説明

防水扉装置

【課題】 止水高さを高くして防水扉の扉本体の質量が大きくなっても容易に手動で起倒操作でき、人が避難する際に支障のない安価な防水扉装置を提供する。
【解決手段】 防水扉3に開口部11を形成し、防水扉3の開口部11の縁部分に開口枠12を設け、防水扉3の開口部11を水密に閉鎖可能な補助防水パネル13を開口枠12に着脱可能に設け、防水扉3の開口部11を、防水扉3の基部3aと反対側端の先端部3bから基部3aに向けて略U字形状に開口させ、開口部11の底辺3cの高さを人が跨ぐことが可能な高さにし、防水扉3の開口部11の底辺3cに操作棒24をを挿し込む操作孔25を設けて、操作棒24をより回動中心近くまで挿しこむことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や駐車場などの出入口に設置される防水扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、出入口の床面に設けられた収納凹部体に防水扉の基部を枢着し、その防水扉を収納凹部体の開口を塞ぐ倒伏位置から出入口を水密状態に塞ぐ起立位置に回動させ、起立位置の防水扉によって水害時に出入口からの水の浸入を防止するようにした防水扉装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この防水扉装置は、手動で起倒操作できるよう起立補助装置としてガスダンパーやコイルバネを備えている。また、特許文献2には、防水扉の扉本体内に扉本体と略同一幅で上下にスライド可能なスライド扉が設けられたものが提案されている。
【特許文献1】特開2006−83595号公報
【特許文献2】特開2005−139687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、防水扉装置の設置場所において特に地下駐車場の出入口は、水害時の水位が高く想定され、より高い止水高さを持つ防水扉装置が要求される傾向にある。また、防水扉装置は水害時のみ使用するものなので、使用する機会があるかどうか分らない装置である為、できるかぎり低コストであることが要求される。
特許文献1記載の防水扉装置では、止水高さを高くすると防水扉の扉本体の質量が大きくなり、そのため、手動で起倒操作できる防水扉の大きさには限度があった。しかしながら、起立補助装置の追加や、起倒にモータなど動力使用するとコストアップになり好ましくない。また止水高さが高いもの、例えば起立時の高さが1mを超えるような防水扉では、人が非難する際に跨ぐことが困難となり、迅速に避難ができない問題があった。
特許文献2記載の防水扉装置は、防水扉の起倒時にスライド扉を扉本体内に収納した状態にして扉本体の重心位置を下げ、起倒操作の動力を削減するものである。そして、スライド扉を扉本体内に収納した状態より高い水位になると想定される場合は、スライド扉を上方に引き上げて上限位置で固定して止水高さを高くするようになっている。しかし、防水扉が起立位置にある時に、扉本体に収納したスライド扉を上方に引き上げるためには、スライド扉が水密ゴムに押付けられているので、防水扉を倒伏位置と起立位置の間に戻さなければならない。その時、すでに防水扉で止水を開始している状態にあると、防水扉を起立位置から戻した時に水密ゴムと防水扉の間から水が浸入してしまう問題がある。
そこで本発明の課題は、上記問題点に鑑み、止水高さを高くして防水扉の扉本体の質量が大きくなっても容易に手動で起倒操作でき、人が避難する際に支障のない安価な防水扉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、出入口の床面に設けられた収納凹部体に防水扉の基部を枢着し、その防水扉を収納凹部体の開口を塞ぐ倒伏位置から出入口を水密状態に塞ぐ起立位置に回動可能に支持し、起立位置にある防水扉によって出入口からの水の浸入を防止するようにした防水扉装置において、防水扉に開口部を形成し、防水扉の開口部の縁部分に開口枠を設け、防水扉の開口部を水密状態に閉鎖可能な補助防水パネルを前記縁部分の開口枠に着脱可能に設けたことを特徴とする。
【0005】
