説明

防水絶縁カバーおよびその製造方法

【課題】本発明は、電子機器の電源の、二次電池の電池缶の外装体である防水絶縁カバーであって、つなぎ目が無く、凹凸の少ない、均一な膜厚を有し、密封性、密着性、防水性に優れた防水絶縁カバーを提供することを課題とするものである。
【解決手段】浸漬成形法による製造方法であって、ゴム材料の溶解液に、電池缶の間口(電極側)を下に向けて浸漬し、その後、電池缶の側面、底部を含め、電池缶全体を浸漬した後、そのまま電池缶の間口(電極側)を下に向けて電池缶全体を引き上げることによって、あるいは、一回転させてから、電池缶の間口(電極側)を下に向けて電池缶全体を引き上げることによって、電池缶の側面、底部を含め、電池缶の全体表面につなぎ目が無く、凹凸の少ない、均一な膜厚の防水絶縁カバーを設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の電源の、二次電池の電池缶の外装体である防水絶縁カバーの製造方法に関するものである。すなわち、ビデオカメラ,モバイルコンピュータ,携帯電話機等の主とした携帯電子機器の電源や、電気自動車のバッテリーや家庭用の小型の電源として利用される充放電可能な非水電解質二次電池等の電池の一部を絶縁性の外装体で覆ってなる電池缶防水絶縁カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及しているビデオカメラ,モバイルコンピュータ,携帯電話機等の携帯電子機器や家庭用の小型の電源、自動車の電源としては、円筒状、又は直方体状の非水電解質二次電池、例えばリチウムイオン二次電池等が主として用いられている。リチウムイオン二次電池(素電池)の一例として、正極及び負極を、セパレータを介して巻回した電極群、及び非水電解質を、アルミニウム又はアルミニウム合金製であり、直方体状をなすケースに収納して構成された素電池がある。
【0003】
前記素電池の上部(間口)や側面に、過充電及び過放電を防止するために電池電圧を制御する保護回路、及び素電池から外部へ電力を取り出し、又は外部から電力を取り込むための出力端子を有する保護回路基板が配されて電池缶が構成される。保護回路基板と素電池との間は接続用のリードにより電気的に接続されている。
【0004】
前記電池缶の側面、底面を、絶縁性を有する、例えば合成樹脂製の外装枠で覆い、又は電池缶を例えば合成樹脂製の外装ケースに収納する。さらに、この電池缶をいくつか並べ、収納した電池パックが得られ、この電池パックが携帯電子機器や自動車に装着される。
【0005】
ところで、携帯電話機等の携帯電子機器や自動車の電池缶や電池パックは、使用者の不注意により水に濡れたり、水没したりする場合がある。また、自動車用の電池缶や家庭用の室外型小型蓄電池は外気にさらされているので、結露してしまうことがある。この水濡れ等により、電源として用いられている電池缶や電池パックの内部に水が浸入することがある。
【0006】
電池缶や電池パックの内部に、水が浸入した状態で使用された場合には、この水により短絡を起こして故障又は性能劣化が生じるという問題がある。
【0007】
電池缶の外装体である防水絶縁カバーとしては、従来より外装材として表面に意匠を印刷した金属薄板から構成されるメタルジャケットを使用していた。メタルジャケットは機械的なかしめ工程を必要とし、また、電池の高容量化においてメタルジャケットが厚肉のため電池の実容積の有効利用が図れないという問題点がある。
【0008】
また、電池の端子表面に回路基盤に装着出来るような金属性の板状端子をレーザー溶接法などで取り付けたものを作成し、基盤に赤外線リフロー処理によって回路基盤上に装着されるため、電池表面温度が上昇し電池性能に悪影響を及ぼしていた。特に、電解液に低沸点溶媒を使用する非水系の有機電解質電池には好ましいものではなかった。
【0009】
このため、特許文献1に係る絶縁カバーがあり、その絶縁カバーは、熱収縮性樹脂フィルムにアルミニウムなどの金属を蒸着し、意匠を印刷し、粘着、接着性の糊材を塗布したタックシール材で電池の表面を端子部を除いて被覆し、その後、熱によってタックシールの上下開口部を収縮させ、電池側面部を絶縁被覆するものである。
【0010】
