆された(例えば、Lavelle, J. P. et al., Am. J. Physiol. Renal. Physiol. 278: F540-F553 (2000)を参照のこと)。発症した膀胱は、粘膜グリコサミノグリカンの質的変化、尿路上皮の超微細構造の欠陥、及び尿素輸送の増大を示す。ICを患う患者の大部分において、KCl溶液を膀胱内注入した際、痛み及び尿意切迫が生じ、このことは上皮構造の疾患を示唆している。同様に、膀胱に注入され、その後に排出される尿素溶液は、コントロール群に対してIC患者において尿素濃度が低く、このことは患部における粘膜透過性の増大を示している。
【0008】
[0008] 感染はまた、原因菌を疑うが、生検サンプルのPCR分析により、病原菌の存在がないことが証明された(Keay, S. et al., J. Urol. 159: 280-283(1998))。さらに、ICを患う膀胱における細菌、菌類、及びウイルスの分析は、患っていない患者との違いを検出しない(Duncan, J.L. et al., Urology 49: 48-51(1997))。現在では、病原についての証拠はない。
【0009】
[0009] 幾つかの研究により、神経ペプチドP物質及びその受容体であるニューロキニン1受容体(NK-1)に関わる神経性炎症のICにおける役割が示唆された。知覚神経の刺激は、P物質の放出をもたらし、マスト細胞による炎症調節物質及びヒスタミンの放出を引き起こすことが知られている。ICの動物モデルにおいて、P物質のレベルは、膀胱及び尿において上昇し(Hammond, T.G. et al., Ann J. Physiol. Renal Physiol 278: F440-F451(2000))、そして生検は、P物質を含む神経線維の密度増加を示した。P物質の膀胱内投与は、マウスに膀胱炎症を引き起こすが、一方知覚繊維の脱感作は、膀胱過反射を低減した。NK-1受容体アンタゴニストは、P物質媒介性の膀胱炎を抑制し又は低減し、そして膀胱炎症は、NK-1受容体ノックアウトマウスにおいて低減された(Saban, R. et al., Amer. J. Path. 156: 775-780(2000))。さらにICを患う患者の膀胱生検において見られるNK-1受容体の発現上昇により、P物質経路の関与について示唆される(Marchand, J.E. et al., Br. J. Urol. 81: 224-228(1998))。
【0010】
[0010] P物質の推定の役割は、ICへと導く生理過程にマスト細胞を関与させることである。IC膀胱は、排尿筋及び粘膜下層における増加したマスト細胞の数を有し、そして増加したマスト細胞は、P物質を含む知覚神経の近傍に見られる。肥満細胞症は、IC患者の30〜65%において存在し、その間ヒスタミン及びトリプターゼのレベルが上昇する。興味深いことに、マスト細胞欠損マウスKit(W)/Kit(W-v)では、実験的に誘導される膀胱炎症は生じない(Saban, R. et al., Physiol. Genomics 10: 35-43(2001); Saban, R, et al., Am. J. Physiol. Renal Physiol. 282: F202-F210(2002))。感覚ペプチドと連動したマスト細胞数の増加は、マスト細胞媒介性の免疫応答を導くことが理論付けられる。しかしながら、マスト細胞が、排尿筋層に主に存在することは、ICの上皮の障害状態を説明しない。それ以上に、ごく少数の炎症細胞しか、排尿筋層にみつからない。
【0011】
[0011] ICと、紅斑性狼瘡、アレルギー性喘息、多発性硬化症、炎症性腸疾病、及びシューグレン症候群などの自己免疫疾病との疫学的関係のため、自己免疫の原因が、ICの原因と疑われた。これらの自己免疫疾病は、ICを患う患者において重複して見られる。しかしながら、自己免疫疾病、紅斑性狼瘡、原発性胆汁性肝硬変、又は多発性硬化症とは対照的に、IC患者の末梢血におけるリンパ球フェノタイプ(例えばCD4/CD8細胞比など)は、通常である(MacDermott, J.P. et al., J. Urol. 145: 274-278(1991))。膀胱生検の組織学的試験は、リンパ球浸潤の増加を示すが、膀胱の様々な構造に存在するリンパ球のタイプとは相反している(MacDermott et al., supra.; Hanno, P. et al., J. Urol. 143: 278-281(1990))。初期の研究は、膀胱特異的循環抗体の存在を示したが、後の結果は、相反するデーターを示した。それにより、これらの液性指標が、組織損傷の直接的な結果はないことを示した。結果として、免疫系の失調とICとの間の明確な関わりは、確立されなかった。
【0012】
[0012] リンパ球浸潤の存在とマスト細胞数の増加は、ICにおける炎症ネットワークのなんらかの役割を示唆する。培養、活性化マスト細胞から得られた調整メディウムは、尿路上皮細胞系列において、サイトカイン、TNF-α、IL-1b、及びIL-8、並びに接着分子ICAM-1の合成を促すことができる(Batler, R.A. et al., J.Urol. 168: 819-825(2002))。他方、炎症メディエーターは、ICと診断された患者の尿において有意に上昇していない。サイトカインIL-4、IL-10、IL-12、TNF-α、hGM-CSF、IL-1b、及びIFN-γ;プロスタグランジンE2、D2、及びF2a;並びにトロンボキサンの尿中濃度は、通常の人と違わなかった(Felson, D. et al., J. Urol. 152: 355-361(1994); Peters, K.M. Adult Urology 54: 450-453(1990))。活性ICを患う患者の何人かは、サイトカインIL-2、IL-6、及びIL-8レベルの上昇を示すが、主要炎症性サイトカインTNF-α又はIFN-γレベルの上昇を示さない(上記Peters, K.M.,)。排尿筋層において炎症性浸潤を欠くマスト細胞が優勢であり、そしてマクロファージが全体的に存在しないことは、炎症性カスケードとICとの間の関係を複雑にする。興味深いことに、ICの症状を改善する効力をいくらか示すBCG(バシリ・カルメット-グエリン(bacilli Calmette-Guerin))は、膀胱内注入の後に、尿中のIL-1、IL-2、IFN-γ、及びTNF-αのレベルを上昇させるということが知られている(上記Peters, K.M. et al.,;Bohle, A. J. Urol 144: 59-64))を参照のこと。
【0013】
[0013] 疾病の病原が分からないことから、ICの治療は、ほとんどなく、かつ変化する。上に記されたようにBCGは、IC症状の治療にいくらかの効力を示す。ペントサン・多硫酸ナトリウム(エルミロン(商標))、ヘパリン誘導体は、損傷膀胱上皮を修復を手助けし、そして保護すると信じられているが、マスト細胞からのヒスタミン放出も阻害する(Chiang, G. et al., J. Urol. 164(6): 2119-2125(2000))。ジメチルスルホキシド(DMSO)は、膀胱の痛みを和らげ、そして抗炎症効果を有すると示唆される。免疫抑制剤シクロスポリン(Forsell, T. et al., J. Urol. 155: 1591-1593(1996))、及びメトトレキセート(Moran, P.A. et al., Aust N Z J Obstet Gynaecol. 39: 468-471(1999))は、IC症状を改善する一定ではない有効性を提供する。ICに対する標準的な有効治療法がないので、当該技術分野において、別の有効な治療上の処置についての必要性が存在する。従って、本発明は、IC治療の治療方法及びIC治療用組成物を提供する。
【発明の開示】
【0014】
4.要約
[0014] 本発明は、膀胱疾患、特に間質性膀胱炎(IC)及び関連する病気の治療方法及び治療用組成物に関する。ペプチド組成物は、多くの生理的活性を有することが知られており、該生理活性は、例えば免疫応答を調節し、炎症性サイトカインのレベルを調節し、そしてp38MAPキナーゼ、JNK、TRAF、及びIRAKにより媒介されるシグナル・トランスダクション経路を制御することを含む。オリゴペプチドの様々な性質は、ICの種々の病徴に作用することにおよび、例えば、ヒスタミン放出の阻害、P物質のレベルの変動、神経成長因子(NGF)のレベルの調節、及びサイトカインTNF-α、IFN-γ、IL-6、及びIL-12のレベルの調節などを含む。該組成物はまた、多核白血球、T細胞、及びマスト細胞の患部組織への浸潤を低減し、そして膀胱の尿/血液関門を維持又は修復すると示される。
【0015】
[0015] 従って、ICの治療のための方法であって、RDP58オリゴヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を発症対象に投与することを含む方法が提供される。ICの急性及び/又は慢性の形態が、該組成物により治療されうる。
【0016】
[0016] RDP58オリゴヌクレオチドの多様な効果のため、本明細書中に提供される方法は、ICに関連する1以上の病徴であって、その多くが該病気の進行に寄与すると信じられている病徴を調節、好ましくは改善することに関する。一般的な方法は、ICにかかった組織又は細胞を、医薬有効量のRDP58組成物と接触させて、疾病徴候を改善することを含む。
【0017】
[0017] 一の態様では、マスト細胞を、医薬有効量のRDP58組成物と接触させて、疾病にかかった組織又は細胞においてヒスタミン・レベルを抑制又は低減する。
【0018】
[0018] 別の態様では、疾病にかかった組織又は細胞を、医薬有効量のオリゴペプチドと接触させて、P物質レベルを低減する。
【0019】
[0019] さらなる態様では、疾病にかかった組織又は細胞を、医薬有効量のオリゴペプチドと接触させて、NGFレベルを低減する。
【0020】
[0020] さらに、疾病にかかった組織又は細胞を、医薬有効量のオリゴペプチドと接触させて、サイトカインTNF-α、IFN-γ、IL-6、及びIL-12のレベルを調節する。
【0021】
[0021] 尿/血液関門の統合性は、医薬有効量の対象組成物で治療することにより、維持又は修復されうる。オリゴペプチドは、膀胱の透過性の劣化を制限し、そして慢性的な病気において、膀胱の透過性を通常の膀胱の透過性へと回復させる。
【0022】
[0022] RDP58の組成物は、IC又は関連する病気の治療に有効な別の薬剤を使用することを含む。組合せ治療は、ステロイド、免疫抑制剤、三環系抗うつ薬、硫酸化多糖類、DMSO、カプサイシン、抗ヒスタミン剤、又はそれらの混合体の使用を含む。
【0023】
[0023] RDP58オリゴペプチド及び医薬として許容される担体を含む様々な医薬組成物が、治療のために提供される。該担体は、発症した対象、組織又は細胞に投与するために賦形剤又は希釈剤を含み、特に膀胱内デリバリーのための希釈剤を含む。
【0024】
[0024] オリゴペプチド又は所望のペプチドをコードする核酸の直接適用又は投与を含む都合の良い方法のいずれかによって、発症した組織又は細胞へとペプチドが投与されうる。対象組成物を膀胱内注入することが好ましい。或いは、ペプチドを膀胱へデリバリーする経路を介して、ペプチドは間接的に投与される。ここで、該投与は静脈内又は経皮投与を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
6.詳細な説明
6.1 間質性膀胱炎の治療
[0037] 本発明は、間質性膀胱炎(IC)及び関連する病気の治療方法及び治療用組成物に関する。組成物は、PCT公報WO 98/46633及び同時係属中の米国特許出願第09/028,083号、及び第08/838,916号で開示される。これらの文献の全ては、本明細書中に援用される。免疫応答を調節しそして炎症性サイトカインの産生を阻害すると記載されるオリゴペプチドは、p38MAPキナーゼ、JNK、TRAF、及びIRAKにより媒介される細胞シグナル経路に影響すると示された。これらの経路を介したシグナルは、多様な疾病状態のセットと関連する。RDP58ペプチドの強力な生理活性が、ICの様々な病徴を調節する性質を有し、それにより多面的な病気を治療する治療用薬剤を提供すると本明細書中で示される。
【0026】
[0038] 本明細書中で使用されるとき、「間質性膀胱炎」又は「IC」は、間質性膀胱炎の1以上の病徴により特徴付けられる疾患、疾病、又は病気を指す。臨床症状(例えば、頻尿及び尿意切迫、夜間頻尿、及び膀胱/骨盤痛);診断兆候(例えば、KCl溶液の注入に対する応答、 水圧拡張の際の点状出血;ヒューナー潰瘍の存在)、及び組織病理学的兆候(例えばリンパ球浸潤、マスト細胞数の増大、及び上皮構造(例えば膀胱透過性)の変化)を含む。別の病徴は、非限定的にP物質、IL-2、IL-6、IL-8、グリコプロテイン51、抗増殖因子、神経成長因子(NGF);ヒスタミン、及びその他(例えば、Erickson, D. R., Urology 57 (Supplement 6A) : 15-21 (2001)、該文献は、本明細書中に援用される)を含む疾病マーカーの発現又は存在の変化である。ICの指標として1の病徴が使用されうるが、好ましくは1以上の病徴が使用され、さらに好ましくは、臨床症状、組織病理的徴候、及び分子/生物化学マーカーの組合せを含む病徴の組合せが使用される。
【0027】
[0039] 本発明のペプチド又はオリゴペプチドは、急性及び慢性両方のICの動物モデルにおける様々な病徴を調節し、好ましくは改善することが見つかった。改善とは、疾病状態の様々な病徴の変化に反映される疾病状態から良くなることである。RDP58ペプチドが、炎症性サイトカインのレベル、特に発症した膀胱においてTNF-α及びIFN-γの発現を変え;マスト細胞からのヒスタミン放出を低減し;P物質ペプチドの発現に影響し;そして神経成長因子(NGF)の発現に影響することができることが示された。組織学上のレベルにおいて、RDP58ペプチドでの処理は、多形核球(PMN)細胞、T細胞、及びマスト細胞による浸潤を低減し;ICに関連する浮腫を改善し;そして膀胱における血液/尿関門の劣化を低減又は制限する。
【0028】
[0040] 従って、本発明は、RDP58オリゴペプチドを含む治療有効量の組成物を発症した対象に投与することによるICの治療方法を提供する。この治療は、急性IC及び慢性ICの治療でありうる。急性ICは、マスト細胞、好中球、及びマクロファージの浸潤と関連し、一方T細胞の浸潤は、通常慢性病態と関連する。本明細書中に開示されるように、RDP58ペプチドが急性膀胱炎のモデルにおける多形核細胞及びマスト細胞の浸潤を制限することが見つかった。慢性膀胱炎について、この対象のペプチドは、CD3又はCD45陽性細胞の存在により測定されるとき、発症組織におけるT細胞の浸潤を低減することができる。急性及び慢性病態のこれらの記載は、オリゴペプチドにより治療できる病気について制限することを意味しないが、疾病状態を区別する際に、当該技術分野に周知である知識の状態を単純に反映していることは理解されるべきである。
【0029】
