説明

防水通気フィルタおよびその使用

【課題】両面テープを強固に保持する防水通気フィルタを提供する。
【解決手段】防水通気フィルタ1は、複数の貫通孔21が形成された樹脂フィルム2と、樹脂フィルム2の厚さ方向の両面のうちの少なくとも一方の面上に、貫通孔21と対応する位置に開口31を有するように形成された、疎水性および撥油性を有する処理層3と、樹脂フィルム2の厚さ方向の両面のうちの一方の面の周縁部に処理層3を挟んで貼着された環状の両面テープ4と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば筐体に装着される防水通気フィルタおよびこの防水通気フィルタの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車ECU(Electrical Control Unit),モーター,ランプ,センサーなどの自動車電装部品、電動歯ブラシ,シェーバー,携帯電話などの家電製品、太陽電池などでは、電子部品や制御基板などを収容する筐体に、筐体の内部と外部の圧力差を解消する目的で開口が設けられ、その開口を防水通気フィルタで塞ぐことが行われている。この防水通気フィルタは、筐体の内外での通気を確保しつつ筐体内への水や塵などの異物の侵入を防止するものである。
【0003】
このような防水通気フィルタには、通気性が良好で耐水圧が高いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜がよく用いられる(例えば、特許文献1参照)。PTFE多孔質膜は、通常、PTFE微粉末をシート状に成形し、このシート状成形体を直交する二方向に延伸することにより得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−237949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、防水通気フィルタは、例えば熱溶着や超音波溶着によりあるいは接着剤を用いて筐体に貼り付けられることがあるが、筐体への貼り付けの作業性を向上させるという観点からは、防水通気フィルタの周縁部に沿って環状の両面テープを設けることが好ましい。
【0006】
しかしながら、PTFE多孔質膜を用いた防水通気フィルタでは、PTFE多孔質膜を作製する際の延伸倍率を大きくするとPTFE多孔質膜の繊維径が細くなり、PTFE多孔質膜と両面テープとの接着面積の減少からそれらの接着力が弱くなることがある。特に、そのような防水通気フィルタを高温環境下に置いた場合には、PTFE多孔質膜と両面テープとの接着力が大きく低下し、それらの界面から筐体内部に水が侵入することがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、両面テープを強固に保持する防水通気フィルタおよびこの防水通気フィルタの使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、通気を確保しつつ水の浸入を防止するための防水通気フィルタであって、非多孔質の樹脂フィルムであって該樹脂フィルムを厚さ方向に貫通する、0.01μm以上10μm以下の所定のサイズを有する複数の貫通孔が形成された樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの厚さ方向の両面のうちの少なくとも一方の面上に、前記複数の貫通孔と対応する位置に開口を有するように形成された、疎水性および撥油性を有する処理層と、前記樹脂フィルムの厚さ方向の両面のうちの一方の面の周縁部に前記処理層を挟んで貼着された環状の両面テープと、を備える、防水通気フィルタを提供する。
【0009】
ここで、貫通孔に関する「サイズ」とは、貫通孔の断面積と等しい円の直径のことである。
【0010】
また、本発明は、上記の防水通気フィルタを用いて筐体に設けられた開口を塞ぎ、前記防水通気フィルタを介して前記筐体の内部と外部の圧力差を解消する、防水通気フィルタの使用を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、樹脂フィルムに形成された貫通孔により通気を可能としつつ、樹脂フィルム上の処理層により防水性を確保することができる。しかも、非多孔質の樹脂フィルムを用いることにより、樹脂フィルム上に形成された処理層と両面テープとの接着面積を大きく確保することができる。従って、本発明によれば、両面テープと処理層とを十分な接着力で接着して、両面テープを強固に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る防水通気フィルタの模式的な断面図である。
【図2】別の実施形態に係る防水通気フィルタの模式的な断面図である。
【図3】接合力を測定する方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1に、本発明の一実施形態に係る防水通気フィルタ1を示す。この防水通気フィルタ1は、通気を確保しつつ水の侵入を防止するためのものである。例えば、防水通気フィルタ1は、筐体(図示せず)に設けられた開口を塞ぐように筐体に装着され、該防水通気フィルタ1を介して筐体の内部と外部の圧力差を解消するために使用される。
