説明

防汚洗浄剤

【目的】本発明の目的は、安全性の高い油脂分解酵素を含有し、酵素の油脂分解作用が失活することなく、対象物の洗浄と共に防汚効果を有する防汚洗浄剤を提供することである。
【構成】本発明は、油脂分解酵素と吸湿剤を少なくとも含有する防汚洗浄剤であり、油脂分解酵素の活性に必要な水分が吸湿剤により保持されるから、汚れとして付着する油脂成分を高効率に分解することができる。更に、前記油脂分解酵素と結合して油脂分解酵素の安定化や対象物への固定化を向上させる安定化剤や油脂成分の分解過程で生じる脂肪酸を中和するアルカリ剤、油脂成分を均一に分散させる界面活性剤を添加することにより、本発明に係る防汚洗浄剤の防汚・洗浄効果を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚洗浄剤に関し、更に詳細には、少なくとも油脂分解酵素を含有し、対象物の油脂成分を空気中の水分を取り込みながら分解し続けていく防汚洗浄剤である。
【背景技術】
【0002】
キッチンの流し台、ワークトップ、壁面等は、食用油や食材由来の油汚れ等の油脂成分を含む様々な汚れが付着する。これらの汚れに対しては、汚れを落とすと共に汚れが付着することを防止・軽減する防汚効果を持つことが求められる。特開2001−271094公報(特許文献1)には、共重合高分子と界面活性剤を含有する防汚洗浄剤組成物が記載され、ステンレス、ホーロー、タイル、ガラス、陶磁器等の硬質面の洗浄と防汚作用を有することが記載されている。
【0003】
油脂成分を含む汚れを洗浄する組成物には、界面活性剤と共に油脂分解酵素であるリパーゼを含有するものがある。特表2001−501244公報(特許文献2)には、リパーゼと界面活性剤を含有する表面洗浄剤が記載されている。油脂分解酵素は、自然界に広く存在し、安全性が高く、化粧品、医薬品などにも用いられている。また、酵素の不安定性を解消するため、特許文献2では、安定化剤としてグリコール、ホウ酸塩又はカルボン酸などを添加することが記載されている。
【特許文献1】特開2001−271094公報
【特許文献2】特表2001−501244公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、界面活性剤と共に、アニオン性基含有ビニル系単量体、カチオン性基含有ビニル系単量体及びノニオン性ビニル系単量体からなる共重合高分子成分を含む硬質表面用の防汚洗浄剤が記載されている。また、近年、人により優しく安全性の高い洗浄剤が求められていた。特許文献2に記載されるリパーゼのような油脂分解酵素は、化粧品や医薬品等にも用いられており、洗浄剤としての安全性を向上させることは可能であるが、その安定性や防汚洗浄剤として対象物に塗布した場合、いかに安定化させ、油脂分解酵素の活性を持続的に保持させることが困難であった。また、酵素の分解作用を発揮させるためには、好適な水分を保持する必要があり、塗布後に水分が失われると、対象物に固定化された油脂分解酵素が失活し、初期の酵素効果が得られない。
【0005】
従って、本発明の目的は、安全性の高い油脂分解酵素を含有し、酵素の油脂分解作用が失活することなく、対象物の洗浄と共に防汚効果を有する防汚洗浄剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、本発明の第1の形態は、油脂分解酵素と吸湿剤を少なくとも含有する防汚洗浄剤である。
【0007】
本発明の第2の形態は、第1の形態において、前記油脂分解酵素の酵素活性が1LU/g以上である防汚洗浄剤である。
【0008】
本発明の第3の形態は、第1又は2の形態において、前記油脂分解酵素の安定化剤を添加した防汚洗浄剤である。
【0009】
本発明の第4の形態は、第1、2又は3の形態において、前記油脂分解酵素の固定化剤を添加した防汚洗浄剤である。
【0010】
本発明の第5の形態は、第1〜4のいずれかの形態において、溶剤を添加して液体防汚洗浄剤にした防汚洗浄剤である。
【0011】
本発明の第6の形態は、第5の形態において、前記液体防汚洗浄剤中にアルカリ剤及び/又は界面活性剤を添加した防汚洗浄剤である。
【0012】
