説明

防潮板装置

【課題】剛性が高く軽量な防潮板を使用して高い水密性が確保できる簡単な構造で安価な防潮板装置を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために本発明の防潮板装置1は、所定距離離れて配設された1対の両端支持部材27と、該1対の両端支持部材27間に仮取付けされた防潮板3と、前記各両端支持部材27に予め可動自在に取り付けられており、前記防潮板3の仮取付け後に防潮板解除位置V1から防潮板押圧位置V2へ移動されて、前記防潮板3を地面GL方向へ押圧する第1の上下方向押圧機構50とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常増水発生時に、ビルの出入り口又は地下鉄への出入り口通路等に設置して水の進入を防止する防潮板装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルの出入り口又は地下鉄への出入り口通路、地下道や地下街への連絡用通路、あるいは港湾倉庫の出入り口等では、雨水や川の水、海水等の進入を防止するために従来から防潮板装置が設けられている。この種の防潮板装置は、平常時には使用せず、増水が発生した異常時に保管倉庫等から取り出して来て使用されることから簡単な操作で設置できる簡易設置構造が採用されている。
【0003】
従来の防潮板装置としては、下記の特許文献1に示すものが挙げられる。この防潮板装置は、異常増水発生時に地下鉄への出入り口通路等に設けた収納溝から中柱7を取り出して立設し、上記中柱の上部に水平方向パイプ14を係止してその両端部をサイドレール6にも係止する。そして、上記収納溝8から取り出した防潮シート4を上記サイドレール6及び中柱7に取り付けるという構造を有している。また、上記防潮シート4の下部はゴム部材12と固定金具13とによって挟んで固定しており、このような構造を採用することによって大きな水圧にも耐えられる高い水密性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−227255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(1)しかし、上記特許文献1に係る防潮板装置に大きな水圧がかかると防潮シートが圧力を受けている下流側に膨らむため、当該防潮シート下部のゴム部材と固定金具とによる挟持固定部位において集中的な力が作用して隙間が発生し漏水が生じる場合があった。
【0006】
(2)又、上記防潮シートのような易変形性を有する防潮材料に代えて剛性を有する防潮材料によって形成される防潮板を使用した場合には、防潮板の底部に水密用のゴム部材を取り付けているが、単に防潮板の自重により下方に押し付ける構造であるため、押付け力が弱く防潮板の底部に隙間が発生して漏水が生じる場合があった。
尚、防潮板の自重を重くすれば、必要な押付け力を確保できるが、防潮板の設置、移動、保管作業が困難になってしまう。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題を要約すると、剛性が高く軽量な防潮板を使用して高い水密性を確保することができる簡単な構造で安価且つ設置、撤去作業が容易な防潮板装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1記載の防潮板装置は、所定距離離れて配設された1対の両端支持部材(27)と、該1対の両端支持部材(27)間に仮取付けされた防潮板(3)と、前記各両端支持部材(27)に予め可動自在に取り付けられており、前記防潮板(3)の仮取付け後に防潮板解除位置(V1)から防潮板押圧位置(V2)へ移動されて、前記防潮板(3)を地面(GL)方向へ押圧する第1の上下方向押圧機構(50)とを有することを特徴とする。
【0009】
又、前記防潮板(3)の水平方向Xの両端部に対して、第2の前後方向押圧機構(60)を予め可動自在に更に取り付けることが可能である。そして、該第2の前後方向押圧機構(60)は、前記防潮板(3)の仮取付け後に防潮板解除位置(H1)から防潮板押圧位置(H2)へ移動されて、前記防潮板(3)を前記1対の両端支持部材(27)における厚さ方向(Y)の保持面(28)に向けて水平に押圧されるように構成されている。
【0010】
又、本発明の請求項3記載の防潮板装置は、所定距離離れて配設された1対の両端支持部材(27)と、該1対の両端支持部材(27)の中間位置に配置された1本又は複数本の中間支持部材(27)と、前記1対の両端支持部材(27)と前記中間支持部材(27)との間又は前記中間支持部材(27)間に形成される複数の空間に夫々仮取付けされた複数枚の防潮板(3)と、前記各両端支持部材(27)と前記中間支持部材(27)の夫々に予め可動自在に取り付けられており、前記各防潮板(3)の仮取付け後に防潮板解除位置(V1)から防潮板押圧位置(V2)へ移動されて、前記夫々の防潮板(3)を地面(GL)方向へ押圧する第1の上下方向押圧機構(50)とを有することを特徴とする。
【0011】
又、前記防潮板(3)の水平方向Xの両端部には、第2の前後方向押圧機構(60)を予め可動自在に更に取り付けることが可能である。そして、該第2の前後方向押圧機構(60)は、前記各防潮板(3)の仮取付け後に防潮板解除位置(H1)から防潮板押圧位置(H2)へ移動されて、前記各防潮板(3)を前記1対の両端支持部材(27)又は前記中間支持部材(27)における厚さ方向(Y)の保持面(28)に向けて水平に押圧されるように構成されている。
【0012】
又、前記第1の上下方向押圧機構(50)と支点(7)を中心にして所定角度の範囲で回動する回動アーム(51)と、前記回動アーム(51)の回動自由端近傍に設けられ、上下方向(Z)に貫通するネジ孔(53)が刻設されている連結固定軸(8)と、前記連結軸(8)のネジ孔(53)と螺合するネジ軸(11)を備えるノブ(10)とを有することによって構成し、前記回動アーム(51)を防潮板押圧位置(V2)に移動させた後、前記ノブ(10)を所定の方向に回転させることによって前記ネジ軸(11)を前記防潮板(3)の上面(3b)に当接させて押圧固定することが可能である。
【0013】