【0015】
具体的に、防水通気フィルタ1は、非多孔質の樹脂フィルム2と、樹脂フィルム2上に形成された処理層3と、樹脂フィルム2の周縁部に沿う環状の両面テープ4とを備えている。ここで、「非多孔質」とは、内部が樹脂で詰まった中実のことをいう。
【0016】
樹脂フィルム2の形状は、特に限定されない。例えば、樹脂フィルム2は、平面視で(厚さ方向から見たときに)円形であってもよいし、多角形であってもよい。
【0017】
樹脂フィルム2には、該樹脂フィルム2を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔21が形成されている。換言すれば、貫通孔21は、樹脂フィルム2の厚さ方向の両面に開口している。貫通孔21は、典型的には、一定の断面形状で樹脂フィルム2を直線状に貫通するストレート孔である。このような貫通孔は、例えばイオンビーム照射およびエッチングにより形成できる。また、イオンビーム照射およびエッチングでは、サイズおよび軸方向が揃った貫通孔を樹脂フィルム2に形成することができる。
【0018】
なお、貫通孔21の断面形状は、特に限定されず、円形であってもよいし、不定形であってもよい。また、貫通孔21の軸方向は、樹脂フィルム2の厚さ方向の両面に垂直な方向である必要はなく、その方向から傾いていてもよい。
【0019】
貫通孔21は、0.01μm以上10μm以下の所定のサイズを有している。なお、貫通孔21のサイズは、全ての貫通孔21で完全に一致している必要はなく、全ての貫通孔21で実質的に同じ値とみなせる程度(例えば、標準偏差が平均値の10%以下)であればよい。貫通孔21のサイズは、エッチング時間やエッチング処理液濃度により調整できる。好ましい貫通孔21のサイズは、0.5μm以上5μm以下である。
【0020】
貫通孔21は、樹脂フィルム2の全面に亘って密度が10〜1×108個/mm2の範囲のうちの特定の帯域(例えば、最大密度が最小密度の1.5倍以下)に収まるように一様に分布していることが好ましい。貫通孔21の密度は、イオンビーム照射時のイオン照射数により調整できる。より好ましい貫通孔21の密度は、1×103〜1×107個/mm2である。
【0021】
樹脂フィルム2の気孔率(樹脂フィルム2の輪郭で規定される面積に対する全ての貫通孔21の断面積の総和の割合)は、特に限定されないが、使用用途に耐え得るフィルム強度を保つ観点から、50%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましい。
【0022】
また、樹脂フィルム2の厚さは特に限定されないが、小孔径(高耐水圧)および高気孔率(高通気)の構造を実現するため(厚みのある基材でも小径の孔を形成するため)、前記所定のサイズに対する樹脂フィルム2の厚さの比(所定のサイズをD、樹脂フィルムの厚さをTとしたときのT/D)が1以上10000以下であることが好ましく、5以上1000以下であることがより好ましい。
【0023】
樹脂フィルム2を構成する材料は特に限定されないが、アルカリ溶液、酸化剤溶液、または酸化剤を含むアルカリ溶液により分解する樹脂が好ましい。例えば、樹脂フィルム2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびポリフッ化ビニリデン(PVdF)から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる。
【0024】
貫通孔21を形成するための上述したエッチングでは、樹脂フィルム2を構成する材料に応じたアルカリ溶液や酸化剤溶液などのエッチング処理液を用いる。例えば、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液は、樹脂を加水分解させる溶液として用いることができる。また、例えば、亜塩素酸水溶液、次亜塩素酸水溶液、過酸化水素水、過マンガン酸カリウム溶液などの酸化剤溶液は、樹脂を酸化分解させる溶液として用いることができる。例えば、PET、PEN、PCのいずれかで樹脂フィルム2を構成する場合は、エッチング処理液として水酸化ナトリウムを主成分とする溶液を用い、PIで樹脂フィルム2を構成する場合は、エッチング処理液として次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする溶液を用いる。また、PVdFで樹脂フィルム2を構成する場合は、エッチング処理液として水酸化ナトリウムを主成分とする溶液に過マンガン酸カリウムを添加した溶液を用いてPVdFを分解させる。
【0025】
あるいは、貫通孔21が形成された樹脂フィルム2としては、オキシフェン社やミリポア社が販売するメンブレンフィルタを用いることも可能である。
【0026】
なお、樹脂フィルム2は、必ずしも単層である必要はなく、複数層に分かれていてもよい。
