説明

防波堤

【課題】高波による港外側の水面の上昇時における安定性を高める。
【解決手段】固定式防波堤11である。堤体12の底面12cの港外側壁面12aから港内側寄りの所定の位置に、堤体12の幅方向に連通する溝13を設ける。この溝13と堤体12の上面12dを、適数の枝管14で連通させる。
【効果】底面に作用する浮力を、従来の防波堤に比べて大幅に低減することができる。また、枝管内と港外側の水位変動のピークが重ならず、波浪によって生じる水平力と静水圧によって生じる揚圧力は、異なる位相で作用することになって、底面に作用する浮力の低減との相乗効果で港外側の水面上昇時における安定性が大幅に向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば津波や高潮対策として港湾に設置される防波堤に関するもので、特に高波により港外側の水面が上昇した場合における防波堤の安定性向上を図ったものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているような固定式防波堤の場合、津波・高潮によって港外側の水面が上昇すると、防波堤の底面には港外側壁面と港内側壁面の水位差に見合う揚圧力が作用する。
【0003】
しかしながら、高波による港外側の水面上昇時には、前記揚圧力による防波堤の重量不足と、港外側から港内側に向けて作用する水平力を同時に受けることで、防波堤の安定性が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、固定式防波堤では、防波堤1の重量を増加させることにより、図8に示すように、防波堤1に生じる浮力F(揚圧力−防波堤の重量)を低減させて、高波による港外側の水面上昇時における安定性を確保していた。
【0005】
一方、例えば特許文献2に記載されているような、基礎2aと扉体2bからなる起伏ゲート式防波堤2では、図9に示すように断面形状がL字型であるため、港外側の水位上昇時の水重量を基礎2aに鉛直下向きに作用する荷重として利用できる。従って、防波堤2に生じる浮力Fが小さくなって、津波・高潮時の安定性は通常時よりも高くなる。
【0006】
しかしながら、基礎2aの底面には固定式防波堤と同様に高波による揚圧力(浮力)が作用し、扉体2bには港外側から港内側に向けて水平力が同時に作用していることに変わりはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭56−163121号公報
【特許文献2】特開2003−227125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題点は、従来の防波堤では、高波により港外側の水面が上昇すると、防波堤の壁面には港外側から港内側に向けて水平力が、底面には浮力が同時に作用し、安定性が低下するという点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の防波堤は、
港外側の水面の上昇時における安定性を高めるために、
固定式防波堤の場合には、堤体底面の港外側壁面から港内側寄りの所定の位置に、堤体の幅方向に連通する溝を設け、この溝と堤体上面を、適数の枝管で連通させたことを、
また、起伏ゲート式防波堤の場合には、水中に設けた基礎部底面の港外側壁面から港内側寄りの所定の位置に、基礎部の幅方向に連通する溝を設け、この溝と両翼の固定式防波堤の上面を、それぞれ少なくとも1本の枝管で連通させたことを、
最も主要な特徴としている。
【0010】
本発明の防波堤では、底面の港外側壁面から港内側寄りの所定の位置に設けた幅方向に連通する溝から上面に枝管を連通させるので、底面に生じる揚圧力の圧力勾配が断続し、溝から港内側には揚圧力が発生しないことになって底面に作用する浮力が低減する。
【0011】
加えて、枝管内の水位変動は、港外側の水位変動と比較して位相の遅れを持ち、ピークが重ならないので、波浪によって生じる水平力と静水圧によって生じる揚圧力は、異なる位相で作用することになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、底面の港外側壁面から港内側寄りの所定の位置に、幅方向に連通する溝を設け、この溝から上面に枝管を連通させるので、溝から港内側は揚圧力が発生しないことになって底面に作用する浮力を、従来の防波堤に比べて大幅に低減することができる。また、枝管内の水位変動は、港外側の水位変動と比較して位相の遅れを持つことになる。
