間隔保持部材及び建具枠調整構造
【課題】建具枠のころびの発生を抑制することができ、また、仮に建具枠にころびが生じた場合でも、速やかに当該建具枠をもとの姿勢に復帰させる。
【解決手段】開口下地15と建具枠20,21との間に、間隔保持部材60を挟み込んで配置し、開口下地15と建具枠20,21との離間方向に間隔保持部材60の弾性復帰力が作用する状態とする。建具枠20,21のいずれの位置に当該建具枠20,21のころびを誘引する回転力が作用する場合であっても、当該回転力は間隔保持部材60の弾性変形により吸収されることとなってころびの発生が抑制される。また、仮にころびを生じたとしても、当該間隔保持部材60の弾性復帰力により建具枠20,21が元の姿勢に復帰する。
【解決手段】開口下地15と建具枠20,21との間に、間隔保持部材60を挟み込んで配置し、開口下地15と建具枠20,21との離間方向に間隔保持部材60の弾性復帰力が作用する状態とする。建具枠20,21のいずれの位置に当該建具枠20,21のころびを誘引する回転力が作用する場合であっても、当該回転力は間隔保持部材60の弾性変形により吸収されることとなってころびの発生が抑制される。また、仮にころびを生じたとしても、当該間隔保持部材60の弾性復帰力により建具枠20,21が元の姿勢に復帰する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁に設けられた開口部を形成する開口下地と、該開口下地に対して取り付けられる建具枠との間に設けられる間隔保持部材、及び開口下地に対する建具枠の姿勢を調整する建具枠調整構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扉や引き戸等の建具が設置される壁の開口に建具枠を設ける場合、当該開口周縁の小口部に開口下地を設け、当該開口下地に仕上げとしての建具枠を取り付ける施工方法が一般的である。具体的には、建具枠を開口下地の前面に設置し、該開口下地と建具枠との間に複数の隙間調整材を挟み込み、建具枠が真っ直ぐに立っていることを確認した上で、建具枠の上から隙間調整材を通して木ネジ等の取付け具を開口下地に打ち込んで建具枠を開口下地に固定する方法が行われていた。
【0003】
かかる固定方法においては、建具枠の垂直度を調節するために隙間調整材を適切な厚みに揃えるのに大変手間がかかってしまう。詳述すると、隙間調整材を仮付けした状態で建具枠を設置し、目測や、さげ振り、レーザー光を使った測定等で当該建具枠の垂直度を確認したあと、垂直度に問題がある場合には隙間調整材を適切な厚みに調整し直して、再度、建具枠を仮付けして垂直度を確認している。このような作業を、建具枠の垂直度が所望の状態となるまで繰り返し行う必要があり、この作業後に建具枠の固定作業に入ることとなるので、かかる建具枠の垂直度の調整に著しく手間が掛かってしまうという問題があった。
【0004】
かかる問題を解決すべく、特許文献1には、建物の壁に設けられた開口部を形成する開口下地と、該開口下地に対して取り付けられる建具枠との間に板バネを介在させた構成が開示されている。この板バネは、建具枠の幅方向に沿って当該建具枠に取り付けねじによって取り付けられる横長の本体部分と、弾性変形可能に形成されると共に、本体部分の左右両端から開口下地に向かって延在する一対の脚部とを有し、該一対の脚部によって開口下地に建具枠を弾性的に支持している。
【0005】
ところで、何らかの治具や調整具などを介することで開口下地に離間した状態で支持される建具枠に、例えば開度が制限されていない(ドアストッパーや戸当たりが併設されていない)扉を取り付け、当該扉を全開等させた場合や、引き戸の戸先を衝突させた場合、建具枠には、当該建具枠の長手方向の軸廻りの回転力が作用し易く、これによって建具枠の姿勢が開口下地に対して軸廻りに変化した状態となってしまう(以下、このような建具枠の姿勢が変化することを「建具枠のころび」といい、当該姿勢状態を「ころび」という)ことがある。かかる回転力に対し、上記特許文献1の構成においては、板バネの一対の脚部の弾性変形能によって抵抗することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−160942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の板バネは、開口下地に建具枠を取り付ける過程でこれら開口下地と建具枠とで板バネを挟持し、当該挟持圧によって板バネの一対の脚部を独立して弾性変形させることにより、たとえ開口下地の取り付け面が傾いていたとしても、建具枠を傾きなく支持しようとするものである。しかしながら、板バネの各脚部の先端部のみが開口下地に接触する構成であるため、建具枠に対する扉の取付け位置や引き戸の戸先の衝突位置によっては、当該板バネではころびを生じさせる回転力に対して充分な抵抗力を発揮させることができないという問題がある。また、上述の如く脚部の先端部のみが開口下地に接触する構成であるため、ころびを生じさせる荷重が各脚部に集中することとなるが、数十年単位の長期に亘ってころびを生じさせる荷重を何度も受けると、当該脚部が疲労により損傷してしまうのみならず、当該脚部を受ける開口下地も板バネの脚部の食い込み等によって損傷してしまうことが考えられる。
【0008】
そこで本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、数十年単位の長期に亘って適切に建具枠のころびの発生を抑制することができ、また、仮に建具枠にころびが生じた場合でも、速やかに当該建具枠をもとの姿勢に復帰させることができる簡易な構成の間隔保持部材及び建具枠調整構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明における間隔保持部材は、壁の開口の小口部に設けられる開口下地と、該開口下地に所定の間隔で対向した状態で取り付けられる建具枠との間に設けられ、開口下地に対する建具枠の間隔を当該建具枠の幅方向に亘って一定に保持する間隔保持部材であって、建具枠に当接する建具枠接触面と、開口下地に当接する下地接触面とを備えると共に、建具枠接触面と下地接触面との間に、当該建具枠接触面と下地接触面との離間方向に弾性復帰力を有する弾性変形部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、間隔保持部材は、開口下地と建具枠との間に設けられたときに、建具枠接触面が建具枠に接触すると共に、下地接触面が開口下地に接触することとなり、これら一対の接触面の間の弾性変形部により各接触面から一対の接触面の離間方向に弾性復帰力を発揮させることができる。このため、建具枠のいずれの位置に当該建具枠のころびを誘引する回転力が作用する場合であっても、当該回転力は間隔保持部材の弾性変形部の弾性変形により吸収されることとなってころびの発生を抑制することができることはもちろん、仮にころびを生じたとしても、当該弾性変形部の弾性復帰力により建具枠を元の姿勢に復帰させることができるものとなる。また、建具枠及び開口下地に対して間隔保持部材が面で接触するため、間隔保持部材から弾性復帰力が建具枠及び開口下地に加わったときに弾性復帰力が集中することがなく、建具枠及び開口下地の損傷を抑制することができる。
【0011】
また、本発明における間隔保持部材において、弾性変形部は、薄板状を呈する弾性樹脂又は弾性ゴムにより形成されていることが好ましい。これによれば、弾性樹脂又は弾性ゴムの両面にそれぞれ建具枠接触面と下地接触面とを形成することで間隔保持部材を極めて容易に形成することができる。また、従来の板バネにあっては弾性変形性能の調整のために金型の変更を要するのみならず、当該板バネの肉厚変更や材質の変更等が必要となって、調整自体が大掛かりとなるか、多種多様な板バネを準備しておく必要が生じる。これに対し、本発明では、弾性樹脂又は弾性ゴムを用いて弾性変形部を形成することにより、弾性変形部の長さや厚さを調整するのみで当該弾性変形能(弾性復帰能)を容易に調整することができる。
【0012】
また、本発明における間隔保持部材において、弾性変形部は、表面及び裏面を有する平板状の平板部と、平板部の表面の一部に形成され、表面から突出して表面の広がり方向に帯状に延びる第一山部と、を備え、第一山部の頂部の面が建具枠接触面と下地接触面のいずれか一方となり、平板部の裏面が建具枠接触面と下地接触面のいずれか他方となることが好ましい。これによれば、弾性変形部の表面に、第一山部が形成された部位と、第一山部が形成されていない部位とが形成される。この弾性変形部において、表面に第一山部が形成されていない部位を、間隔保持部材を建具枠又は開口下地に固定する際に取付け具を打ち込む取付部とすることにより、当該取付部は、第一山部よりも高さが低く、厚みが薄いため、取付部から建具枠又は開口下地に向けて取付け具を容易に打ち込むことができる。また、第一山部の側面に、取付け具を打ち込むための装置の先端部を当接させることにより取付け具の打ち込み位置の位置決めを行うことができるため、取付部に確実に取付け具を打ち込むことができる。
【0013】
また、本発明における間隔保持部材において、弾性変形部は、表面において、第一山部から所定の間隔を設けて形成されると共に、表面から第一山部よりも低い高さで突出して第一山部の延び方向と同方向に帯状に延びる第二山部を更に備えることが好ましい。これによれば、弾性変形部の表面に、第一山部から所定の間隔を設けて第二山部が形成され、これにより、第一山部と第二山部との間に、横壁が第一山部と第二山部の側面によって構成されると共に底部が弾性変形部の表面によって構成された溝部が形成されることとなる。この溝部の底部(弾性変形部において、表面に第一山部及び第二山部が形成されていない部分)を、間隔保持部材を建具枠又は開口下地に固定する際に取付け具を打ち込む取付部とすることにより、溝部内に、取付け具を打ち込むための装置の先端部を落とし込むだけで取付け具の打ち込み位置の位置決めを更に容易に行うことができ、より確実に取付部に取付け具を打ち込むことができる。
【0014】
また、本発明における間隔保持部材において、両面にそれぞれ建具枠接触面と下地接触面とを設けてマット状又はテープ状に形成された弾性変形部によって構成された間隔保持形成母材の一部を切断してなることが好ましい。これによれば、間隔保持形成母材の一部を切断して間隔保持部材を形成することができ、間隔保持形成母材から間隔保持部材を切り出す長さを調節するだけで所望の弾性復帰力を発揮する間隔保持部材を容易に得ることができる。
【0015】
本発明における建具枠調整構造は、壁の開口の小口部に設けられる開口下地と、該開口下地に取り付けられる建具枠と、該建具枠と開口下地との間において当該開口下地の長手方向に沿って複数設けられ、建具枠の長手方向の軸の鉛直度又は水平度を調整する建具枠調整具と、建具枠と開口下地との間において建具枠調整具と同一位置、建具枠調整具間の位置、又は建具枠調整具間の複数位置に設けられ、開口下地に対する建具枠の間隔を当該建具枠の幅方向に亘って一定に保持する間隔保持部材と、が設けられていることが好ましい。これによれば、建具枠調整具によって建具枠と開口下地との間隔が調整されると共に、間隔保持部材によってころびが抑制等されることとなり、建具枠の長手方向に亘って、開口下地による支持を安定的なものとすることができる。
【0016】
