説明

防水ゴム及びコネクタ防水構造

【課題】防水性能が低下するのを抑制することができる防水ゴム及びコネクタ防水構造を提供する。
【解決手段】コネクタハウジング6の挿通孔6aに挿通されたケーブル5の端部の外周面と前記挿通孔6aの内周面との間を防水するために、ケーブル5の端部に防水ゴム8が外嵌されている。この防水ゴム8は、前記挿通孔6aの開口端部において当該挿通孔6aの内周面に密着する外周面11aを有する第1シール部11と、この第1シール部11よりも前記挿通孔6aの軸方向内側において当該挿通孔6aの内周面に密着する外周面13aを有する第2シール部13とを備えている。前記第1シール部11と前記第2シール部13との間には、当該第1シール部11及び第2シール部13の熱膨張による軸方向への伸びを吸収可能な緩衝部12が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水ゴム及びコネクタ防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタハウジングに接続されたケーブルの端部と前記コネクタハウジングとの間の防水を図るため、前記ケーブルの端部に防水ゴム(ワイヤシール)を外嵌することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5(a)は、従来の防水ゴムを示す断面図である。この防水ゴム101は、コネクタハウジング102の挿通孔102aに挿通されたケーブル103の端部の外周面と挿通孔102aの内周面との間を防水するものであって、前記挿通孔102aの開口端部において挿通孔102aの内周面に密着する外周面104aを有する第1シール部104と、この第1シール部104よりも挿通孔102aの軸方向内側において挿通孔102aの内周面に密着する2つの外周凸面105aを有する第2シール部105とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−042956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の前記防水ゴム101にあっては、長期間の過酷な使用条件下では、当該防水ゴム101の第1シール部104が熱膨張することによって、図5(b)に示すように、コネクタハウジング102の外側へ大きく飛び出す場合がある。この場合には、前記第1シール部104の外周面104aにおける挿通孔102aの内周面との密着部分が減少することにより、防水ゴム101による防水性能が低下するという問題があった。
そこで、本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、防水性能が低下するのを抑制することができる防水ゴム及びコネクタ防水構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の防水ゴムは、コネクタハウジングの挿通孔に挿通されたケーブルの端部の外周面と前記挿通孔の内周面との間を防水するために、前記ケーブルの端部に外嵌される防水ゴムであって、前記挿通孔の開口端部において当該挿通孔の内周面に密着する外周面を有する第1シール部と、前記第1シール部よりも前記挿通孔の軸方向内側において当該挿通孔の内周面に密着する外周面を有する第2シール部と、前記第1シール部と前記第2シール部との間に形成され、当該第1シール部及び第2シール部の熱膨張による軸方向への伸びを吸収可能な緩衝部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、防水ゴムの第1シール部と第2シール部との間に形成された緩衝部によって、前記第1シール部及び第2シール部の熱膨張による軸方向への伸びを吸収することができる。これにより、防水ゴムが、熱膨張することによってコネクタハウジングから飛び出すのを抑制することができるため、防水性能が低下するのを抑制することができる。
また、前記緩衝部は、第1シール部の外周面がコネクタハウジングの挿通孔の内周面に密着した部分よりも軸方向内側にあるため、第1シール部による防水性能を阻害することなく前記伸びを吸収することができる。
【0008】
(2)前記防水ゴムは、前記緩衝部が、蛇腹状に形成されていることが好ましい。この場合、蛇腹部分が軸方向に変形することによって前記伸びを吸収することができるため、簡単な形状により防水ゴムの飛び出しを抑制することができる。
【0009】
(3)前記防水ゴムは、前記緩衝部の軸方向の長さが、蛇腹部分の波長の1/2に設定されていることが好ましい。この場合、緩衝部の軸方向の長さを短くすることができるため、防水ゴムの軸方向の全長が短い場合であっても、防水ゴムの飛び出しを抑制することができる。
【0010】
(4)前記防水ゴムは、前記緩衝部が、次式の関係を満たすように形成されていることが好ましい。この場合、緩衝部の軸方向の長さを適切な長さに設定することができるため、防水ゴムの飛び出しを効果的に抑制することができる。
【0011】