すなわち、熱収縮性樹脂フィルムにアルミニウムなどの金属を蒸着した、電池の外装材として赤外線反射機能をもった素材を介在させたタックシール性の外装材を使用することで、電池に悪影響を与えないことを目的としたものであったが、袋状に樹脂フィルムを熱収縮させるに際して、溶断シールを行うため、つなぎ目が残るため、密封性、密着性、防水性を損なう可能性のあるものである。
【0011】
また、熱収縮性樹脂フィルムを用いて、袋状に樹脂フィルムを熱収縮させるため、電池缶全体に亘り、随所にシワが発生しており、その結果、電池缶全体表面に凹凸が発生しており、電池缶をいくつか並べて収納する電池パックの場合、密着性が低くなったり、間隙ができる可能性があり、収納の際に際して、樹脂フィルムが破れたり、衝撃を受けた際、電池缶が移動し、電池缶同士がぶつかって、樹脂フィルムが破れたりする可能性があるものである。
【0012】
すなわち、樹脂フィルムによる袋状の外装体が、破れたりすると、電池パックの中に入っていた水が、その破れ箇所から電池缶に浸入し、この水により短絡を起こして故障又は性能劣化が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−147813
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来技術の問題を解決するためになされたものであり、電子機器の電源の、二次電池の電池缶の外装体である防水絶縁カバーであって、つなぎ目が無く、凹凸の少ない、均一な膜厚を有し、密封性、密着性、防水性に優れた防水絶縁カバーを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、つなぎ目の無く、均一な膜厚を有する電池缶の外装材防水絶縁カバーとするために、ゴム材料の溶解液に、電池缶を浸漬させて、電池缶表面に、つなぎ目の無く、均一な膜厚を設けることのできる製造方法である。
【0016】
請求項1の発明は、二次電池の電池缶の外装体である防水絶縁カバーの浸漬成形法による製造方法であって、
ゴム材料の溶解液に、電池缶の間口を下に向けて浸漬する工程と、
電池缶の側面、底部を含め、電池缶全体を浸漬した後、
そのまま電池缶の間口を下に向けて電池缶全体を引き上げることによって、
あるいは、一回転させてから、電池缶の間口を下に向けて電池缶全体を引き上げる工程と、
電池缶の側面、底部を含め、電池缶の全体表面にゴム材料の膜を設けた後、電池缶の間口部分のゴム材料の膜を取り除く工程と、
を含むことを特徴とする防水絶縁カバーの製造方法である。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1に記載の製造方法により製造することを特徴とする二次電池の電池缶の防水絶縁カバーである。
【0018】
請求項3の発明は、二次電池用電池缶の外装体である防水絶縁カバーであって、前記防水絶縁カバーがゴム材料からなり、つなぎ目がなく、膜厚さが均一であることを特徴とす
る請求項2に記載の防水絶縁カバーである。
【0019】
請求項4の発明は、リチウムイオン電池用電池缶の外装体である防水絶縁カバーであって、前記防水絶縁カバーがゴム材料からなり、つなぎ目がなく、膜厚さが均一であることを特徴とする請求項2に記載の防水絶縁カバーである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、電子機器の電源の、二次電池の電池缶の外装体である防水絶縁カバーであって、ゴム材料の溶解液に、電池缶全体を浸漬する浸漬成形法によって、電池缶の全体表面に、つなぎ目が無く、均一な膜厚を有するゴム材料の膜を設けることができるという効果を有するものであり、かつ、密封性、密着性、防水性に優れた防水絶縁カバーを製造できるという効果を有するものである。
【0021】
請求項1の発明は、二次電池の電池缶の外装体である防水絶縁カバーの浸漬成形法による製造方法であって、
ゴム材料の溶解液に、電池缶の間口を下に向けて浸漬する工程と、
電池缶の側面、底部を含め、電池缶全体を浸漬した後、
そのまま電池缶の間口を下に向けて電池缶全体を引き上げることによって、
あるいは、一回転させてから、電池缶の間口を下に向けて電池缶全体を引き上げる工程と、
