説明

防汚組成物

【課題】
【解決手段】本発明は、防汚塗料組成物用のバインダとしてのポリオキサレートの使用方法、及びそのポリオキサレートを含む防汚塗料組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚塗料組成物用のバインダとしてのポリオキサレートの使用、そのようなバインダを含む防汚塗料組成物、及び所定の好ましいポリオキサレート自体に関する。
【背景技術】
【0002】
海水中に沈められる表面は、緑藻や褐藻、フジツボ、イガイ、棲管虫等の海洋生物による汚損にさらされる。船舶、石油採掘用プラットフォーム、ブイ等の海洋構造物にとってそのような汚損は好ましくなく、経済的な結果を招く。汚損は、表面の生物学的な劣化、負荷の増大や腐食の促進を招き得る。船舶に対して、汚損は摩擦抵抗を増加させ、速度の低下及び/または燃料消費量の増加を引き起こす。汚損は、操縦性の低下の原因にもなり得る。
【0003】
海洋生物の定着や増殖を防止するために防汚塗料が用いられる。一般的に、これらの塗料には、薄膜形成バインダが、顔料、充填剤、溶剤や生物活性物質等の他の成分と共に含まれている。
【0004】
2003年まで、市場で最も成功を収めた防汚塗料システムはトリブチル錫(TBT)自己研磨型共重合体システムであった。これらの防汚塗料用のバインダシステムは、トリブチル錫ペンダント基の線状アクリル共重合体であった。その共重合体は海水中で徐々に加水分解され、効果的な殺生剤であるトリブチル錫を放出した。カルボン酸基を含む残りのアクリル共重合体は目下海水に十分溶けやすく、または分散可能な状態となり、塗料の表面から洗い流される、あるいは侵食される。この自己研磨効果によって、塗料中の生物活性化合物の放出が調整されたものとなり、優れた防汚効率と滑らかな表面がもたらされ、それゆえに摩擦抵抗が低減された。
【0005】
2001年の国際海事機関条約「船舶についての有害な防汚方法の管理に関する国際条約」により、2003年から新たなTBT含有防汚塗料の使用が禁止され、そして2008年からは船舶船体に対してTBT含有防汚塗料が禁止された。
【0006】
TBTの禁止の結果として、近年、新たな防汚塗料システムが開発及び導入されている。今日、市場で殺生性防汚塗料の広範な一群を成しているのが、TBT自己研磨型共重合体塗料を模倣した自己研磨型防汚塗料である。これらの防汚塗料は、殺生特性のない加水分解性のペンダント基を有する(メタ)アクリル共重合体に基づいている。この加水分解メカニズムは、TBT含有共重合体のものと同じである。これによって、重合体の溶解が同じように調整され、塗膜からの防汚化合物の放出が調整され、TBT含有防汚塗料システムと同様の性能がもたらされる。今日、最も成功を収めている自己研磨型防汚システムは、シリルエステル官能性(メタ)アクリル共重合体に基づいている。これらの塗料組成物は、例えば、欧州特許第0646630号(特許文献1)、欧州特許第0802243号(特許文献2)、欧州特許第1342756号(特許文献3)、欧州特許第1479737号(特許文献4)、欧州特許第1641862号(特許文献5)、WO00/77102号(特許文献6)、WO03/070832号(特許文献7)、及びWO03/080747号(特許文献8)に記載されている。
【0007】
上記の防汚塗料システムは、高分子骨格上のペンダント基の加水分解によって分解され、それにより水侵食性(water-erodable)重合体となる。高分子骨格上のペンダント基の加水分解の結果、カルボン酸塩が形成されて重合体が親水性となり、その結果侵食性になる。十分な親水性、及び加水分解後の侵食性重合体を得るには、加水分解性の基が所定量必要となる。この技術の不利な点の1つは、重合体の分子量によって侵食速度が左右され、分子量の大きい重合体の場合、重合体鎖のからみ合いによって侵食速度がより低くなる。また、シリルエステル共重合体技術は高コストである。
【0008】
水侵食性重合体を得るための他の方法は、加水分解性の基を高分子骨格に導入することによって重合体構造を分解し、重合体薄膜または塗膜の侵食を生じさせるというものである。ポリ無水物は、骨格の加水分解によって分解される重合体の一種である。ポリ無水物は、その表面分解特性から多くの文献に記載されている。表面分解は、良好な防汚塗料を得る上で最も重要な要因の中の1つである。防汚塗料組成物のバインダとして特定の芳香族ポリ無水物を用いることが、例えばWO2004/096927号(特許文献9)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第0646630号明細書
【特許文献2】欧州特許第0802243号明細書
【特許文献3】欧州特許第1342756号明細書
【特許文献4】欧州特許第1479737号明細書
【特許文献5】欧州特許第1641862号明細書
【特許文献6】国際公開第00/77102号パンフレット
【特許文献7】国際公開第03/070832号パンフレット
【特許文献8】国際公開第03/080747号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2004/096927号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、無水物基は水分の存在下では非常に不安定であるため、防汚塗料組成物で用いるために、加水分解がゆっくりで、かつ調整されたポリ無水物に基づく塗料システムを設計するのは難しい。従って、防汚塗料組成物に用いられるポリ無水物は、加水分解を調整するために、概して芳香族単位の含有量が多い。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、我々は、ポリオキサレートが、防汚塗料のバインダとして用いるのに適した共重合体の一種であることを見出した。ポリオキサレートを用いて形成した塗膜は、ポリオキサレートの高分子骨格の分解によって、必要な表面分解を呈する。これらの化合物における骨格の加水分解は、ポリ無水物のものよりさらに調整されている。オキサレート単位における隣接した2つのカルボニル基によって、エステル基が活性化され、加水分解に対して不安定になる。ポリオキサレートは、無水物よりも一般的な有機溶剤への溶解性が優れており、防汚塗料組成物で用いられる芳香族ポリ無水物よりも、適応性のある塗膜が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
高分子骨格を介して加水分解する自己研磨型バインダを用いることの利点として、架橋重合体や高分子量の重合体の侵食が可能となる点が挙げられる。現在市販の溶液、即ちシリル技術よりもポリオキサレート技術が有利である最大の点の1つは、バインダのコストがはるかに安いことである。ポリオキサレートは、VOC(揮発性有機化合物)含有量の面で法律への適合がより容易な防汚組成物の形成も可能にする。今日、どのような防汚塗料も、VOC含有量が400g/L未満であることが非常に好ましい。シリル共重合体に基づくバインダシステムを用いるよりも、ポリオキサレートバインダを用いた方が、これをより容易に達成できる。
【0013】
ポリオキサレートは新しい化合物ではない。欧州特許出願第1505097号には、成形品または薄膜の形成に適しているとして様々なポリオキサレートが記載されている。他の多くの文献にも様々なポリオキサレートの形成が記載されているが、海洋を中心に用いられる物品(marine based article)用の防汚塗料組成物の自己研磨型バインダとして、これらの化合物が有用であると評価したものは、これまでに1つもない。
【0014】
[発明の概要]
