説明

防水構造、該防水構造を備えた携帯機器、該携帯機器の製造方法

【課題】防水用のパッキング部材のねじれを防ぐことが可能な防水構造を提供する。
【解決手段】内部空間を形成するように互いに対向配置されたケース2およびカバー1と、ケース2とカバー1との間に設けられたパッキング部材3であって、内部空間を枠状に囲んで密閉しているパッキング部材3と、を有し、パッキング部材3は、ケース2とカバー1との間で押し潰されることによって圧縮された枠状のゴム部材31と、ゴム部材31よりも剛性が高くてゴム部材31と一体に成形された枠状の補強部材32と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠状のパッキング部材を使用する防水構造、該防水構造を備えた携帯機器、該携帯機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機に代表される携帯機器は、いつでも、どこでも、だれとでも、というユビキタス社会の到来により様々な使用環境、例えば、水辺での使用が想定される。水辺で使用される携帯機器には、防水構造を備えることが求められる。そこで、防水構造を備えた携帯機器が提案され、特許文献1に開示されている。
【0003】
図12は、特許文献1に開示された携帯機器の斜視図である。図12に示す携帯機器100は、下部筐体102に上部筐体101を重ねることが可能な折り畳み式の携帯電話機である。以下、上部筐体101の防水構造について説明する。図13は、図12に示す携帯機器100の上部筐体101の分解斜視図である。図13に示すように、上部筐体101は、筐体カバー111と、筐体ケース112とを有する。筐体カバー111と筐体ケース112との間には、ゴム製のパッキング部材103が挟み込まれている。図14は、パッキング部材103の平面図である。図14に示すように、パッキング部材103は枠状に形成されている。
【0004】
図15は、図14に示すパッキング部材103を上部筐体101に取り付ける前の状態を示す断面図である。図16は、図14に示すパッキング部材103を上部筐体101に取り付けた後の状態を示す断面図である。図15および図16は、図13に示す上部筐体101を図12に示す切断線A−Aに沿って切断した断面図である。図17は、図15に示す領域S1の拡大図である。図18は、図16に示す領域S2の拡大図である。
【0005】
筐体ケース112の周縁部には溝112aが形成されている(図15、図17参照)。溝112aには、パッキング部材103が嵌め込まれる(図16、図18参照)。筐体カバー111における、溝112aに対向する位置には、リブ111aが形成されている。リブ111aが、パッキング部材103を押し潰すことによって、パッキング部材103は圧縮して溝112aの内部空間を満たす(図18参照)。これにより、筐体カバー111と筐体ケース112との間に形成された内部空間104が密閉されるので、内部空間104を防水することが可能となる(図16参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−124072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した携帯機器100では、上部筐体101を組み立てるときに筐体ケース112の溝112aにゴム製のパッキング部材103を嵌め込む作業が必要になる。この作業では、溝112aの寸法のばらつきまたはパッキング部材103の寸法のばらつきによって、パッキング部材103がねじれた状態で溝112aに嵌め込まれる可能性がある。この場合、パッキング部材103の劣化が早まることが懸念される。
【0008】
そこで、本発明は、防水用のパッキング部材のねじれを防ぐことが可能な防水構造、該防水構造を備えた携帯機器、および該携帯機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の防水構造は、内部空間を形成するように互いに対向配置されたケースおよびカバーと、前記ケースと前記カバーとの間に設けられたパッキング部材であって、前記内部空間を枠状に囲んで密閉しているパッキング部材と、を有し、前記パッキング部材は、前記ケースと前記カバーとの間で押し潰されることによって圧縮された枠状のゴム部材と、前記ゴム部材よりも剛性が高くて前記ゴム部材と一体に成形された枠状の補強部材と、を有する。
【0010】
上記目的を達成するために本発明の携帯機器は、上記の防水構造を有する。
【0011】
上記目的を達成するために本発明の携帯機器の製造方法は、枠状のゴム部材と、前記ゴム部材よりも剛性が高い枠状の補強部材とを一体に成形したパッキング部材を製造する工程と、内部空間を形成するようにケースおよびカバーを対向配置し、前記ケースと前記カバーとの間に前記パッキング部材を取り付け、前記ケースと前記カバーの間で前記ゴム部材を押し潰して前記ゴム部材を圧縮させることによって、前記内部空間を密閉する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防水用のパッキング部材のねじれを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の携帯機器の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示すパッキング部材の平面図である。
【図3】図2に示すパッキング部材を筐体に取り付ける前の状態を示す断面図である。
【図4】図2に示すパッキング部材を筐体に取り付けた後の状態を示す断面図である。
【図5】図3に示す領域R1の拡大図である。
