説明

防汚塗料組成物、該組成物を用いて形成される防汚塗膜、該塗膜を表面に有する塗装物、該塗膜を形成する防汚処理方法、および防汚塗膜形成用キット

【課題】本発明は、防汚性能に優れた塗膜を形成でき、且つ、環境安全性の高い防汚塗料組成物を提供する。
【解決手段】(A)架橋反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)縮合反応用触媒としてのアルミニウム化合物、および
(C)シリコーンオイル
を含有する防汚塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で使用または存在する物に水棲汚損生物が付着し育成するのを長期にわたって防止するための防汚塗料組成物、該防汚塗料組成物を用いて形成される防汚塗膜、該塗膜を表面に有する塗装物、該塗膜を形成する防汚処理方法、および防汚塗膜形成用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
海、河川、湖沼等の水中には、フジツボ、ホヤ、セルプラ、ムラサキイガイ、カラスガイ、フサコケムシ、アオノリ、アオサ等の水棲汚損生物が多数生息している。
【0003】
従来から、船舶;漁網類(養殖網、定置網等)、漁網付属具等の漁業具;突堤、テトラポット、港湾施設、ブイ、パイプライン、橋梁、発電所の導水管、海底基地、海底油田掘削設備等の水中構造物等の水中で使用または存在する物に上記水棲汚損生物が付着するという問題がある。具体的に、船舶等が長期間にわたって水中に浸っていると、水との接触部分に上記水棲汚損生物が付着し生育して、船速の低下、水流量の低下等を引き起こし、経済的および資源的に大きな損失をもたらすことが知られている。そこで、従来から水棲汚損生物の付着を防止するため、防汚塗料を塗布することにより上記問題の解消を図る検討がされてきた。
【0004】
例えば、上記防汚塗料としてトリアルキルスズ化合物等の防汚性化合物を配合した防汚塗料が従来より用いられている。
【0005】
しかしながら、上記防汚塗料は、防汚性に非常に優れているものの、毒性が高く、安全性や環境への影響に関して懸念があった。
【0006】
そこで、無毒性の防汚塗料としてシリコーンゴム単独またはシリコーンゴムとシリコーンオイルとの混合物の塗膜を形成するシリコーンゴム系防汚塗料が提案されている(特許文献1〜4)。
【0007】
しかしながら、これらの防汚塗料には、硬化触媒としてジアルキルスズ化合物が使用されており、その使用量は極僅かであるが、環境保全の点からは使用しないことが望まれている。
【特許文献1】特開昭51−96830号公報
【特許文献2】特公昭56−26272号公報
【特許文献3】特開昭63−43973号公報
【特許文献4】特開平3−255169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、水中において、防汚性能に優れた塗膜を形成でき、且つ、環境安全性の高い防汚塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、オルガノポリシロキサンの縮合反応用触媒として、無毒性である特定の触媒を使用することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の防汚塗料組成物、該組成物を用いて形成される防汚塗膜、該塗膜を表面に有する塗装物、該塗膜を形成する防汚処理方法、および防汚塗膜形成用キットに係る。
1. (A)架橋反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)縮合反応用触媒としてのアルミニウム化合物、および
(C)シリコーンオイル
を含有する防汚塗料組成物。
2. オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対して、アルミニウム化合物(B)を0.01〜20重量部含有し、シリコーンオイル(C)を10〜200重量部含有する上記項1に記載の防汚塗料組成物。
3. アルミニウム化合物(B)が、一般式[1]:
Al(OR1 [1]
(式中、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R1は同一または異なっていてもよい。)
で表されるトリアルコキシアルミニウムに、一般式[2]:
HO−R2−OH [2]
(式中、R2は炭素原子数2〜10のアルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基である。)
で表されるジオール化合物、および/または、一般式[3]:
HO−R3−Y [3]
(式中、R3は炭素原子数2〜10のアルキレン基であり、Yは式:−OR4で示される基であるか、または式:−NR56で示される基であり、R4は炭素原子数1〜10のアルキル基またはアリール基であり、R5およびR6では同一または異なって水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基である。)
で表されるアルコール化合物を反応させて得られるアルミニウム化合物である上記項1または2に記載の防汚塗料組成物。
4. アルミニウム化合物(B)が、一般式[4]
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは炭素原子数1〜10の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基であり、Rは炭素原子数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素原子数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基であり、nは1または2であり、nが2のとき、2つのRは相互に同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるアルミニウム化合物である上記項1または2に記載の防汚塗料組成物。
5. アルミニウム化合物(B)が、一般式[5]
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R、R10、R11およびR12は相互に同一または異なって、炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、nは0〜2の整数であり、nが2のとき、2つのRは相互に同一であっても、異なっていてもよい。)
で表されるアルミニウム化合物である上記項1または2に記載の防汚塗料組成物。
6. 上記項1〜5のいずれかに記載の防汚塗料組成物を用いて被塗膜形成物の表面に防汚塗膜を形成する防汚処理方法。
7. 上記項1〜5のいずれかに記載の防汚塗料組成物を用いて形成される防汚塗膜。
8. 上記項7に記載の防汚塗膜を表面に有する塗装物。
9. 水分の存在下、架橋反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン(A)および縮合反応用触媒としてのアルミニウム化合物(B)を混合してオルガノポリシロキサンゴムを製造し、次いで、該オルガノポリシロキサンゴムとシリコーンオイル(C)とを混合することにより得られる防汚塗料組成物。
10. (1)架橋反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン(A)を含有する容器、および
(2)縮合反応用触媒としてのアルミニウム化合物(B)を含有する容器
を含み、且つ、シリコーンオイル(C)が、該容器(1)および/または該容器(2)に含まれる、防汚塗膜形成用キット。

