説明

防塵性光透過性部材の製造方法、その部材の用途、及びその部材を具備する撮像装置

【課題】塵埃の付着防止性に優れた防塵性光透過性部材を、外観不良の発生を伴わずに製造する方法、その部材の用途、及びその部材を具備する撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像素子の受光面側に配置される防塵性光透過性部材を製造する方法であって、光透過性基板の光入射面にアルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物からなる蒸着膜を形成し、上記蒸着膜を40〜100℃の温度の水又は水と有機溶媒との混合液で処理することにより、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜を形成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防塵性に優れた光透過性部材の製造方法、その部材の用途、及びその部材を具備する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学像を電気信号に変換するデジタルスチルカメラや画像入力装置(例えばファクシミリ、スキャナ等)等の電子撮像装置が広く普及しているが、これら電子撮像装置では、光電変換素子(例えばCCD)等の撮像素子の受光面に至る光路上に塵埃等の異物が存在すると、画像に写り込みを生じてしまう。
【0003】
例えば、一眼レフ式で撮影レンズの交換が可能なデジタルスチルカメラでは、撮影レンズを外したときに塵埃等がミラーボックス内に侵入しやすい。またミラーボックス内でミラーや撮影レンズの絞りを制御する機構が作動するため、ミラーボックス内部でゴミが発生することもある。ファクシミリやスキャナ等の画像入力装置では、原稿が送られる際や原稿読取ユニットが移動する際に塵埃等の異物を生じ、これがCCDの受光面近傍や原稿載置用のプラテンガラス等に付着することがある。そこでブロワ等の空気吹き付け手段を用いて撮像素子表面等に付着した異物を吹き飛ばしているが、吹き飛ばされた異物が機器内部に留まることがある。
【0004】
特にデジタルスチルカメラには空間周波数特性を制御するための光学フィルタが撮像素子の近傍に配設されているが、光学フィルタとして複屈折特性を有する水晶板が一般的に用いられている。しかし水晶は圧電効果を有しているため、振動等により帯電し易く、電荷が逃げにくいという性質を有する。そのためカメラ作動に伴い生じる振動や空気の流れ等により異物がカメラ中を浮遊すると、帯電した光学フィルタに付着することがある。このために空気吹き付け手段による清掃を頻繁に行う必要がある。
【0005】
そこで特開2001-298640号(特許文献1)は、CCD受光面、CCDの受光面側に配設されたローパスフィルタの表面、又はCCD受光面に至る光路を密閉した防塵構造ユニットの最外側の光学部材面を拭くワイパを有するデジタルスチルカメラを提案している。また特開2002-204379号(特許文献2)及び特開2003-319222号(特許文献3)は、CCD及びローパスフィルタが配置され、開口部が防塵部材(ガラス板等)で覆われた密封ホルダと、防塵部材を振動させる手段(圧電素子)とを具備するカメラを提案している。このカメラでは、ホルダ内に密封されたCCD及びローパスフィルタに塵埃が付着せず、防塵部材に付着した塵埃は振動手段で除去できる。しかし特許文献1〜3に記載のような塵埃の機械的な除去には、高コスト化、装置の重量の増加、消費電流の増大等の問題がある。
【0006】
そこで本出願人は、撮像素子の受光面側に配置される防塵性光透過性部材であって、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜を少なくとも光入射面に有する光透過性基板からなる防塵性光透過性部材を提案した(特願2006-000921号)。この部材の防塵膜は、アルミニウム化合物又は亜鉛化合物を含む塗布液を基板に塗布し、乾燥してゲル膜を形成し、これを熱水で処理することにより得られる。塗布方法としては、ディッピング法が好ましいが、ディッピング法では引き上げ後に下部に液だれ部が生じ易く、そのため膜ムラ等の外観不良が発生するといった問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2001-298640号
【特許文献2】特開2002-204379号
【特許文献3】特開2003-319222号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、塵埃の付着防止性に優れた防塵性光透過性部材を、外観不良の発生を伴わずに製造する方法、その部材の用途、及びその部材を具備する撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、光透過性基板の光入射面にアルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物からなる蒸着膜を形成し、前記蒸着膜を熱水で処理して、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜を形成すると、塵埃の付着防止性に優れた防塵性光透過性部材を、外観不良の発生を伴わずに製造することができることを見出し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明の防塵性光透過性部材の製造方法は、撮像素子の受光面側に配置される防塵性光透過性部材を製造するものであって、光透過性基板の光入射面にアルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物からなる蒸着膜を形成し、前記蒸着膜を40〜100℃の温度の水又は水と有機溶媒との混合液で処理することにより、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜を形成することを特徴とする。
【0011】
かかる方法において、前記防塵膜の形成を促進するために、前記水に塩基を添加するのが好ましい。前記塩基としてアルコールアミンを用いるのが好ましい。均一な蒸着膜を形成し、かつ三次元平均表面粗さが好ましい範囲にある防塵膜を得るために、前記蒸着膜の厚さを5〜500 nmとするのが好ましい。前記防塵膜の主成分はアルミナ、アルミニウム水酸化物又はこれらの混合物であるのが好ましい。前記防塵膜の凹凸は不規則に分布する多数の微細な形状の凸部とそれらの間の溝状の凹部とからなるのが好ましい。
【0012】
前記防塵膜の下地層として、帯電防止膜を形成するのが好ましい。帯電防止膜の表面抵抗は1×1014Ω/□以下が好ましい。最表面に、撥水性又は撥水撥油性を有する膜を形成するのが好ましい。撥水性又は撥水撥油性を有する膜の厚さは0.4〜100 nmが好ましい。本発明の防塵性光透過性部材の最表面の三次元平均表面粗さを1〜100 nmとするのが好ましい。
【0013】
本発明の防塵性光透過性部材は上記方法により製造される。かかる防塵性光透過性部材は、さらに機械的防塵手段を具備してもよい。本発明の防塵性光透過性部材は、撮像装置用のローパスフィルタ及び撮像素子用保護部材として有用である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塵埃の付着防止性に優れた防塵性光透過性部材が得られる。本発明では、光透過性基板の光入射面にアルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物からなる蒸着膜を形成し、これを熱水で処理するので、熱水処理する膜を塗布法で形成する方法に対して、液だれによる膜ムラ等の外観不良が生じないという優位性を有する。
