防災キャビン
【課題】通常時には日常生活の場として使用され、災害時には人間の身体を危険から防護し、家屋の倒壊を防ぐ防災キャビンを提供する。
【解決手段】家屋3内部に設置され、複数の出入口を有する中空立体構造のキャビン本体と、キャビン本体の出入口に設けられ外部から施解錠操作可能な開閉扉と、キャビン本体内部に設備された生活および緊急道具と、キャビン本体設置階の上の階の床面に接続され人間が通過可能な退避用通路95とを備えた防災キャビンである。防災キャビンは複数の分割キャビン82,83から構成され、退避用通路95により連通されている。地震等の突発的な災害が起こった場合は、家屋が倒壊しても防災キャビンは破壊せず、人間を防護する。暴漢などが侵入した場合、1つの分割キャビンに逃げ込んで身を守ることができ、さらに危険な場合は、退避用通路95を使って別の分割キャビンへ逃がれることが可能となる。
【解決手段】家屋3内部に設置され、複数の出入口を有する中空立体構造のキャビン本体と、キャビン本体の出入口に設けられ外部から施解錠操作可能な開閉扉と、キャビン本体内部に設備された生活および緊急道具と、キャビン本体設置階の上の階の床面に接続され人間が通過可能な退避用通路95とを備えた防災キャビンである。防災キャビンは複数の分割キャビン82,83から構成され、退避用通路95により連通されている。地震等の突発的な災害が起こった場合は、家屋が倒壊しても防災キャビンは破壊せず、人間を防護する。暴漢などが侵入した場合、1つの分割キャビンに逃げ込んで身を守ることができ、さらに危険な場合は、退避用通路95を使って別の分割キャビンへ逃がれることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防災キャビン、特に家屋の一部に設置され、通常は生活の場として使用される一方で、災害時には人間の身体を危険から防護し、且つ外敵(侵入者など)からは危害を受けないように防護する防災キャビンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、災害時に人間を保護するための方策に関心が持たれ、緊急時には被災者が逃げ込めるような装置が種々提案されている。このような装置の一例としては、一般に「核シェルター」や災害用シェルターと呼ばれる避難設備がある。前者は、中空の立体構造物の内部に数日分の食料と生活道具を備え、これを地中に埋めておき、外国からの核攻撃に遭遇しても核シェルターの中に逃げ込めることにより一定期間は生き延びることができるようにしたものである。後者も同様に中空の立体構造物の内部に数日分の食料と生活道具を備え、災害が発生したときなどにシェルターの中に逃げ込めるようにしたものである。先行技術としては、例えば特許文献1に示すようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−043506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のシェルターのうち、核シェルターにあっては、核攻撃に耐えるために地中深くに埋められるものであり、一旦地中に埋められた場合は、出入りすることは可能であっても人間が生活していくのに頻繁に使用されるものではなく、せいぜい物置とか倉庫等に利用されるのみであった。また、特許文献1に示されたシェルターは、地震時の家屋倒壊から防護するために、2本の支柱部分とその上部間をつなぐ上枠部分、および支柱部分の底部間をつなぐ座枠部分とにより上部が窄まった台形枠状に形成される枠体構造物である。したがって、使用者を地震時の家屋倒壊から防護するが外敵から身を守ることは不可能である。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、通常時においても家屋に設けられた部屋と同様に生活の場として使用される一方で、災害時には人間の身体を危険から防護し、時には家屋の倒壊を防ぐ防災キャビンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するため、内部が中空で複数の出入口を有する立体構造のキャビン本体と、キャビン本体の出入口に設けられ外部から施解錠操作可能な開閉扉と、キャビン本体内部に設備された生活道具とを備えた防災キャビンであって、当該防災キャビンは、複数の分割キャビンから構成され、これらの分割キャビン同士は退避用通路により連通され、緊急事態に際して、一旦は1つの分割キャビンに逃げ込んで身を守り、さらに危険な場合は、退避用通路を使って別の分割キャビンへ逃がれ得るようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防災キャビンは、前記構成により、組み立てに当たっては組立部品を屋内に持ち込み、各部品の結合作業を行なうことで容易に組み立てることができる。そして、組み立て終わった後は、恰かも屋内に1つの部屋があるように、子供の勉強部屋として、或いは大人の書斎や作業部屋として日常生活の一環の中で使用することができる。そして、一旦地震等のような突発的な災害が起こった場合は、家屋が倒壊しても防災キャビンは破壊せず、人間を防護する。また、暴漢などが侵入した場合、一旦は1つの分割キャビンに逃げ込んで身を守ることができ、さらに危険な場合は、退避用通路95を使って別の分割キャビンへ逃がれることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態による防災キャビンの外観構造および家屋の内部への設置例を概略的に示す正面図である。
【図2】前記実施の形態の平面図である。
【図3】前記実施の形態に係る防災キャビンのキャビン本体の組み立て構造を概略的に示す一部破断正面図である。
【図4】前記実施の形態におけるキャビン本体へのキャップ部材と支柱の取り付け構造を示す概略斜視図である。
【図5】前記実施の形態における支柱の構造を示す断面図である。
【図6】前記実施の形態におけるキャップ部材および支柱立部材と支柱との結合の状態を示す分解正面図である。
【図7】前記実施の形態における防災キャビンの内部構造の一例を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態による防災キャビンの外観構造を概略的に示す斜視図である。
【図9】前記第2の実施の形態による防災キャビンおよびその家屋への取付け状態の一例を概略的に示す正面図である。
【図10】防災キャビンの種々の外観構造例の1つとして円筒構造の壁部に半球構造の天井部を取り付けた防災キャビンの構造例を概略的に示す斜視図である。
【図11】防災キャビンの種々の外観構造例の1つとしてかまぼこ型の防災キャビンの構造例を概略的に示す斜視図である。
【図12】防災キャビンの種々の外観構造例の1つとしてロケット型の防災キャビンの構造例を概略的に示す斜視図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態による防災キャビンの構造および家屋の内部への設置例を概略的に示す正面図である。
【図14】前記実施の形態に係る防災キャビンの、第2分割キャビンとして浴室が利用される場合の内部構造の具体例を示す正面図である。
【図15】本発明による防災キャビンの第4の実施の形態を示す正面図である。
【図16】本発明による防災キャビンの第4の実施の形態を示す平面図である。
【図17】上記本発明の第4の実施の形態の変更例を示す正面図である。
【図18】上記本発明の第4の実施の形態の変更例を示す平面図である。
【図19】本発明の施の形態およびその変更例において、水に浮かんだ時の推進力を得るための駆動装置を示す図である。
【図20】各実施の形態に係る防災キャビンの小道具としてのステッキを示す正面図である。
【図21】図20に示されたステッキに収納される花火を示す正面図である。
【図22】本発明による防災キャビンの第5の実施の形態を示す斜視図である。
【図23】上記第5の実施の形態に係る防災キャビンに設けられた配管の一部を例示的に示す正面図である。
【図24】図22に示された防災キャビンを通常の家屋へ設置した場合の一例を示す内部部分透視図である。
【図25】図22に示されたものと同様の機能を持つ防災キャビンを図9に示された家屋へ設置した場合の一例を示す内部部分透視図である。
【図26】図22に示されたものと同様の機能を持つ防災キャビンを図13に示された家屋へ設置した場合の一例を示す内部部分透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
図1乃至図7は本発明による防災キャビンの第1の実施の形態を示す図である。これらの図において、符号1は本実施の形態に係る防災キャビンを示す。この防災キャビン1は全体が球形状の構成されており、その頂部から5分の1乃至3分の1の高さ部分で上側キャビン本体2と下側キャビン本体4との2つのキャビン本体を上下に分割可能に結合して構成されている。上側キャビン本体2および下側キャビン本体4は、どちらも、さらに複数のシェル部片2a、4aをつなぎ合わせることによって構成されるようになっている。シェル部片2a、4aはどのような形状に作られていてもよいが、この実施の形態の防災キャビン1が球体であることを考慮して上側頂点と下側頂点を球面に沿って結んだ縦向きの線(地球の経線に相当する)を、当該縦線とは直角の方向へ等角度間隔で複数引き、この縦線に沿って切り分けた形状であることが運搬の点でも好ましい。
【0010】
各シェル部片2a、4aは、図3に示すように外皮部材43と、外皮部材の内側に装填された内層部材44と、内層部材44の内側面に張設されたシート45とから成る。外皮部材43は鋼材或いはステンレス材等の剛性の大きい材質から成り、各シェル部片2a、4aの端縁部分で内側に折り曲げられてフランジ46を形成している。内層部材44は、例えば発泡スチロール等の材質から成り、防災キャビン1の内部を遮音、遮熱、或いは身体の一部を打ちつけたときの緩衝の役目をする。シート45は内層部材44が防災キャビン1の室内に剥き出しにならないようにするとともに、内層部材44と同様緩衝の役目をする。そして、シェル部片2a同士またはシェル部片4a同士を結合する場合、およびシェル部片2aとシェル部片4aとを結合する場合は、図3に示すように各シェル部片2a、4aのフランジ46を突き合わせ、このフランジ46の部分でボルト47およびナット48によって締め付け固定する。
【0011】
防災キャビン1の内部には床8が作られ、この床8には窪みが形成されて食料ヒンジ部等の格納部9が設けられる。床8は、発泡スチロール、或いは畳、フローリング、木材等種々の床材に適したものによって作られる。或いは床部分に防災キャビン1の重しを兼ねて砂を敷いたり或いはコンクリートを打設し、その上に床板を張ってもよい。防災キャビン1の頂部すなわち上側キャビン本体2の頂点部分には、図4に示すように人間34の大人が通り抜けできる程度の直径を有する開口16が形成され、この開口16は湾曲構造のキャップ部材10によって閉鎖されている。キャップ部材10は支柱11によってキャビン本体2に押圧固定されている。支柱11は、図5に示すように、上端が開放、下端が閉塞された中空路19を内部に有する管状体から構成され、上端および下端部分にはねじ(おねじ)12、13が切られるとともに、下端部分のねじ13よりもやや上方の管状部分側面には縦長形状のスリット孔20が形成されている。ねじ12とねじ13とは、一方が右ねじ、他方が左ねじというように互いに反対の関係にねじ切りされている。一方、キャップ部材10は裏側の湾曲凹部の頂部に突起部17を有し、この突起部17には下方に開口しねじ12に螺合するねじ(めねじ)18が切られている。また、キャップ部材10の取り付け位置(キャビン頂部)に対向する床8上には支柱立部材14がねじ部材15によって固定取り付けされている。この支柱立部材14は、上記キャップ部材10と同様、中心部に突起部17aを有し、その突起部14aには上方に開口しねじ13に螺合するねじ(めねじ)18aが切られている。そして上側キャビン本体2の頂点部分にキャップ部材10を載置した状態で、図6に示すように支柱11のおめじ12、13をキャップ部材10および支柱立部材14のめねじ18、18aに係合させ、この支柱立部材14を右または左のいずれかの向きに回転させると、キャップ部材10および支柱立部材14のいずれに対してもねじ締め付け力が働いてキャップ部材10を上側キャビン本体2に締め付け固定する。また、これとは反対向きに支柱11を回転させると、キャップ部材10および支柱立部材14のいずれに対してもねじを緩める力が働いてキャップ部材10を上側キャビン本体2から外す作用を行なう。そして、支柱11は、キャップ部材10を上側キャビン本体2に締め付け固定した状態の下で、防災キャビン1の大黒柱としての機能も果たし、防災キャビン1に強度を与えている。なお、ねじ12、13とねじ18、18aとの間のおねじ、めねじ関係は、一方がおねじ、他方がめねじであればいずれがおねじ(又はめねじ)であってもよい。