【0027】
処理層3は、図1では樹脂フィルム2の厚さ方向の両面のうちの一方の面上に形成されているが、樹脂フィルム2の両面上に形成されていてもよい。すなわち、処理層3は、樹脂フィルム2の厚さ方向の両面のうちの少なくとも一方の面上に形成されていればよい。
【0028】
具体的に、処理層3は、貫通孔21と対応する位置に開口31を有するように形成されており、疎水性および撥油性を有している。このような処理層3は、疎水性の撥油剤を樹脂フィルム2上に薄く塗布し、乾燥させることにより形成できる。そのような撥油剤としては、例えばパーフルオロアルキル基を持つフッ素系コーティング剤が挙げられる。なお、処理層3の厚さは、貫通孔21に関する上述した所定のサイズの半分未満であることが好ましい。
【0029】
上記のように貫通孔21が形成された樹脂フィルム2に撥油剤を塗布して乾燥させた場合は、貫通孔21の内周面も処理層3と連続する第2の処理層で覆うことが可能である。この場合、処理層3の開口31の大きさは、貫通孔21の大きさよりも第2の処理層分だけ小さくなる。
【0030】
両面テープ4は、樹脂フィルム2の処理層3で覆われた面の周縁部に、処理層3を挟んで貼着されている。なお、処理層3が樹脂フィルム2の両面に形成されている場合には、両面テープ4は樹脂フィルム2のどちらの面に貼着されていてもよい。すなわち、両面テープ4は、樹脂フィルム2の厚さ方向の両面のうちの一方の面の周縁部に、処理層3を挟んで貼着される。
【0031】
両面テープ4は、基材の両面に粘着剤が塗布されたものである。基材および粘着剤は特に限定されない。例えば、基材としては、PETからなる不織布を用いることができ、粘着剤としては、アクリル系粘着剤やシリコン系粘着剤を用いることができる。
【0032】
樹脂フィルム2における両面テープ3が貼着された面と反対側の面には、例えば図2に示すように通気性支持材5が積層されていてもよい。通気性支持材5は、図2に示すように樹脂フィルム2に直接積層されていてもよい。あるいは、樹脂フィルム2の厚さ方向の両面上に処理層3が形成されている場合には、通気性支持材5は、処理層3を挟んで樹脂フィルム2に積層されていてもよい。通気性支持材5としては、樹脂フィルム2よりも通気性に優れたものであることが好ましく、例えば織布、不織布、ネット、メッシュなどを用いることができる。また、通気性支持材5の材質としては、例えばポリエステル、ポリエチレン、アラミド樹脂などが挙げられる。
【0033】
樹脂フィルム2と通気性支持材5とは、熱溶着、接着剤による接着など通常の方法で接合される。樹脂フィルム2と通気性支持材5との接合は部分的に行われ、その接合部分の面積は全面積の5〜20%であることが好ましい。接合部分の面積が全面積の5%未満であると、樹脂フィルム2と通気性支持材5が剥がれ易くなり、20%を超えると、接合部分で耐水圧が低くなるからである。また、接合部分は、全面積に対して均一に分散していることが好ましい。
【0034】
以上の構成の防水通気フィルタ1を開口を有する金属板(例えば、ステンレス鋼板)に前記開口を塞ぐように貼り付けた後に、JIS L1072−A(低水圧法)またはJIS L1072−B(高水圧法)と同様にして測定したときの耐水圧は、1kPa以上1000kPa以下であることが好ましい。
【0035】
また、防水通気フィルタ1を開口を有する金属板に前記開口を塞ぐように貼り付けた後に、JIS P8117と同様にして測定したときの測定値を642mm2の面積に換算して得たガーレー数は、0.5秒/100mL以上500秒/100mL以下であることが好ましい。
【0036】
本実施形態の防水通気フィルタ1では、樹脂フィルム2に形成された貫通孔21により通気を可能としつつ、樹脂フィルム2上の処理層3により防水性を確保することができる。しかも、非多孔質の樹脂フィルム2を用いることにより、樹脂フィルム2上に形成された処理層3と両面テープ4との接着面積を大きく確保することができる。従って、本実施形態の防水通気フィルタ1では、両面テープ4と処理層3とを十分な接着力で接着して、両面テープ4を強固に保持することができる。
【0037】
ところで、従来のPTFE多孔質膜を用いた防水通気フィルタでは、厚さを厚くするためにPTFE多孔質膜を複数枚積層することがある。この場合、耐圧試験時にPTFE多孔質膜同士の界面から、PTFE多孔質膜単体の耐水圧よりも低い圧力で水が漏れることがある。これに対し、本実施形態の防水通気フィルム1では、厚さを厚くするには厚さの厚い樹脂フィルム2を用いるだけでよいため、耐水圧試験時の不具合を生じることがない。なお、厚さの厚い樹脂フィルム2に貫通孔21を形成するには、イオンビーム照射時に重イオンを高加速度で高密度に照射すればよい。
【0038】
さらには、PTFE多孔質膜は延伸により多孔質化されているので、PTFE多孔質膜を用いた防水通気フィルタでは引っ張り強度が低い。これに対し、本実施形態の防水通気フィルタ1は未延伸であるために、引っ張り強度が高い。つまり、本実施形態の防水通気フィルタ1によれば、加工性や外力に対する耐性の向上が期待できる。