【0015】
微細な凹凸が表面に形成された防塵膜を有する本発明の防塵性光透過性部材は、部材に付着した塵埃粒子の分子間力及び接触帯電付着力を低減できる。そのため耐異物付着性に優れており、機械的防塵手段が不要であり、撮像装置の低コスト化、軽量化及び低消費電力化を実現することができる。特に帯電防止膜も有する防塵性光透過性部材は、塵埃粒子と防塵性光透過性部材の防塵膜との間の静電付着力及び電気映像力も低減できるので、一層優れた耐異物付着性を有する。さらに撥水/撥油性膜を最表面に有する防塵性光透過性部材は、塵埃粒子と防塵性光透過性部材間の液架橋力も低減できるので、一層優れた耐異物付着性を有する。本発明の防塵性光透過性部材は、防塵膜による微細な凹凸を有するので、反射防止性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[1] 光透過性基板
光透過性基板(以下特段の断りがない限り、単に「基板」とよぶ)を構成する材料は、防塵性光透過性部材の用途に応じて適宜選択すればよく、無機化合物でも有機ポリマーでもよい。例えば防塵性光透過性部材を撮像素子用の光学フィルタ(ローパスフィルタ)として用いる場合、基板用材料として通常は複屈折性を有する水晶や石英ガラスを用いる。防塵性光透過性部材を撮像素子又はローパスフィルタの保護部材として使用する場合、基板用材料として各種無機ガラス(例えばシリカ、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス等)や、透明ポリマー[例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂等のポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂等]等を用いることができる。基板の形状及び厚さは用途に応じて適宜選択すればよい。
【0017】
[2] 防塵性光透過性部材の製造方法
防塵性光透過性部材の製造方法は、光透過性基板の光入射面にアルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物からなる蒸着膜を形成し、蒸着膜を40〜100℃の温度の水又は水と有機溶媒との混合液で処理し、乾燥して防塵膜を形成する工程を有する。必要に応じて、防塵膜を形成する前及び/又は後に帯電防止膜を形成してもよいし、最表面に撥水性又は撥水撥油性を有する膜(以下特段の断りがない限り、「撥水/撥油性膜」と表記する)を形成してもよい。
【0018】
(1) 防塵膜の形成
(a) 蒸着膜の形成
アルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物からなる蒸着膜は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、熱CVD、プラズマCVD、光CVD等の化学蒸着法等により形成することができる。経済性の観点から、真空蒸着法が好ましい。均一な蒸着膜を形成し、かつ三次元平均表面粗さが好ましい範囲にある防塵膜を得るために、蒸着膜の厚さは5〜500 nmとするのが好ましい。
【0019】
真空蒸着法では、高真空下(例えば1×10-4〜1×10-2 Pa程度)でアルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物からなる蒸着材の蒸気を光透過性基板上に凝縮させて蒸着膜を形成する。蒸着材を蒸気にする方法は特に制限されず、例えば通電加熱型ソースを用いる方法、E型電子銃により電子ビームを当てる方法、ホローカソード放電により大電流電子ビームを当てる方法、レーザパルスを当てるレーザアブレーション等が挙げられる。基板はその膜形成面が蒸着材に対向するように設置し、その状態で蒸着中に回転させるのが好ましい。蒸着時間等を適宜設定することにより、所望の厚さを有する層を形成することができる。
【0020】
アルミニウム蒸着膜は、蒸着材としてアルミニウムを用いて形成する。均一なアルミニウム蒸着膜を形成するために、限定的ではないが、蒸着速度は1〜10 nm/秒が好ましく、蒸着中の基板の温度は20〜80℃が好ましい。
【0021】
アルミナ蒸着膜を形成する方法として、(i) 蒸着材としてアルミナを用いる方法、及び(ii) 蒸着材としてアルミニウムを用い、蒸着装置内に少量の酸素を導入しながら反応性蒸着を行う方法がある。方法(i)を用いる場合、均一なアルミナ蒸着膜を形成するために、限定的ではないが、蒸着速度は0.1〜1.0 nm/分が好ましく、蒸着中の基板の温度は20〜300℃が好ましい。方法(ii)を用いる場合、圧力が1×10-4〜1×10-2 Paとなる範囲で酸素を導入するのが好ましい。
【0022】
化学気相蒸着法(CVD法)の場合、低温で薄膜を形成できるプラズマCVD法が好ましい。プラズマCVD法では、ソースガスのプラズマを発生させ、基板表面で分解、還元、酸化、置換等の化学反応を起こさせてアルミニウム蒸着層を形成する。ソースガスとして、例えばハロゲン化アルミニウム(例えばAlCl3等)、有機アルミニウム[例えばAl(CH3)3、Al(i-C4H9)3、(CH3)2AlH等]、有機アルミニウム錯体、アルミニウムアルコラート等が挙げられる。ソースガスは、ヘリウム、アルゴン等の置換ガスとともに基板表面に送給するのが好ましい。ソースガスに、水素、窒素、アンモニア、一酸化二窒素、酸素、一酸化炭素、メタン等の反応性ガスを混合してもよい。
【0023】
(b) 蒸着膜の熱水処理
得られた蒸着膜を、40〜100℃の温度に加熱した水又は水と有機溶媒との混合液で熱水処理する。蒸着膜を形成した基板を、上記温度の水又は上記混合液に浸漬するのが好ましい。浸漬温度は50〜100℃が好ましい。浸漬時間は1〜240分間が好ましい。
【0024】
必要に応じて、水に塩基を添加してもよく、これにより防塵膜の形成が早くなる。塩基は有機塩基及び無機塩基のいずれでもよい。有機塩基の例としてアミンが挙げられる。好ましいアミンの例としてアルコールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、アルキルアミン(例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン)等が挙げられる。無機塩基の例としてアンモニア、NaOH及びKOHが挙げられる。塩基の含有量は特に制限されないが、水と塩基の合計を100質量%として0.1〜1質量%が好ましい。
【0025】
水と有機溶媒との混合液を用いる場合、有機溶媒としてはアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等)が好ましい。有機溶媒の添加量は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されない。
【0026】
蒸着膜がアルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物のいずれからなる場合でも、蒸着膜を熱水処理すると、その表層部分に、多数の微細な不規則な形状の凸部と、それらの間の溝状の凹部とが不規則に集合した凹凸が形成される。このような凹凸が形成される理由は定かではないが、蒸着膜がアルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物のいずれからなる場合でも、熱水処理により蒸着膜の少なくとも表層部分がアルミニウムの水酸化物(例えばベーマイト等)に変化し、アルミニウム水酸化物の溶出と、溶出したアルミニウム水酸化物の析出とが同時に起こることによるものと推測される。
