説明

防水シート

【課題】アスファルトコンパウンド層のアスファルトコンパウンドが浸透することによる剥離シートの表面への油分の露出を防止することができ、低コストの防水シートを得る。
【解決手段】基材層(A層)と、アスファルトコンパウンド層(B層)と、多層剥離フィルム層(C層)とを含み、A層、B層及びC層の順に積層された防水シートであって、多層剥離フィルム層(C層)が、アスファルトコンパウンド層(B層)に接する第一合成樹脂層(C1層)と、油分不透過性樹脂からなる中間合成樹脂層(C2層)と、アスファルトコンパウンド層(B層)に接しない第二合成樹脂層(C3層)とをこの順で含む、防水シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床構造体及び住宅のバルコニー手摺り壁などの各種構造体を覆うことにより、漏水を防止するための防水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルトコンパウンド等の自己粘着層と、剥離紙等の剥離層とを組み合わせた防水シートが知られており、例えば、特許文献1〜5に開示されている。
【0003】
特許文献1には、撥水剤と、アクリル系樹脂とを含む合成樹脂層(a)と、アクリル系樹脂を含浸させた基材層(b)と、改質アスファルトコンパウンド層(c)と、剥離層(d)とが、(a)、(b)、(c)、(d)の順に積層されている防水シート材が記載されている。また、特許文献1には、剥離フィルムとしては、合成樹脂フィルムが用いられ、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステルなどのポリエステルフィルム、ナイロン6(登録商標)などのポリアミドフィルムなどの合成樹脂フィルムを用いることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ポリエステルフィルムを含む基材層と、ポリエステルフィルムに接着する改質アスファルト層とを含む防水シートが記載されている。また、特許文献2には、防水シートが剥離紙を有することが好ましいことが記載されている。
【0005】
特許文献3には、下面に延伸性を有する粘着材層を有し、上面に粘着性を有する延伸性防水層を具えてなり、前記粘着材層表面には剥離紙又は剥離フィルムが形成され、前記延伸性防水層表面にはタックフリー性を有する転写箔を介して外郭層が形成された構成を特徴とする延伸性粘着防水シートが記載されている。また、特許文献3には、延伸性防水層と粘着材層は、改質アスファルトとエラストマーを主材とすることが記載されている。
【0006】
特許文献4には、シート状基材と、このシート状基材に貼り合わされた剥離フィルムと、この剥離フィルムから容易に剥離するように貼り合わされた改質アスファルトを含む粘着層とが積層して形成されている防水シートが記載されている。また、特許文献4には、シート状基材とこのシート状基材から容易に剥離するように貼り合わされた剥離フィルムと、この剥離フィルムに貼り合わされた改質アスファルトを含む粘着層とが積層して形成されている防水シートが記載されている。また、特許文献4には、剥離フィルムは、1層又は多層フィルムであることが好ましく、剥離フィルムの材質としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えばポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等を用いることができることが記載されている。
【0007】
特許文献5には、防水シート及び該防水シートを横切って該防水シートに接着されている断面直角三角形状、又はその頂部を切欠きした形のコーナー部材よりなることを特徴とする立上り部用仕上防水シートが記載されている。また、特許文献5には、防水シートが、全面的又は部分的に自己粘着層と剥離紙を有することが記載されている。また、特許文献5には、剥離シートは、剥離紙が最も一般的であるが、紙に限ることなく粘着面に不活性の層をもつ合成樹脂シートや金属シートであることができることが記載されている。
【0008】
特許文献6には、アスファルト、スチレン系合成ゴム及び粘着性付与剤を含む改質アスファルト組成物であり、粘着性付与剤が、プロセスオイル及びポリブテンより選ばれる少なくとも1種を含み、アスファルト及びスチレン系合成ゴムの合計質量100質量部に対して、粘着性付与剤が0.5〜12重量部であることを特徴とする改質アスファルト組成物が記載されている。また、特許文献6には、自己粘着性防水シートで用いる(e)剥離層として、剥離フィルムを使用でき、剥離フィルムとしては、合成樹脂フィルムが用いられ、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステルなどのポリエステルフィルム、ナイロン6(登録商標)などのポリアミドフィルムなどの合成樹脂フィルムを用いることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−243247号公報
【特許文献2】特開2009−235852号公報
【特許文献3】特開2009−001965号公報
【特許文献4】特開2001−018320号公報
【特許文献5】特開平06−307032号公報