また、建具枠調整具と間隔保持部材を同一位置に設けることで、いずれか一方がいずれか他方を取り付ける場合のガイドとなり、取付け作業を効率的に行うことができるものとなる。更に、建具枠調整具と間隔保持部材とを建具枠の長さ方向の同一位置に設けることで、これらの部材の取付け長さの短小化を図ることができ、長さ方向に大きさが小さい建具枠に対しても本発明を適用することができる。また、間隔保持部材を、建具枠調整具間の位置、又は建具枠調整具間の複数位置に設けることで、一方の部材を取り付ける際に他方の部材が当該取付けの妨げとなることはなく、施工性の向上が図られる。また、建具枠調整具においてもある程度のころび抑止力を期待できるのであれば、長手方向に転びを抑止する部材(建具枠調整具及び間隔保持部材)が密に配されることとなり、全体の転び抑止効果をさらに向上させることができる。
【0017】
また、本発明における建具枠調整構造において、間隔保持部材は、建具枠に当接する建具枠接触面と、開口下地に当接する下地接触面とを備えると共に、建具枠接触面と下地接触面との間に、当該建具枠接触面と下地接触面との離間方向に弾性復帰力を有する弾性変形部が設けられており、弾性変形部に弾性復帰力を蓄えた状態で建具枠と開口下地との間に設けられていることが好ましい。これによれば、間隔保持部材は、開口下地と建具枠との間に設けられたときに、建具枠接触面が建具枠に接触すると共に、下地接触面が開口下地に接触することとなり、これら一対の接触面の間の弾性変形部により各接触面から一対の接触面の離間方向に弾性復帰力を発揮させることができる。このため、建具枠のいずれの位置に当該建具枠のころびを誘引する回転力が作用する場合であっても、当該回転力は間隔保持部材の弾性変形部の弾性変形により吸収されることとなってころびの発生を抑制することができることはもちろん、仮にころびを生じたとしても、当該弾性変形部の弾性復帰力により建具枠を元の姿勢に復帰させることができるものとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、建具枠のころびの発生を抑制することができ、また、仮に建具枠にころびが生じた場合でも、速やかに当該建具枠をもとの姿勢に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る建具枠調整構造が適用される建物の壁の開口及びその周囲を示す斜視図である。
【図2】図1の壁の開口の正面図である。
【図3】図2の建具枠調整具が取り付けられた部位における開口下地及び横建具枠の断面図である。
【図4】図3の建具枠調整具を示す図である。
【図5】図4の建具枠調整具の取り付け手順を示す説明図である。
【図6】図2の間隔保持部材を示す図である。
【図7】間隔保持形成母材を示す図である。
【図8】図6の間隔保持部材を横建具枠に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図9】間隔保持部材が取り付けられた部位における開口下地及び横建具枠の断面図である。
【図10】間隔保持部材の変形例を示す断面図である。
【図11】間隔保持部材の配置の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る間隔保持部材及び建具枠調整構造の一実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
まず、本発明に係る間隔保持部材が適用された建具枠調整構造の全体構成について説明する。図1は、建具枠調整構造が適用される建物の壁の開口及びその周囲を示す斜視図であり、図2は、壁の開口の正面図である。図1、図2に示すように、建物の内部空間には、床11と、天井12と、当該床11から天井12まで延在して居室間又は居室と廊下とを区画する間仕切壁14とが設けられ、該間仕切壁14には、居住者が該間仕切壁14により区画される居室間又は居室と廊下との間を行き来可能とするための開口10が形成されている。
【0022】
また、開口10の側縁部と上縁部を形成する間仕切壁14の小口部には、長尺状の開口下地15が設けられており、該開口下地15には、仕上げ材としての横建具枠(竪枠)20、及び上建具枠(鴨居)21が設けられている。また、該開口10の下縁部を形成する部材として床下地上に建具枠(敷居)22が敷設されている。各建具枠20,21,22の端部はそれぞれ隣り合う建具枠20,21,22の端部に当接している。なお、該開口10には、建具枠20,21,22の内側に嵌め込まれて当該開口10を開閉する一対の引戸や扉(いずれも図示省略)等が設けられる。
【0023】
図2に示すように、間仕切壁14に対応して設けられる建具枠のうち、横建具枠20と上建具枠21はそれぞれ、複数の建具枠調整具50を介して開口下地15に留め付けられている。また、横建具枠20と開口下地15との間、及び上建具枠21と開口下地15との間には、それぞれ間隔保持部材(弾性変形部)60が圧縮された状態で挟み込まれている。当該複数の建具枠調整具50を介して建具枠20,21を開口下地15に留め付けることにより、これら建具枠20,21を開口下地15に取り付けた状態で当該建具枠20,21の姿勢を調整することができる。間隔保持部材60は、開口下地15に対する建具枠20,21の間隔を当該建具枠20,21の幅方向に亘って一定に保持するものである。
【0024】
次に、横建具枠20及び上建具枠21の開口下地15への取り付けについて説明する。以下、横建具枠20の開口下地15への取付けについて説明することとし、上建具枠21については、開口下地15及び横建具枠20の向きが異なるだけで取付け方自体は横建具枠20のものと変わりがないのでその説明を省略する。
【0025】
図3は、開口下地及び横建具枠の延在方向と直交する方向の断面図であり、特に建具枠調整具が取り付けられた部位の断面図である。図3に示すように、横建具枠20は、木材により形成されており、横建具枠20の裏面20wの幅方向の端部に、開口下地15の側部を覆う凸状の重ね代部20aが設けられている。また、横建具枠20には、長手方向に所定間隔で貫通孔20bが複数設けられている。該貫通孔20bは、当該横建具枠20を建具枠調整具50と共に開口下地15に留め付ける留付け具40を挿通させるものであって、当該建具枠調整具50を収容すべく、当該建具枠調整具50の直径と同径若しくは僅かに小さい径で形成されている。留付け具40は、頭部41と、雄ねじ部43を軸部42の先端に有するビスである。
【0026】
なお、留付け具40として、開口下地15へのセルフタップが可能な木ネジ、又は開口下地15が金属下地である場合にあってはセルフタッピングネジ(セルフドリリングネジ)を用いることが好ましい。また、開口下地15に予め雌ねじ部を形成しておくのであれば、これら締結具としてビスを採用することも可能である。
【0027】
次に、建具枠調整具50の詳細について説明する。図4は、建具枠調整具を示す図であり、図4(a)は建具枠調整具の正面図、図4(b)は建具枠調整具の側断面図、図4(c)は建具枠調整具の背面図である。図4(a)〜図4(c)に示すように、建具枠調整具50は、横建具枠20に螺合する雄ねじ部55を外周に有する筒状部51を備えると共に、該筒状部51の内側に設けられて留付け具40を受ける台座部52と、雄ねじ部55の後端側となる筒状部51の一方の端部に設けられる螺入時係合部54と、雄ねじ部55の先端側となる筒状部51の他方の端部に設けられる位置調整時係合部53とを備えている。
【0028】
筒状部51は、横建具枠20の厚さと同程度かやや小さい程度の高さを有する円筒状に形成されており、外周面には、他方の端部を先端側として雄ねじ部55が螺刻されている。
【0029】
台座部52は、筒状部51の内周面の一部を留付け具40の軸部42を挿通可能な程度に縮径して形成されており、これによって、台座部52を通過する通孔56が形成される。これによって、当該留付け具40は、頭部41を台座部52の上面に当接させた状態で軸部42が通孔56を通過するものとなる(図3参照)。
【0030】
位置調整時係合部53は、開口下地15に対する横建具枠20の位置を調整する位置調整時に締め込み工具に係合するものであって、筒状部51の他方の端部に形成されている。本実施形態においては、当該筒状部51の他方の端部の内周面を締め込み工具たる六角レンチに外嵌する六角形に形成して構成されている。
【0031】
螺入時係合部54は、横建具枠20に当該建具枠調整具50を取り付ける螺入時に締め込み工具に係合するものであって、位置調整時係合部53とは反対側の筒状部51の一方の端部に形成されている。本実施形態においては、当該筒状部51の一方の端部の内周面を締め込み工具たる六角レンチ80(図5(a)参照)に外嵌する六角形に形成して構成されている。
【0032】
また、筒状部51の軸心と、通孔56の軸心と、位置調整時係合部53に係合させた六角レンチの回転中心と、螺入時係合部54に係合させた六角レンチの回転中心とは一致している。これによって、建具枠調整具50は、いずれの係合部53、54に回転力を付与したとしても筒状部51の軸心廻りに回転することとなる。
【0033】
次に、建具枠調整具50の横建具枠20への取り付け方法について説明する。図5は、建具枠調整具の取り付け手順を示す図であり、図5(a)は貫通孔に建具枠調整具を捩じ込む構成を示す図であり、図5(b)は貫通孔内に建具枠調整具が捩じ込まれた状態を示す図である。図5(a)に示すように、先ず、横建具枠20の裏面20w側から当該横建具枠20に形成された貫通孔20b内に建具枠調整具50を螺入していく。当該螺入時においては、建具枠調整具50の螺入時係合部54に六角レンチ80の先端部を係合させ、当該六角レンチ80を介して建具枠調整具50に回転力(トルク)を付与していく。
【0034】
当該螺入時係合部54は、筒状部51に形成される雄ねじ部55の後端側に形成されるので、当該回転力を付与されることにより、建具枠調整具50は貫通孔20b内を横建具枠20の表面20zに向けて前進していく。また、当該貫通孔20bは建具枠調整具50の外径と同径もしくは小さい径で形成されているので、当該建具枠調整具50の螺入に伴って、貫通孔20bの周面に雌ねじ部20c(図5(b)参照)が螺刻(タップ形成)されていくものとなる。
【0035】
当該捩じ込み作業を、横建具枠20の裏面20wから突出する建具枠調整具50の突出量が所望の突出量となるまで行う(図5(b)参照)。なお、この所望の突出量について、詳しくは後述する。また、当該作業完了時には、少なくとも貫通孔20bを介して位置調整時係合部53に六角レンチを係合可能な状態とする。
【0036】
次に、間隔保持部材60の詳細について説明する。図6は、間隔保持部材60を示す図であり、図6(a)は間隔保持部材の正面図であり、図6(b)は間隔保持部材の第一山部及び第二山部の延在方向と直交する方向の断面図である。図6(a)及び図6(b)に示すように間隔保持部材60は、平板部65と、平板部65に形成される第一山部61及び第二山部62とより構成される。
【0037】
平板部65は、表面65a及び裏面(建具枠接触面)65bを有する薄板状に形成され、表面65a側から見たときに矩形状に形成されている(図6(a)参照)。
【0038】
第一山部61は、平板部65の表面65aの一部に形成され、表面65aから突出して表面65aの広がり方向に帯状に延びる。即ち、第一山部61は、平板部65の表面65aにおける一方の長手方向の縁部において、当該縁部に沿って縁部の全域に亘って延在している。また、第一山部61には、その頂部を平らに均した頂部平面(下地接触面)61aが形成されている。
