説明

防水工法

【課題】 コンクリートが沈降したとしても、セパレータ近傍での漏水の発生を防止する。
【解決手段】 この防水工法は、コンクリート打設用型枠間にセパレータを配置し、当該セパレータに対して防水体が近接した状態を維持するようにコンクリート打設用の型枠間にコンクリートを打設する。防水体は、アルカリ性分と反応して分解される繊維体と、繊維体により収容された膨潤性物質とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水工法に係り、特にコンクリートの沈降によって形成された空隙間からの漏水を防止することができる防水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水膨張性材料からなる止水リングをコンクリート打設時にセパレータに巻き付けて、セパレータの近傍からの水漏れを防止するコンクリート構造物の止水工法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−174187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の止水工法であると、膨張した止水リングをも下回るほどコンクリートが沈降してしまうと、止水リングとコンクリートとの間に隙間が形成されてしまい、結局漏水してしまうおそれがあった。
このため、本発明の課題は、コンクリートが沈降したとしても、セパレータ近傍での漏水の発生を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る防水工法は、
コンクリート打設用型枠間にセパレータを配置し、当該セパレータに対して防水体が近接した状態を維持するように前記コンクリート打設用の型枠間にコンクリートを打設し、
前記防水体は、アルカリ性分と反応して分解される繊維体と、前記繊維体により収容された膨潤性物質とを備えることを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の防水工法において、
前記防水体は、前記セパレータの直下位置に配置されていることを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の防水工法において、
前記防水体は、前記セパレータの全長に亘って近接するように配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、コンクリートの打設時にセパレータに対して防水体が近接した状態となっているので、コンクリートの硬化後もセパレータと防水体とが近接することになる。ここで、硬化後にコンクリートが沈降してセパレータの下部に隙間が出現してしまうと、この隙間中を漏水が流れることになる。この漏水が防水体の繊維体に触れると、漏水のアルカリ成分と繊維体とが反応して、当該繊維体は分解する。これにより、膨潤性物質が隙間へ流出して、水分を吸収することにより膨張し、隙間を埋めることになる。したがって、コンクリートが沈降したとしても、セパレータ近傍での漏水の発生を防止することができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、防水体がセパレータの直下位置に配置されているので、コンクリートの沈降により形成される隙間に確実に防水体を配置することができる。
請求項3記載の発明によれば、セパレータの全長に亘って近接するように防水体が配置されているので、コンクリートの沈降により形成される隙間全体を防水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の防水工法の第一工程を示す説明図である。
【図2】本実施形態の防水工法の第二工程を示す説明図である。
【図3】本実施形態の防水工法の第三工程を示す説明図である。
【図4】本実施形態の防水工法後におけるコンクリートに沈降が生じた状態を示す説明図である。
【図5】図4の状態以降、コンクリートとセパレータとの隙間に水が流れる状態を示す説明図である。
【図6】図5の状態以降、防水体の繊維体が分解されて、膨潤性物質が膨張した状態を示す説明図である。
【図7】本実施形態の防水工法の変形例を示す説明図である。
【図8】本実施形態の防水工法の変形例を示す説明図である。
【図9】本実施形態の防水工法の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して実施形態を詳細に説明する。図1〜図3は、本実施形態の防水工法の各工程を示す説明図である。
まず、図1に示すようにコンクリート打設用型枠1,2の間に、セパレータ3を配置する。なお、図示はしないもののセパレータ3の両端部にはネジが切られていて、この両端部にコンクリート打設用型枠1,2を介してナットを螺合することで、コンクリート打設用型枠1,2を所定の間隔に保持している。
【0012】
次いで、図2に示すように、セパレータ3の略中央下部に防水体4が接するように、当該防水体4をワイヤ5等で縛ることで取り付ける。これにより、防水体4がセパレータ3に対して近接した状態が維持されることになる。
防水体4は、繊維体41と、膨潤性物質42とを有している。繊維体41は、アルカリ性分と反応して分解される繊維から形成されている。アルカリ性分と反応して分解される繊維としては、例えばポリ乳酸繊維等が挙げられる。
膨潤性物質42は、繊維体41により収容されている。膨潤性物質42としては、液体を吸収して膨張する物質であれば如何なるものでもよく、例えばベントナイト等が挙げられる。
【0013】
その後、図3に示すようにコンクリート打設用型枠1,2の間にコンクリートCを打設する。コンクリートCの養生後においては、コンクリートC自体の収縮等により沈降してしまい、図4に示すようにセパレータ3とコンクリートCとの間に隙間Sが形成される。図5に示すように隙間S内に水Wが侵入して防水体4に触れると、繊維体41が水W中のアルカリ成分と反応して分解する。これにより、繊維体41に収容されていた膨潤性物質42が流出する。流出した膨潤性物質42は、水Wを吸収して膨張し、図6に示すように隙間Sを埋める。これにより、流路が遮られて、コンクリートCが沈降したとしても防水性が高められる。
【0014】
以上のように、本実施形態によれば、コンクリートCの打設時にセパレータ3に対して防水体4が近接した状態となっているので、コンクリートCの硬化後もセパレータ3と防水体4とが近接することになる。そして、硬化後のコンクリートCとセパレータ3との隙間S中を水Wが流れると、この水Wが繊維体41に触れ、繊維体41を分解する。これにより、膨潤性物質42が隙間Sへ流出して、水分を吸収することにより膨張し、隙間Sを埋めるため、コンクリートCが沈降したとしても、セパレータ3近傍での漏水の発生を防止することができる。
さらに、防水体4がセパレータ3の直下位置に配置されているので、コンクリートCの沈降により形成される隙間Sに確実に防水体4を配置することができる。
【0015】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。以下の説明において上記実施形態と同一の箇所は同一符号を付してその説明を省略する。
【0016】
例えば、上記実施形態では、セパレータ3に対して防水体4が近接した状態を維持するためワイヤ5で防水体4をセパレータ3に固定しているが、このような状態をコンクリートCの打設時に維持できるのであればその他の手法を用いることも可能である。図7〜9は、その一例を示す説明図である。図1に示す状態から、セパレータ3に対して隙間S1を空けるようにコンクリートCをコンクリート打設用型枠1,2の間に打設して図7に示す状態とする。そして、図8に示すように隙間S1に対して防水体4を入れ、セパレータ3の直下位置に防水体4を配置する。その後、図9に示すように、再度コンクリートCをコンクリート打設用型枠1,2の間に打設する。このような手法においても、セパレータ3に対して防水体4が近接した状態を維持することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 コンクリート打設用型枠
2 コンクリート打設用型枠
3 セパレータ
4 防水体
5 ワイヤ
41 繊維体
42 膨潤性物質
C コンクリート
S 隙間
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート打設用型枠間にセパレータを配置し、当該セパレータに対して防水体が近接した状態を維持するように前記コンクリート打設用の型枠間にコンクリートを打設し、
前記防水体は、アルカリ性分と反応して分解される繊維体と、前記繊維体により収容された膨潤性物質とを備えることを特徴とする防水工法。
【請求項2】
請求項1記載の防水工法において、
前記防水体は、前記セパレータの直下位置に配置されていることを特徴とする防水工法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の防水工法において、
前記防水体は、前記セパレータの全長に亘って近接するように配置されていることを特徴とする防水工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−202446(P2011−202446A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71893(P2010−71893)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】