説明

関節の状態の光学的検出方法及び光学的検出用装置

本発明は関節の状態の光学的検出のための装置と方法に関する。本発明は、少なくとも1つの関節を有する被験者の身体部分5を光で照射し、少なくとも1つの関節、及び身体部分5の少なくとも1つの他の部位における光の減衰を局所的に検出することを提案し、光の減衰を局所的に検出するためのサンプリング周波数は被験者の心拍の周波数よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は関節の状態の光学的検出方法と光学的検出用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の文脈において、光という用語は、特に400nm乃至1400nmの範囲の波長を持つ非電離電磁放射線を意味するものと理解される。身体部分という用語は人又は動物の体の部分を意味する。閉塞という用語は、完全な閉塞と、かなりの程度までの閉塞の両方を含む。
【0003】
概して、本発明は関節状態の光学的検出に関し、特に関節リウマチ(RA)などの関節疾患の光学的検出に関する。かかる関節疾患の治療は病期分類される。通常、患者はまず鎮痛剤を受け取る。しばしばこれらの後に非ステロイド抗炎症薬(NSAID)と疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)が続く。多くの場合、薬物を用いる治療の最終段階は生物学的療法の使用である。特に最終カテゴリは費用がかかり、治療は患者1人当たり年間何万ドルもの費用がかかる可能性がある。加えて、治療の最終段階で使用される薬物はしばしばより重度の副作用を引き起こす。こうした関節疾患に関して、医療専門家は、炎症関節の数及び重症度によって与えられる疾患活動性に、治療の変化に関する決定の根拠を置く。
【0004】
関節リウマチは進行性疾患であり、早期の診断と治療開始が副作用や高い治療費を遅らせるのに役立つことができるため、関節の状態についての十分な情報を提供するための方法と装置が求められ、これは医療専門家が実際の関節状態に関する結論に達するのを支援する。
【0005】
患者に投与される非標的蛍光染料を用いる時間依存測定において、罹患関節におけるかん流ダイナミクスが健常関節と比較して異なることがわかっている。しかしながら、リウマチ専門医の臨床診療において、造影剤の投与はほとんどの場合非実用的である。
【0006】
代案として、関節の状態についての情報を与えるために関節を撮像するために拡散光トモグラフィ(DOT)を使用することが提案されている。研究プロジェクトにおいては、身体部分への静脈血流が圧力カフを用いて一次的に閉塞されており、DOTを用いて単関節が撮像されている。こうした研究において、関節リウマチ(RA)の存在と相関する光学パラメータが存在することがわかっている。
【0007】
例えば、炎症はかん流における変化によって認識されることできることが知られている。血液成分、特に酸化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの両方は、人又は動物の体の他の成分と比較してはっきりした光学特性を持ち、従って原則として光学的に検出されることができる。
【0008】
関節の状態を検出するための装置と方法は欧州特許出願EP08156917.0に記載される。該文書は、患者の腕及び手における血流の(部分的)閉塞の前、最中、及び後に、例えば患者の手の関節及び他の部位の分光透過における変化を解析することによって関節の炎症を測定することを記載する。患者の腕の周りに適用される圧力カフを用いて血流が閉塞される。圧力カフの適用は時間がかかる可能性があり、いくらかの経験と、その結果追加の人(例えば看護師)の助けを必要とする。膨張したカフを患者の腕の周りに長期間置くことは患者にとって不快である可能性があり、血栓を作ることにより患者にとって健康被害の非常に小さなリスクを伴う。さらに、カフとその付随設備、ポンプ及び制御電子装置は、装置の費用を増加し、故障のリスクが比較的高い機械的部品を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、圧力カフの必要なく関節の状態についての情報を与える、関節の状態を検出するための装置と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