【特許文献6】特開2007−262374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アスファルトコンパウンド層を含む防水シートは、一般的に、アスファルトコンパウンド層が露出する面に、剥離シートとして剥離紙を有する。アスファルトコンパウンド層が剥離紙を有することによって、防水シートの施工前に、アスファルトコンパウンドが予期せぬ場所へ付着することを防止することができ、施工の際の作業性を向上することができる。剥離シートは、防水シートの施工時に剥離される。
【0011】
地球温暖化等の環境問題に対する対応が重要である近年において、可能な限り材料をリサイクルすることが必要である。防水シートにおいても、使用後の剥離シートをリサイクルすることが好ましい。しかしながら、使用後の剥離紙にはポリエチレン等のラミネート層が介在されるために、紙としての剥離紙のリサイクルは困難である。そのため、使用後の剥離紙は廃棄されているのが現状である。一方、リサイクルが可能である材料として樹脂材料を挙げることができる。そこで、剥離シートとして樹脂フィルム(剥離フィルム)を用いることにより、剥離シートのリサイクルが可能となる。
【0012】
しかしながら、樹脂フィルムの種類によっては、アスファルトコンパウンドの油分が剥離シートに浸透・透過し、剥離シートの表面まで露出してしまうという問題がある。施工前、防水シートの保管は比較的長期にわたる場合があるため、防水シートを長期保管した場合にも、アスファルトコンパウンドの油分が剥離材に浸透しないことが求められている。
【0013】
アスファルトコンパウンドの油分が浸透し難い材料としては、ナイロン(登録商標)等のポリアミド系合成樹脂が知られている。しかしながら、ポリアミド系合成樹脂の価格は高いため、防水シートのコストも高くなってしまう。
【0014】
そこで、本発明は、アスファルトコンパウンド層のアスファルトコンパウンドが浸透することによる剥離シートの表面への油分の露出を防止した、リサイクル可能で、低コストの防水シートを得ることを目的とする。また、本発明は、リサイクルが可能な剥離シートを有する防水シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者らは、リサイクル可能で、低コストの防水シートを得るために、高価な油分不透過性樹脂の使用量を減らし、機械的な強度を補うために、剥離シートにおいて、油分不透過性樹脂とともに低価格の樹脂材料を使用することを見出した。低価格の樹脂材料は、油分を浸透して透過するが、油分不透過性樹脂が存在するために剥離シートの油分透過を防止することができる。また、低価格の樹脂材料が存在することにより、剥離シートとして十分な機械的強度を得ることができる。油分不透過性樹脂の樹脂層及び低価格の樹脂材料の樹脂層を有する多層剥離フィルム層を剥離シートとして用いることにより、リサイクル可能で、低コストの防水シートを得ることができることを見出し、本願発明に至った。
【0016】
すなわち、本発明は、基材層(A層)と、アスファルトコンパウンド層(B層)と、多層剥離フィルム層(C層)とを含み、A層、B層及びC層の順に積層された防水シートであって、多層剥離フィルム層(C層)が、アスファルトコンパウンド層(B層)に接する第一合成樹脂層(C1層)と、油分不透過性樹脂からなる中間合成樹脂層(C2層)と、アスファルトコンパウンド層(B層)に接しない第二合成樹脂層(C3層)とをこの順で含む、防水シートである。この結果、アスファルトコンパウンド層のアスファルトコンパウンドが浸透することによる剥離シートの表面への油分の露出を防止することができ、リサイクル可能で、低コストの防水シートを得ることができる。
【0017】
本発明の防水シートの好ましい態様を以下に示す。本発明では、これらの態様を適宜組み合わせることができる。
【0018】
(1)油分不透過性樹脂が、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド系合成樹脂及びポリエチレンテレフタートからなる群より選択される少なくとも1種からなる。油分不透過性樹脂として上記の樹脂を用いることにより、アスファルトコンパウンドに含まれる油分の多層剥離フィルム層(C層)に対する浸透を防止することができる。
【0019】
(2)第一合成樹脂層(C1層)及び第二合成樹脂層(C3層)が、ポリプロピレンからなるフィルムである。ポリプロピレンは、安価であり、所定の機械的強度のフィルムを得ることができるためである。
【0020】
(3)中間合成樹脂層(C2層)の膜厚が10μm以下のポリアミド系合成樹脂フィルムからなり、第一合成樹脂層(C1層)及び第二合成樹脂層(C3層)の膜厚が10μm以上である。中間合成樹脂層(C2層)がポリアミド系合成樹脂フィルムからなることにより、アスファルトコンパウンドに含まれる油分の不透過をより確実にすることができる。また、第一合成樹脂層(C1層)及び第二合成樹脂層(C3層)が10μm以上であることにより、多層剥離フィルム層(C層)は十分な機械的強度を有することができる。
【0021】
(4)第一合成樹脂層(C1層)と中間合成樹脂層(C2層)とが接着剤によって接合され、中間合成樹脂層(C2層)と第二合成樹脂層(C3層)とが接着剤によって接合されている。この結果、C1層、C2層及びC3層を、多層剥離フィルム層(C層)として一体化することができる。
【0022】
(5)第一合成樹脂層(C1層)のアスファルトコンパウンド層(B層)に接する面が、シリコン処理される。この結果、施工時に、アスファルトコンパウンド層(B層)と、多層剥離フィルム層(C層)との剥離を容易にすることができる。
【0023】