また、前記防水扉の開口部を、防水扉の基部と反対側端の先端部から防水扉の基部に向けて略U字形状に形成し、防水扉の起立位置における開口部の底辺高さを、人が跨ぐことが可能な高さにし、補助防水パネルを防水扉の開口部を塞ぐような大きさに形成したことを特徴とする(請求項2)。
【0006】
また、前記防水扉の開口部の底辺に操作孔を設け、その操作孔に操作棒を挿しこんで、防水扉を倒伏位置から起立位置に回動するようにしたことを特徴とする(請求項3)。
【発明の効果】
【0007】
本願の請求項1の発明によれば、防水扉に開口部を形成し、防水扉の開口部の縁部分に開口枠を設け、防水扉の開口部を水密に閉鎖可能な補助防水パネルを前記縁部分の開口枠に着脱可能に設けたことにより、止水高さを高くして防水扉の扉本体の質量が大きくなっても、防水扉の重心を低く抑えることができ、手動で起倒操作できるので、起立補助装置の追加や、起倒にモータなどの動力を必要としないので防水扉装置を安価に製造できる。また、防水扉が起立位置にある状態で補助防水パネルを嵌め込むことができ、すでに防水扉で止水を開始している状態であっても、起立位置にある防水扉を動かす必要がないので水を浸入させることなく止水高さを高くすることができる。
本願の請求項2の発明によれば、前記防水扉の開口部を、防水扉の基部と反対側端の先端部から防水扉の基部に向けて略U字形状に形成し、防水扉の起立位置における開口部の底辺高さを人が跨ぐことが可能な高さにし、補助防水パネルを防水扉の開口部を塞ぐような大きさに形成したので、人が非難する際に容易に跨ぐことが可能となり、迅速に避難することができる。
本願の請求項3の発明によれば、前記防水扉の開口部の底辺に操作孔を設け、その操作孔に操作棒を挿しこんで、防水扉を倒伏位置から起立位置に回動するようにしたことと、収納凹部体にも略U字形状のスペース(足場)が確保でき、防水扉により接近できることにより起立操作時における作業姿勢が良くなり、防水扉を容易に起立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本願発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、当該形態は、下記の例に限定されない。 図1に示す防水扉装置1は、例えば特開2006−83595号公報に記載のように、建物や駐車場等の出入口の床面Fに埋設された収納凹部体2に、防水扉3の基部3aを枢着し、その防水扉3を作業者による手動操作により、収納凹部体2の開口を閉塞する状態(倒伏位置)から前記出入口を閉塞する状態(起立位置)に回動可能に支持し、起立位置にある防水扉3によって出入口からの水の浸入を防止する。図1は、防水扉3が倒伏位置にある防水扉装置1を上方から示したもので、図2は、図1におけるII−II断面を示し、図3は、図2における防水扉装置1の防水扉3が起立位置にある状態を示している。図4は、図3における防水扉装置1の防水扉3を前方から示したもので、以後、倒伏位置にある防水扉3の基部3a側を前方とし、先端部3b側を後方として説明する。
【0009】
収納凹部体2は、図2,3に示すように出入口に掘られた収納凹部4に埋設され、防水扉3の基部3aを枢支して防水扉3を傾倒可能とするヒンジ装置5と、防水扉3を起立方向に付勢する起立補助装置6と、起立した防水扉3を収納凹部体2の前板2a側、即ち防水扉起立側の左右に立設された扉枠7に取付けられた垂直方向のシール部材8に押し付けた状態でロックするロック装置9とを備えている。起立補助装置6は、当該形態では、ガスダンパー6aやコイルバネ6bである。収納凹部体2の前板2aには水平方向にシール部材10が取付けられ、その両端は、扉枠7の垂直方向のシール部材8下端部と連続して取り付けられている。収納凹部体2の開口形状は、収納する防水扉3の形状に合わせて板金成形されている。当該形態では、図4に示すように、略U字形状の開口部11を持つ防水扉3が倒伏位置にある時、すきま無く収まって収納凹部体2の開口を塞ぐようになっている。
【0010】