又、前記第1の上下方向押圧機構(81)は、スライド本体(82)と、該スライド本体(82)に取付けられた案内部材(83)と、該スライド本体(82)のネジ孔(82a)に螺合されたネジ軸(84b)を有するノブ(84)とを備え、該案内部材(83)が支持部材(27)に設けたガイド部分(27f、27g)に対して横方向案内的にスライド自在に係合されており、前記ノブ(84)の操作により、前記第1の上下方向押圧機構(81)を、防潮板解除位置(V1)から防潮板押圧位置(V2)まで所定距離スライドさせた後、前記ノブ(84)を所定の方向に回転させることによって前記ノブ(84)のネジ軸(84b)を前記防潮板(3)の上面(3b)に当接させて押圧固定することが可能である。
【0014】
又、前記第2の前後方向押圧機構(60)を、回動支点ピン(67)を中心にして所定角度の範囲で回動する回動レバー(61)と、前記回動レバー(61)の作用端に設けられ、前記1対の両端支持部材(27)又は前記中間支持部材(27)における厚さ方向Yの保持面(28)と対向する作用面(29)に当接する押圧作用爪部(63)とを備えることによって構成し、前記押圧作用爪部(63)に対して前記作用面(29)に当接する側にテーパ部(62)を設け、該テーパ部(62)の作用厚さ(t)を前記両端支持部材(27)又は前記中間支持部材(27)側に進入するに従って大きくなるように形成することが可能である。
【0015】
又、前記中間支持部材(27)に対して取り付けられている前記第1の上下方向押圧機構(50)は、左右1対設けることが可能で、前記防潮板(3)の水平方向(X)の両端部に取り付けられている第2の前後方向押圧機構(60)は、上下方向(Z)にずれた位置に複数組設けることが可能である。
又、前記防潮板(3)を骨材がアルミ角パイプ、面材がアルミ板によって構成し、前記防潮板(3)の上面(3b)の中央部に取手(3a)を取り付けることが可能である。又、前記骨材(70)と面材(71)とによって区画された空間には芯材として例えば発泡プラスチック材が装填されている。
【0016】
又、前記防潮板(3)の底面(3c)に対して底止水ゴム(26b)を水平方向Xの全長に亘って配設し、前記防潮板(3)の後面(3e)における水平方向Xの両端部に対して縦止水ゴム(26a)を上下方向Zの全長に亘って配設することが可能である。
更に、前記1対の両端支持部材(27)と前記中間支持部材(27)に対して前記防潮板(3)を仮取付けする際の案内となるガイド部材(12)を設けることが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防潮板装置によれば、次に示す効果がある。
(1)先ず、防潮板解除位置から防潮板押圧位置に移動することで防潮板を地面方向に押圧する第1の上下方向押圧機構を1対の両端支持部材に対して設けているので、防潮板の自重に加えて前記第1の上下方向押圧機構による押圧力が地面に作用するようになる。従って、防潮板底面と地面との間の密着性が向上するから、防潮板底部での漏水が防止される。
【0018】
(2)更に、上記第1の上下方向押圧機構に加えて、防潮板の水平方向Xの両端部に第2の前後方向押圧機構を備え、該第2の前後方向押圧機構を防潮板解除位置から防潮板押圧位置に移動することで防潮板を1対の両端支持部材における厚さ方向の保持面に向けて押圧するようにした場合には、上記第2の前後方向押圧機構による押圧力よって防潮板後面と上記保持面との間の密着性が向上するから、防潮板の水平方向の両端部での漏水が防止される。
【0019】
(3)又、上記第1の上下方向押圧機構を1対の両端支持部材だけでなく、該1対の両端支持部材に加えて、これらの中間位置に配置される1本又は複数本の中間支持部材に対して設けた場合には、通路幅の広い通路等にも防潮板装置を設置することが可能となり、すべての防潮板底面と地面との間の密着性が向上するから、各防潮板底部での漏水が通路幅全長に亘って防止される。
【0020】
(4)更に、上記第1の上下方向押圧機構に加えて、防潮板を前記1対の両端支持部材又は前記中間支持部材における厚さ方向の保持面に向けて押圧する第2の前後方向押圧機構を設けた場合には、通路幅の広い通路等にも防潮板装置を設置することが可能となり、すべての防潮板後面と保持面との間の密着性が向上するから、各防潮板の水平方向の両端部での漏水が通路幅全長に亘って防止される。
【0021】
(5)又、上記第1の上下方向押圧機構を回動アームと、連結固定軸と、ノブとを有することによって構成し、上記回動アームを防潮板押圧位置に移動させた後、上記ノブを締め付けることによって防潮板を押圧固定するようにした場合には、第1の上下方向押圧機構をモータ等の他の動力を使用することなく、停電時等の非常時にも使用できる構造が簡単で安価な防潮板装置を提供することができるようになる。
(6)又、第3の上下方向押圧機構を、スライド本体と、該スライド本体に取付けられた案内部材と、該スライド本体のネジ孔に螺合されたネジ軸を有するノブとにより構成し且つ該案内部材が支持部材に設けたガイド部分に対して横方向案内的にスライド自在に係合させて、防潮板解除位置(V1)から防潮板押圧位置(V2)までスライドさせることにより、全体の構成が小型且つ簡単となり、しかも動作も押圧機構が単に横方向へ比較的短い距離スライドするのみであるから動作も簡単であり、コストの低減及び装置の小型化を図れる。
(7)又、上記第2の前後方向押圧機構を回動レバーと該回動レバーと一体の押圧作用爪部とを備えることによって構成し、上記押圧作用爪部に対して作用厚さが両端支持部材又は中間支持部材側に進入するに従って大きくなるテーパ部を設けた場合には、第2の前後方向押圧機構をモータ等の他の動力を使用することなく、停電時等の非常時にも使用できる構造が簡単で安価な防潮板装置を提供することができるようになる。
【0022】
(8)又、中間支持部材に対して取り付けられる第1の上下方向押圧機構を左右1対設けた場合には、1本の中間支持部材によって当該中間支持部材の左方に位置する防潮板の水平方向の右端部と、当該中間支持部材の右方に位置する防潮板の水平方向の左端部とを同時に保持することができるようになり、部品点数及び部品コストの削減が図られ、防潮板の設置・撤去作業が容易になる。
(9)又、上記第2の前後方向押圧機構を上下方向にずれた位置に複数組設けた場合には、防潮板の上下方向での撓み等によって生ずる防潮板後面と保持面間の隙間を防止して一層の水密性の向上が図られる。
【0023】
(10)又、上記防潮板を骨材がアルミ角パイプ、面材がアルミ材によって構成し、防潮板の上面中央部に取手を取り付けた場合には、防潮板に必要な剛性が付与され、1人でも容易且つ迅速に運搬できる軽量な防潮板装置を提供できるようになる。