(5)本発明のコネクタ防水構造は、ケーブルの端部が挿通された挿通孔を有するコネクタハウジングと、前記ケーブルの端部の外周面と前記挿通孔の内周面との間を防水するために、前記ケーブルの端部に外嵌される防水ゴムと、を備え、前記防水ゴムは、前記挿通孔の開口端部において当該挿通孔の内周面に密着する外周面を有する第1シール部と、前記第1シール部よりも前記挿通孔の軸方向内側において当該挿通孔の内周面に密着する外周面を有する第2シール部と、前記第1シール部と前記第2シール部との間に形成され、当該第1シール部及び第2シール部の熱膨張に伴う軸方向への移動を吸収する緩衝部と、を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、防水ゴムの第1シール部と第2シール部との間に形成された緩衝部によって、前記第1シール部及び第2シール部の熱膨張による軸方向への伸びを吸収することができる。これにより、防水ゴムが、熱膨張することによってコネクタハウジングから飛び出すのを抑制することができるため、防水性能が低下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防水ゴムが、熱膨張することによってコネクタハウジングから飛び出すのを抑制することができるため、防水性能が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る防水ゴムを備えたコネクタを示す説明図である。
【図2】防水ゴムを示す断面図である。
【図3】(a)は防水ゴムの使用状態を示す断面図であり、(b)は防水ゴムが熱膨張した状態を示す断面図である。
【図4】防水ゴムの緩衝部を示す要部拡大断面図である。
【図5】(a)は従来の防水ゴムの使用状態を示す断面図であり、(b)は従来の防水ゴムが熱膨張した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る防水ゴムを備えたコネクタを示している。このコネクタ1は、例えば、車両用のワイヤハーネス(ケーブル)の端部に設けられたものである。このコネクタ1を有するワイヤハーネスは、例えば、エンジン(図示省略)と、その電子制御ユニット(図示省略)又はその他の電子機器との間を接続するために、好適に用いられる。なお、このコネクタ1が接続される箇所は特に限定されるものではない。
【0015】
図1に示すように、コネクタ1は、ケーブル(電線)5の一端部が接続されるコネクタハウジング6を有している。ケーブル5の前記一端部側の先端には端子部7が取り付けられている。ケーブル(電線)5は、1又は複数の導体線(銅線)5bの外周を被覆するように被覆部5aが形成されて構成されている。被覆部5aは、ポリ塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂材料によって形成されている。
【0016】
ケーブル5の前記一端部には、前記端子部7に隣接するように防水ゴム(ワイヤシール)8が、ケーブル5の端部に外嵌されている。コネクタハウジング6は、防水ゴム8付きのケーブル5端部が挿通される挿通孔6aを有している。本実施形態のコネクタ1は、防水ゴム8によって、ケーブル5端部の外周面とコネクタハウジング6の挿通孔6aの内周面との間の防水が図られている。本実施形態のコネクタ防水構造は、前記ケーブル5と、コネクタハウジング6と、防水ゴム8とによって構成されている。
【0017】
図2は防水ゴム8を示す断面図である。図2において、防水ゴム8は、シリコーンゴムなどのゴム材料によって全体が略円筒状に形成されており、内部にケーブル5が挿通される挿通孔9を有している。また、防水ゴム8は、第1シール部11及び第2シール部13と、この第1シール部11と第2シール部13との間に形成された緩衝部12とを備えている。
【0018】
図3(a)は防水ゴム8の使用状態を示す断面図である。図3(a)において、第1シール部11は、軸方向に直線状に延びる外周面11aを有している。この外周面11aは、コネクタハウジング6の挿通孔6aの開口端部において、当該挿通孔6aの内周面に密着するようになっている。また、第1シール部11は、コネクタハウジング6の外側にわずかに突出した状態か、あるいはコネクタハウジング6に対して突出しないように配置される。
【0019】
図2及び図3(a)において、第2シール部13は、第1シール部11よりも挿通孔6aの軸方向内側(図3(a)の右側)に形成されており、波形状に形成された外周面13aを有している。この外周面13aの2箇所の凸面13a1は、当該挿通孔6aの内周面に密着するようになっている。このように、第1シール部11と第2シール部13とにより、コネクタハウジング6の挿通孔6aの内周面に対するシール効果を高めている。また、防水ゴム8の内周面には、図2に示すように、所定形状の凹凸が形成されており、ケーブル5の外周面に対するシール効果を高めている。
【0020】
ところで、コネクタ1がエンジンのコネクタに直接接続されたり、車両のエンジンルーム内の機器に接続されたりする場合、エンジン2等の熱によって、コネクタ1の雰囲気温度が非常に高くなり、過酷な温度条件となる。特に、コネクタ1がエンジンに直接接続される場合、エンジンの熱がコネクタ1に伝わりやすくなるため、より過酷な温度条件(120℃以上)となりやすい。
【0021】
上記のような過酷な温度条件下では、防水ゴム8の第1シール部11及び第2シール部13が熱膨張することによって軸方向へ延びる場合がある。防水ゴム8の緩衝部12は、この第1シール部11及び第2シール部13の熱膨張による軸方向への伸びを吸収するようになっている。
【0022】
図4は、緩衝部12を示す要部拡大断面図である。図2及び図4において、緩衝部12は、蛇腹状に形成されている。より具体的には、緩衝部12は、第1シール部11から第2シール部13に向かって漸次縮径するように形成されており、その軸方向の長さが、蛇腹部分の波長λの1/2に設定されている。蛇腹部分の肉厚tは、当該蛇腹部分が変形し易いように、第1シール部11の肉厚及び第2シール部13の肉厚よりも薄く設定されている。
【0023】
また、緩衝部12は、前記波長λ及び肉厚tを用いた下記式(1)の関係を満たすように形成されている。