電池缶の側面、底部を含め、電池缶の全体表面にゴム材料の膜を設けた後、電池缶の間口部分のゴム材料の膜を取り除く工程と、
を含むことによって、つなぎ目が無く、かつ均一な膜厚を有する防水絶縁カバーを製造できるという効果を有するものである。
【0022】
すなわち、ゴム材料の溶解液に電池缶の底面を下に向けて浸漬してそのまま引き上げると、電池缶の底面付近に液だまりができてしまい、均一な膜厚が得られなく、凹凸の大きいいびつな膜となってしまい、密封性、密着性、防水性に劣る防水絶縁カバーとなってしまう。そこで、最初に、電池缶の間口を下に向けて浸漬し、そのまま電池缶の間口を下に向けて電池缶全体を引き上げるか、
あるいは、一回転させてから、電池缶の間口を下に向けて電池缶全体を引き上げることによって、電池缶の底面付近に液だまりができるのを避けることができる方法である。
【0023】
しかし、本発明の方法によっても、逆に、電池缶の間口の付近には、液だまりができているが、本来、電池缶の間口の付近には、防水絶縁カバーの膜は不要なため、後の仕上げ工程であるトリミング工程において、電池缶の間口の付近のゴム材料の膜を液だまりした部分を含めて取り除くことになるため、仕上がり状態は、つなぎ目が無く、かつ均一な膜厚を有する防水絶縁カバーとなっているものである。
【0024】
一方、本発明の浸漬成形法を電池製造工程のどこの段階で適用するのかということに関して、電池缶への防水絶縁カバーの設置としては、二通りあり、一つはプレカバー方式があるが、先に、電池缶へ防水絶縁カバーをした場合には、後の電池製造工程において、防水絶縁カバーにキズやピンホールを発生させる可能性があり、最終工程(電池組上げ後)に再度、通電や外観検査が必要となるため、効率や歩留まりが悪くなるものである。
【0025】
二つ目のアフターカバー方式では、電池製造し、機能検査後にカバーすることができるため、歩留まりが良くなるものである、本発明においては、どちらの方式もとれるが、アフターカバー方式をとることによって、電池製造の歩留まりを良くできるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の浸漬成形法により、電池缶の周りに防水絶縁皮膜(6)を設けた後、仕上げ(トリミング)して、本発明の防水絶縁カバーとした模式図である。
【図2】図2の(a)、(b)は、従来法の浸漬成形法により、吊下げフック(5)に電池缶(1)を吊り下げて、電池缶の底面を下に向けて浸漬し、その後、電池缶の側面、底部を含め、電池缶全体を浸漬した模式図である。
【図3】図3の(a)は、図2の(b)の後、そのまま電池缶の底面を下に向けて電池缶全体を引き上げた場合の模式図である。図3の(b)は、図3の(a)の間口(2)付近の防水絶縁皮膜(6)をトリミングして取り除き、仕上げした場合の模式図である。
【図4】図4の(a)、(b)は、本発明の浸漬成形法により、吊下げフック(5)に電池缶(1)を吊り下げて、電池缶の間口(2)を下に向けて浸漬し、その後、電池缶の側面、底部を含め、電池缶全体を浸漬した模式図である。
【図5】図5の(a)は、図4の(b)の後、そのまま電池缶の間口(2)を下に向けて電池缶全体を引き上げた場合の模式図である。図5の(b)は、図5の(a)の間口(2)付近の防水絶縁皮膜(6)を電池缶の間口(2)付近の液だまりによる防水絶縁皮膜の部分的凸部(9)を含めてトリミングして取り除き、仕上げした場合の模式図である。
【図6】図6の(a)、(b)は、本発明の浸漬成形法により、吊下げフック(5)に電池缶(1)を吊り下げて、電池缶の間口(2)を下に向けて浸漬し、その後、電池缶の側面、底部を含め、電池缶全体を浸漬した模式図である。
【図7】図7の(a)、(b)は、本発明の浸漬成形法による、図4〜図5の方法とは異なる、もう一つの方法であって、図6の(b)の後、一回転、吊下げフック(5)に電池缶(1)を吊り下げたまま、電池缶の間口(2)を下から上に向けて回転した場合の模式図である。、
【図8】図8の(a)、(b)は、図7の(b)の後、さらに、上から下に回転し、もとの電池缶の間口(2)を下に向く位置になってから電池缶全体をそのまま引き上げた場合の模式図である。