(11)また、前記骨材と面材とによって区画された空間には芯材として発泡プラスチック材が装填されているため、一層軽量になり、一層容易且つ迅速に運搬できる。
(12)又、上記防潮板の底面に底止水ゴムを配設し、上記防潮板の水平方向の両端部に縦止水ゴムを配設した場合には、上記第1の上下方向押圧機構又は第2の前後方向押圧機構による押圧作用によって弾性変形する上記底止水ゴム又は縦止水ゴムによる弾性作用によって一層の水密性の向上が図られる。
(13)更に、上記1対の両端支持部材と、中間支持部材に対してガイド部材を設けた場合には、上記防潮板を上記1対の両端支持部材と中間支持部材に仮取付けする際の位置合わせが容易になり、防潮板の仮取付け作業が容易且つ確実になる。
そして、これらの効果が相乗的に作用することによって、剛性が高く軽量な防潮板を使用して高い水密性を確保することができる簡単な構造で安価且つ設置、撤去作業が容易な防潮板装置を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、防潮板装置を示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、防潮板装置を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、防潮板装置を示す平面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、両端支持部材を示す正面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、両端支持部材を示す側面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、両端支持部材を示す平面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、防潮板を示す正面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図1中の矢視A部の拡大図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図2中の矢視B部の拡大図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図3中の矢視C部の拡大図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態を示す図で、防潮板装置を示す側面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態を示す図で、中間支持部材を示す正面図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態を示す図で、中間支持部材を示す側面図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態を示す図で、中間支持部材を示す平面図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態を示す図で、中間支持部材を撤去した状態の図12中のE−E断面図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態を示す図で、図11中の矢視D部の拡大図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態を示す図で、防潮板装置の防潮板解除位置(V1)を示す側面図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態を示す図で、同じく防潮板装置の防潮板押圧位置(V2)を示す側面図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態を示す図で、同じく防潮板押圧位置(V2)を示す平面図である。
【図20】本発明の第3の実施の形態を示す図で、同じく防潮板押圧位置(V2)を示す正面図である。
【図21】本発明の第3の実施の形態を示す図で、第3の上下方向押圧機構の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る防潮板装置1の構造を図1乃至図10に示す第1の実施の形態と、図11乃至図16に示す第2の実施の形態を例にとって具体的に説明する。
尚、本発明の防潮板装置1は、地下鉄への出入り口通路、地下道や地下街への連絡用通路、あるいは港湾倉庫の出入り口等、異常増水発生時に水の進入が予想される場所に設置される。
【0026】
従って、水の進入の虞れのない平常時には、図示しない保管倉庫等に保管されており、異常増水発生時に上記保管倉庫等から取り出して上記夫々の設置個所に設置される。
具体的には、図1に示すように所定の通路幅S分、隔てて対向配置されている壁17、17と、これらの壁17、17に挟まれた空間18下方の地面(乃至床面)GLを利用して本発明の防潮板装置1は設置されている。
尚、上記地面(乃至床面)GLは、一例として下部にコンクリート層13、その上部に仕上材層14を積層した構造になっており、上記仕上材層14は、内部に小石やセメントを配置し、その表面をコンクリート又はタイルで平滑に仕上げた構造になっている。
【0027】
(1)第1の実施の形態(図1〜図10参照)
第1の実施の形態に係る防潮板装置1Aは、所定距離離れて配設された1対の両端支柱41、41と、該1対の両端支柱41間に仮取付けされた防潮板3と、上記各両端支柱41に予め可動自在に取り付けられる第1の上下方向押圧機構50と、上記防潮板3の水平方向Xの両端部に予め可動自在に取り付けられる上下一対の第2の前後方向押圧機構60と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0028】
両端支柱41は常時設置されているもので、図3及び図6に示す如く、断面コ字形の形鋼材からなる支持板27と、該支持板27の内部に設けられるガイド部材12とを備えることによって一例として構成されている。
上記支持板27は、一例として厚さ5mmのステンレス鋼板を幅80mm、奥行き70mm、高さ500mmの断面コ字形の支柱になるように折り曲げ加工するか予め同形状に成形された形鋼材を上記長さに切断することによって形成されている。又、上記支持板27の前後の外側板部27aと内側板部27bの上端部には、後述する第1の上下方向押圧機構50における回動アーム51を防潮板解除位置V1(図4及び図8)に位置させる時に使用する凹部5cが設けられている。
