説明

防汚塗料用添加剤

【課題】 従来の各種防汚塗料に添加して、その水棲生物の付着抑制効果の持続期間を延長する防汚塗料用添加剤の提供。
【解決手段】 40〜60重量%の焼成珪藻土粉と、30〜50重量%のベントナイト粉に、3〜7重量%のミネラルスピリットを溶剤として加え、また、1.5〜3.5重量%のソルビタンモノオレートおよび1.5〜3.5重量%のソルビタンエステルを分散剤として加え、これらを混合してコロイダル化した防汚塗料用添加剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶,海上ブイ,航行安全浮標識,防波用テトラポット(登録商標),護岸壁,養殖用構造物,海洋資源掘削基礎構造物等への水棲生物の付着を抑制する防汚塗料に添加されて、当該防汚塗料の効果の持続期間を延長する防汚塗料用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の船底等の長期間水にさらされる没水部には、フジツボ,ムラサキガイ,ユウレイボヤ等の動物系または青藻や黒藻等の植物系の水棲生物が短期間で付着し繁殖して、その外観を損ねたり機能が害されるという問題があるが、特に船舶の場合、船底への水棲生物の付着による船速低下や燃費悪化等を防ぐため、付着した水棲生物を定期的に除去せざるを得ず、その作業に多大の費用と労力を要することとなっていた。
【0003】
そこで従来より、水棲生物の付着を抑制してその除去作業の労力を軽減しその費用を低減するために、亜酸化銅を含有させた防汚塗料を塗布しフジツボ等動物系水生生物の付着を抑制したり、あるいは有機系の防汚塗料を塗布し藻類等植物系の水棲生物の付着を抑制することが行われている。
【0004】
その防汚塗料は、塗膜自体が溶解してゆくことにより水棲生物の付着を防ぐ自己研磨型のものと、塗膜表面の合成高分子樹脂が加水分解により水中に均一に溶解していくことにより水棲生物の付着を防ぐ加水分解型のものとに大別されるが、近年普及しているFRP素材を使用した小型船舶には加水分解型のものが多く用いられるようになっている(たとえば、非特許文献1〜5参照)。
【非特許文献1】カナエ塗料株式会社、”主要製品一覧”、[online]、[平成17年3月23日検索]、インターネット<URL:http://www.kanaepaint.co.jp/syohin.htm>
【非特許文献2】株式会社タイムアソシエイツ、”主要製品(仕様・性能)”、[online]、[平成17年3月23日検索]、インターネット<URL:http://www.jsmea.or.jp/kaiin/time/>
【非特許文献3】有限会社海遊社、[online]、[平成17年3月23日検索]、インターネット<URL:http://www.kai-you.com/seajet.htm>
【非特許文献4】日本ペイント、”2003年のニュース”、[online]、2003年6月25日、[平成17年3月23日検索]、インターネット<URL:http://www.nipponpaint.co.jp/news/2003/wn0625.html>
【非特許文献5】神戸ペイント株式会社、”漁連ペイント”、[online]、[平成17年3月23日検索]、インターネット<URL:http://www.kpl.co.jp/gor2.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、その防汚塗料の溶解速度は海水温度の影響を大きく受けるもので、近年の世界的な海水温度の上昇等のために水棲生物付着を抑制する効果が薄れやすくなっているという問題があり、また、河川からの水が流入する入江や湾の汽水域でもその効果が薄れやすく、実際には、数ヶ月程度の短期間でフジツボ等が付着してしまっていた。
【0006】
そこで、本発明は、従来の防汚塗料に添加して、その水棲生物の付着抑制効果の持続期間を延長する防汚塗料用添加剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明防汚塗料用添加剤は、珪藻土粉に溶剤と分散剤とを加えて混合調整したものである。
【0008】
