説明

防災計画支援システムとそのプログラム

【課題】自然災害や建造物等における事故や補修を対象として高精度かつ汎用性に優れ、しかも今後の点検や補修を行うことを考慮し、危険度ランクに応じた災害・事故・補修の発生・非発生評価を行うためのルールを生成できる防災計画支援システム等を提供する。
【解決手段】SVMによって解析した災害の発生・非発生の境界を用いて、観測・点検対象箇所の災害発生危険度を演算する危険度演算部12と、この危険度を用いて代表データ20を抽出する代表データ抽出部13と、代表データ20を用いて分離面を再度構築して危険度ランクを設定するランク設定部14と、ラフ集合を形成するラフ集合生成部26と、このラフ集合から危険度ランク毎に、災害・事故・補修のルールを抽出するランク別評価ルール生成部27を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雨を誘因として斜面あるいは渓流で発生する土砂災害、あるいは地震や火山活動によって発生する災害や河川災害など自然災害、さらには道路や上下水道、ダム、港湾、砂防などの施設や設備、橋梁や鉄塔、発電所、ビルなどの建造物における老朽化や上記の自然災害に伴う事故や補修を対象として実施される災害・事故・補修の発生・非発生に対する効率的かつ高精度であると共に汎用性に優れた評価を支援するための防災計画支援システムとそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国においては、多発する土砂災害等の自然災害から生活を守るための防災事業の進展が急務である。しかしながら、膨大な数に上る土砂災害危険箇所(以下,危険個所)を対象とした事業は思うような進捗がはかれず、取り組みの効率化が求められている状況である。これに対し、対象箇所における災害の発生危険度(以下、危険度)が正確に把握できれば、事業の優先順位の検討が可能となることから、上記の課題に対して大きな効果を生むものと考えられる。
豪雨や地震、火山活動等による自然災害は、毎年、我が国に甚大な被害を与えている。例えば、土砂災害は、我が国の国土の約7割が山地で地質的にも脆弱な地域が多く、急峻な地形が多い等の地理的条件や、都市化の進展による山麓部の土砂災害危険地域への人口増加等の社会的条件、更には台風や梅雨等の集中豪雨に見舞われ易いといった気象的条件により、我が国における宿命的な自然災害の一つとなっており、毎年、全国各地で多数発生し、尊い人命が失われ、貴重な財産が破壊されているが、かかる土砂災害の危険箇所(土石流危険渓流、急傾斜地崩壊危険箇所、地すべり危険箇所)は、全国で約52万箇所と多く、ハード面の対策による整備率は25%台と低いのが現状である。
また、道路や上下水道、ダム、港湾などの施設や設備、あるいは橋梁や鉄塔、発電所、ビルなどの建造物における老朽化や上記の自然災害に伴う事故や補修についても同様である。
かかる状況に対し、これだけ多くの危険箇所や施設・設備・建造物の全てにハード面の対策や補修・更新工事を実施するには、予算的、時間的な制約もあることから、ソフト面における対策によりハ−ド面の対策の遅れをカバーする必要性が認識されてきており、地域に広く散在する危険渓流等自然災害が発生する可能性のある地点・箇所や、老朽化や自然災害に伴う事故により被害を受ける可能性のある構造物の中から特に危険な箇所や比較的安全な箇所の分布を把握し、災害・事故・補修の発生に対する予防強化を行うことの重要性は高まっている。
【0003】
そこで、従来から、例えば、防災・補修事業計画の立案支援などのために実際の災害・事故・補修の発生あるいは非発生に関するデータをコンピュータ処理することで精度の高い情報を得る研究が実施されている。
本願発明者らは既に、がけ崩れの発生予測に用いられる発生降雨、非発生降雨の判別境界線であるがけ崩れの発生限界線や、避難基準線、警戒基準線を設定する方法について非特許文献1に示されるように発表している。
非特許文献1では、複雑な自然現象を直線近似せず、高精度の発生限界線等を設定することを目的として、非線形判別に優れた放射状基底関数ネットワーク(以後、RBFNと略す場合がある。)を用い、地域毎の非線形がけ崩れ発生限界雨量線を設定する方法を提案している。本非特許文献1に開示される技術では、RBFNを用いて、その学習機能を利用して最適な中間層と出力層の重みを決定することによって非線形がけ崩れ発生限界雨量線を設定している。
また、特許文献1においては、「防災総合計画支援システムとそのプログラム」として、降雨を誘因として斜面あるいは渓流で発生する土砂災害など自然災害、道路や上下水道、ダム、港湾、砂防などの施設や設備、橋梁や鉄塔、発電所、ビルなどの建造物における事故や補修を対象として効率的かつ高精度な災害・事故・補修の発生・非発生評価を行うためのルールを生成することができる防災総合計画支援システムとそのプログラムが開示されている。
本特許文献1に開示される防災総合計画支援システムは、サポートベクターマシン(以下、SVMという)によって解析した災害の発生・非発生の境界を形成させる分離面データと観測・点検データとを用い、観測・点検対象箇所の災害発生危険度を演算し、この危険度を用いて代表データを抽出し、代表データを用いてラフ集合を形成して、このラフ集合から災害・事故・補修のルールを抽出する。