【0039】
また、本実施形態の構成であれば、通気性支持材5を用いる場合に通気性支持材5と同じ素材の樹脂フィルム2を用いることができるため、例えば熱ラミネート時の相溶性を向上させて通気性支持材5と樹脂フィルム2との接着強度を向上させることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら制限されるものではない。
【0041】
(実施例1)
樹脂フィルムとして、PETからなる無孔のベースシートに、イオンビーム照射およびエッチングにより直径0.4μmの貫通孔を形成した厚さ23μmのサンプルA(オキシフェン社製Oxydisk)を用いた。
【0042】
サンプルAの樹脂フィルムの一方面に、通気性支持材としてPETからなる不織布を熱溶着により積層した後、樹脂フィルムの他方面に、フッ素系処理剤(信越化学社製X−70−029C)を塗布して乾燥させ、疎水性および撥油性を有する処理層を形成した。このようにして作製された積層体を直径10mmの円形に打ち抜き、打ち抜かれた積層体の処理層側の面の周縁部に、PETからなる基材の両面にアクリル系粘着剤が塗布された、内径5.5mm、外径10mmのリング状の両面テープを貼り付けて、防水通気フィルタを得た。
【0043】
(実施例2)
樹脂フィルムとして、PETからなる無孔のベースシートに、イオンビーム照射およびエッチングにより直径0.8μmの貫通孔を形成した厚さ22μmのサンプルB(オキシフェン社製Oxydisk)を用いた以外は実施例1と同様にして防水通気フィルタを得た。
【0044】
(実施例3)
樹脂フィルムとして、PETからなる無孔のベースシートに、イオンビーム照射およびエッチングにより直径1.0μmの貫通孔を形成した厚さ22μmのサンプルC(オキシフェン社製Oxydisk)を用いた以外は実施例1と同様にして防水通気フィルタを得た。
【0045】
(比較例1)
樹脂フィルムとして、PETからなる、厚さ25μmの無孔フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、通気性を有しない接着シートを得た。
【0046】
(比較例2)
樹脂フィルムの代わりに、厚さ15μm、平均孔径0.8μmのPTFE多孔質膜を用いた以外は実施例1と同様にして防水通気フィルタを得た。PTFE多孔質膜は、まずPTFE微粉末に液状潤滑剤を混合したものを押し出してシート状に成形し、ついでシート状成形体を圧延するとともに乾燥させた後に、PTFEの融点以下の280℃で縦方向に4.5倍、横方向に15倍に延伸して作製した。
【0047】
(接合力測定試験)
実施例および比較例の防水通気フィルタまたは接着シートに対して、金属板からなる筐体に貼り付けたときの接合力を測定する接合力測定試験を行った。まず、図3に示すように、防水通気フィルタまたは接着シートを、これらの構成要素である両面テープにより、直径3mmの開口が設けられた筐体に筐体の内側から開口を塞ぐように、換言すれば筐体の開口を通じて処理層が筐体の外部に面するように貼り付けた。防水通気フィルタまたは接着シートの筐体への貼り付けは、筐体の上に防水通気フィルタまたは接着シートを乗せた後に、防水通気フィルタまたは接着シートの上から質量2kgのロールを5mm/秒の速度で一往復させて行った。
【0048】
ついで、筐体に貼り付けられた防水通気フィルタまたは接着シートを、温度25℃、相対湿度65%の環境下で30分間エージングした。その後、直径1.1mmの端子を有するプッシュプルゲージ(アイコーエンジニアリング社製9502)を用い、筐体の外部から筐体の開口を通じてプッシュプルゲージの端子で防水通気フィルタまたは接着シートを押し上げ、防水通気フィルタまたは接着シートが剥がれ始めたときの押し上げ力を接合力として測定した。また、防水通気フィルタまたは接着シートが剥がれ始めたときには、どこで破壊が生じているかを確認した。
【0049】
さらに、耐久性を確認するために、筐体に貼り付けられた防水通気フィルタまたは接着シートを80℃の温水中に48時間浸漬し、その後にも接合力の測定を行った。これらの試験結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
比較例1,2では、両面テープと処理層との界面で破壊が起きている。これは、両面テープと処理層との接着力が弱いことを示している。これに対し、実施例1〜3では両面テープの内部で破壊が起きており、これから両面テープと処理層との接着力が高いことが分かる。また、PTFE多孔質膜を用いた比較例2では、温水浸漬後の接合力が約45%低下しているが、樹脂フィルムを用いた実施例1〜3では、温水浸漬後の接合力の低下が16%未満に抑えられ、温水浸漬後でも接合力が5N以上であった。
【0052】
(耐水圧試験およびガーレー試験)
次に、実施例および比較例の防水通気フィルタに対して、耐水圧試験およびガーレー試験を行った。まず、接合力試験のときと同様に、防水通気フィルタを筐体に接合した。ついで、JIS L1072−B(高水圧法)と同様にして、筐体の外側から100kPa/分で水圧をかけ、防水通気フィルタから水が漏れ出したときの圧力を耐水圧として測定した。