【0013】
従って、枝管内と港外側の水位変動のピークが重ならず、波浪によって生じる水平力と静水圧によって生じる揚圧力は、異なる位相で作用することになって、前記底面に作用する浮力の低減との相乗効果で港外側の水面上昇時における安定性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の固定式防波堤を示す概略図で、(a)は側面から見た断面図、(b)は側面から見た斜視図である。
【図2】本発明の起伏ゲート式防波堤を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の起伏ゲート式防波堤の押波時に起立した状態を説明する概略図である。
【図4】本発明の起伏ゲート式防波堤の平面図である。
【図5】本発明の起伏ゲート式防波堤のゲート係留部とフックの係合状態を示す概略側面図で、(a)倒伏時の図、(b)は倒伏する直前の図である。
【図6】枝管の横断面積について説明する図で、(a)は同じ横断面積の枝管、(b)(c)は上方に位置する部分の横断面積を、下方に位置する部分の横断面積より大きくした枝管の例を示した図である。
【図7】止水板について説明する図で、(a)は止水板を設けない例、(b)(c)は止水板を設けた例を示した図である。
【図8】従来の固定式防波堤に作用する浮力を説明する概略図である。
【図9】従来の起伏ゲート式防波堤に作用する浮力を説明する概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明では、高波による港外側の水面上昇時における安定性を向上させるという目的を、底面の港外側壁面から港内側寄りの所定の位置に、幅方向に連通する溝を設け、この溝から上面に枝管を連通させることで実現した。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施するための各種の形態と共に最良の形態を、図1〜図7を用いて詳細に説明する。
【0017】
[固定式防波堤:図1]
11は本発明の固定式防波堤であり、堤体12の港外側壁面12aから港内側壁面12bに向けた所定位置の底面12cに、堤体12の幅方向に連通する溝13を設けている。そして、この溝13から堤体12の上面12dに向けて、堤体12の幅方向に所定の間隔で適数個の枝管14を連通させている。
【0018】
前記構成の本発明の固定式防波堤11では、堤体12の底面12cに設けた溝13付近の水圧は、溝13から堤体12の上面12dに延びる枝管14内に自由水面を与えることで、その水位に依存させることができる。
【0019】
先に説明したように、港外側と港内側の水位差によって、堤体12の底面12cでは圧力勾配を生じるが、港外の水位は常に変動しているため、港内外で一定の圧力差が保たれることはなく、圧力の高低は周期的に入れ替わる。
【0020】
堤体12の下部の地盤3は砕石で構築されており、前記圧力の変動は瞬間的に伝達されるが、水が流れるには抵抗が大きいので、堤体12の下方では、港内外の圧力差に追従した流れが生じるということはなく、生じる流れ(浸透流)は非常に小さい。
【0021】
そのため、溝13から堤体12の上面12dに伸ばした枝管14内の水位は、港外側の水位変動よりも十分に小さく抑制でき、堤体12の底面12cに設けた溝13における圧力も平均水深における静水圧程度に保持することができる。
【0022】
その結果、堤体12の底面12cの圧力勾配は、図1(a)に示すように、港外側と溝13の間で形成されることになって、堤体12に作用する浮力Fを従来の構造と比較して大幅に低減することができる。
【0023】
また、前記浸透流に起因して生じる枝管14内の水位変動は、圧力変動と違って瞬時に伝わらないので、港外側の水位変動と比較して位相の遅れを持つため、水位変動のピークが重なることがない。堤体12に生じる浮力Fを低減させるための条件として決定するパラメータ(例えば、港外側壁面22bと枝管14の間の距離、枝管14の断面積と本数等)については、堤体12の規模によって考慮する必要がある。
【0024】
従って、波浪によって堤体12に生じる水平力と、前記浸透流に起因する静水圧によって堤体12に生じる揚圧力は、異なる位相で作用することになって、前記堤体12に作用する浮力Fの低減との相乗効果で港外側の水面上昇時における安定性が大幅に向上する。