【0039】
第二山部62は、平板部65の表面65aにおいて、第一山部61から所定の間隔を設けて形成されると共に、表面65aから第一山部61よりも低い高さで突出して第一山部61の延び方向と同方向に帯状に延びる。即ち、第二山部62は、平板部65の表面65aにおける他方の長手方向の縁部において、第一山部61と所定の間隔を設けて当該縁部に沿って縁部の全域に亘って延在している。
【0040】
ここで、平板部65のうち、その表面65aに第一山部61及び第二山部62が形成されていない部位(第一山部61と第二山部62との間の部位)を、取付部63とする。また、平板部65に第一山部61及び第二山部62を設けることにより、第一山部61と第二山部62との間に、横壁が第一山部61と第二山部62の側面によって構成されると共に底部が取付部63の表面によって構成された溝部64が形成されることとなる。
【0041】
間隔保持部材60は、弾性体としての弾性樹脂又は弾性ゴムによって構成される。間隔保持部材60は、頂部平面61aと裏面65bとの間隔が狭められ厚み方向に押し潰されるような垂直応力を受けたときに弾性復帰力を有する。
【0042】
ここで、間隔保持部材60の形成方法について説明する。図7は、間隔保持形成母材を示す図であり、図7(a)はマット状の間隔保持形成母材を示す図であり、図7(b)はテープ状の間隔保持形成母材を示す図である。図7(a)に示すように、弾性樹脂又は弾性ゴムで形成されたマット状の弾性体165Aに、第一山部61及び第二山部62を複数列形成し、開口下地15に当接する頂部平面61aと横建具枠20に当接する裏面65bとを設けることによって間隔保持形成母材160Aを形成する。このようにして形成された間隔保持形成母材160Aの一部を切断することにより、間隔保持部材60を形成する。即ち、マット状の間隔保持形成母材160Aは、複数の間隔保持部材60が碁盤の目状に連なったものとなっている。また、マット状に限らず、テープ状に形成された間隔保持形成母材を用いてもよい。具体的には、図7(b)に示すように、テープ状に形成された弾性体165Bに、当該弾性体165Bの延在方向に沿って第一山部61及び第二山部62を形成し、開口下地15に当接する頂部平面61aと横建具枠20に当接する裏面65bとを設けることによって間隔保持形成母材160Bを形成する。このようにして形成された間隔保持形成母材160Bの一部を切断することにより間隔保持部材60を形成する。即ち、テープ状の間隔保持形成母材160Bは、複数の間隔保持部材60が直線状に連なったものとなっている。
【0043】
次に、間隔保持部材60の横建具枠20への取り付け構造について説明する。図6(c)は、間隔保持部材に取付け具を打ち込んだ状態を示す断面図である。また図8は、間隔保持部材を横建具枠に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0044】
図6(c)、図8に示すように間隔保持部材60は、間隔保持部材60の裏面65bを横建具枠20の裏面20wに当接させた状態で、取付部63の上面から横建具枠20に向けて打ち込まれた取付け具70によって横建具枠20に取り付けられる。なお、横建具枠20の裏面20wは、図3に示すように、横建具枠20を開口下地15の前面に配置したときに開口下地15と対向する面である。横建具枠20の裏面20wに間隔保持部材60を取り付けることにより、横建具枠20を開口下地15に設置したときに、間隔保持部材60が横建具枠20及び開口下地15によって挟み込まれた状態となる(後述の図9参照)。
【0045】
また、間隔保持部材60は、横建具枠20の裏面20w上において第一山部61の延在方向が横建具枠20の幅方向と整合する向きに配置される。更に、間隔保持部材60は、横建具枠20の裏面20w上において、横建具枠20の長手方向に沿って複数設けられた建具枠調整具50間の位置に取り付けられる(図8参照)。
【0046】
ここで、本実施形態において、取付け具70としてタッカーを用いるものとする。このような取付け具70を打ち込み装置を用いて取付部63に打ち込む場合について説明する。図6(c)に示すように、取付け具70の打ち込みを、打ち込み装置100によって行う場合、打ち込み装置100の先端部100aを溝部64内に落とし込み、先端部100aから取付部63に向けて取付け具70を打ち出す。打ち込み装置100の先端部100aを溝部64内に落とし込む際に、溝部64を構成する第一山部61の側面に先端部100aが当接することにより先端部100aの位置決めがされ、更に、溝部64を構成する第二山部62に、溝部64内に落とし込まれた先端部100aが係合することにより先端部100aの位置ずれが防止されるので、先端部100aが取付部63に対向した状態で位置決めされる。この状態で打ち込み装置100から取付け具70を打ち出すことにより、取付け具70が間隔保持部材60の取付部63に打ち込まれる。
【0047】
次に、横建具枠20の開口下地15への取り付け方法、及び建具枠調整具50を用いた横建具枠20の調整方法について、図3,図5(b),図9を用いて説明する。図9は、開口下地及び横建具枠の延在方向と直交する方向の断面図であり、特に間隔保持部材が取り付けられた部位の断面図である。ここでは、横建具枠20に対して建具枠調整具50及び間隔保持部材60が上述の作業によって予め取り付けられているものとする。
【0048】
まず、横建具枠20を開口下地15へ取り付けるために、図5(b)に示すように、横建具枠20の表面20z側から貫通孔20bに向けて留付け具40を挿入する。当該貫通孔20bには、上記螺入作業によって既に建具枠調整具50が取り付けられているので、当該留付け具40は、建具枠調整具50に挿通されることとなる。
【0049】
そして、留付け具40の先端部は、建具枠調整具50内部の通孔56を通過して横建具枠20の裏面20wより突出する。当該先端部の雄ねじ部43を開口下地15に向けて締め込んでいくことにより、当該建具枠調整具50を介して横建具枠20は開口下地15に留め付けられることとなる(図3参照)。
【0050】
また、当該締め込み作業においては、筒状部51の内周面に台座部52が設けられているので、留付け具40は、頭部41が台座部52の上面に当接する位置まで達すると、以後の挿入は妨げられこととなる。かかる位置まで留付け具40を捩じ込み、建具枠調整具50を介しての開口下地15への横建具枠20の取り付けを完了する。
【0051】
このとき、横建具枠20の裏面20wには間隔保持部材60が取り付けられているので、図9に示すように、横建具枠20と開口下地15との間に間隔保持部材60が挟み込まれた状態となる。なお、間隔保持部材60の頂部平面61aが開口下地15に当接する。
【0052】
ここで、上述の捩じ込み作業において、横建具枠20の裏面20wから突出させた建具枠調整具50の突出量について説明する。この突出量は、横建具枠20を留付け具40によって開口下地15に取り付けたときに、間隔保持部材60が横建具枠20及び開口下地15によって所定量圧縮される長さとする。即ち、建具枠調整具50の突出量は、間隔保持部材60の高さ(頂部平面61aと裏面65bとの間の長さ)よりも短い長さとする。本実施形態においては、例えば、間隔保持部材60の高さを7.5mmとし、建具枠調整具50の突出量を3.5mmとする。これにより、横建具枠20を留付け具40によって開口下地15に取り付けたときに、例えば、間隔保持部材60が7.5mmから3.5mmの高さまで圧縮されることとなり、開口下地15及び横建具枠20に間隔保持部材60から弾性復帰力が作用する。
【0053】
横建具枠20の取付後、横建具枠20の姿勢を調整する場合には、横建具枠20の表面20z側から貫通孔20bに向けて六角レンチ(不図示)を挿入し、当該六角レンチの先端を建具枠調整具50の位置調整時係合部53に係合させる。その後、六角レンチに回転力を付与する。
【0054】
これにより、図3,図9に示すように、建具枠調整具50は、留付け具40の軸心廻りにその場で空転することとなるが、筒状部51の雄ねじ部55と、当該雄ねじ部55により螺刻された横建具枠20の貫通孔20bの内周壁の雌ねじ部20cとが噛み合っている状態であるので、これによって、当該建具枠調整具50の空転に伴って相対的に横建具枠20が開口下地15に対して出退することとなる。また、横建具枠20の裏面20wは開口下地15の表面に対して近接離間することとなり、これらの間隔が拡縮することとなる。
【0055】
また、横建具枠20を出退させるときに、横建具枠20と開口下地15との間隔が間隔保持部材60の高さよりも広がることがないように、建具枠調整具50の回転量を調節する。これにより、横建具枠20の姿勢の調節後においても、間隔保持部材60が横建具枠20及び開口下地15によって常に圧縮された状態となり、このため横建具枠20及び開口下地15に対して間隔保持部材60から常に弾性復帰力が作用した状態となる。
【0056】
このような間隔調整を各建具枠調整具50に対して行うことにより、横建具枠20の開口下地15に対する姿勢が調整され、開口下地15の姿勢に拘わらず、横建具枠20を鉛直とすることが可能となる。このように、横建具枠20に取り付けられた建具枠調整具50によって、横建具枠20の長手方向の軸における鉛直度を調整することができる。鉛直度の調整後、必要に応じて貫通孔20bに戸当たり等の蓋体を被せ、建具枠の取付けを完了する。
【0057】
上建具枠21についても横建具枠20と同様に、上建具枠21に設けられた建具枠調整具50を回転させることにより、上建具枠21の開口下地15に対する姿勢が調整され、開口下地15の姿勢に拘わらず、上建具枠21を水平とすることができる。このように、上建具枠21に取り付けられた建具枠調整具50によって、上建具枠21の長手方向の軸における水平度を調整することができる。
【0058】
以上、本実施形態によれば、間隔保持部材60が開口下地15と建具枠20,21との間に設けられたときに、頂部平面61aが開口下地15に接触すると共に、裏面65bが建具枠20,21に接触することとなり、間隔保持部材60が弾性変形することによって頂部平面61a及び裏面65bから開口下地15及び建具枠20,21に対してこれらの離間方向に弾性復帰力が作用することとなる。このため、建具枠20,21のいずれの位置に当該建具枠20,21のころびを誘引する回転力が作用する場合であっても、当該回転力は間隔保持部材60の弾性変形により吸収されることとなってころびの発生を抑制することができることはもちろん、仮にころびを生じたとしても、当該間隔保持部材60の弾性復帰力により建具枠20,21を元の姿勢に復帰させることができるものとなる。
【0059】
また、間隔保持部材60を、弾性体としての弾性樹脂又は弾性ゴムによって構成し、このような弾性体の両面にそれぞれ建具枠20,21に当接する裏面65bと、開口下地15に当接する頂部平面61aとを形成することで、間隔保持部材60を極めて容易に形成することができる。例えば、従来の板バネにあっては弾性変形性能の調整のために金型の変更を要するのみならず、当該板バネの肉厚変更や材質の変更等が必要となって、調整自体が大掛かりとなるか、多種多様な板バネを準備しておく必要が生じる。これに対し、本実施形態においては、間隔保持部材60を弾性樹脂又は弾性ゴムを用いて形成することにより、間隔保持部材60の長さや厚さを調整するのみで当該弾性変形能(弾性復帰能)を容易に調整することができる。