該目的は請求項1に記載の装置によって解決される。本発明は患者の心拍が患者の血管系を通る脈圧をもたらすという認識に基づく。圧力カフを用いて血流を閉塞することによって患者の血管系に誘導される脈圧の代わりに、患者自身の心拍によって誘導される脈圧もまた、こうした脈圧に対する身体部分の反応を決定するために使用されることができる。しかしながら、検出が心拍使用脈圧に基づく場合は、患者から検出される心拍変調光信号の適切なサンプリングをもたらすために、検出中のサンプリングレートは患者の心拍の周波数よりも高くなければならない。照射のために使用される光の減衰は、少なくとも1つが関節である2つの個別位置に対して局所的に検出されるので、身体部分の少なくとも1つの他の部位と比較した少なくとも1つの関節の光学特性における差が検出されることができる。少なくとも1つの他の部位と比較した血流の変化に対する少なくとも1つの関節の反応が検出されることができる。関節の炎症中、関節における血管(毛細血管)の数と特性は変化する。この効果は血液の比吸光度と一緒に関節の状態を測定するために使用される。異なる血流条件下(異なる血流条件は患者の心拍によって誘導される血圧脈の異なる位相中に誘導される)での測定により、血液から得られる信号は体内の光減衰の他の源から得られる信号から分離されることができる。少なくとも1つの関節と、身体部分の少なくとも1つの他の(例えば関節の隣の)身体部位が測定されるので、関節特有の結果が得られ、関節と他の身体部位の両方に存在する組織(例えば脂肪、皮膚など)からの寄与が分離されることができる。結果として、血液成分における変化に対して関節特有の信号が得られることができる。身体部分の組成(例えば骨、脂肪、皮膚など)を特定するための個別測定は省略されることができる。結果として、関節状態及び/又は疾患活動性についての有益な情報が医療専門家に提供される。
【0011】
より一般的には、被験者の心拍周波数の代わりに、基準周波数が利用され得、このうち被験者の心拍周波数は一例に過ぎない。別の基準周波数は被験者の呼吸周波数であり得る。呼吸周波数は心拍周波数に結合される。結果として、呼吸周波数は基準周波数として使用され得る。使用されるべき基準周波数の値は基準周波数が心拍周波数に結合されるやり方に依存する。
【0012】
本発明にかかる装置の一実施形態は、サンプリング周波数が被験者の心拍の周波数の少なくとも2倍であることを特徴とする。この実施形態はナイキストサンプリング定理を満たすため、サンプリング中に情報が失われないという利点を持つ。
【0013】
本発明にかかる装置のさらなる実施形態は、サンプリング周波数が少なくとも100Hz、好適には少なくとも120Hz、好適には少なくとも150Hz、好適には少なくとも200Hz、好適には少なくとも250Hz、好適には少なくとも300Hz、好適には少なくとも400Hzであることを特徴とする。この実施形態は、被験者の心拍周波数に依存して、ナイキストサンプリング定理が満たされるという利点を持つ。被験者がリラックスして休んでいるときは、少なくとも100Hz、120Hz、及び150Hzのサンプリング周波数が通常はサンプリング定理を満たすために十分である。しかしながら、被験者が運動しているとき、又はその心拍周波数が何らかの他の理由で上昇しているときは、少なくとも200Hz、250Hz、及び300Hzのサンプリング周波数がサンプリング定理を満たすために必要とされ得る。少なくとも400Hzのサンプリング周波数は被験者の実際の心拍周波数にかかわらずサンプリング定理を満たす。結果として、適切なサンプリングを保証するために被験者の実際の心拍周波数についての情報は必要とされない。
【0014】
本発明にかかる装置のさらなる実施形態は、該装置が被験者の心拍の周波数を検出するための心拍センサをさらに有することを特徴とし、心拍センサによって検出される被験者の心拍の周波数に基づいてサンプリング周波数が決定されるよう、心拍センサは測定ユニットに結合される。この実施形態は、局所減衰データが得られるサンプリング周波数に被験者の実際の心拍周波数を結合する簡単な方法を提供するという利点を持つ。
【0015】
本発明にかかる装置のさらなる実施形態は、測定ユニットが少なくとも2つの個別波長の光を放出することができる光源ユニットを有することを特徴とする。この実施形態は、第1の波長は、血液がこの第1の波長の光に対して高い吸収を持つように選ばれることができ、第2の波長は、血液の吸収がこの第2の波長の光に対して低いか又は周辺組織と同程度であるように選ばれることができるという利点を持つ。従って、少なくとも1つの関節及び身体部分の少なくとも1つの他の部位のかん流についてのより詳細な情報が提供され、少なくとも1つの関節の状態を評価するために解析されることができる。