[0041] 該ペプチドは、ICに関連する1以上の病徴を調節し、そして好ましくは改善するためにも使用される。疾病にかかった組織又は細胞は、ICの病徴を調節又は改善するために十分な量でRDP58オリゴペプチドを含む組成物の治療有効量と接触される。従って、1の態様では、ヒスタミンの放出又はプロテオグリカン及びセリン・プロテアーゼなどの別のマスト細胞顆粒成分の放出により指標されるICにおけるマスト細胞活性化を低減又は阻害するために、該ペプチドが使用される。マスト細胞の活性化に続き、ケモカイン、サイトカイン、及び脂質メディエーター(例えばプロスタグランジン及びロイコトリエン)の合成が起こり、それらは、さらなるサイトカイン及びケモカインの放出並びに好塩基球、好酸球、及びマクロファージなどの炎症細胞のリクルートを促進することにより慢性炎症に寄与する。肥満細胞症は、ICにおいて観察され、そして実験的に誘導された膀胱炎の重篤度は、マスト細胞欠損マウスにおいて低減される(Bjorling, D. E. , J Urol. 162 (1) : 231-236 (1999))。本明細書中に示されるように、RDP58ペプチドは、マスト細胞からのヒスタミン放出レベルを低減することができ、そしてICにかかった組織に存在するマスト細胞の数を低減することもできる。
【0030】
[0042] 別の態様では、RDP58ペプチドは、ICにかかった組織又は細胞におけるP物質のレベルを低減するために使用される。P物質は、膀胱壁から恒常的に放出される(Saban, R. et al., Br. J. Urol. 79: 516-524 (1997))。ICにかかった膀胱において、求心性の神経末端から放出されるとき、P物質は、マスト細胞の活性化及びヒスタミン放出を引き起こすと信じられており、それにより疾病状態を誘導し又は悪化させる。次に、マスト細胞の脱顆粒は、P物質を放出するための知覚C繊維を活性化することができ、マスト細胞の継続した活性化の正のフィードバックのループを作り出す(Suzuki, R. et al., J. Immunol. 163: 2410-2415 (1999))。P物質は、その結合及びニューロキニン受容体の活性化を通した侵害受容経路におけるメディエーターであり、そして一般にICと関連する膀胱/骨盤痛に寄与することもある。従って、さらなる実施態様では、対象ペプチドの使用により得られるP物質レベルの低下は、疾病に付随する痛みを低減する点で利点があることもある。
【0031】
[0043] RDP58ペプチドは、ICにかかった組織又は細胞において、神経成長因子(NGF)のレベル又は発現を低減するためにも使用される。NGFレベルは、幾つかの膀胱の病気、例えば特発性神経性尿意促迫(idiopathic sensory urgency)及びICにおいて増大する(Lowe, E. M. et al., Br. J. Urol. 79 (4): 572-527 (1997))。神経成長因子は、求心性神経に作用し、そして膀胱活動過剰を引き起こす。これはICと定義される一群の病気における一つの症状である。付け加えて、NGFは、侵害受容経路の感受性を増大し、それにより疾病状態における痛みに寄与する(上記Loweを参照のこと)。P物質のレベルの低減の効果と同様に、対象ペプチドの使用によって得られるNGFの低減は、痛みを低減するメリットを有することもある。
【0032】
[0044] さらなる態様では、RDP58ペプチドは、IC患部組織又は細胞における様々なサイトカイン、特に、TNF-α、IFN-γ、IL-6、及びIL-12のレベルを低減するため、又は発現を阻害するために使用される。IFN-γと共に、TNF-αは、鍵となる炎症性サイトカインであり、炎症応答の誘発及び伝播に関与する。これらのサイトカインの産生は、マクロファージの活性化を引き起こし、これは次に前炎症性サイトカイン、例えばIL-1;TNF-α;ケモカイン、例えばIL-8;並びにメディエーター、例えばIL-6、IL-12、及びIL-18を産生する。サイトカイン、ケモカイン、及び脂質メディエーターのこれらの相互のネットワークは、Tリンパ球及びマクロファージのさらなる活性化によって、並びにさらなる炎症性メディエーターの分泌をもたらす血液感染エフェクター細胞のリクルートによって、炎症性カスケードを増幅し、そして最終的に組織損傷を導く。IL-6及びIL-12は、組織損傷に対する液性応答を誘発することにより炎症性応答に関与する。
【0033】
[0045] さらなる態様では、RDP58ペプチドをICにかかる膀胱において尿/血液関門を維持又は修復するために使用する。膀胱炎を患う膀胱の上皮は、通常の対象との構造的及び分子的違いを示し、そしてICを患う患者において注入された尿又は糖に対する粘膜透過性により証拠付けられるように、上皮の障害された透過性を説明しうる(例えば、Erickson, D. R. et al., J. Urol. 164 (2): 419-422 (2000)を参照のこと)。粘膜裏打ち層の崩壊及び対応する尿/血液関門の疾患は、IC患者の尿における血液の存在によりさらに指標される。本明細書中で、RDP58ペプチドでの処理は、ICの急性及び慢性モデルの両方において、膀胱の透過性性質を維持又は修復することが示される。
【0034】
[0046] 一般的に、IC、及び関連する病気の治療方法は、医薬有効量の又は治療有効量のRDP58、又はその混合体を患者又は対象に投与することを含む。
【0035】
[0047] 本明細書中で、「治療」は、治療又は予防的処置を意味し、或いは疾病、病態、又は不所望の病気の抑制手段を意味する。治療は、疾病症状が現れる前に及び/又は疾病の臨床病徴又は他の病徴が現われた後に、適切な形態で対象のペプチドを投与し、疾病の重篤度を低減し、疾病の進行を停止し、又は疾病を除去することを含む。疾病の予防は、好ましくは疾病に感受性の高い対象において、病態又は疾病の症状の出現を延長又は遅延することを含む。治療効力は、上記の病徴に基いて計測される。
【0036】
[0048] 治療又は予防として使用するため、RDP58オリゴペプチドは、単独で又は別の治療薬剤と組み合わせて使用されうる。この状況では、使用されるオリゴペプチドは、単一のオリゴペプチド配列であるか、又は本発明の異なるオリゴペプチド配列の混合体であるか、又は以下にさらに記載される本発明のペプチドの天然アナログを含む混合体である。
【0037】
[0049] 疾病状態を治療するために使用される他の治療又は医薬活性薬剤は、RDP58オリゴヌクレオチドでの処理に対する補助剤として使用されうる。ICに関して、オリゴペプチドと組み合わせて有用でありうる薬剤は、例として非限定的に、ステロイド(例えば、デキサメタソンなど)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、メトトレキセートなど);三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、ドキセピン);硫酸多糖(例えば、ペントサン・ポリ硫酸ナトリウム);抗ヒスタミン(例えば、ヒドロキシジン、シメチジンなど);DMSO;及びカプサイシン、C-繊維求心ニューロトキシン(Fagerli, J. , Can J Urol. 6 (2): 737-744 (1999))を含む。
【0038】
[0050] 膀胱炎の原因が病原体である場合、本発明のペプチドは、病原体を除去し又は殺傷することに向けられる薬剤と伴に使用されうる。該薬剤は、抗生物質、抗真菌剤、抗原虫剤、及び抗ウイルス剤を含み、これらは当該技術分野に周知である。これらの薬剤は、本明細書中に記載されるペプチドでの治療前に、治療と同時に、又は治療に続いて使用されうる。
【0039】
[0051] 上での記載は、ICの治療に関しているが、本方法及び組成物は、ICについて上で記載される1以上の病徴により特徴付けられる非間質性膀胱炎の治療に有用である。非間質性膀胱炎は、例として、放射線膀胱炎、細菌性膀胱炎、及び化学性膀胱炎を含む。本明細書中で使用されるとき、放射線膀胱炎は、膀胱が原発性尿路上皮新生物又は他の骨盤(例えば前立腺、膀胱、結腸/直腸)の悪性腫瘍の外部又は腔内放射線治療において使用される細胞障害量の放射線、例えば電離放射線(例えばX線及びγ線)に晒されることから生じる膀胱炎のことを指す。細菌性膀胱炎は、膀胱及び/又は尿路の細菌感染から発症する膀胱炎を指す。病原因子として疑われる病原細菌は、E.コリ(E.coli)、スタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、クレブシエラ・spp(Klebsiella spp)、又は腸球菌(Enterococci)を含む。化学性膀胱炎は、膀胱が毒性又は刺激性化学物質に晒されることから生じる膀胱炎を指す。化学性膀胱炎の例は、トリエチレンチオホスホールアミド、シクロホスファミド、マイトマイシン-C、アドリアマイシン、及びドキソルビシン及びそのアナログ・バルルビシンなどの化学治療薬剤の膀胱内注入又は膀胱内移植による化学治療を行っている膀胱癌患者において見られる。
【0040】
6.2 ペプチド/オリゴペプチド組成物。
[0052] ICを治療するために適したRDP58ペプチド組成物は、ペプチド、ポリペプチド、又はオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1を含む。これらは、PCT公報WO 98/46633及び共係属出願である米国特許出願第09/028,083号及び第08/838,916号に記載されており、これらは明確に本明細書中に援用される。該ペプチドは該文献中で、リンパ球細胞の細胞障害性活性を抑制し、炎症性サイトカインの産生、及びこれらのサイトカインに関連する炎症性応答を阻害し、ヘムを含む酵素の活性を阻害し、そして自己免疫疾病の進行の危険性を有する哺乳動物において、自己免疫疾病の開始を遅延することができるという点で特徴付けられる。
【0041】
[0053] RDP58ペプチドのコア配列は、3〜4の疎水性アミノ酸、特に3の疎水性アミノ酸で離された2個の塩基性アミノ酸を含み、特にN-末端が塩基性アミノ酸である場合が好ましい。好ましくは、C-末端アミノ酸が芳香族アミノ酸、特にチロシンである。特に関心が高いものは、少なくとも1のオリゴペプチド・コアの末端アミノ酸が、オリゴペプチド末端アミノ酸である場合であり、該ペプチドは、該化合物のモノマー又はオリゴマーの形態である。
【0042】
[0054] 好ましくは、本明細書中に開示される組成物及び方法において使用されるRDP58ペプチドは、以下の配列:
B-X-X-X-B-X-X-X-J-Tyr
[配列中、Bは塩基性アミノ酸、好ましくはLys又はArgであり、特に少なくとも1の位置で、好ましくは両方の位置でArgであり;
Jは、Gly、B、又は5〜6個の炭素原子の脂肪族疎水性アミノ酸であり、特にGly又はBであり;そして
Xは、脂肪族又は芳香族アミノ酸である]
を有するオリゴペプチドを含む。一の実施態様では、少なくとも3個のXアミノ酸残基は、同じ非極性脂肪族アミノ酸であり、好ましくは、少なくとも4個は、同じ非極性脂肪族アミノ酸であり、より好ましくは、少なくとも5個のアミノ酸は、同じ非極性脂肪族アミノ酸であり、そして最も好ましくは、全てのXが同じ非極性脂肪族アミノ酸である。好ましい実施態様では、非極性脂肪族アミノ酸は、5〜6個の炭素原子であり、特に6個の炭素原子であり、特に非極性脂肪族アミノ酸であるVal、Ile、Leu、及びnLである。こうして、いくつかの実施態様では、Xは、荷電脂肪族アミノ酸以外のアミノ酸のいずれかであり、そして好ましくは、極性脂肪族アミノ酸以外のアミノ酸のいずれかである。
【0043】
[0055] B-X-X-X-B-X-X-X-J-Tyrのペプチド配列において、Xにより示される6個のアミノ酸のうち、好ましくは少なくとも3は、5〜6個の炭素原子の脂肪族アミノ酸であり、より好ましくは、少なくとも4は、5〜6個の炭素原子の脂肪族アミノ酸であり、最も好ましくは、少なくとも5は、5〜6個の炭素原子、より好ましくは6個炭素原子の脂肪族アミノ酸である。好ましい実施態様において、脂肪族アミノ酸は、5〜6個の炭素原子の非極性脂肪族アミノ酸であり、特にVal、Ile、Leu、及びnLである。別のアミノ酸は、別の非荷電脂肪族アミノ酸、特に非極性脂肪族アミノ酸又は芳香族アミノ酸でありうる。
【0044】
[0056] 特に関心のある組成物は、以下の配列:
Arg-U-X-X-Arg-X-X-X-J-Tyr
[配列中、U以外の全ての記号は、前に定義された通りであり、Uは、非荷電脂肪族アミノ酸又は芳香族アミノ酸、特に非極性脂肪族アミノ酸又は芳香族アミノ酸を含む]
を有するRDP58ペプチドを含むであろう。
【0045】
[0057] オリゴペプチドのアミノ酸は、L-又はD異性体であり、その結果ペプチドは、1以上〜全部のD立体異性体のアミノ酸を有しうる。さらに、該ペプチドは、対象ペプチドのオリゴマーを含みうるし、特にそのダイマーを含みうるし、又は環構造である環状ペプチドを含みうる。該環状ペプチドは以下にさらに記載される。
【0046】
[0058] 本発明の目的のため、L又はD異性体の立体配置のアミノ酸は、以下のカテゴリーに分類される。
1.脂肪族:
(a) 非極性脂肪族:
Gly、Ala、Val、nL、Ile、Leu
(b) 極性脂肪族:
(1)非荷電:
Cys、Met、Ser、Thr、Asn、Gin
(2)荷電:
Asp、Glu、Lys、Arg
2.芳香族:
Phe、His、Trp、Tyr
ここで、Proは、非極性脂肪族アミノ酸中に含まれることもあるが、通常含まれない。「nL」は、ノルロイシンを表し、ここで非極性脂肪族アミノ酸は、別の異性体で置換されうる。
【0047】
[0059] RDP-58ペプチドの例は、以下を含む。
【表1】

【0048】
[0060] RDP58ペプチドの好ましい実施態様は、Arg-nL-nL-nL-Arg-nL-nL-nL-Gly-Tyrの配列を含む。配列中、nLは、ノルロイシンであり、そしてグリシン以外の全てのアミノ酸は、D立体異性体である。
【0049】
[0061] 別のRDP58ペプチドは、1998年4月10日に出願されたPCT出願番号PCT/US98/07231、1997年4月11日に出願された米国特許出願番号第08/838,916号、及び1998年2月23日に出願された米国特許出願番号第09/028,083号に記載される。これらの文献は、本明細書中に明確にその全てを援用される。本明細書中で使用される「RDP58ペプチド」又は「RDP58オリゴペプチド」は、一般的に、前記ペプチド化合物の全てを包含することを意味する。
【0050】
[0062] さらなる実施態様において、HLAペプチド及びTCRペプチドなどの他の周知ペプチドは、対象RDP58組成物の要素として、対象発明中に代わりに又は付加的に使用される。これらは、HLA-Bσ1-ドメイン、特に75〜84のアミノ酸、及び2以下のアミノ酸が置換されるこの配列の変形体を含む。(例えば、WO95/13288;米国特許第5,723,128号;第5,753,625号;第5,888,512号;第6,162,434号;及び第6,436,903号を参照のこと。これらの文献は、明確に本明細書中に援用される)。そのヒトTCR-α膜貫通領域そのもの、又は2以下の突然変異配列を有する配列からなる配列に基く配列を含む(1995年1月16日に出願されたオーストラリア出願第PN 0589号及びPN 0590を参照のこと。これらは本明細書中に明確に援用される)。これらの配列は、2個の塩基性アミノ酸が、4個の脂肪族疎水性アミノ酸により分離される2個のアミノ酸を含む。しかしながら、ここで該出願は、3〜5個の疎水性アミノ酸も存在しうることを指し示す。突然変異とは、1のアミノ酸を別のアミノ酸に各々置換すること、或いは挿入すること、又は欠失することを意図し、それぞれ1の突然変異として数えられる。一般的に、本明細書中に使用される「ペプチド」又は「オリゴペプチド」は、前述のペプチド化合物、並びにアナログ、誘導体、融合タンパク質などの全てを包含することを意味する。
【0051】