請求項2記載の本発明は、ベントナイト粉を配合した請求項1記載の防汚塗料用添加剤である。
【0009】
請求項3記載の本発明は、フライアッシュを配合した請求項1または2記載の防汚塗料用添加剤である。
【0010】
請求項4記載の本発明は、炭素粉を配合した請求項1,2または3記載の防汚塗料用添加剤である。
【0011】
請求項5記載の本発明は、セラミック粉を配合した請求項1,2,3または4記載の防汚塗料用添加剤である。
【0012】
請求項6記載の本発明は、上記珪藻土粉が、約1000℃で焼成した焼成珪藻土を粉砕して粒度2〜50μmの微粒子状にしたもので、SiO2を65〜80%含有している請求項1,2,3,4または5記載の防汚塗料用添加剤である。
【0013】
請求項7記載の本発明は、上記珪藻土粉が、風乾した非焼成珪藻土を粉砕して粒度2〜50μmの微粒子状にしたもので、SiO2を65〜80%含有している請求項1,2,3,4または5記載の防汚塗料用添加剤である。
【0014】
請求項8記載の本発明防汚塗料用添加剤は、40〜60重量%の焼成珪藻土粉と、30〜50重量%のベントナイト粉に、3〜7重量%のミネラルスピリットを溶剤として加え、また、1.5〜3.5重量%のソルビタンモノオレートおよび1.5〜3.5重量%のソルビタンエステルを分散剤として加え、これらを混合してコロイダル化してなる。
【0015】
請求項9記載の本発明防汚塗料用添加剤は、40〜70重量%の非焼成珪藻土粉と、20〜40重量%のフライアッシュ粉に、5〜10重量%のミネラルスピリットを溶剤として加え、また、3〜7重量%のソルビタンモノオレートおよび3〜7重量%のソルビタンエステルを分散剤として加え、これらを混合してコロイダル化してなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明防汚塗料用添加剤は珪藻土粉を含有しているから、これを防汚塗料に添加すれば、当該防汚塗料をそのまま使用する場合に比べて、水棲生物の付着抑制効果の持続期間を大幅に延長することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について実施例を挙げて詳しく説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
100g(50重量%)の焼成珪藻土粉と、80g(40重量%)のベントナイト粉に、10g(5重量%)のミネラルスピリットを溶剤として加え、また、5g(2.5重量%)のソルビタンモノオレートおよび5g(2.5重量%)のソルビタンエステルを分散剤として加え、これらを混合してコロイダル化し本発明に係る防汚塗料用添加剤aを0.2kg調製した。その配合を表1に示した。
【0019】
なお、上記焼成珪藻土粉の配合量は40〜60重量%の範囲で増減することができる。また、ベントナイト粉の配合量は、30〜50重量%の範囲で増減してもよいが、これを全く配合しないこととしてもよい。
また、溶剤および分散剤の配合量もたとえば1〜5重量%の範囲で適宜増減することができる。
【0020】
上記焼成珪藻土粉は、珪藻土を1000〜1500℃で焼成後、2〜50μm、好ましくは3〜5μmの球形微粒子状に破砕し粒度調整して得られたものである。これは多孔質ガラス体のもので、その成分としては、SiO2(熱酸化シリコン(ケイ素))を70.3%,Al2O3(酸化アルミニウム(アルミナ))を25.0%,TiO2(酸化チタン)を0.97%,Fe2O3(酸化鉄(三酸化二鉄))を1.51%,CaO(酸化カルシウム(生石灰))を0.25%,MgO(酸化マグネシウム)を0.52%,K2O(酸化カリウム)を1.19%,Na2O(酸化ナトリウム)を0.15%含有し、吸放湿特性,遠赤外線放射特性等に優れているものである。
【0021】
なお、焼成珪藻土粉は、上に示したものとは含有成分比を異にするものを用いてもよく、その粒度も適宜変更できる。
【0022】
上記ベントナイト粉は、止水性,吸着性,安定性,粘性等に富むものである。
【0023】
また、上記に加えて、炭素粉を2〜5重量%、または/および、セラミック粉を1〜3重量%配合するようにしてもよい。これにより微粒子状の上記珪藻土粉の分子間結合の安定性を向上させることができる。