このようにSVMとラフ集合を組み合わせて、自然災害や、道路・上下水道、ダム、港湾、砂防などの施設や設備、橋梁や鉄塔、発電所、ビルなどの建造物における老朽化に伴う事故や補修を対象として効率的かつ高精度な災害・事故・補修の発生・非発生評価を行うためのルール(Rule)を生成することができる発明が開示されている。
さらに、非特許文献2には、地形・地質要因(以下、地形要因という。)と降雨要因を用いて、ラフ集合により土石流の発生・非発生ルールの作成を行い,災害発生の起因となった要因の追求を行う研究が開示されている。この研究は、数理的な手法を導入することにより客観的な災害発生条件を探求するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−129003号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】倉本和正 他5名:RBFネットワークを用いた非線形がけ崩れ発生限界雨量線の設定に関する研究、土木学会論文集のNo.672/VI−50,pp.117−132,2001.3
【非特許文献2】岡本正男 他4名:ラフ集合を用いたデータマイニングによる土砂移動現象の重要要因及びルール抽出に関する研究、砂防学会誌 Vol.54,No.6,p.4−15,2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に開示された発明では、災害の発生限界線や、避難基準線、警戒基準線を設定することに主眼を置いており、ある特定の地域あるいは一定の条件毎にまとめられた地域グループにおいて、短期降雨指標や長期降雨指標がどの程度に至れば災害の発生の危険性があるのかを客観的に評価することに留まっていた。極端に言えば、同一地点において、蓄積された短期及び長期の降雨指標のデータを入力して、その地点で蓄積された降雨データに基づいて、どの程度の降雨で災害が生じることになるかという判断を行っていたのである。
これでは、客観的、定量的な評価であっても、地域毎あるいはグループ毎に個別具体的な評価を行なうことはできるものの、特定の地域ではなく、地域全般に共通の一般的、普遍的な評価を行なうことが困難であるという課題があった。
【0007】
また、特許文献1に開示された発明では、SVMとラフ集合を組み合わせて災害・事故・補修の発生・非発生評価を行うためのルール(Rule)という概念を持ち込み、防災や補修事業に対する優先順位を把握可能とすべく、災害や事故等の発生・非発生を高精度・高効率で評価可能であったものの、災害の発生・非発生や老朽化等に基づく設備や建造物の事故の発生・非発生についての危険性は、「危険」と「安全」という2つの区分で単純に分離するだけでなく、今後の点検や補修事業の展開を考えると、危険性あるいは安全性の程度に基づいて区分してルールを求めた方が精度が上がり、かつ事業を行う場合には使いやすいものと考えられる。そのため、画一的に2つに区切る特許文献1に開示される発明では、精度や効率は高くすることが可能であったものの、汎用性に欠けるという課題を生じていた。
【0008】
さらに、非特許文献2においては、ラフ集合による分析結果のみでできるだけ多くの災害の発生・非発生を説明しようとしているため、非常に多様なルールが作成されてしまうという課題があった。これは、母集団データに含まれるノイズ的なデータ(局所的かつ特例的な条件により災害が発生・非発生となっているデータ)の影響が大きいことが推測される。
ルールが多様過ぎては、精度は高くなっても、効率的に評価を実施することが難しくなってしまう。すなわち、そのルールでカバーできる地点や箇所が少なくなってしまい、結局災害の発生・非発生に関する評価を行うことが難しくなるのである。すなわち、災害の発生・非発生に対する高精度かつ効率的な評価を実施することができないという課題があった。
なお、本願において、「ルール」とは、ラフ集合において要因毎のカテゴリー区間の組合せを意味し、「ラフ集合」とは、災害・事故・補修発生要因に対し、この要因に関する属性値に対するカテゴリー区間を設け、この要因毎のカテゴリー区間を組み合わせてモデルを形成し、このモデルに観測・点検データを代入して得られる集合であって、カテゴリー区間の組合せによって形成される部分集合によって完全に分離されない集合を意味する。また、本願において、「カテゴリー区間」とは、災害・事故・補修発生の要因における属性値、例えば、降雨量、流域平均勾配、流域長、老朽度、損傷程度などの観測値あるいは点検値に対して、区間として区切ったその区間を言う。例えば、要因が流域平均勾配の場合には、10°〜20°、20°〜30°、30°〜40°とする3つの範囲が、カテゴリー区間の例として考えられる。また、渓流方位などのようにもともと物理的な順位を持たない東、西、南、北等もこれに該当する。
【0009】
本発明は、かかる従来の事情に対処してなされたものであり、降雨を誘因として斜面あるいは渓流で発生する土砂災害、あるいは地震や火山活動によって発生する災害や河川災害など自然災害、また、道路や上下水道、ダム、港湾、砂防などの施設や設備、橋梁や鉄塔、発電所、ビルなどの建造物における老朽化や上記の自然災害に伴う事故や補修を対象として効率的かつ高精度であると共に汎用性に優れ、しかも今後の点検や補修を行うことを考慮し、危険度ランクに応じた災害・事故・補修の発生・非発生評価を行うためのルール(Rule)を生成することができる防災計画支援システムとそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である防災計画支援システムは、観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する危険度演算部と、