防水扉3には、開口部11が、防水扉3の基部3aと反対側端の先端部3bから防水扉3の基部3aに向けて略U字形状に形成されている。開口部11の縁部分には、パネル縦枠部12aとパネル横枠部12bとから構成されている開口枠12が設けられている。パネル縦枠部12aとパネル横枠部12bには、図5に示す補助防水パネル13の側辺部13aと下辺部13bを夫々嵌め込み可能な溝部14が形成されている。
【0011】
補助防水パネル13は、防水扉3の開口部11全体を塞ぐ大きさに構成されている。補助防水パネル13の上辺13cには、補助防水パネル13を手で持って運ぶときに掴めるように取手15が固着されている。補助防水パネル13の下辺部13bと左右の側辺部13aには、シール部材16が略U字形状に連続して設けられている。補助防水パネル13の下辺部13bと左右の側辺部13aには、補助防水パネル13を防水扉3に固着させる手段として圧接ハンドル17が複数取り付けられている。補助防水パネル13は、水圧に耐えられる強度を有し、かつ人が手で扱えるように軽量化することが好ましい。当該形態では、アルミハニカムパネルを使用している。
【0012】
防水扉装置1は、図6に示すように起立時の防水扉3の開口部11の底辺3cを止水高さとする第1止水高さと、防水扉3の開口枠12に補助防水パネル13を嵌め込み、圧接ハンドル17を操作して防水扉3と補助防水パネル13との水密状態を作り、補助防水パネル13上辺13cを止水高さとする第2止水高さを持っている。開口部11の底辺3cの高さは、人が跨ぐことが可能な高さにしてある。
【0013】
ヒンジ装置5について説明する。収納凹部体2の底板2bには、前板2a側の左、右に夫々固定ベース18が固定的に配置されている。各固定ベース18には、当接部材19aで連結された左右一対の可動ベース19一端が支持軸20により揺動可能に軸支されている。その可動ベース19の中間部(支持軸20より後側位置)には、リンク動作固定部21aを備えた第1リンク21の下端部が回動自在にピン連結されている。可動ベース19の後端には第1リンク21の長さより長く設定してある第2リンク22の下端部が回動自在にピン連結されている。防水扉3に一体固着する扉取付部材23に、第1、第2リンクの他端部が枢着されている。この4節リンク構造のヒンジを防水扉3の基部3aに連結したことで、防水扉3の先端部3bを起立方向へ揺動させると、第1、第2リンクのリンク動作によって防水扉3の基部3aが扉枠7から離れるように後退する。そして、第1リンク21のリンク動作固定部21aが可動ベース19を連結する当接部材19aに当接すると、第1、第2リンクのリンク動作が固定され、扉枠7から離れるように後退していた防水扉3の基部3aの動作が停止する。これ以降は、第1、第2リンクと共に可動ベース19が扉枠7に向けて揺動することで、防水扉3の基部3aが扉枠7に向けて回動されるようになっている。
【0014】
次に防水扉装置1の操作方法について説明する。大雨洪水警報等が発令され、水害の発生によって出入口から水が浸入してくることが予想され、出入口を防水扉装置1で遮断する場合には、図8に示す操作棒24を防水扉3の開口部11の底辺3cに設けられた操作孔25に挿しこんで、操作棒24を使って防水扉3を倒伏位置から起立位置に回動させた後、操作棒24を取り外す。そして、起立位置にある防水扉3をロック装置9により扉枠7に押し付ける。通常、大雨洪水警報等が発令された直後、直ちに水が迫ってくることは考えられない。また、この時点では、防水扉装置1の第1止水高さを超える水位になるかどうかは判断できない。よって、防水扉3を起立位置にしてからしばらくは、開口枠12に補助防水パネル13を嵌め込まず、人が防水扉3の開口部11の底辺3cを跨いで出入口から出入りできる状態にして、この間に建物内外に避難させることができる(図4の状態)。
【0015】
水害が発生し防水扉装置1による止水が始まって、第1止水高さを超える水位になると判断される場合は、防水扉装置1の管理者が防水扉3の開口枠12に補助防水パネル13を嵌め込み圧接ハンドル17を操作して防水扉3と補助防水パネル13との水密状態を作り第2止水高さとした後避難する(図6の状態)。防水扉3と補助防水パネル13との水密状態は、図7に示すように、補助防水パネル13に固着されたシール部材16が圧接ハンドル17によって開口枠12の溝部14の内側13dに押圧されて作られる。