【0024】
上記の防汚塗料用添加剤a0.2kgを、比重1.80,粘度85〜100KUの市販の加水分解型FRP船用防汚塗料P1(大日本塗料「シーブルーエース」,油性,色=ブルー)4kgに添加して混合し防汚塗料Aを得た(表2)。
【0025】
上記防汚塗料用添加剤aの防汚塗料P1に対する添加量は、適宜増減変更することができる。
【実施例2】
【0026】
上記実施例1で用いたのと同じ、本発明に係る防汚塗料用添加剤aを0.2kg、市販の防汚塗料P2(アサヒペイント「多用途ペイント」,水性,色=ブルー)4kgに添加して混合し防汚塗料Bを得た(表2)。
【0027】
上記防汚塗料用添加剤aの防汚塗料P2に対する添加量は、適宜増減変更することができる。
【実施例3】
【0028】
100g(50重量%)の非焼成珪藻土粉と、60g(30重量%)のフライアッシュ粉に、溶剤として20g(10重量%)のミネラルスピリットを、また、分散剤として10g(5重量%)のソルビタンモノオレートおよび10g(5重量%)のソルビタンエステルを加えて混合しコロイダル化し、本発明に係る防汚塗料用添加剤bを0.2kg調製した。その配合を表1に示した。
【0029】
なお、上記非焼成珪藻土粉の配合量は40〜70重量%の範囲で増減できる。また、フライアッシュ粉の配合量は、5重量%〜45重量%の範囲で増減してもよいが、これを全く配合しないこととしてもよい。
ソルビタンモノオレートおよびソルビタンエステルは、それぞれ3〜7重量%の範囲で増減できる。
【0030】
上記非焼成珪藻土粉は、珪藻土を常温で風乾させて粉砕した粒度2〜50μm、好ましくは3〜5μmの球形微粒子状のものである。それは、SiO2(熱酸化シリコン(ケイ素))を79.3%,Al2O3(酸化アルミニウム(アルミナ))を10.4%,TiO2(酸化チタン)を0.54%,Fe2O3(酸化鉄(三酸化二鉄))を4.12%,CaO(酸化カルシウム(生石灰))を0.86%,MgO(酸化マグネシウム)を1.24%,K2O(酸化カリウム)を1.46%,Na2O(酸化ナトリウム)を0.88%含有し、吸放湿特性,遠赤外線放射特性等に優れているものである。
【0031】
また、上記フライアッシュ粉は、粒度1〜20μm、好ましくは7μmに粉砕されたもので、それはSiO2(熱酸化シリコン(ケイ素))を70.9%,Al2O3(酸化アルミニウム(アルミナ))を19.9%,TiO2(酸化チタン)を1.08%,Fe2O3(酸化鉄(三酸化二鉄))を3.14%,CaO(酸化カルシウム(生石灰))を0.96%,MgO(酸化マグネシウム)を0.74%,K2O(酸化カリウム)を1.05%,Na2O(酸化ナトリウム)を0.28%含有し、珪藻土粉に似た孔隙構造を有するとともにポゾラン活性を呈し、分子間の安定結合作用による長期強度保持作用や通気性に優れたものである。
【0032】
なお、焼成珪藻土粉およびフライアッシュ粉としては、上に示したものとは含有成分比を異にするものを用いてもよい。
【0033】
この防汚塗料用添加剤b0.2kgを、上記実施例1と同じく、4kgの防汚塗料P1に添加して混合し防汚塗料Cを得た(表2)。
【0034】
なお、防汚塗料用添加剤bの防汚塗料P1に対する添加量は、適宜増減変更することができる。
【実施例4】
【0035】
上記実施例1および2で用いたのと同じ、本発明に係る防汚塗料用添加剤aを0.2kg、上記防汚塗料P1およびP2とは別製品である市販の防汚塗料P3(4kg)に添加して混合し防汚塗料Dを得た(表2)。
【0036】
上記防汚塗料用添加剤aの防汚塗料P3に対する添加量は、適宜増減変更することができる。
【0037】
なお、上記実施例1〜3における、防汚塗料用添加剤aまたはbの添加によって、防汚塗料P1〜P3の色を変化させたりその組成に悪影響を与えることはなかった。また、防汚塗料用添加剤aまたはbをその他の市販の防汚塗料に添加した場合も、当該防汚塗料の色を変化させたりその組成に悪影響を与えることはなかった。
〈比較例1〉
【0038】
上記防汚塗料P1〜P3とは別製品である市販の防汚塗料P4を用意した。これには本発明防汚塗料用添加剤を添加しなかった(表2)。
〈比較例2〉
【0039】
