説明

防火装置を備えた蒸留塔

本発明は、蒸留される少なくとも1つの混合物を塔に運ぶための手段(21)と、この混合物の一成分に富んだ少なくとも1つの流体を前記塔から取出すための手段(23)と、この塔の内部に、凝縮器−蒸発器(3)、凝縮される気体と気化される液体とをこの凝縮器−蒸発器に送るための手段(25)、及び凝縮された気体と気化された液体とを取出すための手段と、この凝縮器−蒸発器の上方に位置しているパッキング材料の少なくとも1つのモジュールと、この凝縮器−蒸発器とパッキング材料のモジュールとの間に少なくとも1つの防火用障壁(7A、7B、7C)とを有する蒸留塔(1)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火装置を備えた蒸留塔に、特に、このような装置を備えた空気蒸留塔に関する。
【背景技術】
【0002】
Enderらによる記事「Minimize the Risk of Fire During Column Maintenance(塔のメインテナンス中の火災の危険性を最小限にする)」、CEP、2003年9月、は、蒸留塔のほとんどの火災は、特にアルミニウムで形成された、構造化されたパッキングを使用するためであることを説明している。
【0003】
空気分離ユニットの塔内のアルミニウムの蒸発器により、炭化水素が局所的に蓄積することにより開始される、コルゲーションのアルミニウムの局所的な燃焼による複数のホットスポットが生じうる。
【0004】
蒸発器の上方に位置する複数のパッキングのアルミニウムの燃焼が開始する可能性は、深刻な状況であると考えられる。
【0005】
蒸発器内の火災が、これらのパッキングに広がる危険性を低減するために、蒸発器とパッキングとの間で、塔の外部で高価な接続用配管が必要となる2重の断熱壁を用いることが慣行である。そうでない場合、この塔は、蒸発器の直上に銅のパッキングモジュールを有してもよい。これも費用のかかる解決方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、
i)蒸留される少なくとも1つの混合物を塔に運ぶための手段と、
ii)前記混合物の一成分に富んだ少なくとも1つの流体を前記塔から取出すための手段と、
iii)前記塔の内部に、凝縮器−蒸発器と、凝縮される気体と気化される液体とをこの凝縮器−蒸発器に送るための手段と、凝縮された気体と気化された液体とを取出すための手段と、
iv)前記凝縮器−蒸発器の上方に位置している少なくとも1つのパッキングモジュールとを有する蒸留塔において、
前記凝縮器−蒸発器とパッキングモジュールとの間に少なくとも1つの防火用障壁と、流体を前記塔の内部で前記モジュールと凝縮器−蒸発器との間に流すための手段とをさらに有することを特徴とする蒸留塔を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の複数の他の態様によれば、前記塔は、
前記塔の断面のこの断面の少なくとも半分に等しい第1の部分を遮る第1の障壁と、前記塔の断面のこの断面の少なくとも半分に等しく、前記塔の断面の第1の部分を多くとも部分的に覆う第2の部分を遮る第2の障壁とを有し、これら第1及び第2の障壁は、前記凝縮器−蒸発器と、この凝縮器−蒸発器の上方の第1の前記パッキングモジュールとの間に位置し、前記第1の障壁は、前記第2の障壁の下方である。
【0008】
前記塔は、前記第2の障壁の上方で前記第1のパッキングモジュールの下方に、前記塔の断面のこの断面の少なくとも半分に等しい第2の部分を遮り、前記塔の断面の前記第2の部分を多くとも部分的に覆う、少なくとも1つの第3の障壁を有する。
【0009】
前記断面の第2の部分は、前記断面の第3の部分の10乃至90%を覆う。
【0010】
前記断面の第1の部分は、前記断面の第2の部分の10乃至90%を覆う。
【0011】
前記障壁(又は前記第1の障壁)と、場合に応じて前記第3の障壁とは、前記塔と同軸状であり、前記蒸発器のところの前記塔の半径の50乃至100%に等しい半径を有する第1の断面を遮るディスクからなる。
【0012】
前記第2の障壁は、前記蒸発器のところの前記塔の半径にほぼ等しい外側半径を有し、前記蒸発器のところの前記塔の半径の20%より大きい内側半径を有する環状の障壁である。
【0013】
複数の前記障壁は、少なくとも部分的に銅、又は銅合金で形成されている。
【0014】
少なくとも1つの障壁、好ましくは最も下方のしたがって前記蒸発器に最も近い障壁は、セラミック、石英、又はガラスの複数の小球で充填されている。
【0015】
前記複数の障壁の少なくとも1つは、円形であり、並びに/もしくは、これら障壁の少なくとも1つは環状である。
【0016】
前記複数の障壁の少なくとも1つは、前記塔の垂直軸に中心が合わせられている。
【0017】
本発明は、上述のような少なくとも1つの塔を備えている空気分離ユニットも有している。
【0018】
複数の前記パッキングモジュールは、アルミニウム又は銅で形成され、気体の流れへの抵抗を低減するために、端部の変更を伴い、又は伴っていないクロスコルゲーテッドタイプ(type ondule’-croise’)であることが好ましい。
【0019】