【0016】
本発明にかかる装置のさらなる実施形態は、該装置が、被験者の心拍及び/又は呼吸に影響を及ぼすために被験者に運動させるための運動装置をさらに有することを特徴とする。この実施形態は、異なる心拍周波数において及び/又は異なる呼吸条件下で局所減衰データを得ることによって関節の状態を評価するための有益なデータが得られることができるという利点を持つ。被験者に運動させることは、被験者の心拍周波数を変化させる及び/又は被験者の呼吸を変化させる簡単な手段である。被験者に運動させることはまた、被験者の血液の酸素量の変化ももたらす。この酸素量の変化は、被験者の身体部分、例えば関節における血液による光の減衰の変化をもたらす。この変化を検出することで、関節の状態を評価するための有益な情報を提供することができる。
【0017】
本発明にかかる装置のさらなる実施形態は、運動装置が自転車エルゴメータであることを特徴とする。この実施形態は、自転車エルゴメータが、被験者に運動させることと光の局所減衰の検出を組み合わせるために特に適したプラットフォームであるという利点を持つ。運動している間、被験者はその手をハンドルに置いて自転車の上に楽に座ることができる。測定ユニットの少なくとも一部はハンドルに組み込まれることができる。
【0018】
本発明の目的は請求項9に記載の光学的検出方法によってさらに解決される。該方法は装置に関する上記利点を実現する。
【0019】
本発明にかかる方法の一実施形態は、身体部分の少なくとも1つの他の部位が別の関節であることを特徴とする。この実施形態は、血流の変化に対する異なる関節の反応が比較されることができ、複数の関節の状態における差についての情報が与えられるという利点を持つ。好適な実施形態において、患者の両手の全関節が同時に測定される。
【0020】
本発明にかかる方法のさらなる実施形態は、実質的に同時に取得される、少なくとも1つの関節及び身体部分の少なくとも1つの他の部位に対する個別の局所減衰測定の結果が相互に比較されることを特徴とする。この実施形態は、関節に対して得られるデータを、身体部分の少なくとも1つの他の部位から実質的に同時に得られるデータと比較することによって、少なくとも1つの関節の状態を評価するための有益な情報が得られることができるという利点を持つ。実質的に同時に得られたデータを比較することは、少なくとも1つの関節と少なくとも1つの他の部位に同時に影響を及ぼす変化が打ち消され、少なくとも1つの関節と少なくとも1つの他の部位との間の時間非依存の差に関する情報のみを残すという利点を持つ。
【0021】
本発明にかかる方法のさらなる実施形態は、個別の局所減衰測定の取得中に身体部分が光学的整合媒体に浸されることを特徴とする。この実施形態は検出器がさらされる強度のダイナミックレンジと光学的境界効果が削減されるという利点を持つ。
【0022】
本発明にかかる方法のさらなる実施形態は、該方法が、被験者の心拍及び/又は呼吸に影響を及ぼすために被験者に運動させる追加ステップをさらに有することを特徴とする。
【0023】
この実施形態は、異なる心拍周波数において及び/又は異なる呼吸条件下で局所減衰データを得ることによって、関節の状態を評価するための有益なデータが得られることができるという利点を持つ。これは本発明にかかる装置の一実施形態に関して既に論じられた。
【0024】
本発明のさらなる特徴と利点は同封の図面を参照して実施形態の詳細な説明から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施形態にかかる関節の状態の光学的検出のためのセットアップを概略的に示す。
【図2】一実施形態にかかる測定ユニットの詳細を概略的に示す。
【図3】関節の位置が示された、身体部分の一例として人の手を概略的に示す。
【図4】2つの関節と、関節ではない身体部分の1つの他の部位に対する同時個別局所減衰測定の結果を概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで本発明の一実施形態が図面を参照して記載される。図1は関節の状態の光学的検出のためのセットアップを概略的に示す。図において、人体4が身体として概略的に示され、手が検査される身体部分5を形成する。しかしながら、本発明は人体に限定されず、例えば動物の体が検査を受けてもよいことに留意すべきである。さらに、身体部分5は手に限定されず、例えば腕、脚、足などの少なくとも1つの関節6を有する別の身体部分によって形成されてもよい。