防汚塗料組成物
本発明の防汚塗料組成物は、
(A)架橋反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)縮合反応用触媒としてのアルミニウム化合物、および
(C)シリコーンオイル
を含有する。
【0015】
上記アルミニウム化合物(B)を含有させることにより、上記オルガノポリシロキサン(A)からオルガノポリシロキサンゴムを好適に形成でき、長期間、防汚効果を好適に発揮できる防汚性能に優れた塗膜を形成できる。また、本発明の組成物は、硬化触媒としてジアルキルスズ化合物の代わりにアルミニウム化合物を含有するものであり、環境安全性に優れる。
【0016】
本発明の組成物は、一液型の防汚塗料として使用でき、作業性に優れる。
【0017】
<オルガノポリシロキサン(A)>
オルガノポリシロキサン(A)は、分子鎖中のケイ素原子上に、架橋反応性官能基を少なくとも1個有し、さらに、該架橋反応性官能基以外の有機基を有するものである。
【0018】
上記架橋反応性官能基としては、例えば、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基等が挙げられる。
【0019】
上記有機基としては、一般的に、オルガノポリシロキサンが有する有機基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;ベンジル基などのアラルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
【0020】
オルガノポリシロキサン(A)は、後述するアルミニウム化合物(B)の存在下で、且つ水分(空気中の水分であってもよい)の存在下、縮合反応してオルガノポリシロキサンゴムを形成する。具体的に、上記オルガノポリシロキサン(A)中の架橋反応性官能基が、他のオルガノポリシロキサン(A)の架橋反応性官能基や架橋剤中の加水分解性基と縮合反応することによりシリコーンゴムを形成し、被膜となる。
【0021】
かかる縮合反応における反応温度は、通常80℃以下、好ましくは50℃以下である。
【0022】
本発明の組成物中では、上記オルガノポリシロキサン(A)が、予めオルガノポリシロキサンゴムを形成していてもよい。このような組成物としては、例えば、水分の存在下、上記オルガノポリシロキサン(A)および上記アルミニウム化合物(B)を混合してオルガノポリシロキサンゴムを製造し、次いで、該オルガノポリシロキサンゴムとシリコーンオイル(C)とを混合することにより得られる防汚塗料組成物が挙げられる。
【0023】
上記オルガノポリシロキサン(A)としては、従来のシリコーンゴム系防汚塗料の被膜形成成分として使用されているものを用いることができる。具体的に、上記オルガノポリシロキサン(A)は、反応形式により脱アセトンタイプ、脱アルコールタイプ、脱オキシムタイプ、脱酢酸タイプ等に分類される。本発明では、上記オルガノポリシロキサン(A)として同一タイプのものを用いてもよいし、異なるタイプのものを二種以上で併用して用いることもできる。
【0024】
上記オルガノポリシロキサン(A)は、その物性によっては任意の溶媒で希釈して使用してもよい。上記溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等を用いることができる。
【0025】
上記オルガノポリシロキサン(A)およびその希釈物の粘度は、500〜100,000mPa・sが好ましく、1,000〜80,000mPa・sがより好ましい。粘度は、上記溶媒を用いて希釈したり、二種以上のオルガノポリシロキサン(A)を任意の割合で混合することにより調整できる。
【0026】
オルガノポリシロキサン(A)の市販品としては、KE−40RTV、KE−41、KE−42、KE−42RTV、KE−42S、KE−44、KE−44RTV、KE−45、KE−45TS、KE−45TSRTV、KE−441、KE−445、KE−45TS、KE−47、KE−48、KE−66、KE−348、KE−3479、KE−347、KE−118、KE−347、KE−402、KE−420、KR−2706、KE−4348、KE−66RTV、KE−1251、KE−1253、KE−3490、KE−3491、KE−4525、KE−4866、FE123(以上、信越化学工業社製)、SE5004、SE5007、SE5060、SE5070、SE5400、SE9140、SH237、SH780(以上、東レ・ダウコーニング社製)、シラシール3FW、SILASTIC739RTV、RTV3110、SE738(以上、ダウコーニング社製)、TSE371、トスシール380(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、ベルガンC、FSXR−2622(以上、ダウコーング社製)、Rhodorsil48V(以上、ローヌプーラン社製)、Silicoset105(以上、I.C.I社製)等が挙げられる。
【0027】
<アルミニウム化合物(B)>
本発明の組成物は、前記オルガノポリシロキサン(A)の硬化反応(オルガノポリシロキサンゴムの形成)を促進するための縮合反応用触媒としてアルミニウム化合物(B)を含有する。縮合反応用触媒としてアルミニウム化合物(B)を用いることにより、環境安全性の高い防汚塗料組成物を得ることができる。また、形成される防汚塗膜は、所望の防汚性能を効果的に発揮することができる。
【0028】
上記アルミニウム化合物(B)としては、特に、以下の(B−1)〜(B−5)からなる群から選ばれる少なくとも一種のアルミニウム化合物を用いることが好ましい。
【0029】
[アルミニウム化合物(B−1)、(B−2)、(B−3)]
本発明の組成物は、アルミニウム化合物(B)として、一般式[1]:
Al(OR1 [1]
(式中、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R1は同一または異なっていてもよい。)
で表されるトリアルコキシアルミニウム(トリアルコキシアルミニウム[1])に、一般式[2]:
HO−R2−OH [2]
(式中、R2は炭素原子数2〜10のアルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基である。)
で表されるジオール化合物(ジオール化合物[2])、および/または、一般式[3]:
HO−R3−Y [3]
(式中、R3は炭素原子数2〜10のアルキレン基であり、Yは式:−OR4で示される基であるか、または式:−NR56で示される基であり、R4は炭素原子数1〜10のアルキル基またはアリール基であり、R5およびR6では同一または異なって水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基である。)
で表されるアルコール化合物(アルコール化合物[3])を反応させて得られるアルミニウム化合物を含有することが好ましい。
【0030】
なお、本明細書では、トリアルコキシアルミニウム[1]とジオール化合物[2]との反応生成物をアルミニウム化合物(B−1)とし、トリアルコキシアルミニウム[1]とアルコール化合物[3]との反応生成物をアルミニウム化合物(B−2)とし、トリアルコキシアルミニウム[1]とジオール化合物[2]とアルコール化合物[3]との反応生成物をアルミニウム化合物(B−3)とする。
【0031】
1で示される炭素原子数1〜10のアルキル基としては、直鎖または分岐していてもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert―アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素原子数1〜4の炭化水素基である。さらに好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基である。
【0032】
上記トリアルコキシアルミニウム[1]としては、例えば、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム、トリsec−ブトキシアルミニウム、トリtert−ブトキシアルミニウム、トリペンルオキシアルミニウム、トリヘキシルオキシアルミニウム、トリへプチルオキシアルミニウム、トリオクチルオキシアルミニウム、トリノニルオキシアルミニウム、トリデシルオキシアルミニウム等が挙げられる。特に、トリイソプロポキシアルミニウムが好ましい。
【0033】
で示される炭素原子数2〜10のアルキレン基としては、炭素原子数2〜10の直鎖、分岐または環状のアルカンの異なる炭素原子上の2個の水素原子を除いて得られる2価の基が挙げられる。該炭素原子数2〜10の直鎖、分岐または環状のアルカンとしては、例えば、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。好ましくは、炭素原子数4〜8の直鎖または分岐のアルカンの1位と3位の位置にある炭素原子上の2個の水素原子を除いて得られる2価の基が挙げられる。
【0034】
で示される炭素原子数2〜10のアルケニレン基としては、炭素原子数2〜10の直鎖、分岐または環状のアルケンの異なる炭素原子上の2個の水素原子を除いて得られる2価の基が挙げられる。該炭素原子数2〜10の直鎖、分岐または環状のアルケンとしては、例えば、エチレン、プロペン、イソプロペン、シクロプロペン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、イソペンテン、シクロペンテン、ヘキセン、イソヘキセン、シクロヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン等が挙げられる。
【0035】
で示される炭素原子数2〜10のアルキニレン基としては、炭素原子数2〜10の直鎖、分岐または環状のアルキンの異なる炭素原子上の2個の水素原子を除いて得られる2価の基が挙げられる。該炭素原子数2〜10の直鎖、分岐または環状のアルキンとしては、例えば、アセチレン、プロピン、1−ブチン、2−ブチン、1−ペンチン、2−ペンチン、1−イソペンチン、1−ヘキシン、2−ヘキシン、1−イソヘキシン、2−イソヘキシン、ヘプチン、オクチン、ノニン、デシン等が挙げられる。
【0036】
上記ジオール化合物[2]としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール 、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、cis−2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール 、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。特に、2−メチル−2,4−ペンタンジオールが好ましい。
【0037】
で示される炭素原子数2〜10のアルキレン基としては、炭素原子数2〜10の直鎖、分岐または環状のアルカンの異なる炭素原子上の2個の水素原子を除いて得られる2価の基が挙げられる。該炭素原子数2〜10の直鎖、分岐または環状のアルカンとしては、例えば、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。好ましくは炭素原子数2〜6のアルキレン基であり、特に好ましくはエチレン基である。
【0038】
で示される炭素原子数1〜10のアルキル基としては、直鎖または分岐していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert―アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素原子数1〜4の炭化水素基である。さらに好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基である。
【0039】
で示されるアリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、インデニル基、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基があげられる。好ましくは炭素原子数6〜10のアリール基である。さらに好ましくはフェニル基である。
【0040】
およびRで示される炭素原子数1〜10のアルキル基としては、直鎖または分岐または環状であってよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数1〜10直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。好ましくは、炭素原子数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基である。さらに好ましくはメチル基である。
【0041】
上記アルコール化合物[3]としては、例えば2−メトキシエタノール 、2−エトキシエタノール 、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールモノベンジルエーテル、2−フェノキシエタノール、2−アミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−(ベンジルアミノ)エタノール、2−ジメチルアミノエタノール等が挙げられる。特に、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−ジメチルアミノエタノールが好ましい。
【0042】
上記アルミニウム化合物(B−1)〜(B−3)は、トリアルコキシアルミニウム[1]と反応させるジオール化合物[2]および/またはアルコール化合物[3]の当量数を変化させて、種々の化合物を製造することができる。
【0043】
例えば、上記トリアルコキシアルミニウム[1]1モルに対して、上記ジオール化合物[2]1〜3モル、および/または、アルコール化合物[3]1〜3モルを反応させてアルミニウム化合物(B−1)〜(B−3)を製造することができる。
【0044】
製造方法としては、例えば、不活性ガス雰囲気下、上記トリアルコキシアルミニウム[1]と上記ジオール化合物[2]および/または上記アルコール化合物[3]を加えて還流させた後、副生するアルコール(ROH)を減圧留去することによりアルミニウム化合物(B−1)〜(B−3)を得る方法が挙げられる。反応温度は一般に80〜120℃程度であり、反応時間は2〜6時間程度である。
【0045】
なお、加えるジオール化合物[2]および/またはアルコール化合物[3]の種類や当量数等に応じて、生成するアルミニウム化合物の化学構造は変化し、また混合物として存在する可能性があるため、本発明において得られるアルミニウム化合物を製造方法で規定することとした。
【0046】
アルミニウム化合物(B−1)は、上記トリアルコキシアルミニウム[1]1モルに対して、ジオール化合物[2]1〜3モルを反応させることにより製造できる。例えば、ジオール化合物[2]として2−メチル−2,4−ペンタンジオールを用いた場合には、主に下記(a)〜(c)で示されるアルミニウム化合物(B−1)が得られると考えられる。
【0047】
【化3】