前記災害・事故・補修発生危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定部と、
前記n次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に予め設定されたカテゴリー区間を組み合わせて,又はn次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に入力されるカテゴリー区間を組み合わせて,モデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成部と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成部と、
前記抽出されたルールを出力する出力部と、
を有し、前記抽出されたルールを出力して災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とするものである。
なお、本願において、分離面を解析するための学習データとしての,災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データと、分離面までの距離を演算するための要因毎のn次元の観測・点検データは同一であっても、異なるデータであってもよい。異なる場合には、同一地点・箇所で異なる時期に観測・点検された場合と、異なる地点・箇所で観測・点検された場合とがある。また、本願においては、「しきい値」と「条件」と分けて記載しているが、これは「しきい値」は特に数値による限定のみの条件を概念し、「条件」は、例えばしきい値を含めて論理式を含むような場合をも概念しているためである。
【0011】
請求項2記載の発明である防災計画支援システムは、観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する危険度演算部と、
前記災害・事故・補修発生危険度に対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式を基準として、該当する前記災害・事故・補修発生危険度を抽出すると共に、この抽出された前記災害・事故・補修発生危険度に対応する前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データを代表データとして抽出する代表データ抽出部と、
この代表データを学習データとし,この代表データにおける災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる代表データ分離面を解析する分離面演算部と、
この分離面演算部で解析された代表データ分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生代表データ危険度として演算する前記危険度演算部と、
前記災害・事故・補修発生代表データ危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定部と、
前記n次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に予め設定されたカテゴリー区間を組み合わせて,又はn次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に入力されるカテゴリー区間を組み合わせて,モデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成部と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成部と、
前記抽出されたルールを出力する出力部と、
を有し、前記抽出されたルールを出力して災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明である防災計画支援システムは、観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面を解析する分離面演算部と、
この分離面演算部で解析された分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する危険度演算部と、
前記災害・事故・補修発生危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定部と、
前記n次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に予め設定されたカテゴリー区間を組み合わせて,又はn次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に入力されるカテゴリー区間を組み合わせて,モデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成部と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成部と、