【0053】
ガーレー試験では、防水通気フィルタが接合された上記の筐体を、JIS P8117に規定されるガーレー試験機にセットし、100mLの空気が防水通気フィルタを通過するのに要する時間を測定した。その後、この測定値を、642mm2の面積に換算してガーレー数を算出した。
【0054】
それらの結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2から、樹脂フィルムを用いた実施例1〜3では、耐水圧も高く、通気度も高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の防水通気フィルタは、自動車電装部品、家電製品、太陽電池の他にも、例えば外灯などの屋外灯や電車等のランプにも使用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 防水通気フィルタ
2 樹脂フィルム
21 貫通孔
3 処理層
31 開口
4 両面テープ
5 通気性支持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気を確保しつつ水の浸入を防止するための防水通気フィルタであって、
非多孔質の樹脂フィルムであって該樹脂フィルムを厚さ方向に貫通する、0.01μm以上10μm以下の所定のサイズを有する複数の貫通孔が形成された樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムの厚さ方向の両面のうちの少なくとも一方の面上に、前記複数の貫通孔と対応する位置に開口を有するように形成された、疎水性および撥油性を有する処理層と、
前記樹脂フィルムの厚さ方向の両面のうちの一方の面の周縁部に前記処理層を挟んで貼着された環状の両面テープと、
を備える、防水通気フィルタ。
【請求項2】
前記複数の貫通孔は、密度が10〜1×108個/mm2の範囲のうちの特定の帯域に収まるように一様に分布している、請求項1に記載の防水通気フィルタ。
【請求項3】
前記樹脂フィルムの気孔率が50%以下である、請求項1または2に記載の防水通気フィルタ。
【請求項4】
前記所定のサイズに対する前記樹脂フィルムの厚さの比が1以上10000以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の防水通気フィルタ。
【請求項5】
前記樹脂フィルムは、アルカリ溶液、酸化剤溶液、または酸化剤を含むアルカリ溶液により分解する樹脂からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の防水通気フィルタ。
【請求項6】
前記樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートおよびポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の防水通気フィルタ。
【請求項7】
前記樹脂フィルムにおける前記両面テープが貼着された面と反対側の面に積層された通気性支持材をさらに備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の防水通気フィルタ。
【請求項8】
金属板からなる筐体に貼り付けたときの接合力が5N以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の防水通気フィルタ。
【請求項9】
開口を有する金属板に前記開口を塞ぐように貼り付けた後に、JIS L1072−A(低水圧法)またはJIS L1072−B(高水圧法)と同様にして測定したときの耐水圧が1kPa以上1000kPa以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の防水通気フィルタ。
【請求項10】
開口を有する金属板に前記開口を塞ぐように貼り付けた後に、JIS P8117と同様にして測定したときの測定値を642mm2の面積に換算して得たガーレー数が0.5秒/100mL以上500秒/100mL以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の防水通気フィルタ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載された防水通気フィルタを用いて筐体に設けられた開口を塞ぎ、前記防水通気フィルタを介して前記筐体の内部と外部の圧力差を解消する、防水通気フィルタの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−20280(P2012−20280A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63945(P2011−63945)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】