【0027】
(c) 乾燥
蒸着膜の表面に凹凸を形成した後、室温〜500℃の温度で乾燥するのが好ましく、100〜450℃の温度で焼成するのがより好ましい。乾燥(焼成)時間は10分〜36時間とするのが好ましい。乾燥により、上記凹凸を有し、アルミナ、アルミニウム水酸化物又はこれらの混合物を主成分とする防塵膜が得られる。アルミニウム蒸着膜を熱水処理した場合でも、通常はアルミナ、アルミニウム水酸化物又はこれらの混合物を主成分とする防塵膜が得られる。以上の方法は高温で焼成する工程を経ることなく防塵膜を形成できるので、耐熱性が不十分なプラスチック基板にも使用できる。
【0028】
(2) 帯電防止膜の形成
防塵膜の内面側及び/又は外面側に帯電防止膜を形成してもよく、これにより耐塵埃付着性が一層向上する。帯電防止膜は防塵膜の下地層として形成するのが好ましい。
【0029】
帯電防止膜は導電性無機材料により形成する。導電性無機材料は無色で透明性が高いものである限り特に制限されず、公知のものが使用できる。導電性無機材料として、例えば酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、スズドープ酸化インジウム(ITO)及びアンチモンドープ酸化スズ(ATO)からなる群から選ばれた少なくとも一種が挙げられる。帯電防止膜として、上記導電性無機材料からなる緻密膜(例えば蒸着膜等)を形成してもよいし、上記導電性無機材料からなる微粒子(導電性無機微粒子)と、バインダとからなる複合膜を形成してもよい。バインダ成分は重合によりバインダとなるモノマー又はオリゴマーであり、金属アルコキシド又はそのオリゴマーや、紫外線硬化性又は熱硬化性の化合物(例えばアクリル酸エステル等)が挙げられる。
【0030】
導電性無機材料のみからなる膜は、蒸着材やソースガスとして上記導電性無機材料用のものを用いる以外上記防塵膜用の蒸着膜を形成する場合と同様にして、真空蒸着法等の物理蒸着法、化学蒸着法等により形成することができる。導電性無機微粒子−バインダ複合層はディップコート法、スピンコート法、スプレー法、フローコート法、ロールコーティング法、リバースコート法、フレキソ法、スクリーン印刷法及びこれらを併用する方法等の慣用の塗布法で形成することができる。以下、塗布法により導電性無機微粒子−バインダ複合層を作製する方法を説明する。
【0031】
(a) 導電性無機微粒子含有スラリーの調製
導電性無機微粒子の平均粒径は5〜80 nm程度であるのが好ましい。平均粒径が80 nm超であると、得られる帯電防止膜の透明性が低過ぎる。一方平均粒径が5nm未満の導電性無機微粒子は作製が困難である。
【0032】
導電性無機微粒子/バインダ成分の質量比は0.05〜0.7とするのが好ましい。この質量比が0.7超であると、均一に塗布するのが困難な上、得られる層が脆過ぎる。質量比0.05未満であると、得られる層の導電性が低下する。
【0033】
バインダ成分としては、金属アルコキシド又はそのオリゴマー、及び紫外線硬化性又は熱硬化性の化合物が好ましい。これらの成分を用いると、基板が非耐熱性の場合でも、バインダを含有する帯電防止膜を設けることができる。
【0034】
金属アルコキシドとしては、メチルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン等のアルコキシシラン;ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド等のジルコニウムアルコキシド;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン等のチタンアルコキシド;及びアルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシドが好ましく、アルコキシシランがより好ましい。
【0035】
紫外線硬化性又は熱硬化性の化合物の例としてラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物が挙げられる。これらの化合物を併用しても良い。
【0036】
ラジカル重合性化合物としてはアクリル酸又はそのエステルが好ましく、その具体例として、(メタ)アクリル酸;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;並びにこれらが重合したオリゴマーが挙げられる。
【0037】
カチオン重合性化合物としてはエポキシ化合物が好ましく、その具体例としてはフェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、1,2,8,9-ジエポキシリモネン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及びビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペートが挙げられる。
【0038】
金属アルコキシドをバインダ成分として使用する場合、無機微粒子含有スラリーに水及び触媒を添加する。触媒としては、例えば硝酸、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、アンモニア等が挙げられる。触媒の添加量は、金属アルコキシドに対して、モル比で0.0001〜1であるのが好ましい。金属アルコキシド、溶媒及び水の好ましい混合割合は、モル比で、金属アルコキシド:溶媒:水=1:10〜100: 0.1〜5である。
【0039】
ラジカル重合性化合物又はカチオン重合性化合物をバインダ成分として使用する場合、無機微粒子含有スラリーにラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤を添加する。ラジカル重合開始剤としては紫外線照射によりラジカルを発生する化合物を用いる。好ましいラジカル重合開始剤の例としてベンジル類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類及びアシルホスフィンオキサイド類が挙げられる。ラジカル重合開始剤の添加量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して0.1〜20質量部程度である。
【0040】
カチオン重合開始剤としては、紫外線照射によりカチオンを発生する化合物が用いられる。カチオン重合開始剤の例としてジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。カチオン重合開始剤の添加量は、カチオン重合性化合物100質量部に対して0.1〜20質量部程度である。
【0041】
スラリーに配合する無機微粒子及びバインダ成分はそれぞれ2種以上でも良い。また物性を損なわない範囲であれば、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤等、一般的な添加剤を使用することができる。
【0042】
スラリーの濃度は形成する層の厚さに影響する。溶媒の例としてメタノール、エタノール等のアルコール類、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール等のアルコキシアルコール類、ジアセトンアルコール等のケトール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。溶媒の使用量は無機微粒子とバインダ成分の合計100質量部あたり、20〜10,000質量部程度である。
【0043】