[0063] 対象のペプチドは、当業者に周知の様々な慣用方法において改変されうる。ペプチドの末端アミノ基及び/又はカルボキシル基は、アルキル化、アミド化、又はアシル化により改変されて、エステル、アミド、又は置換アミノ基を提供する。ここで該アルキル又はアシル基は、約1〜30、通常1〜24、好ましくは1〜3又は8〜24、特に12〜18個の炭素原子でありうる。該改変は、慣用の化学合成方法を使用して行われる。ペプチド又はその誘導体は、アセチル化又はメチル化により改変されて、化学的性質、例えば親油性を変化させうる。アシル化の方法、及び特にN末端の遊離アミノ基のアセチル化方法は、当該技術分野に周知である。C末端について、カルボキシル基は、アルコールとのエステル化により改変されうるし、又はアミド化されて、-CONH2、CONHR、又はCONRを形成する。式中、各Rは、炭化水素(Hybroxycarbyl)(1〜6の炭素)である。エステル化及びアミド化の方法は、周知の技術を使用して行われる。エステル化及びアミド化の方法は、周知の技術を使用して行われる。別の改変は、グルタミル及びアスパラギニル残基を対応するグルタミル及びアスパラチル残基へとそれぞれ脱アミノ化すること;プロリン及びリジンを加水分解すること;セリン又はスレオニンの水酸基をリン酸化すること:及びリジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のアミノ基をメチル化することを含む(例えば、T. E. Creighton, Proteins : Structure and Molecular Properties, W. H. Freeman & Co. San Francisco, CA, 1983))。
【0052】
[0064] 別の態様では、ペプチドの1又は両方の末端、通常1の末端は、親油性基で置換されうる。この基は、通常脂肪族又はアラルキルであり、8〜36個、通常8〜24個の炭素原子であり、かつ脂肪族鎖において2個未満のヘテロ原子であり、該ヘテロ原子は、通常酸素、窒素、及び硫黄である。以下にさらに記載されるように、該鎖は、飽和されているか又は不飽和であり、3以下、通常2以下の脂肪族不飽和部位を有する。慣用的に、市販の脂肪族脂肪酸、アルコール、及びアミンが使用されうる。例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、及びミリスチル・アルコール、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、ステアリル・アミン、オレイン酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸などである(例えば米国特許6,225,444号参照のこと。該文献は本明細書中に援用される)。好ましくは、長さにして14〜22個の炭素原子である非分枝状の天然脂肪酸である。別の親油性分子は、グリセリル・脂質及びステロール、例えばコレステロールを含む。親油性の基は、慣用の方法に従って、しばしば支持体上での合成の間、オリゴペプチドを支持体に結合させた部位に基いて、オリゴペプチド上の適切な官能基と反応しうる。オリゴペプチドが、リポソームのルーメンへと導入されうる場合、ペプチド及び試薬を宿主に投与するため、他の治療薬剤と伴に、脂質を結合させることは有用である。親油性の増大は、上皮細胞を通した化合物の輸送を増大することが知られている。それゆえ、そうした化合物を、腸又は血流から周囲の組織へ取り込むことを促進する点で有用である。
【0053】
[0065] さらなる実施態様において、ペプチドのN末端及びC末端のどちらか又は両方は、全体で約100以下、通常全体で約30以下、さらに一般的に約20以下のアミノ酸、しばしば9以下のアミノ酸により延長され、ここで該アミノ酸は、25%未満の、より一般的に20%未満の極性アミノ酸を有し、特に20%未満は荷電アミノ酸である。こうして、いずれの方向における上記配列の伸張は、主に親油性、非荷電のアミノ酸、特に非極性脂肪族アミノ酸及び芳香族アミノ酸で主に行われる。該ペプチドは、Lアミノ酸、Dアミノ酸、又はD及びLアミノ酸の混合体を含みうる。以下に記載されるようにオリゴペプチドが融合又はキメラタンパク質として発現されるとき、アミノ酸伸張の数についての例外が考慮される。
【0054】
[0066] ペプチドは、オリゴマーの形態、特にペプチドのダイマーの形態をとりうる。ダイマーは、ヘッド・トゥ・ヘッド、テイル・トゥ・テイル、又はヘッド・トゥ・テイルであることがあり、ペプチドの約6以下の繰り返しが存在する。オリゴマーは、1以上のD立体異性体のアミノ酸を含みうるし、全てのアミノ酸がD立体異性体であることもある。オリゴマーは、ペプチド間のリンカー配列を含みこともあるし、又は含まないこともある。リンカー配列が使用されるとき、適切なリンカーは、当該技術分野に周知であるように、非荷電のアミノ酸及び(Gly)n、[式中、nは1〜7]、Gly-Ser(例えば、(GS)n、(GSGGS)n、及び(GGGS)n[式中、nは少なくとも1である])、Gly-Ala、Ala-Ser、又は他の可動リンカーを含むリンカーを含む。これらのアミノ酸が比較的構造を有さず、個々のペプチドと細胞標的分子との間の相互作用を許容し、そしてオリゴマーのペプチド間の構造上の動きを制限するので、Gly又はGly-Serのリンカーは使用されうる。アミノ酸以外のリンカーは、オリゴマーペプチドを構築するために使用されうるということは理解されるべきである。
【0055】
[0067] ペプチドは、構造的に制約された形態、例えば約9〜50、通常12〜36のアミノ酸の環状ペプチドなどでありうる。ここで特定化されたアミノ酸以外のアミノ酸は、架橋として存在しうる。こうして、例えば、末端にシステインを加える事により、ジスルフィド架橋の形成が許容されて、環ペプチドを形成する。いくつかの例において、ペプチドを環化するためにアミノ酸以外を使用することもある。官能基を2つ持つ架橋剤は、ペプチドの2以上のアミノ酸を結合する点で有用である。環形成の別の方法は、Chen, S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 5872- 5876 (1992); Wu, T. P. et al., Protein Engineering 6: 471-478 (1993); Anwer, M. K. et al., Int. J. Pep. Protein Res. 36: 392-399 (1990); and Rivera-Baeza, C. et al. Neuropeptides 30: 327-333 (1996)に記載される。全ての文献は、本明細書中に援用される。或いは、構造的に制約されるペプチドは、ペプチドのN末端及びC末端の配列に、二量体化配列を加える事により作られる。ここで、二量体化配列間の相互作用が、環型構造の形成を導く(WO/0166565を参照のこと、該文献は本明細書中に援用される)。別の例では、対象ペプチドは、他のタンパク質への融合タンパク質として発現され、コイルドコイルのループ又はβ-ターン構造などの表面に晒される構造上の制約を受けたディスプレーを骨格に与える。
【0056】
[0068] 特に哺乳動物宿主への投与のための使用目的に左右され、対象ペプチドは、担体分子中に取り込むこと、ペプチドの生物学的利用性を変化し、半減期を延長又は短縮し、様々な組織又は血流に対する分配を制御し、血液構成要素への結合を低減又は亢進することなどを目的として、他の化合物への結合により改変されうる。対象ペプチドは、血液、脳脊髄液、消化液などの生理的条件において分解性であるか又は非分解性である結合により他の構成要素に結合しうる。該ペプチドは、官能基、例えば水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基などが存在するペプチドのいずれの部位で結合されうる。望ましくは、改変は、N末端又はC末端のいずれかでおこる。例えば、対象ペプチドは、共有結合性ポリマー、例えばポリエチレン・グリコール、ポリプロピレン・グリコール、カルボキシメチル・セルロース、デキストラン、ポリビニル・アルコール、ポリビニルピロリジン、ポリプロリン、ポリ(ジビニル-エーテル-コ-マレイン酸無水物)、ポリ(スチレン-c-マレイン酸無水物)などでの共有結合性ポリマーにより改変されうる。水溶性ポリマー、例えばポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリジンは、改変されていない化合物に比較して、結合された化合物の血流からの除去を低減することが知られている。改変は、水性媒体中の可溶性を増大し、そしてペプチドの凝集を低減することもできる。
【0057】
6.3 ペプチド接合体及び融合タンパク質
別の態様では、ペプチドは、好ましくはペプチドの検出及び単離のために、並びに特定の細胞、組織、及び器官にオリゴペプチドを標的又は輸送するために、低分子に結合する。低分子結合体はハプテンを含む。ハプテンは、動物中に導入されたとき、免疫応答を誘導しない物質である。一般的に、ハプテンは、分子量約2kD未満、より好ましくは約1kD未満の低分子である。ハプテンは、低有機分子(例えば、p-ニトロフェノール、ジゴキシン、ヘロイン、コカイン、モルフィン、メスカリン、リゼルギン酸、テトラヒドロカンナビノール、カンナビノール、ステロイド、ペンタミジン、ビオチンなど)を含む。例えば、検出又は精製の目的でハプテンへの結合は、ハプテン特異抗体又は特異結合パートナー、例えばビオチンに結合するアビジンなどと伴に行われる。
【0058】
[0070] 特異的細胞又は組織に対する接合体を標的化する低分子も使用されうる。ビオチン-アビジン複合体により、そうした改変ペプチドの上皮細胞を通した取り込みが増加されることが知られている。ペプチドを糖成分に結合すること、例えばオリゴペプチド上のセリン残基を介し、β-O結合グリコシドを形成するβグリコシドに結合することは、グルコーストランスポーターを介したグリコシド誘導体の輸送を高める(Polt, R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 7144-7118 (1994); Oh et al., Drug Transport and targeting, in Membrane Transporters as Drug Targets, 59-88 (Amidon, G. L. and Sadee, W. eds.), Plenum Press, New York, (1999))。これらの改変の両方のタイプは、本発明の範囲内に包含される。
【0059】
[0071] オリゴペプチドは、検出及び追跡のための付着された様々な標識成分、例えば放射性標識及び蛍光標識などを有しうる。蛍光標識は、非限定的にフルオレセイン、エオシン、アレクサ・フルオール、オレゴン・グリーン、ローダミン・グリーン、テトラメチルローダミン、ローダミン・レッド、テキサス・レッド、クマリン、及びNBDフルオロフォア、QSY7、ダブシル、及びダブシル・クロモフォア、BIODIPY、Cy5などを含む。
【0060】
[0072] 一の態様では、ペプチドは、様々な目的のため様々な別のペプチド又はタンパク質に結合される。ペプチドは、ペプチド又はタンパク質に結合されて、結合に都合の良い官能基、例えば、アミド又は置換アミン形成、例えば還元アミン化のためのアミノ基;チオエーテル又はジスルフィド形成のためのチオール基;アミド形成のためのカルボキシル基などを提供する。特に関心のあるものは、少なくとも2、より一般的に3、及び60以下のリジン基、特に約4〜20、通常6〜18のリジンユニットからなるポリリジンのペプチドであって、多抗原性ペプチドシステム(MAPS)と呼ばれるペプチドであり、ここで対象ペプチドは、リジンアミノ基、一般的に少なくとも約20%、より一般的に少なくとも約50%の利用できるアミノ基に結合して、多ペプチド産物(Butz, S. etal., Pept Res. 7: 20-23 (1994))を提供する。このように、複数の対象ペプチドを有する分子が得られ、ここで該対象ペプチドの配向は、同じ方向であり;実質的にこの結合基は、テイル-トゥ-テイル・ジ-又はオリゴマー化を与える。
【0061】
[0073] 別の態様では、別の天然又は合成ペプチド及びタンパク質は、対象ペプチドに対する抗体を作製するための担体免疫原を提供するために使用されうる。ここで該抗体は、オリゴペプチドを検出するため又は同等の立体構造を有する別のペプチドを同定するための試薬として役に立つ。抗体を産生するための適切な担体は、数ある中で、ヘモシアニン(例えば、キーホール・カサガイ・ヘモシアニン-KLH);アルブミン(例えばウシ血清アルブミン、オボアルブミン、ヒト血清アルブミンなど);免疫グロブリン;サイログロブリン(例えば、ウシ・サイログロブリン);トキシン(例えば、ジフテリア・トキソイド、破傷風トキソイド);及びポリリジン又はポリアラニン-リジンなどのポリペプチドを含む。タンパク質は、好ましい担体であるが、他の担体、好ましくは、十分な大きさ及び免疫原性のある高分子量化合物、例えば炭水化物、ポリ多糖、リポポリ多糖、核酸などが使用されうる。さらに、得られた抗体は、標的部位への結合について対象ペプチドと競合しうる抗-イディオタイプ抗体を調製する為に使用されうる。これらの抗イディオタイプ抗体は、対象ペプチドが結合するタンパク質を同定するのに有用である。
【0062】
[0074] 別の態様では、ペプチドは、オリゴペプチドを細胞及び組織に標的化するため、又はペプチドにさらなる官能性を加えるために、別のペプチド又はタンパク質に結合する。標的化について、結合に使用されるタンパク質又はペプチドは、治療のために標的化される細胞又は組織に基いて選ばれるだろう(Lee, R. et al., Arthritis. Rheum. 46: 2109-2120 (2002); Pasqualini, R. , Q. J. Nucl. Med. 43: 159-62 (1999); Pasgualini, R. , Nature 380: 364-366 (1996);これらは本明細書中に援用される)。該タンパク質は、非限定的にポリアルギニン;及びポリリジン、ポリアスバラギン酸などを含むポリアミノ酸も含むことがあり、それらは、結合されたペプチドを含む小胞又は粒子を製造するために、他のポリマー、例えばポリエチレン・グリコールなどの中に取り込まれうる。
【0063】
[0075] 別の態様では、対象ペプチドは、別のペプチド又はタンパク質と結合して発現されて、内部又はN末端若しくはC末端においてポリペプチド鎖の成分となり、キメラタンパク質又は融合タンパク質を形成する。本明細書中の「融合ポリペプチド」又は「融合タンパク質」又は「キメラタンパク質」は、複数のタンパク質要素から構成されるタンパク質を意味し、ここで、該タンパク質要素は、典型的に未変性の状態で結合される間、ペプチド結合を介してそれぞれのアミノ末端及びカルボキシ末端により結合されて、連続的なポリペプチドを形成する。この文脈における複数という用語は、少なくとも2、そして好ましい態様は、一般的に3〜12の要素を使用するが、それ以上の要素が使用されることもある。該タンパク質要素が、以下に記載されるように直接又はペプチドリンカー/スペーサーを介して結合されうるということも認識されるだろう。
【0064】