【0025】
[起伏ゲート式防波堤:図2〜図5]
本発明の防波堤が、起伏ゲート式防波堤21の場合、水中に設けた基礎部22の底面22aの港外側壁面22bから港内側寄りの所定の位置に、固定式防波堤11に設けた溝13と同様の溝23を設ける。そして、この溝23から伸ばす枝管24は扉体25の両翼に設置された固定式防波堤26内に設ける。この枝管24はそれぞれの固定式防波堤26に一つずつ設ければ良いが、複数設けても良い。固定式防波堤26に生じる浮力Fを低減させるための条件として決定するパラメータ(例えば、港外側壁面と枝管24の間の距離、枝管24の断面積と本数等)については、固定式防波堤26の規模によって考慮する必要がある。
【0026】
前記溝23を設ける起伏ゲート式防波堤21としては、例えば図3〜図5に示すように、浮上時に扉体25が転倒しないように、扉体25の港湾Rの港外側には、複数のテンションロッド27を設けることが望ましい。
【0027】
前記扉体25は、複数組の扉体ブロックBを幅方向に並設したもので、隣接した扉体ブロックB同士をロープで連結している。前記扉体25は、基端側の回転軸25aを、例えば港湾Rの底部に設けた基礎部22に、軸受28によって回転自在に枢支することで、前記回転軸25aを支点として扉体25が起伏するようになっている。
【0028】
また、前記テンションロッド27は、例えばその中間の連結部27aで二つに折れ曲がるように形成されている。そして、扉体25の起立時に上端側に位置する一方端部27bは前記扉体25の上部に、前記起立時に下端側に位置する他方端部27cは、扉体25が倒伏する側の前記回転軸25aから所定の距離だけ離れた位置に、それぞれ回転が自在なように枢支されている。
【0029】
前記扉体25の例えば頂部側には空気室25bが設けられ、給気装置29であるレシーバタンク29aとコンプレッサ29bにより、前記空気室25bに給気することによって、扉体25の浮上に必要な浮力を得るように構成されている。なお、29cは給気管を示す。
【0030】
また、前記扉体25の裏面25cには、貫通孔部30aを設けたゲート係留部30を取り付けている。このゲート係留部30は、必ずしも全ての扉体ブロックBに取り付ける必要はない。
【0031】
一方、前記扉体25を水中で格納する基礎部22における、格納状態にある扉体25の裏面25cと相対する部分には、図5に示すように、例えば転向滑車31を設置している。
【0032】
また、前記基礎部22における、前記扉体25の裏面25cに取り付けられたゲート係留部30と相対する位置には、フック32を設置している。このフック32は、中央部に回動支点32aを、上部側には前記ゲート係留部30に係合する2つの爪状突起32b,32cを有すると共に、下部側には錘32dを設けている。なお、図示しないが、転向滑車31及びフック32の回動支点32aはそれぞれ収納部に設けられた取付部材に回転が自在なように支持されている。
【0033】
そして、一端側を前記フック32の下部側の錘32dに取り付けた係留ロープ33の他端側を、前記転向滑車31を介して水面上に引き出し、固定装置34で固定している。
【0034】
図3〜図5の例では、引き波時に、浮上状態にある扉体25が所定の角度まで倒伏した場合に、扉体25を支持するストッパ装置35を設けている。このストッパ装置35は、前記テンションロッド27の他方端部27cより扉体25の若干回転軸25a側で、基端側が回転自在に枢支され、先端側はこの基端を中心として自身の浮力によって起立揺動する支持ロッド35aを有している。
【0035】
そして、支持ロッド35aがガイド35bによって位置決めされる位置まで浮上して起立する際は、浮上するのに従って、支持ロッド35aの中間に先端が枢支された固定ロッド35cの基端が支持ロッド35aの基端側に移動してくる。
【0036】
支持ロッド35aがガイド35bによる位置決め位置まで浮上すると、固定ロッド35cの基端は、支持ロッド35aの浮上と共に、起立状態から倒伏してくる固定フック35dに係合して、支持ロッド35aの倒伏を防止する。
【0037】
なお、この固定フック35dは、支持ロッド35aの倒伏時には、起立して固定ロッド35cの基端の係合を解除するようになっている。この固定フック35dの起立動作と前記倒伏動作は、例えば一端側を支持ロッド35aに固定し、中間部を固定フック35dの基端側に捲き回した係留ロープ36aの他端を固定した動滑車に巻き回した係留ロープ36bを、支持ロッド35aの起伏動作に追従してウインチ37により繰り出しや巻き取りすることにより行われる。