【図9】図9の(a)は、図8の(b)の後、電池缶の間口(2)付近の液だまりによる防水絶縁皮膜の部分的凸部(9)を含めてトリミングして取り除き、仕上げした場合の模式図である。図9の(b)は、従来方法と本発明法にて、防水絶縁カバーを試作した際のカバーの膜厚さを三箇所、缶底面(10)、缶側面中央(20)、缶側面上部(30)にて測定した際の測定位置を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、電子機器の電源の、二次電池の電池缶の外装体である防水絶縁カバーであって、つなぎ目が無く、凹凸の少ない、均一な膜厚か、フルム厚さを有し、密封性、密着性、防水性に優れた防水絶縁カバーを提供するものであって、
つなぎ目の無く、均一な膜厚さを有する電池缶の外装材防水絶縁カバーとするために、ゴム材料の溶解液に、電池缶を浸漬させて、電池缶表面に、つなぎ目の無く、均一な膜厚さを設けることのできる浸漬成型法による製造方法である。
【0028】
浸漬成型法にて、電池缶の外装材防水絶縁カバーを製造するに際して、本発明では、前記アフターカバー方式を適用して、電池製造し、機能検査後にカバーすることによって、歩留まりを良くするものであるが、プレカバー方式を採用することもできる。
【0029】
本来、図2から図3に示すように、浸漬成型法にて、対象物全体に、皮膜を設けることができるが、浸漬方法によって、必ず対象物のどこかに、液だまりができて、皮膜に厚い薄いや、凹凸部を残してしまうという問題があるものである。
【0030】
しかし、本発明において、その問題を解決できるものである。
【0031】
すなわち、本発明は、図4から図9に示すように、ゴム材料の溶解液(4)に、まず、電池缶(1)の間口(2)(電極側)を下に向けて浸漬し、
その後、電池缶(1)の側面、底部を含め、電池缶全体を浸漬した後、
そのまま電池缶の間口(2)を下に向けて電池缶全体を引き上げることによって、
あるいは、一回転させてから、電池缶(1)の間口(2)を下に向けて電池缶全体を引き上げることによって、
電池缶(1)の側面、底部を含め、電池缶(1)の全体表面にゴム材料の、つなぎ目が無く、かつ均一な膜厚を有する防水絶縁カバーを製造できるというものである。
【0032】
前記ゴム材料としては、天然ゴム、クロロプレンゴム等の合成ゴムなどを使用することができる。
【0033】
天然ゴムは、低モジュラス、高い伸び、そして十分な引っ張り強さを有している。しかし、それとともに耐老化性の悪さや、天然ゴム中に含まれるタンパク質に対するアレルギー反応などの短所も有し、これらは天然ゴムの構造および組成に起因している。また、天然物ゆえに樹齢、気象条件により組成等に微妙な影響を与えるため、一定の品質のラテックスが得られずピンホールや不均一な成膜不良を生じさせる原因となる。
【0034】
合成ゴムラテックスとしては、特に限定されるものではなく、弾性で、電気的絶縁性を示すものなら使用でき、具体的には、例えば、天然ゴム、スチレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−アクリルゴム、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム、フッ素化シリコーンゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、プロピレンオキサイドゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ポリサルファイドゴム、ノルボルネンゴム、多硫化ゴム、水素ニトリルゴム、ポリエーテル系特殊ゴム、ポリウレタン繊維等が使用できるが、ブタジエン系やクロロプレン系ゴムが好ましく使用できる。
【0035】
天然ゴムや合成ゴムラテックスなどを溶解する溶剤としては、有機系溶剤として、トルエン、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等が使用できる。
【0036】
浸漬成型の槽はひとつでも問題ないが、ひとつだけに限らず、必要な厚さ、伸び、絶縁性などを考慮して2槽以上にしてもよいし、天然ゴム浸漬槽と合成ゴム浸漬槽を組み合わせてもよい。