【0060】
また、第一山部61及び第二山部62が形成された間隔保持形成母材160A,160Bの一部を切断して間隔保持部材60を形成することができ、施工現場において要求に応じた間隔保持部材60を容易に形成することができるものとなる。例えば、従来の板バネにあっては、開口下地及び建具枠に板バネが挟まれた場合、一対の脚部の変形のみならず、当該一対の脚部に作用する荷重を受けることで本体部分がはらむ等して変形するものであるため、所望の弾性力を得ようとした場合、板バネの設計が複雑なものとなっていた。これに対し、本実施形態においては、間隔保持形成母材160A,160Bから間隔保持部材60を切り出す際の長さを調節するだけで、所望の弾性復帰力を発揮する間隔保持部材60を容易に得ることができる。
【0061】
また、間隔保持部材60において、第一山部61及び第二山部62が形成されていない部位を、間隔保持部材60を建具枠20,21に固定する際に取付け具70を打ち込む取付部63とすることにより、当該取付部63は、第一山部61や第二山部62よりも高さが低く、厚みが薄いため、取付部63から建具枠20,21に向けて取付け具70を容易に打ち込むことができる。また、間隔保持部材60に、横壁が第一山部61と第二山部62との側面によって構成されると共に底部が取付部63の表面によって構成された溝部64が形成されることにより、溝部64内に打ち込み装置100の先端部100aを落とし込むだけで取付け具70の打ち込み位置の位置決めを容易に行うことができ、より確実に取付部63に取付け具70を打ち込むことができる。
【0062】
また、建具枠調整具50によって建具枠20,21と開口下地15との間隔が調整されると共に、間隔保持部材60によってころびが抑制等されることとなり、建具枠20,21の長手方向に亘って、開口下地15による支持を安定的なものとすることができる。
【0063】
また、間隔保持部材60を、建具枠調整具50間の位置に設けることで、一方の部材を取り付ける際に他方の部材が当該取付けの妨げとなることはなく、施工性の向上が図られる。また、建具枠調整具50においてもある程度のころび抑止力を期待できるのであれば、長手方向に転びを抑止する部材(建具枠調整具50及び間隔保持部材60)が密に配されることとなり、全体の転び抑止効果をさらに向上させることができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、建具枠20,21における建具枠調整具50間の位置に間隔保持部材60を取り付けるものとしたが、建具枠20,21における建具枠調整具50間の複数の位置に間隔保持部材60をそれぞれ取り付けることもできる。
【0065】
また、間隔保持部材60の中央部に建具枠調整具50が貫通する孔を設け、該孔と建具枠20,21の貫通孔20bとを整合させて間隔保持部材60を建具枠20,21に取り付けることもできる。即ち、貫通孔20bに取り付けられた建具枠調整具50が間隔保持部材60の中央部に設けた孔を通るため、間隔保持部材60と建具枠調整具50とが同一位置に設けられる構成となる。この場合には、いずれか一方がいずれか他方を取り付ける場合のガイドとなり、取付け作業を効率的に行うことができるものとなる。更に、建具枠調整具50と間隔保持部材60とを建具枠20,21の長さ方向の同一位置に設けることで、これらの部材の取付け長さの短小化を図ることができ、長さ方向に大きさが小さい建具枠20,21に対しても建具枠調整具50及び間隔保持部材60を取り付けることができる。
【0066】
また、間隔保持部材60の形状についても上記に限定されるものではない。ここで、間隔保持部材の変形例について説明する。図10は、変形例における間隔保持部材の第一山部の延在方向と直交する方向の断面図である。なお、本変形例における間隔保持部材60Aは、上記実施形態における間隔保持部材60の第二山部62を設けない構成であり、実施形態における間隔保持部材60と同一構成要素については同一番号を付して説明を省略する。図10に示すように、間隔保持部材60Aは、平板部65の表面65aの一部に第一山部61が形成されている。平板部65のうち、その表面65aに第一山部61が形成されていない部位が、取付部63となる。打ち込み装置100によって取付け具70を取付部63に打ち込む場合、打ち込み装置100の先端部100aを第一山部61の側面に当接させることにより、先端部100aの位置決めを行うことができる。この場合にも、取付け具70の打ち込み位置の位置決めを容易に行うことができ、より確実に取付部63に取付け具70を打ち込むことができる。
【0067】
なお、間隔保持部材の形状として、表裏面とも全面に亘って扁平に形成されて且つ厚さ方向に弾性復帰力を蓄えつつ圧縮可能な(厚さ方向に弾性変形可能な)薄板状としても良い。この場合であっても、間隔保持部材が弾性変形することによって開口下地及び建具枠に対してこれらの離間方向に弾性復帰力が作用し、ころびの発生を抑制することができる。
【0068】
また、建具枠20,21に建具枠調整具50が取り付けられているものとしたが、建具枠調整具50を用いずに、間隔保持部材60の弾性復帰力によって開口下地15と建具枠20,21との間隔調整を行うこともできる。具体的には、開口下地15と建具枠20,21との間に間隔保持部材60を挟み込んだ状態で、建具枠20,21に設けた貫通孔に表面側から木ネジを通し、該木ネジを開口下地15に捩じ込む。この木ネジの捩じ込みによって、開口下地15と建具枠20,21との間の間隔保持部材60を所定の高さとなるまで圧縮する。この状態で木ネジを更に開口下地15に捩じ込むと、間隔保持部材60の弾性復帰力によって建具枠20,21の姿勢が維持されたままの状態で建具枠20,21と開口下地15との間隔が狭くなり、反対に、木ネジを緩めると、間隔保持部材60の弾性復帰力によって建具枠20,21の姿勢が維持されたままの状態で建具枠20,21と開口下地15との間隔が広くなる。このように、間隔保持部材60の弾性復帰力によって建具枠20,21のころびを抑制しつつ、建具枠20,21の姿勢を調整することができる。
【0069】
また、間隔保持部材60を、第一山部61の延在方向が建具枠20,21の幅方向と整合する向きに配置するものとしたが、この配置に限定されるものではない。図11に、間隔保持部材の配置の変形例を示す。図11に示すように、横建具枠20に間隔保持部材60Bを取り付ける場合、横建具枠20の裏面20wにおいて、横建具枠20の幅方向の両端部近傍にそれぞれ間隔保持部材60Bを配置する。なお、間隔保持部材60Bは、上記実施形態における間隔保持部材60の長さを短くしたものである。また、間隔保持部材60Bを、第一山部61の延在方向が横建具枠20の長手方向と整合する向きに配置する。同様に、上建具枠21についても、上建具枠21の幅方向の両端部近傍にそれぞれ間隔保持部材60Bを配置する。この場合であっても、建具枠20,21の幅方向の両端部近傍にそれぞれ設けられた間隔保持部材60Bによって、建具枠20,21のころびの抑制、及びころびが生じた場合でも当該建具枠をもとの姿勢に復帰させることができる。
【0070】
また、間隔保持部材60,60A,60Bを建具枠20,21に取り付けるものとしたが、開口下地15に取り付けても、上記と同じ効果を得ることができる。
【0071】
また、間隔保持部材60を弾性樹脂又は弾性ゴムによって形成するものとしたが、他の弾性体を用いてもよい。また、取付け具70としてタッカーを用いるものとしたが、タッカーに限定されるものではなく、例えば両面テープや接着剤によって間隔保持部材60を横建具枠20等に取り付けたり、ビスによって取り付けたりすることができる。
【0072】
また、間隔保持部材60の頂部平面61aに、開口下地15に当接される突き当て部材を配置し、当該突き当て部材の面を開口下地15に当接する下地接触面とすることもできる。同様に、間隔保持部材60の裏面65bに、建具枠20,21に当接される突き当て部材を配置し、当該突き当て部材の面を建具枠20,21に当接する建具枠接触面とすることもできる。
【符号の説明】
【0073】
10…開口、15…開口下地、20…横建具枠(建具枠)、21…上建具枠(建具枠)、50…建具枠調整具、60,60A,60B…間隔保持部材(弾性変形部)61a…頂部平面(下地接触面)、65a…表面、65b…裏面(建具枠接触面)、65…平板部、61…第一山部、62…第二山部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁に設けられた開口部を形成する開口下地と、該開口下地に対して取り付けられる建具枠との間に設けられる間隔保持部材、及び開口下地に対する建具枠の姿勢を調整する建具枠調整構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扉や引き戸等の建具が設置される壁の開口に建具枠を設ける場合、当該開口周縁の小口部に開口下地を設け、当該開口下地に仕上げとしての建具枠を取り付ける施工方法が一般的である。具体的には、建具枠を開口下地の前面に設置し、該開口下地と建具枠との間に複数の隙間調整材を挟み込み、建具枠が真っ直ぐに立っていることを確認した上で、建具枠の上から隙間調整材を通して木ネジ等の取付け具を開口下地に打ち込んで建具枠を開口下地に固定する方法が行われていた。
【0003】
かかる固定方法においては、建具枠の垂直度を調節するために隙間調整材を適切な厚みに揃えるのに大変手間がかかってしまう。詳述すると、隙間調整材を仮付けした状態で建具枠を設置し、目測や、さげ振り、レーザー光を使った測定等で当該建具枠の垂直度を確認したあと、垂直度に問題がある場合には隙間調整材を適切な厚みに調整し直して、再度、建具枠を仮付けして垂直度を確認している。このような作業を、建具枠の垂直度が所望の状態となるまで繰り返し行う必要があり、この作業後に建具枠の固定作業に入ることとなるので、かかる建具枠の垂直度の調整に著しく手間が掛かってしまうという問題があった。
【0004】
かかる問題を解決すべく、特許文献1には、建物の壁に設けられた開口部を形成する開口下地と、該開口下地に対して取り付けられる建具枠との間に板バネを介在させた構成が開示されている。この板バネは、建具枠の幅方向に沿って当該建具枠に取り付けねじによって取り付けられる横長の本体部分と、弾性変形可能に形成されると共に、本体部分の左右両端から開口下地に向かって延在する一対の脚部とを有し、該一対の脚部によって開口下地に建具枠を弾性的に支持している。
【0005】