(b) コーティング
導電性無機微粒子含有スラリーの塗布方法は、上記慣用の方法でよい。中でもディップコート法は、膜の均一性、膜厚の制御等が容易であるので好ましい。得られる膜の厚さは、例えば、ディップコート法における引き上げ速度やスピンコート法における基板回転速度の調整、塗布液の濃度の調整等により制御することができる。ディップコート法における引き上げ速度は、例えば約0.1〜3.0 mm/秒程度とするのが好ましい。
【0044】
導電性無機微粒子含有スラリー層中のバインダ成分を重合させる。バインダ成分が金属アルコキシド又はそのオリゴマーである場合、硬化条件は、80〜400℃の温度で30分〜10時間とすればよい。バインダ成分が紫外線硬化性の場合、UV照射装置を用いて50〜3,000 mJ/cm2程度でUV照射すると、バインダ成分が重合し、導電性無機微粒子とバインダからなる層が形成する。層の厚さにも拠るが、照射時間は通常0.1〜60秒程度である。
【0045】
導電性無機微粒子含有スラリーの溶媒を揮発させる。溶媒を揮発させるには、スラリーを室温で保持しても良いし、30〜100℃程度に加熱しても良い。
【0046】
(3) 撥水/撥油性膜の形成
最表面に撥水/撥油性膜を形成してもよい。撥水/撥油性膜を形成する材料は無色で透明性が高いものである限り特に制限されず、公知のものが使用できる。撥水/撥油性膜の材料として、例えばフッ素含有無機化合物、フッ素を含有する有機−無機ハイブリッドポリマー、フッ素含有有機化合物、フッ化ピッチ[例えばCFn(n:1.1〜1.6)]、フッ化グラファイト等が挙げられる。
【0047】
フッ素含有無機化合物として、例えばLiF、MgF2、CaF2、AlF3、BaF2、YF3、LaF3及びCaF3からなる群から選ばれた少なくとも一種が挙げられる。これらのフッ素含有無機化合物は、例えばキャノンオプトロン株式会社から入手できる。
【0048】
フッ素を含有する有機−無機ハイブリッドポリマーとして、フルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体及び不飽和シラン単量体の共重合体、及びフルオロカーボン基を有する有機珪素ポリマーが挙げられる。
【0049】
フルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体及び不飽和シラン単量体の共重合体として、特開2002-146271号に記載の、下記式(1):
【化1】

(ただしRf1は少なくとも一部がフッ素化された脂肪族基であり、R1は他の原子団を有してもよいアルキレン基であり、R2は水素基又は低級アルキル基である)により表されるフルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体と、下記式(2):
【化2】

[ただしR3及びR4はそれぞれ独立に水素基又は低級アルキル基であり、X1はアルコキシ基、ハロゲン基又は-OC(=O)R5基(R5は水素基又は低級アルキル基である)であり、Y1は単結合又は-CH2-基であり、nは0〜2の整数である]により表される不飽和シラン単量体との共重合体が好ましい。
【0050】
フルオロカーボン基を有する有機珪素ポリマーとして、フルオロカーボン基を有するフッ素含有シラン化合物を加水分解して得られるポリマーが挙げられる。フッ素含有シラン化合物としては下記式(3):
CF3(CF2)a(CH2)2SiRbXc ・・・(3)
(ただしRはアルキル基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子であり、aは0〜7の整数であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、かつb + c = 3である。)により表される化合物が挙げられる。式(3)により表される化合物の具体例として、CF3(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CH2)2SiCl3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5(CH2)2SiCl3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2SiCl3、CF3(CF2)7(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3Cl2等が挙げられる。有機珪素ポリマーとして市販品を用いてもよく、例えばXC98-B2472(GE東芝シリコーン株式会社製)等が挙げられる。
【0051】
フッ素含有有機化合物として、例えばフッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂としては、フッ素含有オレフィン系化合物の重合体、並びにフッ素含有オレフィン系化合物及びこれと共重合可能な単量体からなる共重合体が挙げられる。そのような(共)重合体として、ポリテトラフルオロエチレン、テトラエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエ−テル共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリフッ化ビニル等が挙げられる。フッ素樹脂として市販のフッ素含有組成物を重合させたものを使用してもよい。市販のフッ素含有組成物として例えばオプスター(ジェイエスアール株式会社製)、サイトップ(旭硝子株式会社製)等が挙げられる。
【0052】
(a) フッ素含有無機化合物膜の形成方法
フッ素含有無機化合物からなる膜は、蒸着材やソースガスとして上記フッ素含有無機化合物用のものを用いる以外上記防塵膜用の蒸着膜を形成する場合と同様にして、真空蒸着法等の物理蒸着法、化学蒸着法等により形成することができる。
【0053】
(b) フルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体・不飽和シラン単量体の共重合体膜の形成方法
フルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体及び不飽和シラン単量体の共重合体の膜を形成するには、(i) 少なくとも両単量体を共重合させ、得られた共重合体を含有する溶液(共重合体溶液)を基板に塗布した後で乾燥させる方法(共重合体塗布法)を用いても良いし、(ii) 両単量体及びこれらのオリゴマーのいずれかを含有する溶液(単量体/オリゴマー溶液)を基板に塗布し、乾燥した後、重合させる方法(重合法)を用いても良い。
【0054】
(i) 共重合体塗布法を用いる場合
フルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体及び不飽和シラン単量体の共重合体の製造は、公知のラジカル重合法を用いて行うことができる。例えば、少なくとも両単量体を適当な溶媒に溶解させ、アゾビスイソブチロニトリル等の公知のラジカル重合開始剤の存在下60〜75℃で10〜20時間加熱することにより共重合体が得られる。溶媒としては、例えばC3F7OCH3、C3F7OC2H5、C4F9OCH3、C4F9OC2H5等のハイドロフルオロエーテルや、CF3CFHCFHCF2CF3、C5F11H等のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
【0055】