【0037】
天然ゴムラテックス槽に浸漬する場合は、天然ゴム、溶剤以外に、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、酸化防止剤、活性剤、増粘又は湿潤剤ならびに場合によっては軟化剤又は充填剤などを添加するした溶解液が必要である。
【0038】
合成ゴムラテックス槽に浸漬する場合は、天然ゴムの場合のような、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤は必要なく、合成ゴム、有機溶剤、可塑剤としてのオイルなどよりなる溶解液を用いることができる。なお、可塑剤のオイルとしてパラフィン系オイルが一般的に用いることができるが、その他のオイル、例えばナフテン系オイルも使用可能と考えられる。しかし、ナフテン系オイルは熱安定性が悪く耐候性、長期間での耐老化性に問題があるためパラフィン系オイルを使用した方が望ましい。
【0039】
合成ゴムラテックス槽のみに浸漬する場合は、天然ゴムラテックス槽に浸漬する場合と比較して、加硫時間が必要なくなるので、効率的に製造できるものである。
【0040】
本発明における浸漬成形方法は、図4から図9に示すように、ゴム材料の溶解液(4)に、最初に、電池缶(1)の間口(2)を下に向けて浸漬し、
その後、電池缶(1)の側面、底部を含め、電池缶全体を浸漬した後、
そのまま電池缶(1)の間口(2)を下に向けて電池缶全体を引き上げることによって、あるいは、一回転させてから、電池缶(1)の間口(2)を下に向けて電池缶全体を引き上げることによって、
電池缶(1)の側面、底部を含め、電池缶(1)の全体表面にゴム材料の膜がつなぎ目無い、かつ均一な膜厚を有する防水絶縁カバーを製造できるものである。
【0041】
すなわち、ゴム材料の溶解液(4)に、電池缶(1)の底面を下に向けて浸漬して、そのまま引き上げると、電池缶(1)の底面付近に液だまりができてしまい、均一な膜厚が得られなく、凹凸の大きいいびつな膜となってしまい、密封性、密着性、防水性に劣る防水絶縁カバーとなってしまうため、電池缶の間口(2)を下に向けて浸漬し、そのまま電池缶(1)の間口(2)を下に向けて電池缶全体を引き上げるか、
あるいは、一回転させてから、電池缶(1)の間口(2)を下に向けて電池缶全体を引き上げることによって、電池缶(1)の底面付近に液だまりができるのを避けることができる。
【0042】
しかし、本発明の方法によっても、逆に、電池缶(1)の間口(2)の付近には、液だまりができているが、本来、電池缶(1)の間口(2)の付近には、防水絶縁カバーの膜は不要なため、後の仕上げ工程であるトリミング工程において、電池缶(1)の間口(2)の付近のゴム材料の膜部分を液だまりを含めて取り除くことになるため、仕上がり状態は、つなぎ目が無く、かつ均一な膜厚を有する防水絶縁カバーを得ることができるものである。
【0043】
図1は、本発明の浸漬成形法により、電池缶の周りに防水絶縁皮膜(6)を設けた後、仕上げ(トリミング)して、本発明の防水絶縁カバーとした模式図である。
【0044】
図2の(a)、(b)は、従来法の浸漬成形法により、吊下げフック(5)に電池缶(1)を吊り下げて、電池缶の底面を下に向けて浸漬し、その後、電池缶の側面、底部を含め、電池缶全体を浸漬した模式図である。
【0045】
図3の(a)は、図2の(b)の後、そのまま電池缶の底面を下に向けて電池缶全体を引き上げた場合の模式図である。
図3の(b)は、図3の(a)の間口(2)付近の防水絶縁皮膜(6)をトリミングして取り除き、仕上げした場合の模式図である。電池缶の底面付近に、液だまりによる防水絶縁皮膜の部分的凸部(8)ができているので不良品となるものである。
【0046】
図4の(a)、(b)は、本発明の浸漬成形法により、吊下げフック(5)に電池缶(1)を吊り下げて、電池缶の間口(2)を下に向けて浸漬し、その後、電池缶の側面、底部を含め、電池缶全体を浸漬した模式図である。
【0047】
図5の(a)は、図4の(b)の後、そのまま電池缶の間口(2)を下に向けて電池缶全体を引き上げた場合の模式図である。
図5の(b)は、図5の(a)の間口(2)付近の防水絶縁皮膜(6)を電池缶の間口(2)付近の液だまりによる防水絶縁皮膜の部分的凸部(9)を含めてトリミングして取り