[0076] 融合ポリペプチドは、様々なペプチド又はタンパク質へと作られて、細胞及び組織に標的し、細胞内の分画に標的し、細胞又は組織において融合タンパク質を追跡し、そしてオリゴペプチドに結合する別の分子をスクリーニングするために、立体構造的に制限された形態で対象オリゴペプチドをディスプレイする。融合タンパク質の作製に有用なタンパク質は、様々なレポーター・タンパク質、構造タンパク質、細胞表面受容体、受容体のリガンド、トキシン、及び酵素を含む。タンパク質の例は、蛍光タンパク質(例えば、アエクオリア・ビクトリア(Aequoria victoria)GFP、レニラ・レ二フォルミス(Renilla reniformis)GFP、レニラ・ムエレリ(Renilla muelieri)GFP、ルシフェラーゼなど、及びそれらのバリアント);β-ガラクトシターゼ;アルカリホスファターゼ;E.コリ・マルトース結合タンパク質;糸状バクテリオファージのコート・タンパク質(例えば、マイナー・コートタンパク質、pIII、又はメジャー・コートタンパク質、pVIII、ファージディスプレイ用);T細胞受容体;カリブドトキシンなどを含む。
【0065】
[0077] 融合タンパク質はまた、単独又は巨大タンパク質配列の一部として、タンパク質又は別のペプチドの断片との融合体も含む。こうして、融合ポリペプチドは、融合パートナーを含みうる。本明細書中の「融合パートナー」は、そのクラスのタンパク質の全てのメンバーに共通の機能又は能力を与えるペプチドに関連する配列を意味する。融合パートナーは、異種(つまり宿主細胞由来ではない)又は合成(つまりどの細胞由来でもない)でありうる。融合パートナーは、非限定的に、
a)提示構造、該構造は立体構造的に制限され又は安定な形態を与える;
b)標的配列、該配列は細胞内又は細胞外コンパートメントにペプチドを局在化させる;
c)安定化配列、該配列はペプチド又はペプチドをコードする核酸の分解からの保護又は安定性に影響する;
d)リンカー配列、該配列は融合パートナーからオリゴペプチドを立体構造的に切り離す;
e)上記の組合せのいずれか
を含む。
【0066】
[0078] 一の態様では、融合パートナーは、提示構造である。本明細書中で使用される「提示構造」は、対象ペプチドと融合するとき、立体構造的に制限された形態の配列を意味する。好ましい提示構造は、溶媒に晒される外部表面、例えばループ上にペプチドを提示することにより他の結合パートナーとの結合相互作用を高める。一般的に、そうした提示構造は、オリゴペプチドのN末端に結合する第一成分とオリゴペプチドのC末端に結合する第二成分とを含む。つまり、本発明のペプチドは、提示構造中へと挿入される。好ましくは、提示構造は、標的細胞中に発現されたとき、最小の生物学的活性しか有しないように選択され又は設計される。
【0067】
[0079] 好ましくは、提示構造は、ペプチド又は外部ループをディスプレイ又は提示することにより、ペプチドの接触性を最大化する。適切な提示構造は、非限定的にコイルドコイル・ステム構造、ミニボディー構造、β-ターン上のループ、二量体化配列、システイン結合構造、トランスグルタミナーゼ結合構造、環状ペプチド、ラセン状バレル、ロイシン・ジッパー・モチーフなどを含む。
【0068】
[0080] 一の態様では、提示構造は、外部ループ上に対象ペプチドの提示を許容するコイルドコイル構造(Myszka, D.G. et al., Biochemistry 33: 2363-2373(1994))、例えばコイルドコイル・ロイシン・ジッパードメイン(Martin, F. et al., EMBO J. 13: 5303-5309(1994))である。提示構造は、最小限の抗体の相補性決定領域を実質的に含むミニバディー構造も含む。ミニバディー構造は、折りたたまれたタンパク質における3次構造の一つの面にそって提示される2個のペプチド領域を一般的に提供する(Bianchi, et al., J. Mol. Biol. 236: 649-659(1994); Tramontano, A. et al., J. Mol. Recognit. 7:9-24(1994))。
【0069】
[0081] 別の態様では、提示構造は2個の二量体化配列を含む。該二量体化配列は、同じであるか又は異なることもあり、生理条件下において十分な親和性で非共有結合的に会合して、ディスプレイされたペプチドを構造的に制約する。こうして、二量体化配列が、対象オリゴヌクレオチドの各末端で使用されるなら、得られる構造は、構造的に制限され又は制約をうけた形態で対象ペプチドをディスプレイしうる。様々な配列が、二量体化配列として適切である(例えば、WO99/51625を参照のこと。該文献は本明細書中に援用される)。当業者に知られているタンパク質-タンパク質相互作用配列の数は幾つでも、本目的のために有用である。
【0070】
[0082] さらなる態様では、提示配列は、金属イオンに結合して、構造的に制約を受けた二次構造を作り出す能力を与える。こうして、例えば、C2H2ジンク・フィンガー配列が使用される。C2H2配列は、亜鉛イオンがキレートされるように配置された2個のシステイン及び2個のヒスチジンを有する。ジンク・フィンガードメインは、複数のジンク・フィンガーペプチドにおいて独立して生じて、構造的に独立であり、可動的に結合されるドメインを形成することが知られている(Nakaseko, Y. et al., J. Mol. Biol. 228: 619-636(1992))。一般的なコンセンサス配列は、
(5個のアミノ酸)-C-(2〜3個のアミノ酸)-C-(4〜12個のアミノ酸)-H-(3個のアミノ酸)-H-(5個のアミノ酸)
である。好ましい例は、
-FQCEEC-3〜20個のアミノ酸のランダムペプチド-HIRSHTG
である。同様に、コンセンサス配列:
-C-(2個のアミノ酸)-C-(4〜20個のランダム・ペプチド)-H-(4個のアミノ酸)-C-
を有するCCHCボックスは使用されうる(Bavoso, A. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 242: 385-389(1998))。別の例は、
(1) ヌクレオキャプシド・タンパク質P2に基く
-VKCFNC-4〜20個のランダムアミノ酸-HTARNCR-;
(2) Lasp-1・LIMドメインの天然の亜鉛結合ペプチド配列から改変された配列(Hammarstrom, A. et al., Biochemistry 35: 12723-32(1996));及び
(3) NMR構造アンサンブル1ZFP(上記、Hammarstrom et al.,)に基いた
-MNPNCARCG-4〜20個のランダムアミノ酸-HKACF
を含んだ。
【0071】
[0083] さらに別の態様では、提示構造は、2以上のシステイン残基を含む配列であり、その結果、ジスルフィド結合が形成されて、構造的に制約をうけた構造をもたらす。つまり、対象オリゴペプチドの各末端でシステインを含むペプチド配列を使用することは、上記のように環状のペプチド構造をもたらす。環状構造は、タンパク質分解に対する提示ペプチドの感受性を低減し、そして標的分子への接触性を増大させる。当業者により認められることであるが、分泌標的配列が、ペプチドを細胞外の空間へと導くために使用されるとき、この特定の実施態様は、特に適している。さらに、マトリックス・メタロプロテアーゼ(例えば、MMP-2、つまりゼラチナーゼA、MMP9、つまりゼラチナーゼB、又はMMP7、つまりマトリリシン)などのプロテアーゼにより認識されそして分解される配列が使用されうる。これらの残基は、環状ペプチドを形成するために使用されて、ペプチドの半減期又は膜透過性を増大させる。環状ペプチドを、適切なプロテアーゼで分解することに続いて、所望の部位でのペプチドの活性直鎖形態が放出された。
【0072】
[0084] 別の実施態様では、融合パートナーは標的配列である。標的配列は、発現生成物の生理活性を保持する間、発現された生成物を規定の分子又は分子のクラスに結合することを引き起こすことができる結合配列;融合タンパク質又は結合パートナーの選択的分解をシグナルする配列;及び規定の細胞局所へとペプチドを一貫して局在化させることができる配列を含む。典型的な細胞局在は、細胞内局在(Subcellular location)(例えば、ゴルジ、小胞体、核、核膜、ミトコンドリア、分泌小胞、リソソーム)及び分泌シグナルを使用することによる細胞外局在を含む。
【0073】
[0085] 様々な標的配列は、当該技術分野に周知である。核への標的は、核局在化シグナル(NLS)の使用により達成される。NLSsは、一般的に短い正に荷電されるドメインであり、NLSsが存在するタンパク質を細胞核へと導く。典型的にNLSs配列は、SV40巨大T抗原の1塩基NLSs(Kalderon, D. et al., Cell 39:499-509(1984));ヒトレチノイン酸受容体-β核局在化シグナル(NF-κB p50及びp65(Ghosh, S. et al., Cell 62: 1019-1029(1990)); Nolan, G. et al., Cell 64:961-999(1991));及びヌクレオプラスミンにより例示される二塩基NLSs(Dingwall, C. et al., J. Cell Biol. 107: 841-849(1988))を含む。
【0074】
[0086] 別の態様では、標的配列は、膜アンカー配列である。ペプチドは、シグナル配列を介して膜へと導かれて、そして疎水性膜貫通領域(TMと名付けられる)を介して安定して膜中に取り込まれる。TM断片は、発現融合タンパク質上に適切に配置されて、当該技術分野に周知であるように、細胞内又は細胞外に対象ペプチドをディスプレーする。膜アンカー配列及びシグナル配列は、非限定的に(a)クラスI結合膜タンパク質、例えばIL-2受容体β鎖:Hatakeyama, M. et al., Science 244: 551-556 (1989))及びインシュリン受容体β鎖(上記、Hetakeyama et al); (b)中性エンドペプチダーゼなどのクラスII結合膜タンパク質(Malfroy, B. et al Biochem. Biophys. Res. Commun. 144: 59-66 (1987));及び(c)ヒト・シトクロームP450・NF25などのIII型タンパク質 (上記Hetakeyama et al)から得られる配列;並びにCD8、ICAM-2、IL-8R、及びLFA-1から得られる配列を含む。
【0075】
[0087] 膜アンカー配列はまた、GPIアンカーを含み、該アンカーは、グリコシル-ホスファチジルイノシトールを介して、GPIアンカー配列と脂質二重層との間の共有結合をもたらす。GPIアンカー配列は、様々なタンパク質、例えばThy-1及びDAFにおいて見つかっている(Homans1, S. W. et al., Nature 333: 269- 272(1998))。同様に、アシル化配列は、脂質成分の付加、例えばイソプレニル化(つまり、ファルネシル及びゼラニル-ゼラニル;Farnsworth, C. C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11963-11967(1994)及びAronheim, A. et al., Cell 78: 949-61(1994))、ミリストイル化(Stickney, J. T. Methods Enzymol. 322: 64-77(2001))、又はパルミトイル化を許容する。一の態様では、対象ペプチドは、脂質膜、例えばリポソームに結合されることができるために、末端で脂質基に結合される。
【0076】
[0088] 別の細胞内標的配列は、リソソーム標的配列(例えば、LAMP−1及びLAMP-2中の配列:Uthayakumar, S. et al., Cell Mol. Biol. Res. 41: 405-420(1995))及びKonecki, D. S. et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 205: 1-5(1994));ミトコンドリア局在配列(例えば、ミトコンドリア・マトリックス配列、ミトコンドリア内膜配列、ミトコンドリア膜間配列、又はミトコンドリア外膜配列;Shatz, G., Eur. J. Biochem. 165: 1-6(1987));小胞体内局在配列(例えば、カルレティキュリン(calreticulin)、Pelham, H.R. Royal Soc. London Transactions B: 1-10(1992); アデノウイルスE3/19Kタンパク質、Jackson, M.R. et al., EMBO J. 9: 3153-3162(1990)); 及びペルオキシソーム局在配列(例えば、ルシフェラーゼ・ペルオキシソーム・マトリックス配列、Keller, G. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 4: 3264-3268(1987))である。
【0077】
[0089] 別の態様では、標的配列は、ペプチドの分泌に影響する分泌シグナル配列である。多くの分泌配列が、関心のペプチドのアミノ末端に配置されるとき、細胞外スペース中にペプチドの分泌を導くことが知られており、特に移植細胞を含む細胞によるペプチドの分泌について知られている。適切な分泌シグナルは、IL-2(Villinger, F. et al., J. Immuno. 155: 3946-3945(1995))、成長ホルモン(Roskam, W.G. et al., Nucleic Acids Res, 7:305-320(1979))、プレプロインシュリン、及びインフルエンザHAタンパク質において見つかった配列を含んだ。
【0078】
[0090] 融合パートナーは、さらに安定配列を含み、融合タンパク質又は該タンパク質をコードする核酸に安定性を与える。こうして、例えば、開始メチオニンの後にグリシンを取り込むこと(例えば、MG又はMGG)は、VarshavskyのN末端則によりユビキチン化を介して分解される融合ペプチドを安定化し、又は保護することができ、こうして細胞における半減期を延長させる。
【0079】
[0091] 検出又は精製の目的のため、ペプチドにタグをつけるために、さらなるアミノ酸が加えられうる。これらの配列は、抗体により認識されるエピトープ、又は金属イオンなどのリガンドに結合する配列を含みうる。様々なタグ配列及びリガンド結合配列が、当該技術分野に周知である。これらの配列は、非限定的にポリ-ヒスチジン(例えば、抗体により認識され、2価の金属イオンにも結合する6×Hisタグ);ポリ-ヒスチジン-グリシン(ポリ-his-gly)タグ;fluHAタグ・ポリペプチド;c-mycタグ;フラグ・ペプチド(Hopp et al., Bio Technology 6: 1204- 1210(1988));KT3エピトープペプチド;チューブリン・エピトープ・ペプチド(Skinner et al., J. Biol. Chem. 266:15163-12166(1991));及びT7遺伝子10タンパク質・ペプチド・タグ(Lutz-Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6363-6397(1990))を含む。
【0080】
[0092] 融合パートナーは、ペプチドを結合するため及び妨害されない構造にペプチドを提示するための、リンカー又はつなぎ配列を含む。上で記載されるように、有用なリンカーは、グリシンポリマー(G)n(ここでnは1〜約7である)、グリシン-セリンポリマー(例えば(GS)n、(GSGGS)n、及び(GGGS)n(ここでnは少なくとも1である))、グリシン-アラニン・ポリマー、アラニン-セリン・ポリマー、及び当該技術分野に周知である別の可動リンカーを含む。好ましくは、リンカーは、グリシン又はグリシン-セリンポリマーである。なぜなら、これらのアミノ酸は、比較的構造化されておらず、親水性であり、そしてタンパク質及びペプチドの断片を結合するために有効であるからである。