【0048】
アルミニウム化合物(B−2)は、上記トリアルコキシアルミニウム[1]1モルに対して、上記アルコール化合物[3]1〜3モルを反応させることにより製造できる。例えば、下記(d)〜(g)で示されるアルミニウム化合物(B−2)が得られると考えられる。
【0049】
【化4】

【0050】
アルミニウム化合物(B−3)は、上記トリアルコキシアルミニウム[1]1モルに対して、上記ジオール化合物[2]1〜2モル、および、上記アルコール化合物[3]1〜2モルを反応させることにより製造できる。例えば、ジオール化合物[2]として2−メチル−2,4−ペンタンジオールを用いた場合には、下記(h)〜(i)で示されるアルミニウム化合物(B−3)が得られると考えられる。
【0051】
【化5】

【0052】
[アルミニウム化合物(B−4)]
本発明の組成物は、アルミニウム化合物(B)として、一般式[4]
【0053】
【化6】

【0054】
(式中、Rは炭素原子数1〜10の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基であり、Rは炭素原子数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素原子数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基であり、nは1または2であり、nが2のとき、2つのRは相互に同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるアルミニウム化合物(B−4)を含有することが好ましい。
【0055】
で示される炭素原子数1〜10の直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチルペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等が挙げられる。好ましくは、炭素原子数2〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基である。さらに好ましくはプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等である。
【0056】
で示されるアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、ベンジル基等が挙げられる。好ましくは炭素原子数6〜10のアリール基である。さらに好ましくはフェニル基で表される。
【0057】
で示されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。好ましくはベンジル基で表される。
【0058】
で示される炭素原子数1〜10の直鎖または分岐アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。好ましくは、炭素原子数1〜4の炭化水素基である。さらに好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0059】
で示される炭素原子数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペンルオキキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。好ましくは、炭素原子数2〜8の直鎖または分岐のアルキル基である。さらに好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基である。
【0060】
一般式[4]で表されるアルミニウム化合物のうち、特に、物性、安定性等の観点からn=2の化合物が好ましい。
【0061】
アルミニウム化合物(B−4)の具体例としては、n=2のとき、アルミニウムアセチルアセトネート・ジメチレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジエチレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジプロピレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジイソプロピレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジブチレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジイソブチレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジsec−ブチレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジtert−ブチレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジアミレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジイソアミレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジtert−アミレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジヘキシレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジヘプチレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジオクチレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジ2−エチルヘキシレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジシクロペンチレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジシクロへキシレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジフェニレート、アルミニウムアセチルアセトネート・ジベンジレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジメチレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジエチレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジプロピレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジブチレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジイソブチレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジsec−ブチレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジtert−ブチレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジアミレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジイソアミレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジtert−アミレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジヘキシレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジヘプチレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジオクチレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジ2−エチルヘキシレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジシクロペンチレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジシクロへキシレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジフェニレート、アルミニウムアルキル(C1〜C10)アセトアセテート・ジベンジレート等が挙げられる。
【0062】
n=1のとき、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)メチレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)エチレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)プロピレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)イソプロピレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)ブチレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)イソブチレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)sec−ブチレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)tert−ブチレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)アミレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)イソアミレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)tert−アミレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)ヘキシレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)ヘプチレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)オクチレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)2−エチルヘキシレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)シクロペンチレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)シクロへキシレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)フェニレート、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)ベンジレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)メチレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)エチレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)プロピレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)イソプロピレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)ブチレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)イソブチレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)sec−ブチレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)tert−ブチレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)アミレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)イソアミレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)tert−アミレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)ヘキシレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)ヘプチレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)オクチレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)2−エチルヘキシレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)シクロペンチレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)シクロへキシレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)フェニレート、アルミニウムビス(アルキル(C1〜C10)アセトアセテート)ベンジレート等が挙げられる。
【0063】
なお、上記アルキル(C1〜C10)とは、炭素原子数1〜10のアルキル基を意味し、好ましくは炭素原子数2〜8の直鎖または分岐のアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基である。
【0064】
[アルミニウム化合物(B−5)]
本発明の組成物は、アルミニウム化合物(B)として、一般式[5]
【0065】
【化7】