(6)第一合成樹脂層(C1層)が黒色顔料を含み、第二合成樹脂層(C3層)が白色顔料を含む。第一合成樹脂層(C1層)が黒色顔料を含むことにより、多層剥離フィルム層(C層)の紫外線透過を防止することができるので、アスファルトコンパウンド層(B層)の紫外線による劣化を防止することができる。また、第二合成樹脂層(C3層)が白色顔料を含むことにより、外部からの光を反射することができる。そのため、太陽光等の照射による防水シートの温度上昇を防止することができ、防水シートの劣化を防止することができる。
【0024】
(7)多層剥離フィルム層(C層)の膜厚が、5〜150μmの範囲である。この結果、多層剥離フィルム層(C層)全体として、十分な機械的強度を経済的に有することができる。
【0025】
(8)多層剥離フィルム層(C層)が、クレープ加工処理又はエンボス加工処理を施したフィルム層である。この結果、防水シートの製造時には、アスファルトコンパウンド層(B層)と、多層剥離フィルム層(C層)との接着を容易にし、施工時には、アスファルトコンパウンド層(B層)と、多層剥離フィルム層(C層)との剥離を容易にすることができる。また、防水シートの皺発生も抑制することができる。
【0026】
また、本発明は、上述の防水シートを敷設して防水処理を施して得られる防水構造体である。本発明の防水シートを有する防水構造体は、低コストかつリサイクル性に優れるものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、アスファルトコンパウンド層のアスファルトコンパウンドが浸透することによる剥離シートの表面への油分の露出を防止することができ、低コストの防水シートを得ることができる。本発明の防水シートを用いるならば、防水構造体の施工の際の作業性を向上することができる。また、適切な合成樹脂を剥離シートの材料として用いることにより、剥離シートのリサイクルが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の防水シートの模式的断面図である。
【図2】本発明の防水シートの、多層剥離フィルム層(C層)付近の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に、本発明の防水シート10の模式的断面図を示す。本発明の防水シート10は、基材層(A層)12と、アスファルトコンパウンド層(B層)13と、多層剥離フィルム層(C層)20とを含み、A層12、B層13及びC層20の順に積層された防水シート10である。本発明の防水シート10は、剥離シートとして、図2に示すような多層剥離フィルム層(C層)20を有することに特徴がある。
【0030】
本発明の防水シート10に用いる多層剥離フィルム層(C層)20は、アスファルトコンパウンド層(B層)13に接する第一合成樹脂層(C1層)21と、油分不透過性樹脂からなる中間合成樹脂層(C2層)22と、アスファルトコンパウンド層(B層)13に接しない第二合成樹脂層(C3層)23とをこの順で含む。多層剥離フィルム層(C層)20は樹脂フィルムであるため、適切な樹脂材料を選択することにより、施工の際に取り外した多層剥離フィルム層(C層)20はリサイクルが可能である。なお、リサイクルをより適切に行うためには、多層剥離フィルム層(C層)20を構成するC1層、C2層及びC3層の樹脂材料が、ほぼ同じな融点、例えば融点の最大値と最小値との差が100℃以下の範囲、好ましくは50℃以下の範囲の融点を有することが好ましい。また、多層剥離フィルム層(C層)20に、低コストの第一合成樹脂層(C1層)21及び第二合成樹脂層(C3層)23を用いることによって、機械的強度を補うことができる。C1層及びC3層を含むことにより、油分不透過性樹脂からなる中間合成樹脂層(C2層)22の膜厚を減らすことができので、低コストの防水シート10を得ることができる。
【0031】
以下、本発明の防水シート10について、具体的に説明する。
【0032】
<基材層(A層)12>
本発明の防水シート10では、基材層(A層)12の材料は、特に限定されない。防水シート10に対して良好な防水性を付与するために、基材層(A層)12の材料(基材)にアクリル系樹脂を含浸させたものを基材層(A層)12として用いることが好ましくは。アクリル系樹脂としては、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルなど、アクリル基を有する高分子化合物を含む樹脂を用いることができる。
【0033】
アクリル系樹脂として、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体及びアクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体を所定の割合で含む樹脂を用いることが、防水を確実に行うために好ましい。アクリル酸アルキル・スチレン共重合体は、接着剤としての機能を有する。また、アクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体は、増粘材としての機能を有する。そのため、これらの共重合体を所定の割合とすることにより、基材層(A層)12の基材への含浸性に優れ、また基材層(A層)の内部の空隙部に充填されて硬化することにより防水性に優れた基材層(A層)12を得ることができる。具体的には、アクリル系樹脂は、アクリル系樹脂全体を100重量%として、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体を90〜99.9重量%、アクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体を0.1〜10重量%含むことが好ましく、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体を95〜99.5重量%、アクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体を0.5〜2重量%含むことがより好ましい。