【0081】
[0093] 本発明において、融合パートナーの組合せが使用されうる。提示構造、標的配列、レスキュー配列、タグ配列、及び安定化配列の組合せのいずれもが、リンカー配列を伴って又は伴わずに使用されうる。
【0082】
6.4 ペプチド調製及び塩
[0094] RDP58オリゴペプチドは、多くの方法において製造されうる。ペプチドの化学合成は、当該技術分野に周知である。固相合成が通常使用され、そして様々な市販の合成装置が利用でき、例えばApplied Biosystems Inc., Foster City, CA; Beckmanなどにより市販される自動化合成装置がある。液相合成方法もまた使用され、特に大量生産のために使用されうる。これらの標準的な技術を使用することにより、天然のアミノ酸は、非天然のアミノ酸、特にD立体異性体で置換されうるし、そして異なる長さ又は官能性を有する側鎖を有するアミノ酸で置換されうる。低分子、標識成分、ペプチド、又はタンパク質に結合するため、又は環状化ペプチドを形成するための官能基は、化学合成の間に分子中へと導入されうる。さらに、低分子及び標識成分は、合成過程の間に結合されうる。好ましくは、官能基の導入及び他の分子に対する接合は、対象ペプチドの構造及び機能に最低限しか影響しない。
【0083】
[0095] 本発明のペプチドは、塩の形態、一般的に医薬として許容される塩形態で存在しうる。該塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マグネシウムなどの無機塩を含む。ペプチドの種々の有機塩は、非限定的に、酢酸、プロピオン酸、ピルビン酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、サリチル酸などで作られうる。
【0084】
[0096] オリゴペプチド及びその誘導体の合成もまた、組換え技術を使用して行われうる。組換え産生のために、核酸配列は、単一のオリゴペプチド又は好ましくは複数の対象ペプチドを、介在アミノ酸又は介在配列を伴って、タンデムにコードする核酸配列に作られ、単一のペプチド又はヘッド-トゥ-テイルダイマーへと切断することを可能にする。メチオニン又はトリプトファンを欠いている場合、介在メチオニン又はトリプトファンは取り込まれ、そしてCNBr又はBNPS-スカトール(2-(2-ニトロフェニルスルフェニル)-3-メチル-3-ブロモインドレニン)をそれぞれ使用して単一アミノ酸切断を可能にする。或いは、酵素切断用の特定のプロテアーゼにより認識される配列、又は自己切断配列(例えば、アフトウイルス及びカルジオウイルスの2A配列;Donnelly, M.L., J. Gen. Virol.78:13-21(1997); Donnelly, M.L., J. Gen. Viol. 82: 1027-41(2001)、これらの文献は本明細書中に援用される)として作用する配列を使用することにより、切断が達成される。対象ペプチドは、巨大ペプチドの一部としても作られ、該巨大分子を単離し、そしてタンパク質分解性の切断又は化学切断により当該オリゴヌクレオチドが得られる。特定の配列及び製法は、利便性、経済性、必要とされる純度、などにより決定されるだろう。これらの組成物を製造するために、特定のペプチド、タンパク質、又は融合タンパク質をコードする遺伝子は、本発明のオリゴペプチドをコードするDNA配列に結合されて、融合核酸を形成し、この核酸は発現ベクター中に導入される。融合核酸の発現は、特定の宿主細胞又は生物において発現するために、適切なプロモーター及び以下に定義される別の制御配列の制御をうける(Sambrook et al., Molecular Biology: A laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y.(第三版、2001); Ausubel, F. et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, NY, (2002年の最新情報)(1998);これらの文献は本明細書中に援用される)。
【0085】
[0097] 本発明のペプチドに様々な分子を接合させるため、オリゴペプチド上の官能基及び他の分子を、適切な接合剤(例えば、架橋剤)の存在下において反応させた。使用される接合又は架橋剤のタイプは、官能基、例えば使用される1級アミン、スルフヒドリル、カルボニル、炭水化物、及びカルボン酸に左右される。試薬は、固定液及び架橋剤であり、それらは、同一の二個の官能基、異種の二個の官能基、又は三個の官能基を有する架橋剤(Pierce Endogen, Chicago, IL)でありうる。通常、使用される固定液及び架橋剤は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、N-ヒドロキシスクシンイミド・エステル、マレイミド(例えば、ビス-N-マレイミド-1-8-オクタン)、及びカルボジイミド(例えば、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド;ジシクロヘキシルカルボジイミドを含んだ。2〜20の炭素長を伴うアルキル又は置換アルキル鎖を含むスペーサー分子は、接合体を分離するために使用されうる。好ましくは、改変のために選ばれないオリゴヌクレオチド上の反応性の官能基は、ペプチドを他の反応性分子へとカップリングする前に保護されて、不所望の側鎖反応を制限した。本明細書中に使用される「保護基」は、特異的官能基に結合する分子であり、選択的に取り除かれて官能基を再び顕にする分子である(Greene, T.W. and Wuts, P.G.M. Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc., New York(第三版、1999))。ペプチドは、保護アミノ酸前駆体を用いて合成されるか、又は合成の後ではあるが、架橋剤と反応させる前に、保護基と反応されうる。接合は、間接的であり、例えば、ビオチン成分を結合することによっており、該ビオチンは、ストレプトアビジン又はアビジンに結合された化合物又は分子と接触されうる。
【0086】
[0098] 接合体において低減された活性を有するオリゴペプチドについて、オリゴペプチドと接合された化合物との間の結合は、十分に易動性があって、所望の条件下で切断される、例えば所望の条件下、例えば所望の細胞又は組織へと輸送された後に、切断することができるように選ばれる。生物学的に易動性の共有結合、例えばイミノ結合及びエステルは、当該技術分野に周知である(例えば米国特許第5,108,921号を参照のこと。該文献は本明細書中に援用される)。これらの改変は、潜在的に活性が弱い形態においてオリゴヌクレオチドを投与し、次に易動性結合を分解することにより活性化することを可能にする。
【0087】
6.5 核酸、発現ベクター、及び導入方法
[0099] オリゴペプチドの合成又はデリバリーが対象ペプチドをコードする核酸を介するとき、核酸は、発現ベクター中にクローン化され、そして細胞又は宿主へと導入される。発現ベクターは、自己複製性染色体外ベクター又は宿主染色体へと組み込まれるベクター、例えばレトロウイルスに基くベクター、部位特異的組換え配列又は相同組換えによる配列を伴うベクターである。一般的に、これらのベクターは、オリゴペプチドをコードする核酸に発現できるように結合された制御配列を含む。「制御配列」は、特定の宿主生物における対象ペプチドの発現に必須な核酸配列を意味する。こうして、制御配列は、核酸の転写及び翻訳に必要とされる配列、例えば非限定的に、プロモーター配列、エンハンサー、又は転写活性化配列、リボソーム結合部位、転写開始及び転写終結配列;ポリアデニル化シグナルなどを含む。
【0088】
[0100] 様々なプロモーターは、本発明のペプチドを発現する際に有用である。プロモーターは、恒常的、誘導性、及び/又は細胞特異的であり、そして天然プロモーター、合成プロモーター(例えば、tTAテトラサイクリン誘導性プロモーター)、又は様々なプロモーターのハイブリッドを含みうる。プロモーターは、数ある中で、タンパク質が発現される細胞又は生物、所望の発現レベル、並びに発現制御に基いて選ばれる。適切なプロモーターは、細菌のプロモーター(例えば、pLIファージプロモーター、tacプロモーター、lacプロモーターなど);酵母に基くプロモーター(例えば、GAL4プロモーター、アルコール脱水素プロモーター、トリプトファン合成プロモーター、銅誘導性CUPIプロモーターなど)、植物プロモーター(例えば、CaMV S35、ノポリン合成プロモーター、タバコ・モザイク・ウイルスプロモーターなど)、昆虫プロモーター(例えば、オートグラファ核多核体ウイルス(Autographa nuclear polyhedorosis virus)、Adedes DNVウイルスp&、p61、hsp70など)、及び哺乳動物細胞発現用のプロモーター(例えば、ユビキチン遺伝子プロモーター、リボソーム遺伝子プロモーター、β-グロビンプロモーター、チミジン・キナーゼ・プロモーター、熱ショックタンパク質プロモーター、及びリボソーム遺伝子プロモーターなど)、並びに特にサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、サルウイルス(simian virus)(SV40)プロモーター、及びレトロウイルスプロモーターなどである。
【0089】
[0101] 本明細書中の「発現できるように結合された」は、核酸が、別の核酸と機能的な関係の中に配置されることを意味する。この文脈では、「発現できるように結合された」は、対象ペプチドをコードする核酸配列を、コードされたペプチドの発現が起こるような方式で、制御配列が配置されることを意味する。ベクターは、プラスミド、又はウイルス・ベクター、例えばレトロウイルスベクター、又はレンチウイルス及びアデノウイルスベクターを含む。レトロウイルスベクターは、細胞が分裂細胞であるなら、有用なデリバリー系であり、レンチウイルス及びアデノウイルスベクターは、細胞が非分裂細胞であるなら有用である。特に好ましくは、自己不活性化レトロウイルスベクター(SINベクター)が好ましい。該ベクターは、ウイルスプロモーターを3’LTRで不活性化し、それにより、ウイルスベクター中に挿入される非ウイルスプロモーターの使用により、異種性遺伝子の発現の制御を許容する(例えばHofmann, A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 5185-5190(1996))。当業者に認められことであるが、シュードタイピングによるシステムの改変は、全ての真核細胞、特に高等真核生物にレトロウイルスベクターの使用を可能にする(Morgan, R.A. et al., J. Viol. 67: 4712-4721(1993); Yang, Y. et al., Hum. Gene Ther. 6: 1203-1213(1995))。
【0090】
[0102] さらに、発現ベクターもまた、選別可能マーカー遺伝子を含み、形質転換された宿主細胞の選別を可能にする。一般的に、選別は、発現ベクターを含む細胞を濃縮し、そしてさらに選別遺伝子を発現する細胞と発現しない細胞との間の区別をさらに可能にする検出可能な表現型を与えるだろう。選別遺伝子は、当該技術分野に周知であり、そして使用される宿主細胞により変わりうる。適切な選別遺伝子は、細胞を薬剤耐性にする遺伝子、栄養欠損培地において成長を可能にする遺伝子、及びレポーター遺伝子(例えば、β-ガラクトシダーゼ、蛍光タンパク質、グルコウルコニダーゼなど)を含み、それらの全ては、当該技術分野に周知であり、そして当業者が利用できる。
【0091】
[0103] 生細胞中に核酸を導入するために利用できる様々な技術がある。本明細書中の「導入」は、導入後に核酸の発現に適した方式で核酸が細胞内に入ることを意味する。核酸の導入技術は、核酸が、in vitroで培養細胞中に導入されるか、又は対象の宿主生物の細胞中にin vivoで導入されるかに左右され、そして宿主生物のタイプに左右されて変わりうる。核酸をin vitroに導入する例は、リポソーム、リポフェクチン(商標)、電気穿孔、顕微注入、細胞融合、DEAEデキストラン、硫酸カルシウム沈殿、及び遺伝子銃用いる方法(biolistic particle bombardment)の使用を含む。in vivo導入技術は、核酸の直接導入、ウイルスベクター、典型的にはレトロウイルスベクターの使用、及びリポソーム媒介性トランスフェクション、例えばウイルス・コートリポソーム媒介性トランスフェクションを含む。本発明のペプチドを発現する核酸は、細胞質内に一過性に又は安定に存在するか、又は宿主の染色体中に安定して組み込まれうる(つまり、標準の制御配列、選別マーカー、などの使用を介する)。適切な選別遺伝子及びマーカー遺伝子は、本発明の発現ベクター中に使用される。
【0092】
[0104] 幾つかの状況では、標的細胞又は組織を標的する薬剤、例えば表面タンパク質又は標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上のレセプターに対するリガンド、細胞膜上の脂質要素、又は細胞表面上の糖を含む。リポソームが使用される場合、エンドサイトーシスされる細胞表面タンパク質に結合されるタンパク質は、標的のため及び/又は取り込みの亢進のため使用されうる。これらは、非制限的な例として、特定の細胞型に配向されるキャプシドタンパク質又はその断片、内部移行するタンパク質に対する抗体(Wu, G.Y. et al., J. Biol. Chem. 262: 4429-4432(1987); Wanger, E, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 3410-3414(1990))を含み、又はin vivoの半減期を延長する。
【0093】
[0105] 発現は、細菌、酵母、植物、昆虫、及び動物を含む真核生物及び原核生物にわたる広範な宿主細胞において行われる。本発明のオリゴペプチドは、数ある中で、E.コリ、サッカロミセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、タバコ、又はアラビドプシス(Arabidopsis)植物、昆虫シュナイダー(Schneider)細胞、及び哺乳動物細胞、例えばCOS、CHO、HeLaなどにおいて、細胞内で又は適切なシグナルペプチドに融合することにより分泌される形態で発現される。宿主細胞からの分泌は、オリゴペプチドをコードするDNAとシグナルペプチドをコードするDNAを融合することにより行われうる。分泌シグナルは、細菌、酵母、昆虫、植物、及び哺乳動物の系における技術分野に周知である。オリゴペプチドを発現する核酸は、細胞、例えば、組織発現では幹細胞、又は腸発現では細菌、及び宿主へ移植される細胞中に導入され、オリゴペプチドのin vivo源を提供する。
【0094】
6.6 精製されたペプチド