上記防汚塗料P1〜P4とは別製品であるアメリカ製の市販の防汚塗料P5を用意した。これには本発明防汚塗料用添加剤を添加しなかった(表2)。
〈比較例3〉
【0040】
上記防汚塗料P1〜P5とは別製品であるカナダ製の市販の防汚塗料P6を用意した。これには本発明防汚塗料用添加剤を添加しなかった(表2)。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
<防汚塗料の性能評価実験1>
上記の各実施例に係る4種類の防汚塗料A〜D、および、上記の各比較例に係る3種類の防汚塗料P4〜P6計7種類を、それぞれ300mm×150mmのFRP板の一面に、刷毛とローラーを用いて1回塗りで塗布し4時間乾燥させた。いずれのFRP板についても、反対面には塗料を塗布しなかった。図1は、実験開始前の各FRP板の塗料塗布面の状態を示した写真である。
そして、上記FRP板を水中に10〜15cmほど沈めた状態にして船着き場に係留し、その経過を観察した。
【0044】
「実験開始から14日経過時」
防汚塗料P4を塗布したFRP板の塗料塗布面には、1mm大のフジツボが50ヶほど付着していた。
また、防汚塗料P5を塗布したFRP板の塗料塗布面には、1mmほどの緑藻が付着していた。
その他のFRP板の塗料塗布面には、水棲生物の付着は認められなかった。
【0045】
「実験開始から35日経過時」
防汚塗料P4を塗布したFRP板に付着していたフジツボは5mm大にまで成長しており、また、このFRP板の塗料塗布面全面に藻が付着していた。
防汚塗料P5を塗布したFRP板には、その塗料塗布面全面に1mm大のフジツボが付着し、藻も20mmに成長していた。
防汚塗料P6を塗布したFRP板の塗料塗布面には、スライムが付着し、当該塗料の色が褪せていた。
防汚塗料Aを塗布したFRP板および防汚塗料Cを塗布したFRP板の塗料塗布面には、全く付着物は認められかった。
防汚塗料Bを塗布したFRP板には、その塗料塗布面全面に若干の水垢,スライムが付着していた。
防汚塗料Dを塗布したFRP板には、その塗料塗布面下部にスライムが若干付着していたが、フジツボの付着は認められかった。
【0046】
「実験開始から43日経過時」
防汚塗料P4を塗布したFRP板には、塗料塗布面全面にフジツボ(5mm大)が付着し藻も全面に付着して、もとの防汚塗料の色が全く看取できなくなっていた。
防汚塗料P5を塗布したFRP板には、塗料塗布面全面にフジツボと藻が付着し、もとの防汚塗料の色がほとんど看取できなかった。
防汚塗料P6を塗布したFRP板の塗料塗布面には、フジツボは付着していなかったが、スライムが付着し、また全体に防汚塗料の色が褪せていた。
防汚塗料A,C,およびDを塗布した各FRP板の塗料塗布面には、フジツボ,藻,スライムの付着は全く認められなかった。
防汚塗料Bを塗布したFRP板の塗料塗布面には、若干の水垢,スライムが付着していた。
【0047】
「実験開始から50日経過時」
防汚塗料P4〜P6を塗布した各FRP板の塗料塗布面は、いずれもフジツボが付着していたが、防汚塗料A〜Dを塗布した各FRP板の塗料塗布面は、若干の水垢,スライムが付着していたもののフジツボ,藻の付着は全く認められなかった。また、防汚塗料A〜Dを塗布した各FRP板の塗料塗布面は、防汚塗料P6を塗布したもののような塗料自体の色褪せも認められなかった。
このときの各FRP板の塗料塗布面の状態を図2の写真に示す。
【0048】
なお、上記各FRP板の塗料塗布面の反対面には塗料を塗布しなかったので、いずれのものも実験開始より14日を経過した頃からフジツボが付着しはじめ、30日経過時にはその全面に付着していた。
【0049】
この実験により、従来市販の各種の防汚塗料に本発明防汚塗料用添加剤を添加することで、当該防汚塗料の効果の持続期間を延長できることが確認された。
【0050】
<防汚塗料の性能評価実験2>
2トンのFRP製つり船の船底に付着した貝類、藻類を除去して、この船底を水洗いした後乾燥させた。
そして、経過観察の便宜のために、その船底を図3に示したブロック1〜6の6つのブロックに分けるとともに、そのブロック1〜3には防汚塗料Aを、刷毛とローラーを用いて1mあたり180〜185g、ウェット膜厚80μm(ドライ膜厚40μm)にして1回塗りで塗布した。
