説明

防曇層を有するLCD向けディスプレイフィルター

【課題】防曇機能をもつ液晶ディスプレイ(LCD)装置向けディスプレイフィルターを提供する。
【解決手段】ディスプレイモジュールの前方に配置される透明支持体と、ディスプレイモジュールに向かう表面に積層され、曇りを防止する防曇層と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイフィルターに係り、より詳しくは、防曇機能をもつ液晶ディスプレイ(LCD)装置向けディスプレイフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ技術の発展に伴い、各種のフラットディスプレイ装置が市場に発売されてきている。中でも最も代表的なディスプレイ装置は、液晶ディスプレイ(LCD)モニター/TV、プラズマディスプレイ(PDP)装置である。PDPとLCDは様々な面において互いに長短所をもっており、現在、市場での競争が熾烈である。
【0003】
画質の面からみれば、PDPがLCDよりも色の実現方法がより自然で滑らかな色感を示すが、目視上ではLCDの方がより明るいためより鮮やかなように感じられる。応答速度の面からみれば、PDPは直接発光をするのに対し、LCDは間接発光をするため、PDPの応答速度がLCDのそれよりも速い。そのため、LCDでは画面残像が生じることもある。
【0004】
視野角の面では、PDPがLCDよりも優れている。しかし、最近、LCDの方も視野角が広くなってきている。電力消耗量の面からみれば、現在、42インチの大きさではそれほど差がないが、50インチの大きさでは、PDPがLCDよりも電力消耗が多少高い。
【0005】
近年に入り、耐久性、光学特性などの向上のために、LCDモニター/TVにディスプレイフィルターを採用する傾向にある(保護ガラスだけからなるディスプレイフィルターも含む)。しかしながら、LCDモニター/TVにディスプレイフィルターを採用すると、ディスプレイフィルターの内部と外部との温度差によってLCDモニター/TVの内部に結露現象が生じるようになる。一般に、PDPの場合、Power−on直後からPDPモジュールの表面から熱が発散されることで結露(曇り)を容易に且つ迅速に除去することができる。しかしながら、LCDの場合、LCDモジュールからの放熱が少なく、結露(曇り)を除去することが根本的に困難であるという問題点がある。
【0006】
一方、LCDモニター/TVには、視聴者のぎらつき防止のためにアンチグレア(Anti−Glare)フィルムを使用した。しかしながら、最近、価格競争力のためにLCDモニター/TVにアンチグレアフィルムを使用せずにもぎらつきを防止することのできる代案が模索されてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような背景に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、防曇機能をもつ液晶ディスプレイ(LCD)装置向けディスプレイフィルターを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、ぎらつき防止機能を併せもつ、防曇機能をもつ液晶ディスプレイ(LCD)装置向けディスプレイフィルターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するために、本発明の一態様によるディスプレイモジュールが内蔵された液晶ディスプレイ(LCD)装置に使用されるディスプレイフィルターは、ディスプレイモジュールの前方に配置される透明支持体と、ディスプレイモジュールに向かう表面に積層され、透明支持体の曇りを防止する防曇層と、を備える。
【0010】
本発明の他の態様による防曇層は、透明支持体の上に形成される減圧粘着(PSA)層と、減圧粘着(PSA)層の上に形成されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、及びトリアセチルセルロース(TAC)フィルムの上に形成される親水性基質層と、を備える。
【0011】
本発明による透明支持体は、その圧縮強度が25MPa以上の材質からなることを特徴とする。また、本発明による減圧粘着(PSA)層は、外光散乱用ビーズ(Beads)を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による液晶ディスプレイ装置向けディスプレイフィルターは、LCDディスプレイモジュールの前方に防曇層が形成されることにより、LCDディスプレイモジュールと向かい合うディスプレイフィルターの曇りを防止することができるという有用な効果を奏する。
【0013】
また、本発明による液晶ディスプレイ装置向けディスプレイフィルターは、高温や湿度による親水性基質の収縮現象が強く起きても透明支持体の圧縮強度が高いため、基質の収縮現象により透明支持体が破損されることなく該ディスプレイフィルターの性能を保持可能であるという効果を奏する。
【0014】