ところで、何らかの治具や調整具などを介することで開口下地に離間した状態で支持される建具枠に、例えば開度が制限されていない(ドアストッパーや戸当たりが併設されていない)扉を取り付け、当該扉を全開等させた場合や、引き戸の戸先を衝突させた場合、建具枠には、当該建具枠の長手方向の軸廻りの回転力が作用し易く、これによって建具枠の姿勢が開口下地に対して軸廻りに変化した状態となってしまう(以下、このような建具枠の姿勢が変化することを「建具枠のころび」といい、当該姿勢状態を「ころび」という)ことがある。かかる回転力に対し、上記特許文献1の構成においては、板バネの一対の脚部の弾性変形能によって抵抗することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−160942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の板バネは、開口下地に建具枠を取り付ける過程でこれら開口下地と建具枠とで板バネを挟持し、当該挟持圧によって板バネの一対の脚部を独立して弾性変形させることにより、たとえ開口下地の取り付け面が傾いていたとしても、建具枠を傾きなく支持しようとするものである。しかしながら、板バネの各脚部の先端部のみが開口下地に接触する構成であるため、建具枠に対する扉の取付け位置や引き戸の戸先の衝突位置によっては、当該板バネではころびを生じさせる回転力に対して充分な抵抗力を発揮させることができないという問題がある。また、上述の如く脚部の先端部のみが開口下地に接触する構成であるため、ころびを生じさせる荷重が各脚部に集中することとなるが、数十年単位の長期に亘ってころびを生じさせる荷重を何度も受けると、当該脚部が疲労により損傷してしまうのみならず、当該脚部を受ける開口下地も板バネの脚部の食い込み等によって損傷してしまうことが考えられる。
【0008】
そこで本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、数十年単位の長期に亘って適切に建具枠のころびの発生を抑制することができ、また、仮に建具枠にころびが生じた場合でも、速やかに当該建具枠をもとの姿勢に復帰させることができる簡易な構成の間隔保持部材及び建具枠調整構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明における間隔保持部材は、壁の開口の小口部に設けられる開口下地と、該開口下地に所定の間隔で対向した状態で取り付けられる建具枠との間に設けられ、開口下地に対する建具枠の間隔を当該建具枠の幅方向に亘って一定に保持する間隔保持部材であって、建具枠に当接する建具枠接触面と、開口下地に当接する下地接触面とを備えると共に、建具枠接触面と下地接触面との間に、当該建具枠接触面と下地接触面との離間方向に弾性復帰力を有する弾性変形部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、間隔保持部材は、開口下地と建具枠との間に設けられたときに、建具枠接触面が建具枠に接触すると共に、下地接触面が開口下地に接触することとなり、これら一対の接触面の間の弾性変形部により各接触面から一対の接触面の離間方向に弾性復帰力を発揮させることができる。このため、建具枠のいずれの位置に当該建具枠のころびを誘引する回転力が作用する場合であっても、当該回転力は間隔保持部材の弾性変形部の弾性変形により吸収されることとなってころびの発生を抑制することができることはもちろん、仮にころびを生じたとしても、当該弾性変形部の弾性復帰力により建具枠を元の姿勢に復帰させることができるものとなる。また、建具枠及び開口下地に対して間隔保持部材が面で接触するため、間隔保持部材から弾性復帰力が建具枠及び開口下地に加わったときに弾性復帰力が集中することがなく、建具枠及び開口下地の損傷を抑制することができる。
【0011】
また、本発明における間隔保持部材において、弾性変形部は、薄板状を呈する弾性樹脂又は弾性ゴムにより形成されていることが好ましい。これによれば、弾性樹脂又は弾性ゴムの両面にそれぞれ建具枠接触面と下地接触面とを形成することで間隔保持部材を極めて容易に形成することができる。また、従来の板バネにあっては弾性変形性能の調整のために金型の変更を要するのみならず、当該板バネの肉厚変更や材質の変更等が必要となって、調整自体が大掛かりとなるか、多種多様な板バネを準備しておく必要が生じる。これに対し、本発明では、弾性樹脂又は弾性ゴムを用いて弾性変形部を形成することにより、弾性変形部の長さや厚さを調整するのみで当該弾性変形能(弾性復帰能)を容易に調整することができる。
【0012】
また、本発明における間隔保持部材において、弾性変形部は、表面及び裏面を有する平板状の平板部と、平板部の表面の一部に形成され、表面から突出して表面の広がり方向に帯状に延びる第一山部と、を備え、第一山部の頂部の面が建具枠接触面と下地接触面のいずれか一方となり、平板部の裏面が建具枠接触面と下地接触面のいずれか他方となることが好ましい。これによれば、弾性変形部の表面に、第一山部が形成された部位と、第一山部が形成されていない部位とが形成される。この弾性変形部において、表面に第一山部が形成されていない部位を、間隔保持部材を建具枠又は開口下地に固定する際に取付け具を打ち込む取付部とすることにより、当該取付部は、第一山部よりも高さが低く、厚みが薄いため、取付部から建具枠又は開口下地に向けて取付け具を容易に打ち込むことができる。また、第一山部の側面に、取付け具を打ち込むための装置の先端部を当接させることにより取付け具の打ち込み位置の位置決めを行うことができるため、取付部に確実に取付け具を打ち込むことができる。
【0013】
また、本発明における間隔保持部材において、弾性変形部は、表面において、第一山部から所定の間隔を設けて形成されると共に、表面から第一山部よりも低い高さで突出して第一山部の延び方向と同方向に帯状に延びる第二山部を更に備えることが好ましい。これによれば、弾性変形部の表面に、第一山部から所定の間隔を設けて第二山部が形成され、これにより、第一山部と第二山部との間に、横壁が第一山部と第二山部の側面によって構成されると共に底部が弾性変形部の表面によって構成された溝部が形成されることとなる。この溝部の底部(弾性変形部において、表面に第一山部及び第二山部が形成されていない部分)を、間隔保持部材を建具枠又は開口下地に固定する際に取付け具を打ち込む取付部とすることにより、溝部内に、取付け具を打ち込むための装置の先端部を落とし込むだけで取付け具の打ち込み位置の位置決めを更に容易に行うことができ、より確実に取付部に取付け具を打ち込むことができる。
【0014】
また、本発明における間隔保持部材において、両面にそれぞれ建具枠接触面と下地接触面とを設けてマット状又はテープ状に形成された弾性変形部によって構成された間隔保持形成母材の一部を切断してなることが好ましい。これによれば、間隔保持形成母材の一部を切断して間隔保持部材を形成することができ、間隔保持形成母材から間隔保持部材を切り出す長さを調節するだけで所望の弾性復帰力を発揮する間隔保持部材を容易に得ることができる。
【0015】
本発明における建具枠調整構造は、壁の開口の小口部に設けられる開口下地と、該開口下地に取り付けられる建具枠と、該建具枠と開口下地との間において当該開口下地の長手方向に沿って複数設けられ、建具枠の長手方向の軸の鉛直度又は水平度を調整する建具枠調整具と、建具枠と開口下地との間において建具枠調整具と同一位置、建具枠調整具間の位置、又は建具枠調整具間の複数位置に設けられ、開口下地に対する建具枠の間隔を当該建具枠の幅方向に亘って一定に保持する間隔保持部材と、が設けられていることが好ましい。これによれば、建具枠調整具によって建具枠と開口下地との間隔が調整されると共に、間隔保持部材によってころびが抑制等されることとなり、建具枠の長手方向に亘って、開口下地による支持を安定的なものとすることができる。
【0016】
また、建具枠調整具と間隔保持部材を同一位置に設けることで、いずれか一方がいずれか他方を取り付ける場合のガイドとなり、取付け作業を効率的に行うことができるものとなる。更に、建具枠調整具と間隔保持部材とを建具枠の長さ方向の同一位置に設けることで、これらの部材の取付け長さの短小化を図ることができ、長さ方向に大きさが小さい建具枠に対しても本発明を適用することができる。また、間隔保持部材を、建具枠調整具間の位置、又は建具枠調整具間の複数位置に設けることで、一方の部材を取り付ける際に他方の部材が当該取付けの妨げとなることはなく、施工性の向上が図られる。また、建具枠調整具においてもある程度のころび抑止力を期待できるのであれば、長手方向に転びを抑止する部材(建具枠調整具及び間隔保持部材)が密に配されることとなり、全体の転び抑止効果をさらに向上させることができる。
【0017】
また、本発明における建具枠調整構造において、間隔保持部材は、建具枠に当接する建具枠接触面と、開口下地に当接する下地接触面とを備えると共に、建具枠接触面と下地接触面との間に、当該建具枠接触面と下地接触面との離間方向に弾性復帰力を有する弾性変形部が設けられており、弾性変形部に弾性復帰力を蓄えた状態で建具枠と開口下地との間に設けられていることが好ましい。これによれば、間隔保持部材は、開口下地と建具枠との間に設けられたときに、建具枠接触面が建具枠に接触すると共に、下地接触面が開口下地に接触することとなり、これら一対の接触面の間の弾性変形部により各接触面から一対の接触面の離間方向に弾性復帰力を発揮させることができる。このため、建具枠のいずれの位置に当該建具枠のころびを誘引する回転力が作用する場合であっても、当該回転力は間隔保持部材の弾性変形部の弾性変形により吸収されることとなってころびの発生を抑制することができることはもちろん、仮にころびを生じたとしても、当該弾性変形部の弾性復帰力により建具枠を元の姿勢に復帰させることができるものとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、建具枠のころびの発生を抑制することができ、また、仮に建具枠にころびが生じた場合でも、速やかに当該建具枠をもとの姿勢に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る建具枠調整構造が適用される建物の壁の開口及びその周囲を示す斜視図である。
【図2】図1の壁の開口の正面図である。
【図3】図2の建具枠調整具が取り付けられた部位における開口下地及び横建具枠の断面図である。
【図4】図3の建具枠調整具を示す図である。
【図5】図4の建具枠調整具の取り付け手順を示す説明図である。
【図6】図2の間隔保持部材を示す図である。
【図7】間隔保持形成母材を示す図である。
【図8】図6の間隔保持部材を横建具枠に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図9】間隔保持部材が取り付けられた部位における開口下地及び横建具枠の断面図である。
【図10】間隔保持部材の変形例を示す断面図である。
【図11】間隔保持部材の配置の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る間隔保持部材及び建具枠調整構造の一実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
まず、本発明に係る間隔保持部材が適用された建具枠調整構造の全体構成について説明する。図1は、建具枠調整構造が適用される建物の壁の開口及びその周囲を示す斜視図であり、図2は、壁の開口の正面図である。図1、図2に示すように、建物の内部空間には、床11と、天井12と、当該床11から天井12まで延在して居室間又は居室と廊下とを区画する間仕切壁14とが設けられ、該間仕切壁14には、居住者が該間仕切壁14により区画される居室間又は居室と廊下との間を行き来可能とするための開口10が形成されている。
【0022】