【0066】
(式中、R、R10、R11およびR12は相互に同一または異なって、炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、nは0〜2の整数であり、nが2のとき、2つのRは相互に同一であっても、異なっていてもよい。)
で表されるアルミニウム化合物(B−5)を含有することが好ましい。
【0067】
、R10、R11およびR12で示される炭素原子数1〜10の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert―アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基等の炭素原子数1〜5のアルキル基があげられる。さらに好ましくは、Rがイソプロピル基、ブチル基、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、イソアミル、tert―アミル、R10、R11およびR12が相互に同一または異なってメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルが挙げられる。
【0068】
一般式[5]で表されるアルミニウム化合物のうち、特に、物性、安定性、製造コストの観点からRがブチル基、R10、R11およびR12がイソプロピル基、n=2のものが好ましい。
【0069】
式[5]で表されるアルミニウム化合物の具体例としては、イソプロポキシビス(トリメチルシロキシ)アルミニウム、ブトキシビス(トリメチルシロキシ)アルミニウム、アミロキシビス(トリメチルシロキシ)アルミニウム、イソアミロキシビス(トリメチルシロキシ)アルミニウム、tert−アミロキシビス(トリメチルシロキシ)アルミニウム、イソプロポキシビス(トリイソプロピルシロキシ)アルミニウム、ブトキシビス(トリイソプロピルシロキシ)アルミニウム、アミロキシビス(トリイソプロピルシロキシ)アルミニウム、イソアミロキシビス(トリイソプロピルシロキシ)アルミニウム、tert−アミロキシビス(トリイソプロピルシロキシ)アルミニウム、ジイソプロポキシトリメチルシロキシアルミニウム、ジブトキシトリメチルシロキシアルミニウム、ジアミロキシトリメチルシロキシアルミニウム、ジイソアミロキシトリメチルシロキシアルミニウム、ジtert−アミロキシトリメチルシロキシアルミニウム、ジイソプロポキシトリエチルシロキシアルミニウム、ジブトキシトリエチルシロキシアルミニウム、ジアミロキシトリエチルシロキシアルミニウム、ジイソアミロキシトリエチルシロキシアルミニウム、ジtert−アミロキシトリエチルシロキシアルミニウム、ジイソプロポキシトリブチルシロキシアルミニウム、ジブトキシトリブチルシロキシアルミニウム、ジアミロキシトリブチルシロキシアルミニウム、ジイソアミロキシトリブチルシロキシアルミニウム、ジtert−アミロキシトリブチルシロキシアルミニウム、ジイソプロポキシトリイソプロピルシロキシアルミニウム、ジブトキシトリイソプロピルシロキシアルミニウム、ジアミロキシトリイソプロピルシロキシアルミニウム、ジイソアミロキシトリイソプロピルシロキシアルミニウム、ジtert−アミロキシトリイソプロピルシロキシアルミニウム、トリス(トリメチルシロキシ)アルミニウム、トリス(トリエチルシロキシ)アルミニウム、トリス(トリイソプロピルシロキシ)アルミニウム、トリス(トリブチルシロキシ)アルミニウム等が挙げられる。
【0070】
上記アルミニウム化合物(B−5)は、例えばトリアルコキシアルミニウムとトリアルキルシラノール(さらに必要に応じ他のアルコール)を、一般式[5]中のnが0、1、または2の化合物が得られるように所定のモル比で反応させることにより製造できる。典型的には、一般式[6]:
(RO)Al [6]
(式中、Rは前記に同じ。)
で表されるトリアルコキシアルミニウム(トリアルコキシアルミニウム[6])と、一般式[7]:
【0071】
【化8】

