説明

防汚性を有する外付けブラインド

【課題】 防汚性に優れると共に、長期間屋外で使用しても採光性の低下がなく、且つ、外観意匠性が維持できる外付けブラインドを提供する。
【解決手段】 少なくとも1つの遮蔽材を有する外付けブラインドであって、遮蔽材は、遮蔽材の本体部をなす基材と、基材の表面に形成され、不飽和結合部を有するシランモノマーで被覆された無機微粒子とバインダー成分とを含み、表面の算術平均粗さRaが5nm以上100nm以下である微細凹凸層とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓の外側に設置することで遮熱効果が得られ、塵埃などの汚れが付着しづらく、さらにその効果が長期間持続する、防汚性を有する外付けブラインドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、室内温度の上昇は太陽光が室内に入ることにより起きる。特に夏場など、日差しの強い時期の室内温度上昇原因の7割は、窓から入る太陽光の熱量によるものとされている。直射日光が当たる床部分は最大65℃近くまで上昇することもあり、このような場合、空調機で室内温度を下げるにはかなりのエネルギーが必要となってしまう。カーテンやブラインドを窓の内側につけ太陽光を遮断しても、ある程度の太陽光は遮断できるものの、太陽光の一部は室内に入ってしまう上、窓と、カーテンやブラインドとの間で温室効果が起こり、室温を上昇させてしまう。
【0003】
そこで窓の外側に設置することで太陽光を遮断し、室内温度の上昇を防ぐものとして、金属板や樹脂板を用いたブラインドシャッター(例えば、特許文献1参照)や、シートを用いたロールブラインド(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。また汚れ付着防止効果を持たせた防汚ブラインド(例えば、特許文献3参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−74264号公報
【特許文献2】特開2005−113577号公報
【特許文献3】特開平10−46952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ブラインドシャッターやロールブラインドに用いられる遮蔽材としては、アルミニウム合金などの板材や、スチールに塗装したもの、或いは、網物や織物を樹脂加工した物が主に用いられているが、通気性や採光性を重視すると、網物や織物を樹脂加工した物が好ましい。しかしながら、これらの樹脂加工した網物や織物では、表面の摩擦帯電や、樹脂に含まれている可塑剤により、砂埃や土埃が付着し、使用経時により、汚れ、採光性の低下や、或いは、外観が損なわれるなどの問題がある。
【0006】
また、アルミニウム合金などの板材や、スチールに塗装したものでは、これらのブラインド表面に付着した砂埃や土埃が窓ガラスの表面に再付着して窓ガラスを汚すなどの問題もある。
【0007】
このような問題に対して、光触媒を用いたブラインドも提案されているが、砂埃や土埃などの無機物質からなる汚れ成分に対しては、光触媒による分解は困難であるため、無機物質からなる汚れ成分の蓄積は防止できない。また、光触媒が脱離し、効果が低減するなどの問題がある。
【0008】
そこで本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、砂埃や土埃が付き難くて、これらの汚れ成分の蓄積が阻害できて防汚性に優れると共に、長期間屋外で使用しても採光性の低下がなく、且つ、外観意匠性が維持できる外付けブラインドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、第1の発明は、少なくとも1つの遮蔽材を有する外付けブラインドであって、遮蔽材は、遮蔽材の本体部をなす基材と、基材の表面に形成され、不飽和結合部を有するシランモノマーで被覆された無機微粒子とバインダー成分とを含み、表面の算術平均粗さRaが5nm以上100nm以下である微細凹凸層とを有する防汚性を有する外付けブラインドを提供するものである。
【0010】
また、第2の発明は、上記第1の発明において、バインダー成分が、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビニルシラン、メタクリロキシシラン、及び、メルカプトシランのうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする防汚性を有する外付けブラインドを提供するものである。
【0011】
さらに、第3の発明は、上記第2の発明において、無機微粒子のシランモノマーの不飽和結合部と基材の表面とが化学結合することにより、基材と無機微粒子とが固定されてなることを特徴とする防汚性を有する外付けブラインドを提供するものである。
