説明

防水構造およびパネル取付型機器

【課題】ドローアウト型の機器における防水構造の防水機能を一層高めることができるとともに、制御パネル前面のコンパクト化を図った防水構造を提供する。
【解決手段】制御パネル2に形成された開口3に前面から挿入止着されるリヤケース4Rにフロントケース4Fを引出し分離可能に嵌合連結し、リヤケース4Rの前部外周部に形成されたフランジ部8の背面と制御パネル2の前面との間に第1シール材9を介在するとともに、リヤケース4Rとフロントケース4Fとの嵌合部11の内奥部に第2シール材12を介在し、嵌合部11の外方端を第1シール材9で封止してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、温度調節器、タイマ、カウンタなどの各種の機器を、制御パネルに取り付けるのに好適な防水構造、および、それを用いたパネル取付型の機器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の機器を制御パネルの開口へ取り付けるに際しては、パッキン等のシール材を用いて、制御パネルの前面から機器取付け用の開口を介して水がパネル内に浸入するのを防止する防水構造が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、図6に示すように、ドローアウト型の機器では、機器ケースをリヤケース4Rとフロントケース4Fとを分離可能に嵌合連結した構造にして、メンテナンスに際しては、制御パネル2にリヤケース4Rを取り付けた状態のままでフロントケース4Fを引き出すことができるよう構成されているので、リヤケース4Rのフランジ部と制御パネル2の前面との間にシール材9を介装するとともに、リヤケース4Rとフロントケース4Fとの嵌合部11の内奥にもOリングなどのシール材12を介在して防水を図っている。
【特許文献1】特開平8−107284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドローアウト型の機器における上記防水構造では、リヤケース4Rとフロントケース4Fとの嵌合部11の内奥にシール材11が組み込まれて防水が図られているのであるが、嵌合部11の外方端がケース外周に露出するとともに、嵌合部11の外方端11aからシール材装着箇所までが短いものとなっているので、外方端11aから侵入した水がシール材装着箇所まで入り込みやすく、シール材12が劣化したり、フロントケース4Fの引き出しメンテナンス時などにおいてシール材12に傷が付いたりしてシール機能が低下していると、リヤケース4Rとフロントケース4Fとの嵌合部11からケース内に水が浸入するおそれが高まるものであった。
【0005】
また、リヤケース4Rとフロントケース4Fとの嵌合部11にシール構造を組み込むために、制御パネル2からの機器ケース前端部の突出量が大きくなり、制御パネル前面のコンパクト化を阻むものとなっていた。
【0006】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、ドローアウト型の機器における防水構造の防水機能を一層高めることができるとともに、制御パネル前面のコンパクト化を図ることができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の防水構造は、制御パネルに形成された開口に前面から挿入止着されるリヤケースにフロントケースを引出し分離可能に嵌合連結し、リヤケースの前部外周部に形成されたフランジ部の背面と制御パネルの前面との間に第1シール材を介在するとともに、リヤケースとフロントケースとの嵌合部の内奥部に第2シール材を介在し、前記嵌合部の外方端を前記第1シール材で封止している。
【0008】
本発明の防水構造によると、リヤケースとフロントケースとの嵌合部は、その内奥において第2シール材で封止されるとともに、水の浸入口となる嵌合部の外方端が第1シール材で封止されることになり、嵌合部が内外二重に防水されることになる。
【0009】
嵌合部の外方端の封止のための専用のシール材が不要であるので、リヤケースとフロントケースとの嵌合部を内外二重に防水するものでありながらコンパクトなものに構成することができ、制御パネルからの機器ケース突出量を小さくすることが可能となる。
【0010】
(2)本発明の防水構造の一つの実施形態では、前記フロントケースにおける背面の外周近くに形成した環状溝にリヤケースに形成された前記フランジ部を嵌入して、前記嵌合部の外方端を後方向きに形成し、前記フランジ部の背面と前記環状溝の外側に形成された周壁部の後端面に亘って前記第1シール材を押圧している。
【0011】
この実施形態によると、制御パネルとリヤケースとの間の封止と、リヤケースとフロントケースとの嵌合部の封止を好適に行うことができる。
【0012】