N×(λ−2t)>ΔT×ρ×L/2 ・・・(1)
ここで、Nは蛇腹の個数(本実施形態ではN=1/2)、ΔTは常温からの温度差、Lは緩衝部12を除く防水ゴム8の軸方向長さ、ρは防水ゴム8の熱膨張率(1/℃)である。
【0024】
さらに、緩衝部12の第2シール部13との接合部には、引っ張り時の応力集中を避けるために、外周面にR部12aが形成されている。また、第2シール部13の内周面には、緩衝部12の内周面との接触を防止するために、緩衝部12側の端部に所定長さHの段差部13bが形成されている。
【0025】
以上のように形成された防水ゴム8は、図3(a)に示す常温時の状態から、第1シール部11及び第2シール部13が熱膨張して軸方向両側に伸びると、図3(b)に示すように、緩衝部12が変形することによって、第1シール部11の矢印A方向の伸び及び第2シール部13の矢印B方向の伸びをそれぞれ吸収することができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態に係る防水ゴム及びコネクタ防水構造によれば、防水ゴム8の第1シール部11と第2シール部13との間に形成された緩衝部12によって、第1シール部11及び第2シール部13の熱膨張による軸方向への伸びを吸収することができる。これにより、防水ゴム8が、熱膨張することによってコネクタハウジング6から飛び出すのを抑制することができるため、防水性能が低下するのを抑制することができる。
【0027】
また、緩衝部12は、通常時及び熱膨張時のいずれにおいても第1シール部11の外周面がコネクタハウジング6の挿通孔6aの内周面に密着した部分よりも軸方向内側に位置しているため、第1シール部11による防水性能を阻害することなく前記伸びを吸収することができる。
【0028】
また、緩衝部12は蛇腹状に形成されており、その蛇腹部分が軸方向に変形することによって前記伸びを吸収することができるため、簡単な形状により防水ゴム8の飛び出しを抑制することができる。
【0029】
また、緩衝部12の軸方向の長さを、前記蛇腹部分の波長λの1/2に設定することによって、短くすることができるため、防水ゴム8の軸方向の全長が短い場合であっても、防水ゴム8の飛び出しを抑制することができる。
【0030】
また、緩衝部12を、上記式(1)の関係を満たすように形成することにより、緩衝部12の軸方向の長さを適切な長さに設定することができるため、防水ゴム8の飛び出しを効果的に抑制することができる。
【0031】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0032】
例えば、上記実施形態において、緩衝部12の軸方向の長さは、蛇腹部分の波長λの1/2に設定されているが、防水ゴム8の軸方向の長さ等に応じて適宜変更可能である。
また、緩衝部12は、蛇腹状に形成されているが、軸方向に直線状に延びるように形成していもよい。要するに、第1シール部11及び第2シール部13の熱膨張による軸方向への伸びを吸収することができる形状であればよい。
【符号の説明】
【0033】
5 ケーブル
6 コネクタハウジング
6a 挿通孔
8 防水ゴム
11 第1シール部
11a 外周面
12 緩衝部
13 第2シール部
13a 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングの挿通孔に挿通されたケーブルの端部の外周面と前記挿通孔の内周面との間を防水するために、前記ケーブルの端部に外嵌される防水ゴムであって、
前記挿通孔の開口端部において当該挿通孔の内周面に密着する外周面を有する第1シール部と、
前記第1シール部よりも前記挿通孔の軸方向内側において当該挿通孔の内周面に密着する外周面を有する第2シール部と、
前記第1シール部と前記第2シール部との間に形成され、当該第1シール部及び第2シール部の熱膨張による軸方向への伸びを吸収可能な緩衝部と、
を備えていることを特徴とする防水ゴム。
【請求項2】
前記緩衝部が、蛇腹状に形成されている請求項1に記載の防水ゴム。
【請求項3】
前記緩衝部の軸方向の長さが、蛇腹部分の波長の1/2に設定されている請求項2に記載の防水ゴム。
【請求項4】
前記緩衝部が、次式の関係を満たすように形成されている請求項2又は3に記載の防水ゴム。
N×(λ−2t)>ΔT×ρ×L/2
ここで、Nは蛇腹の個数、λは蛇腹部分の波長、tは蛇腹部分の肉厚、ΔTは常温からの温度差、Lは緩衝部を除く防水ゴムの軸方向長さ、ρは防水ゴムの熱膨張率である。
【請求項5】
ケーブルの端部が挿通された挿通孔を有するコネクタハウジングと、
前記ケーブルの端部の外周面と前記挿通孔の内周面との間を防水するために、前記ケーブルの端部に外嵌される防水ゴムと、を備え、
前記防水ゴムは、前記挿通孔の開口端部において当該挿通孔の内周面に密着する外周面を有する第1シール部と、
前記第1シール部よりも前記挿通孔の軸方向内側において当該挿通孔の内周面に密着する外周面を有する第2シール部と、
前記第1シール部と前記第2シール部との間に形成され、当該第1シール部及び第2シール部の熱膨張に伴う軸方向への移動を吸収する緩衝部と、
を備えていることを特徴とするコネクタ防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−51071(P2013−51071A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187403(P2011−187403)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】