前記抽出されたルールを出力する出力部と、
を有し、前記抽出されたルールを出力して災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載の防災計画支援システムでは、観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面を解析する分離面演算部と、
この分離面演算部で解析された分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する危険度演算部と、
前記災害・事故・補修発生危険度に対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式を基準として、該当する前記災害・事故・補修発生危険度を抽出すると共に、この抽出された前記災害・事故・補修発生危険度に対応する前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データを代表データとして抽出する代表データ抽出部と、
この代表データを学習データとし,この代表データにおける災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる代表データ分離面を解析する前記分離面演算部と、
この分離面演算部で解析された代表データ分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生代表データ危険度として演算する前記危険度演算部と、
前記災害・事故・補修発生代表データ危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定部と、
前記n次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に予め設定されたカテゴリー区間を組み合わせて,又はn次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に入力されるカテゴリー区間を組み合わせて,モデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成部と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成部と、
前記抽出されたルールを出力する出力部と、
を有し、前記抽出されたルールを出力して災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載の防災計画支援プログラムでは、コンピュータによって、災害・事故・補修の発生・非発生のルールを生成して出力するために実行されるプログラムであって、
コンピュータに、観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離(但し、この距離は、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正としてもよいし、あるいは前記原点側にある場合を負としてもよい。)を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する危険度演算工程と、
前記災害・事故・補修発生危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定工程と、
前記n次元の災害・事故・補修発生要因に対し,この要因に関する属性値に対するカテゴリー区間を設け,この要因毎のカテゴリー区間を組み合わせてモデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成工程と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又は条件及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又は条件を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成工程と、
前記抽出されたルールを出力する出力工程と、
を実行させて災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に記載の防災計画支援プログラムでは、コンピュータによって、災害・事故・補修の発生・非発生のルールを生成して出力するために実行されるプログラムであって、
コンピュータに、観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離(但し、この距離は、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正としてもよいし、あるいは前記原点側にある場合を負としてもよい。)を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する第1の危険度演算工程と、