【0038】
上記構成の起伏ゲート式防波堤21は、例えば地震が発生して津波警報が発令されたときには、次に述べるように操作することによって、津波が港湾Rの港内側に侵入するのを防止する。
【0039】
(格納(係留)時)
扉体25が基礎部22の格納位置に着床した状態では、図5(a)に示すように、上側の前記爪状突起32bが前記ゲート係留部30の貫通孔部30aに係合している。短時間での浮上を可能とするために、この状態で、扉体25の浮上に必要な浮力を得るまで、空気室25bに空気を供給しておく。なお、空気室25bへの圧縮空気の供給は、例えば空気室25bの開口部の直下に給気口がくるように配置された給気管29cを介して行う。
【0040】
また、前記係合状態が外れないように、係留ロープ33に張力をかけ、前記爪状突起32bが前記貫通孔部30aに係合する方向に回転力を付与する。この際、フック32の回動支点32aから扉体25の係留支持点までの距離aより、前記回動支点32aから係留ロープ33の支持点までの距離bを長くしておけば、係留ロープ33に作用する張力を低減することができる。この張力の低減により、使用する係留ロープ33や転向滑車31の小径化が可能になり、大幅なコストダウンが望める。
【0041】
このとき、係留ロープ33に作用する張力を測定するロードセルをさらに設け、日常、前記張力を測定する。そして、扉体25の浮力が減少し、張力が減少した場合は、空気室25bに必要量の空気補給を行い、当該測定張力が一定となるように調整すれば、常に扉体25の起立準備が完了した状態を維持できる。この際、空気補給だけでは係留ロープ33の張力が回復しない場合は、浮上操作または浚渫などのメンテナンスを行う。
【0042】
なお、図3に示したストッパ装置35を設けている場合は、支持ロッド35aは扉体25によって倒伏状態に押さえ込まれており、この状態で、係留ロープ36bの巻き取り及び繰り出すウインチ37のブレーキを開放する。
【0043】
また、ストッパ装置35を設けている場合は、支持ロッド35aの傾斜を確認し、確認時に扉体25の裏面側のスペースを利用してストッパ装置35の動作確認を行う。
【0044】
(扉体25の浮上操作時)
例えば地震の発生により津波警報が発令されて浮上指令が出た時には、固定装置34を緩めて係留ロープ33の前記張力を開放する。この張力の解放により、錘32dの重力によりフック32が回転し、上側の爪状突起32bの貫通孔部30aへの係合が解除される。上側の爪状突起32bの貫通孔部30aへの係合が解除されると、予め供給されている圧縮空気による空気室25bの浮力により、通常水位まで扉体25が浮上する。
【0045】
なお、図3に示したストッパ装置35を設けている場合は、扉体25の浮上に連動して係留ロープ36bが繰り出され、支持ロッド35aが浮上する。浮上した支持ロッド35aは、ガイド35bによって位置決めされ、固定フック35dによって倒れ込みが防止される。
【0046】
浮力によって通常水位まで浮上した扉体25は、港湾Rの港外側から津波がきた場合には、津波の押波の力によって、図3に示すように、扉体25は垂直に起立し、津波が港湾Rの港内側に侵入するのを防止する。
【0047】
一方、引き波がきて扉体25が倒伏しようとしても、図3に示したストッパ装置35を設けている場合は、扉体25が所定の角度まで倒伏すると、支持ロッド35aによって支持される。
【0048】
(扉体25の倒伏操作時)
扉体25の上端部に設けた排気弁(図示せず)を開放して、空気室25b内の空気を排気しつつ、空気室25b内に海水を入れて扉体25を倒伏させる。なお、図3に示したストッパ装置35を設けている場合は、この扉体25の倒伏に連動してウインチ37を作動して係留ロープ36bを巻き取り、支持ロッド35aを倒伏させる。
【0049】
この扉体25の倒伏により、図5(b)のようにゲート係留部30の下端が下側の爪状突起32cを押してフック32を回転させ、上側の爪状突起32bをゲート係留部30の貫通孔部30aに係合させる(図5(a)の状態)。
【0050】
その後は、前記係留ロープ33に張力をかけ、空気室25b内の海水を排水してから排気弁を閉める。続いて給気管及び給気口を介して空気室25bに空気を供給して、扉体25の倒伏状態を保持する。作業完了後は、前記の格納時の作業に戻る。
