説明

防災フード

【課題】 小型で持ち運びが簡単で、しかも頸部の保護が確実にできる防災フードを提供する。
【解決手段】 本発明の防災フード10は、頭上部と顔の両側面を覆う第1のエアーバッグ11と、後頭部から背中上部を覆う第2のエアーバッグ12と、第1と第2のエアーバッグに圧縮ガスを供給して両エアーバッグを膨らませる小型ガスボンベ13と、小型ガスボンベを開放するガス充填装置14と、第1と第2のエアーバッグ、小型ガスボンベ及びボンベ開放装置を纏めて折り畳んで収容する袋体20とを有し、小型ガスボンベ13を開放するレバーを回動する操作部としての紐15が、袋体20の外側に露出し、操作部により小型ガスボンベを開放したとき、第1のエアーバッグと第2のエアーバッグとが同時に膨らんで袋体から飛び出して使用可能状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震、火災、火山の爆発などの災害時に瞬時に成形して使用することができる防災フードに関し、特に、通常は小さく折り畳まれており、緊急時には、瞬時に大きくなって使用可能となる防災フードに関する。
【背景技術】
【0002】
防災フードとしては、従来から種々のものが提案されている。例えば、特許文献1(実公昭58−6343号)では、リュックサックの蓋の裏側に頭部を覆うフードを収容し、災害時にすぐに取り出して使用できるようにしたものが提案されている。
【0003】
しかし、このフードは、薄いものなので、頭部の保護が不十分である。一方、頭部の保護が十分できるように厚くすると、収容スペースが大きくなり、平常時には邪魔になってしまう。
【0004】
そこで、特許文献2(特開平9−131222号)では、頭部を覆うエアーバッグと、背部を覆うエアーバッグを取り付けたリュックサックを提案している。災害時には、2つのエアーバッグを、自動ガス充填装置により膨らませて使用する。
【0005】
しかし、これは頭部用のエアーバッグを膨らませる自動ガス充填装置と、背部を覆うエアーバッグを膨らませる自動ガス充填装置とを別々に設けたもので、使用方法が煩わしい。また、リュックサックに2つのエアーバッグを取り付けているので、リュックサックと一緒に持ち運ぶ必要があり、持ち運びにくいという問題がある。
【0006】
また、特許文献3(特許第3348241号)では、リュックサックの上部に頭巾収納用帯を設け、ここにエアーバッグ式の頭巾を折り畳んで収容するものを提案している。災害時には、このエアーバッグをガス充填装置で瞬時に膨らますことで、頭部を保護できるようになっている。
【特許文献1】実公昭58−6343号
【特許文献2】特開平9−131222号
【特許文献3】特許第3348241号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これもリュックサックを使用していない場合には、利用できない、また、リュックサックと一体なので、大きくなってしまい、持ち運びが不便であるという問題がある。また、エアーバッグにより頭部は保護されるが、頸部の保護が十分ではないという問題もあった。災害時には、頭上から多様なものが落下するので、頭部の保護だけでは不十分であり、頸部を確実に保護する必要がある。
【0008】
本発明は、上記の問題の解決を図ったもので、小型で持ち運びが簡単で、しかも頸部の保護が確実にできる防災フードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するために本発明の防災フードは、頭上部と顔の両側面を覆う第1のエアーバッグと、該第1のエアーバッグと連通し、後頭部から背中上部を覆う第2のエアーバッグと、前記第1と第2のエアーバッグに圧縮ガスを供給して両エアーバッグを膨らませる小型ガスボンベと、該小型ガスボンベを開放するボンベ開放装置と、前記第1と第2のエアーバッグ、小型ガスボンベ及びボンベ開放装置を纏めて折り畳んで収容する袋体とを有し、前記袋体が開閉自在な開口を有し、前記開放装置が前記小型ガスボンベを開放するレバーを備え、該レバーを回動する操作部が、前記開口から袋体の外側に露出し、前記操作部により前記小型ガスボンベを開放したとき、前記第1のエアーバッグと第2のエアーバッグとが同時に膨らんで前記袋体から飛び出して使用可能状態になることを特徴としている。
【0010】
前記袋体の開閉自在な開口が、面ファスナーで閉止される構成としたり、前記第1と第2のエアーバッグが、複数の棒状小エアーバッグを横方向に連結させた構成としたり、前記第1と第2のエアーバッグが、ナイロンの基布にポリウレタンエラストマーを貼付した難燃性の素材からなる構成としたり、前記袋体にベルト通しを設けた構成としたり、前記袋体内に、前記エアーバッグと共に非常食を入れたりすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防災フードによれば、リュックサックに取り付けていないので、小型化でき、持ち運びが容易になる。また、第2のエアーバッグがあるので、頸部を確実に保護することができ、安全性に優れているという優れた効果を奏し得る。また、エアーバッグを使用するので、水難事故などでは浮き袋体として使用することもできる。