また、開口10の側縁部と上縁部を形成する間仕切壁14の小口部には、長尺状の開口下地15が設けられており、該開口下地15には、仕上げ材としての横建具枠(竪枠)20、及び上建具枠(鴨居)21が設けられている。また、該開口10の下縁部を形成する部材として床下地上に建具枠(敷居)22が敷設されている。各建具枠20,21,22の端部はそれぞれ隣り合う建具枠20,21,22の端部に当接している。なお、該開口10には、建具枠20,21,22の内側に嵌め込まれて当該開口10を開閉する一対の引戸や扉(いずれも図示省略)等が設けられる。
【0023】
図2に示すように、間仕切壁14に対応して設けられる建具枠のうち、横建具枠20と上建具枠21はそれぞれ、複数の建具枠調整具50を介して開口下地15に留め付けられている。また、横建具枠20と開口下地15との間、及び上建具枠21と開口下地15との間には、それぞれ間隔保持部材(弾性変形部)60が圧縮された状態で挟み込まれている。当該複数の建具枠調整具50を介して建具枠20,21を開口下地15に留め付けることにより、これら建具枠20,21を開口下地15に取り付けた状態で当該建具枠20,21の姿勢を調整することができる。間隔保持部材60は、開口下地15に対する建具枠20,21の間隔を当該建具枠20,21の幅方向に亘って一定に保持するものである。
【0024】
次に、横建具枠20及び上建具枠21の開口下地15への取り付けについて説明する。以下、横建具枠20の開口下地15への取付けについて説明することとし、上建具枠21については、開口下地15及び横建具枠20の向きが異なるだけで取付け方自体は横建具枠20のものと変わりがないのでその説明を省略する。
【0025】
図3は、開口下地及び横建具枠の延在方向と直交する方向の断面図であり、特に建具枠調整具が取り付けられた部位の断面図である。図3に示すように、横建具枠20は、木材により形成されており、横建具枠20の裏面20wの幅方向の端部に、開口下地15の側部を覆う凸状の重ね代部20aが設けられている。また、横建具枠20には、長手方向に所定間隔で貫通孔20bが複数設けられている。該貫通孔20bは、当該横建具枠20を建具枠調整具50と共に開口下地15に留め付ける留付け具40を挿通させるものであって、当該建具枠調整具50を収容すべく、当該建具枠調整具50の直径と同径若しくは僅かに小さい径で形成されている。留付け具40は、頭部41と、雄ねじ部43を軸部42の先端に有するビスである。
【0026】
なお、留付け具40として、開口下地15へのセルフタップが可能な木ネジ、又は開口下地15が金属下地である場合にあってはセルフタッピングネジ(セルフドリリングネジ)を用いることが好ましい。また、開口下地15に予め雌ねじ部を形成しておくのであれば、これら締結具としてビスを採用することも可能である。
【0027】
次に、建具枠調整具50の詳細について説明する。図4は、建具枠調整具を示す図であり、図4(a)は建具枠調整具の正面図、図4(b)は建具枠調整具の側断面図、図4(c)は建具枠調整具の背面図である。図4(a)〜図4(c)に示すように、建具枠調整具50は、横建具枠20に螺合する雄ねじ部55を外周に有する筒状部51を備えると共に、該筒状部51の内側に設けられて留付け具40を受ける台座部52と、雄ねじ部55の後端側となる筒状部51の一方の端部に設けられる螺入時係合部54と、雄ねじ部55の先端側となる筒状部51の他方の端部に設けられる位置調整時係合部53とを備えている。
【0028】
筒状部51は、横建具枠20の厚さと同程度かやや小さい程度の高さを有する円筒状に形成されており、外周面には、他方の端部を先端側として雄ねじ部55が螺刻されている。
【0029】
台座部52は、筒状部51の内周面の一部を留付け具40の軸部42を挿通可能な程度に縮径して形成されており、これによって、台座部52を通過する通孔56が形成される。これによって、当該留付け具40は、頭部41を台座部52の上面に当接させた状態で軸部42が通孔56を通過するものとなる(図3参照)。
【0030】
位置調整時係合部53は、開口下地15に対する横建具枠20の位置を調整する位置調整時に締め込み工具に係合するものであって、筒状部51の他方の端部に形成されている。本実施形態においては、当該筒状部51の他方の端部の内周面を締め込み工具たる六角レンチに外嵌する六角形に形成して構成されている。
【0031】
螺入時係合部54は、横建具枠20に当該建具枠調整具50を取り付ける螺入時に締め込み工具に係合するものであって、位置調整時係合部53とは反対側の筒状部51の一方の端部に形成されている。本実施形態においては、当該筒状部51の一方の端部の内周面を締め込み工具たる六角レンチ80(図5(a)参照)に外嵌する六角形に形成して構成されている。
【0032】
また、筒状部51の軸心と、通孔56の軸心と、位置調整時係合部53に係合させた六角レンチの回転中心と、螺入時係合部54に係合させた六角レンチの回転中心とは一致している。これによって、建具枠調整具50は、いずれの係合部53、54に回転力を付与したとしても筒状部51の軸心廻りに回転することとなる。
【0033】
次に、建具枠調整具50の横建具枠20への取り付け方法について説明する。図5は、建具枠調整具の取り付け手順を示す図であり、図5(a)は貫通孔に建具枠調整具を捩じ込む構成を示す図であり、図5(b)は貫通孔内に建具枠調整具が捩じ込まれた状態を示す図である。図5(a)に示すように、先ず、横建具枠20の裏面20w側から当該横建具枠20に形成された貫通孔20b内に建具枠調整具50を螺入していく。当該螺入時においては、建具枠調整具50の螺入時係合部54に六角レンチ80の先端部を係合させ、当該六角レンチ80を介して建具枠調整具50に回転力(トルク)を付与していく。
【0034】
当該螺入時係合部54は、筒状部51に形成される雄ねじ部55の後端側に形成されるので、当該回転力を付与されることにより、建具枠調整具50は貫通孔20b内を横建具枠20の表面20zに向けて前進していく。また、当該貫通孔20bは建具枠調整具50の外径と同径もしくは小さい径で形成されているので、当該建具枠調整具50の螺入に伴って、貫通孔20bの周面に雌ねじ部20c(図5(b)参照)が螺刻(タップ形成)されていくものとなる。
【0035】
当該捩じ込み作業を、横建具枠20の裏面20wから突出する建具枠調整具50の突出量が所望の突出量となるまで行う(図5(b)参照)。なお、この所望の突出量について、詳しくは後述する。また、当該作業完了時には、少なくとも貫通孔20bを介して位置調整時係合部53に六角レンチを係合可能な状態とする。
【0036】
次に、間隔保持部材60の詳細について説明する。図6は、間隔保持部材60を示す図であり、図6(a)は間隔保持部材の正面図であり、図6(b)は間隔保持部材の第一山部及び第二山部の延在方向と直交する方向の断面図である。図6(a)及び図6(b)に示すように間隔保持部材60は、平板部65と、平板部65に形成される第一山部61及び第二山部62とより構成される。
【0037】
平板部65は、表面65a及び裏面(建具枠接触面)65bを有する薄板状に形成され、表面65a側から見たときに矩形状に形成されている(図6(a)参照)。
【0038】
第一山部61は、平板部65の表面65aの一部に形成され、表面65aから突出して表面65aの広がり方向に帯状に延びる。即ち、第一山部61は、平板部65の表面65aにおける一方の長手方向の縁部において、当該縁部に沿って縁部の全域に亘って延在している。また、第一山部61には、その頂部を平らに均した頂部平面(下地接触面)61aが形成されている。
【0039】
第二山部62は、平板部65の表面65aにおいて、第一山部61から所定の間隔を設けて形成されると共に、表面65aから第一山部61よりも低い高さで突出して第一山部61の延び方向と同方向に帯状に延びる。即ち、第二山部62は、平板部65の表面65aにおける他方の長手方向の縁部において、第一山部61と所定の間隔を設けて当該縁部に沿って縁部の全域に亘って延在している。
【0040】
ここで、平板部65のうち、その表面65aに第一山部61及び第二山部62が形成されていない部位(第一山部61と第二山部62との間の部位)を、取付部63とする。また、平板部65に第一山部61及び第二山部62を設けることにより、第一山部61と第二山部62との間に、横壁が第一山部61と第二山部62の側面によって構成されると共に底部が取付部63の表面によって構成された溝部64が形成されることとなる。
【0041】
間隔保持部材60は、弾性体としての弾性樹脂又は弾性ゴムによって構成される。間隔保持部材60は、頂部平面61aと裏面65bとの間隔が狭められ厚み方向に押し潰されるような垂直応力を受けたときに弾性復帰力を有する。
【0042】
ここで、間隔保持部材60の形成方法について説明する。図7は、間隔保持形成母材を示す図であり、図7(a)はマット状の間隔保持形成母材を示す図であり、図7(b)はテープ状の間隔保持形成母材を示す図である。図7(a)に示すように、弾性樹脂又は弾性ゴムで形成されたマット状の弾性体165Aに、第一山部61及び第二山部62を複数列形成し、開口下地15に当接する頂部平面61aと横建具枠20に当接する裏面65bとを設けることによって間隔保持形成母材160Aを形成する。このようにして形成された間隔保持形成母材160Aの一部を切断することにより、間隔保持部材60を形成する。即ち、マット状の間隔保持形成母材160Aは、複数の間隔保持部材60が碁盤の目状に連なったものとなっている。また、マット状に限らず、テープ状に形成された間隔保持形成母材を用いてもよい。具体的には、図7(b)に示すように、テープ状に形成された弾性体165Bに、当該弾性体165Bの延在方向に沿って第一山部61及び第二山部62を形成し、開口下地15に当接する頂部平面61aと横建具枠20に当接する裏面65bとを設けることによって間隔保持形成母材160Bを形成する。このようにして形成された間隔保持形成母材160Bの一部を切断することにより間隔保持部材60を形成する。即ち、テープ状の間隔保持形成母材160Bは、複数の間隔保持部材60が直線状に連なったものとなっている。
【0043】
次に、間隔保持部材60の横建具枠20への取り付け構造について説明する。図6(c)は、間隔保持部材に取付け具を打ち込んだ状態を示す断面図である。また図8は、間隔保持部材を横建具枠に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0044】
図6(c)、図8に示すように間隔保持部材60は、間隔保持部材60の裏面65bを横建具枠20の裏面20wに当接させた状態で、取付部63の上面から横建具枠20に向けて打ち込まれた取付け具70によって横建具枠20に取り付けられる。なお、横建具枠20の裏面20wは、図3に示すように、横建具枠20を開口下地15の前面に配置したときに開口下地15と対向する面である。横建具枠20の裏面20wに間隔保持部材60を取り付けることにより、横建具枠20を開口下地15に設置したときに、間隔保持部材60が横建具枠20及び開口下地15によって挟み込まれた状態となる(後述の図9参照)。
【0045】
また、間隔保持部材60は、横建具枠20の裏面20w上において第一山部61の延在方向が横建具枠20の幅方向と整合する向きに配置される。更に、間隔保持部材60は、横建具枠20の裏面20w上において、横建具枠20の長手方向に沿って複数設けられた建具枠調整具50間の位置に取り付けられる(図8参照)。
【0046】