本発明の目的は、一般的な適用方法、例えば対象となる表面に塗料組成物を塗布する、あるいは噴霧することで使用が可能な防汚塗料組成物を提供することである。本発明は、良好な機械的特性、調整された自己研磨特性、及び良好な防汚性能の防汚塗膜も提供する。これらの目的は、防汚塗料組成物のバインダとしてポリオキサレートを用いることにより達成される。
【0015】
[発明を実施するための形態]
従って、本発明の一側面によれば、防汚塗料組成物のバインダとしての少なくとも1つのポリオキサレートの使用方法が提供される。
【0016】
本発明の他の側面によれば、防汚塗料組成物に用いるバインダが提供され、前記バインダはポリオキサレートを含む。
【0017】
本発明の他の側面によれば、少なくとも1つのポリオキサレートと、少なくとも1つのその他の成分とを含む防汚塗料組成物が提供される。特に、本発明は、少なくとも1つのポリオキサレートと、溶剤とを含む防汚塗料組成物を提供する。また、本発明は、少なくとも1つのポリオキサレートと、少なくとも1つの生物活性剤とを含む防汚塗料組成物を提供する。
【0018】
本発明の他の側面によれば、物体の汚損を防ぐ方法が提供され、前記方法は、汚損にさらされる前記物体の少なくとも一部に、前述の防汚塗料組成物を塗布する工程を含む。
【0019】
本発明の他の側面によれば、上記で規定した防汚塗料組成物が塗布された物体が提供される。
【0020】
バインダという用語は、係る技術における用語である。バインダは、実際に薄膜を形成する防汚組成物の成分である。バインダは、粘着性を付与し、組成物の成分を結合する。
【0021】
本発明で用いる前記少なくとも1つのポリオキサレートは、線状または分岐重合体であってもよい。共重合体、例えば、ランダム共重合体またはブロック共重合体であることが好ましい。ポリオキサレートの反復単位は、飽和及び/もしくは不飽和の脂肪族及び/もしくは脂環式の単位及び/または芳香族単位であってもよい。反復単位は置換されていなくても、置換されていてもよい。本発明のあらゆるポリオキサレートは、少なくとも2つのオキサレート単位、好ましくは少なくとも5つのオキサレート単位、例えば少なくとも8つのオキサレート単位を含むことが分かるであろう。
【0022】
本発明のポリオキサレートは、少なくとも1つのオキサレート単量体と少なくとも1つのジオール単量体との重合により形成されることが好ましい。
【0023】
本発明のポリオキサレートは、技術上公知で、かつ用いられている様々な方法のいずれかを用いた縮合重合により調製することができる。一般的な重縮合反応の例としては、シュウ酸とジオールとの直接エステル化反応;シュウ酸ジアルキルとジオールとのエステル交換反応;溶液中での塩化オキサリルとジオールとの反応;塩化オキサリルとジオールまたはジオールのアルカリ塩との、あるいはシュウ酸ナトリウムまたはシュウ酸カリウム等のシュウ酸のアルカリ塩とジオールとの界面縮合反応が挙げられる。重縮合反応は、溶融物として、あるいは溶液中で行うことができる。重合は、融解重縮合条件下で、あるいは溶液中で行うことができる。
【0024】
重縮合は、任意で触媒存在下で行われる。触媒は、マグネシウム、カルシウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、錫、リン、及びアンチモンの化合物から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。これらの化合物の中で有機金属化合物が好ましく、有機チタン化合物及び有機錫化合物がより好ましい。有機チタン化合物の例としては、チタン酸トリイソプロピル、チタンテトライソプロポキシド、チタングリコレート、チタンブトキシド、ヘキシレングリコールチタネートやチタン酸テトライソオクチル等のチタンアルコキシド類が挙げられる。有機錫化合物の例としては、2−エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート、トリス(2−エチルヘキサン酸)モノブチル錫、酸化ジブチル錫、酸化ジオクチル錫、及び酸化モノブチル錫が挙げられる。
【0025】
ポリオキサレートを調製するための出発原料は、前述の重合工程で指摘したように重合工程により異なる。とはいえ、ポリオキサレートはシュウ酸またはその誘導体、即ちオキサレート単量体から形成される。その誘導体とは、そのモノまたはジエステル、その一塩基または二塩基酸ハロゲン化物(例えば塩化物)、あるいは例えばそのアルカリ金属塩等のその塩を意味する。どの誘導体も下記のシュウ酸化合物の1つであることが理想的である。
【0026】
重合反応に用いられるオキサレート単量体は、シュウ酸のエステル、特にジエステルであってもよい。エステルは、アルキルエステル、アルケニルエステル、またはアリールエステルであってもよい。ポリオキサレートの調製に適したシュウ酸ジアルキル類の例としては、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジプロピルやシュウ酸ジブチルが挙げられる。
【0027】
本願全体を通して、どのアルキル基も1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を有してもよい。どのアルケニル基も2〜10個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子を有してもよい。どのアリール基も6〜20個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子を有してもよい。どの環式基も3〜20個の炭素原子、好ましくは4〜15個の炭素原子、特に5〜10の炭素原子を有し得る。
【0028】
シュウ酸ジアルキルが好ましい。
【0029】
他の好ましいオキサレート単量体は、シュウ酸、塩化オキサリル及びシュウ酸の塩、例えば、シュウ酸ナトリウムまたはシュウ酸カリウム等のそのアルカリ金属塩である。
【0030】
本発明のポリオキサレートの調製に用いられるオキサレート単量体の混合物も本発明の範囲に含まれる。混合物を用いる場合、2つのシュウ酸アルキルを用いることが好ましい。とはいえ、1つのオキサレート単量体のみを重合反応に用いることが理想的である。
【0031】
ポリオキサレートの調製用のジオールの例としては、飽和脂肪族及び飽和脂環式ジオール、不飽和脂肪族ジオール、または芳香族ジオールが挙げられる。線状または分岐飽和脂肪族ジオールが好ましい。
【0032】
好ましいジオールとしては、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、1,2−シクロへキサンジオール、1,3−シクロへキサンジオール、1,4−シクロへキサンジオール、1,2−シクロへキサンジメタノール、1,4−シクロへキサンジメタノール、シクロドデカンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートやその混合物等のC3-20脂肪族またはC4-20脂環式ジオール類が挙げられる。好ましいジオールは、C3-10脂肪族またはC5-10脂環式ジオール類である。
【0033】
最も好ましいジオールは、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールおよびその混合物である。
【0034】
特に、本発明のポリオキサレートを製造上で用いられる少なくとも1つのジオールが、最高で20個の炭素原子、例えば5〜15個の炭素原子を有する飽和脂肪族分岐ジオールであれば好ましい。少なくとも2つの飽和分岐ジオール、または線状もしくは環状飽和ジオールと飽和分岐ジオールとの混合物を用いることが好ましい。
【0035】
分岐ジオールを用いる場合、それが重合反応に用いるジオール成分の少なくとも50重量%を占めることが好ましい。
【0036】