【0027】
示された実施形態において、関節の状態の光学的検出のための装置は、測定ユニット2と制御ユニット1とを有する。制御ユニット1は、装置の動作とデータ取得を制御するために設けられる。本発明によれば、データ取得は、局所減衰データが得られるサンプリング周波数が患者の心拍の周波数よりも高くなるように構成される。このようにして、患者からの心拍変調減衰信号の適切なサンプリングが保証され、同時に圧力カフによる血流の閉塞は必要ない。測定ユニット2は、検査中の身体部分5の部位を光で照射するため、及び身体部分5の異なる位置において光の局所減衰を測定するために設けられる。例えば、示された実施形態において測定ユニット2は測定ヘッドによって形成され、これは以下でより詳細に記載される。該実施形態にかかる測定ユニット2の構成は図2を参照してさらに詳細に記載される。該装置は、適切なサンプリング周波数を決定するために被験者の心拍周波数を検出する心拍センサ(不図示)を有し得る。本発明にかかる装置はエルゴメータ(不図示)をさらに有するシステムに含まれ得る。適切なエルゴメータの一例は自転車エルゴメータである。エルゴメータは、被験者の心拍周波数及び/又は呼吸に影響を及ぼすために、その身体部分が調べられている被験者を運動させる容易な手段を提供する。該システムは心拍周波数及び/又は呼吸に関して異なる条件下での測定を可能にし、被験者の関節の状態を決定する上で役立つことができる有益な情報をもたらす。該装置の少なくとも一部、例えば光源ユニット及び/又は検出素子(図2参照)はエルゴメータに、例えば自転車エルゴメータのハンドルに組み込まれ得る。そして人の被験者はハンドルに手をおいて自転車エルゴメータ上で運動することができ、一方それと同時に関節が測定される。
【0028】
図2に概略的に示される測定ユニット2は、透過配置における減衰測定に適している。測定ユニット2は身体部分5を照射するための光線を放出する光源ユニット21を有する。光源ユニット1は少なくとも1つの光源と、光線を身体部分5へ向ける適切な光ガイドとを有する。光源はランプ又は1つ以上のレーザによって形成され得、光ガイドは例えば光ファイバによって形成され得る。光源ユニット21は少なくとも2つの異なる波長、好適には赤から近赤外の光を放出することができるように構成され、1つの波長は血液が高い吸収を持つように選ばれ、もう1つの波長は血液の吸収が低いか又は周辺組織と同程度であるように選ばれる。適切な波長は例えば600nm乃至805nmであるが、これらの基準を満たす他の波長も同様に可能である。550乃至980nmの波長範囲における波長が特に適している。さらに、光を身体部分5へ向けるために例えばレンズによって形成され得る光学部品22が設けられる。光学部品22は、以下に記載される通り、身体部分5の特定の関心領域(又は複数の特定の関心領域;すなわち特定位置)に集光することができる。特定関心領域から発する光を収集し、収集された光26を検出素子24へ向けるために、第2の光学素子23が設けられる。検出素子24は例えば光ダイオード、CCD、光ダイオードに接続するファイバなどの光ガイド、又は従来技術で既知の別の光検出スキームであり得る。
【0029】
測定ユニット2は、身体部分5の少なくとも2つの異なる部位に対する個別局所減衰測定が実行されることができるように構成される。好適には、複数の関節が同時に測定され、相互に対するこれら複数の関節の時間依存挙動が解析される。さらにより好適には、身体部分5の全関節が同時に測定される。図3は検査されるべき身体部分5の例として手を示し、関節6の位置が十字線によって示される(全関節に参照符号が与えられているわけではないことに留意すべきである)。示された位置は局所減衰測定のための位置として使用されることができ、加えてこれらの示された位置の間の位置は基準減衰測定のために使用されることができる。
【0030】
図1に示される実施形態において、測定ユニット2を介して、制御ユニット1は関節6を含む身体部分5のスペクトル特性を検出する。ここで測定ユニット2は血流における変化に関連するスペクトル変化を検出する。好適には、関節と身体部分5の他の領域との間でかん流もまた比較される。炎症関節は健常関節と比較して異なるかん流と酸素化を持つ。結果として、測定ユニット2によって測定されるダイナミックスペクトル挙動は異なる。
【0031】