本発明は、以下の図面を参照してより詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
複式空気分離塔(double colonne de se’paration d’air)の低圧塔1は、中圧塔から来る窒素25により温められる排液リボイラ(rebouilleur de cuve)3を備えている。このリボイラは、富酸素である、塔の排液の液体を気化させる役割を果たす。このリボイラ3は、既知のいずれのタイプでもよいが、浴式蒸発器(vaporiseur a` bain)がしばしば好まれる。この塔には、富んだ液体(liquide riche)21の流れを含む還流が供給され、場合に応じて、気体状の空気流が供給される。前記塔の内部での質量と熱との交換は、少なくとも1つの構造化されたパッキングモジュールを介して生じる。これらのパッキングは、アルミニウムで形成され、クロスコルゲーテッドタイプであることが好ましいが、これらのパッキングは、例えば銅で形成された空気の分離に適したいかなるタイプであってもよい。最も下方のモジュール5は、富んだ液体21のための注入口の上方に位置している。
【0021】
80乃至99.9モル%の酸素を含む富酸素液体の流れ23が、塔の缶出液(ボトム)として取り出される。
【0022】
互いに上下に積重ねられた3つの障壁からなる防火装置が、排液のリボイラ3と最も下方のパッキングモジュール5との間に位置している。
【0023】
低圧塔の直径は、一般に4.5mである。
【0024】
リボイラ3に最も近い障壁は、障壁7Aであり、この障壁7Aは、複数のセラミックの小球の複数の層からなるベッドを支持しているグリッドである。これらのセラミックの小球は、完全に不活性(燃料でも酸化剤でもない)であり、また、蒸発器の火(un feu de vaporiseur)が前記グリッドを貫通する場合に、重力によりこの火に向かって流れるという好都合な点を有する。これらの小球は、交換器の通路をふさぐ危険性がないような十分な寸法(例えば、12.7mm)である。
【0025】
液体酸素を取出す役割を果たす障壁7Bが、障壁7Aの上方に位置している。この障壁7Bは、前記塔の直径、一般に1.5mの内径、にほぼ等しい外径を有し、環形状の金属シートからなる。素材は、銅又はニッケルもしくは銅とニッケルとの合金(キュプロニッケル、又はモネル(Monel(商標))でよいが、セラミックで又は上述の金属で被覆されたステンレス鋼であってもよい。この障壁は、溶接により塔1の鏡板(virole)に固定されている。この障壁7Bは、液体が障壁7Aに流れることを防止するために、内側の端部に上向きの持上がり(releve’)27を有している。8つの径方向の補強用ガセット板が、この上向きの持上がり27から塔1の鏡板に延びている。これらのガセット板15により、この障壁は、より頑丈になり、障壁7A、7Cに接続され、これらの障壁を所定の位置に維持するようにする。8つの開口部13が、障壁7Bの周囲に形成されている。この障壁7Bの中央を通って落下する液体は、この障壁の外側に向かって流れ、これらの開口部13内へと導かれる。この障壁7Bにある液体酸素の質量を減少させるために、この障壁7Bは、セラミックの小球で充填されている。場合に応じて、この障壁は、円錐形状であってもよく、この場合、上向きの持上がり27を省くことができるだろう。
【0026】
障壁7Cは、障壁7Aと同一の形状で、同一の寸法で、同一の素材からなるが、一般に直径が2.5mの硬い金属のシートは、中央で液体が障壁7Aに滴下するのを防止する。この障壁7Cは、最終的な障壁であり、セラミックの小球の層の数は、障壁7Aにおけるよりも少なくてもよい。
【0027】
本発明は、排液リボリラと、このリボイラの上方の少なくとも1つの構造化されたパッキングモジュールとを用いるどんな蒸留塔にも適用されることが理解されるだろう。特に、本発明は、排液が液状の酸化剤を含む塔に適用される。
【0028】
燃焼生成物の温度が1500℃より高い場合だけ伝播が起こりうることが知られているため、前記障壁の数は、3つに制限することが好ましい。
【0029】
図2では、障壁7Bの下方の障壁7Aと障壁7Bの上方の障壁7Cとの外端が、点線により示されている。この環状の空きスペースがある結果、動作の際の圧力低下をさらに低減することができる。
【0030】
図3は、障壁7Bに落下する液体を複数の開口部3を介して流させる液体流下パイプ19を示している。この流下パイプ19により、前記液体は、液体槽25内に向けられる。この流下パイプは、エルボの形状を有し、90°の角度で3つの異なる位置で曲げられており、この結果、液体は水平方向に出て行く。このように、この液体流下パイプを介して火が伝播することは防止される。
【0031】
これらの障壁を、安全性を確実に最大限にするために、銅、又はニッケルもしくは銅とニッケルとの合金(キュプロニッケル、モネル(Monel(商標)))で形成することができる。他の解決方法では、オーステナイト鋼の支持部を銅合金で、又はセラミックでコーティングしてもよい。
【0032】
図4は、本発明による他の塔を示している。ここでは、防火装置は、この場合前記塔の直径を有し、グリッドにより所定の位置に保持されるセラミックの複数の小球から形成されている単一の障壁からなる。ガラス又は石英の小球も用いることができる。これらの素材は非常に高い融点(セラミックの場合は、2000℃より高い)を有するため、もし、層の数がより多いならば、この防火装置は、火が伝播することを防止するシールドを形成するだろう。