【0029】
又、上記支持板27の外側板部27aと内側板部27bとを接続している中間板部27dの中央の上下には図示しないボルト孔が一例として2個形成されており、上記両端の壁17から内側に突出状態で設けられている取付ボルト42を上記ボルト孔に貫通させた後、取付ナット43と螺合させることによって上記両端支柱41を壁17に固定状態で取り付けている。
尚、この時、支持板27の下面を地面GLに接地させた状態で壁17に取り付けるようにする。
【0030】
ガイド部材12は、上記支持板27よりも薄肉のステンレス鋼板を折り曲げ加工することによって形成されている。該ガイド部材12の上部には、外側から内側下方に向けて傾斜している案内部12aが設けられており、該ガイド部材12の下部には、後述する防潮板3の左右の側面3f、3fに当接して防潮板3の水平方向Xの位置決めをする位置決め部12bが設けられている。
尚、上記ガイド部材12の上部は一例として壁17に取り付けられる係止爪44(図4)によって案内部12a先端の折返し部45が係止されることによって保持されており、上記ガイド部材12の下部は一例として2本のビス46、46(図4)によって上記壁17に取り付けられている。
【0031】
又、このような両端支柱41の上部において取り付けられる第1の上下方向押圧機構50は、後述する防潮板3の仮取付け後に防潮板解除位置V1から防潮板押圧位置V2(図4及び図8)へ移動されて、防潮板3を地面GL方向へ押圧する機構である。
具体的には、第1の上下方向押圧機構50は、固定支点ピン7(図5)を中心にして所定角度の範囲で回動する回動アーム51と、上記回動アーム51の回動自由端に設けられ、上下方向Zに貫通するネジ孔53が刻設されている連結固定軸8と、前記連結固定軸8のネジ孔53と螺合するネジ軸11を備えるノブ10とを有することによって基本的に構成されている。
【0032】
各回動アーム51は、一例として図8に示す如く、長円形状をしたステンレス製の平板材料によって形成されており、その回動基端部には、固定支点ピン7と係合する長穴52が形成されている。
一方、各回動アーム51の上端には、カラー9を介して前後方向に水平に連結固定軸8が遊転可能な状態で架け渡されている。従って、上記回動アーム51は、上記両端支柱41の支持板27における外側板部27aと内側板部27bとの間に取り付けられる上述した回動支点ピン7と上記長穴52の作用によって、回動支点ピン7を中心にして所定の角度の範囲で回動し得ると共に、上記長穴52の長さの範囲で長手方向に所定ストローク摺動できるように構成されている。
【0033】
連結固定軸8は、一例としてステンレス製の丸棒状の部材である。そして、上記連結固定軸8の両端には、上記前後の回動アーム51の回動自由端が宛がわれ、更に、その外方には、カラー9が配設されており、固定ネジ54を上記カラー9及び回動アーム51の回動自由端に形成されている図示しない貫通孔に通して連結固定軸8の図示しないネジ孔に螺合させることによって連結固定軸8は回動アーム51の回動自由端に遊転可能な状態で取り付けられている。
【0034】
ノブ10は、手で掴んで操作する操作部55と、該操作部55と一体のネジ軸11とを備えることによって一例として構成されている。又、上記ネジ軸11は、図9に示す如く、上記連結固定軸8の胴部中央を軸方向と直交する方向に貫いている上記ネジ孔53と螺合しており、ネジ軸11の先端部は、更に下方に向けて延び、後述する防潮板3の上面3bに取り付けられている押さえ板4に対して当接し得るように構成されている。
【0035】
従って、このようにして構成される上記第1の上下方向押圧機構50は、図8中、仮想線で示す防潮板解除位置V1に位置している状態では、回動アーム51が外側に回動して連結固定軸8の胴部が上記両端支柱41の外側板部27aと内側板部27bに形成されている凹部5cに係合している状態になっている。
そして、この状態では、上記連結固定軸8とノブ10は、防潮板3の収容空間の外方に退去しているから、防潮板3は、上記連結固定軸8とノブ10に干渉することなく上記収容空間18に進入及び退出することが可能になっている。
【0036】
一方、上記第1の上下方向押圧機構50が、図8中、実線で示す防潮板押圧位置V2に位置している状態では、回動アーム51も同図中左方へ回動してノブ10のネジ軸11が収容空間18に仮取付けされた防潮板3の上面3bに固着された押え板4の上方に位置している。
従って、この状態でノブ10を所定の方向に回転させて締め付けて行くと、ノブ10のネジ軸11の端面が下方に移動して上記押え板4に当接して防潮板3を上方から押え付けて押圧固定し得る。
【0037】
防潮板3は、一例として幅200mm、高さ450mm、厚さ42mmの矩形平板状の部材で、骨材70がアルミ角パイプ、面材71がアルミ板によって構成されている。また、上記骨材70と面材71とによって区画されている空間には芯材として発泡プラスチック製の板材(軽量且つ非吸水性であれば発泡プラスチック以外の他の材料でも良い)が装填されており、防潮板3の表面には一例としてウレタン焼付塗装が施されている。
又、上記防潮板3の上面3bの中央部には一例として500mm程度の間隔を空けて2個の取手3a、3a(図1)が取り付けられている。そして、このような構造を有する上記防潮板3の重量は約14kgであり、1人の作業者でも上記取手3a、3aを持って容易に運搬できる重量になっている。
【0038】
又、上記防潮板3の上面3bにおける水平方向Xの両端部には一例として矩形平板状の上述した押え板4が固着されている。該押え板4は、一例としてステンレス製で上記防潮板3を構成しているアルミ材料よりも機械的強度に優れる材料が使用されており、上述したノブ10のネジ軸11の端面との当接にも十分耐えられるように構成されている。
【0039】
又、上記防潮板3の前面3dにおける水平方向Xの両端部には、予め可動自在に取り付けられた第2の前後方向押圧機構60が上下方向Zにずれた位置に左右に各一対ずつ設けられている。
第2の前後方向押圧機構60は、防潮板3の前面3dに直接取り付けられる取付けベース68(図8乃至図10)によって支持されており、回動支点ピン67を中心にして所定角度の範囲で回動する回動レバー61と、該回動レバー61の作用端に設けられ、上記1対の両端支柱41、41における厚さ方向Yの内側板部27bの内側保持面28(図10)と対向する外側板部27aの内側作用面29に当接する押圧爪部63とを備えることによって基本的に構成されている。