図4は同時に実行される(透過配置における)減衰測定の結果の一例を時間の関数として示す。T1でマークされたトレースは第1の関節における局所減衰測定に対応し、T2でマークされたトレースは第2の関節における局所減衰測定に対応し、R1でマークされたトレースは関節ではない基準位置における局所減衰測定に対応する。信号は患者の心拍の周波数とともに周期的に変化する。トレースにあらわれる落差の特性A1,A2,A3は異なり得る。炎症関節は、他の関節と比較して、又は基準位置と比較して、透過における落差の増加など、高いかん流の兆候を示し得る。落差は測定が実行される異なる位置間の変調度における差を反映する。変調度は健常組織における血流と比較して病変組織を通る血流における変化によって影響される。トレースT1,T2,及びR1間の透過における変化の間の時間差D1,D2もまた炎症マーカーとして使用されることができ、重要な情報を与える。
【0032】
個々の関節の時間依存挙動、相互に対する、及び(基準となることができる)他の部位に対する関節の挙動が解析される。
【0033】
上記実施形態において、測定ユニット2は透過配置における測定に適しており、すなわち身体部分は片側から照射され、身体部分を通過した光が反対側で測定される。該実施形態の変更例において、測定ユニット2は反射配置における減衰測定に適することができる。この場合、照射と検出は身体部分5の同じ側面から実行される。反射配置において、光学部品22と23は組み合わされることができる。照明光からの拡散反射光を分離することが有利である。これは例えば直交偏光スペクトル画像解析(OPSI)又は暗視野イメージング又は当該技術分野で既知の他の適切な技術によって実現されることができる。
【0034】
実施形態において、血流は完全に閉塞される必要はなく、血流の実質的減少で十分であり得ることに留意すべきである。
【0035】
測定ユニット2を実施するための複数の異なる方法が存在する。検査中の身体部分5の複数の部位からの局所集光が測定されることが必須の特徴である。これは例えば一度に単一点を照射すること、及び身体部位5上の対応する単一点を検出すること、及び身体部分5にわたって照射及び検出点の位置を走査することによって実現されることができる。
【0036】
さらに、より好適な可能性は、身体部分5全体を照射し、CCDカメラ又は別の適切なカメラで透過(又は反射)光を撮像することである。しかしながら、拡散透過のためにこの場合画像の解像度は限られ、例えば指の間を進む光が検出器に過負荷を与える可能性がある。
【0037】
さらにより好適な可能性は、身体部分5上の個別の数の点を照射することである。この実施例は、検出器に達する迷光が少ないという利点を持ち、これは高解像度につながり、全ての点の強度は、限られたダイナミックレンジのみが検出器に必要とされるように、調節されることができる。
【0038】
検出器に入る強度のダイナミックレンジと光学的境界効果を減らすために、検査中の身体部分5を光学的整合媒体、例えば流体に浸すこともまた可能である。こうした技術においては、組織と同様の光学特性(例えば光吸収係数及び減少した散乱係数)を持つ流体が利用される。
【0039】
さらに、異なる波長を検出するために、照明波長を交互にすることが可能である。全ての必要な波長で同時に照射し、例えばフィルタ又は分光器を用いて検出路において異なる波長を分離することもまた可能である。
【0040】
好適な実施例においては、複数の身体部分(例えば両手)が同時に測定される。
【0041】
少なくとも2つの波長が照射のために使用されることが実施形態に関して記載されているが、本発明はそれに限定されない。例えば、より多くの数の個別波長が使用されることができ、又はある範囲の波長(例えば650乃至1000nm)にわたる完全スペクトルが使用されることもできる。しかしながら、完全スペクトルを得ることは2〜3の個別波長と比較してより高価な部品を必要とする。数種類の組織成分(例えば脂肪、水など)が識別される場合は、2つよりも多くの個別波長を使用することが有利であり得る。より多くの波長を使用することは装置の精度を改良するのに役立つが、費用と複雑性を高める。
【0042】