【0072】
(式中、R10、R11およびR12は前記に同じ。)
で表されるシラノール化合物(シラノール化合物[7])とを、一般式[5]におけるnが0、1、または2となるように反応させて製造することができる。具体的には、トリアルコキシアルミニウム[6]1モルに対し、シラノール化合物[7]を1モル反応させた場合n=2となり、シラノール化合物[7]を2モル反応させた場合n=1となり、シラノール化合物[7]を3モル反応させた場合n=0となる。
【0073】
上記アルミニウム化合物(B−5)の製造方法としては、例えば、上記トリアルコキシアルミニウム[6]および上記シラノール化合物[7]を撹拌混合した後、置換されて生じるアルコール(ROH)を減圧留去することにより目的のアルミニウム化合物(B−5)を得る方法が挙げられる。反応温度は一般に80〜120℃程度であり、反応時間は2〜4時間程度である。
【0074】
本発明の組成物中における上記アルミニウム化合物(B)の含有量は限定的ではないが、オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましく、0.03〜10重量部がより好ましい。アルミニウム化合物(B)の含有量が0.01重量部未満の場合、触媒能が十分発揮されないおそれがある。アルミニウム化合物(B)の含有量が20重量部を越える場合、それに伴うだけの触媒能の向上は見られず、かえって経済的に不利になる場合もある。
【0075】
本発明の組成物には、上記アルミニウム化合物(B)以外にも、必要に応じて、シリコーン硬化触媒として使用される化合物を含有させてもよい。該化合物としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、ナフテン酸ジルコニウム、テトラブチルオルソチタネート、2−エチルヘキサン酸スズ(II)、ネオデカン酸スズ(II)、2−エチルヘキサン酸ビスマス(III)、ネオデカン酸ビスマス(III)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。これら化合物は一種単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0076】
<シリコーンオイル(C)>
シリコーンオイル(C)は、本発明の組成物により形成した塗膜表面に浮き出して防汚性能を付与するための成分である。シリコーンオイル(C)は、上記オルガノポリシロキサン(A)の縮合反応により形成されるオルガノポリシロキサンゴムとの相溶性に優れる。そのため、本発明の組成物によれば、剥離等の生じにくい塗膜性能に優れた塗膜を好適に形成できる。
【0077】
上記シリコーンオイル(C)としては、シリコーンゴム系防汚塗料において従来から使用されているシリコーンオイルを使用できる。
【0078】
上記シリコーンオイル(C)の粘度が10〜100,000mm・sが好ましく、100〜5,000mm・sがより好ましい。
【0079】
また、シリコーンオイルはストレートシリコーンオイルと変性シリコーンオイルに区別されるが、本発明の組成物では、どちらも使用可能である。
【0080】
ストレートシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル等が挙げられる。
【0081】
ストレートシリコーンオイルの市販品としては、KF−50、KF−53、KF−54、KF−56、KF−96、(以上、信越化学工業社製品)、SH510、SH550、SH710(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製品)、DKQ8−779(以上、ダウコーニング社製品)、TSF451、TSF4300、TSF437、TSF400、TSF401、TSF484、TSF433、TSF431(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製品)等が挙げられる。
【0082】
変性シリコーンオイルは、変性の種類により、アミノ変性、カルボキシル変性、エポキシ変性、ポリエーテル変性、カルビノール変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸含有変性、フッ素変性等に分類されることがある。これらの変性シリコーンオイルのいずれも使用可能であるが、特に、アミノ変性、エポキシ変性またはポリエーテル変性のシリコーンオイルが好ましい。
【0083】
変性シリコーンオイルの市販品としては、アミノ変性シリコーンオイルの市販品としてSF8417(東レ・ダウコーニングシリコーン社製品)、ISI4700、ISI4701(東芝シリコーン社製品)、FZ3712、AFL−40(日本ユニカー社製品)、KF−8010、X−22−161、KF−8012(以上、信越化学工業(株)製)、TSF4700、TSF4701(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製品)等が挙げられ、カルボキシル変性シリコーンオイルの市販品としてX142−411(東芝シリコーン社製品)、SF8418(東レ・ダウコーニング社製品)、FXZ3707(日本ユニカー(社)製品)、X−22−162C(信越化学工業(株)製)等が挙げられ、エポキシ変性シリコーンオイルの市販品としてSF8411(東レ・ダウコーニングシリコーン社製品)、ISI4730、XI42−301(東芝シリコーン社製品)、L−9300、T−29(日本ユニカー社製品)、KF−105(以上、信越化学工業社製品)、TSF4730(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製品)等が挙げられ、ポリエーテル変性シリコーンオイルの市販品としてISI4460、ISI4445、ISI4446(東芝シリコーン社製品)、SH3746、SH8400、SH3749、SH3700(東レ・ダウコーニングシリコーン社製品)KF6009、X22−4822(信越シリコーン社製品)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4460(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製品)等が挙げられ、カルビノール変性シリコーンオイルの市販品としてX−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003、X−22−170DX、X−22−176(以上、信越化学工業社製品)等が挙げられる。
【0084】
本発明の組成物中における上記シリコーンオイル(C)の含有量は限定的ではないが、上記オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対して10〜200重量部が好ましく、50〜150重量部がより好ましい。該シリコーンオイル(C)の含有量が10重量部未満の場合、長期間、防汚効果を発揮できないおそれがある。該シリコーンオイル(C)の含有量が200重量部を越える場合、得られる塗膜の強度が低下し、防汚性を持続できないおそれがある。
【0085】
<架橋剤>
本発明の組成物には、必要に応じて、架橋剤を含有させてもよい。
【0086】
上記架橋剤は、上記オルガノポリシロキサン(A)を三次元的に架橋させてシリコーンゴムを生成させる。
【0087】
上記架橋剤としては、例えば、水分(空気中の水分であってもよい)の存在下に加水分解して上記オルガノポリシロキサン(A)中の架橋反応性官能基と反応する官能基を1分子中に2個以上有する多官能性シラン化合物を使用できる。該官能基としては、例えば、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メチルエチルケトキシム基、ジエチルケトキシム基等のケトキシム基;イソプロペニルオキシ基、1−エチル−2−メチルビニル基等のアルケニルオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基等のアルキルアミノキシ基等が挙げられる。
【0088】
上記多官能性シラン化合物は、上記官能基以外の有機基をさらに有していてもよい。該有機基としては、オルガノポリシロキサン(A)がケイ素原子上に有する上記有機基と同様のものが挙げられる。
【0089】
上記多官能性シラン化合物としては、例えば、メチルトリス(メチルケトキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリ(N,N−ジエチルアミノ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメトキシイソプロポキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシシラン、これらの部分加水分解重縮合物等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。
【0090】
本発明の組成物中における上記架橋剤の含有量は、特に制限されず、その種類等に応じて適宜設定することができるが、上記オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対して通常1〜100重量部、好ましくは3〜80重量部である。
【0091】
<無機質充填剤>
本発明の組成物には、塗膜の物理特性を向上させる目的で、さらに無機質充填剤を含有させてもよい。
【0092】
上記無機質充填剤としては例えば、湿式法シリカ、乾式法シリカ等のシリカ微粉末、煙霧質二酸化チタン、けいそう土、水酸化アルミニウム、微粒状アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等が挙げられる。また、これらをジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、環状ジメチルシロキサン等で疎水表面処理したものを使用することができる。これらの無機質充填剤は一種単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0093】