【0012】
第4の発明は、上記第3の発明において、化学結合がグラフト重合であることを特徴とする防汚性を有する外付けブラインドを提供するものである。
【0013】
第5の発明は、上記第4の発明において、化学結合がグラフト重合であることを特徴とする防汚性を有する外付けブラインドを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防汚性を有する外付けブラインドによれば、基材と、基材表面に形成され算術平均粗さRaが5nm以上100nm以下である微細凹凸層とを有する遮蔽材を備えることにより、遮蔽材と空気中の粉塵や花粉などとの接触面積が小さくなるため、その結果、遮蔽材表面に粉塵や花粉が付着しにくくなり、長期間、屋外に放置しておいても表面が汚れないというものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の防汚性を有する外付けブラインドにおけるロールスクリーンタイプの外付けブラインドの模式図である。
【図2】本発明の実施形態の防汚性を有する外付けブラインドにおけるスラットタイプの外付けブラインドの模式図である。
【図3】本発明の実施形態の防汚性を有する外付けブラインドの模式図である。
【図4】本発明の外付けブラインドの暴露試験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の防汚性を有する外付けブラインドについて図を用いて詳述する。
【0017】
図1は、本実施形態の防汚性を有する外付けブラインドにおけるロールスクリーンタイプの外付けブラインド100を示す図である。図に示すように、ロールスクリーンタイプの外付けブラインド100は、窓Aの上部に取り付けられた巻取りパイプ101に巻き取り可能なスクリーン102が取り付けられることにより構成される。
【0018】
図2は、本実施形態の防汚性を有する外付けブラインドにおけるスラットタイプの外付けブラインド200を示す図である。図に示すように、スラットタイプの外付けブラインド200は、窓Aの上部に取り付けられた上部フレーム201に、複数の昇降紐202により、複数のスラット203が積層して吊り下げられることにより構成される。
【0019】
本実施形態の外付けブラインドでは、ロールスクリーンタイプの外付けブラインド100またはスラットタイプの外付けブラインド200の遮蔽材であるスクリーン102またはスラット203の表面に後述する微細凹凸層を形成することを特徴としている。
【0020】
なお、上記ロールスクリーンタイプの外付けブラインド100またはスラットタイプの外付けブラインド200は、あくまでも外付けブラインドの例であり、本実施形態の外付けブラインドの構成はこれらに限られるものではない。
【0021】
図3は、本発明の実施形態の防汚性を有する外付けブラインドの遮蔽材の表面の模式図である。本実施形態の防汚性を有する外付けブラインドの遮蔽材は、遮蔽材の本体部をなす基材1の表面に、無機微粒子2と近接する他の無機微粒子2とが互いの表面を被覆しているシランモノマー3の不飽和結合部同士の化学結合5(図中の黒丸)により結合して形成された微細凹凸層10を有する。さらに微細凹凸層10は、無機微粒子2の表面を被覆しているシランモノマー3の不飽和結合部と基材1表面が化学結合5することにより、基材1の表面に固定されている。また、微細凹凸層10は、無機微粒子2同士および無機微粒子2と基材1とを相互に結合しているバインダー4を含んでいる。
【0022】
なお、図3では本発明の実施形態をわかりやすく模式的に示すため、微細凹凸層10は無機微粒子2が1種類で形成された図で示したが、これに限定されず、2種類以上の無機微粒子で形成してあってもよい。さらに微細凹凸層10は単層でも複数層でもよく、さらに基材1の表面に、島状や点状など、部分的に形成されてあってもよい。
【0023】
本実施形態の防汚性を有する外付けブラインドの基材1を構成する材料としては、無機微粒子2を被覆しているシランモノマー3と化学結合5を形成できるものであれば特に限定されない。
【0024】
基材1の表面または全体が樹脂で構成された部材の例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、EVA樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ETFE、PTFEなどの熱可塑性樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、修飾でんぷん樹脂、ポリカプロラクト樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネートテレフタレート樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂などの生分解性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ケイ素樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレンエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマー、漆などの天然樹脂などが挙げられる。