【0012】
出来上がった防災キャビン1は家屋3の内部において床7の上に固定された支持台5の上に取付固定される。支持台5は床7にねじ、或いはボルト6等の締結部材によって固定され、この支持台5の上に防災キャビン1が載置されるとともに支持台5にボルト49およびナット50によって固定される。このとき、防災キャビン1と支持台5との間には、ゴムまたは合成樹脂等の材料から成る緩衝部材42が介装される。防災キャビン1にはドア25が取り付けられた出入口が設けられている。ドア25には、外部から内部の様子が観察できるよう窓26が設けられている。この防災キャビン1には、前記ドア25以外に、複数の、人間34の大人が通り抜けできる程度の直径を有する脱出用開口部が設けられている。この実施の形態では脱出用開口部は、地震等により家屋3が倒壊し、防災キャビン1が瓦礫に埋まったときに、自力或いは外部から人の手を借りて直接外へ逃げられるようにするためのもので、3個が防災キャビン1の球面の適当な位置に出来るかぎり均等な間隔をもって(つまり分散されて)配置されている。脱出用開口部を分散する理由は、災害時にいくつかの脱出用開口部が埋まっても他の脱出用開口部を使って脱出できるようにするためである。そして各脱出用開口部はそれぞれ扉23、24、51によって閉鎖されている。扉51をヒンジ52によって取り付けた脱出用開口部は他の扉23、24を備えた脱出用開口部よりも高い位置に設けられており、災害時に下方の脱出用開口部が埋まって扉23、24が開けられないときは上の扉51を開けて脱出する可能性を確保している。図3に示された脱出用開口部40についてみると、この脱出用開口部40には扉23が取り付けられ、この扉23は開口枠部分にヒンジ部材41によって開閉可能に取り付けられ、またロック機構39によって内側からでも外側からでもロック解除できるようになっている。他の扉24、51についても同様である。上記ドア25についても、扉23等と同様ヒンジ部材によって開閉可能に取り付けられ、またロック機構によって内側からでも外側からでもロック解除できるようになっている。
【0013】
また、防災キャビン1と家屋3の側壁35との間には脱出用通路36が設けられている。この脱出用通路36は、地震等により家屋3が倒壊し、防災キャビン1が瓦礫に埋まったときに、直接外へ逃げられるようにするためのもので、合成樹脂または金属製の、人間34の大人が通り抜けできる程度の直径を有する筒体により構成され側壁35を貫通して外部に開口している。そして脱出用通路36の外部開口には蓋37が被せられており、この蓋37はロック機構38によって脱出用通路36の内側からロックされ、屋外からは蓋37を開けられないようになっている。さらに、防災キャビン1には上記脱出用通路36とは別に逃げ込み用通路32が設けられ、防災キャビン1とこの防災キャビン1が設置された階(ここでは1階とする)の上の階である2階との間には、上記逃げ込み用通路32を介して退避用通路30が設けられている。この退避用通路30は2階で火災が発生し、逃げ場を失った等の場合に2階にいる人を迅速に退避させられるようにするためのもので、合成樹脂または金属製の、人間34の大人が通り抜けできる程度の直径を有する筒体によりすべり台の構造に構成され、2階の床27に開けた開口28から防災キャビン1の室内に連通している。開口28には蓋29が設けられている。退避用通路30には、開口28と防災キャビン1との間に正しく接続されるよう曲げに対して柔軟性を持たせるため、蛇腹構造の継手31が設けられている。また、退避用通路30には透明なガラスまたは透明な合成樹脂によって塞がれた窓33が設けられ、退避用通路30の内部が見えるようにしている。或いは退避用通路30そのものを透明または半透明の合成樹脂等によって構成してもよい。
【0014】
次に防災キャビン1内の設備について説明する。防災キャビン1の内部には、一般家屋の部屋と同様、ある程度通常の生活ができる設備を備える。そのために、図7に示すようにベッド53、54が設けられている。これらのベッド53、54は2段ベッド構造になっており、これらのベッド53、54を支えるために、防災キャビン1の内部には上記支柱11とは別に柱56が4本立設されている。そしてこれらの柱56もまた、上記支柱11と同様、防災キャビン1の外壁を支える支柱としての機能も果たし、防災キャビン1に強度を与えている。符号55はベッド53、54に付設され、これらのベッド53、54に上るためのはしごである。このベッド53、54の他にも、例えば机や簡単な箪笥類を持ち込んで子供部屋として使用することができる。このように子供部屋として用いる場合は、防災キャビン1の外面に何等かのキャラクタの絵や世界地図、或いは天球の星座の図絵や宇宙船を模した絵等、種々の絵を描いておくと子供の夢を膨らませる効果があるとともに、人気が上がる。また、上記とは別に本棚を装備して書斎として使えば静かな勉強空間を得ることができる。さらに、作業机を持ち込んで作業室にしたり、ステレオセットや映像機器を装備して音楽鑑賞室とする等、種々の使い道がある。
【0015】
かかる構成を有する防災キャビン1は、家屋3の内部に恰かも1つの部屋のように設置されているから、通常時にあっては、上記のように子供部屋として、或いは作業部屋として使用する。また、子供部屋として用いる場合は、人間(子供)34が2階から退避用通路30をすべり降りて遊んだり、支柱11に登ったりと、様々な遊びをすることができる。
【0016】
一方、地震等の災害が発生したときは防災キャビン1が中にいる人間34を怪我等から守る。先にも述べたように、この防災キャビン1は家屋3の内部に1つの部屋として設置され日常生活のなかで使用されるものであるから、災害が突発的なものであっても、その発生時点で中に人間34がいる確率が高く、その意味で災害が発生した後にわざわざ防災キャビン1の中に移動するという必要性が少ない。もちろん災害発生時に防災キャビン1の外にいた人間はドア25を開けて防災キャビン1内に移動する。また、2階からは退避用通路30を通って防災キャビン1内に移動する。そして、防災キャビン1の構造が球形などの外側からの圧力に強い構造である上に、鋼材等を使って強固に作ってあるので、仮に家屋3が倒壊しても防災キャビン1は破壊されることなく持ちこたえる。そして、防災キャビン1は破壊せず、却って倒壊しようとする家屋3を内側から支え、その倒壊を防ぐ働きもする。
【0017】
防災キャビン1が家屋3の倒壊に持ちこたえたとしても、瓦礫の中に埋まることも考えられるが、この場合は、出入口と複数の脱出用開口部(この実施の形態では3個)が設けられており、しかも脱出用開口部は防災キャビン1の球面の適当な位置に分散されて配置されているから、出入口または脱出用開口部の幾つかが埋まっても、いずれか1つから外部へ出ることができる。また、瓦礫が邪魔をして防災キャビン1の内部からはドア25や扉23、24、51を開けられない場合でも、外部の人間が簡単に瓦礫の除去ができれば、この瓦礫を取り去った後外側からロック機構39等を解除してドア25や扉23、24、51を開けることができる。
【0018】
さらに、防災キャビン1の埋没が激しくてドア25や扉23、24、51を開けることができない場合は、脱出用通路36を通ってその開口端に取り付けた蓋37のロック機構38を解除し、蓋37を外してそこから直接家屋3の外へ脱出することができる。さらにこのような措置をとっても脱出が難しい場合は、防災キャビン1の支柱11を、キャップ部材10を取り付けるときとは逆向きに回転させると、キャップ部材10が外れて開口16が現れるから、この開口16を脱出用開口部としてそこからも脱出することができる。また開口16は開いたけれども脱出が無理である場合は、支柱11のみを開口16から出し、その先端を瓦礫の隙間から突き出して、予め装備してあった信号弾や発煙筒、或いは花火21を支柱11の中空路19の中にセットし、これにマッチ等のような火種22によって点火することにより空へ向けて発射させ、他人に自分自身の存在を知らせることができる。
【0019】
(実施の形態2)
図8および図9は本発明の第2の実施の形態に係る防災キャビンの構造を示すものである。これらの図のうち、図8は第2の実施の形態の斜視図、図9は第2の実施の形態の家屋への組み付け状態を示す正面図である。この実施の形態に係る防災キャビンは、前記第1の実施の形態に係る防災キャビンが球形の外観構造を有していたのに対して、外観構造が立方体または直方体構造に造られている。
【0020】
図8および図9において、符号61は本実施の形態に係る防災キャビンを示す。この防災キャビン61は、天井部62と壁部63とを有し平面矩形状すなわち立方体または直方体構造に組み立てられて成る。天井部62および各四方の壁部63はそれぞれ一枚板を成形して構成しても良いが、どちらも、さらに複数の天井部片62a、或いは壁部片63aをつなぎ合わせることによって構成し、家屋3の中に持ち込んで組み立て易いようになっているのが好ましい。天井部片62a、或いは壁部片63aはどのような形状に作られていてもよいが、この実施の形態の防災キャビン61が立方体または直方体構造であることを考慮して天井部片62a、壁部片63aはいずれも4角形状であることが運搬の点でも好ましい。そして天井部片62aおよび壁部片63aには、防災キャビン61の強度(剛性)を大きくするために鉄板が用いられる。
【0021】
天井部片62aおよび壁部片63aは4角形状の鉄板材から成るとともに、この4角形状の鉄板材の側縁部には適当なアングル部材が取り付けられる等によって組み付け易くしたり或いは補強が施される。そして、壁部片63aについてみると、1つの壁部片63aとこれに隣接する壁部片63aを平面でみて互いに直角になるように設置し、結合することによって壁部63を構成する。また、天井部片62aと壁部片63aとの結合も同様にして行なう。さらにこの実施の形態に係る防災キャビン61の家屋3への取付けに当たっては、図9に示すように、当該家屋3の一階天井部分に設けられているたる木65に防災キャビン61の天井部62をねじやボルト等の適当な締結部材によって直接またはスペースを確保できる何らかの継手部材67を介して固定結合する。また、家屋3の壁部や柱に防災キャビン61の壁部63をねじやボルト等の適当な締結部材によって固定結合する。さらに、家屋3の床7に防災キャビン61の床部分をねじやボルト等の適当な締結部材によって固定結合する。また、上記防災キャビン61の壁部63には、適当な位置に窓66を形成しておき、この窓66が家屋3の窓3wと位置が合うように防災キャビン61を設置すれば、防災キャビン61の中から窓66、3wを通して外の景色を見ることが出来、防災キャビン61の中にいるという閉塞感を和らげることができる。
【0022】