本発明の第7の形態は、第1〜6のいずれかの形態において、前記油脂分解酵素の含有量が0.001mass%〜10mass%、前記吸湿剤の含有量が1mass%〜80mass%である防汚洗浄剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の形態によれば、油脂分解酵素と吸湿剤を少なくとも含有するため、吸湿剤により油脂分解酵素の活性に必要な水分を保持することができ、汚れとして付着する油脂成分を油脂分解酵素により高効率に分解することができる。従って、キッチンのレンジフード周り、換気扇周り、コンロ周り、壁周りや電子レンジ内、オーブン内、ファンの中などの油汚れに対する防汚・洗浄作用を格段に向上させることができる。ここで、油脂分解酵素とは、International Union of Biochemistry and Molecular Biology(IUBMB)の推薦(1992)に従って、Enzyme Classification 番号E.C.3.1.1(カルボン酸エステルヒドロラーゼ)下で分類された酵素を示す。従って、油脂分解酵素は、「モノ−、ジ−及びトリグリセリド、リン脂質(すべての種類)、チオエステル、コレステロールエステル、ワックス−エステル、クチン、スベリン、合成エステル等、脂質に存在するエステル結合の少なくとも1つのタイプに対して加水分解活性を示すもの」である。油脂分解酵素は、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ又はクチナーゼとして称せられて来たものである。前記吸湿剤としては、ポリカルボン酸ソーダやDL−ピロリドンカルボン酸ソーダ、グリセリン(ジ・トリ・ペンタ・ポリ)、プロピレングリコールや1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール、無機類では塩化カルシウムや塩化マグネシウム等が用いられる。
【0014】
本発明の第2の形態によれば、前記油脂分解酵素の酵素活性が1LU/g以上であるから、油汚れ等の油脂成分をより確実に分解することができる。一般に油脂と呼ばれる脂肪酸エステルは、所定の条件下でリパーゼによって加水分解される。この反応は酵素のエステラーゼ活性に由来するものである。リパーゼの酵素活性は、LU(リパーゼ・ユニット)で表記され、1LUとは上記条件下において毎分1μmolの酪酸を生成するために必要な酵素量を示している。従って、前記油脂分解酵素の酵素活性が1LU/g以上であれば、防汚洗浄剤として実用に適した量の酵素を配合して、防汚洗浄剤を製造することができる。更に、油脂分解酵素の含有量は、1LU/g〜200KLU/gであることがより好ましい。酵素洗剤など用いるため多量に販売されるリパーゼなどの油脂分解酵素は、200KLU/g以下のものが殆どであることから、防汚洗浄剤の製造コストを増大させる可能性がある。
【0015】
本発明の第3の形態によれば、前記油脂分解酵素に安定化剤を添加するため、油脂分解酵素の活性が保持され、好適な防汚効果を対象物に付与することができる。安定化剤としては、グリシン、リジン等のアミノ酸類、アガロース、ソルビット、マルチトール、キシリトール等の多糖類、グリセリン(ジ・トリ・ペンタ・ポリ)、プロピレングリコールや1,3−ブチレングリコール等の多価アルコールが用いられる。
【0016】
本発明の第4の形態によれば、前記油脂分解酵素の固定化剤を添加するから、対象物に前記油脂分解酵素に固定化することができ、防汚効果を向上させることができる。また、前記油脂分解酵素は対象物に固定されることにより安定化され、酵素活性の失活を抑制することができる。前記油脂分解酵素の固定化方法としては、微生物の固定化にも用いられる包括法、物理的吸着法、共有結合法等多くの方法が知られているが、多糖類からなる固定化剤を用いる方法が好ましく、酵素を失活させることなく、かつ対象物に固定することができる。固定化剤としては、アガロースやポリエチレンイミンなどやその他のゲル化剤等を用いることができる。
【0017】
本発明の第5の形態によれば、少なくとも油脂分解酵素と吸湿剤に溶剤を添加するため、液状の防汚洗浄剤を提供することができ、種々の対象物をより簡易に洗浄し、防汚作用を付与することができる。溶剤としては、植物油など酵素により分解生成された脂肪酸を溶かす種々の物質を用いることができる。溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール系溶剤やイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤が用いられる。
【0018】