好ましい不飽和脂肪族ジオールは、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,2−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオールやモノオレイン等のC4−20不飽和脂肪族ジオール類である。
【0037】
好ましい芳香族ジオールは、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、ピロカテコール、1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、ビスフェノールAF、ビスフェノールAP、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンや1,8−ナフタレンジメタノール等のC6−20芳香族ジオール類である。
【0038】
上記のジオールは単独で、または2つ以上のジオールを組み合わせて用いることが出来る。本発明のポリオキサレートを製造上で、2つ以上のジオールの混合物を用いることが好ましい。
【0039】
ポリオキサレートの調製用の出発原料は、シュウ酸またはその誘導体とジオールとのモル比が2より小さく、かつ0.5より大きくなるように用いることが好ましく、1.0を上回らないように用いることがより好ましい。いくつかの実施形態において、特にポリオキサレートを硬化して用いる場合にジオールが過剰になる。他の実施形態において、特に塗料が物理的乾燥塗料(physical drying coating)である場合にオキサレート単量体が過剰になる。
【0040】
ポリオキサレートを、脂肪族または脂環式ジオールから調製することが好ましい。従って、ポリオキサレートを形成するのに用いられるジオール全体のうち、脂肪族または環式脂肪族ジオールが少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも75モル%、任意で100モル%を占めることが好ましい。
【0041】
ジオール全量中、芳香族ジオールの量は好ましくは50モル%以下、より好ましくは25モル%以下、最も好ましくは10モル%以下であるべきである。ジオール全量中、不飽和脂肪族ジオールの量は好ましくは10モル%以下であるべきである。
【0042】
ポリオキサレート重合体構造は、重合体特性に影響を及ぼす。重合体における分岐や「星」状重合体は、有機溶剤への溶解性、ポリマーブレンドにおける混和性や機械的特性等の重合体特性を変更する上で有利に用いることができる有用な構造変数の例である。
【0043】
ポリオキサレートにおいて分岐または星状構造を得るためには、2個を上回る官能基、例えば、重合反応に係わることが可能な3つの官能基を有する化合物の存在下で重縮合を行う。好適な化合物の例としては、ポリオール類、例えばグリセロール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ジ(トリメチロールプロパン)1,2,7,8−オクタンテトロールトリグリセロール、ジペンタエリトリトール、ピロガロールやフロログルシノール等のC3−20ポリオール類;
ポリカルボン酸類、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸やピロメリト酸等のC4−20ポリカルボン酸類;
トリメリット酸トリメチル等のポリカルボン酸のアルキルエステル類;及び
無水トリメリット酸やピロメリット酸二無水物等のポリカルボン酸の無水物類が挙げられる。「ポリ」という用語は、これらの分岐単量体に関連して、分子中に3つ以上の官能基(即ち、酸基、ヒドロキシル基等)が存在するという意味で用いている。従って、これらの基は、高分子骨格を離れて高分子側鎖の形成を可能にする。
【0044】
他の好適な多官能化合物の例としては、リンゴ酸、酒石酸、及びクエン酸が挙げられる。
【0045】
2個を上回るヒドロキシル基を有するポリオール類は、分岐及び「星」状ポリオキサレートを得る上で好ましい化合物である。例えばポリオール等、どの分岐反応体の量も、その反応体の種類、例えばジオール/ポリオールを合わせた全量中、好ましくは10モル%以下であるべきである。分岐があまり過ぎるとゲル化が生じ、組成物を物体に塗布できなくなる。
【0046】
ポリオキサレートの重合体特性を調整するために、任意で他の官能性化合物をコモノマーとして含んでもよい。そのような化合物は、加水分解速度や機械的特性等の変数を調整するために用いられてもよい。これらの官能性化合物は、好ましくは2つの反応性官能基、例えば2つのエステル、酸、アミノもしくはヒドロキシル基、またはその組み合わせを有し、二官能化合物と呼ばれる。これらの化合物は、重合工程において別の単量体を形成することができる。好適な二官能化合物の例としては、
テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジメチル、マロン酸ジメチル、ジメチルイソブチルマロネート、コハク酸ジメチル、グルタール酸ジメチル、アジピン酸(adiapte)ジメチル、ピメリン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、ブラシル酸ジメチル、グルタコン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、ジエチルメチルマロネート、コハク酸ジエチル、グルタール酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジエチル、スベリン酸ジエチル、アゼライン酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、コハク酸ジブチル、アジピン酸ジブチルやセバシン酸ジブチル等のジカルボン酸のアルキルエステル類;
テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−フェニレン二酢酸、1,3−フェニレン二酢酸、1,2−フェニレン二酢酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、イソブチルマロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、ブラシル酸、グルタコン酸や二量体脂肪酸等のジカルボン酸類;
無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタル酸、無水ジグリコール酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、5−ノルボルネン−2,3−無水ジカルボン酸や1,8−無水ナフタル酸等の無水ジカルボン酸類;
メチル3−ヒドロキシベンゾアート、メチル4−ヒドロキシベンゾアート、バニリン酸メチル、メチル4−ヒドロキシフェニルアセテート、エチル3−ヒドロキシベンゾアート、エチル4−ヒドロキシベンゾアート、メチル3−ヒドロキシブチラート、メチル2−ヒドロキシイソブチラート、メチル10−ヒドロキシデカノエート、エチル3−ヒドロキシブチラート、エチル2−ヒドロキシイソブチラート、エチル2−ヒドロキシヘキサノエートやエチル6−ヒドロキシヘキサノエート等のヒドロキシル官能性カルボン酸のアルキルエステル類;
サリチル酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、バニリン酸、2−ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸やリシノール酸等のヒドロキシル官能性カルボン酸類;
1,2−エタンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−及び2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、O,O’−ビス(3−アミノプロピル)エチレングリコール、O,O’−ビス(3−アミノプロピル)ジエチレングリコール、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−オキシジアニリンや1,1,1−トリス(アミノメチル)エタン等のジアミン類が挙げられる。