得られた共重合体を溶媒に溶解又は分散させて共重合体溶液を調製する。溶媒としては、例えば上記ハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボン;C4F9OCF3,C4F9OC2F5等のパーフルオロエーテル;三フッ化エタン,C6F14,C7F16等の鎖状フルオロカーボン;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルi-ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等の易揮発性溶媒が挙げられる。中でもハイドロフルオロエーテル及びパーフルオロエーテルが好ましい。
【0056】
共重合体溶液の濃度は、0.1〜150 g/Lが好ましく、1〜50 g/Lがより好ましい。共重合体溶液として市販品を用いてもよい。市販品として、例えばノベックEGC-1700、同EGC-1720(住友スリーエム株式会社製)等が挙げられる。
【0057】
共重合体溶液の塗布は、上記慣用の方法により行うことができる。共重合体溶液を塗布した後、乾燥により溶媒を除去する。乾燥方法としては、風乾、熱風乾燥、オーブン内での加熱乾燥等慣用の方法でよい。必要に応じて減圧乾燥してもよい。風乾方法として、例えば強制的に低湿度のガスを吹き付ける方法を挙げることができる。
【0058】
(ii) 重合法を用いる場合
重合法では、単量体/オリゴマー溶液を基板に塗布し、放射線重合させるのが好ましい。放射線としては紫外線、X線又は電子線が好ましい。以下紫外線を用いる重合法について説明する。両単量体又はこれらのオリゴマーと、ラジカル重合開始剤とを溶媒に溶解又は分散させて単量体/オリゴマー溶液を調製する。ラジカル重合開始剤及び溶媒は上記と同じで良い。単量体/オリゴマー溶液の濃度は、0.1〜150 g/Lが好ましく、1〜50 g/Lがより好ましい。
【0059】
単量体/オリゴマー溶液は上記の成分に限られず、安定剤(例えばアセトニトリル、尿素類、スルホオキサイド、アミド類等)、重合禁止剤(例えばハイドロキノンモノメチルエーテル等)等を含有してもよい。
【0060】
単量体/オリゴマー溶液の塗布は、上記慣用の方法により行うことができる。塗布後、乾燥により溶媒を除去する。乾燥方法は上記と同じで良い。塗布した両単量体又はこれらのオリゴマーに紫外線を照射し、共重合させる。紫外線照射強度は、単量体の種類、膜厚等に応じて適宜設定し得るが、500〜2,000 mJ/cm2程度で良い。紫外線ランプは、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、超高圧水銀灯、フュージョン紫外線ランプ等から適宜選択してよい。
【0061】
(iii) 架橋
必要に応じて、共重合体膜を架橋してもよい。架橋方法としては、電離放射線を照射する方法、架橋剤を用いる方法、加硫する方法等が挙げられる。電離放射線としてはα線、β線(電子線)、γ線等を用いることができる。架橋剤としては、不飽和結合を2つ以上有する化合物、例えばブタジエン、イソプレン等が挙げられる。架橋剤は、共重合体塗布法を用いる場合、共重合前の両単量体を含む溶液に添加し、重合法を用いる場合、単量体/オリゴマー溶液に添加する。
【0062】
(c) フルオロカーボン基含有有機珪素ポリマー膜の形成方法
フッ素含有シラン化合物を加水分解して得られるポリマーからなる膜を形成する方法は、アルコキシド原料として上記式(3)により表される化合物を使用する以外、上記の金属アルコキシドからゾルゲル法により膜を形成する方法と同じでよい。
【0063】
(d) フッ素樹脂膜の形成方法
フッ素樹脂膜は、真空蒸着法又は塗布法等のウェット法で形成可能である。塗布法によりフッ素樹脂層を作製する方法を説明する。塗布法によりフッ素樹脂膜を形成するには、(i) 少なくともフッ素含有オレフィン系化合物を重合させ、得られた(共)重合体を含有する溶液を基板に塗布した後で乾燥させる方法を用いても良いし、(ii) フッ素含有オレフィン系化合物及びそのオリゴマーのいずれかを含有する溶液を基板に塗布し、乾燥した後、重合させる方法を用いても良い。いずれの方法も、フッ素含有オレフィン系化合物もしくはそのオリゴマー又はその両方を用いる以外フルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体及び不飽和シラン単量体の共重合体の膜を形成する場合と同じでよいので、説明を省略する。ただしフッ素含有オレフィン系化合物等が熱硬化型の場合、100〜140℃に30〜60分程度加熱するのが好ましい。
【0064】
(4) その他の処理
防塵膜、帯電防止膜及び撥水/撥油性膜を形成する前に、これら各膜の下地である基板又は膜に対して、コロナ放電処理又はプラズマ処理を施し、吸着水分や不純物を除去するとともに表面を活性化してもよく、これにより各膜の固着強度が向上する。
【0065】
[3] 防塵性光透過性部材
(1) 防塵膜
上記の方法により得られる防塵膜は、アルミナ、アルミニウム水酸化物又はこれらの混合物を主成分とし、無色で透明性が高い。防塵膜はアルミナを主成分とするのが好ましく、アルミナのみからなるのがより好ましい。防塵膜は、アルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物からなる蒸着膜の表層部分が熱水の作用を受けたときに生じた多数の微細な不規則な形状の凸部と、それらの間の溝状の凹部とが不規則に集合した凹凸を表面に有する。
【0066】
防塵膜の凹凸形状は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)により表層や断面を観察したり、AFMにより表層を観察したりすることにより(特に斜視による観察)、調べることができる。防塵膜の厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜設定すればよいが、5〜200 nmであるのが好ましい。なおこの厚さは、表面の微細な凹凸を含めたものである。
【0067】
上記のように、防塵膜は微細な凹凸が表面に形成されてなる。一般的に防塵膜の三次元平均表面粗さ(SRa、微細凹凸の面密度の指標である)が大きいほど、防塵膜に付着した塵埃粒子の分子間力を低減する効果が高い。また均一に帯電した球形塵埃粒子と防塵性光透過性部材間の接触帯電付着力F1は、下記一般式(4):



[ただしε0は真空の誘電率8.85×10-12(F/m)であり、Vcは防塵性光透過性部材の防塵膜と塵埃粒子との接触電位差であり、AはHamaker定数(van der Waals 相互作用の大きさを表す量)であり、kは下記式:k=k1 + k2(ただしk1及びk2は各々k1=(1−ν12)/E1及びk2=(1−ν22)/E2であり、ν1及びν2は各々防塵性光透過性部材の防塵膜及び塵埃粒子のPoisson比であり、E1及びE2は各々防塵性光透過性部材の防塵膜及び塵埃粒子のYoung率である。)により表される係数であり、Dは塵埃粒子径であり、Z0は防塵性光透過性部材の防塵膜と塵埃粒子との間の距離であり、bは防塵性光透過性部材の防塵膜のSRaである。]により表され、化学的なポテンシャルの差により発生する。式(4)から明らかなように、b(防塵性光透過性部材の防塵膜のSRa)を大きくすることにより、接触帯電付着力F1を小さくできる。
【0068】
具体的には、防塵膜のSRaが1nm以上であると、防塵膜に付着した塵埃粒子の分子間力及び接触帯電付着力F1が十分に小さい。ただしSRaが100 nmを超えると光の散乱が発生し、撮像装置には不適になる。よってSRaは1〜100 nmであるのが好ましく、5〜80 nmであるのがより好ましく、10〜50 nmであるのが特に好ましい。SRaは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いてJIS B0601により求められる中心線平均粗さ(Ra:算術平均粗さ)を三次元に拡張したものであって、下記式(5):