[0106] 好ましい実施態様では、本発明のオリゴペプチドは、合成又は発現の後に精製されうる。「精製」又は「単離」は、ペプチドが合成され又は発現された環境の物質がなく、実際使用されうる形態であることを意味する。こうして、精製又は単離は、ペプチド又はその誘導体が、実質的に純粋である、つまり純度90%超、好ましくは純度95%超、及び好ましくは純度99%超を意味する。オリゴペプチド及びその誘導体は、サンプル中に存在する別の構成要素に依存して、当該技術分野に周知である方法により精製及び単離される。標準精製方法は、電気泳動、免疫学、及びクロマトグラフィーの技術、例えばイオン交換、疎水性、アフィニティー、サイズ排除、逆層HPLC、及び等電点電気泳動(chromatofocusing)を含む。タンパク質は、例えば、塩又は有機溶媒の存在下における選択的な溶解性により精製されうる。必要とされる精製の程度は、対象オリゴペプチドの使用に依存して変わるであろう。こうして、幾つかの例では、精製は必要ないであろう。
【0095】
[0107] 通例、使用される組成物は、生成物の精製方法、精製手順、及びその対象となる使用、例えば治療処置の目的のための医薬担体を伴った使用に関連する混入物質に対して、重量で少なくとも20%、より一般的に少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約95%、そして通常少なくとも約99.5%の所望の生成物を含むであろう。通常、割合(%)は、タンパク質の全量に基くであろう。
【0096】
6.7 医薬組成物
[0108] 単独又は組合せにおける対象組成物は、特定の用途に依存して、in vitro、ex vivo、及びin vivoにおいて使用されうる。従って、本発明は、医薬として許容される担体及び医薬有効量の1以上の対象ペプチド、又はその適切な塩を含む医薬組成物の投与を提供する。医薬組成物は、粉末、顆粒、溶液、懸濁液、エアロゾル、固体、ピル、錠剤、カプセル、ゲル、塗り薬、坐剤、経皮パッチ(例えば経皮イオントフォレーゼ)などとして剤形され得る。
【0097】
[0109] 上で記載されるように、ペプチドの医薬として許容される塩は、有機及び無機酸並びに/又は塩基を含む医薬として許容される塩であって、当業者が認めるものを含むことが意図される。塩の例は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、並びに一級、二級、及び三級アミン、低級炭化水素、例えばメチル、エチル、及びプロピルのエステルを含む。別の塩は、有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ピルビン酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、サリチル酸などを含む。
【0098】
[0110] 本明細書中で使用されるとき、「医薬として許容される担体」は、医薬組成物を形成する際に、当業者に周知の標準的な医薬として許容される担体の全てを含む。こうして、医薬として許容される塩、又は接合体、又はそうしたペプチドをコードする核酸運搬体として存在する対象ペプチドは、医薬として許容される希釈剤;例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、水性エタノール、又はグルコース、マンニトール、デキストラン、プロピレン、グリコール、油(例えば、野菜油、動物油、合成油など)、微結晶セルロース、カルボキシメチル・セルロース、ヒドロキシプロピル・メチル・セルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、ゼラチン、ポリソルベート80など中の製剤として、又は適切な賦形剤における固体製剤中に製剤として調製されうる。この製剤は、殺菌性の試薬、安定化剤、緩衝液、乳濁液、保存剤、甘味剤、潤滑剤などを含みうる。投与が経口によるなら、オリゴペプチドは、適切な腸溶性の被膜を使用することにより、又は別の適切な保護手段、例えば微粒子又はpH感受性ヒドロゲルなどのポリマーマトリックス中の抑留により分解から保護されうる。
【0099】
[0111] 適切な剤形は、数ある中で、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Philadelphia, PA (17th ed., 1985)及びHandbook of Pharmceutical Excipients, 3rd Ed, Washington DC, American Pharmaceutical Association (Kibbe, A.H. ed., 2000において見つかるかもしれない。これらの文献は、その全てを本明細書中に援用される。本明細書中に記載される医薬組成物は、当業者に周知の様式で作られる(例えば、例として非限定的に、混合、溶解、顆粒形成、粉末化、乳濁化、カプセル封入、封入、又は凍結乾燥過程を含む当該技術分野に慣用的な方法による)。
【0100】
[0112] さらに、ペプチドはまた、デリバリー及びex vivo又はin vivoのペプチド寿命を延長するため、リポソームの内腔に導入されるか、又は封入されうる。当該技術分野に周知であるように、リポソームは、様々な型:多重膜(MLV)、安定多重膜(SPLV)、小単膜、又は巨大単膜(LUV)粒へと分類されうる。リポソームは、様々な脂質化合物から調製され、該脂質化合物は合成又は天然であり、例えば、ホスファチジル・エーテル及びエステル、例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジル・エタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ジミリストイルホスファチジルコリン;コレステロールなどのステロイド;セレブロシド;スフィンゴミエリン;グリセロリピド;及び他のリピド(例えば米国特許第5,833,948号を参照のこと)などを含む。
【0101】
[0113] カチオン性脂質は、リポソーム形成に適している。一般的に、カチオン性脂質は、全体として正荷電を有し、かつ親油性成分、例えば、ステロール又はアシル又はジアシル側鎖などを有する。好ましくは、頭部となる基が正に荷電される。典型的なカチオン性の脂質は、1,2-ジオレイルオキシ-3-(トリメチルアミノ)プロパン;N-[1-(2,3,-ジテトラデシクロオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-N-ヒドロキシエチルアンモニウム・ブロミド;N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウム・ブロミド;N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム・クロリド;3-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール;及びジメチルジオクタデシルアンモニウムを含む。
【0102】
[0114] 特に関心の高いものは、膜融合性リポソームである。膜融合性リポソームは、生理条件が適切に変化する際に、又は膜融合要素、特に膜融合ペプチド又はタンパク質の存在により細胞膜と融合する能力によって特徴付けられる。一の態様では、膜融合性リポソームはpH及び温度感受性であり、細胞膜との融合は、温度及び/又はpHの変化により影響される(例えば、米国特許第4,789,633号及び4,873,089号を参照のこと)。一般的に、pH感受性リポソームは、酸感受性である。こうして、pHが微酸性である生理環境、例えばリソソーム、エンドソーム、及び炎症性組織の環境において、融合が高められる。この性質は、リポソームのエンドサイトーシスに続いて、リポソームの中身を、細胞内環境中に直接放出することを可能にする(Mizoue, T., Int. J. Pharm. 237: 129-137 (2002))。
【0103】
[0115] 膜融合性リポソームの別の形態は、融合亢進剤を含むリポソームを含む。つまり、リポソーム中に取り込まれるか、又は脂質につけられるとき、該試薬は、リポソームと別の細胞膜との融合を高め、そうしてリポソームの中身を細胞中にデリバリーすることをもたらす。該試薬は、融合亢進ペプチド又はタンパク質であり、インフルエンザ・ウイルスのヘマググルチニンHA2(Schoen, P. , Gene Ther. 6: 823-832 (1999));センダイ・ウイルス外皮糖タンパク質(Mizuguchi, H., Biochem. Biophys. Res. Commun. 218: 402-407 (1996));水溶性口内炎ウイルス外皮糖タンパク質(VSV-G)糖タンパク質(Abe, A. et al., J Virol. 72: 6159-63(1998));融合亢進タンパク質のペプチド断片又は擬態タンパク質;並びに合成の融合亢進ペプチド(Kono, K. et al., Biochim. Biophys. Acta. 1164: 81-90(1993); Pecheur, E.I., Biochemistry 37: 2361-71(1998);米国特許第6,372,720号)を含む。
【0104】
[0116] 米国特許第5,013,556号及び第5,395,619号において提供されるように、リポソームはまた、親水性ポリマーで誘導体化されて、in vivoにおける循環寿命を延長する小胞誘導体を含む(Kono, K. et al., J. Controlled Release 68: 225-35(2000); Zalipsky, S. et al., Bioconjug. Chem. 6: 705-708(1995)も参照のこと)。リポソームを被膜し又は誘導化するための親水性ポリマーは、ポリエチレン・グリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチル・エーテル、ポリスパルトアミド(polyaspartamide)、ヒドロキシメチル・セルロース、ヒドロキシエチル・セルロースなどを含む。さらに、上で記載されるように、エンドサイトーシスされる細胞表面タンパク質、例えば特定の細胞型に配向されるキャプシドタンパク質又はその断片に結合する結合タンパク質、並びに内部移行を引き起こす細胞表面タンパク質に対する抗体は、標的及び/又は特異的細胞又は組織に対するリポソームの取り込みの亢進のために使用されうる。
【0105】
[0117] リポソームは、当該技術分野に周知である方法により製造される(例えば、Szoka, F. et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9: 467-508(1980))。一の典型的な方法は脂質膜水和技術であり、ここで脂質要素は、有機溶液中に混合され、続いて溶媒を蒸発して脂質膜を作り出す。対象ペプチド又は核酸を好ましくは含む緩衝水溶液中で膜を水和することにより、乳濁液をもたらし、該乳濁液は、超音波処理又は押し出し処理をしてサイズ及び多分散を低減する。別の方法は、逆相蒸発(例えば、Pidgeon, C. et al., Biochemistry 26: 17-29(1987); Duzgunes, N. et al., Biochim. Biophys. Acta. 732: 289-99(1983))、リン脂質混合体の凍結及び融解、並びにエーテル注入を含む。
【0106】
[0118] 別の好ましい態様では、担体は、微粒子、マイクロカプセル、マイクロスフィア、及びナノ粒子の形態であり、それらは生分解性であるか又は非生分解性であることもある(例えば,Microencapsulates: Methods and Industrial Applications, in Drugs and Pharmaceutical Sciences, Vol 73, Marcel Dekker Inc., New York(Benita,S. ed 1996)を参照のこと、該運腱は本明細書中に援用される)。本明細書中に使用されるとき、微粒子、マイクロスフィア、マイクロカプセル、及びナノ粒子は、粒子を意味し、それらは、典型的に固体であり、デリバリーされる物質を含んでいる。該物質は、粒子のコア内に存在するか、又は粒子のポリマー・ネットワークに付着している。一般的に、微粒子(又はマイクロカプセル又はマイクロスフィア)とナノ粒子との違いは、大きさの違いである。本明細書中に使用されるとき、微粒子は、約1〜約1000ミクロンの粒子サイズ範囲を有している。ナノ粒子は、約10〜約1000nmの粒子サイズの範囲を有する。
【0107】
[0119] 様々な材料が、微粒子を作るために有用である。非生分解性のマイクロカプセル及び微粒子は、非限定的に、ポリスルホン、ポリ(アクリロニトリル-コ-ビニル・クロリド)、エチレン-ビニル・アセテート、ヒドロキシエチル・メタクリレート-メチル-メタクリレート・コポリマーを含む。これらは、封入されたペプチドが、カプセルから拡散する場合、移植目的に有用である。別の態様では、マイクロカプセル及び微粒子は、生分解性のポリマー、好ましくは低毒性を示し、そして免疫系によりよく容認される生分解性ポリマーに基く。これらのポリマーは、フィブリン、カゼイン、血清アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、レシチン、キトサン、アルギン酸又はポリアミノ酸、例えばポリリジンから作られるタンパク質に基いたマイクロカプセル並びに微粒子を含む。カプセル化のための生分解性合成ポリマーは、例えばポリラクチド(PLA)、ポリクリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)、ポリジオキサノン・トリメチレン・カルボネート、ポリヒドロキシアルコネート(例えば、ポリ(β-ヒドロキシブチレート))、ポリ(γ-エチル・グルタメート)、ポリ(DTHイミノカルボニル(ビスフェノールAイミノカルボネート)、ポリ(オルト・エステル)、及びポリシアノアクリレートなどのポリマーを含みうる。対象組成物を含む微粒子の様々な製造方法は、当該技術分野に周知であり、溶媒除去方法(例えば米国特許第4,389,330号参照のこと);乳濁化及び蒸発(Maysinger, D. et al., Exp. Neuro. 141: 47-56 (1996); Jeffrey, H. et al., Pharm. Res. 10: 362-68 (1993))、スプレー乾燥、及び押し出し法を含む。
【0108】
[0120] 担体の別のタイプは、一般的に静脈投与に適しているナノ粒子である。サブミクロン及びナノ粒子は、当該技術分野に周知である両親媒性のジブロック、トリブロック、マルチブロックのコポリマーから一般的に作られる。ナノ粒子を形成する際に有用なポリマーは、非限定的に、ポリ(乳酸)(PLA:Zambaux et al., J. Control Release 60: 179-188 (1999)を参照のこと)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコチド)とポリカプロラクトンとの混合体、ジブロックポリマーであるポリ(l-ロイシン-ブロック-l-グルタメート)、ジブロック及びトリブロックのポリ(乳酸)(PLA)及びポリ(エチレン・オキシド)(PEO)(De Jaeghere, F. et al., Pharm. Dev. Technol. ; 5: 473-83 (2000))、アクリレート、アリールアミド、ポリスチレンなどを含む。微粒子について記載されるとき、ナノ粒子は、非生物分解性であるか又は生分解性でありうる。ナノ粒子は、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、例えばポリ(ブチルシアノアクリレート)から作られ、ここでペプチドは、ナノ粒子上に吸着されそして界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)で被膜された。ナノ粒子の製造方法は、微粒子の製造方法に類似であり、数ある中で、連続水層中への乳濁液のポリマー形成、乳濁化-蒸発、溶媒置換、及び乳濁-攪拌技術を含む(Kreuter, J.Nano-particle Preparation and Applications, in Microcapsules andnanoparticles inmedicine and pharmacy, pg. 125-148, (M. Donbrow, ed. ) CRC Press, Boca Rotan, FL (1991);を参照のこと、該文献は、本明細書中に援用される)。