【0051】
本発明例のように、係留ロープ33の張力を監視するロードセルをさらに設けた場合は、給気の緊急性が不要になるので、給気装置29の二重化やバックアップ機能を省略できて装置の簡素化が図れ、維持管理の負担が減少する。
【0052】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0053】
防波堤11の地盤3は砕石を構築したものであるため、砕石や土粒子等の抵抗により水の流れが阻害され、枝管14内の水位変動は港外の水位変動よりも小さくなる。この際、枝管14の横断面積が大きければ、同じ流量が流れても枝管14内の水位の上昇量は小さくなる。これは枝管14全体の横断面積を増加させずに、水面付近の横断面積だけを増加させても同じである。そこで、図6に示すように、上方に位置する水面部分の横断面積を、下方に位置する部分の横断面積より大きくすれば、水位の調整性能が向上する。
【0054】
また、堤体12が受ける浮力を小さくするためには、堤体12の底面12cに設ける溝13は港外側壁面12aに近い位置に設ける方がより効果的である。しかしながら、港外側壁面12aに接近しすぎると、地盤3を構築する砕石による抵抗が小さくなるため、枝管14内に流入する浸透流により枝管14の水位変動を抑制できなくなる(図7(a))。
【0055】
従って、港外側から枝管14に流入する浸透流を少なくするために、堤体12の溝13より港外側寄りの底面12cに、止水板15を設置することが望ましい。港外側から枝管14に流入する浸透流を少なくできるものであれば、止水板15の形状は、図7(b)に示す平板状でも、図7(c)に示す円弧状でも良い。
【0056】
また、地盤3を構築する砕石の粒径が大きい場合は、堤体12と砕石の接触面の隙間が大きくなるので、圧力の損失が少なくなって圧力の伝播がし易くなる。このような場合には、溝13の位置とは無関係に図7(b)に示したような止水板15を、堤体12の底面12cに複数枚設けることが有効である。
【0057】
なお、図示略したが、枝管14の、上方に位置する水面部分の横断面積を、下方に位置する部分の横断面積より大きくすること、溝より港外側寄りの底面に、止水板を設置することは、起伏ゲート式防波堤の枝管24の場合も同様である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、高波対策として港湾に設置するだけでなく、河川に設置することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
11 固定式防波堤
12 堤体
12a 港外側壁面
12c 底面
12d 上面
13 溝
14 枝管
15 止水板
21 起伏ゲート式防波堤
22 基礎部
22a 底面
22b 港外側壁面
23 溝
24 枝管
25 扉体
25a 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定式防波堤であって、
堤体底面の港外側壁面から港内側寄りの所定の位置に、堤体の幅方向に連通する溝を設け、この溝と堤体上面を、適数の枝管で連通させたことを特徴とする固定式防波堤。
【請求項2】
水中に設けた基礎部に基端側を回転自在に枢支した扉体を起伏動作させる起伏ゲート式防波堤であって、
前記基礎部底面の港外側壁面から港内側寄りの所定の位置に、基礎部の幅方向に連通する溝を設け、この溝と両翼の固定式防波堤の上面を、それぞれ少なくとも1本の枝管で連通させたことを特徴とする起伏ゲート式防波堤。
【請求項3】
前記枝管のうち、上方に位置する水面部分の横断面積を、下方に位置する部分の横断面積より大きくしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の防波堤。
【請求項4】
前記溝より港外側寄りの底面に、止水板を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の防波堤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−255311(P2010−255311A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106842(P2009−106842)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】