(ただしXL〜XRは測定面のX座標の範囲であり、YB〜YTは測定面のY座標の範囲であり、S0は測定面がフラットであるとした場合の面積|XR−XL|×|YT−YB|であり、XはX座標であり、YはY座標であり、F(X,Y)は測定点(X,Y)における高さであり、Z0は測定面内の平均高さである。)により表される。
【0069】
上記式(4)中のHamaker定数Aは屈折率の関数で近似され、屈折率が小さいほど小さくなる。具体的には、防塵膜が最表層の場合、又は後述する撥水膜もしくは撥水撥油性膜を表面に有する場合のいずれでも、防塵膜の屈折率は1.50以下であるのが好ましく、1.45以下であるのがより好ましい。限定的ではないが、防塵膜の微細な凹凸の最大高低差(P-V)は5〜1,000 nmであるのが好ましく、50〜500 nmであるのがより好ましく、100〜300 nmであるのが特に好ましい。P-V値が5〜1,000 nmであると、特に優れた反射防止性が得られ、50〜500 nmであると高い透過率も得ることが出来る。ここでP-V値はAFMにより求める。
【0070】
限定的ではないが、防塵膜の比表面積(SR)は1.05以上であるのが好ましく、1.15以上であるのがより好ましい。SRは、下記式(6):
SR=S/S0 ・・・(6)
(ただしS0は測定面がフラットであるとした場合の面積であり、Sは表面積測定値である。)により求める。Sは次のようにして求める。まず測定する領域を最も近接した3つのデ−タ点(A,B,C)よりなる微小三角形に分割し、次いで各微小三角形の面積ΔSをベクトル積、すなわちΔS(ΔABC)=|AB×AC|/2(但しABおよびACは各辺の長さ)を用いて求める。ΔSの総和を求め、Sとする。ただしSRは、光の散乱が発生しない程度の大きさであるのが好ましい。
【0071】
(2) 帯電防止膜
上記のように、帯電防止膜は導電性無機材料により形成される。帯電防止膜を設けることにより塵埃付着の原因の一つであるクーロン力を低減でき、耐塵埃付着性が一層向上する。均一に帯電した球形塵埃粒子と防塵性光透過性部材間の静電付着力F2は下記一般式(7):



(ただしq1及びq2は各々防塵性光透過性部材の防塵膜及び塵埃粒子の電荷(C)であり、rは粒子半径であり、ε0は真空の誘電率8.85×10-12(F/m)である。)により表される。式(7)から明らかなように、防塵性光透過性部材の防塵膜及び塵埃粒子帯電量を低減することにより静電付着力F2を低減できるため、帯電防止膜により除電するのは効果的である。
【0072】
また均一に帯電した球形塵埃粒子と防塵性光透過性部材の防塵膜との間の電気映像力F3は下記一般式(8):


(ただしε0は真空の誘電率8.85×10-12(F/m)であり、εは防塵性光透過性部材の防塵膜の誘電率であり、qは塵埃粒子の電荷であり、rは粒子半径である。)により表され、帯電していない防塵性光透過性部材の防塵膜に電荷を持った塵埃粒子が近づくと防塵膜に異符号等価の電荷が誘起されることにより発生する力である。電気映像力F3は、ほぼ塵埃粒子の帯電率に依存するため、付着した塵埃粒子を帯電防止膜により除電することにより小さくすることができる。
【0073】
帯電防止膜の表面抵抗は、1×1014Ω/□以下であるのが好ましく、1×1012Ω/□以下であるのがより好ましい。帯電防止膜の屈折率は特に制限されないが、基板と防塵膜の屈折率の中間程度とすると、一層高い反射防止効果が期待できる。帯電防止膜の厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜設定すればよいが、0.01〜3μmであるのが好ましい。
【0074】
(3) 撥水膜及び撥水撥油性膜
上記のように、撥水/撥油性膜は通常最表面に形成される。球形の塵埃粒子と防塵性光透過性部材間の液架橋力F4は、
下記一般式(9):
F4=−2πγD ・・・(9)
(ただしγは液の表面張力であり、Dは塵埃粒子の粒径である。)により表され、防塵性光透過性部材と塵埃粒子の接触部に液体が凝集することによりできる液架橋により生じる力である。よって防塵膜上に撥水/撥油性膜を形成し、水や油の付着を低減すると、液架橋力F4による塵埃粒子の付着を低減できる。
【0075】
また一般的に凹凸面での水の接触角と、平滑面での水の接触角には下記式(10):
cosθγ=γcosθ ・・・(10)
(ただしθγは凹凸面での接触角であり、γは表面積倍増因子であり、θは平滑面での接触角である。)により近似される関係が有る。通常γ>1であるので、θγは、θ<90°である時にはθより小さく、θ>90°である時にはθより大きい。よって、親水性表面の面積を凹凸化により大きくすると親水性が一層強まり、撥水性表面の面積を凹凸化により大きくすると撥水性が一層強くなる。そのため微細な凹凸を有する防塵膜上に、凹凸を保持するように撥水膜を形成すると、高い撥水効果が得られる。最表面に撥水/撥油性膜を形成した場合も、最表面の三次元平均表面粗さ(SRa)、凹凸の最大高低差(P-V)及び比表面積(SR)は各々上記の範囲内であるのが好ましい。
【0076】
撥水/撥油性膜の厚さは0.4〜100 nmであるのが好ましく、10〜80 nmであるのがより好ましい。撥水/撥油性膜の厚さを0.4〜100 nmとすると、防塵膜のSRa、P-V値及びSRを上記範囲に保持できる。よって0.4〜100 nmの厚さの撥水/撥油性膜を最表面に形成すると、防塵膜の微細な凹凸による分子間力及び接触帯電付着力F1の低減に加えて、液架橋力F4の低減により耐塵埃付着性が一層向上する。撥水/撥油性膜の厚さが0.4 nm未満であると、撥水/撥油性が不十分であると共に、例えばフッ素樹脂を使用した場合に期待できる電気映像力F3の低減効果が期待できない。一方100 nm超とすると、防塵膜の微細な凹凸が吸収されてしまい、耐塵埃付着性が低下する。撥水/撥油性膜の屈折率も1.5以下であるのが好ましく、1.45以下であるのがより好ましい。
【0077】
(4) 層構成例
防塵性光透過性部材の好ましい層構成例として、例えば防塵膜/基板、防塵膜/帯電防止膜/基板、撥水/撥油性膜/防塵膜/帯電防止膜/基板、防塵膜/基板/防塵膜、防塵膜/帯電防止膜/基板/帯電防止膜/防塵膜、撥水/撥油性膜/防塵膜/帯電防止膜/基板/帯電防止膜/防塵膜/撥水/撥油性膜等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0078】
(5) 物性
好ましい実施態様による本発明の防塵性光透過性部材は、最表面の三次元平均表面粗さ(SRa)が、好ましくは1〜100 nmであり、より好ましくは8〜80 nmであり、特に好ましくは10〜50 nmである。
【0079】
上記のように微細な凹凸が表面に形成された防塵膜により、本発明の防塵性光透過性部材に付着した塵埃粒子の分子間力及び接触帯電付着力F1は低減される。そのため本発明の防塵性光透過性部材は耐異物付着性に優れており、機械的防塵手段が不要であり、撮像装置の低コスト化、軽量化及び低消費電力化を実現することができる。特に帯電防止膜を有する防塵性光透過性部材は、塵埃粒子と防塵性光透過性部材との間の静電付着力F2及び電気映像力F3が低いので、一層優れた耐異物付着性を有する。さらに撥水/撥油性膜を最表面に有する防塵性光透過性部材は、塵埃粒子と防塵性光透過性部材間の液架橋力F4も低減できるので、一層優れた耐異物付着性を有する。
【0080】
本発明の防塵性光透過性部材は、防塵膜による微細な凹凸を有するので、反射防止性にも優れている。具体的には、本発明の防塵性光透過性部材の可視光(波長域:380〜780 nm)に対する分光反射率は、通常3%以下である。