このようにして作られた防災キャビン61の機能は前記第1の実施の形態の防災キャビン1と殆ど同じである。すなわち、防災キャビン61の内部にも床が作られ、天井部62には人間34の大人が通り抜けできる程度の径を有する開口68が形成されている。また、防災キャビン61にはドア25が取り付けられた出入口が設けられている。ドア25には、外部から内部の様子が観察できるよう窓26が設けられている。この防災キャビン61には、前記ドア25以外に、複数の、人間34の大人が通り抜けできる程度の直径を有する脱出用開口部が複数個設けられている。この実施の形態では脱出用開口部は、地震等により家屋3が倒壊し、防災キャビン61が瓦礫に埋まったときに、自力或いは外部から人の手を借りて直接外へ逃げられるようにするためのものである。
【0023】
また、防災キャビン61と家屋3の側壁35との間には、必要に応じて第1の実施の形態におけると同様な脱出用通路36が設けられていてもよい。次に防災キャビン61内の設備についても前記第1の実施の形態における防災キャビン1の内部と同様である。
【0024】
以上防災キャビンの構造として、第1の実施の形態は球形状、第2の実施の形態は立方体または直方体のものを挙げてきたが、この他にも種々の構造が考えられる。図10乃至図12はそのような種々の防災キャビンの別の構造例(変形例)を挙げたものであり、図10は円筒構造の壁部71に半球構造の天井部72を取り付けた防災キャビン70の構造例を示し、図11はかまぼこ型構造の防災キャビン75を示し、また図12は子供に人気のありそうなロケット構造の防災キャビン80を示している。さらに、防災キャビンを前記のように種々の構造にするとともに、前記第1の実施の形態においても説明したようにその外面に種々の模様や絵を描いて日常の生活に際して楽しむことができるようにしてもよい。54の他にも、例えば机や簡単な箪笥類を持ち込んで子供部屋として使用することができる。
【0025】
(実施の形態3)
図13および図14は本発明による防災キャビンの第3の実施の形態を示す図である。この実施の形態では、防災キャビンを2つ(又はそれ以上)の分割キャビンにより構成し、これらの分割キャビン間を閉状態に連通させることにより秘密裡に被防護者を移動させ、脱出を図るように構成されていることが特徴である。すなわち、図13に示されているように、本実施の形態に係る防災キャビン81は、家屋3の2階部分に設けられた第1分割キャビン82と、同じ家屋3の1階部分に、第1分割キャビン82とは独立した関係に設けられた第2分割キャビン83とから成る。第1分割キャビン82は、2階部分にあってボックス体構造を有し、ドア84と、脱出口85と、床面に開けられた脱出開口86とを備えている。第1分割キャビン82は、基本的には、第2の実施の形態に係る防災キャビン61とほぼ同じ構成になっている。またこの第1分割キャビン82は、家屋3とは別体の1つの独立したボックスを形成しており、ドアなどを閉鎖すれば外部からの侵入は不可能な構造になっている。
【0026】
第2分割キャビン83には、例えばその家の別の部屋、又は第1分割キャビンと同様な構造のボックス体が利用される。図14は、第2分割キャビンとして浴室(ユニットバスなど)が利用される場合の内部構造の具体例を示す正面図である。浴室が利用されているから、浴槽87、水道/給湯蛇口88、およびシャワー具89、洗い場90が設けられている。それに加え、側壁には非常口91、92が設けられる一方、洗い場の床面にも地下通路96を通って外部へ脱出できる非常口93が設けられている。もちろん、非常口93には内外出入り口にともに蓋が設けられている。また、この浴室は防災および防護の目的を持つから、壁および天井には浴室躯体を強固にするため、内部側(裏側)に補強フレーム94(図14中点線で表す)が設けられている。なお、上記脱出口85、脱出開口86、非常口91、92、93などの脱出用の開口は、第1および第2の実施の形態における説明したのと同様、人間34の大人が通り抜けできる程度の開口寸法を有する。なお、第2分割キャビン84のである浴室の天井裏側は防災グッズなどの格納スペース97が形成されている。
【0027】
また、第1分割キャビン82と第2分割キャビン83との間には退避用通路95が設けられている。この退避用通路95は2階で緊急事態が発生し、第1分割キャビン82へ逃げ込んでも安全を確保できずに逃げ場を失った等の場合に2階にいる人を迅速に退避させられるようにするためのものであり、上記第1の実施の形態における退避用通路30と同じ材質、構成を有する。したがって、この退避用通路95もまた、合成樹脂または金属製の、人間34の大人が通り抜けできる程度の直径を有する筒体によりすべり台の構造に構成され、第1分割キャビン82の床に開けた脱出開口86から第2分割キャビン83の内部に連通している。脱出開口86には蓋が設けられており通常の状態では蓋は閉鎖されている。また、退避用通路95には透明なガラスまたは透明な合成樹脂によって塞がれた窓が設けられ、退避用通路95の内部が見えるようにしてもよい。或いは退避用通路95そのものを透明または半透明の合成樹脂等によって構成してもよい。また、第1分割キャビン82と第2分割キャビン83とは、退避用通路95のみによって接続され、且つ退避用通路95自体の途中からその内部に侵入することは不可能な構造になっている。
【0028】
かかる構成を有する防災キャビン1は、家屋3の内部に恰かも1つの部屋のように1階および2階に設置されているから、通常時にあっては、上記のように浴室として(1階)、或いは子供部屋やその他の目的を持つ部屋として(2階)使用する。
【0029】
一方、地震等の災害が発生したときは第1分割キャビン82又は第2分割キャビン83が中にいる人間34を怪我等から守る。本実施の形態では1階にも2階にも防災用のキャビンが設置されているから、何等かの緊急事態が発生したとき、家人はいずれかのキャビン82又は83に逃げ込めばよく、緊急避難が迅速に行える。また、2階にいて、第1分割キャビンに避難した人間34はそれで避難行動は十分であるが、この場合においてさらに逃げる必要がある場合は退避用通路95を通って第2分割キャビン83内に移動する。これは、外部から不審者の侵入等があった場合に威力を発揮する。すなわち暴漢などが侵入した場合、一旦は第1分割キャビン82に逃げ込んで身を守ることができるが、上記暴漢が2階へ移動して第1分割キャビン82に危害を加えている間に退避用通路95を使って1階へ逃がれ、屋外へ脱出することが可能となる。第1及び第2の実施の形態では2階部分はオープンスペースとなっているので、緊急事態が発生している間に退避用通路30を使って1階へ逃がれることは極めて難しい。
【0030】
地震等の場合、第2分割キャビン83は鋼材等を使って強固に作ってあるので、仮に家屋3が倒壊しても防災キャビン81は破壊されることなく持ちこたえる。そして、防災キャビン81は破壊されず、却って倒壊しようとする家屋3を内側から支え、その倒壊を防ぐ働きもする。また、地震等の場合における瓦礫の中からの生還の可能性についても、上記第1、第2の実施の形態とほぼ同様である。
【0031】
(実施の形態4)
図15および図16は本発明による防災キャビンの第4の実施の形態を示す図であり、図15は正面図、図16は平面図である。この実施の形態では、第1の実施の形態におけると同様に、防災キャビン101は内部が空洞で全体が球形状に構成されており、その頂部から5分の1乃至3分の1の高さ部分で上側キャビン本体102と下側キャビン本体104との2つのキャビン本体を上下に分割可能に結合して構成されている。上側キャビン本体102および下側キャビン本体103は、それぞれ一体の分割球体から成り、両部材の境界結合部分においてパッキンの介在の下にボルト・ナット締めにより気密状態を保って結合されている。なお、第1の実施の形態におけると同様、複数のシェル部片(図1で2a、4aで表されている)をつなぎ合わせることによって構成されてもよい。本実施の形態における防災キャビン101の特徴は、倒壊家屋から脱出するときに、防災キャビン101全体が移動できるようにしてある点である。上記特徴を備えるために、防災キャビン101の下側キャビン本体103には車輪104が少なくとも4個、前後左右の関係に取り付けられている。車輪104はモータやエンジンのような駆動装置に連結されていてもよいし、或いは何ら駆動装置に連結されずに他の手段(人、車など)によって牽引されてもよい。
【0032】
また、防災キャビン101の外部で、上下方向真ん中よりも下側の位置には、防災キャビン101の躯体に対して横方向に張り出した水平板状の安定板105が設けられている。この安定板105は防災キャビン101の周囲に全周にわたって延びていてもよいし、或いは図16に示されているように防災キャビン101の一部の周囲に対称的に延びていてもよい。このように安定板105を設けることにより防災キャビン101が水に浮かんだときに、その姿勢を安定させることができる。
【0033】
防災キャビン101の内部についてみると、内部に居住できるように床107が設置され、その床下部分には複数の区画室108、109、110が仕切り形成されている。区画室108及び110は防災キャビン101内部で短期間居住するのに必要な各種物資を収納するための収納室として用いられる。中央部の区画室109は防災キャビン101の中心位置を占めることから、生活用水(飲み水など)の貯蔵に用いられるのが好ましい。区画室109を生活用水の貯蔵庫として用いることは、上述したように防災キャビン101自体が水に浮かんだときに、水が安定化錘体として機能し、防災キャビン101の姿勢を安定させることができるというメリットもある。すなわち、起き上がりこぼしの原理を活用することができる。また、防災キャビン101内部には天井110も設けられ、この天井110と、床107との間にはパイプ製の支柱111が立設されている。これは防災キャビン101の強度を増大させるためのものである。さらに防災キャビン101の壁面には窓、或いは出入り口112が設けられている。これらの窓、或いは出入り口112はガラスなどで気密に塞がれ、且つ一部は開閉可能とされて、出入り口として用いられる。
【0034】
図17および図18は上記本発明の第4の実施の形態の変更例を示す図であり、図17は正面図、図18は平面図である。この変更例に係る防災キャビン120は、外観構造が球体ではなく、いわゆるたまご型構造をしている点が上記第4の実施の形態とは異なる。この防災キャビン120は別体構造となっている上側キャビン本体121と下側キャビン本体122を合わせ、間にパッキンを介在させてボルト締めにより結合されてなる。防災キャビン120は内部が空洞である。上側キャビン本体121および下側キャビン本体122は、それぞれ一体の分割球体から成り、両部材の境界結合部分においてパッキンの介在の下にボルト・ナット締めにより気密状態を保って結合されている。なお、第1の実施の形態におけると同様、複数のシェル部片(図1で2a、4aで表されている)をつなぎ合わせることによって構成されてもよい。本実施の形態における防災キャビン120もまた、その特徴は、倒壊家屋から脱出するときに、防災キャビン120全体が移動できるようにしてある点、及び水難にあっても浮遊できるように構成されている点である。上記特徴を備えるために、防災キャビン120の下側キャビン本体121には車輪124が少なくとも4個、前後左右の関係に取り付けられている。車輪124はモータやエンジンのような駆動装置に連結されていてもよいし、或いは何ら駆動装置に連結されずに他の手段(人、車など)によって牽引されてもよい。防災キャビン120が牽引されるために、その躯体にはフック125が設けられている。
【0035】
防災キャビン120の内部についてみると、内部に居住できるように床127が設けられ、その下側には複数の区画室128、129、130が仕切り形成されている。区画室128及び130は防災キャビン120内部で短期間居住するのに必要な各種物資を収納するための収納室として用いられ、区画室129は防災キャビン120の中心位置を占めることから、生活用水(飲み水など)の貯蔵に用いられるのが好ましい。区画室129を生活用水の貯蔵庫として用いることは、上述したように防災キャビン120自体が水に浮遊したときに、その姿勢を安定させることができるというメリットもある。すなわち、起き上がりこぼしの原理を活用することができる。また、防災キャビン120内部には天井に張りわたされたパイプ製の支え梁131が設けられている。これは防災キャビン120の躯体強度を増大させるためのものである。さらに防災キャビン120の壁面には窓、或いは出入り口132が設けられている。これらの窓、或いは出入り口132はガラスなどで気密に塞がれ、且つ一部は開閉可能とされて、出入り口として用いられる。