【0109】
[0121] ヒドロゲルはまた、対象薬剤を宿主にデリバリーする際に有用である。一般的に、ヒドロゲルは、架橋されており、親水性ポリマーネットワークは、ペプチドを含む様々な薬剤化合物を溶かすことができる。ヒドロゲルは、ポリマー膨張の選択的に引き起こすという点で利点を有しており、包含された薬剤化合物の制御された放出をもたらす。ポリマー・ネットワークの組成に依存して、膨張及びそれに続く放出は、様々な刺激、例えばpH、イオン強度、熱、電気、超音波、及び酵素活性により引き起こされうる。ヒドロゲル組成物に有用なポリマーの非限定的な例は、数ある中で、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド);ポリメタクリル酸-g-ポリエチレン・グリコール);ポリアクリル酸及びポリ(オキシプロピレン-コ-オキシエチレン)グリコール;及び硫酸クロンドリタン(chrondroitan sulfate)、キトサン、ゼラチン、フィブリノーゲン、又は合成及び天然ポリマーの混合体、例えばキトサン-ポリ(エチレン・オキシド)などの天然化合物を含む。ポリマーは、可逆的に又は不可逆的に架橋されて、本発明のオリゴペプチドを中に含んだゲルを形成する(例えば米国特許第6,451,346号;第6,410,645号;第6,432,440号;第6,395,299号;第6,361,797号;第6,333,194号;第6,297,337号;Johnson,O.etal.,NatureMed.2:795(1996)を参照のこと;これらの文献は本発明書中にその全てを援用される)。
【0110】
6.8 投与量及び投与
[0122] ペプチド又はそれらをコードする核酸の濃度は、特定の目的のため慣用の方法にそって、実験的に測定されるだろう。一般的に、治療目的のため、ex vivo又はin vivoでペプチドを投与するため、対象ペプチドは、医薬有効量で与えられた。「医薬有効量」又は「医薬有効投与量」は、所望の生理効果を産生するために十分な量又は所望の結果を達成することができる量であり、特に疾患又は疾病状態を治療する目的であり、疾患又は疾病の1以上の症状又は病徴を軽減又は除くことを含む。
【0111】
[0123] 宿主に投与される量は、何が投与されるか、予防又は治療などの投与の目的、宿主の状態、投与様式、投与回数、投与間隔等に左右されて変わりうる。これらは、当業者により実験的に測定され、そして治療応答の程度について調節されうる。適切な投与量を決定する際に考慮すべき因子は、非限定的に、対象の大きさ及び体重、対象の年齢及び性別、症状の重篤度、疾病状態、薬剤のデリバリー方法、薬剤の半減期、及び薬剤の効果を含む。考慮すべき疾病の状態は、疾病が急性か又は慢性であるか、再発か又は改善段階であるか、及び疾病の進行性を含む。治療有効量のための投与量及び投与回数を決定することは、当業者の技術の範囲内である。
【0112】
[0124] 本発明において使用される全ての化合物について、治療有効投与量は、当該技術分野に周知である方法により容易に決定される。例えば、初回有効投与量は、先ず細胞培養アッセイから評価されうる。炎症応答の指標又は、ペプチド活性の指標、例えば炎症性サイトカインの発現レベル(例えば、TNF-α、IFN-γ、IL-6、IL-12など)、CTL活性の阻害、IC疾病マーカー(例えば、ヒスタミン、P物質など)の存在は、使用されうる。投与量は、動物モデルにおいて循環濃度又は組織濃度、例えば細胞培養アッセイにより測定されるIC50の濃度を作り出すために、投与量は剤形される。
【0113】
[0125] さらに、毒性と治療効力は、一般的に細胞培養アッセイ及び/又は実験動物により測定され、典型的には、LD50(試験群の50%致死量)及びED50(試験群の50%治療効力)により測定される。毒性と治療効力の用量比が、治療計数である。個別に又は組み合わせて高い治療計数を示す組成物が好ましい。有効量の測定は、当業者の技術の範囲内であるが、特に本明細書中の詳細な開示で与えられる。
【0114】
[0126] 一般的に、ペプチド組成物が直接宿主へと投与される場合、本発明は、約0.01〜50、より一般的に約0.1〜25mg/kg宿主体重の範囲で投与される対象組成物の大量瞬時投与又は注入を提供する。量は、一般的にペプチドの半減期に従って調節され、ここで該半減期は、一般的に少なくとも1分であり、より一般的には少なくとも10分であり、望ましくは約10分〜12時間の範囲である。個々の投与、連続的な注入、又は繰り返し投与により効力が達成されうる限り、短い半減期は許容される。投与のための剤形は、単位投与量形態、例えばアンプル、カプセル、ピル内に、又は多投与量容器若しくは注射器内において存在しうる。ペプチドが、延長された半減期を有する場合、又は粒子を含むゆっくり放出される組成物などのデポー、長期間に渡ってペプチドを維持するポリマーマトリックス(例えば、コラーゲン・マトリックス、カルボマーなど)として提供される場合、長期間実質的に連続の割合でペプチドを連続的に注入するポンプなどを使用する場合、範囲の下限付近における投与量及びさらに少ない投与量は、使用されうる。投与量は、投与経路に関連して調節される。こうして例えば、投与が全身投与、経口、又は静脈内投与であるなら、投与量は、生体利用度について適切に調節される。宿主又は対象は、順化した動物、ペット、実験動物、霊長類、特にヒト対象を含む哺乳動物のいずれかでありうる。
【0115】
[0127] in vitroにおける細胞培養に、ex vivoの特定の細胞に、又はin vivoの哺乳動物宿主に、対象ペプチド組成物を直接投与することに加え、対象ペプチドをコードする核酸分子(DNA又はRNA)をそれらに投与し、それにより所望される適用に、対象ペプチドの有効な源を提供する。上に記載されるように、対象ペプチドをコードする核酸分子は、周知の発現プラスミド(上記Sambrook et al.,)及び/又はウイルス・ベクター、好ましくはアデノウイルス又はレトロウイルスベクター(例えば、Jacobs et al., J. Virol. 66:2086-2095(1992), Lowenstein, Bio/Technology 12: 1075-1079(1994)及びBerkner, Biotechniques 6:616-624(1988))、のいずれかに、適切な環境において核酸の発現を促進するように機能する制御配列の転写制御の下にクローン化される。そうした核酸に基いた運搬体は、直接細胞又は組織にex vivoで投与される(ペプチド産生細胞を移植するため、ex vivoで細胞をウイルス感染させる)か、又はin vivoの所望の部位に、例えば注射、カテーテル、経口(例えばヒドロゲル)、などにより、或いは、ウイルスに基いたベクターの場合では、全身投与により直接投与されうる。組織特異的プロモーターは、場合により使用されて、関心のペプチドが選択した特定の組織又は細胞型においてのみ発現されることを約束した。そうした核酸に基く運搬体の組換え調製方法は、当該技術分野に周知であり、ペプチド産生について核酸に基いた運搬体を投与するための技術と同じである。
【0116】
[0128] 本発明の目的のため、投与方法は、治療される病気、対象ペプチドの形態、並びに医薬組成物に左右されて選ばれる。オリゴヌクレオチドの投与は、様々な方法により行われて、非限定的に、皮膚内、皮下、静脈内、経口、局所、経皮、腹腔内、筋肉内、及び膀胱内投与を含む。例えば、微粒子、マイクロスフィア、及びマイクロカプセル化製剤は、経口、筋肉内、又は皮下投与に適している。リポソーム及びナノ粒子は、静脈内投与にさらに適している。医薬組成物の投与は、一の経路を通して、又は幾つかの経路より同時に成される。例えば、経口投与は、静脈内又は非経口注射を伴って行われうる。
【0117】
[0129] 一の好ましい実施態様において、投与方法は、粉末、錠剤、ピル、又はカプセルの形態で経口デリバリーによる。経口投与のための医薬製剤は、1以上のペプチドを、適切な賦形剤、例えば糖(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトール)、セルロース(例えば、スターチ、メチルセルロース、ヒドロキシメチル・セルロース、カルボキシメチル・セルロースなど)、ゼラチン、グリシン、サッカリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、そしてポリエチレングリコール又はポリビニルピロリドンなどのポリマーなどと混合することにより作られうる。ピル、錠剤、又はカプセルは、腸溶性の被膜を有し、胃の中では無傷であるが、腸内で溶解する。様々な腸溶性の被膜が当該技術分野に周知であり、それらの多くは市販され、例えば非限定的にメタクリル酸-メタクリル酸エステル・コポリマー、ポリマー・セルロース・エーテル、セルロース・アセテート・フタレート、ポリビニル・アセテート・フタレート、ヒドロキシプロピル・メチル・セルロース・フタレートなどを含む。或いは、ペプチドの経口製剤は、適切な希釈剤中に調製された。適切な希釈剤は、希釈水溶液、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、水性エタノール、糖(スクロース、マンニトール、又はソルビトール)水溶液、グリセロール、そしてゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、シクロデキストリンの水性懸濁液など中の様々な液体形態(例えば、シロップ、スラリー、懸濁液など)を含む。幾つかの実施態様では、親油性の溶媒が使用され、油、例えば野菜油、ピーナッツ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、サフラワー油、ダイズ油など;脂肪酸エステル、例えばオレイン酸トリグリセリドなど;コレステロール誘導体、例えばオレイン酸コレステロール、リノレン酸コレステロール、ミリスチル酸コレステロールなど;リポソームなどを含む。
【0118】
[0130] さらに別の好ましい実施態様では、投与は、皮内、皮下、腹腔内、筋肉内、静脈内で投与される。上で記載されるように、これらは、適切な水性培地中に溶解又は懸濁されるペプチドの形態である。さらに、注射用の医薬組成物は、親油性溶媒中で調製され、該溶媒は非限定的に、上記されるように、油、例えば野菜油、オリーブ油、ピーナッツ油、やし油、ダイズ油、サフラワー油など;合成脂肪酸エステル、例えばエチル・オレイン酸又はトリグリセリド;コレステロール誘導体、例えばオレイン酸コレステロール、リノレン酸コレステロール、ミリスチル酸コレステロールなど;又はリポソームを含む。組成物は、親油性溶媒中に直接調製されうるか、又は好ましくは油/水乳濁液として調整されうる(例えば、Liu, F. et al., Pharm. Res. 12: 1060-1064(1995);Prankerd, R.J. J. Parent. Sci. Tech. 44: 139-49(1990); 及び米国特許第5,651,991号を参照のこと)。
【0119】
[0131] 特に好ましい実施態様では、対象組成物は、膀胱内注入により投与される。一般的な方法は、カテーテルを尿路中に挿入し、そして対象組成物を含む適切な希釈剤で膀胱を満たすことを含む。充填は、手動の注入又は腎ポンプにより行われる。起電性薬剤の投与はさらに、膀胱内の薬剤デリバリーを手助けすることができる(Riedl, C.R. et al.,J. Endourol. 12: 269-72(1998);該文献は本明細書中に援用される)。
【0120】
[0132] デリバリーシステムはまた、維持された放出又は長期間のデリバリー方法を含み、該方法は当業者に周知である。本明細書中に使用される「維持された放出」又は「長期間の放出」は、デリバリーシステムが、医薬治療量の対象化合物を1日超、好ましくは1週間超、最も好ましくは、少なくとも約30〜60日間、又はそれ以上の間投与することを意味する。長期間の放出システムは、対象ペプチドを含む移植可能な固体又はゲルを含み、例えば、上記される生分解性ポリマー(Brown, D.M. et al., Anticancer Drugs 7:507-513(1996));ポンプ、例えば蠕動ポンプ、及びフロン系高圧ガス・ポンプ;浸透圧及びミニ浸透圧ポンプなどを含む。蠕動ポンプは、ポンプの1回の刺激で、決められた量の薬剤をデリバリーし、そしてリザーバーが好ましくはポートを介して経皮的に再充填される。コントローラーは、投与量を決め、そしてデリバリーされる投与量、残っている投与量、及びデリバリーの頻度の読み取りを可能にする。フロン系高圧ガスポンプは、過フッ化炭化水素の液体を使用してポンプを操作する。過フッ化炭化水素の液体は、大気圧を超える蒸気圧を発揮し、そして薬剤を含むチャンバーを加圧して、薬剤を放出させる。浸透圧ポンプ(及びミニ浸透圧ポンプ)は、浸透圧を利用して、薬剤を一定の割合で放出する。ペプチド組成物は、浸透圧薬剤により取り囲まれる不浸透性隔壁を含む。半透膜は、浸透圧薬剤を含み、そしてポンプ全体は、ケースの中に閉じ込められている。半透膜を介した水の分散は、薬剤を保持している隔壁を絞り、薬剤が血流、器官、又は組織中へと出される。これらの及び別のそうした埋め込み物は、維持された長期間の方式における全身投与(例えば静脈内、又は皮下)或いは、局所投与を介して、本発明のオリゴペプチドをデリバリーすることにより、症状が再発した病気、又は自然に進行する病気を治療する点で有用である。
【0121】
[0133] 本発明は、キット又はパッケージされた製剤の形態におけるオリゴペプチドも含む。本明細書中で使用されるキット又はパッケージされた薬は、1以上のオリゴペプチドおよびその塩を、疾患又は疾病状態を治療するために投与される投与量を保持するコンテナ中に含む。例えば、パッケージは、水溶液中に混合するための粉末の形態で混合される医薬担体とともにペプチドを含み、それは膀胱内に注入されるか又は投与されうる。このパッケージ又はキットは、適切な説明書を含み、この説明書は、図表、記録(例えば、音声、ビデオ、コンパクトディスク)、そして製剤の使用を指示するコンピューター・プログラムを含む。
【0122】
[0134] 前記の本発明の特定の態様は、例示及び記載の目的のために存在している。それらは、包括的であることを意図せず、また開示される正確な形態に発明を制限することを意図せず、明らかに多くの改変及び変化は、上記の範囲において可能である。
【0123】
[0135] 本明細書中に記載される全ての公報及び特許出願は、各々個々の出願又は特許出願が、特別に及び個々に援用されると記される場合と同じ程度に、本明細書中に援用される。
【実施例】
【0124】
7. 実施例
7.1 実施例1:膀胱細胞における、RDP58オリゴペプチドの、サイトカイン産生についての効果