【0034】
基材層(A層)12の基材への含浸性の点から、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体及びアクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体は、水性エマルションの状態のものを用いることが好ましい。アクリル酸アルキル・スチレン共重合体の水性エマルションは、例えば、水性エマルションを100重量%として、共重合体40〜60重量%及び水60〜40重量%の組成のもの、具体的には共重合体49重量%及び水51重量%の組成のものを用いることができる。また、アクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体の水性エマルションは、水性エマルションを100重量%として、共重合体20〜40重量%及び水80〜60重量%の組成のもの、具体的には共重合体28重量%及び水72重量%の組成のものを用いることができる。
【0035】
基材層(A層)12は、織布、編み布及び不織布からなる群より選ばれる少なくとも一つである基材を含む。織布、編み布及び不織布の材料は、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリイミド、ポリスルホン及びポリエーテルなどの樹脂ならびにガラスなどの無機物を用いることができる。好ましい基材の材料は、吸水性及び機械的強度などの点から、低吸水性のナイロン11(登録商標)やナイロン12(登録商標)、ポリエステルやガラスなどの合成樹脂や無機物からなる繊維である。また、機械的強度の点から、基材は、不織布であることが好ましい。吸水性及び機械的強度などを総合的に判断すると、基材は、ポリエステル不織布であることがより好ましい。
【0036】
基材層(A層)12に用いる織布、編み布及び不織布の目付は、特に限定されるものではないが、織布、編み布及び不織布の目付は、好ましくは30〜200g/mの範囲、特に好ましくは30〜180g/mの範囲のものが可撓性を有し、施工作業性に優れるため好ましい。
【0037】
上述の基材の表面に、上述のアクリル系樹脂を含む水性エマルションを塗布あるいは浸漬し、乾燥させることにより、アクリル系樹脂を基材に含浸させた基材層(A層)12を得ることができる。基材層(A層)12がアクリル系樹脂を含む場合には、端部において基材層(A層)12が露出した場合にも、基材層(A層)12からの水の浸透を防止することができ、防水性に優れた基材層(A層)12を得ることができる。
【0038】
基材に含浸するための水性エマルションには、アクリル系樹脂以外に、顔料等の添加物成分を含むことができる。
【0039】
<撥水層11>
上述の基材層(A層)12の片方の面に、撥水剤及びアクリル系樹脂を用いて撥水層11を形成することが好ましい。撥水層11を形成することにより、本発明の防水シート10の表面に撥水性を付与し、防水をより確実にすることができる。
【0040】
撥水剤としては、任意の撥水剤を用いることができるが、アクリル系樹脂と組み合わせることにより防水性及び撥水性を高めることができる点から、ワックス系撥水剤を用いることが好ましい。また塗布操作の容易性を高められることから、ワックス系撥水剤としては固形パラフィンを好ましく用いることができ、特に固形パラフィンとエタノールアミンとのエマルションを好適に用いることができる。
【0041】
撥水剤と組み合わせて用いるアクリル系樹脂としては、上述の基材層(A層)12を形成する場合と同様のアクリル酸アルキル・スチレン共重合体及びアクリル酸アルキル・メタクリル酸共重合体を所定の割合で含む樹脂を用いることが、基材層(A層)12に含浸しているアクリル系樹脂と良好な親和性・一体化性が得られ、防水を確実に行うために好ましい。
【0042】
撥水層11の形成には、撥水剤(例えば、固形パラフィンとエタノールアミンとのエマルション)及びアクリル系樹脂の水性エマルションを所定の割合となるように混合した合成樹脂層形成用エマルションを用いることができる。合成樹脂層形成用エマルション中の水を除く組成は、水性エマルションのうち水を除いたものを100重量%として、好ましくはアクリル系樹脂80〜99重量%及び撥水剤0.1〜5重量%含むこと、さらに好ましくはアクリル系樹脂85〜95重量%及び撥水剤0.5〜3重量%含むこと、特に好ましくはアクリル系樹脂90〜93重量%及び撥水剤1〜2重量%含むことが、防水シート10表面の防水を確実にする点から好ましい。なお、水性エマルションは、アクリル系樹脂及び撥水剤以外の成分として、顔料等の無機材料等の添加物成分を含むことができる。
【0043】
上述の所定のエマルションを、基材層(A層)12の片方の面に塗布し、乾燥させることによって、撥水層11を形成することができる。所定のエマルションの塗布及び乾燥は、複数回繰り返すことにより、より強固な撥水層11を得ることができる。防水シート10の製造コストを考慮すると、塗布及び乾燥を2回繰り返すことが好ましい。
【0044】