【0036】
図19は第4の実施の形態およびその変更例が水に浮くタイプのものである点により、水に浮かんだ時の推進力を得るための駆動装置を示す図である。この駆動装置135は、モータ136と、モータ136に取り付けられたプロペラ137と、モータ136に取り付けられて上方に延びる支軸138と、支軸138の上端に設けられたハンドル139と、支軸138の上下中間部分設けられた取付固定具140とを有して成る。モータ136は、例えばバッテリー式のモータが用いられる。取付固定具140には掛金部材141が設けられ、この掛金部材141をフック125に結合させて防災キャビン120本体に取り付けることができる。これにより、防災キャビン120(或いは101)が水中に放り出されても駆動装置135の推進動作により危険な個所から離れることができる。
【0037】
図20は防災キャビンの小道具としてのステッキを示す。このステッキ141はパイプ部材から成り、その上端には鋭角構造の握り部142を有する。またパイプ状のステッキ本体143の内部には図21に示されているような花火144(或いは発煙筒)を収納できるようになっており、非常時に救援用の合図を送ることができるようになっている。なお、災害時に花火や発煙筒を使うことは第1の実施の形態においても説明した。上記花火144は、第1の実施の形態においても使用できる。また、握り部142が鋭角構造であることから、防災キャビン120が水中に浮いているときに、別の浮遊物を引掛けて集めたりすることができる。
【0038】
以上のように、この第4の実施の形態の防災キャビン120は水に浮くタイプのものであるため、地震等の災害時に河川の氾濫や津波の来週があった場合でも、防災キャビン120自体は破壊されず、且つ浮遊移動し内部の人間を守ることができる。
【0039】
(実施の形態5)
図22は本発明による防災キャビンの第5の実施の形態を示す斜視図である。この実施の形態では、防災キャビンの躯体外周全体に配管を施し、この配管に水を供給して防災キャビンの周囲に散水し、防災キャビンを火災から防護するようにしたものである。この実施の形態は上述した各実施の形態に係る防災キャビンに適用可能である。図22において、符号150は防災キャビンの躯体骨組みを表し、ドア151が取り付けられている以外は、壁や天井がまだ完成されていない状態を表す。この防災キャビン150は、この防災キャビン150が設置された階(ここでは1階とする)の上の階である2階との間には、退避用通路152が設けられている。この退避用通路152が設けられている目的、構成及び作用効果は第1の実施の形態における退避用通路32と同じである。そしてこの防災キャビン150(より詳しくは、その躯体)は、複数の支柱153と、複数の梁154、および、支柱153と梁154の結合部間に連結されたすじかい155が相互に結合されて組み立てられている。支柱153、梁154、及びすじかい155は木材により構成されていてもよいが、防災の点からみると鉄骨などの頑丈で防火性のよい材料により構成されるのが好ましい。
【0040】
さらに、上記支柱153と梁154に沿っては配管156が配設されている。配管156は、例えば金属管や合成樹脂製のパイプ等から構成され、図22において、配管156は支柱153と梁154に沿って延びる点線(太点線)により示される。なお、配管156は、支柱153及び梁154のみならず、すじかい155に沿っても配設されていてもよい。配管156は少なくとも一端または配管途中の一部が、例えば水道或いは給水タンクのような水源設備にバルブを介して接続されている。水源設備としてのタンクには消火剤や水と消火剤の混合液(すなわち、消火材料)が貯蔵されていてもよい。また、配管156の全体の各所には複数の穴が開けられている。図23は、配管156の一部を例示的に示す正面図であり、複数の穴157とバルブ158とが示されている。これによりバルブ158を開いて配管156に水を供給すると、配管156の全体において穴157から水が放出される。配管156の穴157は、防災キャビン150に対して外部に向けて水を放出する部位に開けられている。また、バルブ158の操作部は、少なくとも防災キャビン150の内部には取り付けられており、防災キャビン150の内部からバルブ158の開閉動作が可能にしてある。
【0041】
以上の構成により、地震等の災害が発生したとき、防災キャビン150の外にいた人間はドア151を開けて防災キャビン150内に移動すれば防災キャビン150が中にいる人間を怪我等から守る。また、2階からは退避用通路152を通って防災キャビン150内に移動することもできる。そして、防災キャビン150が鋼材等を使って強固に作ってあることにより、仮に家屋が倒壊しても防災キャビン150は破壊されることなく持ちこたえる。そして防災キャビン150は破壊せず、却って倒壊しようとする家屋を内側から支え、その倒壊を防ぐ働きもする。さらに火災が発生したときは、バルブ158の操作により配管156に水或いは消火材料が供給され、これらの水等は穴157を通して防災キャビン150の周囲に散布され、防災キャビン150の中にいる人間を火災等から守る。さらに、周囲の家屋を火災から守ったり、鎮火させたりする。
【0042】
図24は、図22に示された防災キャビン150を通常の家屋へ設置した場合の一例を示す内部部分透視図である。この設置例では、防災キャビン150は家屋(母屋)159の側方外部に設置されている。この場合、防災キャビン150は、母屋159とは別構造物として組み立てられ、構造的には独立状態にある。また、防災キャビン15は鋼材などにより組み立てられており、母屋159よりも頑丈に作られている。また、防災キャビン15に配管156が設置されていることは上述の通りであるが、図24の例では、配管がさらに延長され、母屋の柱160や、梁161、さらには、屋根162にまで、配管163が配設されている。
【0043】
これにより、火災が発生したときは、バルブ158の操作により配管156及び163に水或いは消火材料が供給され、これらの水等は穴157を通して防災キャビン150及び母屋159の周囲に散布され、防災キャビン150及び母屋159の中にいる人間を火災等から守り、さらに、周囲の家屋を火災から守ったり、鎮火させたりする。
【0044】
図25は、図22に示されたものと同様の機能を持つ防災キャビン150を図9に示された家屋へ設置した場合の一例を示す内部部分透視図である。この設置例では、母屋159としては図9に示された家屋及び防災キャビンの構造が用いられ、その防災キャビンに配管156を配設することにより防災キャビン150が実現されている。そして、このような防災キャビン150の作用、効果としては先に図22及び図24を参照して説明されたものと同じである。
【0045】
図26は、図22に示されたものと同様の機能を持つ防災キャビン150を図13に示された家屋へ設置した場合の一例を示す内部部分透視図である。この設置例では、母屋159としては図13に示された家屋及び防災キャビンの構造が用いられ、その防災キャビンに配管156を配設することにより防災キャビン150が実現されている。そして、このような防災キャビン150の作用、効果としては先に図22及び図24を参照して説明されたものと同じである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本発明によれば、家屋内部に設置され、複数の出入口を有する種々の構造の中空立体構造のキャビン本体と、キャビン本体の出入口に設けられ外部から施解錠操作可能な開閉扉と、キャビン本体内部に設備された生活および緊急道具と、キャビン本体と、このキャビン本体設置階の上の階の床面に接続され人間が通過可能な退避用通路とを備えた防災キャビンをとしたため、恰かも屋内に1つの部屋があるように日常生活の一環の中で使用することができる。そして、一旦地震等のような突発的な災害が起こった場合は、この防災キャビンは家屋等の構造体からは独立し、且つ球体直方体、立方体、その他の剛性構造等のような強固な構造体になっているので、家屋が倒壊しても防災キャビンは破壊せず、却って倒壊しようとする家屋を内側から支え、その倒壊を防ぐ。また、万が一家屋が倒壊してその下に閉じ込められても、防災キャビンは破壊せずに内部の人間を保護するとともに、家屋の下から脱出するときは、複数の出入口のうち、少なくとも1つの出入口を開閉することが可能である確率は高く、その開閉可能な出入口から脱出することができる等、種々の利点が得られる。また、防災キャビンが第1及び第2の分割キャビンに分かれている態様では、地震等のような突発的な災害が起こった場合は、家屋が倒壊しても防災キャビンは破壊せず、人間を防護する。また、暴漢などが侵入した場合、一旦は1つの分割キャビンに逃げ込んで身を守ることができ、さらに危険な場合は、退避用通路95を使って別の分割キャビンへ逃がれることが可能となる。
【0047】
また、防災キャビンが水に浮くタイプのものであるときは、地震等の災害時に河川の氾濫や津波の来週があった場合でも、防災キャビン自体は破壊されず、且つ浮遊移動し内部の人間を守ることができる。さらに防災キャビンに散水用の配管が配設されている場合は、火災が発生したときに、バルブの操作により配管に水或いは消火材料が供給され、これらの水等は穴を通して防災キャビンの周囲に散布され、防災キャビンの中にいる人間を火災等から守り、さらに、周囲の家屋を火災から守ったり、鎮火させたりする。以上により、緊急に避難したりより厳しい状況における避難が可能となり、有用性はより高くなる。
【符号の説明】
【0048】
1,61,70,75、81、120、150 防災キャビン
2 上側キャビン本体
3、159 家屋
4 上側キャビン本体
5 支持台
10 キャップ部材
11 支柱
23,24,51 扉
25 ドア
30、95 退避用通路
32 逃げ込み用通路
36 脱出用通路
40 脱出用開口
82 第1分割キャビン
83 第2分割キャビン
156,163 配管
【技術分野】
【0001】
