説明

防水型光学装置

【課題】光学系の収納部に水蒸気と水の双方の浸入の防止を図ることが可能となる防水型光学装置を提供する。
【解決手段】電子回路等に電源を供給する電源電池10を収納する電池室4と、光学系を収納した光学系収納部とを備え、これらの電池室および光学系収納部を防水構造として内部に水が侵入しないようにした防水型光学装置において、前記光学系収納部に、気体遮断層2、2aによって上記水の侵入に加え水蒸気および水蒸気を含む気体の浸入を防止する気体遮断領域を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置内部に、電子回路基板と、電源電池を収納する電池室とを備えた防水型光学装置に関するものであって、さらに詳しくは、複数の防水水準で構成された防水型の光学機器における電池室配置構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、双眼鏡や水中で用いられるカメラにおいて、本体内に水が侵入しないようにした防水型の光学機器が知られている。このような防水型のものにおいて、例えば、特許文献1の防水型電子機器では、機器の安全性を確保するため、電源電池から発生する水素ガスを機器本体外に直接排出するようにする手段が提案されている。この防水型の光学機器を図4を用いてさらに説明すると、この防水型電子機器は、電気又は電子回路を駆動する電源電池27と、この電源電池27を収納する電池室31とを備えた電子機器であって、前記機器本体外部からその内部に水が侵入しないように防水構造にした防水型電子機器で、前記電池室27を密閉構造にするとともに、この電池室27に前記電池室内のガスを前記機器本体外部へ直接排出して、前記電池室内の気圧を一定気圧以下に保つ調圧手段38を設け、前記電源電池31から放出されるガスが前記機器本体内部に充満しないように構成されている。
また、調圧手段38は、電池室内31から機器本体外へ通じる開口と、機器本体外側から電池室内31へ向かう方向に付勢され、前記開口を水密に覆う調圧弁とからなり、電池の異常等でガスが発生した場合の内部圧力増加による機器の不具合を防止するように機能する。
【特許文献1】特開2001−110376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の従来例のものでは、気密性が高い電池室において電池から排出される水素ガスによる電池室変形又は破壊を防止するため、調圧手段により電池室内の気圧を一定気圧以下に保つことは可能であるが、防水型双眼鏡のように水蒸気と水の双方の浸入の防止を図る必要のある観察光学系に対しては、充分に対処し得るものではない。
防水型双眼鏡のような光学装置においては、光学系の収納部に水蒸気が侵入することによって光学系にくもりが生じるため、水の浸入以外にこのような水蒸気の侵入を防止することが不可欠であるが、上記特許文献1ではこのような水蒸気と水の双方の浸入の防止を図る防水構造については考慮されていない。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑み、光学系の収納部に水蒸気と水の双方の浸入の防止を図ることが可能となる防水型光学装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のように構成した防水型光学装置を提供するものである。
すなわち、本発明の防水型光学装置は、電子回路等に電源を供給する電源電池を収納する電池室と、光学系を収納した光学系収納部とを備え、これらの電池室および光学系収納部を防水構造として内部に水が侵入しないようにした防水型光学装置において、前記光学系収納部に、気体遮断層によって上記水の侵入に加え水蒸気および水蒸気を含む気体の浸入を防止する気体遮断領域を有することを特徴としている。
本発明においては、前記光学系収納部は、前記気体遮断領域によって前記電池室と隔離され、前記電池室に収納された電源電池から発生する気体が前記光学系収納部へ侵入するのを防止するように構成することができる。そして、この防水型光学装置として、前記光学系に観察光学系を含む可搬型観察光学装置を構成し、あるいはこの可搬型観察光学装置として、防水型単眼鏡もしくは防水型双眼鏡を構成することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光学系の収納部に気体(水蒸気)と水の双方の浸入の防止を図ることが可能となる防水型光学装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0008】
以下に、本発明の実施例について説明する。
本発明の実施例では、上記した本発明を適用して防水型双眼鏡を構成した。
図1は本実施例における防水型双眼鏡の正面図であり、図2は本実施例における防水型双眼鏡の電池蓋が開口した状態の側面図である。
また、図3は図1のA−A断面における電池室まわりの構成を示す断面図である。
図1〜図3において、1は双眼鏡本体、2、2aはメッキ処理部、3は電池蓋、3aは蓋パッキン、4は電池室である。
5は電極、6は電極止めビス、7は電極、8は開口部であり、また9は封し材、10は電池、11は電源ハーネス、12は電池室パッキン、13は外装カバーである。
【0009】
双眼鏡本体1の内部には、左右1対の対物レンズと左右1対の接眼レンズ(図示なし)と電気回路基板(図示なし)と、電池室4が設けられ、外装カバー13で覆われている。
外装カバー13は、モールド材を成型加工した部品で、非外観面側は、気体遮断(ガスバリア)性を得るため、メッキ処理2aがされている。