【0047】
ここで用いるジカルボン酸のアルキルエステル、無水ジカルボン酸類、ジアミン類、ヒドロキシル官能性カルボン酸、ヒドロキシル官能性カルボン酸またはジカルボン酸のアルキルエステルのいずれも最高で20個の炭素原子を有し得る。
【0048】
本発明のポリオキサレートの製造に用いるのに特に好ましい組み合わせは、オキサレート単量体と上記で規定した二官能化合物の組み合わせである。最も特に、二官能化合物は少なくとも1つのカルボン酸基またはそのエステル、好ましくは2つのカルボン酸基またはそのエステルを含有する。従って、特に好ましい反応体の組み合わせは、オキサレート単量体とジカルボン酸のアルキルエステル、無水ジカルボン酸、またはジカルボン酸である。
【0049】
ポリオキサレート共重合体は、全ての出発原料を重合の前に混合することにより得られる。全ての反応体を混合することにより生成するポリオキサレートは、概して、用いられる全ての単量体の統計的ランダムポリマーとなる(即ち、組み込まれる各単量体の量は、出発混合物における各単量体の量を本質的に反映する)。ポリオキサレートブロック重合体は、2つの単量体のみの初期重合の後の重合工程で出発材料を追加的に添加すること、または互いに結合したブロック重合体を調製することのいずれかにより得られる。
【0050】
重合条件は大幅に多様であってもよいが、一般的に100〜250℃、例えば150〜220℃の温度が用いられる。縮合重合の間、凝縮液(一般的に水またはアルコール)が形成される。これを重合が続く間に蒸留により取り除くのが好ましい。これは減圧下で達成することができる。重合は不活性雰囲気中、例えば窒素中で行うことが好ましい。
【0051】
本発明のポリオキサレートの数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは1,000〜40,000、特に1,000〜10,000である。
【0052】
本発明のポリオキサレートの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜200,000、例えば1,000〜100,000、より好ましくは1,000〜40,000、特に1,000〜25,000である。いくつかの実施形態において、Mwは10,000〜40,000、例えば20,000〜40,000であり得る。
【0053】
特に、物理的乾燥塗料の場合、Mwは好ましくは20,000〜40,000であるべきである。これにより、良好なフィルム特性の形成が確実となり、受忍可能な溶解性が維持される。硬化性システムの場合、Mwは好ましくは1,000〜10,000であるべきである。
【0054】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ポリオキサレートが非結晶質である。非結晶質とは、ポリオキサレートが認識可能な融点を有さない、即ちポリオキサレートが結晶質ではないことを意味する。非結晶質のポリオキサレートを用いると、防汚塗料組成物に一般的に用いられる有機溶剤への溶解性が高まるため、非結晶質のポリオキサレートを用いることが好ましい。とはいえ、そのような非結晶質重合体が、防汚塗料組成物の自己研磨型バインダとして良好に用いることができることは注目に値する。
【0055】
一部のポリオキサレートは、他の分野での利用が技術上知られているが、本発明に用いるのに適したポリオキサレートの一部は新しいものであり、本発明の更なる側面を形成する。
【0056】
従って、本発明の他の側面によれば、少なくとも1つのシュウ酸またはその誘導体と、少なくとも2つのジオールとの縮合重合により得られるポリオキサレートが提供され、前記ジオールの少なくとも1つは、最高で20個の炭素原子を有する飽和分岐ジオールである。
【0057】
少なくとも2つの飽和分岐ジオールを用いる、または線状もしくは環状飽和ジオールと飽和分岐ジオールとの混合物を用いることが大いに好ましい。いずれのジオールも最高で20個の炭素原子、例えば最高で10個の炭素原子を有し得る。好ましいジオール類は前述してある。
【0058】
一実施形態において、前記少なくとも1つのポリオキサレートは、物理的乾燥塗料組成物、即ち溶剤等の揮発性成分の蒸発によって乾燥する防汚塗料組成物のバインダとして作用する。通常、これらの組成物には硬化剤が含まれていない。物理的乾燥塗料において、バインダの溶解性は重要である。そのような塗料組成物のポリオキサレートは、好適な固形分、及び一般的な方法で使用するための好適な特性を有する塗料組成物の形成を可能にするため、用いられる有機溶剤に大いに溶けやすくなければならない。
【0059】
従って、本発明で用いるどのポリオキサレートも、防汚塗料組成物に用いられる溶剤に対して、少なくとも50重量%、好ましくは溶剤に対して少なくとも75重量%、例えば溶剤に対して少なくとも95重量%の溶解性を有することが好ましい。従って、例えば少なくとも1kgのポリオキサレートは1kgの溶剤に溶解すべきである。好ましい溶剤は後述する。キシレンが特に好ましい。
【0060】
従って、前記少なくとも1つのポリオキサレートが、防汚塗料組成物の少なくとも3重量%、例えば少なくとも5重量%、あるいは少なくとも10重量%を占めれば好ましい。当業者は、用いられるポリオキサレートバインダの程度が、用いられる防汚塗料化合物の量、例えば亜酸化銅の量により異なることを理解するだろう。
【0061】
ポリオキサレートの溶解性は、例えば、柔軟な構成単位を用いる、及び/または多官能構成単位、特に前述の二官能構成単位を用いて重合体を分岐することにより改善することができる。
【0062】
別の実施形態において、本発明は、硬化性防汚塗料組成物のバインダとしてのポリオキサレートの使用方法に関する。ポリオキサレートは、鎖伸張剤または架橋剤等の硬化剤に反応する官能末端基を有する。結果として生じる硬化塗膜は、概して改善された加水分解性と機械的特性とを有する。硬化性塗料は、揮発性有機化合物(VOC)の程度が低く、また一般的な適用方法で用いることができるように粘度が十分に低い防汚塗料組成物を提供するために通常用いられる。
【0063】
末端基の官能性は、出発原料、出発原料の割合、及び調製工程により異なる。端末基は、広範な硬化反応に適した他の官能基に容易に変更することができる。硬化性端末基の例としては、ヒドロキシル基、エチレン性不飽和基、及びエポキシ基が挙げられる。
【0064】
ポリオキサレート、特に、重縮合反応において過多のジオールを用いて調製したポリオキサレートは、ヒドロキシル末端基を有し得る。これらの末端基は、イソシアネート単量体、イソシアネート重合体やイソシアネートプレポリマー等の硬化剤に反応する。
【0065】
エポキシ基は、例えばポリオキサレート中のヒドロキシル基をエピクロロヒドリンと反応させることによって導入されてもよい。
【0066】
(メタ)アクリル基等のエチレン性不飽和基は、例えばポリオキサレート中のヒドロキシル基をアクリル酸またはメタクリル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸と反応させることによって導入し得る。
【0067】
従って、ポリオキサレートという用語は、ここでは、硬化性末端基を生来的に含むか、あるいは硬化性末端基を含むように変更された化合物をその範囲に含むために用いている。硬化性末端基を含むように変更された化合物は、具体的に末端基改質ポリオキサレートと呼ばれることがある。
【0068】