また、ブロック4〜6には防汚塗料Bを同じくウェット膜厚80μm(ドライ膜厚40μm)にして1回塗りで塗布し、4時間乾燥させた。
その後、船体を着水させ船着き場に長期係留し経過を観察した。
なお、ここで使用した防汚塗料A,Bは、上記の通り焼成珪藻土粉とベントナイト粉を配合しているもので、防汚塗料Aは油性の、防汚塗料Bは水性のものである。
【0051】
「実験開始から6ヶ月経過時」
ブロック1〜3には、水垢が付着していたが、貝類,藻類の付着は認められなかった。
ブロック4〜6にはも、ヌルヌルした水垢が付着していたが、貝類,藻類の付着は認められなかった。
【0052】
「実験開始から12ヶ月経過時」
ブロック1〜3には、長期係留による水垢が付着していたが、貝類,藻類の付着は認められなかった。
ブロック4〜6についても、実験開始から6ヶ月経過時と同様、水垢の付着はあったが、貝類,藻類の付着は認められなかった。
【0053】
「実験開始から18ヶ月経過時」
ブロック1〜3については、ブロック1の船首側舳部は波の影響で水垢が黒ずんでいたが、その他の部位には貝類,藻類の付着は認められなかった。
また、ブロック6の船尾寄りの部分には、1〜1.5mm大のフジツボが32〜35個付着していた。
【0054】
「実験開始から24ヶ月経過時」
ブロック3の船尾部ヘリに、1mm以下のフジツボが2個付着していた。
ブロック4の船首寄りの部分以外の部分およびブロック5,6の全面に5mm大の成長したフジツボが重なり合って付着していた。
【0055】
このように、防汚塗料Aを塗布したブロック1〜3には、長期間の係留であっても少なくとも18ヶ月もの長期間、水垢の付着はあっても貝類(フジツボ)の付着はほとんど見られなかった。
ちなみに、実験開始から28ヶ月経過後には、ブロック3の船尾側から、2mm大のフジツボ貝が付着し始めた。
【0056】
防汚塗料Bを塗布したブロック4〜6にも、少なくとも15ヶ月程度は貝類の付着が認められなかったが、18ヶ月経過後には塗料の剥離に伴ってフジツボの付着が始まった。
【0057】
従来の防汚塗料は、これを単体でそのまま船底に塗布した場合、早くて3ヶ月、遅くとも6ヶ月程度でフジツボ等が付着してしまっており、通常6ヶ月程度ごとに付着したフジツボ等を除去して防汚塗料を塗り直す必要が生じていたが、これに対して、従来の防汚塗料に本発明防汚塗料用添加剤を添加すると、1回塗りであっても少なくとも1年は水棲生物付着抑制の効果が維持される。
したがって、船底に付着した水棲生物の除去作業および再度の防汚塗料の塗布作業を行う頻度を減らすことができ、その作業費用の節減と作業労力の低減を図ることができる。
【0058】
<防汚塗料の性能評価実験3>
3トンのFRP製つり船の船底に付着した貝類、藻類を除去し、その船底を水洗いした後乾燥させ全面に防汚塗料Cを塗布し6時間乾燥させた。
その後、船体を海上に着水させて週3日ないし5日運行しその経過を観察した。
なお、ここで使用した防汚塗料Cは、上記の通り非焼成珪藻土粉とフライアッシュ粉を配合しているものである。
【0059】
「実験開始から6ヶ月経過時」
船体をクレーンで吊り上げて船底の状態を検証したが、貝類,藻類とも付着は認められなかった。
【0060】
「実験開始から12ヶ月経過時」
再び船体をクレーンで吊り上げて船底の状態を検証したが、貝類,藻類等、水棲生物の付着は全く認められなかった。
ただし、防汚塗料Cを塗布しなかったスクリュー回転羽の固定部には5〜8mm大のフジツボが多数、びっしりと付着していた。
【0061】
「実験開始から16ヶ月経過時」
船底への貝類,藻類の付着は依然として認められなかった。ただし、エンジン固定部の金属部分の、防汚塗料Cを塗布しなかった部位にはフジツボが隙間無く付着していた。
【0062】
上記の各性能評価実験より明らかなとおり、本発明防汚塗料用添加剤を添加した防汚塗料を船舶の船底に塗布すれば、水棲生物の付着抑制効果の持続期間を、防汚塗料を単体でそのまま塗布した場合に比べて大幅に延長することができる。