上述の実施形態は本発明を限定するのではなく例示するものであり、当業者は添付のクレームの範囲から逸脱することなく多くの代替的な実施形態を設計することができるであろうことに留意すべきである。クレームにおいて、括弧の間に置かれる任意の参照符号はクレームを限定するものと解釈されてはならない。"有する"という語はクレームに列挙されたもの以外の要素又はステップの存在を除外しない。ある要素に先行する"a"又は"an"という語はかかる要素の複数の存在を除外しない。複数の手段を列挙するシステムクレームにおいて、これらの手段のいくつかはコンピュータ可読ソフトウェア又はハードウェアの1つの同じ項目によって具体化されることができる。特定の手段が相互に異なる従属クレームに列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節の状態の光学的検出のための装置であって、前記装置は、
少なくとも1つの関節を有する被験者の身体部分を光で照射し、前記少なくとも1つの関節と前記身体部分の少なくとも1つの他の部位とにおける光の減衰を局所的に検出するための測定ユニットを有し、前記光の減衰を局所的に検出するためのサンプリング周波数は前記被験者の心拍の周波数よりも高い、装置。
【請求項2】
前記サンプリング周波数が前記被験者の心拍の周波数の少なくとも2倍である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記サンプリング周波数が少なくとも100Hz、好適には少なくとも120Hz、好適には少なくとも150Hz、好適には少なくとも200Hz、好適には少なくとも250Hz、好適には少なくとも300Hz、好適には少なくとも400Hzである、請求項1乃至2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記装置が、
前記被験者の心拍の周波数を検出するための心拍センサをさらに有し、前記サンプリング周波数が前記心拍センサによって検出される前記被験者の心拍の周波数に基づいて決定されるように前記心拍センサが前記測定ユニットに結合される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記測定ユニットが少なくとも2つの個別波長の光を放出することができる光源ユニットを有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が、
前記被験者の心拍及び/又は呼吸に影響を及ぼすために前記被験者に運動させるための運動装置をさらに有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記運動装置が自転車エルゴメータである、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記装置が医療検出装置である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの関節を有する被験者の身体部分を光で照射するステップと、
前記少なくとも1つの関節の位置、及び前記身体部分の少なくとも1つの他の部位の位置において、前記身体部分による前記光の局所減衰を検出するステップとを有し、局所減衰を検出するためのサンプリング周波数が前記被験者の心拍の周波数よりも高い、光学的検出方法。
【請求項10】
前記身体部分の少なくとも1つの他の部位が別の関節である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
実質的に同時に取得される、前記少なくとも1つの関節及び前記身体部分の少なくとも1つの他の部位に対する個別の局所減衰測定の結果が相互に比較される、請求項9乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記個別の局所減衰測定の取得中に、前記身体部分が光学的整合媒体に浸される、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記被験者の心拍及び/又は呼吸に影響を及ぼすために前記被験者に運動させる追加ステップをさらに有する、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−510848(P2012−510848A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539156(P2011−539156)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055463
【国際公開番号】WO2010/064202
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】