【0025】
本実施形態では、これらの基材1の形態は、板状や、フィルム状や、パンチングシート状や、繊維状や、布状や、メッシュ状や、ハニカム状など、使用目的に合った種々の形状及びサイズ等のものが適用でき、特に制限されるものではないが、ロールスクリーンタイプの外付けブラインドに適用する場合は、通気性や光の透過性を考慮すると、メッシュ状やパンチングシート状のものが好適に用いられる。
【0026】
基材1にポリ塩化ビニル樹脂、又はポリ塩化ビニリデン樹脂など可塑剤を含有した材料を用いる場合には、経時変化により基材1表面に可塑剤がブリードアウトするのを防止するために、基材1と微細凹凸層10との間に可塑剤移行防止層を設けてもよい。
【0027】
可塑剤移行防止層にはフッ素系樹脂やアクリル系樹脂が用いられる。例えば、フッ素系樹脂はポリテトラフルオロエチレンや、テトラフルオロエチレン−パーフルオロオレフィン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体などが挙げられる。アクリル系樹脂はメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、メチルアクリレート、およびエチルアクリレートなどのメタクリル酸エステルやアクリル酸エステルの単独重合体や、エステル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエンなどとの共重合体が挙げられる。
【0028】
具体的な可塑剤移行防止層の塗布方法としては、一般に行われているディップコート法や、スプレーコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法などの様々な方法が用いられるが、特に限定されない。
【0029】
また、基材1がアルミニウムやステンレス、鉄などの金属材料、ガラスおよびセラミックスなどの無機材料である場合でも、樹脂基材の場合と同様、例えば後述するグラフト重合によりシランモノマー3の不飽和結合部や反応性官能基と、金属表面の水酸基等とを反応させて化学結合5を形成することにより、金属の基材1上に無機微粒子2を固定できるが、基材1表面に化学結合5が可能な官能基を、シランモノマーやチタンモノマー等で導入することで、さらに無機微粒子2を強固に固定することができる。
【0030】
基材1の表面に導入されるシランモノマー由来の官能基の具体例としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロ基、アクリロキシ基、イソシアネート基およびチオール基などが挙げられる。
【0031】
本実施形態の無機微粒子2の最表面には、不飽和結合部を有するシランモノマー3が、不飽和結合部を無機微粒子2の外側に向けて配向して結合して被膜を形成している。シランモノマー3の片末端であるシラノール基は親水性であるため、親水性である無機微粒子2の表面に引きつけられる。一方、逆末端の不飽和結合部は疎水性であるため、無機微粒子2の表面からは離れようとする。このため、シラノール基は無機微粒子2の表面に脱水縮合により結合し、不飽和結合部を外側に向けて配向する。その方法としては、シランモノマー3を、無機微粒子2が有機溶剤に分散した溶液に加えて、粉砕・分散処理により微粒子化し、上記分散溶液を固液分離した後、加熱してシランモノマー3を無機微粒子2の表面に結合させる方法や、固液分離させずに分散液を還流下で加熱処理することにより、シランモノマー3を無機微粒子2の表面に結合させる方法などがある。
【0032】
本実施形態の防汚性を有する外付けブラインドで用いられるシランモノマー3の一例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0033】
シランモノマー3は、一種もしくは二種以上混合して用いられる。シランモノマー3の使用形態としては、必要量のシランモノマー3を溶剤に溶解することにより用いられる。また、分散性を改善するために塩酸や、硝酸などの鉱酸などが加えられる。
【0034】