【0040】
回動レバー61は、図8に示す如く、作業者が手で握って操作する操作レバー部64と、上記回動支点ピン67と螺合する回動基端部65と、上記操作レバー部64と回動基端部65との接続部付近を付け根として回動支点ピン67を中心とする円弧上に湾曲して延びる上記押圧作用テーパ部付き爪部63とを一体に備えることによって構成されている。
そして、上記押圧作用爪部63には、上記作用面29に当接する側にテーパ部62(図10)が設けられており、該テーパ部62は、上記両端支柱41の凹部27c側に進入するに従って作用厚さt(図10)が大きくなるように形成されている。
【0041】
従って、このようにして構成される上記第2の前後方向押圧機構60が、図8中、実践で示す防潮板解除位置H1に位置している状態では、回動レバー61の操作レバー部64は図示の如く、垂直姿勢になっており、押圧作用爪部63は、上記両端支柱41の凹部27cから退去した状態になっている。
そして、この状態では上記防潮板3は、上記両端支柱41の凹部27cとの間の隙間の範囲内で厚さ方向Yに移動できるように構成されている。
【0042】
一方、上記第2の前後方向押圧機構60が図8中、約90度だけ反時計方向へ回動されて仮称線で示す防潮板押圧位置H2に位置している状態では、回動レバー61の操作レバー部64は図示の如く、水平姿勢になっており、押圧作用爪部63の先端部は、上記両端支柱41の凹部27c内に進入した状態になっている。
そして、この状態では、図10に示す如く、上記押圧作用爪部63のテーパ部62の作用で、上記防潮板3は保持面28側に押し込まれ、防潮板3の厚さ方向Yへの移動は規制される。
【0043】
この他、上記防潮板3の底面3cには、横方向(水平方向)に伸びる底水ゴム26b(図1及び図2)が水平方向Xの全長に亘って配設されており、前記防潮板3の後面3eにおける水平方向Xの両端部には、縦方向(垂直方向)に伸びる縦止水ゴム26a(図10)が上下方向Zの全長に亘って配設されている。
尚、上記底止水ゴム26b及び縦止水ゴム26aとしては、一例として角棒状のCR(クロロプレンゴム)スポンジが使用できる。
【0044】
次に、このようにして構成される第1の実施の形態に係る防潮板装置1Aの設置態様及び動作態様について説明する。
作業者は、異常増水発生時又は増水による水の進入の虞れがあると判断した時には、保管倉庫等に保管しておいた防潮板3を保管倉庫等から取り出して1対の両端支柱41が設置されている設置場所まで素早く運搬する。
【0045】
次に、1対の両端支柱41、41の上部に取り付けられている第1の上下方向押圧機構50が防潮板解除位置V1(図8)にあり、防潮板3に取り付けられている第2の前後方向押圧機構60が防潮板解除位置H1(図8)にあることを確認し、1対の両端支柱41、41間の収容空間18に上記防潮板3を上方から落とし込むようにして仮取付けする。
尚、この状態では、防潮板3の自重のみが底止水ゴム26bを介して地面GLに作用している。
【0046】
防潮板3の仮取付けが完了したら第1の上下方向押圧機構50を防潮板押圧位置V2(図8)に、第2の前後方向押圧機構60を防潮板押圧位置H2(図8)にする。
第1の上下方向押圧機構50を防潮板押圧位置V2に移動させるには、図8中ノブ10の操作部55を手で掴んで回動アーム51を上方に引き上げながら固定支点ピン7を中心に回動アーム51を左方へ回動させる。上記回動アーム51の回動に伴なって、凹部5cに係合していた連結固定軸8は凹部5cとの係合が解除されて仮取付けされた防潮板3側に移動する。
【0047】
ノブ10のネジ軸11が防潮板3の上面3bに固着された押さえ板4の上方に位置していることを確認したら、ノブ10を所定の方向に回してネジ軸11を締め付けて行く。
上記ネジ軸11は、連結固定軸8のネジ孔53との螺合により、ネジ軸11が下方に移動して上記押え板4を介して防潮板3を上方から押さえ付けて押圧固定する。
尚、この状態では、防潮板3の自重に加えて、第1の上下方向押圧機構50からの押圧力が防潮板3に作用しており、底止水ゴム26bが強い力で地面GLに押圧されるため防潮板3底部からの漏水が確実に防止される。
【0048】
一方、第2の前後方向押圧機構60を防潮板押圧位置H2(図8)に移動させるには、回動レバー61の操作レバー部64を手で握って、反時計方向へ約90度回動させて垂直姿勢の操作レバー部64を水平姿勢にする。
上記操作レバー部64の操作に伴なって、当初、両端支柱41の凹部27cの外部に位置していた押圧作用爪部63が、徐々に両端支柱41の凹部27c内に進入するようになり、テーパ部62が両端支柱41の作用面29になっている外側板部27aの内壁面に当接する反力によって防潮板3を図10に示す如く、保持面28側に移動させる。
【0049】
これに伴ない、防潮板3の後面3eにおける水平方向Xの両端部に設けられている縦止水ゴム26aが両端支柱41の保持面28になっている内側板部27bの内壁面に対して強く押し付けられるため防潮板3の両端の側面3f側からの漏水も確実に防止される。
尚、上記第1の上下方向押圧機構50と第2の前後方向押圧機構60の操作順序はどちらを先にしても良く、防潮板3を設置する向きも第2の前後方向押圧機構60が取り付けられている前面3d側を水の進入方向に向けても後面3e側を水の進入方向に向けても構わない。
【0050】
そして、このような第1の実施の形態に係る防潮板装置1Aによれば、通路幅Sが2m程度までの狭い通路幅Sに対する水の進入を効果的に防止でき、防潮板3の有する剛性によって大きな水圧にも耐えることができるようになる。
又、上記第1の上下方向押圧機構50と第2の前後方向押圧機構60によって得られる強い押圧力と、上記底止水ゴム26bと縦止水ゴム26aの弾性力によって得られる高い密着性とによって防潮板3と地面GL間及び防潮板3と両端支柱41、41間の漏水は確実に防止される。
又、設置の際に使用する防潮板3は1枚だけであり、防潮板3の重量は軽く、取手3aが設けられているから、防潮板3の運搬、設置、撤去、保管作業が容易になる。又、防潮板装置1Aの構造が簡単で部品点数が少なくて済むから製品コストの削減も図られる。
【0051】
第2の実施の形態(図11〜図16参照)
第2の実施の形態に係る防潮板装置1Bは、前記第1の実施の形態に係る防潮板装置1Aの構成に中間支柱31を追加することで複数枚の防潮板3を設置することができる構造になっている。