さらに、本発明による液晶ディスプレイ装置向けディスプレイフィルターは、減圧粘着(PSA)層に外光散乱用ビーズが含まれており、ユーザのぎらつき防止が可能であるため、視聴者の目の疲れを軽減することができるという有用な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態によるディスプレイフィルターが適用された液晶ディスプレイ装置の概略的な構造を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態によるディスプレイフィルターの構造を示す図である。
【図3】本発明による親水性基質層を説明するための例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付された図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳しく説明することにする。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態によるディスプレイフィルターが適用された液晶ディスプレイ(LCD)装置の概略的な構造を示す。
同図に示すように、液晶ディスプレイ(LCD)装置は、その主要構成として、反射防止フィルム11と、透明支持体12と、防曇層13と、ディスプレイモジュール14、及び筐体15と、を備える。
【0018】
反射防止フィルム11は、外光反射を抑制して視認性を向上させる。一例として、反射防止フィルム11は、透明基材上にインジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide、ITO)、TiO、ZrOなどの無機物からなる高屈折層と、SiO2、MgF2などのような無機物からなる低屈折層が交互に多層形成されてなるフィルムであればよい。他の一例として、反射防止フィルム11は、ポリエチレンテレフタレート(PolyEtylene Terephthalate、PET)、フィルムまたはトリアセチルセルロース(Triacetate Cellulose、TAC)フィルムの上に屈折率1.5以上のハードコーティング層が形成され、このハードコーティング層の上に屈折率1.5以下の低屈折層が形成されてなるフィルムであってもよい。
【0019】
透明支持体12には、一方の面に反射防止フィルム11が付着され、他方の面に防曇層が形成される。透明支持体12は、急激な温度変化や高い湿度によって防曇層13の収縮現象が強く起きる場合、これに耐えられる材質からなることが好ましい。本願の発明者は、60℃〜−30℃の範囲で熱サイクル実験を実施した結果、透明支持体12は、圧縮強度が25MPa以上の場合に破損が起こらないことを確認した。一例として、透明支持体12は、その圧縮強度が25MPa以上の強化ガラスから構成すればよい。
【0020】
防曇層13は、透明支持体12のディスプレイモジュール14に向う表面に形成され、温度変化や高い湿度によって内部空間Aから発生する水分を吸収し、または防曇層の表面に水滴がつくことなく垂れ落ちるようにして曇りを防止する。
【0021】
防曇層13は、ヒドロキシル基(OH−)、スルホン酸基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH)のような親水性基を含む親水性基質層を含んで構成されていてよい。親水性基を含む親水性基質層は、透明支持体12の上に形成されていてよく、疎水性を呈するフィルムの表面に水酸化作用剤との反応により形成されていてもよい。
【0022】
その他、本発明によるディスプレイフィルターは、図1には示していないが、透明支持体12と防曇層13との間に光学機能性フィルム、例えば、ディスプレイモジュールを透過した可視光線領域の波長のうちの特定の領域の波長を吸収する光吸収フィルムなどが形成されていてもよい。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態によるディスプレイフィルターの構造を示す。
【0024】
同図に示すように、本実施形態による防曇層13は、透明支持体12の上に形成される減圧粘着(PSA)層13aと、減圧粘着(PSA)層13aに形成されるベースフィルム13b、及びベースフィルム13bの上に形成される親水性基質層13cと、を含む。減圧粘着(PSA)層13aは、一方の面に透明支持体12が付着され、他方の面にトリアセチルセルロース(TAC)フィルム13bが付着される。減圧粘着(PSA)層13aは、水、有機溶媒などの分散媒を用いて粘着性のある高分子物質を溶解またはエマルション状態にして製造することができる。
【0025】
本発明の特徴的な態様による減圧粘着(PSA)層13aは、外光散乱用ビーズを含む。一例として、外光散乱用ビーズは、粒径10um以下、ヘイズ(HAZE)5%以下のガラスビーズ(Glass Beads)から構成すればよい。また、減圧粘着(PSA)層13aは、メラミン系ビーズ(屈折率:1.57)、アクリル系ビーズ(屈折率:1.47)、アクリル−スチレン系ビーズ(屈折率:1.54)、ポリカーボネート系ビーズ、ポリエチレン系ビーズ、塩化ビニール系ビーズから構成すればよい。また、減圧粘着(PSA)層13aは、光吸収剤をさらに添加して構成することもできる。