本発明の第6の形態によれば、前記液体洗剤中にアルカリ剤及び/又は界面活性剤を添加するから、界面活性剤で均一になった油滴を油脂分解酵素で分解し、生成された脂肪酸をアルカリ剤で中和し石鹸化して除去することができる。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などから適宜選択することができるが、カチオン性界面活性剤の中には、酵素の蛋白質を変性させるものがあるため、選択には注意が必要である。アニオン性界面活性剤としては、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、エーテルカルボン酸塩、リン酸アルキル塩、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル塩、アルケニルコハク酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシルメチルタウリン塩等がある。カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等である。両性界面活性剤としては、アルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン等がある。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ポリグリセリンエステル、脂肪酸ショ糖エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキサイド、アミドアミンオキサイド等がある。
【0019】
本発明の第7の形態によれば、前記油脂分解酵素の含有量が0.001mass%〜10mass%であるから、酵素活性を高効率に利用することができる。0.001mass%より小さい場合、含有量が少な過ぎ、10mass%を超えると汚れ量とも関係するが全ての酵素を効率的に利用することが困難となり実用的でない。更に、前記吸湿剤の含有量が1mass%〜80mass%である場合、防汚洗浄剤として油脂分解酵素の酵素活性に必要な水分を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の第1の実施形態と第2の実施形態を例に挙げ、本発明に係る防汚洗浄剤について詳述する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、油脂分解酵素、吸湿剤、酵素安定化剤、溶剤及び調整水を含有する防汚洗浄剤である。油脂分解酵素とは、前述のように、Enzyme Classification 番号E.C.3.1.1(カルボン酸エステルヒドロラーゼ)下で分類された酵素を示す。従って、油脂分解酵素は、「モノ−、ジ−及びトリグリセリド、リン脂質(すべての種類)、チオエステル、コレステロールエステル、ワックス−エステル、クチン、スベリン、合成エステル等、脂質に存在するエステル結合の少なくとも1つのタイプに対して加水分解活性を示すもの」である。脂肪分解酵素は、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ又はクチナーゼとして称せられて来たものである。
【0021】
本発明に係る防汚洗浄剤に配合される油脂分解酵素は、酵素活性が1LU/g以上であれば、防汚洗浄剤として利用することが可能であり、油脂分解酵素であるリパーゼの酵素活性を測定している。防汚洗浄剤の洗浄対象物に応じて好適な防汚・洗浄効果が発揮されるよう所定の酵素活性を保持する油脂分解酵素が配合しており、以下にリパーゼに関する酵素活性の測定方法について詳述する。
【0022】
一般に油脂と呼ばれる脂肪酸エステルは、温度約40℃、pH約7.7、反応時間約25分の条件下でリパーゼによって加水分解される。この反応は、酵素のエステラーゼ活性に由来するものであり、溶液は黄色を呈し、405nmの吸光度で測定することによりリパーゼの酵素活性を測定することができる。リパーゼの酵素活性は、LU(リパーゼ・ユニット)で表記され、1LUは上記条件下において毎分1μmolの酪酸を生成するために必要な酵素量を示している。
【0023】
トリスを用いた希釈用バッファによりリパーゼ標準酵素(novozymes社製、Lipolase標準酵素)を希釈して溶解させ、溶液中の酵素活性が50LU/mlになるように調整する。この酵素濃縮溶液1.0mlを前記希釈用バッファにより100mlに希釈して酵素溶液の活性を約0.50LU/mlに調整し、標準酵素溶液とする。次にリパーゼを前記希釈用バッファにより酵素活性が0.025〜0.04LU/mlになるよう調整して、酵素活性の異なる複数の標準サンプル溶液を作製する。酵素サンプル溶液には、防汚洗浄剤のベースを標準酵素溶液に加える。尚、防汚洗浄剤のベースは、酵素が含まれる防汚洗浄剤を高温処理して用いても良い。
【0024】