【0081】
[4] 機械的防塵手段
防塵性光透過性部材は、機械的に塵埃を除去する手段を具備してもよい。機械的な防塵手段として、例えばワイパ、加振部材等が挙げられる。加振部材として、例えば圧電素子が挙げられる。図1は、ワイパを具備する防塵性光透過性部材の一例を示す。この例では、基板10に防塵膜11が形成された矩形板状の防塵性光透過性部材1がデジタルスチルカメラ本体2に設けられた開口部に嵌合されており、防塵性光透過性部材1の一角部の近傍に、ワイパ12がモータ3の軸30により支持されている。ワイパ12をモータ3により回動させると、ワイパブレード12aにより掃かれた塵埃が、防塵性光透過性部材に沿って設けられた溝20,20に入る。
【0082】
図2は、圧電素子を具備する防塵性光透過性部材の一例を示す。この例では、基板10に防塵膜11が形成された矩形板状の防塵性光透過性部材1の長手方向の一端部に電気端子13が設けられているとともに、部材1の短手方向の両端部に、長手方向に延在する圧電素子14,14が設けられている。電気端子13は、導電性物質を接着、蒸着、めっき等の方法により固着させることにより設けることができる。電気端子13は圧電素子14,14用の一方の電極と、アース用の電極とを兼ねている。発振器4により、圧電素子14,14に周期的に電圧を印加し、圧電素子14,14を同周期で伸縮させると、図2(b)(図2(a)の部材をA方向から俯瞰した図)に示すように、防塵性光透過性部材1が屈曲振動する。図2(c)に示すように、部材1の長手方向両端部近傍が振動の節15,15となるように、防塵性光透過性部材1を屈曲振動させると、防塵性光透過性部材1に付着した塵埃を、光軸方向(部材1面と垂直な方向)へ弾き飛ばすことができる。部材1の長手方向両端部に移動させることができる。印加電圧及び周波数は、基板10を構成する材料に応じて適宜設定すればよい。なお図2に示すようにアースを設けて、防塵性光透過性部材1から撮像装置本体に導通させることにより、防塵性光透過性部材1の帯電を常時防止することができるので、耐塵埃付着性が一層向上する。
【0083】
図3は、圧電素子を具備する防塵性光透過性部材の別の例を示す。この防塵性光透過性部材1は、防塵膜11が形成された円板状の基板10に、平板環状の圧電素子14が設けられている。発振器(図示せず)により、圧電素子14に周期的な電圧を印加すると、図3(b)に示すように、防塵性光透過性部材1が屈曲振動し、塵埃を振動の節15に移動させることができる。
【0084】
[5] 撮像装置
以上のような防塵性光透過性部材は、電子撮像装置の撮像素子用のローパスフィルタ、保護部材等として好適である。本発明の防塵性光透過性部材を用いることができる電子撮像装置は特に制限されず、例えばデジタル一眼レフカメラ等のデジタルスチルカメラ;デジタルビデオカメラ;ファクシミリ、スキャナ等の画像入力装置等が挙げられる。
【0085】
防塵性光透過性部材は撮像素子(CCD、CMOS等)の受光面側に配置する。図4は、防塵性光透過性部材からなるローパスフィルタを具備するデジタルスチルカメラの一例を示す。この例では、カメラ本体2に設けられた段部21に支持された地板6にCCD5が取り付けられており、防塵膜11を有するローパスフィルタ1がCCD5の受光面に密接して、カメラ本体2に設けられた開口部に嵌合されている。
【0086】
図5に示すデジタルスチルカメラは、ワイパ12を具備する以外、図4に示すデジタルスチルカメラと同じである。ワイパ12による塵埃除去作用は上記の通りである。ワイパ12を駆動させるためのシーケンス及び回路構成は特に制限されず、例えば特開2001-298640号に記載されているシーケンス及び回路構成が挙げられる。
【0087】
図6は、基板10に防塵膜11を形成してなる防塵性光透過性部材からなる保護部材1を具備するデジタルスチルカメラの一例を示す。この例では、CCD5及びローパスフィルタ7はカメラ本体2に設けられた段部21に支持された箱型ホルダ6'に底部から順に収容されており、保護部材1はホルダ6'の開口部に配置されている。
【0088】
図7に示すデジタルスチルカメラは、保護部材1が圧電素子14を具備する以外、図6に示すデジタルスチルカメラと同じである。圧電素子14の振動による塵埃除去作用は上記の通りである。圧電素子14を駆動させるための回路構成は特に制限されず、例えば特開2002-204379号や特開2003-319222号に記載のもので良い。
【0089】
以上の通り図面を参照して本発明を説明したが、本発明はそれらに限定されず、本発明の趣旨を変更しない限り種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0090】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0091】
実施例1
蒸着装置中1.5×10-3Paの初期真空度下、BN製ハースライナーに入れたアルミニウムに電子ビームを当て、60℃に保温した石英ガラスからなる平板状基板(厚さ:1.8 mm、縦22 mm×横28 mm)の片面に、厚さが50 nmのアルミニウム膜を形成した。得られたアルミニウム膜付き石英ガラス板を、70℃に保温した精製水に1時間浸漬した。浸漬処理により蒸着膜が透明になった。その後、400℃の温度で1時間加熱乾燥し、微細な凹凸を有する防塵膜を形成した。得られた防塵膜付き石英ガラス板に赤外カットガラス板を接着して、一面に防塵膜を有するローパスフィルタを作製した。得られたローパスフィルタの防塵膜表面をAFMにより観察した。得られたAFM像を図8に示す。図8から、防塵膜は、不規則に分布する多数の微細な形状の凸部と、それらの間の溝状の凹部とからなる凹凸を有することが分かる。得られたローパスフィルタの防塵膜の三次元平均表面粗さ(SRa)は30 nmであった。
【0092】
実施例2
基板として赤外カットガラス及び石英ガラスが積層された平板(厚さ:1.8 mm、縦22 mm×横28 mm)を用い、その石英ガラス側にアルミニウム膜を形成し(厚さ50 nm)、乾燥処理を80℃で24時間とした以外実施例1と同様にして、ローパスフィルタを作製した。得られたローパスフィルタの防塵膜のSRaは28 nmであった。
【0093】
実施例3
実施例1と同じ石英ガラス板の一面に、帯電防止膜として真空蒸着法によりITO膜(厚さ:50 nm、表面抵抗:1×104Ω/□)を形成した。ITO膜付き石英ガラス板を蒸着装置中で270℃に保温しながら、BN製ハースライナーに入れたアルミニウムに電子ビームを当て、かつ真空度が4×10-3Paとなるように酸素を導入し(初期真空度1.5×10-3Pa)、23 nm/分の成膜速度で、ITO膜上に厚さが70 nmのアルミナ膜を形成した。アルミナ膜及びITO膜を有する石英ガラス板を、70℃に保温した精製水に1時間浸漬した後、400℃の温度で1時間加熱乾燥し、微細な凹凸を有する防塵膜を形成した。得られた防塵膜及び帯電防止膜を有する石英ガラス板の他方の面に赤外カットガラス板を接着した。得られた積層板の両面に、フッ素含有有機−無機ハイブリッドポリマーを含有するコーティング剤(商品名「ノベックEGC-1720」、住友スリーエム株式会社製)を、ディップ法により塗布し、室温で乾燥し、厚さ30 nmの撥水/撥油性膜を形成して、ローパスフィルタを作製した。得られたローパスフィルタの防塵膜側最表面のSRaは14 nmであった。
【0094】
実施例4
精製水の代わりにトリエタノールアミンを0.3質量%含有する水を用い、浸漬処理条件を60℃で1分とした以外実施例1と同様にして、ローパスフィルタを作製した。得られたローパスフィルタの防塵膜のSRaは23 nmであった。