本発明は防災キャビン、特に家屋の一部に設置され、通常は生活の場として使用される一方で、災害時には人間の身体を危険から防護し、且つ外敵(侵入者など)からは危害を受けないように防護する防災キャビンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、災害時に人間を保護するための方策に関心が持たれ、緊急時には被災者が逃げ込めるような装置が種々提案されている。このような装置の一例としては、一般に「核シェルター」や災害用シェルターと呼ばれる避難設備がある。前者は、中空の立体構造物の内部に数日分の食料と生活道具を備え、これを地中に埋めておき、外国からの核攻撃に遭遇しても核シェルターの中に逃げ込めることにより一定期間は生き延びることができるようにしたものである。後者も同様に中空の立体構造物の内部に数日分の食料と生活道具を備え、災害が発生したときなどにシェルターの中に逃げ込めるようにしたものである。先行技術としては、例えば特許文献1に示すようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−043506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のシェルターのうち、核シェルターにあっては、核攻撃に耐えるために地中深くに埋められるものであり、一旦地中に埋められた場合は、出入りすることは可能であっても人間が生活していくのに頻繁に使用されるものではなく、せいぜい物置とか倉庫等に利用されるのみであった。また、特許文献1に示されたシェルターは、地震時の家屋倒壊から防護するために、2本の支柱部分とその上部間をつなぐ上枠部分、および支柱部分の底部間をつなぐ座枠部分とにより上部が窄まった台形枠状に形成される枠体構造物である。したがって、使用者を地震時の家屋倒壊から防護するが外敵から身を守ることは不可能である。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、通常時においても家屋に設けられた部屋と同様に生活の場として使用される一方で、災害時には人間の身体を危険から防護し、時には家屋の倒壊を防ぐ防災キャビンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するため、内部が中空で複数の出入口を有する立体構造のキャビン本体と、キャビン本体の出入口に設けられ外部から施解錠操作可能な開閉扉と、キャビン本体内部に設備された生活道具とを備えた防災キャビンであって、当該防災キャビンは、複数の分割キャビンから構成され、これらの分割キャビン同士は退避用通路により連通され、緊急事態に際して、一旦は1つの分割キャビンに逃げ込んで身を守り、さらに危険な場合は、退避用通路を使って別の分割キャビンへ逃がれ得るようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防災キャビンは、前記構成により、組み立てに当たっては組立部品を屋内に持ち込み、各部品の結合作業を行なうことで容易に組み立てることができる。そして、組み立て終わった後は、恰かも屋内に1つの部屋があるように、子供の勉強部屋として、或いは大人の書斎や作業部屋として日常生活の一環の中で使用することができる。そして、一旦地震等のような突発的な災害が起こった場合は、家屋が倒壊しても防災キャビンは破壊せず、人間を防護する。また、暴漢などが侵入した場合、一旦は1つの分割キャビンに逃げ込んで身を守ることができ、さらに危険な場合は、退避用通路95を使って別の分割キャビンへ逃がれることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態による防災キャビンの外観構造および家屋の内部への設置例を概略的に示す正面図である。
【図2】前記実施の形態の平面図である。
【図3】前記実施の形態に係る防災キャビンのキャビン本体の組み立て構造を概略的に示す一部破断正面図である。
【図4】前記実施の形態におけるキャビン本体へのキャップ部材と支柱の取り付け構造を示す概略斜視図である。
【図5】前記実施の形態における支柱の構造を示す断面図である。
【図6】前記実施の形態におけるキャップ部材および支柱立部材と支柱との結合の状態を示す分解正面図である。
【図7】前記実施の形態における防災キャビンの内部構造の一例を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態による防災キャビンの外観構造を概略的に示す斜視図である。
【図9】前記第2の実施の形態による防災キャビンおよびその家屋への取付け状態の一例を概略的に示す正面図である。
【図10】防災キャビンの種々の外観構造例の1つとして円筒構造の壁部に半球構造の天井部を取り付けた防災キャビンの構造例を概略的に示す斜視図である。
【図11】防災キャビンの種々の外観構造例の1つとしてかまぼこ型の防災キャビンの構造例を概略的に示す斜視図である。
【図12】防災キャビンの種々の外観構造例の1つとしてロケット型の防災キャビンの構造例を概略的に示す斜視図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態による防災キャビンの構造および家屋の内部への設置例を概略的に示す正面図である。
【図14】前記実施の形態に係る防災キャビンの、第2分割キャビンとして浴室が利用される場合の内部構造の具体例を示す正面図である。
【図15】本発明による防災キャビンの第4の実施の形態を示す正面図である。
【図16】本発明による防災キャビンの第4の実施の形態を示す平面図である。
【図17】上記本発明の第4の実施の形態の変更例を示す正面図である。
【図18】上記本発明の第4の実施の形態の変更例を示す平面図である。
【図19】本発明の施の形態およびその変更例において、水に浮かんだ時の推進力を得るための駆動装置を示す図である。
【図20】各実施の形態に係る防災キャビンの小道具としてのステッキを示す正面図である。
【図21】図20に示されたステッキに収納される花火を示す正面図である。
【図22】本発明による防災キャビンの第5の実施の形態を示す斜視図である。
【図23】上記第5の実施の形態に係る防災キャビンに設けられた配管の一部を例示的に示す正面図である。
【図24】図22に示された防災キャビンを通常の家屋へ設置した場合の一例を示す内部部分透視図である。
【図25】図22に示されたものと同様の機能を持つ防災キャビンを図9に示された家屋へ設置した場合の一例を示す内部部分透視図である。
【図26】図22に示されたものと同様の機能を持つ防災キャビンを図13に示された家屋へ設置した場合の一例を示す内部部分透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
図1乃至図7は本発明による防災キャビンの第1の実施の形態を示す図である。これらの図において、符号1は本実施の形態に係る防災キャビンを示す。この防災キャビン1は全体が球形状の構成されており、その頂部から5分の1乃至3分の1の高さ部分で上側キャビン本体2と下側キャビン本体4との2つのキャビン本体を上下に分割可能に結合して構成されている。上側キャビン本体2および下側キャビン本体4は、どちらも、さらに複数のシェル部片2a、4aをつなぎ合わせることによって構成されるようになっている。シェル部片2a、4aはどのような形状に作られていてもよいが、この実施の形態の防災キャビン1が球体であることを考慮して上側頂点と下側頂点を球面に沿って結んだ縦向きの線(地球の経線に相当する)を、当該縦線とは直角の方向へ等角度間隔で複数引き、この縦線に沿って切り分けた形状であることが運搬の点でも好ましい。
【0010】
各シェル部片2a、4aは、図3に示すように外皮部材43と、外皮部材の内側に装填された内層部材44と、内層部材44の内側面に張設されたシート45とから成る。外皮部材43は鋼材或いはステンレス材等の剛性の大きい材質から成り、各シェル部片2a、4aの端縁部分で内側に折り曲げられてフランジ46を形成している。内層部材44は、例えば発泡スチロール等の材質から成り、防災キャビン1の内部を遮音、遮熱、或いは身体の一部を打ちつけたときの緩衝の役目をする。シート45は内層部材44が防災キャビン1の室内に剥き出しにならないようにするとともに、内層部材44と同様緩衝の役目をする。そして、シェル部片2a同士またはシェル部片4a同士を結合する場合、およびシェル部片2aとシェル部片4aとを結合する場合は、図3に示すように各シェル部片2a、4aのフランジ46を突き合わせ、このフランジ46の部分でボルト47およびナット48によって締め付け固定する。
【0011】
防災キャビン1の内部には床8が作られ、この床8には窪みが形成されて食料ヒンジ部等の格納部9が設けられる。床8は、発泡スチロール、或いは畳、フローリング、木材等種々の床材に適したものによって作られる。或いは床部分に防災キャビン1の重しを兼ねて砂を敷いたり或いはコンクリートを打設し、その上に床板を張ってもよい。防災キャビン1の頂部すなわち上側キャビン本体2の頂点部分には、図4に示すように人間34の大人が通り抜けできる程度の直径を有する開口16が形成され、この開口16は湾曲構造のキャップ部材10によって閉鎖されている。キャップ部材10は支柱11によってキャビン本体2に押圧固定されている。支柱11は、図5に示すように、上端が開放、下端が閉塞された中空路19を内部に有する管状体から構成され、上端および下端部分にはねじ(おねじ)12、13が切られるとともに、下端部分のねじ13よりもやや上方の管状部分側面には縦長形状のスリット孔20が形成されている。ねじ12とねじ13とは、一方が右ねじ、他方が左ねじというように互いに反対の関係にねじ切りされている。一方、キャップ部材10は裏側の湾曲凹部の頂部に突起部17を有し、この突起部17には下方に開口しねじ12に螺合するねじ(めねじ)18が切られている。また、キャップ部材10の取り付け位置(キャビン頂部)に対向する床8上には支柱立部材14がねじ部材15によって固定取り付けされている。この支柱立部材14は、上記キャップ部材10と同様、中心部に突起部17aを有し、その突起部14aには上方に開口しねじ13に螺合するねじ(めねじ)18aが切られている。そして上側キャビン本体2の頂点部分にキャップ部材10を載置した状態で、図6に示すように支柱11のおめじ12、13をキャップ部材10および支柱立部材14のめねじ18、18aに係合させ、この支柱立部材14を右または左のいずれかの向きに回転させると、キャップ部材10および支柱立部材14のいずれに対してもねじ締め付け力が働いてキャップ部材10を上側キャビン本体2に締め付け固定する。また、これとは反対向きに支柱11を回転させると、キャップ部材10および支柱立部材14のいずれに対してもねじを緩める力が働いてキャップ部材10を上側キャビン本体2から外す作用を行なう。そして、支柱11は、キャップ部材10を上側キャビン本体2に締め付け固定した状態の下で、防災キャビン1の大黒柱としての機能も果たし、防災キャビン1に強度を与えている。なお、ねじ12、13とねじ18、18aとの間のおねじ、めねじ関係は、一方がおねじ、他方がめねじであればいずれがおねじ(又はめねじ)であってもよい。
【0012】
出来上がった防災キャビン1は家屋3の内部において床7の上に固定された支持台5の上に取付固定される。支持台5は床7にねじ、或いはボルト6等の締結部材によって固定され、この支持台5の上に防災キャビン1が載置されるとともに支持台5にボルト49およびナット50によって固定される。このとき、防災キャビン1と支持台5との間には、ゴムまたは合成樹脂等の材料から成る緩衝部材42が介装される。防災キャビン1にはドア25が取り付けられた出入口が設けられている。ドア25には、外部から内部の様子が観察できるよう窓26が設けられている。この防災キャビン1には、前記ドア25以外に、複数の、人間34の大人が通り抜けできる程度の直径を有する脱出用開口部が設けられている。この実施の形態では脱出用開口部は、地震等により家屋3が倒壊し、防災キャビン1が瓦礫に埋まったときに、自力或いは外部から人の手を借りて直接外へ逃げられるようにするためのもので、3個が防災キャビン1の球面の適当な位置に出来るかぎり均等な間隔をもって(つまり分散されて)配置されている。脱出用開口部を分散する理由は、災害時にいくつかの脱出用開口部が埋まっても他の脱出用開口部を使って脱出できるようにするためである。そして各脱出用開口部はそれぞれ扉23、24、51によって閉鎖されている。扉51をヒンジ52によって取り付けた脱出用開口部は他の扉23、24を備えた脱出用開口部よりも高い位置に設けられており、災害時に下方の脱出用開口部が埋まって扉23、24が開けられないときは上の扉51を開けて脱出する可能性を確保している。図3に示された脱出用開口部40についてみると、この脱出用開口部40には扉23が取り付けられ、この扉23は開口枠部分にヒンジ部材41によって開閉可能に取り付けられ、またロック機構39によって内側からでも外側からでもロック解除できるようになっている。他の扉24、51についても同様である。上記ドア25についても、扉23等と同様ヒンジ部材によって開閉可能に取り付けられ、またロック機構によって内側からでも外側からでもロック解除できるようになっている。
【0013】