【0012】
袋体の開口を面ファスナーにすれば、小型ガスボンベでエアーバッグを膨らませたとき、防災フードが簡単に袋体から飛び出すことができ、また、防災フードを折り畳んで袋体内に収容する場合も簡単に収容できる。
【0013】
エアーバッグを複数の棒状小エアーバッグを連結した構成にすることで、衝撃に強いエアーバッグを得ることができる。エアーバッグを難燃性の素材で作ることで、火災にも強くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の防災フードを使用状態にした図で、図2は頭部に装着した状態を示す図である。防災フード10は、頭部の上面と左右側面を覆う第1のエアーバッグ11と、後頭部から頸部を経て背中の上部までを覆う第2のエアーバッグ12と、第2のエアーバッグ12に取り付けられた圧縮ガスの小型ガスボンベ13と、ガス充填装置14とを有する。ガス充填装置14には、操作部となる紐15があり紐の先端には握り15aが設けられている。また、第1のエアーバッグ11の左右両下端には、第1のエアーバッグ11を頭部に固定するための顎紐16が取り付けられ、第2のエアーバッグ12には、第2のエアーバッグを体にくくりつけて背中等に固定するための紐17が取付られている。顎紐16と紐17の先端には、面ファスナー16a,17aが付けられ、簡単に固着できるようになっている。符号18は、エアー抜きの弁で、防災フード10の使用が終わったときにエアーバッグ内のガスを抜いて折り畳めるようにするものである。
【0016】
第1のエアーバッグ11は、複数の棒状小エアーバッグ11aを横方向に連結させたものなので、第1のエアーバッグ11が頭部、顔の両側面に沿って曲がりやすくなっている。また、背中に伸びる第2のエアーバッグ12も、複数の棒状小エアーバッグ12aを横方向に連結させたものとなっているので、丈夫であり、衝撃に強くなっている。
【0017】
第1のエアーバッグ11と第2のエアーバッグ12は、内部空間が連通しており、いずれか1の棒状小エアーバッグ11a又は12aに圧縮ガスを入れると、圧縮ガスは瞬時に全ての棒状小エアーバッグ11a、12a内に入り、これらを膨らませることができる。
【0018】
また、第1のエアーバッグ11と第2のエアーバッグ12は、ナイロン製の基布に、ポリウレタンエラストマーを塗布したもので、難燃性で、撥水性があり、かつ、気密性もあり、エアーバッグに入った圧縮ガスが非常に漏れにくい構造になっている。したがって、地震などで使用している際に、頭上から落下してきたものを受け、頭部や頸部を十分に保護することができる。
【0019】
図3はガス充填装置14の外観を示す斜視図で、(a)は作動前の状態、(b)は作動後の状態を示す。図4は、ガス充填装置14の断面図で、(a)は作動前の状態、(b)は作動後の状態を示す。
【0020】
これらの図に示すように、小型ガスボンベ13はねじでガス充填装置14に取り付けられている。ガス充填装置14には、インサート針14aがあり、バネ14bによって先端が小型ガスボンベ13から離れる方向に付勢されている。インサート針14aの後端は、回動レバー14cの一端と当接しており、回動レバー14cは、回動軸14dを軸に回転することができる。回動レバー14cの他端には操作部としての紐15が接続され、紐15の先端には握り15aがある。回動レバー14cは、安全ピン14eにピンが入っており、不用意に回動できないようになっている。
【0021】
ガス充填装置14を作動させるには、安全ピン14eを引き抜いて握り15aを持って紐15を引っ張り、回動レバー14cを図4(a)から(b)のように回転する。すると、回動レバー14cの一端がインサート針14aの後端を押し、インサート針14aは小型ガスボンベ13に向かって進み、小型ガスボンベ13の開口部に設けられた封板を突き破る。これによって、小型ガスボンベ13から圧縮炭酸ガスが噴出し、穴14fからガス充填装置14に連結されたエアーバッグ11、12に炭酸ガスが充填される。使用済の小型ガスボンベ13は取り外して、新規なものと交換することができる。
【0022】
図5(a)は、本発明の防災フードを折り畳み、袋体20に収容した状態を示し、(b)は袋体20の開口を開いた状態を示す図である。袋体20は四角の布を2枚張り合わせたもので、4辺の内の2辺は縫い合わせており、残りの2辺が面ファスナー20aで開閉自在な状態である。防災フード10のエアーバッグ11、12内のエアーを抜き出し、小さく折り畳んで袋体20内に入れ、面ファスナー20aで閉じる。紐15と握り15aとが袋体20の外に出るようにする。