本発明の組成物中における無機質充填剤の含有量は、オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対して通常1〜30重量部、好ましくは3〜25重量部である。
【0094】
<有機溶剤>
本発明の組成物は、通常、有機溶剤に溶解及至分散させておく。これにより、塗料として好適に用いることができる。有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、ミネラルスピリト、MIBK、酢酸ブチル等が挙げられる。この中でも特に、キシレンが好ましい。これら有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0095】
<その他の添加剤等>
その他、本発明の防汚塗料組成物には、必要に応じて、可塑剤を含有させていてもよい。可塑剤としては、具体的には、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル類;ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート等のアジピン酸エステル類;ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート等のセバシン酸エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化油脂類;メチルビニルエーテル重合体、エチルビニル重合体等のアルキルビニルエーテル重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、その他、エチレン性不飽和カルボン酸エステル重合体、t-ノニルペンタンスルフィド、塩素化パラフィン、固形パラフィン、流動パラフィン、ワセリン等が挙げられる。該可塑剤の含有量は、上記オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対して、通常、約20重量部以下、好ましくは1〜10重量部である。
【0096】
さらに、必要に応じて、着色顔料、体質顔料、防錆顔料等の顔料類、タレ止め剤、シランカップリング剤、防汚剤等を適宜配合することができる。
【0097】
防汚塗料組成物の製造方法
本発明の防汚塗料組成物は、上記オルガノポリシロキサン(A)、アルミニウム化合物(B)、シリコーンオイル(C)、必要に応じて架橋剤、無機質充填剤、有機溶媒、可塑剤等を混合分散することにより調製できる。
【0098】
上記オルガノポリシロキサン(A)等の添加量は、それぞれ前記組成物中において前記オルガノポリシロキサン(A)等の含有量が上述した範囲となるように適宜調整すればよい。
【0099】
架橋剤としてテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等の4官能性アルコキシシラン化合物を使用する場合には、塗料粘度が増加する傾向があるので、シリコーンオイル(C)を添加した後に、該架橋剤を添加混合するほうが塗装作業性の点から望ましい。
【0100】
本発明の組成物中の上記オルガノポリシロキサン(A)を予めオルガノポリシロキサンゴムにしてある組成物の製造方法としては、例えば、水分の存在下、上記オルガノポリシロキサン(A)および上記アルミニウム化合物(B)を混合して、通常25〜80℃、好ましくは25〜50℃で上記オルガノポリシロキサン(A)中の架橋反応性官能基と、他のオルガノポリシロキサン(A)の架橋反応性官能基や架橋剤中の加水分解性基とを縮合反応させることによりオルガノポリシロキサンゴムを製造し、次いで、該オルガノポリシロキサンゴムとシリコーンオイル(C)とを混合する方法が挙げられる。
【0101】
防汚処理方法
本発明の防汚処理方法は、上記防汚塗料組成物を用いて被塗膜形成物の表面に防汚塗膜を形成することを特徴とする。本発明の防汚処理方法によれば、前記防汚塗膜が表面から徐々に溶解し塗膜表面が常に更新されることにより、長期間にわたって水棲汚損生物の付着防止を図ることができる。また、塗膜を溶解させた後、上記組成物を上塗りすることにより、継続的に防汚効果を発揮することができる。
【0102】
本発明の塗料組成物は空気中の水分を吸収して徐々に硬化が進行するので使用直前に調製し、調製後、なるべく早く塗装することが好ましい。
【0103】
被塗膜形成物としては、船舶;漁網類(養殖網、定置網等)、漁網付属具等の漁業具;突堤、テトラポット、港湾施設、ブイ、パイプライン、橋梁、発電所の導水管、海底基地、海底油田掘削設備等の水中構造物等が挙げられる。
本発明の防汚塗膜は、上記防汚塗料組成物を被塗膜形成物の表面(全体または一部)に塗布することにより形成できる。
【0104】
該防汚塗料組成物の塗装は、それ自体既知の手段により、1回の塗布によりまたは複数回塗り重ねて行うことができる。
【0105】
塗布方法としては、例えば、ハケ塗り法、スプレー法、ディッピング法、フローコート法、スピンコート法等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を併用して行ってもよい。
【0106】
塗布後、水分(例えば空気中の水分)を吸収して硬化が進行し、本発明の防汚塗膜が形成される。硬化は、常温(25℃)でも進行するが、例えば約80℃程度までの温度に加熱することにより硬化を促進させることができる。
【0107】
防汚塗膜および塗装物
本発明の防汚塗膜は、上記本発明の組成物を用いて形成できる。
【0108】
本発明の防汚塗膜の厚みは、被塗膜形成物の種類等に応じて適宜設定すればよい。一般には硬化膜厚で50〜300μm、好ましくは100〜200μmの範囲が適当である。
【0109】
本発明の塗装物は、前記防汚塗膜を表面に有する。本発明の塗装物は、前記防汚塗膜を表面の全体に有していてもよく、一部に有していてもよい。
【0110】
本発明の塗装物は、継続的に防汚効果を発揮できるため、上記船舶(特に船底)、漁業具、水中構造物等として好適に使用できる。
【0111】
例えば、船舶の船底表面に上記防汚塗膜を形成した場合、前記防汚塗膜が表面から徐々に溶解し塗膜表面が常に更新されることにより、水棲汚損生物の付着防止を図ることができる。
【0112】
しかも、前記防汚塗膜は、海水中における加水分解速度が好適に抑制されている。そのため、該船舶は、防汚性能を長期間維持でき、例えば、停泊中、艤装期間中等の静止状態においても、水棲汚損生物の付着・蓄積がほとんどなく、長期間、防汚効果を発揮できる。
【0113】
また、長時間経過後においても、表面の防汚塗膜には、基本的にクラックやハガレが生じない。そのため、塗膜を完全に除去した後あらためて塗膜を形成する等の作業を行う必要がない。よって、上記防汚塗膜組成物を直接上塗りすることにより好適に防汚塗膜を形成できる。これにより、簡便にかつ低コストでの継続的な防汚性能の維持が可能になる。
【0114】
防汚塗膜形成用キット
本発明の防汚塗膜形成用キットは、
(1)前記オルガノポリシロキサン(A)を含有する容器、および
(2)前記アルミニウム化合物(B)を含有する容器
を含み、且つ、前記シリコーンオイル(C)が、該容器(1)および/または該容器(2)に含まれるものである。
【0115】
上記キットは、二液型防汚塗料として使用できるものであり、特に、保存性に優れる。上記キットは、上記防汚塗料組成物を用いた場合と同様に、防汚性能に優れた防汚塗膜を形成できる。
【0116】
上記容器(1)および上記容器(2)の形状、大きさ等については特に限定されず、対象とする被塗膜形成物等に応じて適宜選択すればよい。例えば、施工性に優れる点でチューブ状の容器が好ましい。
【0117】
上記キット内における上記アルミニウム化合物(B)および上記シリコーンオイル(C)の含有量については、上記<アルミニウム化合物(B)>および上記<シリコーンオイル(C)>の項目で説示した範囲内となるよう設定することが好ましい。
【0118】
上記容器(1)および/または上記容器(2)には、必要に応じて、上記架橋剤、無機質充填剤、有機溶剤、その他の添加剤等を含有させてもよい。
【0119】
上記キットは、上記防汚塗料組成物と同様に、被塗膜形成物に防汚性能に優れた防汚塗膜を形成できる。
【0120】
上記キットを用いて塗膜を形成する方法としては、例えば、塗装する直前に、上記容器(1)の含有物および上記容器(2)の含有物を混合して、得られた混合物を被塗膜形成物に塗布する方法、被塗膜形成物に上記容器(1)の含有物を塗布した後、その上から上記容器(2)の含有物を塗布する方法等が挙げられる。
【0121】
水分の存在下、上記容器(1)の含有物および上記容器(2)の含有物を混合する、あるいは被塗膜形成物に上記容器(1)の含有物を塗布した後、その上から上記容器(2)の含有物を塗布することにより、上記オルガノポリシロキサン(A)からオルガノポリシロキサンゴムを好適に形成でき、防汚性能に優れた塗膜を形成できる。
【発明の効果】
【0122】
本発明の防汚塗料組成物および防汚塗膜形成用キットは、防汚性能に優れた防汚塗膜を形成できる。しかも、本発明の組成物およびキットは、硬化触媒としてジアルキルスズ化合物の代わりにアルミニウム化合物を含有するので、環境安全性が高く、海水中に溶解しても、海洋汚染の問題がほとんどない。
【実施例】
【0123】
以下に実施例等を示し本発明の特徴とするところをより一層明確にする。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0124】
アルミニウム化合物(B)の製造
製造例1(アルミニウム化合物(B−1)の製造)
窒素導入管を取り付けた500mlナス型フラスコに、トリイソプロポキシアルミニウム153.2g(0.75mol)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(以下、へキシレングリコールと記載する)132.94g(1.13mol)を量り込み、30分間還流させた後、生成したイソプロピルアルコールを減圧留去し、淡黄色粘稠液体のアルミニウム化合物(B−1)を298.8g(収率99%)得た。この化合物をFT−IRにて分析し、へキシレングリコールの水酸基の吸収(3367cm-1)が存在しないことを確認した。また、次の元素分析の結果より、トリイソプロポキシアルミニウムとへキシレングリコールのモル比が2:3の反応物であることを確認した。
【0125】
【表1】