(3)上記(2)の実施形態では、前記環状溝の外側に形成された周壁部の後端面とリヤケースにおける前記フランジ部の背面とを、面一、あるいは、略面一にしている。
【0013】
この実施形態によると、第1シール材の前面は扁平でよく、断面形状が矩形に形成された単純な形状の第1シール材を使用して、制御パネルとリヤケースとの間の封止と、リヤケースとフロントケースとの嵌合部の封止を行うことができる。
【0014】
(4)本発明の好ましい実施形態では、前記嵌合部の外方端を前記第1シール材における前面の外側寄りに位置させている。
【0015】
この実施形態によると、第1シール材の前面の大部分がフロントケースのフランジ部の背面に受け止められることになり、第1シール材による制御パネルとリヤケースとの間の封止が確実なものとなる。
【0016】
(5)本発明の他の実施形態では、前記嵌合部の外方端と内奥の第2シール材装着箇所との間の複数箇所で嵌合部を屈折させている。
【0017】
この実施形態によると、水の浸入径路となる嵌合部がラビリンス構造となり、防水機能が高いものとなる。
【0018】
(6)上記(5)の実施形態では、複数に屈折した前記嵌合部を前後方向に折り返し屈折させている。
【0019】
この実施形態によると、水の浸入径路となる嵌合部が複雑なラビリンス構造となり、防水機能が一層高いものとなる。
【0020】
(7)本発明のパネル取付型機器は、機器ケースを、制御パネルに形成された開口に前面から挿入止着されるリヤケースにフロントケースを引出し分離可能に嵌合連結して構成するとともに、上記(1)ないし(6)のいずれかの防水構造を備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明のパネル取付型機器によると、水の降りかかりやすい環境下や屋外に設置して好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ドローアウト型の機器における防水構造の防水機能を一層高めることができるとともに、制御パネルからの機器ケースの突出を少なくして制御パネル前面でのコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1に、パネル取付型の機器1の一例である温度調節器の外観斜視図が、図2に、この機器1の取付状態を示す横断平面図が、図3に、フロントケース4Fを前方に引出した取付状態を示す横断平面図がそれぞれ示されている。
【0025】
この機器1は、制御パネル2に形成した開口3に前面から挿入されて裏側から適宜手段で固定される。機器ケース4は、制御パネル2に挿入止着される箱形のリヤケース4Rと、このリヤケース4Rに前方から嵌合連結されるフロントケース4Fとからなる分割構造に構成されている。フロントケース4Fの背部に、回路基板5や配線用の端子台などが組み込まれるとともに、フロントケース4Fの前面に液晶表示部6やタッチパネル型の操作スイッチ7が備えられており、リヤケース4Rを制御パネル2に取り付けた状態のままで、フロントケース4Fを前方に引出し分離してメンテナンスできる構造、いわゆるドローアウト型に構成されている。
【0026】
リヤケース4Rの前部外周にはフランジ部8が突出形成され、制御パネル2にリヤケース4Rを組み付け止着する際に、制御パネル2の前面とフランジ部8の背面との間に、矩形断面形状に形成されたゴム製の第1シール材9が挟持されることで、開口3を通してパネル背後に水が浸入することが防止されている。
【0027】
フロントケース4Fにおける外周近くの背面には、図3に示すように、環状溝10が形成され、この環状溝10にリヤケース4Rの前端部がフランジ部8と共に嵌入されることで、リヤケース4Rにフロントケース4Fが脱着可能に嵌合連結されるとともに、その嵌合部11の内奥に、ゴム製Oリングからなる第2シール材12が挟持介在されて、嵌合部11を通して水がケース内に浸入することが阻止されている。
【0028】
環状溝10はケース中心側が浅い段付き溝状に形成されるとともに、リヤケース4Rの前端部もその段付き形状に合わせた形状に形成され、内奥の浅い段部に前記第2シール材12が装備される。
【0029】
環状溝10の外側に位置して形成された筒状の周壁部13は、その後端が先狭まり形状に形成され、リヤケース4Rとフロントケース4Fとの嵌合部11は、前後に大きく折り返えされるとともに、複数個所で屈折され、図4の一部拡大図に示す嵌合部11の外方端11aから侵入する水が内奥に移動しにくいラビリンス構造となっている。そして、リヤケース4Rにフロントケース4Fを連結した状態において、周壁部13の後端面がフランジ部8の背面と面一、あるいは、略面一になるよう設定されており、周壁部13の後端面とフランジ部8の背面との間に、嵌合部11の外方端11aが位置するようになっている。従って、第1シール材9の前面が、フランジ部8の背面のみならず外周部13の後端面にも弾性押圧作用し、嵌合部11の外方端11aが第1シール材9の前面で封止されることになる。