これは、本発明防汚塗料用添加剤に配合されている珪藻土粉が多孔質で吸放熱特性に優れたものであり、船底にたまった熱を効率的に吸収して放出することにより、当該防汚塗料に接触する海水温度の上昇を抑制する、という温度コントロールの作用を有するからであると考えられる。
【0063】
したがって、海水温度上昇の影響により水棲生物の付着抑制効果の持続期間が短縮されてしまう従来の防汚塗料も、本発明防汚塗料用添加剤を添加することで、その効果の持続期間を簡単にしかも大幅に延長することができる。
【0064】
また、船舶の船底だけでなく、海上ブイ,航行安全浮標識,防波用テトラポット(登録商標),護岸壁,養殖用構造,海洋資源掘削基礎等、鋼板,セメント,コンクリート等製の各種の構造物の没水部表面に、本発明防汚塗料用添加剤を添加した防汚塗料を塗布すれば、その塗布した部分の水棲生物の付着を長期にわたって抑制できる。
【0065】
そのほか、本発明防汚塗料用添加剤を添加した防汚塗料を、入江や湾に据え付けられる防波用テトラポット(登録商標)や護岸壁等のコンクリート構造物の没水部表面に塗布すれば、コンクリートから溶出するアルカリ成分の水中への溶解を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明防汚塗料用添加剤の性能評価実験1で用いたFRP板の実験開始前の状態を示した写真である。
【図2】上記FRP板の実験開始から50日経過時の状態を示した写真である。
【図3】本発明防汚塗料用添加剤の性能評価実験2において経過観察の便宜のために行った、船底のブロック分けの様子を示した底面図である。
【符号の説明】
【0067】
a,b 防汚塗料用添加剤
A,B,C,D 防汚塗料用添加剤を添加した防汚塗料
P1〜P6 従来の防汚塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪藻土粉に溶剤と分散剤とを加えて混合調整したことを特徴とする防汚塗料用添加剤。
【請求項2】
ベントナイト粉を配合したことを特徴とする請求項1記載の防汚塗料用添加剤。
【請求項3】
フライアッシュを配合したことを特徴とする請求項1または2記載の防汚塗料用添加剤。
【請求項4】
炭素粉を配合したことを特徴とする請求項1,2または3記載の防汚塗料用添加剤。
【請求項5】
セラミック粉を配合したことを特徴とする請求項1,2,3または4記載の防汚塗料用添加剤。
【請求項6】
上記珪藻土粉が、約1000℃で焼成した焼成珪藻土を粉砕して粒度2〜50μmの微粒子状にしたもので、SiO2を65〜80%含有していることを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の防汚塗料用添加剤。
【請求項7】
上記珪藻土粉が、風乾した非焼成珪藻土を粉砕して粒度2〜50μmの微粒子状にしたもので、SiO2を65〜80%含有していることを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の防汚塗料用添加剤。
【請求項8】
40〜60重量%の焼成珪藻土粉と、30〜50重量%のベントナイト粉に、3〜7重量%のミネラルスピリットを溶剤として加え、また、1.5〜3.5重量%のソルビタンモノオレートおよび1.5〜3.5重量%のソルビタンエステルを分散剤として加え、これらを混合してコロイダル化してなることを特徴とする防汚塗料用添加剤。
【請求項9】
40〜70重量%の非焼成珪藻土粉と、20〜40重量%のフライアッシュ粉に、5〜10重量%のミネラルスピリットを溶剤として加え、また、3〜7重量%のソルビタンモノオレートおよび3〜7重量%のソルビタンエステルを分散剤として加え、これらを混合してコロイダル化してなることを特徴とする防汚塗料用添加剤。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−291085(P2006−291085A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115534(P2005−115534)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(305005188)
【出願人】(305005199)
【Fターム(参考)】