防汚塗料と硬化剤との混合は、塗料を物体に塗布する直前、例えば塗布の1時間前以内に行われることが分かるだろう。従って、塗料が、物体に塗布される前に硬化してしまうのを防ぐために、硬化剤を残りの防汚塗料組成物とは別に提供することが好ましい。よって、本発明の塗料組成物をマルチパック(好ましくは2パック)の調合物として提供することができる。
【0069】
従って、本発明の別の側面によれば、(I)少なくとも1つのポリオキサレート、例えばここで記載したようなものを含む防汚塗料組成物と、(II)少なくとも1つの硬化剤とを含むキットが提供される。
【0070】
硬化性であり、かつ硬化された自己研磨型防汚塗料組成物は、これまでに製造されたことがなかったとも考えられる。従って、本発明の他の側面によれば、硬化性の、または硬化された自己研磨型防汚塗料組成物が提供される。
【0071】
自己研磨型塗料という用語は、係る技術における用語であり、ここでは侵食性で加水分解性の塗料を表わすために用いている。
【0072】
従って、硬化性防汚塗料組成物は、1パックシステムであり得るが、マルチパックシステムであることが好ましい。塗布直前に成分を混合するための説明書と共に提供されるであろう。
【0073】
従って、防汚塗料組成物に硬化剤が全く含まれないで提供されるのが好ましい。とはいえ、塗布の間、及び一度塗布されてからは、防汚塗料組成物に硬化剤が含まれていれば好ましい。
【0074】
本発明の防汚塗料組成物は、好ましくは45重量%を上回る、例えば、55重量%を上回る等、50重量%を上回る固形分を有するべきであり、60重量%を上回ることが好ましい。
【0075】
より好ましくは、防汚塗料組成物の揮発性有機化合物(VOC)の含有量は400g/L未満、例えば390g/L未満であるべきである。VOC含有量は、添加された硬化剤を含むか、またはそのような硬化剤を含まない防汚塗料組成物について測定可能である。硬化剤が用いられる場合、硬化剤を混和した混合物のVOC含有量が好ましくは400g/L未満、より好ましくは375g/L未満、特に350g/Lであれば好ましい。VOC含有量は算出(ASTM D5201−01)または測定することができるが、測定が好ましい。
【0076】
本発明のポリオキサレートは海水中で分解され、出発原料と同様の、または同一の構造単位を有する化合物が放出される。海洋生物に対して生物活性的な出発原料は、防汚剤としてそれ自体が作用するポリオキサレートを生じ得る。しかしながら、海洋生物に対して生物活性的ではない成分に分解されるポリオキサレートを生じる化合物から出発原料を選ぶことが好ましい。そのような場合、本発明の防汚塗料組成物は、物体の汚損を防ぐことが可能な少なくとも1つの化合物、例えば生物活性剤、特に殺生剤を含む必要がある。
【0077】
本発明の防汚塗料組成物は、少なくとも1つのポリオキサレートと、少なくとも1つのその他の成分とを含む。
【0078】
本発明の防汚塗料組成物は、1つ以上の生物活性剤を含むことが好ましい。本発明の防汚塗料組成物が生物活性ポリオキサレートを含んでいる場合でも、1つ以上の生物活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0079】
従って、本発明の他の側面によれば、先にここで規定したポリオキサレートと、少なくとも1つの生物活性剤、好ましくは殺生剤とを含む防汚塗料組成物が提供される。
【0080】
生物活性剤/化合物とは、海洋生物が表面に定着するのを防止する、及び/または海洋生物が表面で増殖するのを防止する、及び/または表面から海洋生物を取り除くのを促進するあらゆる化学化合物を意味する。無機生物活性化合物の例としては、例えば亜酸化銅や酸化第二銅といった酸化銅;例えば銅−ニッケル合金といった銅合金;例えばチオシアン酸銅や硫化銅といった銅塩;及びメタホウ酸バリウム等の銅及び銅化合物類が挙げられる。
【0081】
有機金属生物活性剤の例としては、ピリチオン亜鉛;ピリチオン銅、酢酸銅、ナフテン酸銅、オキシン銅、ノニルフェノールスルホン酸銅、ビス(エチレンジアミン)ビス(ドデシルベンゼンスルホン酸)銅やビス(ペンタクロロフェノール酸)銅等の有機銅化合物類;ビス(ジメチルジチオカルバメート)亜鉛、エチレンビス(ジチオカルバメート)亜鉛、エチレンビス(ジチオカルバメート)マンガンや、亜鉛塩とエチレンビス(ジチオカルバメート)マンガンとの錯体等のジチオカルバメート化合物類が挙げられる。
【0082】
有機生物活性化合物の例としては、2−(tert−ブチルアミノ)−4−(シクロプロピルアミノ)−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−(チオシアナトメチルチオ)−1,3−ベンゾチアゾールや2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン等の複素環式化合物類;3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア等の尿素誘導体類;N−(ジクロロフルオロメチルチオ)フタルイミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−p−トリルスルファミドやN−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド等のカルボン酸、スルホン酸、及びスルフェン酸のアミド及びイミド類;及びピリジントリフェニルボラン、アミントリフェニルボラン、3−ヨード−2−プロピニルN−ブチルカルバメート、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルやp−((ジヨードメチル)スルホニル)トルエン等の他の有機化合物類が挙げられる。
【0083】
生物活性剤の他の例としては、テトラアルキルホスホニウムハロゲン化物、グアニジン誘導体、メデトミジン及び誘導体等のイミダゾール含有化合物、オキシダーゼ、タンパク質分解、ヘミセルロース分解、セルロース分解、脂肪分解及びデンプン分解活性酵素等の酵素類が挙げられる。
【0084】
放出が調整されたものになるように、生物活性化合物を任意で不活性担体に内包させるかもしくは吸着させるか、または他の物質と結合させてもよい。
【0085】
生物活性化合物は、単独でまたは組み合わせて用いてもよい。これらの生物活性剤の使用は防汚塗料では公知であり、それらの使用を当業者は熟知しているだろう。
【0086】
本発明の防汚組成物における生物活性剤の全量は、0.5〜80重量%の範囲、例えば1〜70重量%であり得る。この成分の量は、最終用途や用いられる生物活性化合物によって変化することが分かるだろう。
【0087】
ポリオキサレート及び生物活性化合物に加えて、本発明に係る防汚塗料組成物は、他のバインダ、顔料、増量材及び充填材、脱水剤及び乾燥剤、添加物、溶剤及びシンナーの中から選択される1つ以上の成分を任意で含む。
【0088】
別のバインダを用いて、防汚塗膜の自己研磨特性及び機械的特性を調整することができる。ポリオキサレートに加えて、本発明に係る防汚塗料組成物に用いることが可能なバインダの例としては、ウッドロジン、トール油ロジンやガムロジン等のロジン材料;
硬化及び部分硬化ロジン、不均化ロジン、ロジン二量体、重合ロジン、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、ロジン及び硬化ロジンの他のエステル類、樹脂酸銅、樹脂酸亜鉛、樹脂酸カルシウム、樹脂酸マグネシウム、ロジン及び重合ロジンの他の樹脂酸金属類やWO97/44401号に記載の他のもの等のロジン誘導体類;