【0095】
比較例1
水晶板にSiO2及びTiO2を交互に蒸着することにより反射防止膜(層構成:SiO2/TiO2/SiO2/TiO2/SiO2、厚さ:0.3μm)を形成し、その上に抵抗加熱法により市販のフッ素系撥水剤(製品名「OF-110」、キャノンオプトロン株式会社製)からなる撥水膜(厚さ:0.05μm)を形成した。得られた撥水ローパスフィルタの最表面のSRaは0.4 nmであった。
【0096】
実施例1〜4及び比較例1で作製したローパスフィルタの耐粒子付着性を下記の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0097】
(1) 粒子の付着数
各ローパスフィルタを円筒状容器(容積:1,000 cm3、底面の直径:95 mm)内に直立した状態に設置した。分級により粒径分布を20〜30μmの範囲内に揃えた0.01 mgのケイ砂(主成分:SiO2、比重:2.6 g/cm3)を容器中に均一に散布し、1時間静置後にローパスフィルタ表面に付着したケイ砂粒子の数をカウントした。測定は、25℃の温度、及び50%の相対湿度(RH)で行った。
【0098】
【表1】

【0099】
実施例1〜4のローパスフィルタは微細な凹凸を有する防塵膜を有するので、ケイ砂粒子の付着が少なく、耐異物付着性に優れていた。中でも実施例3のサンプルは最表面に撥水膜を有するので、特に耐異物付着性に優れていた。これに対して、防塵膜を有さない比較例1のサンプルは、実施例1〜4のサンプルに比べてケイ砂粒子の付着個数が格段に多かった。よって微細な凹凸を有する防塵膜を有する本発明の防塵性光透過性部材では、異物付着力が効果的に低減されていることが分かった。
【0100】
実施例1,2の防塵膜、及び実施例3の撥水/撥油性膜付き防塵膜に対して、380〜780 nmの波長域の光線の分光反射率を分光光度計(形式:U4000、日立製作所(株)製)を用いて測定した。結果を図8に示す。いずれも分光反射率が3%以下であり、優れた反射防止特性を有するといえる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の防塵性光透過性部材の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の防塵性光透過性部材の別の例を示し、(a)は斜視図であり、(b)は図2(a)の平面図であり、(c)は図2(a)の防塵性光透過性部材の振動の節を示す概略図である。
【図3】本発明の防塵性光透過性部材のさらに別の例を示し、(a)は斜視図であり、(b)は図3(a)のB-B断面図である。
【図4】本発明の防塵性光透過性部材からなるローパスフィルタを具備するデジタルスチルカメラの一例を示す断面図である。
【図5】本発明の防塵性光透過性部材からなるローパスフィルタを具備するデジタルスチルカメラの別の例を示す断面図である。
【図6】本発明の防塵性光透過性部材からなる保護部材を具備するデジタルスチルカメラの一例を示す断面図である。
【図7】本発明の防塵性光透過性部材からなる保護部材を具備するデジタルスチルカメラの別の例を示す断面図である。
【図8】実施例1の防塵膜のAFM像である。
【図9】実施例1〜3の防塵膜の分光反射率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0102】
1・・・防塵性光透過性部材
10・・・基板
11・・・防塵膜
12・・・ワイパ
12a・・・ワイパブレード
13・・・電気端子
14・・・圧電素子
15・・・振動の節
2・・・カメラ本体
20・・・溝
21・・・段部
3・・・モータ
30・・・モータ軸
4・・・発振器
5・・・CCD
6・・・地板
6'・・・箱型ホルダ
7・・・ローパスフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子の受光面側に配置される防塵性光透過性部材を製造する方法であって、光透過性基板の光入射面にアルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物からなる蒸着膜を形成し、前記蒸着膜を40〜100℃の温度の水又は水と有機溶媒との混合液で処理することにより、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜を形成することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の防塵性光透過性部材の製造方法において、前記水に塩基を添加することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の防塵性光透過性部材の製造方法において、前記塩基としてアルコールアミンを用いることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の防塵性光透過性部材の製造方法において、前記蒸着膜の厚さを5〜500 nmとすることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の防塵性光透過性部材の製造方法において、前記防塵膜の主成分をアルミナ、アルミニウム水酸化物又はこれらの混合物とすることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の防塵性光透過性部材の製造方法において、前記防塵膜の凹凸は不規則に分布する多数の微細な形状の凸部とそれらの間の溝状の凹部とからなることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の防塵性光透過性部材の製造方法において、前記防塵膜の下地層として、表面抵抗が1×1014Ω/□以下の帯電防止膜を形成することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の防塵性光透過性部材の製造方法において、最表面に、0.4〜100 nmの厚さの撥水性又は撥水撥油性を有する膜を形成することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の防塵性光透過性部材の製造方法において、最表面の三次元平均表面粗さを1〜100 nmとすることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする防塵性光透過性部材。
【請求項11】
請求項10に記載の防塵性光透過性部材において、さらに機械的防塵手段を具備することを特徴とする防塵性光透過性部材。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の防塵性光透過性部材からなることを特徴とするローパスフィルタ。
【請求項13】
請求項10又は11に記載の防塵性光透過性部材からなることを特徴とする撮像素子用保護部材。
【請求項14】
請求項12に記載のローパスフィルタを具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項15】
請求項13に記載の保護部材を具備することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−17305(P2009−17305A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177655(P2007−177655)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】