【0126】
製造例2(アルミニウム化合物(B−2)の製造)
窒素導入管を取り付けた500mlナス型フラスコに、トリイソプロポキシアルミニウム153.2g(0.75mol)、2−ジメチルアミノエタノール66.9g(2.25mol)を量りこみ、30分還流させた後、生成したイソプロピルアルコールを減圧留去し、淡黄色液体のアルミニウム化合物(B−2)を211.9g(収率97%)得た。この化合物をFT−IRにて分析し、2−ジメチルアミノエタノールの水酸基の吸収(3398cm−1)が存在しないことを確認した。また、次の元素分析の結果より、トリイソプロポキシアルミニウムと2−ジメチルアミノエタノールのモル比が1:3の反応物であることを確認した。
【0127】
【表2】

【0128】
製造例3(アルミニウム化合物(B−3)の製造)
窒素導入管を取り付けた500mlナス型フラスコに、トリイソプロポキシアルミニウム153.2g(0.75mol)、へキシレングリコール88.7g(0.75mol)を量り込み、30分還流させた後、生成したイソプロピルアルコールを減圧留去した。次に2−ジメチルアミノエタノール66.9g(0.75mol)を量りこみ、30分還流させた後、生成したイソプロピルアルコールを減圧留去し、淡黄色液体のアルミニウム化合物(B−3)を170.0g(収率98%)得た。この化合物をFT−IRにて分析し、各アルコールの水酸基の吸収(3350〜3400cm-1)が存在しないことを確認した。また、次の元素分析の結果より、トリイソプロポキシアルミニウムとへキシレングリコールと2−ジメチルアミノエタノールのモル比が1:1:1の反応物であることを確認した。
【0129】
【表3】

【0130】
製造例4(アルミニウム化合物(B−4)の製造)
窒素導入管を取り付けた100mlナス型フラスコに、トリブトキシアルミニウム24.63g(0.10mol)、アセチルアセトン10.0g(0.10mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。発熱がおさまり、内温が室温付近になるまで攪拌を続けた後、生成したブチルアルコールを減圧留去し、淡黄色粘調液体のアルミニウム化合物(B−4−1)を26.1g(収率96%)を得た。この化合物をFT−IRにてアセチルアセトンのケトンの吸収(1750cm−1)の消失とアルミニウムカルボニルの吸収(1650cm−1、1525cm−1)を確認した。また、次の元素分析の結果より、アルミニウムアセチルアセトネート・ジブチレートであることを確認した。
【0131】
【表4】

【0132】
製造例5(アルミニウム化合物(B−4)の製造)
窒素導入管を取り付けた100mlナス型フラスコに、トリブトキシアルミニウム24.63g(0.10mol)、アセチルアセトン20.0g(0.20mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。発熱がおさまり、内温が室温付近になるまで攪拌を続けた後、生成したブチルアルコールを減圧留去し、淡黄色粘調液体のアルミニウム化合物(B−4−2)を28.6g(収率96%)を得た。この化合物をFT−IRにてアセチルアセトンのケトンの吸収(1750cm−1)の消失とアルミニウムカルボニルの吸収(1650cm−1、1525cm−1)を確認した。また、次の元素分析の結果より、アルミニウムビスアセチルアセトネート・ブチレートであることを確認した。
【0133】
【表5】

【0134】
製造例6(アルミニウム化合物(B−4)の製造)
窒素導入管を取り付けた100mlナス型フラスコに、トリブトキシアルミニウム24.6g(0.10mol)、アセト酢酸エチル26.1g(0.20mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。発熱がおさまり、内温が室温付近になるまで攪拌を続けた後、生成したブチルアルコールを減圧留去し、淡黄色粘調液体のアルミニウム化合物(B−4−3)を34.4g(収率96%)を得た。この化合物をFT−IRにてアセト酢酸エチルのケトンの吸収(1750cm−1)の消失とアルミニウムカルボニルの吸収(1650cm−1、1525cm−1)を確認した。また、次の元素分析の結果より、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・ブチレートであることを確認した。
【0135】
【表6】

【0136】
製造例7(アルミニウム化合物(B−5)の製造)
窒素導入管を取り付けた100mlナス型フラスコに、トリブトキシアルミニウム24.6g(0.10mol)、トリイソプロピルシラノール17.4g(0.10mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。発熱がおさまり、内温が室温付近になるまで攪拌を続けた後、生成したブチルアルコールを減圧留去し、淡黄色液体のアルミニウム化合物(B−5−1)を33.9g(収率98%)を得た。この化合物をFT−IRにて分析し、シラノールの吸収(3435cm−1)が存在しないことを確認した。また、次の元素分析の結果より、ジブトキシトリイソプロピルシロキシアルミニウムであることを確認した。
【0137】
【表7】

【0138】
製造例8(アルミニウム化合物(B−5)の製造)
窒素導入管を取り付けた100mlナス型フラスコに、トリブトキシアルミニウム24.6g(0.10mol)、トリブチルシラノール21.6g(0.10mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。発熱がおさまり、内温が室温付近になるまで攪拌を続けた後、生成したブチルアルコールを減圧留去し、淡黄色液体のアルミニウム化合物(B−5−2)を38.1g(収率98%)を得た。この化合物をFT−IRにて分析し、シラノールの吸収(3435cm−1)が存在しないことを確認した。また、次の元素分析の結果より、ジブトキシトリブチルシロキシアルミニウムであることを確認した。
【0139】
【表8】