<アスファルトコンパウンド層(B層)13>
アスファルトコンパウンド層(B層)13の材料の材料としては、公知のアスファルトコンパウンド、好ましくは改質アスファルトを用いることができる。改質アスファルトとしては、好ましくはアスファルト100重量部に対し、ポリマー10〜40重量部、及び無機充填材0〜100重量部を含むもの、特に好ましくはアスファルト100重量部に対し、ポリマー20〜45重量部、及び無機充填材0〜70重量部を含むものを用いることが好ましい。
【0045】
改質アスファルトは、アスファルト及びポリマーを含むもの、アスファルト、ポリマー及び無機充填材の3成分を含むものなどを120〜200℃で3〜30時間加熱混合して調製した成分の均質性が高い改質アスファルトを用いることが、防水・防湿性、伸縮性などに優れているために好ましい。
【0046】
改質アスファルトには、以上述べた成分のほかに、プロセスオイル、ワセリン、セレシン、石油樹脂など、一般に合成樹脂やゴムの配合で用いられる撥水剤、顔料、増粘剤、耐光剤、耐候剤などの無機や有機の配合剤を添加してもよい。
【0047】
改質アスファルトに含まれるアスファルトとしては、天然アスファルトやアスファルタイトなど天然に産するもの、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、カットバックアスファルト等の石油アスファルト、又はこれらのアスファルトの混合物等が好ましい。
【0048】
改質アスファルトに含まれるポリマーとしては、天然ゴム、合成ゴム、天然ゴムと合成ゴムとの混合物、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンとアクリル酸誘導体との共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、スチレンとブタジエンとの重合体(例えば、SBSなど、SBRなど)等を使用することができる。特にSBS、SBR及びBRなどのゴム系が好適である。
【0049】
改質アスファルトに含まれる無機充填材としては、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、クレー、カーボンブラック、タルク、マイカ、硫酸バリウム、珪藻土、シリカ等の粒子状無機充填材、石綿及びガラス繊維などの繊維状無機充填材を用いることができる。
【0050】
アスファルトコンパウンド層(B層)13に用いる改質アスファルトは、針入度が、好ましくは50dmm〜300dmmの範囲、さらに好ましくは70dmm〜280dmmの範囲、より好ましくは85dmm〜260dmmの範囲、特に好ましくは100dmm〜240dmmの範囲が柔軟性に優れるために好ましい。なお、針入度は、JIS K2207−1996に規定された方法により測定することができる。
【0051】
アスファルトコンパウンド層(B層)13に用いる改質アスファルトの軟化点は、好ましくは50〜120℃の範囲、さらに好ましくは60〜115℃の範囲、より好ましくは65〜110℃の範囲、特に好ましくは70〜105℃の範囲であることが、良好な柔軟性を有するために好ましい。なお、針入度は、JIS K2207−1996に規定された方法により測定することができる。
【0052】
アスファルトコンパウンド層(B層)13に用いる改質アスファルトの160℃の粘度は、好ましくは30000〜120000mPa・secの範囲、さらに好ましくは32000〜115000mPa・secの範囲、より好ましくは34000〜110000mPa・secの範囲、特に好ましくは35000〜100000mPa・secの範囲であることが、基材層(A層)12との接着性に優れることから好ましい。
【0053】
<アスファルトコンパウンド層(B層)13の接着>
本発明では、撥水層11を形成した面とは反対側の基材層(A層)12の面に、上記組成の改質アスファルトを接着することにより、アスファルトコンパウンド層(B層)13を形成する。このような構造とすることにより、本発明の防水シート10による防水を確実にすることができる。
【0054】
アスファルトコンパウンド層(B層)13の形成は、例えば、張り合わせロールを用いることによって行うことができる。すなわち、基材層(A層)12と、多層剥離フィルム層(C層)20との間に、上述の改質アスファルトを流し込み、張り合わせロールを用いて一体化することにより、本発明の防水シート10を得ることができる。また、このようにして得られた防水シート10を、チルドロールを用いて冷却することによって、改質アスファルトの接着を確実にすることができる。
【0055】
<多層剥離フィルム層(C層)20>
本発明の防水シート10に用いる多層剥離フィルム層(C層)20は、アスファルトコンパウンド層(B層)13に接する第一合成樹脂層(C1層)21と、油分不透過性樹脂からなる中間合成樹脂層(C2層)22と、アスファルトコンパウンド層(B層)13に接しない第二合成樹脂層(C3層)23とをこの順で含む。多層剥離フィルム層(C層)20は樹脂フィルムであるため、適切な合成樹脂を剥離シートの材料として用いることにより、施工の際に取り外した多層剥離フィルム層(C層)20はリサイクルが可能である。
【0056】