【0026】
ベースフィルム13bは、親水性基質層13cを形成するのに使用される。通常、液晶ディスプレイ装置に使用されるベースフィルム13bは疎水性を呈するが、本発明では、ベースフィルムの表面に水酸化作用剤との化学反応によって親水性基質層13cを形成する。一例として、ベースフィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムから構成すればよい。
【0027】
本発明では、防曇層13におけるベースフィルム13bを透明支持体12に付着するために減圧粘着(PSA)層13aを例示したが、これに限定されず、接着剤を使用してもよい。また、防曇層13は、減圧粘着(PSA)層13aを介することなく、ベースフィルム13bを透明支持体12に直接形成することもできる。
【0028】
図3は、本発明による親水性基質層を説明するための例示図である。
【0029】
メチルエステル(COOCH)化合物21からなる疎水性を呈するフィルムを水酸化作用剤と化学反応させると、フィルムの表面に親水性物質であるヒドロキシル基(OH−)化合物22が形成される。一例として、メチルエステル(COOCH)化合物21を50℃の塩化ナトリウムまたは塩化カリウム水溶液に数秒間浸すとエステル化反応が起こり、ヒドロキシル基(OH−)化合物22が形成される。
【0030】
以上、本明細書では本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に理解し再現できるように図面に示した実施形態を参照して説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者ならば本発明の実施形態から様々な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点が理解できるであろう。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、特許請求の範囲のみによって決められるべきである。
【符号の説明】
【0031】
11:反射防止フィルム
12:透明支持体
13:防曇層
13a:減圧粘着(PSA)層
13b:ベースフィルム
13c:親水性基質層
14:ディスプレイモジュール
15:筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイモジュールが内蔵された液晶ディスプレイ(LCD)装置に使用されるディスプレイフィルターにおいて、
前記ディスプレイフィルターは、前記ディスプレイモジュールの前方に配置される透明支持体と、前記ディスプレイモジュールに向う背面に積層され、曇りを防止する防曇層と、を備えることを特徴とするディスプレイフィルター。
【請求項2】
前記防曇層は、親水性を有することを特徴とする請求項1に記載のディスプレイフィルター。
【請求項3】
前記防曇層が、ベースフィルム、及び該ベースフィルムの背面に形成される親水性基質層を含むことを特徴とする請求項2に記載のディスプレイフィルター。
【請求項4】
前記ベースフィルムが、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムであることを特徴とする請求項3に記載のディスプレイフィルター。
【請求項5】
前記親水性基質層は、前記ベースフィルムの背面が水酸化表面改質された層であることを特徴とする請求項3に記載のディスプレイフィルター。
【請求項6】
前記ディスプレイフィルターが、前記透明支持体に向う前記ベースフィルムの全面に形成される減圧粘着(PSA)層をさらに含み、
前記減圧粘着(PSA)層は、外光散乱用ビーズ(Beads)を含むことを特徴とする請求項3に記載のディスプレイフィルター。
【請求項7】
前記透明支持体は、その圧縮強度が25MPa以上の材質からなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のディスプレイフィルター。
【請求項8】
前記透明支持体は、強化ガラスであることを特徴とする請求項7に記載のディスプレイフィルター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−244040(P2010−244040A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−71396(P2010−71396)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(502411241)サムスンコーニング精密ガラス株式会社 (80)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG CORNING PRECISION GLASS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】644−1 Jinpyeong−dong, Gumi−si,Gyeongsangbuk−do 730−360,Korea
【Fターム(参考)】