前記各検体溶液を2mlづつ入れた試験管を約40℃の高温槽に約2分間浸し、加温した標準酵素溶液に油脂成分として脂肪酸エステルの基質溶液2.5mlを加え、攪拌して恒温槽に戻す。標準サンプルに基質を加えてから、約15秒経過後、標準酵素溶液と同じく2.5mlの基質溶液を加えて攪拌し、恒温槽に戻す。検体である標準酵素溶液と酵素サンプル溶液に対して上記の作業を繰り返す。即ち、15秒間隔で基質溶液を添加し、40℃でインキュベートする。前記基体溶液を追加してから25分経過後、0℃〜4℃に冷却された脱イオン水5mlを加えて攪拌する。この操作を15秒間隔で繰り返し、分光光度計で測定されるまでの間、各検体は氷冷水に漬けておく。脱イン水で0点調整を行った後、405nmにおける標準酵素溶液と酵素サンプル溶液の吸光度を測定している。
【0025】
得られた標準酵素溶液の吸光度から、次式により計算を行う。
ΔA405=A405(検体の吸光度)−B405(ブランクの吸光度)
X軸側を標準酵素溶液の活性値LU/mlとし、Y軸にΔA405をプロットして標準酵素溶液の測定結果から検量線の直線式を導出する。検量線の直線式を用いて酵素サンプル溶液のΔA405から活性値LU/mlを見積もる。更に、以下の式から、酵素サンプル溶液1g中の活性値を算出する。
活性値=A×B/C
ここで、Aは前記直線式から見積もられた1ml当たりの活性値、Bは酵素サンプル溶液の希釈倍率、Cはサンプル重量(g)である。本発明に係る防汚洗浄剤は、酵素活性が1LU/g以上の油脂分解酵素を用いている。
【0026】
配合される油脂分解酵素の酵素活性が発現するためには、酵素と共に水分が存在する必要があり、防汚洗浄剤に配合される吸湿剤により水分が保持される。吸湿剤には、ポリカルボン酸ソーダやDL−ピロリドンカルボン酸ソーダ、グリセリン(ジ・トリ・ペンタ・ポリ)、プロピレングリコールや1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール、無機類では塩化カルシウムや塩化マグネシウム等が用いられる。
酵素の不安定性を解消するため、酵素安定化剤を配合される。酵素安定化剤としては、グリシン、リジン等のアミノ酸類、ソルビット、マルチトール、キシリトール等の多糖類、グリセリン(ジ・トリ・ペンタ・ポリ)、プロピレングリコールや1,3-ブチレングリコール等の多価アルコールが用いられる。更に、溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール系溶剤やイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤が用いられる。調整水としては、イオン交換樹脂、蒸留、逆浸透等により得られた精製水を用いることが好ましい。
【0027】
表1には、本発明に係る防汚洗浄剤が油脂分解酵素(リパーゼ)を約0.001mass%〜10mass%含有する場合の配合比と配合成分を示す。使用したリパーゼの力価は100KLU/gのである。実施例として示した試料1〜5の防汚洗浄剤では、表1に示すように油脂分解酵素であるリパーゼと共に吸湿剤としてDL−ピロリドンカルボン酸ソーダが配合されている。前述のように、リパーゼの酵素活性が機能するためには水分が存在する必要があり、表1の防汚洗浄剤では、DL−ピロリドンカルボン酸ソーダにより水分が保持される。表1の試料1〜5は、リパーゼの配合量が0.001mass%〜10mass%の範囲に設定されており、試料1〜5の防汚洗浄剤は油汚れ等に対する防汚・洗浄効果があることが確認されている。0.001mass%未満の場合、洗浄後に明確に認識できる程度の防汚・洗浄効果が見られなかった。
また、リパーゼの配合量が10mass%を越えると、配合量の増加に伴う防汚・洗浄効果の増強が抑制される傾向にあることが確認されている。即ち、リパーゼの配合量が10mass%を越えると酵素活性が効率的に発現することが困難となってくると考えられ、吸湿剤や酵素安定化剤の配合量を適宜に調整することにより水分や酵素の安定性を付与する必要がある。前述のように、表に示す試料では、酵素活性が100KLU/gのリパーゼが用いられており、リパーゼの配合量が10mass%である場合、酵素活性の失活が無ければ、防汚洗浄剤の酵素活性は10KLU/gとなる。同様に、酵素活性の失活が無ければ、リパーゼの配合量が0.001mass%である場合、防汚洗浄剤の酵素活性は10LU/gとなり、防汚洗浄剤として利用可能な酵素活性が保持されることになる。
【0028】
【表1】

【0029】