【図6】図4に示す領域R2の拡大図である。
【図7】実施形態2の携帯機器に取り付けられたパッキング部材の平面図である。
【図8】図7に示すパッキング部材を筐体に取り付ける前の状態を示す断面図である。
【図9】図7に示すパッキング部材を筐体に取り付けた後の状態を示す断面図である。
【図10】図8に示す領域R3の拡大図である。
【図11】図9に示す領域R4の拡大図である。
【図12】特許文献1に開示された携帯機器の斜視図である。
【図13】図12に示す携帯機器の上部筐体の分解斜視図である。
【図14】図13に示すパッキング部材の平面図である。
【図15】図13に示すパッキング部材を上部筐体に取り付ける前の状態を示す断面図である。
【図16】図13に示すパッキング部を上部筐体に取り付けた後の状態を示す断面図である。
【図17】図15に示す領域S1の拡大図である。
【図18】図16に示す領域S2の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明の携帯機器の一実施形態を示す分解斜視図である。図1に示す携帯機器10は、筐体12に筐体11を重ねることが可能な折り畳み式の携帯電話機である。以下、筐体11の防水構造について説明する。
【0015】
図1に示すように、筐体11は、カバー1と、カバー1に対向配置したケース2とを有する。カバー1とケース2との間には、パッキング部材3が設けられている。以下、パッキング部材3について詳しく説明する。
【0016】
図2は、パッキング部材3の平面図である。図3は、図2に示すパッキング部材3を筐体11に取り付ける前の状態を示す断面図である。図4は、図2に示すパッキング部材3を筐体11に取り付けた後の状態を示す断面図である。図5は、図3に示す領域R1の拡大図である。図6は、図4に示す領域R2の拡大図である。
【0017】
図2に示すように、パッキング部材3は枠状に形成されている。図3および図4に示すように、パッキング部材3は、枠状のゴム部材31と、枠状の補強部材32と、を有する。ゴム部材31および補強部材32は、インサート成形により一体に成形されている。
【0018】
補強部材32は、ゴム部材31よりも剛性の高い材料、例えば、樹脂、あるいはゴム部材31よりも硬度の高い硬質ゴムで枠状に成形されている。成形された補強部材32は、ゴム部材31を成形するための金型に組み込まれる。そして、ゴム部材31が、インサート成形によって、補強部材32に挟み込まれるように成形される。本実施形態では、ゴム部材31は、その両端が突起状であり、かつ補強部材32から露出するように成形される(図5参照)。
【0019】
上記のように成形されたパッキング部材3は、カバー1の内面1aとケース2の内面2aとの間に取り付けられる。このとき、補強部材32がゴム部材31を保持しているのでゴム部材31の姿勢が安定する。ゴム部材31は、カバー1の内面1aおよびケース2の内面2a間で押し潰されることによって、その両端がカバー1の内面1aおよびケース2の内面2aに密着するように圧縮変形する(図6参照)。これにより、カバー1の内面1aとケース2の内面2aの間に形成された内部空間6が密閉される(図4参照)。よって、カバー1とケース2の隙間5(図6参照)から内部空間6への浸水を防ぐことが可能となる。
【0020】
上述したように本実施形態の携帯機器10では、パッキング部材3が、枠状のゴム部材31と、ゴム部材31よりも剛性の高い枠状の補強部材32とを一体に成形した構造になっている。これにより、筐体11を組み立てるときに、図12に示した携帯機器100のようにパッキング部材103を筐体ケース112の溝112aに嵌め込む作業が不要になる。そのため、パッキング部材3(ゴム部材31)のねじれを防止することが可能となる。
【0021】
さらに、ゴム部材31と補強部材32とを一体化したパッキング部材3は、筐体ケース112の溝112aへの嵌め込み作業を必要とするパッキング部材103に比べ、筐体11への取り付け作業が簡易になる。そのため、パッキング部材3の取り付けに要する時間を短縮することが可能になる。
【0022】
さらに、ゴム部材31だけでなく補強部材32も外力に対して変形可能な柔軟性を備えていると、落下衝撃を吸収できるので、衝撃に対する信頼性を確保することが可能になる。加えて、補強部材32が、カバー1およびケース2に押し潰されたときに筐体11の形状に追従して変形することによって、ゴム部材31のねじれを防止するとともに、防水性能を高めることが可能となる。
【0023】
本実施形態では、ゴム部材31に異物が付着しにくくするために、ゴム部材31の表面に微細な凹凸が形成されていてもよい。防水用のゴム部材に施す防汚手段としては成形後のゴム部材の表面にフッ素塗料を塗布することが一般的であるが、成形時に凹凸を形成することによってコストダウンを図ることが可能となる。
【0024】
(実施形態2)
本実施形態の携帯機器について説明する。以下、上述した実施形態1の携帯機器10と異なる部分を中心に説明する。
【0025】
本実施形態の携帯機器は、パッキング部材の構造が実施形態1の携帯機器10と異なる。図7は、本実施形態の携帯機器に取り付けられたパッキング部材の平面図である。図8は、図7に示すパッキング部材4を筐体11に取り付ける前の状態を示す断面図である。図9は、図7に示すパッキング部材4を筐体11に取り付けた後の状態を示す断面図である。図10は、図8に示す領域R3の拡大図である。図11は、図9に示す領域R4の拡大図である。
【0026】