【0030】
嵌合部11の外方端11aは第1シール材9における前面の外側寄りに位置されており、第1シール材9は制御パネル2の前面とフランジ部8の背面との充分な面積で挟持されて弾性変形されるので、第1シール材9はフランジ部8の外側で弾性復元変形することになり、第1シール材9が嵌合部11の外方端11aに若干食い込むとともに、外周部13の後端面に弾性圧接される。
【0031】
このように、嵌合部11の外方端11aが第1シール材9で封止され、かつ、嵌合11の外方端11aと第2シール材12による封止部位との間がラビリンス構造となっていることで、ケース前面に付着した水が嵌合部11を通ってケース内に侵入することが確実に阻止される。
【0032】
(他の実施例)
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0033】
(1)図5に示すように、フロントケース4Fにおける周壁部13の後端面全周に、リヤケース4Rにおけるフランジ部8の背面より突出する小突条14を形成しておくと、この小突条14が第1シール材9の前面に食い込んで、嵌合部11における外方端11aでの封止を一層確実に行うことができる。
【0034】
(2)図5に示すように、リヤケース4Rとフロントケース4Fとの嵌合部11を屈折の少ない形状に形成してもよく、これによるとフロントケース4Fにおける外周部13の剛性が高まり、フロントケース4Fを脱着した際に外周部13の後端が欠損することを防止する機能が高いものになるとともに、ケース形状が簡素化されて、ケース成形金型のコスト低減にも寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、温度調節器、タイマ、カウンタなどの各種のパネル取付型機器の防水構造として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】パネル取付型機器の斜視図である。
【図2】制御パネルに取り付けた機器の前部を示す横断平面図である。
【図3】フロントケースを引き出した状態の横断平面図である。
【図4】防水構造を拡大した横断平面図である。
【図5】他の実例の防水構造を示す横断平面図である。
【図6】従来の防水構造の一例を示す横断平面図である。
【符号の説明】
【0037】
2 制御パネル
3 開口
4R リヤケース
4F フロントケース
8 フランジ部
9 第1シール材
10 環状溝
11 嵌合部
11a 外方端
12 第2シール材
13 周壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御パネルに形成された開口に前面から挿入止着されるリヤケースにフロントケースを引出し分離可能に嵌合連結し、リヤケースの前部外周部に形成されたフランジ部の背面と制御パネルの前面との間に第1シール材を介在するとともに、リヤケースとフロントケースとの嵌合部の内奥部に第2シール材を介在し、前記嵌合部の外方端を前記第1シール材で封止してあることを特徴とする防水構造。
【請求項2】
前記フロントケースにおける背面の外周近くに形成した環状溝にリヤケースに形成された前記フランジ部を嵌入して、前記嵌合部の外方端を後方向きに形成し、前記フランジ部の背面と前記環状溝の外側に形成された周壁部の後端面に亘って前記第1シール材を押圧してある請求項1記載の防水構造。
【請求項3】
前記環状溝の外側に形成された周壁部の後端面と、リヤケースにおける前記フランジ部の背面とを、面一、あるいは、略面一にしてある請求項2記載の防水構造。
【請求項4】
前記嵌合部の外方端を前記第1シール材における前面の外側寄りに位置させてある請求項2または3に記載の防水構造。
【請求項5】
前記嵌合部の外方端と内奥の第2シール材装着箇所との間の複数箇所で嵌合部を屈折してある請求項1ないし4のいずれか一項に記載の防水構造。
【請求項6】
複数に屈折した前記嵌合部を前後方向に折り返し屈折してある前記請求項5記載の防水構造。
【請求項7】
機器ケースを、制御パネルに形成された開口に前面から挿入止着されるリヤケースにフロントケースを引出し分離可能に嵌合連結して構成するとともに、前記請求項1ないし6のいずれかの防水構造を備えていることを特徴とするパネル取付型機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−227243(P2008−227243A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64906(P2007−64906)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】