表2には、本発明に係る防汚洗浄剤が油脂分解酵素(リパーゼ)を約1mass%含有する場合の配合比と配合成分を示す。実施例として示した試料6〜11の防汚洗浄剤では、表1の防汚洗浄剤と同様に、リパーゼと共に吸湿剤としてDL−ピロリドンカルボン酸ソーダが配合されている。吸湿剤により水分が保持されるが、どの程度の吸湿剤が配合すれば、望ましい酵素活性が保持されるかを吸湿剤の配合量を変化させて防汚・洗浄効果を確かめている。台所用のステンレス素材及びタイル素材に防汚洗浄剤を塗布した後、植物油を用いて防汚効果を確認している。即ち、使用者が防汚効果を実感できる程度の効果があるかどうかを確認した。また、植物油を塗布した後、防汚洗浄剤により洗浄して確認を行っている。表2の試料6では、吸湿剤の配合量が約1mass%に設定されているが、防汚・洗浄作用が確認されており、試料6〜試料10ではより好ましい防汚・洗浄を有することを確認している。更に、吸湿剤が1mass%未満の場合、防汚・洗浄効果を確認することが困難となる。試料11では水の配合量を減らし、ほぼ吸湿剤だけで水分が保持されるものを想定して作製された試料である。試料11を用いた場合においても防汚・洗浄効果を有することが確認されており、吸湿剤の配合により酵素活性が十分に保持されることを確かめている。油脂分解酵素、溶剤、酵素安定化剤などを配合することを考慮すれば、吸湿剤の配合比は、90mass%以下であることが好ましく、80mass%以下であることがより好ましい。
【0030】
【表2】

【0031】
表3の試料12〜16は、リパーゼを約3mass%含有する防汚洗浄剤であり、表4の試料17〜20は、リパーゼを約5mass%含有する防汚洗浄剤である。表2と同様に、リパーゼと共に配合されるDL−ピロリドンカルボン酸ソーダの配合比を変化させている。表3、表4に示すように、リパーゼの含有量が約3mass%と約5mass%の場合においても、前述の試験方法により防汚・洗浄効果があることが確認されている。更に、リパーゼの配合比を増加させる場合、吸湿剤の配合比を増加させることにより、防汚・洗浄効果が向上することを確認している。
【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
[第2の実施形態]
本発明に第2の実施形態は、第1の実施形態に含まれる油脂分解酵素、吸湿剤、酵素安定化剤、溶剤及び調整水と共に、界面活性剤、アルカリ剤が配合される防汚洗浄剤である。表5に示すように、油脂分解酵素としてはリパーゼ (novozymes社製、LIPEX)、吸湿剤にはグリセリンとピロリドンカルボン酸ナトリウム(PCA−Na)、酵素安定化剤にはアガロース、溶剤には3−メトキシ−3−メチルブタノ−ル、調整剤として精製水、界面活性剤には、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(日本油脂(株)製、商品名:ノニオンOT−221)、アルカリ剤として重炭酸ソーダが配合されている。尚、安定化剤として配合されたアガロースには固定化剤としての機能も有し、対象物にリパーゼを固定化することができる。界面活性剤によって油脂成分を均一に分散させ、リパーゼにより分解し、この過程で生成された脂肪酸をアルカリ剤で中和し石鹸化することにより、高効率に油脂成分からなる汚れを除去することができる。
【0035】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る防汚洗浄剤によれば、吸湿剤により油脂分解酵素の活性に必要な水分が保持されるから、油脂分解酵素の酵素活性により油脂成分を高効率に分解することができる。更に、安定化剤を添加すれば、油脂分解酵素が対象物に安定に固定され、好適な防汚効果を保持することができる。従って、キッチンのレンジフード周り、換気扇周り、コンロ周り、壁周りや電子レンジ内、オーブン内、ファンの中などの油汚れに対する防汚・洗浄作用を格段に向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂分解酵素と吸湿剤を少なくとも含有することを特徴とする防汚洗浄剤。
【請求項2】
前記油脂分解酵素の酵素活性が1LU/g以上である請求項1に記載の防汚洗浄剤。
【請求項3】
前記油脂分解酵素の安定化剤を添加した請求項1又は2に記載の防汚洗浄剤。
【請求項4】
前記油脂分解酵素の固定化剤を添加した請求項1、2又は3に記載の防汚洗浄剤。
【請求項5】
溶剤を添加して液体防汚洗浄剤にした請求項1〜4のいずれかに記載の防汚洗浄剤。
【請求項6】
前記液体防汚洗浄剤中にアルカリ剤及び/又は界面活性剤を添加した請求項5に記載の防汚洗浄剤。
【請求項7】
前記油脂分解酵素の含有量が0.001mass%〜10mass%、前記吸湿剤の含有量が1mass%〜80mass%である請求項1〜6のいずれかに記載の防汚洗浄剤。

【公開番号】特開2009−286917(P2009−286917A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141796(P2008−141796)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【Fターム(参考)】