除き、仕上げした場合の模式図である。電池缶の間口(2)付近の液だまりによる防水絶縁皮膜の部分的凸部(9)は、きれいに取り除かれているので良品となるものである。
【0048】
図6の(a)、(b)は、本発明の浸漬成形法により、吊下げフック(5)に電池缶(1)を吊り下げて、電池缶の間口(2)(電極側)を下に向けて浸漬し、その後、電池缶の側面、底部を含め、電池缶全体を浸漬した模式図である。
【0049】
図7の(a)、(b)は、本発明の浸漬成形法による、図4〜図5の方法とは異なる、もう一つの方法であって、図6の(b)の後、一回転、吊下げフック(5)に電池缶(1)を吊り下げたまま、電池缶の間口(2)を下から上に向けて回転した場合の模式図である。、
【0050】
図8の(a)、(b)は、図7の(b)の後、さらに、上から下に回転し、もとの電池缶の間口(2)を下に向く位置になってから電池缶全体をそのまま引き上げた場合の模式図である。
【0051】
図9の(a)は、図8の(b)の後、電池缶(1)の間口(2)付近の液だまりによる防水絶縁皮膜の部分的凸部(9)を含めてトリミングして取り除き、仕上げした場合の模式図である。電池缶(1)のの間口(2)付近の液だまりによる防水絶縁皮膜(6)の部分的凸部(9)は、きれいに取り除かれているので良品となるものである。
【0052】
なお、本発明の浸漬成形法による製造方法による防水絶縁カバーと、従来の浸漬成形法による製造方法による防水絶縁カバーを作成し、図9の(b)に示すように、電池缶の側面上部(30)(間口付近)、側面中央(20)および底面(10)の膜厚を測定して、その比較結果を表1にまとめた。
【0053】
測定の結果、従来方法により作成した防水絶縁カバーの缶底面の位置での膜厚さは、本発明の方法により作成した防水絶縁カバーの缶底面の位置での膜厚さよりも、2.5倍の厚さがあることがわかった。すなわち本発明の方法により作成した防水絶縁カバーの缶底面の位置での液だまりはない、という結果であった。
【0054】
【表1】

【符号の説明】
【0055】
1,電池缶
2、電池缶の間口
3、浸漬成形用の浸漬槽
4、ゴム材料の溶解液
5、吊下げフック
6、防水絶縁皮膜
7、仕上げトリミング部分の境界を示す破線
8、9、液だまり部分
10、電池缶の底面の測定位置
20、電池缶の側面中央の測定位置
30、電池缶の側面上部(間口付近)の測定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の電池缶の外装体である防水絶縁カバーの浸漬成形法による製造方法であって、ゴム材料の溶解液に、電池缶の間口を下に向けて浸漬する工程と、
電池缶の側面、底部を含め、電池缶全体を浸漬した後、
そのまま電池缶の間口を下に向けて電池缶全体を引き上げることによって、
あるいは、一回転させてから、電池缶の間口を下に向けて電池缶全体を引き上げる工程と、
電池缶の側面、底部を含め、電池缶の全体表面にゴム材料の膜を設けた後、電池缶の間口部分のゴム材料の膜を取り除く工程と、
を含むことを特徴とする防水絶縁カバーの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により製造することを特徴とする二次電池の電池缶の防水絶縁カバー。
【請求項3】
二次電池用電池缶の外装体である防水絶縁カバーであって、前記防水絶縁カバーがゴム材料からなり、つなぎ目がなく、膜厚さが均一であることを特徴とする請求項2に記載の防水絶縁カバー。
【請求項4】
リチウムイオン電池用電池缶の外装体である防水絶縁カバーであって、前記防水絶縁カバーがゴム材料からなり、つなぎ目がなく、膜厚さが均一であることを特徴とする請求項2に記載の防水絶縁カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−97887(P2013−97887A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236962(P2011−236962)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】