【0023】
袋体20には、ベルト通し21、21を設けておけば、ズボンのベルトを通してズボンに固定することができる。袋体20には、一端に環22を取り付けている。使用時には、この環22を手で掴み、袋体20が下方に垂れ下がった状態にして握り15aを強く引っ張る。すると、小型ガスボンベ13が開放され、ボンベ内の圧縮炭酸ガスがエアーバッグ11、12内に進入し、瞬時に膨らみ、面ファスナー20aを剥がして飛び出し、図1に示す状態となり、着用可能となる。
【0024】
図2は、本発明の防災フードを頭部に着用した状態である。第1のエアーバッグ11が頭部の上面と顔の両側面を覆い、第2のエアーバッグ12が後頭部、頸部及び背部の上部を覆う。
【0025】
図1の状態になった防災フード10は、第1のエアーバッグ11、第2のエアーバッグ12が共に高圧ガスに充填されているので、非常に硬くなっている。特に、複数の棒状の棒状小エアーバッグ11a、12aを横方向に連結した構成なので、強度を上げることができる。従来の防災フードでは、フードを着用しているにも拘わらず、頸部や背中に落下物が当たって怪我をする可能性が高かった。これに対し、本発明の防災フード10によれば、頭部は勿論、十分な強さの第2のエアーバッグ12があるので、頸部や背中に落下物が衝突しても、頸部や背中を傷めることなく、十分に保護することが可能となった。また、袋体20内には、防災フード10とともに非常食を入れておくとよい。非常食によって、かなりの期間を持ちこたえることができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の防災フードを使用状態にした図である。
【図2】頭部に装着した状態を示す図である。
【図3】ガス充填装置の外観を示す斜視図で、(a)は作動前の状態、(b)は作動後の状態を示す。
【図4】ガス充填装置の断面図で、(a)は作動前の状態、(b)は作動後の状態を示す。
【図5】(a)は、本発明の防災フードを折り畳み、袋体に収容した状態を示し、(b)は袋体の開口を開いた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
10 防災フード
11 エアーバッグ
11a 棒状小エアーバッグ
12 エアーバッグ
12a 棒状小エアーバッグ
13 小型ガスボンベ
14 ガス充填装置
15 紐(操作部)
20 袋体
20a 面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭上部と顔の両側面を覆う第1のエアーバッグと、該第1のエアーバッグと連通し、後頭部から背中上部を覆う第2のエアーバッグと、前記第1と第2のエアーバッグに圧縮ガスを供給して両エアーバッグを膨らませる小型ガスボンベと、該小型ガスボンベを開放するボンベ開放装置と、前記第1と第2のエアーバッグ、小型ガスボンベ及びボンベ開放装置を纏めて折り畳んで収容する袋体とを有し、前記袋体が開閉自在な開口を有し、前記開放装置が前記小型ガスボンベを開放するレバーを備え、該レバーを回動する操作部が、前記開口から袋体の外側に露出し、前記操作部により前記小型ガスボンベを開放したとき、前記第1のエアーバッグと第2のエアーバッグとが同時に膨らんで前記袋体から飛び出して使用可能状態になることを特徴とする防災フード。
【請求項2】
前記袋体の開閉自在な開口が、面ファスナーで閉止されることを特徴とする請求項1記載の防災フード。
【請求項3】
前記第1と第2のエアーバッグが、複数の棒状小エアーバッグを横方向に連結させたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の防災フード。
【請求項4】
前記第1と第2のエアーバッグが、ナイロンの基布にポリウレタンエラストマーを貼付した難燃性の素材からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の防災フード。
【請求項5】
前記袋体にベルト通しを設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の防災フード。
【請求項6】
前記袋体内に、前記エアーバッグと共に非常食を入れたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の防災フード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−297375(P2009−297375A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157433(P2008−157433)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(592118620)
【出願人】(597080621)
【Fターム(参考)】