また、防災キャビン1と家屋3の側壁35との間には脱出用通路36が設けられている。この脱出用通路36は、地震等により家屋3が倒壊し、防災キャビン1が瓦礫に埋まったときに、直接外へ逃げられるようにするためのもので、合成樹脂または金属製の、人間34の大人が通り抜けできる程度の直径を有する筒体により構成され側壁35を貫通して外部に開口している。そして脱出用通路36の外部開口には蓋37が被せられており、この蓋37はロック機構38によって脱出用通路36の内側からロックされ、屋外からは蓋37を開けられないようになっている。さらに、防災キャビン1には上記脱出用通路36とは別に逃げ込み用通路32が設けられ、防災キャビン1とこの防災キャビン1が設置された階(ここでは1階とする)の上の階である2階との間には、上記逃げ込み用通路32を介して退避用通路30が設けられている。この退避用通路30は2階で火災が発生し、逃げ場を失った等の場合に2階にいる人を迅速に退避させられるようにするためのもので、合成樹脂または金属製の、人間34の大人が通り抜けできる程度の直径を有する筒体によりすべり台の構造に構成され、2階の床27に開けた開口28から防災キャビン1の室内に連通している。開口28には蓋29が設けられている。退避用通路30には、開口28と防災キャビン1との間に正しく接続されるよう曲げに対して柔軟性を持たせるため、蛇腹構造の継手31が設けられている。また、退避用通路30には透明なガラスまたは透明な合成樹脂によって塞がれた窓33が設けられ、退避用通路30の内部が見えるようにしている。或いは退避用通路30そのものを透明または半透明の合成樹脂等によって構成してもよい。
【0014】
次に防災キャビン1内の設備について説明する。防災キャビン1の内部には、一般家屋の部屋と同様、ある程度通常の生活ができる設備を備える。そのために、図7に示すようにベッド53、54が設けられている。これらのベッド53、54は2段ベッド構造になっており、これらのベッド53、54を支えるために、防災キャビン1の内部には上記支柱11とは別に柱56が4本立設されている。そしてこれらの柱56もまた、上記支柱11と同様、防災キャビン1の外壁を支える支柱としての機能も果たし、防災キャビン1に強度を与えている。符号55はベッド53、54に付設され、これらのベッド53、54に上るためのはしごである。このベッド53、54の他にも、例えば机や簡単な箪笥類を持ち込んで子供部屋として使用することができる。このように子供部屋として用いる場合は、防災キャビン1の外面に何等かのキャラクタの絵や世界地図、或いは天球の星座の図絵や宇宙船を模した絵等、種々の絵を描いておくと子供の夢を膨らませる効果があるとともに、人気が上がる。また、上記とは別に本棚を装備して書斎として使えば静かな勉強空間を得ることができる。さらに、作業机を持ち込んで作業室にしたり、ステレオセットや映像機器を装備して音楽鑑賞室とする等、種々の使い道がある。
【0015】
かかる構成を有する防災キャビン1は、家屋3の内部に恰かも1つの部屋のように設置されているから、通常時にあっては、上記のように子供部屋として、或いは作業部屋として使用する。また、子供部屋として用いる場合は、人間(子供)34が2階から退避用通路30をすべり降りて遊んだり、支柱11に登ったりと、様々な遊びをすることができる。
【0016】
一方、地震等の災害が発生したときは防災キャビン1が中にいる人間34を怪我等から守る。先にも述べたように、この防災キャビン1は家屋3の内部に1つの部屋として設置され日常生活のなかで使用されるものであるから、災害が突発的なものであっても、その発生時点で中に人間34がいる確率が高く、その意味で災害が発生した後にわざわざ防災キャビン1の中に移動するという必要性が少ない。もちろん災害発生時に防災キャビン1の外にいた人間はドア25を開けて防災キャビン1内に移動する。また、2階からは退避用通路30を通って防災キャビン1内に移動する。そして、防災キャビン1の構造が球形などの外側からの圧力に強い構造である上に、鋼材等を使って強固に作ってあるので、仮に家屋3が倒壊しても防災キャビン1は破壊されることなく持ちこたえる。そして、防災キャビン1は破壊せず、却って倒壊しようとする家屋3を内側から支え、その倒壊を防ぐ働きもする。
【0017】
防災キャビン1が家屋3の倒壊に持ちこたえたとしても、瓦礫の中に埋まることも考えられるが、この場合は、出入口と複数の脱出用開口部(この実施の形態では3個)が設けられており、しかも脱出用開口部は防災キャビン1の球面の適当な位置に分散されて配置されているから、出入口または脱出用開口部の幾つかが埋まっても、いずれか1つから外部へ出ることができる。また、瓦礫が邪魔をして防災キャビン1の内部からはドア25や扉23、24、51を開けられない場合でも、外部の人間が簡単に瓦礫の除去ができれば、この瓦礫を取り去った後外側からロック機構39等を解除してドア25や扉23、24、51を開けることができる。
【0018】
さらに、防災キャビン1の埋没が激しくてドア25や扉23、24、51を開けることができない場合は、脱出用通路36を通ってその開口端に取り付けた蓋37のロック機構38を解除し、蓋37を外してそこから直接家屋3の外へ脱出することができる。さらにこのような措置をとっても脱出が難しい場合は、防災キャビン1の支柱11を、キャップ部材10を取り付けるときとは逆向きに回転させると、キャップ部材10が外れて開口16が現れるから、この開口16を脱出用開口部としてそこからも脱出することができる。また開口16は開いたけれども脱出が無理である場合は、支柱11のみを開口16から出し、その先端を瓦礫の隙間から突き出して、予め装備してあった信号弾や発煙筒、或いは花火21を支柱11の中空路19の中にセットし、これにマッチ等のような火種22によって点火することにより空へ向けて発射させ、他人に自分自身の存在を知らせることができる。
【0019】
(実施の形態2)
図8および図9は本発明の第2の実施の形態に係る防災キャビンの構造を示すものである。これらの図のうち、図8は第2の実施の形態の斜視図、図9は第2の実施の形態の家屋への組み付け状態を示す正面図である。この実施の形態に係る防災キャビンは、前記第1の実施の形態に係る防災キャビンが球形の外観構造を有していたのに対して、外観構造が立方体または直方体構造に造られている。
【0020】
図8および図9において、符号61は本実施の形態に係る防災キャビンを示す。この防災キャビン61は、天井部62と壁部63とを有し平面矩形状すなわち立方体または直方体構造に組み立てられて成る。天井部62および各四方の壁部63はそれぞれ一枚板を成形して構成しても良いが、どちらも、さらに複数の天井部片62a、或いは壁部片63aをつなぎ合わせることによって構成し、家屋3の中に持ち込んで組み立て易いようになっているのが好ましい。天井部片62a、或いは壁部片63aはどのような形状に作られていてもよいが、この実施の形態の防災キャビン61が立方体または直方体構造であることを考慮して天井部片62a、壁部片63aはいずれも4角形状であることが運搬の点でも好ましい。そして天井部片62aおよび壁部片63aには、防災キャビン61の強度(剛性)を大きくするために鉄板が用いられる。
【0021】
天井部片62aおよび壁部片63aは4角形状の鉄板材から成るとともに、この4角形状の鉄板材の側縁部には適当なアングル部材が取り付けられる等によって組み付け易くしたり或いは補強が施される。そして、壁部片63aについてみると、1つの壁部片63aとこれに隣接する壁部片63aを平面でみて互いに直角になるように設置し、結合することによって壁部63を構成する。また、天井部片62aと壁部片63aとの結合も同様にして行なう。さらにこの実施の形態に係る防災キャビン61の家屋3への取付けに当たっては、図9に示すように、当該家屋3の一階天井部分に設けられているたる木65に防災キャビン61の天井部62をねじやボルト等の適当な締結部材によって直接またはスペースを確保できる何らかの継手部材67を介して固定結合する。また、家屋3の壁部や柱に防災キャビン61の壁部63をねじやボルト等の適当な締結部材によって固定結合する。さらに、家屋3の床7に防災キャビン61の床部分をねじやボルト等の適当な締結部材によって固定結合する。また、上記防災キャビン61の壁部63には、適当な位置に窓66を形成しておき、この窓66が家屋3の窓3wと位置が合うように防災キャビン61を設置すれば、防災キャビン61の中から窓66、3wを通して外の景色を見ることが出来、防災キャビン61の中にいるという閉塞感を和らげることができる。
【0022】
このようにして作られた防災キャビン61の機能は前記第1の実施の形態の防災キャビン1と殆ど同じである。すなわち、防災キャビン61の内部にも床が作られ、天井部62には人間34の大人が通り抜けできる程度の径を有する開口68が形成されている。また、防災キャビン61にはドア25が取り付けられた出入口が設けられている。ドア25には、外部から内部の様子が観察できるよう窓26が設けられている。この防災キャビン61には、前記ドア25以外に、複数の、人間34の大人が通り抜けできる程度の直径を有する脱出用開口部が複数個設けられている。この実施の形態では脱出用開口部は、地震等により家屋3が倒壊し、防災キャビン61が瓦礫に埋まったときに、自力或いは外部から人の手を借りて直接外へ逃げられるようにするためのものである。
【0023】
また、防災キャビン61と家屋3の側壁35との間には、必要に応じて第1の実施の形態におけると同様な脱出用通路36が設けられていてもよい。次に防災キャビン61内の設備についても前記第1の実施の形態における防災キャビン1の内部と同様である。
【0024】
以上防災キャビンの構造として、第1の実施の形態は球形状、第2の実施の形態は立方体または直方体のものを挙げてきたが、この他にも種々の構造が考えられる。図10乃至図12はそのような種々の防災キャビンの別の構造例(変形例)を挙げたものであり、図10は円筒構造の壁部71に半球構造の天井部72を取り付けた防災キャビン70の構造例を示し、図11はかまぼこ型構造の防災キャビン75を示し、また図12は子供に人気のありそうなロケット構造の防災キャビン80を示している。さらに、防災キャビンを前記のように種々の構造にするとともに、前記第1の実施の形態においても説明したようにその外面に種々の模様や絵を描いて日常の生活に際して楽しむことができるようにしてもよい。54の他にも、例えば机や簡単な箪笥類を持ち込んで子供部屋として使用することができる。
【0025】
(実施の形態3)
図13および図14は本発明による防災キャビンの第3の実施の形態を示す図である。この実施の形態では、防災キャビンを2つ(又はそれ以上)の分割キャビンにより構成し、これらの分割キャビン間を閉状態に連通させることにより秘密裡に被防護者を移動させ、脱出を図るように構成されていることが特徴である。すなわち、図13に示されているように、本実施の形態に係る防災キャビン81は、家屋3の2階部分に設けられた第1分割キャビン82と、同じ家屋3の1階部分に、第1分割キャビン82とは独立した関係に設けられた第2分割キャビン83とから成る。第1分割キャビン82は、2階部分にあってボックス体構造を有し、ドア84と、脱出口85と、床面に開けられた脱出開口86とを備えている。第1分割キャビン82は、基本的には、第2の実施の形態に係る防災キャビン61とほぼ同じ構成になっている。またこの第1分割キャビン82は、家屋3とは別体の1つの独立したボックスを形成しており、ドアなどを閉鎖すれば外部からの侵入は不可能な構造になっている。
【0026】
第2分割キャビン83には、例えばその家の別の部屋、又は第1分割キャビンと同様な構造のボックス体が利用される。図14は、第2分割キャビンとして浴室(ユニットバスなど)が利用される場合の内部構造の具体例を示す正面図である。浴室が利用されているから、浴槽87、水道/給湯蛇口88、およびシャワー具89、洗い場90が設けられている。それに加え、側壁には非常口91、92が設けられる一方、洗い場の床面にも地下通路96を通って外部へ脱出できる非常口93が設けられている。もちろん、非常口93には内外出入り口にともに蓋が設けられている。また、この浴室は防災および防護の目的を持つから、壁および天井には浴室躯体を強固にするため、内部側(裏側)に補強フレーム94(図14中点線で表す)が設けられている。なお、上記脱出口85、脱出開口86、非常口91、92、93などの脱出用の開口は、第1および第2の実施の形態における説明したのと同様、人間34の大人が通り抜けできる程度の開口寸法を有する。なお、第2分割キャビン84のである浴室の天井裏側は防災グッズなどの格納スペース97が形成されている。