従って、前述した構造の防潮板3を使用して通路幅Sが2mを超えるような場所でも使用できる構造の防潮板装置1Bになっている。
因みに、本実施の形態では前述した幅寸法が2mの防潮板3を2枚使用して通路幅Sが4mの設置環境に使用する場合を例にとって説明している。
【0052】
尚、上記中間支柱31の構成を除く防潮板装置1B(図11)の構成は、前述した第1の実施の形態に係る防潮板装置1A(図1)と同様であるので、ここでは、中間支柱31とその周辺部材の構成を中心に説明する。
中間支柱31は、前述した1対の両端支柱41、41の中間位置に配設される前記両端支柱41と同様、防潮板3を支持する役割を有している。ここで中間位置とは、1対の両端支柱41、41によって挟まれている空間18中の水平方向Xにおける任意の位置を意味し、必ずしも正確な中間の位置を示すものではない。
【0053】
中間支柱31は、図12乃至図14に示す如く、前後に配置される2枚の支持板32、33と、該2枚の支持板32、33間の中央に挟まれて両者を接続する中央連結体6と、該中央連結体6を挟んでその左右に対称に1組ずつ設けられるガイド部材12、12と、上記2枚の支持板32、33の下端部に取り付けられるL字形ノブホルダー23、23と、該L字形ノブホルダー23、23下面に敷設されるベース22と、該ベース22の下面に宛がわれる止水ゴム21とを備えることによって構成されている。
【0054】
そして、上記中間支柱31の中央連結体6を挟んでその左右に、対称に1組ずつ前述した第1の上下方向押圧機構50、50が設けられている。
又、上記中間支柱31が設置される部位の地面GLにおける仕上材層14の一部が取り除かれており、該仕上材層14の取り除かれた部位に中間支柱31の受け部材34が地面GLと面一になるように埋設されている。
【0055】
支持板32、33は、一例として幅110mm、高さ480mm、厚さ5mmのステンレス鋼板によって形成されており、その上端部中央には、前述した両端支柱41の支持板27の上端部に形成されていた凹部5cと同様の凹部35c(図16)が所定距離離れて2個ずつ形成されている。
又、上記支持板32、33の下端部には、上記L字形ノブホルダー23を支持板32、33に固定するための取付けネジ25(図13)と螺合する図示しないネジ孔が幅方向に所定距離隔てて刻設されている。
【0056】
中央連結体6は、一例として幅25mm、奥行き70mm、高さ480mm、厚さ1.5mmのステンレス製の角パイプによって形成されており、該中央連結体6の左右の側面に上述した係止爪44(図12)が2個、取り付けられている。
そして、上記2個の係止爪44、44を使用して上述したように2組のガイド部材12、12が図4の場合と同様に中央連結体6の左右の側面に取り付けられている。
【0057】
L字形ノブホルダー23中の上方に立ち上げられている垂直部36には幅方向に所定距離離れて長穴37(図12)が上下方向Zに延びるように2本形成されている
又、水平方向Xの左右に張り出している上記L字形ノブホルダー23の水平部38には、ノブ39の図示しないネジ軸を貫通状態で受け入れる図示しない受入れ孔が形成されている。
【0058】
又、ベース22は、一例として140mm、奥行き70mm、厚さ6mmの2枚のステンレス鋼板によって形成されており、止水ゴム21は一例として厚さ4mmの板状のCR(クロロプレンゴム)スポンジによって形成されている。
又、上記受け部材34(図12及び図13)は、下部に水平方向Xの左右にはみ出したベース部34aを備えた上面が開放された角筒状の部材で、開放された上面は、上蓋34bによって閉塞されている。
【0059】
又、上記上蓋34bの下面には、ナット40が上記受入れ孔と同じ幅方向に所定距離離れて2個、設けられている。
上記受け部材34のコンクリート層13への固定は、コンクリート層13から立ち上げられているアンカーボルト73(図12及び図15)によって行われており、該アンカーボルト73を上記受入れ部材34底部のベース部34aに形成されている図示しない受入れ孔に通して上方からナット74を締め付けることによって固定している。
【0060】
又、上記中間支柱31と防潮板3は、平常時には保管倉庫等に保管されている。そして、この状態では、図15に示す如く、サラネジ75を使用して上蓋34bに形成されている図示しない受入れ孔を塞ぎ、上記受入れ孔からの受け部材34内部への水やゴミ、塵等の進入を防止する。
一方、異常増水発生時は、上記サラネジ75を外してノブ39により上記L字形ノブホルダー23、ベース22、止水ゴム21及び上蓋34bを中間に挟んだ状態でナット40に図示しないネジ軸を螺合させて受け部材34上に中間支柱31を設置する。
【0061】
又、上記中間支柱31に対して左右に1対設けられている第1の上下方向押圧機構50は、前述した両端支柱41に対して設けられている第1の上下方向押圧機構50と構造は同じである。そして、図11、14、16中、中間支柱31の左側に位置する第1の上下方向押圧機構50が、図11中、左端側に位置する両端支柱41に取り付けられている第1の上下方向押圧機構50と協力して、左側防潮板3の上面3bを下方へ押圧する。
一方、図11、14、16中、中間支柱31の右側に位置する第1の上下方向押圧機構50が、図11中、右端側に位置する両端支柱41に取り付けられている第1の上下方向押圧機構50と協力して右側防潮板3の上面3bを下方へ押圧する。
【0062】
尚、防潮板3と第2の前後方向押圧機構60の構成、防潮板装置1Bの設置態様及び動作態様については前述した第1の実施の形態と基本的に同様であるのでここで詳細な説明は省略する。
そして、このような第2の実施の形態に係る防潮板装置1Bによっても、前述した第1の実施の形態に係る防潮板装置1Aと同様の作用、効果が発揮され、更に、中間支柱31を設けたことによって通路幅Sが2mを超えるような設置環境にも対応でき、中間支柱31を2個以上且つ防潮板3を3個以上に増設すれば通路幅Sが4mを超えるような設置環境にも対応できるようになる。
【0063】
以上が本発明の基本的な実施の形態であるが、本発明の防潮板装置1は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略、あるいは当業者において周知、慣用の技術を追加することが可能である。
例えば、防潮板3に作用する水圧等によって防潮板3の後面3eに取り付けられている縦止水ゴム26aと保持面28との十分な密着性が確保できる場合には、前述した第2の前後方向押圧機構60を省略したり、第2の前後方向押圧機構60の設置個数を少なくすることが可能である。