コパール樹脂やサンダラック樹脂等の樹脂酸及びその誘導体;アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、セコデヒドロアビエチン酸、ピマール酸、パラマトリニック酸(paramatrinic acid)、イソプリマル酸、レボプリマル酸、アガテンジカルボン酸、サンダラコピマル酸(sandaracopimalic acid)、ラウリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソノナン酸、バーサチック酸、ナフテン酸、トール油脂肪酸、ココナッツ油脂肪酸、大豆油脂肪酸やその誘導体等の他のカルボン酸含有化合物;
例えば、米国特許第4593055号、欧州特許第0646630号やノルウエー特許第20073499号に記載されたようなシリルエステル共重合体;
例えば、欧州特許第0204456号や欧州特許第0342276号に記載されたような酸基が1価有機残基に結合した2価金属によって;もしくは英国特許第2311070号や欧州特許第0982324号に記載されたようなヒドロキシル残基に結合した2価金属によって;または、例えば欧州特許第0529693号に記載されたようなアミンによって、塞がれた酸官能重合体;
例えば、英国特許第2152947号に記載されたような(メタ)アクリル共重合体や欧州特許第0526441号に記載されたようなポリ(N−ビニルピロリドン)共重合体や他の共重合体等の親水性共重合体;
ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリ(n−ブチルアクリレート−コ−イソブチルビニルエーテル)等の(メタ)アクリル重合体及び共重合体;
ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(エチルビニルエーテル)、ポリ(イソブチルビニルエーテル)、ポリ(ビニルクロリド−コ−イソブチルビニルエーテル)等のビニルエーテル重合体及び共重合体;
ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(2−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(4−ヒドロキシ吉草酸)、ポリカプロラクトンや前述の単位から選択される2つ以上の単位を含む脂肪族ポリエステル共重合体等の脂肪族ポリエステル類;
例えば、欧州特許第1033392号や欧州特許第1072625号に記載の金属含有ポリエステル類;
アルキド樹脂及び改質アルキド樹脂;及び
WO96/14362号に記載されたような他の縮合重合体が挙げられる。
【0089】
脱水剤及び乾燥剤は、顔料や溶剤等の原料から導入される水分、または防汚塗料組成物中のカルボン酸化合物と二価及び三価金属化合物との反応により形成される水を取り除くことで防汚塗料組成物の貯蔵安定性に寄与する。本発明に係る防汚塗料組成物に用いられ得る脱水剤及び乾燥剤としては、有機及び無機化合物がある。脱水剤及び乾燥剤の例としては、無水硫酸カルシウム、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸亜鉛、モレキュラーシーブやゼオライト;トリメチルオルソギ酸エステル、トリエチルオルソギ酸エステル、トリプロピルオルソギ酸エステル、トリイソプロピルオルソギ酸エステル、トリブチルオルソギ酸エステル、トリメチルオルソアセテートやトリエチルオルソアセテート等のオルソエステル類;ケタール類;アセタール類;エノールエーテル類;ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチルやトリ−tert−ホウ酸ブチル等のオルトボラート類;トリメトキシメチルシラン、テトラエチルシリケートやエチルポリシリケート等のシリケート類;及びp−トルエンスルホニルイソシアネート等のイソシアネート類が挙げられる。
【0090】
好ましい脱水剤及び乾燥剤は、無機化合物である。
【0091】
顔料の例としては、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、黒鉛やカーボンブラック等の無機顔料類;及びフタロシアニン化合物やアゾ顔料等の有機顔料類が挙げられる。
【0092】
増量剤及び充填剤の例としては、ドロマイト、プラストライト(登録商標)、方解石、石英、バライト、マグネサイト、アラレ石、シリカ、ウォラストナイト、タルク、緑泥石、マイカ、カオリンや長石等の鉱物類;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウムやシリカ等の合成無機化合物類;非被覆または被覆された中空及び固体ガラスビーズ、非被覆または被覆された中空及び固体セラミックビーズ、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−コ−エチレングリコールジメタクリレート)、ポリ(スチレン−コ−エチレングリコールジメタクリレート)、ポリ(スチレン−コ−ジビニルベンゼン)、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)といった高分子材料の多孔性及び圧密ビーズ等の高分子無機ミクロスフィア類が挙げられる。
【0093】
防汚塗料組成物に添加可能な添加剤の例としては、補強剤、チキソトロープ剤、増粘剤、沈降防止剤、可塑剤や溶剤がある。
【0094】
補強剤の例としては、フレークや繊維があり、繊維の例としては、ケイ素含有繊維、炭素繊維、酸化物繊維、カーバイド繊維、窒化物繊維、硫化物繊維、リン酸塩繊維、鉱物繊維等の天然及び合成無機繊維;金属繊維;セルロース繊維、ゴム繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド、ポリエステル繊維、ポリヒドラジド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエチレン繊維やWO00/77102号に記載されたような他のもの等の天然及び合成有機繊維が挙げられる。繊維の平均長は25〜2,000μm、平均厚みが1〜50μmで、平均長と平均厚みとの比が少なくとも5であることが好ましい。
【0095】
チキソトロープ剤、増粘剤、及び沈降防止剤の例としては、ヒュームドシリカ等のシリカ類、有機改質粘土、アミドワックス、ポリアミドワックス、アミド誘導体、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、硬化ひまし油ワックス、エチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムやそれらの混合物がある。
【0096】
可塑剤の例としては、塩化パラフィン、フタレート、リン酸エステル、スルホン酸アミド、アジピン酸エステル(塩)やエポキシ化植物油が挙げられる。
【0097】
一般的に、これらの任意の成分のいずれも、その量が防汚組成物の0.1〜50重量%、通常0.5〜20重量%、好ましくは0.75〜15重量%で存在できる。これら任意の成分の量は、最終用途により変化することが理解できるであろう。
【0098】
防汚組成物が溶剤を含んでいれば大いに好ましい。この溶剤は好ましくは揮発性であり、好ましくは有機溶剤である。溶剤は、0.05(n-BuAc=1)を上回る蒸発速度を有し得る。有機溶剤及び希釈剤の例としては、キシレン、トルエンやメシチレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、シクロペンタノンやシクロヘキサノン等のケトン類;ブチルアセテート、tert−ブチルアセテート、アミルアセテート、イソアミルアセテートやエチレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、n−ブタノール、イソブタノールやベンジルアルコール等のアルコール類;ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のエーテルアルコール類;ホワイトスピリット等の脂肪族炭化水素類;及び任意で2つ以上の溶剤及び希釈剤の混合物がある。