前記災害・事故・補修発生危険度に対する所望のしきい値又は条件を基準として、該当する前記災害・事故・補修発生危険度を抽出すると共に、この抽出された前記災害・事故・補修発生危険度に対応する前記要因毎のn次元の観測・点検データを代表データとして抽出する代表データ抽出工程と、
この代表データを学習データとし,この代表データにおける災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる代表データ分離面を解析する分離面演算工程と、
この分離面演算工程で解析された代表データ分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生代表データ危険度として演算する第2の危険度演算工程と、
前記災害・事故・補修発生代表データ危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定工程と、
前記n次元の災害・事故・補修発生要因に対し,この要因に関する属性値に対するカテゴリー区間を設け,この要因毎のカテゴリー区間を組み合わせてモデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成工程と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又は条件及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又は条件を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成工程と、
前記抽出されたルールを出力する出力工程と、
を実行させて災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とするものである。
【0016】
請求項7に記載の防災計画支援プログラムでは、コンピュータによって、災害・事故・補修の発生・非発生のルールを生成して出力するために実行されるプログラムであって、
コンピュータに、観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面を解析する分離面演算工程と、
この分離面演算工程で解析された分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離(但し、この距離は、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正としてもよいし、あるいは前記原点側にある場合を負としてもよい。)を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する危険度演算工程と、
前記災害・事故・補修発生危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定工程と、
前記n次元の災害・事故・補修発生要因に対し,この要因に関する属性値に対するカテゴリー区間を設け,この要因毎のカテゴリー区間を組み合わせてモデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成工程と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又は条件及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又は条件を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成工程と、
前記抽出されたルールを出力する出力工程と、
を実行させて災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とするものである。
【0017】
請求項8に記載の防災計画支援プログラムでは、コンピュータによって、災害・事故・補修の発生・非発生のルールを生成して出力するために実行されるプログラムであって、
コンピュータに、観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面を解析する第1の分離面演算工程と、
この第1の分離面演算工程で解析された分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離(但し、この距離は、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正としてもよいし、あるいは前記原点側にある場合を負としてもよい。)を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する第1の危険度演算工程と、
前記災害・事故・補修発生危険度に対する所望のしきい値又は条件を基準として、該当する前記災害・事故・補修発生危険度を抽出すると共に、この抽出された前記災害・事故・補修発生危険度に対応する前記要因毎のn次元の観測・点検データを代表データとして抽出する代表データ抽出工程と、
この代表データを学習データとし,この代表データにおける災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる代表データ分離面を解析する第2の分離面演算工程と、