[0136] 膀胱細胞におけるサイトカイン産生の阻害についての、RDP58ペプチドbc−1nLの能力が試験された。最初の試験において、BALB/cマウスをCO2で安楽死させ、そして排尿させた後に膀胱を取得した。ペニシリン及びストレプトマイシンを含むRMPI1640培養液で膀胱を静かに洗浄し、そして1〜2mmの片にすりつぶした。組織の等しい量を、1μgLPS(E.コリ 0.55:B5;Sigma)、50μlのRDP58ペプチド(1mg/ml)(終濃度50μM)、1μgLPS+50μlのRDP58ペプチド、又は培養液のみを含む0.5mlのRPMI培養液中に37℃で一晩インキュベーションした。培養上清を18時間後に集め、遠心分離により分類し、そしてサイトカインTNF-α及びIFN-γについてのELISAによりアッセイした。
【0125】
[0137] RDP58ペプチドの存在は、各プールにおいて、TNFα産生を、約30%阻害した。同様に、RDP58ペプチドは、一のプールにおいて、IFN-γ産生を約10%阻害し、そして第二のプールにおいて67%阻害した。こうして、この結果は、RDP58ペプチドが、膀胱細胞におけるサイトカインの産生を阻害する点で有効であることを示した。
【0126】
[0138] 第二の研究において、膀胱を12の通常のマウスから得て、三つの膀胱の4個のセット中に貯蔵し、そして組織を1〜2mmの片にすりつぶした。等量の組織を一晩、上記のように、LPS、RDP58ペプチド、LPS+RDP58ペプチド、又は培養液を含む培養液中でインキュベーションした。遠心分離により、培養液を浄化した後に、上清をTNF-αの存在についてELISAによりアッセイした。
【0127】
[0139] RDP58ペプチドの存在が、TNFαの産生を、LPS単独で見られるレベルの約3.9〜13%のレベル、平均9.8%±4.1%(P<0.001)まで、阻害した(表5)。こうして、RDP58ペプチドは、膀胱細胞において、一貫して及び効果的にTNF-αの産生を阻害した。
【0128】
【表2】

【0129】
7.2 実施例2:急性間質性膀胱炎モデル
急性間質性膀胱炎の誘導
[0140] マウスに経尿道カテーテルを挿入し、そして150μL中の15μgのE.コリ・リポ多糖(LPS)を注入することにより、急性ICモデルを誘導した。コントロールに150μLの生理食塩水を注入した。45分後、膀胱の液体を排出し、そして150μLの蒸留水(DW)又はRDP58(1mg/ml)を30分間注入した。最後の処理から4時間後、膀胱を分析用に切除した(各群あたりn=3)。
【0130】
サイトカイン、神経成長因子、及びP物質のアッセイ
[0141] 切除された膀胱をPBSで簡単に洗浄し、次に10%FBSを含む500μLのRPM/Pen/Strep培養液に移した。滅菌外科用はさみで膀胱を1mm切片に切り、そしてRPMI培養液中に一晩(16時間)、5%CO2、37℃でインキュベーションした。インキュベーションの後、サンプルを遠心チューブ中に集め、300rpmでスピンダウンして、膀胱切片及び破片を取り除いた。上清をELISAにより分析するまで-70℃で凍結した。P物質のアッセイは、Assay Designs. Inc.(カタログ番号:900-018)製のキットを使用した。NGFのアッセイは、Chemicon International(カタログ番号CYT304)製のサンドウィッチELISAシステムを使用した。サイトカインTNF-α、IFN-γ、及びIL-6のアッセイは、Biosource(Camarillo, CA: TNF-α Immunoassayカタログ番号:KMC3011C; IL-6 Immunoassayカタログ番号:KMC0061C; 及びIFN-γ Immunoassay カタログ番号:KM4021C)製のELISAキットを使用した。
【0131】
ヒスタミン・アッセイ
[0142] ヒスタミンのアッセイは、HTRF バイオアッセイ・キット(CIS bio international, France)を使用した。このアッセイでは、サンプル中のヒスタミンは、ヒスタミンの標識接合体と競合し、標識抗ヒスタミン抗体が接合体に結合することを妨げ、それにより接合体上の標識と抗体との間のFRETを低減する。ヒスタミン放出についてのin vitroアッセイは、ラット好塩基求細胞系列RBL-2H3を使用した。
【0132】
膀胱浸透性の計測
[0143] マウスに経尿道カテーテルを行ない、そして150μLの体積中の15μgのLPSを注入することにより急性膀胱炎を誘導することによって、膀胱浸透性を測定した。コントロールに生理食塩水の150μLを注入した。45分後、膀胱を排出させ、そして150μLのFITC-デキストラン(25mg/ml)を30分間注入した。FITCデキストランは、95%α-D結合から構成される無水グルコースのポリマーであり、FITC蛍光が、ランダムに水酸基に結合している。FITC-デキストランは、血漿タンパク質に目に付くほどは結合せず、そしてin vivoで24時間以上安定である。
【0133】
[0144] FITC-デキストランを注入した後に、血液を心臓吸引によりにより集め、そして5分間4000rpmで遠心分離することにより血清を得た。血清の蛍光を485nm/535nmで計測した。膀胱浸透性についてRDP58オリゴヌクレオチドの効果を測定するとき、コントロール群について動物に生理食塩水を注入し、そして生理食塩水又はRDP58をLPS誘導動物に注入した。生理食塩水又はLPSのいずれも受けていない未処置の動物を未処置のまま取っておいた。
【0134】
7.3 実施例3:慢性間質性膀胱炎モデル
慢性間質性膀胱炎の誘導
[0145] マウスに経尿道カテーテルを行ない、150μL中の15μgのリポ多糖を注入することにより、慢性ICモデルを誘導した。コントロールに150μLの生理食塩水を注入した。動物を、週3回、2週間処置した。RDP58の効果を測定するために、LPS注入の14日後に、動物にペプチドを注入した。膀胱の組織学的分析を、処理後24又は72時間において行った。膀胱をRDP58処理後24時間で取得し、組織をex vivoで培養し、そしてサイトカインをアッセイすることにより、上記のようにサイトカインレベルをアッセイした。膀胱浸透性は、FITCデキストランアッセイを使用した。
【0135】
組織の組織学的分析
[0146] 様々な動物群から得た膀胱を、処理後に取得し、次に切片にした。ヘマトキシリン-エオシンで染色することにより形態学を試験した。抗CD45及び抗CD3抗体で免疫染色することにより、切片をT細胞分化マーカーであるCD3又はCD45の存在について試験した。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】[0025] 図1は、リポ多糖(LPS)、RDP58ペプチド(bc1nl)、LPS+RDP58ペプチド、又は溶媒のみ(コントロール)でex vivo治療した後の、膀胱組織におけるTNF-αのレベルを示す。
【図2】[0026] 図2は、LPS、P物質(SP)、又はイオノマイシンで誘導されたラット好塩基性白血病細胞(RBL-2H3)から放出されるヒスタミン示し、そして培養液中へのヒスタミン放出阻害におけるRDP58の効果を示す。
【図3A−B】[0027] 図3A-3Dは、実験的に誘導されたICの急性形態における生物化学マーカーのレベルについてのRDP58オリゴペプチドの効果を示す。図3A-TNFα;図3B-IL6;図3C-P物質;図3D-ヒスタミン放出;及び図3E-NGF。
【図3C−D】[0027] 図3A-3Dは、実験的に誘導されたICの急性形態における生物化学マーカーのレベルについてのRDP58オリゴペプチドの効果を示す。図3A-TNFα;図3B-IL6;図3C-P物質;図3D-ヒスタミン放出;及び図3E-NGF。
【図3E】[0027] 図3A-3Dは、実験的に誘導されたICの急性形態における生物化学マーカーのレベルについてのRDP58オリゴペプチドの効果を示す。図3A-TNFα;図3B-IL6;図3C-P物質;図3D-ヒスタミン放出;及び図3E-NGF。
【図4】[0028] 図4は、実験的に誘導された急性ICモデルにおいて、FITC-デキストランを膀胱内注入した後に、FITC-デキストランの血清レベルを計測することにより測定された膀胱透過性を示す。
【図5A−B】[0029] 図5A及び図5Bは、様々な治療条件下における血清中に見られるFITC-デキストランのレベル、並びに尿/血液関門の統合性を維持する点についてのRDP58オリゴペプチドの効果を示す。ここで、急性膀胱炎は、LPSを動物に注入することにより誘導される(つまり”LPS”及び”RDP58”)。血清の様々な希釈液の蛍光を図5Aに示した。
【図6】[0030] 図6は、LPS又はLPS+RDP58で膀胱内注入した後の血清中のFITC-デキストランのおおよその割合(%)を示す。割合(%)は、血清中に見られるFITC-デキストランの膀胱内に注入された量に対する割合を指す。
【図7A−B】[0031] 図7A及び7Bは、慢性ICの動物モデルにおける、TNF-α及びIL6発現についてのRDP58ペプチドの効果を示す。
【図8】[0032] 図8は、慢性ICの動物モデルにおける膀胱透過性についてのRDP58の効果を示す。
【図9A−D】[0033] 図9A-9Dは、慢性ICの動物モデルにおけるヘマトキシリン-エオシン染色及びCD45免疫染色された膀胱組織切片を示す。動物に生理食塩水(コントロール)又はLPSを注入した。
【図10A−D】[0034] 図10A-10Fは、慢性ICの動物モデルにおける生理食塩水のみで注入された動物から得たCD3免疫染色された膀胱組織切片を示す。
【図10E−F】[0034] 図10A-10Fは、慢性ICの動物モデルにおける生理食塩水のみで注入された動物から得たCD3免疫染色された膀胱組織切片を示す。
【図11A−D】[0035] 図11A-11Hは、最終LPS注入後72時間(図11A-11D)又は7日間(図11E-11F)の慢性IC動物モデルにおけるCD3免疫染色された組織切片を示す。組織切片は、生理食塩水で処理された動物と比較して、CD3陽性細胞の増加を示す。
【図11E−H】[0035] 図11A-11Hは、最終LPS注入後72時間(図11A-11D)又は7日間(図11E-11F)の慢性IC動物モデルにおけるCD3免疫染色された組織切片を示す。組織切片は、生理食塩水で処理された動物と比較して、CD3陽性細胞の増加を示す。
【図12A−D】[0036] 図12A-12Dは、慢性IC動物モデルにおいて、LPSに晒された後に、RDP58オリゴヌクレオチドで処理された動物におけるCD3免疫染色組織切片を示す(図12A:RDP58処理後24時間;図12B:RDP58処理後72時間)。RDP58処理は、CD3陽性細胞の低減をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間質性膀胱炎の治療方法であって、RDP58オリゴペプチドを含む医薬有効量の組成物を発症した対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記RDP58オリゴペプチドが、以下のアミノ酸配列:
Arg-nL-nL-nL-Arg-nL-nL-nL-Gly-Tyr
からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記末端アミノ酸の少なくとも1が、改変アミノ酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記改変アミノ酸が、アミド化アミノ酸又はその塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アミノ酸の1以上が、D異性体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アミノ酸の全てが、D異性体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記投与が、膀胱内注入による、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記間質性膀胱炎が、急性間質性膀胱炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記間質性膀胱炎が、慢性間質性膀胱炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
間質性膀胱炎の治療方法であって、間質性膀胱炎の病徴を改善するために、疾病にかかる組織又は細胞を、RDP58オリゴペプチドを含む医薬有効量の組成物と接触する事を含む、前記方法。
【請求項11】
前記病徴が、ヒスタミン放出であり、かつ前記細胞が、マスト細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記病徴が、P物質発現である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記病徴が、NGF発現である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記病徴が、TNF-α発現である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記病徴が、尿/血液関門の劣化である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記RDP58オリゴペプチドが、以下のアミノ酸配列:
Arg-nL-nL-nL-Arg-nL-nL-nL-Gly-Tyr
からなる、請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記オリゴペプチドの前記アミノ酸の1以上が、D異性体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記オリゴペプチドの前記アミノ酸の全てが、D異性体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1の末端アミノ酸残基が、改変アミノ酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記改変アミノ酸が、アミド化アミノ酸又はその塩である、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A−B】
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【図3C−D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5A−B】
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【図6】
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【図7A−B】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−516546(P2006−516546A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570638(P2004−570638)
【出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/037043
【国際公開番号】WO2004/045554
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(504324877)サングスタット メディカル コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】