シランモノマー3の溶剤としては、エタノールやメタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類、蟻酸やプロピオン酸などの低級アルキルカルボン酸類、トルエンやキシレンなどの芳香族化合物、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、メチルセルソルブやエチルセルソルブなどのセロソルブ類、水などを単独または複数組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本実施形態の防汚性を有する外付けブラインドに用いられる無機微粒子2は、前述したシランモノマー3の溶液に分散した状態で製造に用いられる。無機微粒子2の分散は、ホモミキサーやマグネットスターラーなどを用いた撹拌分散、ボールミルやサンドミル、高速回転ミル、ジェットミルなどを用いた粉砕・分散、超音波を用いた分散などにより行われる。
【0036】
また、無機微粒子2は、分散したコロイド状分散液や、粉砕により微粒子化して得られた分散液の状態で、防汚性を有する外付けブラインドの製造に用いられる。例えば、無機微粒子2のコロイド状分散液や粉砕して得られた分散液にシランモノマー3を加え、その後、還流下で加熱させながら、無機微粒子2の表面にシランモノマー3を脱水縮合反応により結合させてシランモノマー3からなる被覆を形成する方法や、粉砕により微粒子化して得られた分散液にシランモノマー3を加えた後、或いは、シランモノマー3を加えて粉砕により微粒子化した後、固液分離して100℃から180℃で加熱してシランモノマーを無機微粒子2の表面に脱水縮合反応により結合させ、次いで、粉砕・解砕して再分散して用いる方法がある。
【0037】
粉砕により微粒子化して得られた分散液にシランモノマー3を加えた後、或いは、シランモノマー3を加えて粉砕により微粒子化した後、固液分離して100℃から180℃で加熱してシランモノマー3を無機微粒子2の表面に反応結合させる場合、無機微粒子2の重量に対して、0.01質量%から40質量%のシランモノマー3、すなわち、無機微粒子2とシランモノマー3との重量比が100:0.01〜40で無機微粒子2の表面に結合されてあれば、無機微粒子2の基材1の表面への結合強度は実用上問題ない。
【0038】
なお、無機微粒子2の径、及びその他上記各種材料の微粒子径については本実施形態の方法によって作成すれば特に限定されないが、後述するグラフト重合を好適に行うには、平均粒子径が300nm以下とすることが好ましく、さらに平均の粒子径が100nm以下であれば、基材1へのより強固な結合が達成されるため、耐久性の点より一層好適である。
【0039】
本実施形態の防汚性を有する外付けブラインド100に用いられる無機微粒子2としては、非金属酸化物、金属酸化物、金属複合酸化物、窒化物、及び、炭化物などが用いられる。また、無機微粒子2の結晶性は、非晶性あるいは結晶性のどちらでも良い。非金属酸化物として酸化珪素、金属酸化物として、例えば、酸化マグネシウム、酸化バリウム、過酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化チタン、過酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、水酸化鉄、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化インジウム、金属複合酸化物として、酸化チタンバリウム、酸化コバルトアルミニウム、酸化ジルコニウム鉛、酸化ニオブ鉛、TiO2-WO3、AlO3-SiO2、WO3-ZrO2、WO3-SnO2、窒化物として窒化チタン、窒化タンタル、窒化ニオブ、炭化物として炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ニオブなどが挙げられる。
【0040】
また本実施形態の防汚性を有する外付けブラインドは、毎日、開閉して使用されるものであるため、基材1表面の微細凹凸層10が摩擦により摩耗・劣化しないように、シランモノマー3で無機微粒子2を被覆した後、バインダー成分4を添加する。バインダー成分4としては、不飽和結合部を有するシランモノマーや、Si(OR1)4(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示す)で示されるアルコキシラン化合物、一例として、テトラメトキシシランや、テトラエトキシシランなど、R2nSi(OR3)4−n(式中、R2は炭素数1〜6の炭化水素基、R3は炭素数1〜4のアルキル基、nは1〜3の整数を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、一例として、メチルトリルメトキシシランや、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキシルトリメトキシシランなど、他にアルコキシオリゴマーなどが用いられる。バインダー成分4は一種類で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0041】