この第2の分離面演算工程で解析された代表データ分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生代表データ危険度として演算する第2の危険度演算工程と、
前記災害・事故・補修発生代表データ危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定工程と、
前記n次元の災害・事故・補修発生要因に対し,この要因に関する属性値に対するカテゴリー区間を設け,この要因毎のカテゴリー区間を組み合わせてモデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成工程と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又は条件及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又は条件を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成工程と、
前記抽出されたルールを出力する出力工程と、
を実行させて災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、災害危険箇所や施設・設備・建造物において得られた観測・点検データをそのままラフ集合として用いて災害・事故・補修の発生・非発生を評価するのではなく、前段階として観測・点検データとSVM解析の分離面を用いて危険度の設定を行い、その後にラフ集合を生成し、先の危険度のランクに応じて、災害・事故・補修の発生・非発生の評価ルールを設定するため、危険度ランクに応じた汎用性の高い評価ルールを設定することができる。
さらに、前段階として観測・点検データとSVM解析の分離面を用いて観測・点検データのうち、客観的にデータの一部を代表データとして抽出し、さらにその代表データを用いて再度SVM解析の分離面を構築する発明も創出している。
この発明の場合、代表データによる分離面を基に、観測・点検データに対して危険度の設定を行い、その後にラフ集合を生成し、先の危険度のランクに応じて、災害・事故・補修の発生・非発生の評価ルールを設定するため、観測・点検データに含まれるノイズデータを削除して客観的かつ高精度な評価ルールを設定することが可能であると同時に、危険度ランクに応じた汎用性の高い評価ルールを設定することができる。
危険度ランクに応じた高精度で汎用性の高い評価ルールを設定して、これを出力することで、この評価ルールを用いて任意の危険箇所の観測・点検データが、いずれの評価ルールに該当するかを求めることができ、その該当した評価ルールに基づいた危険度の設定が可能となり、補修の要否や災害・事故の発生・非発生の評価に供することができ、もって、補修工事などの優先順位付けを行い、効率的な防災計画の立案支援をすることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る防災計画支援システムにおいては、災害・事故・補修のルールの生成のための代表データの抽出と危険度の設定にSVMを利用し、また、災害・事故・補修のルールの生成にはラフ集合を用いた。そこで、本実施の形態に係る防災計画支援システムについて説明する前に、まず、SVMとラフ集合について説明を行う。
SVMとは1995年にVapnikらによって提案された手法で、現在、最も強力なパターン分類手法として注目されているものである。SVMでは、線形分離不可能なデータ群を、非線形関数を用いることにより高次元特徴空間にマッピングし、線形分離可能な状態とすることで明確に分離する機能を持つ。この時、高次元特徴空間でデータを分離する面を分離超平面と呼ぶ。この分離超平面の概念を図1に示す。なお、本願では、この分離超平面を単に分離面という。
この機能を利用し、災害・事故・補修の発生・非発生を判別する分離面と各データとの距離を算出することで危険度を評価することができる。この分離面と各データとの距離を算出して危険度を評価する概念を図2に示す。本願ではこの危険度評価手法を応用し、災害・事故・補修のルールを求める上で元の観測・点検データの代表となり得る代表データ(災害・事故・補修発生データとしてはより危険度の高いもの、非発生データとしてはより安全度の高いもの)を抽出する作業を行う場合と行わない場合の両方について発明し、実施の形態においては、代表データを抽出する場合を中心に説明している。
なお、データ点と分離面との距離についてはあらためて説明する必要もないと思われるが、データ点の座標から分離面に対して垂線を下ろし、その長さを距離とするものである。但し、図2では、座標として危険側を正方向とし、分離面からデータ点に向かって距離(f(x))を計算しているため、すなわちベクトルとして考えているため、データ点が分離面から正方向へ離れるほど距離は負値として大きくなり、逆にデータ点が分離面から負方向へ離れるほど(座標原点に近くなるほど)正値として大きくなっている。本実施の形態においては、このような座標の採り方をしているものの、逆に座標として安全側を正方向としている場合には、距離が負値の方が安全となり、正値の方が危険となることは言うまでもない。
【0020】