【0140】
製造例9(アルミニウム化合物(B−5)の製造)
窒素導入管を取り付けた100mlナス型フラスコに、トリイソプロポキシアルミニウム20.4g(0.10mol)、ブチルアルコール7.41g(0.10mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。生成したイソプロピルアルコールを減圧留去した後、トリイソプロピルシラノール17.44g(0.10mol)を量り込み、マグネチックスターラーにて十分に混合した。発熱がおさまり、内温が室温付近になるまで攪拌を続けた後、生成したイソプロピルアルコールを減圧留去し、淡黄色粘稠液体のアルミニウム化合物(B−5−3)を32.2g(収率97%)を得た。この化合物をFT−IRにて分析し、シラノールの吸収(3435cm−1)が存在しないことを確認した。また、次の元素分析の結果より、イソプロポキシブトキシトリイソプロピルシロキシアルミニウムであることを確認した。
【0141】
【表9】

【0142】
試験例1(オルガノポリシロキサン組成物の硬化性試験)
表10に示されるオルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、製造例1〜9で得られたアルミニウム化合物(B)と、表10に示される各種添加剤を、表10に示される割合(重量部)で配合し、湿気の不存在下、攪拌混合機中で均一に混合することにより、各オルガノポリシロキサン組成物を調製した(参考例1〜15および比較参考例1〜4)。なお、各材料の配合および混合の操作は25℃、水分の不存在下で行った。
【0143】
得られたオルガノポリシロキサン組成物をそれぞれガラス板上に乾燥膜厚が200μmになるになるように塗布した後、20℃、60%RH雰囲気下で放置し、塗膜表面のタック(べたつき)がなくなるまでの時間(硬化時間)を指触により測定した。
【0144】
結果を表10に示す。
【0145】
【表10】

【0146】
実施例1〜15および比較例1〜5(防汚塗料組成物の製造)
空気中で、参考例1〜15および比較参考例1〜4のオルガノポリシロキサン組成物と表11に記載のシリコーンオイル(C)を、表11に示す割合(重量部)で配合し、攪拌混合機中で均一に混合分散することにより防汚塗料組成物を製造した。
【0147】
試験例2(防汚試験)
サンドブラスト処理鋼板(100×300×2mm)にエポキシ樹脂系重防食塗料を乾燥塗膜が200μmとなるように塗装した塗装板を被塗物とした。この板の被塗面に実施例1〜15および比較例1〜5で得られた塗料組成物を乾燥塗膜が約150μmとなるように刷毛塗装し、空気中(水分存在下)で、乾燥させて試験板を作成した。この試験板を尾鷲湾(三重県尾鷲市)の海水中に海面下1.5mに浸漬して水棲汚損生物による汚損の程度を12ヶ月観察した。
【0148】
上記汚損生物の付着面積(%)を表11に示す。
【0149】
【表11】

【0150】
実施例16(防汚塗膜形成用キット)
トスシール371(オルガノポリシロキサン(A))100重量部、テトラエトキシシラン(架橋剤)15重量部およびキシレン15重量部を、水分の不存在下、攪拌混合機中で均一に混合することにより得られた混合物をチューブに充填した。これを容器(1)とした。
【0151】
さらに、製造例1で得られたアルミニウム化合物(B−1)0.5重量部およびKF96−100(シリコーンオイル(C))100重量部を、水分の不存在下、攪拌混合機中で均一に混合することにより得られた混合物をチューブに充填した。これを容器(2)とした。
【0152】
以上、容器(1)および容器(2)からなる防汚塗膜形成用キットを作製した。
【0153】
得られたキットを用いて上記試験例1および2と同様の試験を行った。
【0154】
具体的に、乾燥膜厚が200μmになるになるように、ガラス板上に容器(1)の混合物を塗装後、その上から容器(2)の混合物を塗装した。その後、20℃、60%RH雰囲気下で放置し、塗膜表面のタック(べたつき)がなくなるまでの時間(硬化時間)を指触により測定した。硬化時間は4.0時間であった。
【0155】
また、実施例1〜15および比較例1〜5で得られた塗料組成物を塗装する代わりに、容器(1)の混合物を塗装後、その上から容器(2)の混合物を塗装する以外は、試験例2と同様の方法により、防汚試験を行った。3ヶ月後、6ヶ月後および12ヶ月後の汚損生物の付着面積は0%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)架橋反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)縮合反応用触媒としてのアルミニウム化合物、および
(C)シリコーンオイル
を含有する防汚塗料組成物。
【請求項2】
オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対して、アルミニウム化合物(B)を0.01〜20重量部含有し、シリコーンオイル(C)を10〜200重量部含有する請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項3】
アルミニウム化合物(B)が、一般式[1]:
Al(OR1 [1]
(式中、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R1は同一または異なっていてもよい。)
で表されるトリアルコキシアルミニウムに、一般式[2]:
HO−R2−OH [2]
(式中、R2は炭素原子数2〜10のアルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基である。)
で表されるジオール化合物、および/または、一般式[3]:
HO−R3−Y [3]
(式中、R3は炭素原子数2〜10のアルキレン基であり、Yは式:−OR4で示される基であるか、または式:−NR56で示される基であり、R4は炭素原子数1〜10のアルキル基またはアリール基であり、R5およびR6では同一または異なって水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基である。)
で表されるアルコール化合物を反応させて得られるアルミニウム化合物である請求項1または2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項4】
アルミニウム化合物(B)が、一般式[4]
【化1】

(式中、Rは炭素原子数1〜10の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基であり、Rは炭素原子数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素原子数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基であり、nは1または2であり、nが2のとき、2つのRは相互に同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるアルミニウム化合物である請求項1または2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項5】
アルミニウム化合物(B)が、一般式[5]
【化2】

(式中、R、R10、R11およびR12は相互に同一または異なって、炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、nは0〜2の整数であり、nが2のとき、2つのRは相互に同一であっても、異なっていてもよい。)
で表されるアルミニウム化合物である請求項1または2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の防汚塗料組成物を用いて被塗膜形成物の表面に防汚塗膜を形
成する防汚処理方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の防汚塗料組成物を用いて形成される防汚塗膜。
【請求項8】
請求項7に記載の防汚塗膜を表面に有する塗装物。
【請求項9】
水分の存在下、架橋反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン(A)および縮合反応用触媒としてのアルミニウム化合物(B)を混合してオルガノポリシロキサンゴムを製造し、次いで、該オルガノポリシロキサンゴムとシリコーンオイル(C)とを混合することにより得られる防汚塗料組成物。
【請求項10】
(1)架橋反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン(A)を含有する容器、および
(2)縮合反応用触媒としてのアルミニウム化合物(B)を含有する容器
を含み、且つ、シリコーンオイル(C)が、該容器(1)および/または該容器(2)に含まれる、防汚塗膜形成用キット。

【公開番号】特開2009−173815(P2009−173815A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15645(P2008−15645)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000227342)日東化成株式会社 (28)
【Fターム(参考)】