【0064】
この他、中間支柱31として2組の両端支柱41を互いの中間板部27d(図6)が接するように背中合わせにして組み合わせることによって構成することも可能であるし、防潮板3の幅寸法や両端支柱41及び中間支柱31の高さ寸法は、前述した寸法に限らず、適用する通路幅Sの狭広に対応して種々変更することが可能である。
【0065】
図17乃至図21は、本発明の第3の実施の形態を示す図であり、各図中、図1乃至図16と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。断面コ字形支持板27は図21に示す如く、外側板部27a及び内側板部27bの各上部に水平方向ガイド溝27f(夫々係合溝部27gを有する)と、上端係合凹部27hとを設けられる。81は第1の上下方向押圧機構50の変形である第3の上下方向押圧機構であり、図21に示す如く、コ字形スライド板部82(上面の貫通ネジ孔82aと両側板部82bの貫通孔82cとを有する)と、両側板部82bの貫通孔82cに貫通して係止されたガイドロッド83と、ノブ84(操作部84a、ねじ部84b、押圧部84cを有する)とからなり、ねじ部84bはスライド板部82のネジ孔82aを螺合貫通している。なお、図17及び図22では、第3の上下方向押圧機構81は防潮板解除位置V1にあって、そのガイドロッド83はガイド溝27fの係合溝部27gに係合し、且つスライド板部82が支持板27の上端係合凹部27hに係合する、いわゆる、防潮板解除位置V1にある。
【0066】
次に、上記第3の実施の形態について説明する。
第1及び第2の実施形態の場合と同様に、作業者は、異常増水発生時に防潮板3を保管倉庫等から取り出して、1対の両端支柱41、41間のコ字形支持板27の収容空間内に上方から落とし込んで仮取付けする。このとき、防潮板3の自重のみが底止水ゴム26bを介して地面GLに作用する。
【0067】
次に、第3の上下方向押圧機構81を防潮板押圧位置V2(図8)へ移動させ、次いで第2の前後方向押圧機構60を防潮板押圧位置H2(図8)へ移動させるが、後者の動作については上記各実施形態と同様ゆえその説明を省略する。
第3の上下方向押圧機構81を防潮板押圧位置V2へ移動させるには、図17及び図22中ノブ84の操作部84aを手で掴んで上方へわずかに引き上げた後に各図中左方へ移動させる。するとガイドロッド83が係合溝部27gから係合解除されてガイド溝27f中を案内されながら同方向へスライドして防潮板押圧位置V2(図18、図19及び図23)へ至る。従って、次に操作部84aを回転操作してねじ部84b及び82aの螺合により、 ノブ84を下方へ移動させ、その押圧部84cにより防潮板3上面の押え板4を下方へ押圧させる。これにより、防潮板3の自重に加えて、第3の上下方向押圧機構81からの押圧力が防潮板3に作用するため、上記実施形態と同様に、底止水ゴム26bが強い力で地面GLに押圧されて防潮板3底部からの漏水が確実に防止される。
【0068】
上記第3の実施形態によれば、第3の上下方向押圧機構81の構成が、第1の上下方向押圧機構50の如く比較的長い寸法の回動アーム51が上下方向へ移動しつつ回動するものに比して、コ字形板82,ガイドロッド83及びノブ84という3つの小型且つ簡単な部材で構成されて構成が簡単であり、しかも動作も押圧機構81が単に横方向へ比較的短い距離スライドするのみであるから動作も簡単であり、コストの低減及び装置の小型化を図れる。
なお、第3の上下方向押圧機構81の構成が、上記第2の実施形態の如く、2枚の防潮板3を使用する場合にも適用可能であり、また3枚以上の防潮板3を使用する場合にも同様に適用可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、異常増水発生時に設置して水の進入を防止する防潮板装置の製造、使用分野等で利用でき、特に剛性が高く軽量な防潮板を使用して高い水密性を確保し、簡単な構造で安価且つ設置、撤去作業が容易な防潮板装置を提供したい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0070】
1 防潮板装置
3 防潮板
3a 取手
3b 上面
3c 底面
3d 前面
3e 後面
3f 側面
4 押え板
5c 凹部
6 中央連結体
7 固定支点ピン
8 連結固定軸
9 カラー
10 ノブ
11 ネジ軸
12 ガイド部材
12a 案内部
12b 位置決め部
13 コンクリート層
14 仕上材層
17 壁
18 空間(収容空間)
21 止水ゴム
22 ベース
23 L字形ノブホルダー
25 取付けネジ
26a 縦止水ゴム
26b 底止水ゴム
27 支持板
27a 外側板部
27b 内側板部
27c 凹部
27d 中間板部
27f ガイド溝
27g 係合溝部
27h 係合凹部
28 保持部
29 作用面
31 中間支柱
32 支持板
33 支持板
34 受け部材
34a ベース部
34b 上蓋
35c 凹部
36 垂直部
37 長穴
38 水平部
39 ノブ
40 ナット
41 両端支柱
42 取付ボルト
43 取付ナット
44 係止爪
45 折返し部
46 ビス
50 第1の上下方向押圧機構
51 回動アーム
52 長穴
53 ネジ孔
54 固定ネジ
55 操作部
60 第2の前後方向押圧機構
61 回動レバー
62 テーパ部
63 押圧作用爪部
64 操作レバー部
65 回動基端部
67 回動支点ピン
68 取付けベース
70 骨材
71 面材
73 アンカーボルト
74 ナット
75 サラネジ
81 第3の上下方向押圧機構
82 スライド板部
82a 貫通ネジ孔
82b 両側板部
82c 貫通孔
83 ガイドロッド
84 ノブ
84a 操作部
84b ねじ部
84c 押圧部
V1 防潮板解除位置
V2 防潮板押圧位置
GL 地面(床面)
S 通路幅
H1 防潮板解除位置
H2 防潮板押圧位置
Z 上下方向
X 水平方向
Y 厚さ方向
t 作用高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定距離離れて配設された1対の両端支持部材(27)と、
該1対の両端支持部材(27)間に仮取付けされた防潮板(3)と、
前記各両端支持部材(27)に予め可動自在に取り付けられており、前記防潮板(3)の仮取付け後に防潮板解除位置(V1)から防潮板押圧位置(V2)へ移動されて、前記防潮板(3)を地面(GL)方向へ押圧する第1の上下方向押圧機構(50)とを有することを特徴とする防潮板装置。