ここで、本実施形態において、取付け具70としてタッカーを用いるものとする。このような取付け具70を打ち込み装置を用いて取付部63に打ち込む場合について説明する。図6(c)に示すように、取付け具70の打ち込みを、打ち込み装置100によって行う場合、打ち込み装置100の先端部100aを溝部64内に落とし込み、先端部100aから取付部63に向けて取付け具70を打ち出す。打ち込み装置100の先端部100aを溝部64内に落とし込む際に、溝部64を構成する第一山部61の側面に先端部100aが当接することにより先端部100aの位置決めがされ、更に、溝部64を構成する第二山部62に、溝部64内に落とし込まれた先端部100aが係合することにより先端部100aの位置ずれが防止されるので、先端部100aが取付部63に対向した状態で位置決めされる。この状態で打ち込み装置100から取付け具70を打ち出すことにより、取付け具70が間隔保持部材60の取付部63に打ち込まれる。
【0047】
次に、横建具枠20の開口下地15への取り付け方法、及び建具枠調整具50を用いた横建具枠20の調整方法について、図3,図5(b),図9を用いて説明する。図9は、開口下地及び横建具枠の延在方向と直交する方向の断面図であり、特に間隔保持部材が取り付けられた部位の断面図である。ここでは、横建具枠20に対して建具枠調整具50及び間隔保持部材60が上述の作業によって予め取り付けられているものとする。
【0048】
まず、横建具枠20を開口下地15へ取り付けるために、図5(b)に示すように、横建具枠20の表面20z側から貫通孔20bに向けて留付け具40を挿入する。当該貫通孔20bには、上記螺入作業によって既に建具枠調整具50が取り付けられているので、当該留付け具40は、建具枠調整具50に挿通されることとなる。
【0049】
そして、留付け具40の先端部は、建具枠調整具50内部の通孔56を通過して横建具枠20の裏面20wより突出する。当該先端部の雄ねじ部43を開口下地15に向けて締め込んでいくことにより、当該建具枠調整具50を介して横建具枠20は開口下地15に留め付けられることとなる(図3参照)。
【0050】
また、当該締め込み作業においては、筒状部51の内周面に台座部52が設けられているので、留付け具40は、頭部41が台座部52の上面に当接する位置まで達すると、以後の挿入は妨げられこととなる。かかる位置まで留付け具40を捩じ込み、建具枠調整具50を介しての開口下地15への横建具枠20の取り付けを完了する。
【0051】
このとき、横建具枠20の裏面20wには間隔保持部材60が取り付けられているので、図9に示すように、横建具枠20と開口下地15との間に間隔保持部材60が挟み込まれた状態となる。なお、間隔保持部材60の頂部平面61aが開口下地15に当接する。
【0052】
ここで、上述の捩じ込み作業において、横建具枠20の裏面20wから突出させた建具枠調整具50の突出量について説明する。この突出量は、横建具枠20を留付け具40によって開口下地15に取り付けたときに、間隔保持部材60が横建具枠20及び開口下地15によって所定量圧縮される長さとする。即ち、建具枠調整具50の突出量は、間隔保持部材60の高さ(頂部平面61aと裏面65bとの間の長さ)よりも短い長さとする。本実施形態においては、例えば、間隔保持部材60の高さを7.5mmとし、建具枠調整具50の突出量を3.5mmとする。これにより、横建具枠20を留付け具40によって開口下地15に取り付けたときに、例えば、間隔保持部材60が7.5mmから3.5mmの高さまで圧縮されることとなり、開口下地15及び横建具枠20に間隔保持部材60から弾性復帰力が作用する。
【0053】
横建具枠20の取付後、横建具枠20の姿勢を調整する場合には、横建具枠20の表面20z側から貫通孔20bに向けて六角レンチ(不図示)を挿入し、当該六角レンチの先端を建具枠調整具50の位置調整時係合部53に係合させる。その後、六角レンチに回転力を付与する。
【0054】
これにより、図3,図9に示すように、建具枠調整具50は、留付け具40の軸心廻りにその場で空転することとなるが、筒状部51の雄ねじ部55と、当該雄ねじ部55により螺刻された横建具枠20の貫通孔20bの内周壁の雌ねじ部20cとが噛み合っている状態であるので、これによって、当該建具枠調整具50の空転に伴って相対的に横建具枠20が開口下地15に対して出退することとなる。また、横建具枠20の裏面20wは開口下地15の表面に対して近接離間することとなり、これらの間隔が拡縮することとなる。
【0055】
また、横建具枠20を出退させるときに、横建具枠20と開口下地15との間隔が間隔保持部材60の高さよりも広がることがないように、建具枠調整具50の回転量を調節する。これにより、横建具枠20の姿勢の調節後においても、間隔保持部材60が横建具枠20及び開口下地15によって常に圧縮された状態となり、このため横建具枠20及び開口下地15に対して間隔保持部材60から常に弾性復帰力が作用した状態となる。
【0056】
このような間隔調整を各建具枠調整具50に対して行うことにより、横建具枠20の開口下地15に対する姿勢が調整され、開口下地15の姿勢に拘わらず、横建具枠20を鉛直とすることが可能となる。このように、横建具枠20に取り付けられた建具枠調整具50によって、横建具枠20の長手方向の軸における鉛直度を調整することができる。鉛直度の調整後、必要に応じて貫通孔20bに戸当たり等の蓋体を被せ、建具枠の取付けを完了する。
【0057】
上建具枠21についても横建具枠20と同様に、上建具枠21に設けられた建具枠調整具50を回転させることにより、上建具枠21の開口下地15に対する姿勢が調整され、開口下地15の姿勢に拘わらず、上建具枠21を水平とすることができる。このように、上建具枠21に取り付けられた建具枠調整具50によって、上建具枠21の長手方向の軸における水平度を調整することができる。
【0058】
以上、本実施形態によれば、間隔保持部材60が開口下地15と建具枠20,21との間に設けられたときに、頂部平面61aが開口下地15に接触すると共に、裏面65bが建具枠20,21に接触することとなり、間隔保持部材60が弾性変形することによって頂部平面61a及び裏面65bから開口下地15及び建具枠20,21に対してこれらの離間方向に弾性復帰力が作用することとなる。このため、建具枠20,21のいずれの位置に当該建具枠20,21のころびを誘引する回転力が作用する場合であっても、当該回転力は間隔保持部材60の弾性変形により吸収されることとなってころびの発生を抑制することができることはもちろん、仮にころびを生じたとしても、当該間隔保持部材60の弾性復帰力により建具枠20,21を元の姿勢に復帰させることができるものとなる。
【0059】
また、間隔保持部材60を、弾性体としての弾性樹脂又は弾性ゴムによって構成し、このような弾性体の両面にそれぞれ建具枠20,21に当接する裏面65bと、開口下地15に当接する頂部平面61aとを形成することで、間隔保持部材60を極めて容易に形成することができる。例えば、従来の板バネにあっては弾性変形性能の調整のために金型の変更を要するのみならず、当該板バネの肉厚変更や材質の変更等が必要となって、調整自体が大掛かりとなるか、多種多様な板バネを準備しておく必要が生じる。これに対し、本実施形態においては、間隔保持部材60を弾性樹脂又は弾性ゴムを用いて形成することにより、間隔保持部材60の長さや厚さを調整するのみで当該弾性変形能(弾性復帰能)を容易に調整することができる。
【0060】
また、第一山部61及び第二山部62が形成された間隔保持形成母材160A,160Bの一部を切断して間隔保持部材60を形成することができ、施工現場において要求に応じた間隔保持部材60を容易に形成することができるものとなる。例えば、従来の板バネにあっては、開口下地及び建具枠に板バネが挟まれた場合、一対の脚部の変形のみならず、当該一対の脚部に作用する荷重を受けることで本体部分がはらむ等して変形するものであるため、所望の弾性力を得ようとした場合、板バネの設計が複雑なものとなっていた。これに対し、本実施形態においては、間隔保持形成母材160A,160Bから間隔保持部材60を切り出す際の長さを調節するだけで、所望の弾性復帰力を発揮する間隔保持部材60を容易に得ることができる。
【0061】
また、間隔保持部材60において、第一山部61及び第二山部62が形成されていない部位を、間隔保持部材60を建具枠20,21に固定する際に取付け具70を打ち込む取付部63とすることにより、当該取付部63は、第一山部61や第二山部62よりも高さが低く、厚みが薄いため、取付部63から建具枠20,21に向けて取付け具70を容易に打ち込むことができる。また、間隔保持部材60に、横壁が第一山部61と第二山部62との側面によって構成されると共に底部が取付部63の表面によって構成された溝部64が形成されることにより、溝部64内に打ち込み装置100の先端部100aを落とし込むだけで取付け具70の打ち込み位置の位置決めを容易に行うことができ、より確実に取付部63に取付け具70を打ち込むことができる。
【0062】
また、建具枠調整具50によって建具枠20,21と開口下地15との間隔が調整されると共に、間隔保持部材60によってころびが抑制等されることとなり、建具枠20,21の長手方向に亘って、開口下地15による支持を安定的なものとすることができる。
【0063】
また、間隔保持部材60を、建具枠調整具50間の位置に設けることで、一方の部材を取り付ける際に他方の部材が当該取付けの妨げとなることはなく、施工性の向上が図られる。また、建具枠調整具50においてもある程度のころび抑止力を期待できるのであれば、長手方向に転びを抑止する部材(建具枠調整具50及び間隔保持部材60)が密に配されることとなり、全体の転び抑止効果をさらに向上させることができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、建具枠20,21における建具枠調整具50間の位置に間隔保持部材60を取り付けるものとしたが、建具枠20,21における建具枠調整具50間の複数の位置に間隔保持部材60をそれぞれ取り付けることもできる。
【0065】
また、間隔保持部材60の中央部に建具枠調整具50が貫通する孔を設け、該孔と建具枠20,21の貫通孔20bとを整合させて間隔保持部材60を建具枠20,21に取り付けることもできる。即ち、貫通孔20bに取り付けられた建具枠調整具50が間隔保持部材60の中央部に設けた孔を通るため、間隔保持部材60と建具枠調整具50とが同一位置に設けられる構成となる。この場合には、いずれか一方がいずれか他方を取り付ける場合のガイドとなり、取付け作業を効率的に行うことができるものとなる。更に、建具枠調整具50と間隔保持部材60とを建具枠20,21の長さ方向の同一位置に設けることで、これらの部材の取付け長さの短小化を図ることができ、長さ方向に大きさが小さい建具枠20,21に対しても建具枠調整具50及び間隔保持部材60を取り付けることができる。
【0066】
また、間隔保持部材60の形状についても上記に限定されるものではない。ここで、間隔保持部材の変形例について説明する。図10は、変形例における間隔保持部材の第一山部の延在方向と直交する方向の断面図である。なお、本変形例における間隔保持部材60Aは、上記実施形態における間隔保持部材60の第二山部62を設けない構成であり、実施形態における間隔保持部材60と同一構成要素については同一番号を付して説明を省略する。図10に示すように、間隔保持部材60Aは、平板部65の表面65aの一部に第一山部61が形成されている。平板部65のうち、その表面65aに第一山部61が形成されていない部位が、取付部63となる。打ち込み装置100によって取付け具70を取付部63に打ち込む場合、打ち込み装置100の先端部100aを第一山部61の側面に当接させることにより、先端部100aの位置決めを行うことができる。この場合にも、取付け具70の打ち込み位置の位置決めを容易に行うことができ、より確実に取付部63に取付け具70を打ち込むことができる。