【0027】
また、第1分割キャビン82と第2分割キャビン83との間には退避用通路95が設けられている。この退避用通路95は2階で緊急事態が発生し、第1分割キャビン82へ逃げ込んでも安全を確保できずに逃げ場を失った等の場合に2階にいる人を迅速に退避させられるようにするためのものであり、上記第1の実施の形態における退避用通路30と同じ材質、構成を有する。したがって、この退避用通路95もまた、合成樹脂または金属製の、人間34の大人が通り抜けできる程度の直径を有する筒体によりすべり台の構造に構成され、第1分割キャビン82の床に開けた脱出開口86から第2分割キャビン83の内部に連通している。脱出開口86には蓋が設けられており通常の状態では蓋は閉鎖されている。また、退避用通路95には透明なガラスまたは透明な合成樹脂によって塞がれた窓が設けられ、退避用通路95の内部が見えるようにしてもよい。或いは退避用通路95そのものを透明または半透明の合成樹脂等によって構成してもよい。また、第1分割キャビン82と第2分割キャビン83とは、退避用通路95のみによって接続され、且つ退避用通路95自体の途中からその内部に侵入することは不可能な構造になっている。
【0028】
かかる構成を有する防災キャビン1は、家屋3の内部に恰かも1つの部屋のように1階および2階に設置されているから、通常時にあっては、上記のように浴室として(1階)、或いは子供部屋やその他の目的を持つ部屋として(2階)使用する。
【0029】
一方、地震等の災害が発生したときは第1分割キャビン82又は第2分割キャビン83が中にいる人間34を怪我等から守る。本実施の形態では1階にも2階にも防災用のキャビンが設置されているから、何等かの緊急事態が発生したとき、家人はいずれかのキャビン82又は83に逃げ込めばよく、緊急避難が迅速に行える。また、2階にいて、第1分割キャビンに避難した人間34はそれで避難行動は十分であるが、この場合においてさらに逃げる必要がある場合は退避用通路95を通って第2分割キャビン83内に移動する。これは、外部から不審者の侵入等があった場合に威力を発揮する。すなわち暴漢などが侵入した場合、一旦は第1分割キャビン82に逃げ込んで身を守ることができるが、上記暴漢が2階へ移動して第1分割キャビン82に危害を加えている間に退避用通路95を使って1階へ逃がれ、屋外へ脱出することが可能となる。第1及び第2の実施の形態では2階部分はオープンスペースとなっているので、緊急事態が発生している間に退避用通路30を使って1階へ逃がれることは極めて難しい。
【0030】
地震等の場合、第2分割キャビン83は鋼材等を使って強固に作ってあるので、仮に家屋3が倒壊しても防災キャビン81は破壊されることなく持ちこたえる。そして、防災キャビン81は破壊されず、却って倒壊しようとする家屋3を内側から支え、その倒壊を防ぐ働きもする。また、地震等の場合における瓦礫の中からの生還の可能性についても、上記第1、第2の実施の形態とほぼ同様である。
【0031】
(実施の形態4)
図15および図16は本発明による防災キャビンの第4の実施の形態を示す図であり、図15は正面図、図16は平面図である。この実施の形態では、第1の実施の形態におけると同様に、防災キャビン101は内部が空洞で全体が球形状に構成されており、その頂部から5分の1乃至3分の1の高さ部分で上側キャビン本体102と下側キャビン本体104との2つのキャビン本体を上下に分割可能に結合して構成されている。上側キャビン本体102および下側キャビン本体103は、それぞれ一体の分割球体から成り、両部材の境界結合部分においてパッキンの介在の下にボルト・ナット締めにより気密状態を保って結合されている。なお、第1の実施の形態におけると同様、複数のシェル部片(図1で2a、4aで表されている)をつなぎ合わせることによって構成されてもよい。本実施の形態における防災キャビン101の特徴は、倒壊家屋から脱出するときに、防災キャビン101全体が移動できるようにしてある点である。上記特徴を備えるために、防災キャビン101の下側キャビン本体103には車輪104が少なくとも4個、前後左右の関係に取り付けられている。車輪104はモータやエンジンのような駆動装置に連結されていてもよいし、或いは何ら駆動装置に連結されずに他の手段(人、車など)によって牽引されてもよい。
【0032】
また、防災キャビン101の外部で、上下方向真ん中よりも下側の位置には、防災キャビン101の躯体に対して横方向に張り出した水平板状の安定板105が設けられている。この安定板105は防災キャビン101の周囲に全周にわたって延びていてもよいし、或いは図16に示されているように防災キャビン101の一部の周囲に対称的に延びていてもよい。このように安定板105を設けることにより防災キャビン101が水に浮かんだときに、その姿勢を安定させることができる。
【0033】
防災キャビン101の内部についてみると、内部に居住できるように床107が設置され、その床下部分には複数の区画室108、109、110が仕切り形成されている。区画室108及び110は防災キャビン101内部で短期間居住するのに必要な各種物資を収納するための収納室として用いられる。中央部の区画室109は防災キャビン101の中心位置を占めることから、生活用水(飲み水など)の貯蔵に用いられるのが好ましい。区画室109を生活用水の貯蔵庫として用いることは、上述したように防災キャビン101自体が水に浮かんだときに、水が安定化錘体として機能し、防災キャビン101の姿勢を安定させることができるというメリットもある。すなわち、起き上がりこぼしの原理を活用することができる。また、防災キャビン101内部には天井110も設けられ、この天井110と、床107との間にはパイプ製の支柱111が立設されている。これは防災キャビン101の強度を増大させるためのものである。さらに防災キャビン101の壁面には窓、或いは出入り口112が設けられている。これらの窓、或いは出入り口112はガラスなどで気密に塞がれ、且つ一部は開閉可能とされて、出入り口として用いられる。
【0034】
図17および図18は上記本発明の第4の実施の形態の変更例を示す図であり、図17は正面図、図18は平面図である。この変更例に係る防災キャビン120は、外観構造が球体ではなく、いわゆるたまご型構造をしている点が上記第4の実施の形態とは異なる。この防災キャビン120は別体構造となっている上側キャビン本体121と下側キャビン本体122を合わせ、間にパッキンを介在させてボルト締めにより結合されてなる。防災キャビン120は内部が空洞である。上側キャビン本体121および下側キャビン本体122は、それぞれ一体の分割球体から成り、両部材の境界結合部分においてパッキンの介在の下にボルト・ナット締めにより気密状態を保って結合されている。なお、第1の実施の形態におけると同様、複数のシェル部片(図1で2a、4aで表されている)をつなぎ合わせることによって構成されてもよい。本実施の形態における防災キャビン120もまた、その特徴は、倒壊家屋から脱出するときに、防災キャビン120全体が移動できるようにしてある点、及び水難にあっても浮遊できるように構成されている点である。上記特徴を備えるために、防災キャビン120の下側キャビン本体121には車輪124が少なくとも4個、前後左右の関係に取り付けられている。車輪124はモータやエンジンのような駆動装置に連結されていてもよいし、或いは何ら駆動装置に連結されずに他の手段(人、車など)によって牽引されてもよい。防災キャビン120が牽引されるために、その躯体にはフック125が設けられている。
【0035】
防災キャビン120の内部についてみると、内部に居住できるように床127が設けられ、その下側には複数の区画室128、129、130が仕切り形成されている。区画室128及び130は防災キャビン120内部で短期間居住するのに必要な各種物資を収納するための収納室として用いられ、区画室129は防災キャビン120の中心位置を占めることから、生活用水(飲み水など)の貯蔵に用いられるのが好ましい。区画室129を生活用水の貯蔵庫として用いることは、上述したように防災キャビン120自体が水に浮遊したときに、その姿勢を安定させることができるというメリットもある。すなわち、起き上がりこぼしの原理を活用することができる。また、防災キャビン120内部には天井に張りわたされたパイプ製の支え梁131が設けられている。これは防災キャビン120の躯体強度を増大させるためのものである。さらに防災キャビン120の壁面には窓、或いは出入り口132が設けられている。これらの窓、或いは出入り口132はガラスなどで気密に塞がれ、且つ一部は開閉可能とされて、出入り口として用いられる。
【0036】
図19は第4の実施の形態およびその変更例が水に浮くタイプのものである点により、水に浮かんだ時の推進力を得るための駆動装置を示す図である。この駆動装置135は、モータ136と、モータ136に取り付けられたプロペラ137と、モータ136に取り付けられて上方に延びる支軸138と、支軸138の上端に設けられたハンドル139と、支軸138の上下中間部分設けられた取付固定具140とを有して成る。モータ136は、例えばバッテリー式のモータが用いられる。取付固定具140には掛金部材141が設けられ、この掛金部材141をフック125に結合させて防災キャビン120本体に取り付けることができる。これにより、防災キャビン120(或いは101)が水中に放り出されても駆動装置135の推進動作により危険な個所から離れることができる。
【0037】
図20は防災キャビンの小道具としてのステッキを示す。このステッキ141はパイプ部材から成り、その上端には鋭角構造の握り部142を有する。またパイプ状のステッキ本体143の内部には図21に示されているような花火144(或いは発煙筒)を収納できるようになっており、非常時に救援用の合図を送ることができるようになっている。なお、災害時に花火や発煙筒を使うことは第1の実施の形態においても説明した。上記花火144は、第1の実施の形態においても使用できる。また、握り部142が鋭角構造であることから、防災キャビン120が水中に浮いているときに、別の浮遊物を引掛けて集めたりすることができる。
【0038】
以上のように、この第4の実施の形態の防災キャビン120は水に浮くタイプのものであるため、地震等の災害時に河川の氾濫や津波の来週があった場合でも、防災キャビン120自体は破壊されず、且つ浮遊移動し内部の人間を守ることができる。
【0039】
(実施の形態5)
図22は本発明による防災キャビンの第5の実施の形態を示す斜視図である。この実施の形態では、防災キャビンの躯体外周全体に配管を施し、この配管に水を供給して防災キャビンの周囲に散水し、防災キャビンを火災から防護するようにしたものである。この実施の形態は上述した各実施の形態に係る防災キャビンに適用可能である。図22において、符号150は防災キャビンの躯体骨組みを表し、ドア151が取り付けられている以外は、壁や天井がまだ完成されていない状態を表す。この防災キャビン150は、この防災キャビン150が設置された階(ここでは1階とする)の上の階である2階との間には、退避用通路152が設けられている。この退避用通路152が設けられている目的、構成及び作用効果は第1の実施の形態における退避用通路32と同じである。そしてこの防災キャビン150(より詳しくは、その躯体)は、複数の支柱153と、複数の梁154、および、支柱153と梁154の結合部間に連結されたすじかい155が相互に結合されて組み立てられている。支柱153、梁154、及びすじかい155は木材により構成されていてもよいが、防災の点からみると鉄骨などの頑丈で防火性のよい材料により構成されるのが好ましい。