【0016】
大雨洪水警報等が解除され、第1止水高さより水位が下がったら、補助防水パネル13を防水扉3の開口枠12から取り外すことが可能となる。これにより、防水扉3が起立位置にある状態であっても、人が防水扉3の開口部11の底辺3cを跨いで出入口を出入りすることができる。
【0017】
上記のように、防水扉3に開口部11を形成し、防水扉3の開口部11の縁部分に開口枠12を設け、防水扉3の開口部11を水密に閉鎖可能な補助防水パネル13を開口枠12に着脱可能に設けたことにより、止水高さを高くして防水扉3の扉本体の質量が大きくなっても手動で起倒操作できるので、起立補助装置6の追加や、起倒にモータなどの動力を必要としないので防水扉装置1を安価に製造できる。また、防水扉3が起立位置にある状態で補助防水パネル13を嵌め込むことができ、すでに防水扉3で止水を開始している状態であっても、起立位置にある防水扉3を動かす必要がないので水を浸入させることなく止水高さを高くすることができる。
【0018】
また、防水扉3の開口部11を、防水扉3の基部3aと反対側端の先端部3bから基部3aに向けて略U字形状に開口させ、防水扉3の開口部11の底辺3cに操作孔25を設けたことにより、操作棒をより回動中心近くまで挿しこむことができるので、少ない操作力で起立させることができる。また、収納凹部体2にも略U字形状のスペース(足場)Sが確保でき、手動で起倒操作する際に防水扉3に、より接近できるので作業姿勢が良くなり、防水扉3を容易に起立させることができる。
【0019】
尚、本実施形態では、1枚の防水扉3で構成されているが、複数の防水扉3を隣接させ、隣接部に防水扉の起立と連動する連装止水機構を備えて連装式の防水扉装置にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の防水扉装置1を上方から見た正面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図2の防水扉3が起立位置にある状態を示す断面図である。
【図4】起立位置にある防水扉3の正面図である。
【図5】補助防水パネル13の正面図である。
【図6】防水扉3に補助防水パネル13を取付けた状態を示す正面図である。
【図7】図6のVII−VII断面図である。
【図8】操作棒24の使用方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 防水扉装置
2 収納凹部体
3 防水扉
3a 基部
3b 先端部
3c 底辺
11 開口部
12 開口枠
13 補助防水パネル
24 操作棒
25 操作孔
F 床面
S 足場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口の床面に設けられた収納凹部体に防水扉の基部を枢着し、その防水扉を収納凹部体の開口を塞ぐ倒伏位置から出入口を水密状態に塞ぐ起立位置に回動可能に支持し、起立位置にある防水扉によって出入口からの水の浸入を防止するようにした防水扉装置において、防水扉に開口部を形成し、防水扉の開口部の縁部分に開口枠を設け、防水扉の開口部を水密状態に閉鎖可能な補助防水パネルを前記縁部分の開口枠に着脱可能に設けたことを特徴とする防水扉装置。
【請求項2】
前記防水扉の開口部を、防水扉の基部と反対側端の先端部から防水扉の基部に向けて略U字形状に形成し、防水扉の起立位置における開口部の底辺高さを、人が跨ぐことが可能な高さにし、補助防水パネルを防水扉の開口部を塞ぐような大きさに形成したことを特徴とする請求項1記載の防水扉装置。
【請求項3】
前記防水扉の開口部の底辺に操作孔を設け、その操作孔に操作棒を挿しこんで、防水扉を倒伏位置から起立位置に回動するようにしたことを特徴とする請求項2記載の防水扉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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