中間合成樹脂層(C2層)22は、アスファルトコンパウンドに含まれる油分を透過しない油分不透過性樹脂からなる。油分は、アスファルトコンパウンドの成分中、最も物質を透過しやすい成分なので、中間合成樹脂層(C2層)22は、アスファルトコンパウンドの全成分を透過しないこととなる。中間合成樹脂層(C2層)22として用いることのできる油分不透過性樹脂は、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、 ポリアクリロニトリル、ポリアミド系合成樹脂及びポリエチレンテレフタートからなる群より選択される少なくとも1種である。油分の不透過を確実にする点から、中間合成樹脂層(C2層)22の材料として用いる油分不透過性樹脂は、エチレン・ビニルアルコール共重合体及びポリアミド系合成樹脂からなる群より選択される少なくとも1種からなることが好ましい。油分の不透過をより確実にする点から、油分不透過性樹脂は、ナイロン(登録商標)等のポリアミド系合成樹脂であることがより好ましい。上述の油分不透過性樹脂をフィルム状にした油分不透過性樹脂フィルムを、中間合成樹脂層(C2層)22として用いることができる。
【0057】
油分不透過性樹脂は比較的高価な樹脂なので、その使用量を低減することは、防水シート10の低コスト化のために好ましい。すなわち、中間合成樹脂層(C2層)22の膜厚を薄くすることが、防水シート10の低コスト化のために好ましい。したがって、中間合成樹脂層(C2層)22の膜厚は、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。また、中間合成樹脂層(C2層)22は、油分を透過しない程度の膜厚を有することが必要である。したがって、中間合成樹脂層(C2層)22の膜厚の下限は、0.5μmであることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましい。なお、上述の膜厚は、ポリアミド系合成樹脂フィルムの場合に好ましく選択することができる。
【0058】
本発明の防水シート10に用いる多層剥離フィルム層(C層)20は、第一合成樹脂層(C1層)21及び第二合成樹脂層(C3層)23を含む。第一合成樹脂層(C1層)21及び第二合成樹脂層(C3層)23は、比較的薄い中間合成樹脂層(C2層)22による機械的強度の低下を補償する役目を担う。したがって、第一合成樹脂層(C1層)21及び第二合成樹脂層(C3層)23の材料としては、安価な樹脂を用いた比較的厚い膜厚のフィルムを用いることができる。具体的には、第一合成樹脂層(C1層)21及び第二合成樹脂層(C3層)23としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステルなどのポリエステルフィルムなどを用いることができる。安価であり、所定の機械的強度を有するフィルムを得ることができることから、第一合成樹脂層(C1層)21及び第二合成樹脂層(C3層)23は、ポリプロピレンからなるフィルムを用いることが好ましい。第一合成樹脂層(C1層)21及び第二合成樹脂層(C3層)23は、同一種類の樹脂フィルムを用いてもよいし、互いに異なった種類の樹脂フィルムを用いてもよい。
【0059】
第一合成樹脂層(C1層)21及び第二合成樹脂層(C3層)23の膜厚は、多層剥離フィルム層(C層)20全体として、十分な機械的強度を有するように、使用する樹脂の種類に応じて、適宜選択することができる。具体的には、第一合成樹脂層(C1層)21及び第二合成樹脂層(C3層)23の膜厚は、10μm以上であることが好ましく、11μm以上であることがより好ましく、12μm以上であることがさらに好ましい。用途によっては、第一合成樹脂層(C1層)21及び第二合成樹脂層(C3層)23の膜厚は、20μm以上又は30μm以上のものを用いることができる。第一合成樹脂層(C1層)21及び第二合成樹脂層(C3層)23の膜厚が厚すぎる場合には不経済であることから、第一合成樹脂層(C1層)21及び第二合成樹脂層(C3層)23の膜厚の上限は、200μmであることが好ましく、100μmであることがより好ましく、50μmであることがさらに好ましい。第一合成樹脂層(C1層)21及び第二合成樹脂層(C3層)23の膜厚は、必ずしも同一である必要はなく、互いに異なった膜厚であってもよい。
【0060】
多層剥離フィルム層(C層)20全体として、低コストであり、かつ十分な機械的強度を有するようにすることが必要である。また、製造時に支障がなく、施工時あるいは使用時に損傷を受けにくい適度な膜厚であることも必要である。したがって、多層剥離フィルム層(C層)20全体の膜厚は、20〜200μmの範囲であることが好ましく、22〜150μmの範囲であることがより好ましく、25〜100μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0061】
第一合成樹脂層(C1層)21と中間合成樹脂層(C2層)22とは、公知の接着剤25によって接合することによって、一体化することができる。また、同様に、中間合成樹脂層(C2層)22と第二合成樹脂層(C3層)23とは、公知の接着剤26によって接合することによって、一体化することができる。
【0062】
第一合成樹脂層(C1層)21のアスファルトコンパウンド層(B層)13に接する面が、シリコン処理されることにより、施工時に、アスファルトコンパウンド層(B層)13と、多層剥離フィルム層(C層)20との剥離を容易にすることができる。第一合成樹脂層(C1層)21のシリコン処理は、第一合成樹脂層(C1層)21、中間合成樹脂層(C2層)22及び第二合成樹脂層(C3層)23を接合して一体化した後に行うことができる。
【0063】