ここでバインダー成分4は、シランモノマー3で被覆した無機微粒子2同士および無機微粒子2と基材1とを相互に結合し、微細凹凸層10が摩擦により摩耗・劣化することを抑制するために添加するものである。バインダー成分4は、無機微粒子2を被覆しているシランモノマー3の反応性基と化学的に結合しうる反応サイトとして、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロ基、アクリロキシ基、イソシアネート基等の不飽和基アルコキシ基を分子の構成要素として保有することが望ましい。
【0042】
バインダー成分4は、無機微粒子2に対して1質量%以上添加すればよく、その添加量が多いほど、微細凹凸層10は強固な層を形成可能で、耐久性の向上も期待できる。しかしながら、バインダー成分4が多くなると、無機微粒子2の表面を被覆する割合が大きくなることにより表面が帯電しやすくなり、粉塵・花粉などが付着しやすくなるため、防汚性が低下する。特に、基材1上に形成されたシランモノマー3で被覆された無機微粒子2からなる微細凹凸層10に含まれるバインダー成分4が、無機微粒子2に対して40質量%より多くなると、粉塵・花粉などの付着による防汚性の低下は顕著になる。したがって、防汚性を維持しつつ、膜の耐久性を保持できる範囲としては、1質量%以上40質量%以下、好ましくは5質量%以上30質量%以下、より好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
【0043】
防汚性を有する外付けブラインドの遮蔽材の表面の凹凸が微細であればあるほど、粉塵・花粉などとの接触面積が小さくなるため、防汚性が良好となる。防汚性を有する外付けブラインドの遮蔽材の表面状態は、微細凹凸層10が含む粉体の粒径により適宜、調整されるが、微細凹凸層10の表面の算術平均粗さRaが、5nm以上100nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下、より好ましくは5nm以上20nm以下であればよい。
【0044】
次に、基材1と、表面にシランモノマー3が結合した無機微粒子2とバインダー成分4の混合した溶液とを化学結合5させる方法について説明する。本実施形態においては、化学結合5させる方法として、グラフト重合による結合方法を用いている。
【0045】
本実施形態におけるグラフト重合としては、例えばパーオキサイド触媒を用いるグラフト重合や、熱や光エネルギーを用いるグラフト重合や、放射線によるグラフト重合(放射線グラフト重合)などが挙げられる。
【0046】
このうち、重合プロセスの簡便性や、生産スピード等の観点より、放射線グラフト重合が特に適している。ここで、グラフト重合において用いられる放射線としては、α線や、β線や、γ線や、電子線や、紫外線などを挙げることができるが、本実施形態において用いるには、γ線や、電子線や、紫外線が特に適している。
【0047】
本実施形態でのグラフト重合を用いた防汚性を有する外付けブラインドの製造方法は、以下に記した方法により好適に製造される。
【0048】
本実施形態における第1の好適な方法としては、シランモノマー3が化学結合された無機微粒子2が分散した溶液に、バインダー成分4を添加し、充分に混合した後、結合しようとする基材1の表面に塗布し、必要に応じて溶剤を加熱乾燥などの方法により除去した後、γ線や、電子線や、紫外線などの放射線を、シランモノマー3を被覆した無機微粒子2が塗布された基材1の表面に照射することで、シランモノマー3を基材1の表面にグラフト重合させると同時に無機微粒子2を結合させる、いわゆる同時照射グラフト重合により製造される。
【0049】
また、本実施形態における第2の好適な方法としては、予め基材1の表面にγ線や、電子線や、紫外線などの放射線を照射した後に、シランモノマー3が化学結合5された無機微粒子2が分散した溶液に、バインダー成分4を添加し、充分に混合した溶液を塗布して、シランモノマー3と基材1とを反応させると同時に無機微粒子2を結合させる、いわゆる前照射グラフト重合により製造される。
【0050】
本実施形態では、上述したように、固定化する無機微粒子2が分散した溶液に、バインダー成分4を添加し充分に混合した溶液を、固定化する基材1の表面に塗布して遮蔽材を製造する。
【0051】
具体的な無機微粒子2の分散液の塗布方法としては、一般に行われているディップコート法や、スプレーコート法や、マイクログラビアコート法や、グラビアコート法などの様々な方法が用いられ、目的に合った塗布ができれば特に限定されない。
【0052】
また、シランモノマー3のグラフト重合を効率良く、かつ、均一に行わせるためには、予め、基材1の表面が、コロナ放電処理やプラズマ放電処理や、火炎処理や、クロム酸や過塩素酸などの酸化性酸水溶液や水酸化ナトリウムなどを含むアルカリ性水溶液による化学的な処理などにより親水化処理されてあっても良い。