【0067】
なお、間隔保持部材の形状として、表裏面とも全面に亘って扁平に形成されて且つ厚さ方向に弾性復帰力を蓄えつつ圧縮可能な(厚さ方向に弾性変形可能な)薄板状としても良い。この場合であっても、間隔保持部材が弾性変形することによって開口下地及び建具枠に対してこれらの離間方向に弾性復帰力が作用し、ころびの発生を抑制することができる。
【0068】
また、建具枠20,21に建具枠調整具50が取り付けられているものとしたが、建具枠調整具50を用いずに、間隔保持部材60の弾性復帰力によって開口下地15と建具枠20,21との間隔調整を行うこともできる。具体的には、開口下地15と建具枠20,21との間に間隔保持部材60を挟み込んだ状態で、建具枠20,21に設けた貫通孔に表面側から木ネジを通し、該木ネジを開口下地15に捩じ込む。この木ネジの捩じ込みによって、開口下地15と建具枠20,21との間の間隔保持部材60を所定の高さとなるまで圧縮する。この状態で木ネジを更に開口下地15に捩じ込むと、間隔保持部材60の弾性復帰力によって建具枠20,21の姿勢が維持されたままの状態で建具枠20,21と開口下地15との間隔が狭くなり、反対に、木ネジを緩めると、間隔保持部材60の弾性復帰力によって建具枠20,21の姿勢が維持されたままの状態で建具枠20,21と開口下地15との間隔が広くなる。このように、間隔保持部材60の弾性復帰力によって建具枠20,21のころびを抑制しつつ、建具枠20,21の姿勢を調整することができる。
【0069】
また、間隔保持部材60を、第一山部61の延在方向が建具枠20,21の幅方向と整合する向きに配置するものとしたが、この配置に限定されるものではない。図11に、間隔保持部材の配置の変形例を示す。図11に示すように、横建具枠20に間隔保持部材60Bを取り付ける場合、横建具枠20の裏面20wにおいて、横建具枠20の幅方向の両端部近傍にそれぞれ間隔保持部材60Bを配置する。なお、間隔保持部材60Bは、上記実施形態における間隔保持部材60の長さを短くしたものである。また、間隔保持部材60Bを、第一山部61の延在方向が横建具枠20の長手方向と整合する向きに配置する。同様に、上建具枠21についても、上建具枠21の幅方向の両端部近傍にそれぞれ間隔保持部材60Bを配置する。この場合であっても、建具枠20,21の幅方向の両端部近傍にそれぞれ設けられた間隔保持部材60Bによって、建具枠20,21のころびの抑制、及びころびが生じた場合でも当該建具枠をもとの姿勢に復帰させることができる。
【0070】
また、間隔保持部材60,60A,60Bを建具枠20,21に取り付けるものとしたが、開口下地15に取り付けても、上記と同じ効果を得ることができる。
【0071】
また、間隔保持部材60を弾性樹脂又は弾性ゴムによって形成するものとしたが、他の弾性体を用いてもよい。また、取付け具70としてタッカーを用いるものとしたが、タッカーに限定されるものではなく、例えば両面テープや接着剤によって間隔保持部材60を横建具枠20等に取り付けたり、ビスによって取り付けたりすることができる。
【0072】
また、間隔保持部材60の頂部平面61aに、開口下地15に当接される突き当て部材を配置し、当該突き当て部材の面を開口下地15に当接する下地接触面とすることもできる。同様に、間隔保持部材60の裏面65bに、建具枠20,21に当接される突き当て部材を配置し、当該突き当て部材の面を建具枠20,21に当接する建具枠接触面とすることもできる。
【符号の説明】
【0073】
10…開口、15…開口下地、20…横建具枠(建具枠)、21…上建具枠(建具枠)、50…建具枠調整具、60,60A,60B…間隔保持部材(弾性変形部)61a…頂部平面(下地接触面)、65a…表面、65b…裏面(建具枠接触面)、65…平板部、61…第一山部、62…第二山部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の開口の小口部に設けられる開口下地と、該開口下地に所定の間隔で対向した状態で取り付けられる建具枠との間に設けられ、前記開口下地に対する前記建具枠の間隔を当該建具枠の幅方向に亘って一定に保持する間隔保持部材であって、
前記建具枠に当接する建具枠接触面と、前記開口下地に当接する下地接触面とを備えると共に、前記建具枠接触面と前記下地接触面との間に、当該建具枠接触面と前記下地接触面との離間方向に弾性復帰力を有する弾性変形部が設けられていることを特徴とする間隔保持部材。
【請求項2】
前記弾性変形部は、薄板状を呈する弾性樹脂又は弾性ゴムにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の間隔保持部材。
【請求項3】
前記弾性変形部は、
表面及び裏面を有する平板状の平板部と、
前記平板部の前記表面の一部に形成され、前記表面から突出して前記表面の広がり方向に帯状に延びる第一山部と、を備え、
前記第一山部の頂部の面が前記建具枠接触面と前記下地接触面のいずれか一方となり、前記平板部の前記裏面が前記建具枠接触面と前記下地接触面のいずれか他方となることを特徴とする請求項1に記載の間隔保持部材。
【請求項4】
前記弾性変形部は、前記表面において、前記第一山部から所定の間隔を設けて形成されると共に、前記表面から前記第一山部よりも低い高さで突出して前記第一山部の延び方向と同方向に帯状に延びる第二山部を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の間隔保持部材。
【請求項5】
両面にそれぞれ前記建具枠接触面と前記下地接触面とを設けてマット状又はテープ状に形成された前記弾性変形部によって構成された間隔保持形成母材の一部を切断してなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の間隔保持部材。
【請求項6】
壁の開口の小口部に設けられる開口下地と、
該開口下地に取り付けられる建具枠と、
該建具枠と前記開口下地との間において当該開口下地の長手方向に沿って複数設けられ、前記建具枠の長手方向の軸の鉛直度又は水平度を調整する建具枠調整具と、
前記建具枠と開口下地との間において前記建具枠調整具と同一位置、前記建具枠調整具間の位置、又は前記建具枠調整具間の複数位置に設けられ、前記開口下地に対する前記建具枠の間隔を当該建具枠の幅方向に亘って一定に保持する間隔保持部材と、が設けられていることを特徴とする建具枠調整構造。
【請求項7】
前記間隔保持部材は、
前記建具枠に当接する建具枠接触面と、前記開口下地に当接する下地接触面とを備えると共に、前記建具枠接触面と前記下地接触面との間に、前記建具枠接触面と前記下地接触面との離間方向に弾性復帰力を有する弾性変形部が設けられており、
前記弾性変形部に弾性復帰力を蓄えた状態で前記建具枠と前記開口下地との間に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の建具枠調整構造。
【請求項1】
壁の開口の小口部に設けられる開口下地と、該開口下地に所定の間隔で対向した状態で取り付けられる建具枠との間に設けられ、前記開口下地に対する前記建具枠の間隔を当該建具枠の幅方向に亘って一定に保持する間隔保持部材であって、
前記建具枠に当接する建具枠接触面と、前記開口下地に当接する下地接触面とを備えると共に、前記建具枠接触面と前記下地接触面との間に、当該建具枠接触面と前記下地接触面との離間方向に弾性復帰力を有する弾性変形部が設けられていることを特徴とする間隔保持部材。
【請求項2】
前記弾性変形部は、薄板状を呈する弾性樹脂又は弾性ゴムにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の間隔保持部材。
【請求項3】
前記弾性変形部は、
表面及び裏面を有する平板状の平板部と、
前記平板部の前記表面の一部に形成され、前記表面から突出して前記表面の広がり方向に帯状に延びる第一山部と、を備え、
前記第一山部の頂部の面が前記建具枠接触面と前記下地接触面のいずれか一方となり、前記平板部の前記裏面が前記建具枠接触面と前記下地接触面のいずれか他方となることを特徴とする請求項1に記載の間隔保持部材。
【請求項4】
前記弾性変形部は、前記表面において、前記第一山部から所定の間隔を設けて形成されると共に、前記表面から前記第一山部よりも低い高さで突出して前記第一山部の延び方向と同方向に帯状に延びる第二山部を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の間隔保持部材。
【請求項5】
両面にそれぞれ前記建具枠接触面と前記下地接触面とを設けてマット状又はテープ状に形成された前記弾性変形部によって構成された間隔保持形成母材の一部を切断してなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の間隔保持部材。
【請求項6】
壁の開口の小口部に設けられる開口下地と、
該開口下地に取り付けられる建具枠と、
該建具枠と前記開口下地との間において当該開口下地の長手方向に沿って複数設けられ、前記建具枠の長手方向の軸の鉛直度又は水平度を調整する建具枠調整具と、
前記建具枠と開口下地との間において前記建具枠調整具と同一位置、前記建具枠調整具間の位置、又は前記建具枠調整具間の複数位置に設けられ、前記開口下地に対する前記建具枠の間隔を当該建具枠の幅方向に亘って一定に保持する間隔保持部材と、が設けられていることを特徴とする建具枠調整構造。
【請求項7】
前記間隔保持部材は、
前記建具枠に当接する建具枠接触面と、前記開口下地に当接する下地接触面とを備えると共に、前記建具枠接触面と前記下地接触面との間に、前記建具枠接触面と前記下地接触面との離間方向に弾性復帰力を有する弾性変形部が設けられており、
前記弾性変形部に弾性復帰力を蓄えた状態で前記建具枠と前記開口下地との間に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の建具枠調整構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−92609(P2012−92609A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242165(P2010−242165)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【出願人】(306034033)エスエッチ・サンキョウ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【出願人】(306034033)エスエッチ・サンキョウ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
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