電池室4は、モールド材を成型加工した部品で、非外観面(ユーザーから見えない個所)には、気体遮断(ガスバリア)を目的としたメッキ処理2が加工されている。
このように水の侵入に加え、水蒸気および水蒸気を含む気体の侵入を防止した防水・気密性の高い気体遮断領域(ガスバリアエリア)内に光学系が収容されるように構成されている。
【0010】
一方、電池蓋3は、モールド材を成型加工した部品で、電池から排出された、気体を電池室外部へ透過させるため、気体遮断(ガスバリア)性を目的としたメッキ処理は行わず、気体遮断(ガスバリア)性が低く(即ち気体透過率が高い)されている。
この電池蓋3は、観察者が電池を交換する際、開閉動作をする部品であり、内部には蓋パッキン3aが組み込まれており、短時間の水没、水洗に耐える水準で電池室内は防水性を得ている。
この蓋パッキン3aも電池蓋と同様に気体遮断(ガスバリア)性が低い(即ち気体透過率が高い)シリコンゴム素材を用いている。
上記電池室周りの機構構造と素材選択により電池室は一般的防水水準を得た上で気体遮断(ガスバリア)性は意図的に低く構成されている。
このように気体遮断(ガスバリア)性を意図的に低く構成された防水エリア内に電池を収容する構成が採られている。
【0011】
電極5は弾性の有る金属で加工した部品で構成され、これにより電池10の電力を電源ハーネス11へ伝達する。
また、電極止めビス6により、電極5が電池室4に固定されており、電極7は2本の電池10をショートさせる金属を加工した部品で構成されている。
開口部8は、電池室4に設けた貫通穴で、電極5の1個所を電池室の外部に突出させるために形成されている。
封し材9は、接着性を有する防湿性を備えた充填材であり、封し材9により電極5と電池室4に設けた開口部8間の隙間が詰められている。
電池10は、ここでは市販の乾電池で単3を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。
電源ハーネス11は、電池10の電力を図示しない電気回路基板へ電力を伝達する部品で、一方はコネクタで、もう一方は電極5に半田付けされている。
電池室パッキン12は、外装カバー13と電池室4間の隙間を封止する部品で、本実施例ではガスの透過率が低いブチルゴムを採用した。
【0012】
本実施例によれば、防水領域による電池室は短時間の水没、水洗に耐える水準で防水性が得られる一方、防水・気密性のより高い気体遮断領域による光学系収納領域には、水蒸気、および、電池から発生した気体の浸入が防止される。
本実施例においては、電池室は万が一浸水、水没しても、気体遮断領域はこのような防水領域と隔離されており、防水・気密性のより高い気体遮断領域に収容された光学系、電気回路系は水、気体の侵入が有効に防止される。
本実施例においては、電気回路基板を内蔵した双眼鏡について説明したが、本発明は双眼鏡に限定されるものではなく、観察者と観察物間の距離を測定する、単眼式の距離測定装置等、観察系撮影光学系等を有する防水型光学機器のいずれに採用してもよく、特に適用分野を限定するものでない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例における防水型双眼鏡の正面図。
【図2】本発明の実施例における防水型双眼鏡の電池蓋が開口した状態の側面図。
【図3】図1のA−A断面における電池室まわりの構成を示す断面図。
【図4】従来例である特許文献1の防水型電子機器の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0014】
1:双眼鏡本体
2、2a:メッキ処理部
3:電池蓋
3a:蓋パッキン
4:電池室
5:電極
6:電極止めビス
7:電極
8:開口部
9:封し材
10:電池
11:電源ハーネス
12:電池室パッキン
13:外装カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路等に電源を供給する電源電池を収納する電池室と、光学系を収納した光学系収納部とを備え、これらの電池室および光学系収納部を防水構造として内部に水が侵入しないようにした防水型光学装置において、
前記光学系収納部に、気体遮断層によって上記水の侵入に加え水蒸気および水蒸気を含む気体の浸入を防止する気体遮断領域を有することを特徴とする防水型光学装置。
【請求項2】
前記光学系収納部は、前記気体遮断領域によって前記電池室と隔離され、前記電池室に収納された電源電池から発生する気体が前記光学系収納部へ侵入するのを防止するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の防水型光学装置。
【請求項3】
前記防水型光学装置が、前記光学系に観察光学系を含む可搬型観察光学装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の防水型光学装置。
【請求項4】
前記可搬型観察光学装置が、防水型単眼鏡もしくは防水型双眼鏡であることを特徴とする請求項3に記載の防水型光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−147216(P2006−147216A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332718(P2004−332718)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】