【実施例】
【0053】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
本発明方法による下記実施例1〜4、並びに、比較例1〜2の遮蔽材の製造にあたっては、岩崎電気株式会社製、エレクトロカーテン型電子線照射装置、CB250/15/180Lを用い、電子線グラフト重合により実施した。
【0055】
(実施例1)
市販のジルコニア微粒子(日本電工株式会社製、PCS)をメタノールに10.0質量%分散してpHを4.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより平均粒子径20nmに粉砕分散した。得られた分散溶液にシランモノマーとして不飽和結合を有する3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-503)を微粒子に対して5.0質量%加えた後、この粉砕分散溶液を、冷却管を備えたフラスコに移してフラスコをオイルバスで加熱し、4時間還流下で処理することによりジルコニア微粒子表面にシランモノマーを脱水縮合反応により化学結合させて被覆を形成した。
【0056】
得られた分散溶液中にバインダー成分としてテトラメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-04)を、シランモノマーで被覆された無機微粒子に対して20.0質量%添加し、ビーズミルにより再度粉砕分散したところ、得られた分散溶液中のジルコニア微粒子の平均粒子径は20nmであった。なお、ここでいう平均粒子径とは、体積平均粒子径のことをいう。
【0057】
また、PVC被覆ポリエステル編物(クラレ株式会社製、クラフテル-F)の表面をコロナ処理により親水化した後、塗料用フッ素樹脂(セントラル硝子株式会社製、セフラルコートCC-04)を固形分3.0質量%に調整したスラリーに、編物を浸漬し余剰分のスラリーを除去した後、80℃で1分間乾燥した。更に、2.0質量%に調整した上記ジルコニア微粒子スラリーに得られたフッ素樹脂被覆編物を浸漬し、余剰分のスラリーを除去した後、80℃で1分間乾燥した。その後、200kVの加速電圧で電子線を50KGy照射し、外付けブラインドの遮蔽材を得た。
【0058】
(実施例2)
市販の二酸化チタン粒子(石原産業株式会社製、TTO-S-1)をメタノールに10.0重量%分散してpHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより平均粒子径15nmに粉砕分散した。得られた分散溶液にシランモノマーとして不飽和結合を有する3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-503)を微粒子に対して5.0重量%加えた後、この粉砕分散溶液を、冷却管を備えたフラスコに移してフラスコをオイルバスで加熱し、4時間還流下で処理することにより二酸化チタン微粒子表面にシランモノマーを脱水縮合反応により化学結合させて被覆を形成した。バインダー成分としてメルカプトシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-803)を20.0質量%添加する以外は、実施例1と同様の方法で外付けブラインドの遮蔽材を得た。
【0059】
(実施例3)
塗料用フッ素樹脂を塗布しない以外は実施例1と同様の条件で外付けブラインドの遮蔽材を得た。
【0060】
(実施例4)
市販の二酸化チタン粒子(テイカ株式会社製、MT-700HD)をメタノールに10.0重量%分散してpHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより平均粒子径50nmに粉砕分散した。得られた分散溶液にシランモノマーとして不飽和結合を有する3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-503)を微粒子に対して20.0重量%加えた後、この粉砕分散溶液を、冷却管を備えたフラスコに移してフラスコをオイルバスで加熱し、4時間還流下で処理することにより二酸化チタン微粒子表面にシランモノマーを脱水縮合反応により化学結合させて被覆を形成し、その後は実施例1と同様の条件で外付けブラインドの遮蔽材を得た。
【0061】
(比較例1)
バインダー成分を添加しない以外は、実施例1と同様の方法で外付けブラインドの遮蔽材を得た。
【0062】
(比較例2)
シランモノマーとして、市販の不飽和結合部を有する3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-503)を無機微粒子に対して45.0重量%加えた以外は、実施例1と同様の方法で外付けブラインドの遮蔽材を得た。