本発明の防水シート10の多層剥離フィルム層(C層)20において、第一合成樹脂層(C1層)21が黒色顔料を含むことが好ましい。黒色顔料としてはカーボンブラックを用いることができる。第一合成樹脂層(C1層)21が黒色顔料を含むことにより、多層剥離フィルム層(C層)20の紫外線透過を防止することができるので、アスファルトコンパウンド層(B層)13の紫外線による劣化を防止することができる。
【0064】
本発明の防水シート10の多層剥離フィルム層(C層)20において、第二合成樹脂層(C3層)23が白色顔料を含むことが好ましい。白色顔料としてはチタンホワイトを用いることができる。第二合成樹脂層(C3層)23が白色顔料を含むことにより、外部からの光を反射することができる。そのため、太陽光等の照射による防水シート10の温度上昇を防止して、防水シート10の劣化を防止することができる。
【0065】
本発明の防水シート10の多層剥離フィルム層(C層)20は、クレープ加工処理又はエンボス加工処理を施したフィルム層であることが好ましい。この結果、防水シート10の製造時には、アスファルトコンパウンド層(B層)13と、多層剥離フィルム層(C層)20との接着を容易にし、施工時には、アスファルトコンパウンド層(B層)13と、多層剥離フィルム層(C層)20との剥離を容易にすることができる。また、防水シート10の皺発生も抑制することができる。
【0066】
本発明の防水シート10が剥離シートとして多層剥離フィルム層(C層)20を有することにより、剥離シートの表面への油分の露出を防止する。そのため、保管時の劣化を防止し、保管や運搬の際に予期せぬ場所への接着を防止し、防水シート10の施工時に、施工者の衣服や靴及び面状発熱体などの汚れを防止することができる。また、本発明によれば、施工時に剥離した多層剥離フィルム層(C層)20は、リサイクル可能である。
【0067】
<防水シート10>
上述のようにして得られた本発明の防水シート10を、防水を行う場所の大きさに応じて所定の大きさに切断することによって、本発明の防水シート10を得ることができる。複数の防水シート10の端部は、それぞれのアスファルトコンパウンド層(B層)13同士を重ねて圧着することによって接着することができる。そのため、防水を行う場所の大きさが大きい場合には、複数の防水シート10を接着することにより接続して施工することができる。
【0068】
本発明の防水シート10は、JIS A 6013:2005に準拠して測定した、防水シート10の長手方向の引張強度が、好ましくは35N/cm以上、さらに好ましくは40N/cm以上、特に好ましくは45N/cm以上であり、防水シート10の幅方向の引張強度が、好ましくは20N/cm以上、さらに好ましくは22N/cm以上、特に好ましくは24N/cm以上であることが耐久性の高い防水シート10を形成できることから好ましい。
【0069】
本発明の防水シート10は、JIS A 6013:2005に準拠して測定した、防水シート10の長手方向の引裂強度が、好ましくは3N以上、さらに好ましくは4N以上、特に好ましくは4.5N以上であり、防水シート10の幅方向の引裂強度が、好ましくは5N以上、さらに好ましくは5.5N以上、特に好ましくは6N以上であることが高耐久な防水シート10を形成できることから好ましい。
【0070】
本発明の防水シート10は、JIS A 6013:2005に準拠して測定した、防水シート10の長手方向の伸び率が、好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上、特に好ましくは30%以上であり、防水シート10の幅方向の伸び率が、好ましくは20%以上、さらに好ましくは24%以上、特に好ましくは28%以上であることが下地変形に追従できる防水シート10を形成できることから好ましい。
【0071】
本発明の防水シート10を施工は、多層剥離フィルム層(C層)20を剥離することにより取り外し、アスファルトコンパウンド層(B層)13を対象物体に接着して敷設することにより行う。このとき防水シート10の端部が重なるようにして接着する。防水を確実にするために、長辺方向の端部の重なりの長さd1及び短辺方向の端部の重なりの長さd2は、共に好ましくは2mm〜100mm、より好ましくは4mm〜50mm、さらに好ましくは6mm〜30mmである。本発明の防水シート10は低コストかつリサイクル性に優れるものであるので、本発明の防水シート10を敷設して防水処理を施して得られる防水構造体も、低コストかつリサイクル性に優れるものであるといえる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。但し、本発明は下記実施例により制限されるものでない。
【0073】
<実施例1>
実施例1の防水シートは、以下のようにして作製した。
【0074】
<基材層(A層)>
実施例1の防水シートに用いた基材層は、ポリエステルフィルム及びポリエステル不織布を含む。ポリエステル不織布は、目付量=50g/mのものを用いた。ポリエステルフィルムと、ポリエステル不織布とは、接着剤を用いて接着した。
【0075】
<アスファルトコンパウンド層(B層)>
実施例1の防水シートに用いたアスファルトコンパウンド層の材料としては、改質アスファルトコンパウンドを用いた。改質アスファルトコンパウンドとして、合成ゴム改質タイプの針入度150dmmのものを用いた。なお、針入度は、JIS K2207−1996に規定された方法により測定した。
【0076】
<多層剥離フィルム層(C層)>
実施例1の防水シートに用いた多層剥離フィルム層(C層)を構成する各層の材料としては、次のものを用いた。