次に、ラフ集合について説明する。図3に、ラフ集合の概念図を示す。全体集合を2つの要因(要因1及び要因2)を用いてそれぞれ3つのカテゴリー区間を設け、それぞれの組合せを考えると9個の領域に区分したモデルが形成される。このモデルに対して、図3に示されるとおり、災害・事故・補修の発生・非発生に関するデータがプロットされている。このように、例えば災害・事故・補修の発生・非発生に関する要因に基づいてカテゴリー区間を設けて、マトリクス状に区分された領域とその領域中にプロットされるデータをまとめて「ラフ集合」という。
図3に示されるラフ集合では、前述のとおり9個の領域に区分しても部分集合は完全に分離されていない。このように完全に分離されない集合をラフ集合と呼んでいる。これらの要因によって集合が区分された時、同じ領域内のデータがすべて同種であるデータを整合データ(図3においてハッチングされている部分内のデータ)といい、混在するデータを矛盾データという。これらの要因によって集合が区分されたとき、同じ領域内のデータがすべて同種である領域をルールとして考えることができる。図3では、発生ルールとしては、ルールA,Bが存在し、非発生ルールとしては、ルールC〜Fが存在している。
なお、ルールの設定に用いる要因の組合せを評価する指標としては、次式(1)に定義される整合度を用いている。
【0021】
【数1】

【0022】
この整合度は、先に説明したカテゴリー区間名(例えば、カテゴリー区間のそれぞれに充てた通し番号を示す)を属性値として置き換え、災害・事故・補修の発生・非発生の実績を決定属性値(例えば、災害・事故・補修発生の場合を1、非発生の場合を0とした値を示す)として個別のデータを分類し、決定属性値の異なる矛盾データを有する領域を矛盾領域、他を整合領域として、整合度をその領域内における要因の組合せを評価する指標として用いているのである。
また、設定されたルールの精度と汎用性を評価する指標としては、それぞれ式(2)、(3)に示す確信度とサポートが用いられる。
【0023】
【数2】

【0024】
【数3】

【0025】
例えば図3において、要因1と要因2のカテゴリー区分がそれぞれ2と1である場合、すなわち、中央下の区分の領域は非発生ルールとなり、この領域内の確信度は100%(3/3)、サポートは14%(3/22)となる。従って、このルールに適合する箇所は、すべて発生しないデータのみで構成されており、正確性は100%、全データに占める割合は14%に相当することを意味している。
【0026】
次に、このルールの領域の拡張について説明を加える。
土砂災害や建造物の劣化等の自然現象の解析にラフ集合を用いる場合、作成されたルールの1つ1つが説明できる範囲は少なく、データベースの一部しか説明できないことから、有用なルールとは言い難い場合がしばしば生じる。そのような場合、ルール領域の拡張を行うことが効果的である。
ルール領域の拡張の概念としては、例えば図4(a)に示すハッチング領域が発生ルールである場合、図4(b)に示すように、より危険と考えられる部分集合を含む領域を発生ルールとすることで(カテゴリー区分に「以上」の概念を与える)、ルールに含まれる発生箇所数が増加し、汎用性のあるルールとなる。非発生ルールにおいても同様であるが、この場合には、カテゴリー区分に「以下」の概念を与えるように実施する。本願においてもSVMによって抽出された代表データに対しルール領域の拡張を用いることで、より汎用性の高いルールの作成を行うことも可能である。
以上、本願発明の実施の形態に係る防災計画支援システムを説明する上で重要な概念であるSVMとラフ集合について説明した。
【0027】
次に、図5及び図6を参照しながら本発明の実施の形態に係る防災計画支援システムについて説明する。
図5は防災計画支援システムの構成図であり、図6は防災計画支援システムにおいて実行される演算の工程を示すフローチャートである。
図5において、防災計画支援システム1は、入力部2、SVM解析部3、ラフ集合解析部6、解析データベース4、データベース5及び出力部7から構成されている。
入力部2は、解析データベース4やデータベース5に格納される観測・点検データ8や解析条件データ9をはじめとして、解析データベース4及びデータベース5内に示される各データを予め入力して読み出し可能に格納しておくために用いられる。また、SVM解析部3に対して、観測・点検データ8や解析条件データ9を直接入力するためにも用いられる。入力部2としての具体例には、キーボード、マウス、ペンタブレット、光学式の読み取り装置あるいは、コンピュータ等の解析装置や計測機器等から通信回線を介してデータを受信する受信装置など複数種類の装置からなり目的に応じた使い分け可能な装置が考えられる。
また、出力部7としては、具体的にはCRT、液晶、プラズマあるいは有機ELなどによるディスプレイ装置、あるいはプリンタ装置などの表示装置、さらには外部装置への伝送を行うためのトランスミッタなどの発信装置などが考えられる。
SVM解析部3は、解析条件設定部10、分離面演算部11、危険度演算部12、代表データ抽出部13及びランク設定部14から構成されるものである。
解析条件設定部10は、SVMの解析を実行するための解析条件を設定するものであり、入力部2から直接入力される解析条件データ9を読み込み、これを解析条件として設定したり、あるいは予め解析データベース4に入力部2から格納された解析条件データ9を解析データベース4から読み出して設定することも可能である。