【0063】
(外付けブラインドの評価)
(1)表面粗さ
微細凹凸層10の表面凹凸状態として算術平均粗さRaを、触針式の表面粗さ計((株)アルバック製DEKTAK3030ST)により測定した。
【0064】
(2)粉体付着量
それぞれのサンプルを10×10cmの大きさに切り取り、JIS Z 8901に準拠した混合ダストを満遍なく振りかけた後、軽く衝撃を加え、重量を測定してダスト付着前後の外付けブラインドの遮蔽材の重量差を測定し評価した。
【0065】
(3)屈曲耐久性
屈曲耐久性は屈曲性を加速するために、JIS C 5016に準拠した耐屈曲性試験機を用いて5000回屈曲した後、粉体付着量を測定した。
【0066】
(4)磨耗耐久性
磨耗耐久性は磨耗性を加速するために、外付けブラインドの遮蔽材の表面と裏面を5000回磨耗させた後、粉体付着量を測定した。
【0067】
(5)防汚性
JIS A 1410に準拠した45度暴露台で、12ヶ月間暴露し、暴露前後の外付けブラインドの遮蔽材の表面を色彩色差計CR-200(ミノルタ株式会社製)に測定し色差ΔEを求めた。また実際の使用環境を考慮して、暴露時間は午前9時から午後5時までとし、それ以外の時間は各外付けブラインドの上部にある収納部へ遮蔽材を巻き上げて収納した。
【0068】
以上説明した実施例1〜4及び比較例1、2の測定結果を表1、図4にそれぞれまとめた。
【0069】
【表1】



【0070】
表1に示すように、実施例1〜4の遮蔽材は、基材の表面に、シランモノマーで被覆された無機微粒子を含む微小凹凸層を固定し、表面粗さを5nm以上100nm以下とし、かつ、微小凹凸層にバインダ成分を添加することにより、外付けブラインドへの粉体の付着が抑制できるとともに、屈曲及び磨耗耐久性に優れた遮蔽材となることがわかる。
【0071】
一方、比較例1に示すように、微小凹凸層にバインダー成分添加しない場合には、屈曲、磨耗耐久性に劣る。また、比較例2に示すように、微小凹凸層の表面粗さRaが100nmを超える場合には、粉体付着量が増大し、防汚性が低下する。
【0072】
また、図4に示すように、実施例1〜4の遮蔽材は、暴露日数に伴う色差ΔEの変化が小さく、防汚性に優れていることがわかる。一方、比較例1、2の遮蔽材は、暴露日数に伴う色差ΔEの変化が大きく、防汚性に劣る。
【0073】
比較例1の微小凹凸層にはバインダー成分が入っておらず、微小凹凸層の膜強度が非常に弱い。したがって、ブラインドの巻き上げを繰り返すと摩擦により簡単に微小凹凸層が脱離するため、日数の経過とともに遮蔽材の表面に汚れが付着し、色差ΔEの変化が大きくなる。また、比較例2の微小凹凸層は表面粗さRaが100nmを超えているため、日数の経過とともに遮蔽材の表面に汚れが付着し、色差ΔEの変化が大きくなる。
【0074】
よって、本発明で得られた外付けブラインドは、防汚性に優れると共に、長期間効果が持続する防汚性を有する外付けブラインドであることが確認された。
【符号の説明】
【0075】
100:ロールスクリーンタイプの外付けブラインド
200:スラットタイプの外付けブラインド
1 :基材
2 :無機微粒子
3 :シランモノマー
4 :バインダー成分
5 :化学結合
10 :微細凹凸層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの遮蔽材を有する外付けブラインドであって、
前記遮蔽材は、
前記遮蔽材の本体部をなす基材と、
前記基材の表面に形成され、不飽和結合部を有するシランモノマーで被覆された無機微粒子とバインダー成分を含み、表面の算術平均粗さRaが5nm以上100nm以下である微細凹凸層と、
を有することを特徴とする防汚性を有する外付けブラインド。
【請求項2】
前記バインダー成分は、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビニルシラン、メタクリロキシシラン、及び、メルカプトシランのうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の防汚性を有する外付けブラインド。
【請求項3】
前記無機微粒子のシランモノマーの不飽和結合部と前記基材の表面とが化学結合することにより、前記基材と前記無機微粒子とが固定されてなることを特徴とする請求項2に記載の防汚性を有する外付けブラインド。
【請求項4】
前記化学結合がグラフト重合であることを特徴とする請求項3に記載の防汚性を有する外付けブラインド。
【請求項5】
前記グラフト重合は放射線グラフト重合であることを特徴とする請求項4に記載の防汚性を有する外付けブラインド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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