図8および図9に示すように、パッキング部材4は、ゴム部材41と、補強部材42と、を有する。ゴム部材41と補強部材42とは、パッキング部材3と同様にインサート成形によって一体に成形されている。筐体11に取り付けられる前のゴム部材41は、図8に示すように、その一端が突起状に成形されている。ゴム部材41の表面には、ゴム部材31と同様に、異物の付着を防ぐための微細な凹凸が形成されていてもよい。補強部材42は、ゴム部材41よりも剛性の高い材料、例えば、樹脂、あるいはゴム部材41よりも硬度の高い硬質ゴムで構成されている。
【0027】
実施形態1のパッキング部材3は、補強部材32が、ゴム部材31の両端を露出させるようにゴム部材31を保持した構造であった。一方、本実施形態のパッキング部材4は、補強部材42にゴム部材41を重ねた構造を有している。
【0028】
上記のように成形されたパッキング部材4は、カバー1の内面1aとケース2の内面2aとの間に取り付けられ、押し潰される。すると、ゴム部材41は、カバー1の内面1aに密着するように圧縮変形し、補強部材32は、ケース2の内面2aに密着する。これにより、カバー1とケース2の間に形成された内部空間6が密閉される(図9参照)。よって、カバー1とケース2の隙間5(図11参照)から内部空間6への浸水を防ぐことが可能となる。なお、ゴム部材31がケース2の内面2aに密着し、補強部材32がカバー1の内面1aに密着する構成であってもよい。
【0029】
上述したように本実施形態の携帯機器では、パッキング部材4が、パッキング部材3と同様に、ゴム部材41と、ゴム部材41よりも剛性の高い補強部材42とを一体に成形した構造になっている。これにより、筐体11を組み立てるときに、図12に示した携帯機器100のようにパッキング部材103を筐体ケース112の溝112aに嵌め込む作業が不要になる。そのため、パッキング部材4(ゴム部材41)のねじれを防止することが可能となる。特に、パッキング部材4は、補強部材42にゴム部材41を重ねた構造を有するので、筐体11に取り付けたときに、パッキング部材3に比べ姿勢が安定しやすい。そのため、パッキング部材4の位置合わせが容易になる。
【0030】
さらに、ゴム部材41と補強部材42とを一体化したパッキング部材4は、パッキング部材3と同様に、パッキング部材103に比べ筐体11に取り付けるのに要する時間を短縮することが可能になる。
【0031】
上述した実施形態1、2では、本発明を携帯電話機に適用した実施形態について説明した。しかし、本発明は携帯電話機に限定されず、スマートフォン、ゲーム機、タブレットPC(Personal Computer)、ノートPCにも適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 カバー
1a 内面
2 ケース
2a 内面
3、4 パッキング部材
5 隙間
6 内部空間
10 携帯機器
11、12 筐体
31、41 ゴム部材
32、42 補強部材
100 携帯機器
101 上部筐体
102 下部筐体
103 パッキング部材
104 空間
111 筐体カバー
111a リブ
112 筐体ケース
112a 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を形成するように互いに対向配置されたケースおよびカバーと、
前記ケースと前記カバーとの間に設けられたパッキング部材であって、前記内部空間を枠状に囲んで密閉しているパッキング部材と、を有し、
前記パッキング部材は、前記ケースと前記カバーとの間で押し潰されることによって圧縮された枠状のゴム部材と、前記ゴム部材よりも剛性が高くて前記ゴム部材と一体に成形された枠状の補強部材と、を有する防水構造。
【請求項2】
前記補強部材は、前記ゴム部材の両端が前記ケースおよび前記カバーの各々に密着するように前記ゴム部材を保持している、請求項1に記載の防水構造。
【請求項3】
前記パッキング部材は前記補強部材に前記ゴム部材を重ねた構造を有し、前記ゴム部材が前記ケースまたは前記カバーの一方に密着し、前記補強部材が前記ケースまたは前記カバーの他方に密着している、請求項1に記載の防水構造。
【請求項4】
前記補強部材が樹脂で成形されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の防水構造。
【請求項5】
前記補強部材が、前記ゴム部材よりも硬度の高い硬質ゴムで成形されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の防水構造。
【請求項6】
前記ゴム部材の表面に凹凸が形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の防水構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の防水構造を備えた携帯機器。
【請求項8】
枠状のゴム部材と、前記ゴム部材よりも剛性が高い枠状の補強部材とを一体に成形したパッキング部材を製造する工程と、
内部空間を形成するようにケースおよびカバーを対向配置し、前記ケースと前記カバーとの間に前記パッキング部材を取り付け、前記ケースと前記カバーの間で前記ゴム部材を押し潰して前記ゴム部材を圧縮させることによって、前記内部空間を密閉する工程と、
を有する携帯機器の製造方法。
【請求項9】
前記パッキング部材をインサート成形によって製造する、請求項8に記載の携帯機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−55249(P2013−55249A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193088(P2011−193088)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】