【0040】
さらに、上記支柱153と梁154に沿っては配管156が配設されている。配管156は、例えば金属管や合成樹脂製のパイプ等から構成され、図22において、配管156は支柱153と梁154に沿って延びる点線(太点線)により示される。なお、配管156は、支柱153及び梁154のみならず、すじかい155に沿っても配設されていてもよい。配管156は少なくとも一端または配管途中の一部が、例えば水道或いは給水タンクのような水源設備にバルブを介して接続されている。水源設備としてのタンクには消火剤や水と消火剤の混合液(すなわち、消火材料)が貯蔵されていてもよい。また、配管156の全体の各所には複数の穴が開けられている。図23は、配管156の一部を例示的に示す正面図であり、複数の穴157とバルブ158とが示されている。これによりバルブ158を開いて配管156に水を供給すると、配管156の全体において穴157から水が放出される。配管156の穴157は、防災キャビン150に対して外部に向けて水を放出する部位に開けられている。また、バルブ158の操作部は、少なくとも防災キャビン150の内部には取り付けられており、防災キャビン150の内部からバルブ158の開閉動作が可能にしてある。
【0041】
以上の構成により、地震等の災害が発生したとき、防災キャビン150の外にいた人間はドア151を開けて防災キャビン150内に移動すれば防災キャビン150が中にいる人間を怪我等から守る。また、2階からは退避用通路152を通って防災キャビン150内に移動することもできる。そして、防災キャビン150が鋼材等を使って強固に作ってあることにより、仮に家屋が倒壊しても防災キャビン150は破壊されることなく持ちこたえる。そして防災キャビン150は破壊せず、却って倒壊しようとする家屋を内側から支え、その倒壊を防ぐ働きもする。さらに火災が発生したときは、バルブ158の操作により配管156に水或いは消火材料が供給され、これらの水等は穴157を通して防災キャビン150の周囲に散布され、防災キャビン150の中にいる人間を火災等から守る。さらに、周囲の家屋を火災から守ったり、鎮火させたりする。
【0042】
図24は、図22に示された防災キャビン150を通常の家屋へ設置した場合の一例を示す内部部分透視図である。この設置例では、防災キャビン150は家屋(母屋)159の側方外部に設置されている。この場合、防災キャビン150は、母屋159とは別構造物として組み立てられ、構造的には独立状態にある。また、防災キャビン15は鋼材などにより組み立てられており、母屋159よりも頑丈に作られている。また、防災キャビン15に配管156が設置されていることは上述の通りであるが、図24の例では、配管がさらに延長され、母屋の柱160や、梁161、さらには、屋根162にまで、配管163が配設されている。
【0043】
これにより、火災が発生したときは、バルブ158の操作により配管156及び163に水或いは消火材料が供給され、これらの水等は穴157を通して防災キャビン150及び母屋159の周囲に散布され、防災キャビン150及び母屋159の中にいる人間を火災等から守り、さらに、周囲の家屋を火災から守ったり、鎮火させたりする。
【0044】
図25は、図22に示されたものと同様の機能を持つ防災キャビン150を図9に示された家屋へ設置した場合の一例を示す内部部分透視図である。この設置例では、母屋159としては図9に示された家屋及び防災キャビンの構造が用いられ、その防災キャビンに配管156を配設することにより防災キャビン150が実現されている。そして、このような防災キャビン150の作用、効果としては先に図22及び図24を参照して説明されたものと同じである。
【0045】
図26は、図22に示されたものと同様の機能を持つ防災キャビン150を図13に示された家屋へ設置した場合の一例を示す内部部分透視図である。この設置例では、母屋159としては図13に示された家屋及び防災キャビンの構造が用いられ、その防災キャビンに配管156を配設することにより防災キャビン150が実現されている。そして、このような防災キャビン150の作用、効果としては先に図22及び図24を参照して説明されたものと同じである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本発明によれば、家屋内部に設置され、複数の出入口を有する種々の構造の中空立体構造のキャビン本体と、キャビン本体の出入口に設けられ外部から施解錠操作可能な開閉扉と、キャビン本体内部に設備された生活および緊急道具と、キャビン本体と、このキャビン本体設置階の上の階の床面に接続され人間が通過可能な退避用通路とを備えた防災キャビンをとしたため、恰かも屋内に1つの部屋があるように日常生活の一環の中で使用することができる。そして、一旦地震等のような突発的な災害が起こった場合は、この防災キャビンは家屋等の構造体からは独立し、且つ球体直方体、立方体、その他の剛性構造等のような強固な構造体になっているので、家屋が倒壊しても防災キャビンは破壊せず、却って倒壊しようとする家屋を内側から支え、その倒壊を防ぐ。また、万が一家屋が倒壊してその下に閉じ込められても、防災キャビンは破壊せずに内部の人間を保護するとともに、家屋の下から脱出するときは、複数の出入口のうち、少なくとも1つの出入口を開閉することが可能である確率は高く、その開閉可能な出入口から脱出することができる等、種々の利点が得られる。また、防災キャビンが第1及び第2の分割キャビンに分かれている態様では、地震等のような突発的な災害が起こった場合は、家屋が倒壊しても防災キャビンは破壊せず、人間を防護する。また、暴漢などが侵入した場合、一旦は1つの分割キャビンに逃げ込んで身を守ることができ、さらに危険な場合は、退避用通路95を使って別の分割キャビンへ逃がれることが可能となる。
【0047】
また、防災キャビンが水に浮くタイプのものであるときは、地震等の災害時に河川の氾濫や津波の来週があった場合でも、防災キャビン自体は破壊されず、且つ浮遊移動し内部の人間を守ることができる。さらに防災キャビンに散水用の配管が配設されている場合は、火災が発生したときに、バルブの操作により配管に水或いは消火材料が供給され、これらの水等は穴を通して防災キャビンの周囲に散布され、防災キャビンの中にいる人間を火災等から守り、さらに、周囲の家屋を火災から守ったり、鎮火させたりする。以上により、緊急に避難したりより厳しい状況における避難が可能となり、有用性はより高くなる。
【符号の説明】
【0048】
1,61,70,75、81、120、150 防災キャビン
2 上側キャビン本体
3、159 家屋
4 上側キャビン本体
5 支持台
10 キャップ部材
11 支柱
23,24,51 扉
25 ドア
30、95 退避用通路
32 逃げ込み用通路
36 脱出用通路
40 脱出用開口
82 第1分割キャビン
83 第2分割キャビン
156,163 配管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が中空の立体構造を有し所定の位置に出入口が形成されたキャビン本体と、このキャビン本体を家屋内部の床面に固定支持する支持部材と、キャビン本体の出入口に設けられ外部から施解錠操作可能な開閉扉と、キャビン本体内部に固定設置された生活道具とを備えた防災キャビンであって、
当該防災キャビンは、複数の独立した分割キャビン82,83から構成され、これらの分割キャビン同士は退避用通路95により連通され、緊急事態に際して、一旦は1つの分割キャビンに逃げ込んで身を守り、さらに危険な場合は、退避用通路95を使って別の分割キャビンへ逃がれ得るようにしたことを特徴とする防災キャビン。
【請求項2】
前記複数の分割キャビンのうち、1つの分割キャビンは家屋の1階に設置される一方別の分割キャビンは家屋の2階に設置されることを特徴とする請求項1記載の防災キャビン。
【請求項3】
1つの分割キャビンのキャビン本体の天井は蓋部材から成り、この蓋部材はキャビン本体中央部に立設された支柱によってキャビン本体に結合される一方、この支柱を外すことによってキャビン本体から除去可能であることを特徴とする請求項1記載の防災キャビン。
【請求項4】
キャビン本体は外観が球体、立方体または直方体等の種々の構造であることを特徴とする請求項3記載の防災キャビン。
【請求項5】
キャビン本体の下部には車輪が取り付けられ、移動可能であることを特徴とする請求項4記載の防災キャビン。
【請求項6】
キャビン本体の外側の下半部分には、外側面から外方へ張り出した安定板が設けられ、また、
キャビン本体の内部の床下部分には複数の区画室が仕切り形成されるとともに、中心部の区画室には水が収容され、さらに、
キャビン本体の躯体外周全体に散水用の穴が複数個所に開けられた配管が施されている、
ことを特徴とする請求項5記載の防災キャビン。
【請求項1】
内部が中空の立体構造を有し所定の位置に出入口が形成されたキャビン本体と、このキャビン本体を家屋内部の床面に固定支持する支持部材と、キャビン本体の出入口に設けられ外部から施解錠操作可能な開閉扉と、キャビン本体内部に固定設置された生活道具とを備えた防災キャビンであって、
当該防災キャビンは、複数の独立した分割キャビン82,83から構成され、これらの分割キャビン同士は退避用通路95により連通され、緊急事態に際して、一旦は1つの分割キャビンに逃げ込んで身を守り、さらに危険な場合は、退避用通路95を使って別の分割キャビンへ逃がれ得るようにしたことを特徴とする防災キャビン。
【請求項2】
前記複数の分割キャビンのうち、1つの分割キャビンは家屋の1階に設置される一方別の分割キャビンは家屋の2階に設置されることを特徴とする請求項1記載の防災キャビン。
【請求項3】
1つの分割キャビンのキャビン本体の天井は蓋部材から成り、この蓋部材はキャビン本体中央部に立設された支柱によってキャビン本体に結合される一方、この支柱を外すことによってキャビン本体から除去可能であることを特徴とする請求項1記載の防災キャビン。
【請求項4】
キャビン本体は外観が球体、立方体または直方体等の種々の構造であることを特徴とする請求項3記載の防災キャビン。
【請求項5】
キャビン本体の下部には車輪が取り付けられ、移動可能であることを特徴とする請求項4記載の防災キャビン。
【請求項6】
キャビン本体の外側の下半部分には、外側面から外方へ張り出した安定板が設けられ、また、
キャビン本体の内部の床下部分には複数の区画室が仕切り形成されるとともに、中心部の区画室には水が収容され、さらに、
キャビン本体の躯体外周全体に散水用の穴が複数個所に開けられた配管が施されている、
ことを特徴とする請求項5記載の防災キャビン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2013−83136(P2013−83136A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−28252(P2012−28252)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【特許番号】特許第5185449号(P5185449)
【特許公報発行日】平成25年4月17日(2013.4.17)
【出願人】(511232330)
【出願人】(595019751)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【特許番号】特許第5185449号(P5185449)
【特許公報発行日】平成25年4月17日(2013.4.17)
【出願人】(511232330)
【出願人】(595019751)
【Fターム(参考)】
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