第一合成樹脂層(C1層):ポリプロピレンフィルム(膜厚28μm)
中間合成樹脂層(C2層):膜厚4μmのナイロン6(登録商標)
第二合成樹脂層(C3層):ポリプロピレンフィルム(膜厚18μm)
【0077】
第一合成樹脂層(C1層)のシリコンコートが外面になるように、上記C1層、C2層及びC3層の順番に積層して接合した。各層を接着剤で接着して、多層剥離フィルム層(C層)を得た。なお、接着剤の厚みは2〜3μmとした。上記C1層、C2層及びC3層の接合後、第一合成樹脂層(C1層)の表面に対してシリコン処理を施すことにより、シリコンコートを形成した。
【0078】
<防水シートの製造方法>
上述の基材層(A層)を形成した面とは反対側の表面と、多層剥離フィルム層(C層)との間に、上述の改質アスファルトコンパウンドを流し込み、張り合わせロールを用いて一体化することにより、実施例1の防水シートを得た。
【0079】
<実施例2>
第一合成樹脂層(C1層)の膜厚を13μm、第二合成樹脂層(C3層)の膜厚を13μmとした以外は実施例1と同様に防水シートを作製した。
【0080】
<比較例1>
比較例1は、多層剥離フィルム層の代わりに、単層の剥離フィルムとして膜厚50μmのポリプロピレンフィルムを用いた以外は実施例1と同様に、防水シートを作製した。
【0081】
<結果>
表1に、実施例1、実施例2及び比較例1の剥離フィルム層表面へのアスファルトコンパウンドの油分の露出の状況を示す。実施例1及び実施例2の防水シートは、防水シートを製造後、50℃の乾燥機中で168時間経過後においても、剥離フィルム層表面へのアスファルトコンパウンドの油分の露出は見られなかった。これに対して、比較例1の場合には、製造後に、50℃の乾燥機中で168時間経過後、アスファルトコンパウンドが剥離フィルムを浸透して、剥離フィルム層表面にアスファルトコンパウンドの油分が露出した。
【0082】
【表1】

【符号の説明】
【0083】
10 防水シート
11 撥水層
12 基材層(A層)
13 アスファルトコンパウンド層(B層)
20 多層剥離フィルム層(C層)
21 第一合成樹脂層(C1層)
22 中間合成樹脂層(C2層)
23 第二合成樹脂層(C3層)
25、26 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(A層)と、アスファルトコンパウンド層(B層)と、多層剥離フィルム層(C層)とを含み、A層、B層及びC層の順に積層された防水シートであって、
多層剥離フィルム層(C層)が、アスファルトコンパウンド層(B層)に接する第一合成樹脂層(C1層)と、油分不透過性樹脂からなる中間合成樹脂層(C2層)と、アスファルトコンパウンド層(B層)に接しない第二合成樹脂層(C3層)とをこの順で含む、防水シート。
【請求項2】
油分不透過性樹脂が、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、 ポリアクリロニトリル、ポリアミド系合成樹脂及びポリエチレンテレフタートからなる群より選択される少なくとも1種からなる、請求項1に記載の防水シート。
【請求項3】
第一合成樹脂層(C1層)及び第二合成樹脂層(C3層)が、ポリプロピレンからなるフィルムである、請求項1又は2に記載の防水シート。
【請求項4】
中間合成樹脂層(C2層)の膜厚が10μm以下のポリアミド系合成樹脂フィルムからなり、第一合成樹脂層(C1層)及び第二合成樹脂層(C3層)の膜厚が10μm以上である、請求項3に記載の防水シート。
【請求項5】
第一合成樹脂層(C1層)と中間合成樹脂層(C2層)とが接着剤によって接合され、
中間合成樹脂層(C2層)と第二合成樹脂層(C3層)とが接着剤によって接合されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の防水シート。
【請求項6】
第一合成樹脂層(C1層)のアスファルトコンパウンド層(B層)に接する面が、シリコン処理される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の防水シート。
【請求項7】
第一合成樹脂層(C1層)が黒色顔料を含み、第二合成樹脂層(C3層)が白色顔料を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の防水シート。
【請求項8】
多層剥離フィルム層(C層)の膜厚が、20〜200μmの範囲である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の防水シート。
【請求項9】
多層剥離フィルム層(C層)が、クレープ加工処理又はエンボス加工処理を施したフィルム層である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の防水シート。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の防水シートを敷設して防水処理を施して得られる防水構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−201251(P2011−201251A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72770(P2010−72770)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】