【0099】
好ましい溶剤は芳香族溶剤、特にキシレン、及び芳香族炭化水素類の混合物である。
【0100】
溶剤の量は可能な限り少ないことが好ましいが、少なくとも1つのポリオキサレートを溶解するのに十分な量であることが好ましい。溶剤の含有量は、最高で組成物の50重量%、好ましくは最高で45重量%、例えば最高で組成物の40重量%であるが、最低で15重量%以下、例えば10重量%以下であり得る。繰り返しになるが、当業者は、存在する他の成分や塗料組成物の最終用途により溶剤の含有量が変化することが分かるだろう。
【0101】
別の選択肢として、塗料を、塗料組成物の薄膜形成成分用の有機非溶剤に、または水性分散液に分散することができる。
【0102】
本発明の防汚塗料組成物は、汚損にさらされるあらゆる物体面の全体、またはその一部に適用可能である。その面は、(例えば、潮の動き、異なる積荷の荷重、または膨張によって)恒久的に、または断続的に水中にあってもよい。物体面は、通常、船舶の船体、あるいは石油採掘用プラットホームまたはブイ等の固定海洋物体の表面である。塗料組成物の適用は、例えば塗料を(例えばブラシまたはローラーを用いて)物体に塗布する、あるいは噴霧する方法等、あらゆる簡便な方法により実現することができる。塗布するには、通常、表面を海水から離す必要がある。技術上従来公知なように塗料の適用が実現できる。
【0103】
以下の非限定の実施例を参照して本発明を規定する。
【0104】
[重合体溶液粘度の測定]
重合体の粘度を、ASTM D2196に従って、LV−2又はLV−4のスピンドルを備えたブルックフィールドDV-I粘度計を用いて12rpmで測定する。測定の前に重合体を23.0℃±0.5℃に調整する。
【0105】
[重合体溶液の固形分の測定]
ISO3251に従って、重合体溶液中の固形分を測定する。0.6g±0.1gの検査試料を取り出し、送風乾燥機内で150℃で30分間乾燥させる。残留物質の重量は不揮発物(NVM)であると考えられる。不揮発物含有量を重量パーセントで表わす。示した値は3つの同等物の平均値である。
【0106】
[重合体平均分子量分布の測定]
重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって特徴付けられる。分子量分布(MWD)は、ポリマーラボラトリー社製PLgel5μmミックスD(Mixed-D)カラム2つを直列に備えたポリマーラボラトリー社製計器PL−GPC50を用い、テトラヒドロフラン(THF)を溶離剤として、室温で1ml/分の一定流量で屈折率(RI)検出器を用いて測定した。カラムを、ポリマーラボラトリー社製ポリスチレン基準物EasivialsPS-Hを用いて調整した。データをポリマーラボラトリー社製ソフトウエアCirrusを用いて処理した。
【0107】
25mgの乾燥重合体に相当する量の重合体溶液を、5mlのTHFに溶解して試料を調製した。試料を、GPC測定用にサンプリングする前に、室温で3時間最低限維持した。
【0108】
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及びMw/Mnで表わされる多分散性指数(PDI)を表に示す。
【0109】
[ガラス転移温度の測定]
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量(DSC)測定により得られる。DSC測定は、TA計器DSCQ200で行われた。少量の重合体溶液をアルミ製パンに移して試料を調製し、試料を50℃で10時間、150℃で1時間最低限乾燥させる。約10mgの乾燥重合体材料の試料を開いたアルミ製パン中で測定し、空のパンを基準に10℃/分の加熱及び冷却速度で走査を記録した。二度目の加熱時のガラス転移の初期値を、重合体のTgとして示す。
【0110】
[実施例1:溶融物中のエステル交換反応によりポリオキサレートを調製するための一般手順]
1.0モル相当のシュウ酸ジエチル、またはシュウ酸ジエチルとジカルボン酸エステルとの混合物と、1.0モル相当の1つ以上のジオールと、0.02モル相当の触媒との混合物を含む100gの出発原料を、電磁式かく拌器、温度計、凝縮器と窒素導入口とを備えた500mlの三つ口ガラスフラスコに充填する。混合物を、温度制御された油浴でゆっくりと窒素下で190℃に加熱しながら、凝縮水を蒸留する。排出口における温度が、凝縮水の沸点を超えないように加熱速度を制御する。凝縮水が理論量で80〜90%回収されるまで温度を190℃に維持する。窒素導入口を閉じ、真空状態にする。真空状態を徐々に調整して0.1mbarに下げる。温度を2〜4時間の間190℃に維持する。重合体溶融物を真空状態で約100℃に冷却する。真空状態を解除し、溶剤を加える。重合体溶液を室温に冷却する。
【0111】
表1のポリオキサレートPO−1〜PO−4をこの手順に従って調製する。
【0112】
【表1】

【0113】
[実施例2:溶融物中のエステル交換反応によりポリオキサレートを調製するための一般手順]
1.0モル相当のシュウ酸ジエチル、またはシュウ酸ジエチルとジカルボン酸エステルとの混合物と、1.05モル相当の1つ以上のジオールと、0.02モル相当の触媒との混合物を含む250gの出発原料を、機械式かく拌器、温度計、凝縮器と窒素導入口とを備え、温度制御された250mlの反応器に充填する。混合物を、190℃になるように窒素下でゆっくりと加熱しながら、凝縮水を蒸留する。排出口における温度が、凝縮水の沸点を超えないように加熱速度を制御する。凝縮水が理論量で80〜90%回収されるまで半重合反応を実施する。窒素導入口を閉じ、真空状態にする。真空状態を徐々に調整して100mbarに下げる。温度と真空状態を3時間維持する。重合体溶融物を真空状態で約100℃に冷却する。真空状態を解除し、溶剤を加える。重合体溶液を室温に冷却する。
【0114】
表2のポリオキサレートPO−5〜PO−19をこの手順に従って調製する。
【0115】
【表2】


【0116】
[実施例3:溶融物中のエステル化によりポリオキサレートを調製するための手順]
54.0gのシュウ酸、45.5gの1,4−シクロヘキサンジメタノール、50.5gの2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、0.498gの錫(II)2−エチルヘキサノエート、及び5.0gのキシレンを、機械式かく拌器、温度計、凝縮器、ウォータートラップと窒素導入口とを備え、温度制御された250mlの反応器に充填する。混合物を還流するまで窒素下でゆっくりと加熱する。反応器内の温度が210℃に達するまで、温度を継続的に調整して還流を維持した。温度を3.5時間の間210℃に維持した。理論量で約90%の水がウォータートラップで回収された。ポリマー溶融物を約100℃に冷却し、85.9gのキシレンを加えた。重合体溶液を室温に冷却した。得られたポリオキサレートのMwは2,800であり、PDIは1.9であった。
【0117】
[実施例4:防汚塗料組成物の調製のための一般手順]
成分を混合し、高速分散機を用いて30μmより小さい磨砕度に粉砕する。粉砕工程において、高いずり応力や温度に弱い成分はすべて降下方式(let-down)で添加する。調製した塗料組成物の組成を表3及び表4に示す。硬化剤及び硬化促進剤はすべて使用の直前に塗料組成物と混合する。
【0118】
[防汚塗料組成物の粘度の測定]
ASTM D4287に従って、コーンプレート粘度計を用いて防汚塗料組成物の高ずり粘度を測定する。
【0119】
[防汚塗料組成物の揮発性有機化合物(VOC)含有量の算出]
ASTM D5201に従って、防汚塗料組成物の揮発性有機化合物(VOC)含有量を算出する。
【0120】
[海水中の防汚塗膜の研磨速度の測定]