【請求項2】
請求項1記載の防潮板装置において、
前記防潮板(3)の水平方向Xの両端部には、予め可動自在に取り付けられた第2の前後方向押圧機構(60)が更に設けられており、
前記第2の前後方向押圧機構(60)は、前記防潮板(3)の仮取付け後に防潮板解除位置(H1)から防潮板押圧位置(H2)へ移動されて、前記防潮板(3)を前記1対の両端支持部材(27)における厚さ方向(Y)の保持面(28)に向けて押圧されるようにしたことを特徴とする防潮板装置。
【請求項3】
所定距離離れて配設された1対の両端支持部材(27)と、
該1対の両端支持部材(27)の中間位置に配置された1本又は複数本の中間支持部材(27)と、
前記1対の両端支持部材(27)と前記中間支持部材(27)との間又は前記中間支持部材(27)間に形成される複数の空間に夫々仮取付けされた複数枚の防潮板(3)と、
前記各両端支持部材(27)と前記中間支持部材(27)の夫々に予め可動自在に取り付けられており、前記各防潮板(3)の仮取付け後に防潮板解除位置(V1)から防潮板押圧位置(V2)へ移動されて、前記夫々の防潮板(3)を地面(GL)方向へ押圧する第1の上下方向押圧機構(50)とを有することを特徴とする防潮板装置。
【請求項4】
請求項3記載の防潮板装置において、
前記防潮板(3)の水平方向Xの両端部には、予め可動自在に取り付けられた第2の前後方向押圧機構(60)が更に設けられており、
前記第2の前後方向押圧機構(60)は、前記各防潮板(3)の仮取付け後に防潮板解除位置(H1)から防潮板押圧位置(H2)へ移動されて、前記各防潮板(3)を前記1対の両端支持部材(27)又は前記中間支持部材(27)における厚さ方向(Y)の保持面(28)に向けて押圧されるようにしたことを特徴とする防潮板装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の防潮板装置において、
前記第1の上下方向押圧機構(50)は、支持部材(27)に設けた支点(7)を中心にして所定角度の範囲で回動する回動アーム(51)と、
前記回動アーム(51)の回動自由端近傍に設けられ、上下方向(Z)に貫通するネジ孔(53)が刻設されている連結固定軸(8)と、
前記連結固定軸(8)のネジ孔(53)と螺合するネジ軸(11)を備えるノブ(10)とを有し、
前記回動アーム(51)を前記防潮板押圧位置(V2)に移動させた後、前記ノブ(10)を所定の方向に回転させることによって前記ネジ軸(11)を前記防潮板(3)の上面(3b)に当接させて押圧固定するように構成されていることを特徴とする防潮板装置。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れかに記載の防潮板装置において、
前記第1の上下方向押圧機構(81)は、スライド本体(82)と、該スライド本体(82)に取付けられた案内部材(83)と、該スライド本体(82)のネジ孔(82a)に螺合されたネジ軸(84b)を有するノブ(84)とを備え、
該案内部材(83)が支持部材(27)に設けたガイド部分(27f、27g)に対して横方向案内的にスライド自在に係合されており、
前記ノブ(84)の操作により、前記第1の上下方向押圧機構(81)を、防潮板解除位置(V1)から防潮板押圧位置(V2)まで所定距離スライドさせた後、前記ノブ(84)を所定の方向に回転させることによって前記ネジ軸(84b)を前記防潮板(3)の上面(3b)に当接させて押圧固定するように構成されていることを特徴とする防潮板装置。
【請求項7】
請求項2、4、5又は6記載の防潮板装置において、
前記第2の前後方向押圧機構(60)は、支点(67)を中心にして所定角度の範囲で回動する回動レバー(61)と、
前記回動レバー(61)の作用端に設けられ、前記1対の両端支持部材(27)又は前記中間支持部材(27)における厚さ方向(Y)の保持面(28)と対向する作用面(29)に当接する押圧作用爪部(63)とを備え、
前記押圧作用爪部(63)には、前記作用面(29)に当接する側にテーパ部(62)が設けられており、該テーパ部(62)は、前記両端支持部材(27)又は前記中間支持部材(27)側に進入するに従ってテーパ部作用厚さ(t)が大きくなるように形成されていることを特徴とする防潮板装置。
【請求項8】
請求項3乃至7の何れかに記載の防潮板装置において、
前記中間支持部材(27)に対して取り付けられている前記第1の上下方向押圧機構(50)は、左右1対設けられていることを特徴とする防潮板装置。
【請求項9】
請求項2、4、5、6又は7記載の防潮板装置において、
前記防潮板(3)の水平方向(X)の両端部に取り付けられている第2の前後方向押圧機構(60)は、上下方向(Z)にずれた位置に複数組設けられていることを特徴とする防潮板装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の防潮板装置において、
前記防潮板(3)は、骨材(70)がアルミ角パイプ、面材(71)がアルミ板によって構成されており、
前記防潮板(3)の上面(3b)の中央部には取手(3a)が取り付けられていることを特徴とする防潮板装置。
【請求項11】
請求項10に記載の防潮板装置において、
前記骨材(70)と面材(71)とによって区画された空間には芯材として発泡プラスチック材が装填されていることを特徴とする防潮板装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れかに記載の防潮板装置において、
前記防潮板(3)の底面(3c)には、底止水ゴム(26b)が水平方向Xの全長に亘って配設されており、
前記防潮板(3)の後面(3e)における水平方向Xの両端部には、縦止水ゴム(26a)が上下方向Zの全長に亘って配設されていることを特徴とする防潮板装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れかに記載の防潮板装置において、
前記1対の両端支持部材(27)と前記中間支持部材(27)には、前記防潮板(3)を仮取付する際の案内となるガイド部材(12)が設けられていることを特徴とする防潮板装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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