【0033】
厚さが数センチのシールドを形成する複数の小球により、前記塔を通って流れる液体と気体とはこれらの小球を通過させられるが、これらの小球は不活性のままである。過熱が開始する場合には、前記グリッドは溶融し、この結果、前記複数の小球を解放し、これらの小球は火の中へと落下する。これらの小球は、交換器の通路をふさぐ危険性がないような十分なサイズである(例えば、12.7mm)。
【0034】
他のシステム、例えば、2つの異なる高さに位置する逆さまにされたタイル(tuile)の形状の領域を、セラミックの小球の障壁とパッキングモジュールとの間に位置させ、液体酸素を集めるようにする一方で、気体を通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による防火装置を組みこんだ蒸留塔を示す図である。
【図2】本発明による複数の障壁の1つを詳細に示す図である。
【図3】液体流下パイプを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)蒸留される少なくとも1つの混合物を塔に運ぶための手段(21)と、
ii)前記混合物の一成分に富んだ少なくとも1つの流体を前記塔から取出すための手段(23)と、
iii)前記塔の内部に、凝縮器−蒸発器と、凝縮される気体と気化される液体とを前記凝縮器−蒸発器に送るための手段(25)と、凝縮された気体と気化された液体とを取出すための手段と、
iv)前記凝縮器−蒸発器の上方に位置している少なくとも1つのパッキングモジュールとを具備する蒸留塔において、
前記凝縮器−蒸発器とパッキングモジュールとの間に少なくとも1つの防火用障壁(7、7A、7B、7C)と、流体を前記塔の内部で前記モジュールと凝縮器−蒸発器との間に流すための手段とをさらに具備することを特徴とする塔。
【請求項2】
前記塔の断面の、この断面の少なくとも半分に等しい第1の部分を遮る第1の障壁(7A、7B)と、前記塔の断面のこの断面の少なくとも半分に等しく、前記塔の断面の第1の部分を多くとも部分的に覆う第2の部分を遮る第2の障壁(7B、7C)とをさらに具備し、これら第1及び第2の障壁は、前記凝縮器−蒸発器(3)と、この凝縮器−蒸発器の上方の第1の前記パッキングモジュール(5)との間に位置し、前記第1の障壁は、前記第2の障壁の下方である請求項1に記載の塔。
【請求項3】
前記塔は、前記第2の障壁(7C)の上方で、前記第1のパッキングモジュール(5)の下方に、前記塔の断面のこの断面の少なくとも半分に等しい第2の部分を遮り、前記塔の断面の前記第2の部分を多くとも部分的に覆う、少なくとも1つの第3の障壁をさらに具備する請求項2に記載の塔。
【請求項4】
前記断面の第2の部分は、前記断面の第3の部分の10乃至90%を覆う請求項3に記載の塔。
【請求項5】
前記断面の第1の部分は、前記断面の第2の部分の10乃至90%を覆う請求項2乃至4のいずれか1に記載の塔。
【請求項6】
前記障壁(又は前記第1の障壁)(7A)と、場合に応じて前記第3の障壁(7C)とは、前記塔と同心状であり、前記蒸発器のところの前記塔の半径の50乃至100%に等しい半径を有する第1の断面を遮るディスクからなる請求項1乃至4のいずれか1に記載の塔。
【請求項7】
前記第2の障壁(7B)は、前記蒸発器(3)のところの前記塔の半径にほぼ等しい外側半径を有し、前記蒸発器のところの前記塔の半径の20%より実質的に大きい内側半径を有する環状の障壁である請求項6に記載の塔。
【請求項8】
複数の前記障壁(7、7A、7B、7C)は、少なくとも部分的に銅、又は銅合金で形成されている前記全ての請求項のいずれか1に記載の塔。
【請求項9】
少なくとも1つの障壁、好ましくは最も下方のしたがって前記蒸発器に最も近い障壁(7、7A)は、セラミック、石英、又はガラスの複数の小球で充填されている前記全ての請求項のいずれか1に記載の塔。
【請求項10】
前記複数の障壁(7、7A、7C)の少なくとも1つは、円形であり、並びに/もしくは、これら障壁の少なくとも1つは環状である前記全ての請求項のいずれか1に記載の塔。
【請求項11】
前記複数の障壁(7、7A、7B、7C)の少なくとも1つは、前記塔の垂直軸に中心が合わせられている請求項10に記載の塔。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1に記載の塔(1)を少なくとも1つ具備する空気分離ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−536086(P2008−536086A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505934(P2008−505934)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050270
【国際公開番号】WO2006/108979
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】