塗膜の膜厚の減少を経時的に測定して研磨速度を測定する。この実験のためにPVC製の円板を用いる。フィルムアプリケーターを用いて、塗料組成物を放射状のストライプとして円板に塗布する。乾燥した塗膜の厚みを好適な電子膜厚ゲージで測定する。PVC製の円板をシャフトに取り付け、海水が流通する容器内で回転させる。ろ過され、25℃±2℃に温度調整された天然の海水を用いる。膜厚を測定するために、PVC製の円板を一定の間隔で取り出す。円板を洗い、膜厚を測定する前に室温で一晩乾燥させる。
【0121】
【表3】

【0122】
【表4】

【0123】
表3及び表4の塗料と同時にテストを行った時の標準塗料の研磨速度は2.3μm/月であった。標準塗料は、高性能自己研磨型防汚塗料であり、バインダとして加水分解性のオルガノシリル重合体に基づくJotunAS社製のシークアンタンムクラシックライトレッド(SeaQuantum Classic light red)である。
【0124】
データは、ポリオキサレートバインダを含む防汚システムが自己研磨性であることを示す。自己研磨によって、表面を海洋生物の無い状態に保ち得る殺生剤の浸出が調整されたものとなる。我々の結果は、標準の市販シリルエステル共重合体バインダを含有する汚組成物よりも、本発明のポリオキサレートバインダの研磨が速いことを示す。
【0125】
より速い研磨システムは、定置施設または移動速度が遅い(例えば10ノット未満)船舶、及び/または加水分解の速度は温度に左右されることから冷水(例えば10℃未満)中を運行する船舶に対して有利に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリオキサレートと、少なくとも1つの更なる成分とを含む防汚塗料組成物。
【請求項2】
前記ポリオキサレートは、シュウ酸またはその誘導体と少なくとも1つのジオールとの重縮合反応による生成物を含む、請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項3】
前記重縮合反応における前記シュウ酸またはその誘導体と前記ジオールとのモル比が2.0より小さくかつ0.5より大きく、より好ましくは1.0を上回らない、請求項2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項4】
前記シュウ酸またはその誘導体が、シュウ酸ジアルキル、より好ましくはシュウ酸ジメチルまたはシュウ酸ジエチルである請求項2〜3のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項5】
前記ジオールは飽和され、かつ脂肪族である請求項2〜4のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項6】
前記重縮合反応に用いられる前記ジオールの全量中、芳香族ジオールが50モル%以下を成し、より好ましくは30モル%を上回らず、最も好ましくは10モル%を上回らない、請求項2〜4のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項7】
前記重縮合反応に用いられる前記ジオールの全量中、不飽和脂肪族ジオールが10モル%以下を成す、請求項2〜4のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項8】
前記ポリオキサレートは、2個を上回るヒドロキシル基を有するポリオールに由来する反復単位を含む、請求項2〜7のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項9】
前記重縮合反応において存在する前記ジオールと前記ポリオールの全量中、前記ポリオールが10モル%以下を占める、請求項8に記載の防汚塗料組成物。
【請求項10】
前記ポリオキサレートは、ジアミン、ジカルボン酸もしくはその誘導体、またはヒドロキシル官能性カルボン酸もしくはその誘導体の重縮合反応によって得られる1つ以上の単位を含む、請求項2〜9のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項11】
前記ポリオキサレートの重量平均分子量(Mw)が1,000〜40,000である請求項1〜10のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項12】
1つ以上の溶剤、例えばキシレンを含む請求項1〜11のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項13】
生物活性化合物、他のバインダ、可塑剤、顔料、増量剤、充填剤、脱水剤、乾燥剤、硬化剤、チキソトロープ剤、増粘剤、沈降防止剤、補強剤、希釈剤及びその他の溶剤から選択される1つ以上の添加物をさらに含む請求項1〜12のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項14】
物理的乾燥塗料組成物である請求項1〜13のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項15】
硬化性塗料組成物である請求項1〜13のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項16】
前記ポリオキサレートはヒドロキシ官能性末端基を有し、前記組成物は、イソシアネート、高分子量イソシアネート、及びイソシアネートプレポリマーから選択される硬化剤を含む請求項1〜15のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項17】
前記バインダはエポキシ官能性末端基を有し、前記硬化剤はアミン及びポリアミンから選択される請求項1〜15のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項18】
固形分の含有量が50重量%以上である請求項1〜17のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項19】
揮発性有機化合物(VOC)の含有量が400g/L未満である請求項1〜18のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つのポリオキサレートが非結晶質である請求項1〜19のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項21】
(I)少なくとも1つのポリオキサレートを含む防汚塗料組成物と、(II)少なくとも1つの硬化剤とを含むキット。
【請求項22】
少なくとも1つのシュウ酸またはその誘導体と、少なくとも2つのジオールとの縮合重合により得られるポリオキサレートであって、前記ジオールの少なくとも1つが20個以下の炭素原子を有する飽和分岐ジオールであることを特徴とするポリオキサレート。
【請求項23】
防汚塗料組成物におけるバインダとしての少なくとも1つのポリオキサレートの使用。
【請求項24】
請求項1〜20のいずれかに記載の防汚塗料が塗布された物体。
【請求項25】
物体の汚損を防ぐ方法であって、前記物体の少なくとも一部に請求項1〜20のいずれかに記載の防汚塗料を塗布する工程を含む方法。
【請求項26】
硬化性の、または硬化された自己研磨型防汚塗料組成物。

【公表番号】特表2011−511871(P2011−511871A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546262(P2010−546262)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000991
【国際公開番号】WO2009/100908
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(510005649)
【Fターム(参考)】