SVM解析における解析条件としては、例えば後述するソフトマージン法の場合では、誤判別を許容する程度を示すCとガウシアンカーネルの半径(データの影響度)であるrの2つのパラメータの設定が必要であり、これらが解析条件として含まれる。あるいは、後述する危険度の演算において、代表データを抽出するためのしきい値又はしきい値を複数組み合わせたり、あるいはこれらのしきい値と論理式を組み合わせた条件なども解析条件として含まれるものである。すなわち、解析条件とは、SVM解析を実行する場合に、観測・点検データ8や分離面を構成する分離面関数データ15あるいは危険度の演算を実行するための危険度関数データ16以外に必要となる定数やパラメータあるいはしきい値又は条件などの条件に関する広く一般的なデータを意味しており、これらがSVM解析に際して設定されるようにするための要素を解析条件設定部10としているのである。
【0028】
SVM解析部3の分離面演算部11は、図6にステップS1として示すように、災害危険箇所や施設・設備・建造物等の観測・点検対象物における災害・事故・補修の発生・非発生に関して観測・点検されたデータを学習データ17として、また、観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として、それぞれ分離面関数データ15に入力し、災害・事故・補修の発生の可能性の有無を分離する分離面を演算し、その演算によって得られた分離面データ18を読み出し可能にデータベース5に格納するものである。
なお、学習データ17は、観測・点検対象物において観測・点検されたデータであるが、そのデータの内容は、災害・事故・補修の発生・非発生に関する要因に対して観測・点検された数値であり、学習データ17や観測・点検データ8では、それらの要因の数(nとする。n≧2)に応じた次元と、その次元に応じた多次元の座標軸を概念して、この座標軸によって形成される座標空間に学習データ17や観測・点検データ8をプロットして、同じくn次元空間中に概念される分離面との距離をこの後説明する危険度演算部12によって演算している。
前述のとおり、学習データ17と観測・点検データ8は、同一のデータを用いてもよいし、異なるデータ、すなわち観測・点検した地点・箇所が同一で異なる時期に得られたデータあるいは異なる地点・箇所で観測・点検して得られたデータのいずれでもよい。
【0029】
また、本実施の形態においては、分離面関数データ15は解析データベース4に、学習データ17はデータベース5にそれぞれ予め格納されており、分離面演算部11は、それぞれ読み出して用いるが、これらは解析データベース4やデータベース5に格納されていなくとも、分離面演算部11が解析を実行する際に入力部2を介して入力されるようにしてもよい。以下、本実施の形態において解析データベース4やデータベース5に格納されているデータを用いる場合においても同様に、これらのデータベースから読み出して用いてもよいし、別途必要に応じて外部から入力部2を介して入力するようにしてもよい。
危険度演算部12では、図6にステップS2として示すように、分離面演算部11によって演算された結果得られたあるいは予めデータベース5に格納された分離面データ18によって構成される分離面に基づいて、観測・点検データ8までの距離を演算する。具体的には、距離を演算するための関数である危険度関数データ16に、分離面データ18と観測・点検データ8を入力して、n次元の座標空間において分離面と観測・点検データ8のプロット点との距離を演算している。この距離を危険度データ19として読み出し可能にデータベース5に格納する。
この距離の概念については図2を用いて先に説明したとおりである。図2中にf(x)として表現されている関数に関するデータが、図5中に危険度関数データ16として示されているものである。そして、この距離を危険度として、観測・点検データ8に対する危険度を判断するものである。本願では、便宜上危険度として危険性に対する指標としているが、逆に安全性に対する指標として安全度としてもよいことは言うまでもない。
【0030】
次に、代表データ抽出部13は、図6にステップS3として示されるとおり、危険度演算部12において演算された危険度(危険度データ19)に対して、所望に設定される危険度に対するしきい値又は条件を基準として、危険度の選別を実行し、その選別された危険度に対応する観測・点検データ8をデータベース5から代表データ20として抽出するものである。危険度に対するしきい値又は条件は、予め解析条件データ9として解析データベース4に格納しておいて代表データ抽出部13が読み出して用いるか、解析時に入力部2を介して代表データ抽出部13が読み込むようにしておくとよい。
この代表データ20を抽出するための危険度に対するしきい値又は条件については、後にさらに詳細に説明する。
抽出された代表データ20は、読み出し可能にデータベース5に格納される。
次に、再度分離面演算部11によって演算が実行される。分離面演算部11は、図6にステップS4として示されるように、危険度データ19を用いて抽出された代表データ20をデータベース5から読み出して、これを学習データとして分離面関数データ15に代入することで再度分離面を演算する。代表データを用いて再度演算された代表データ分離面は、代表データ分離面データ21としてデータベース5に読み出し可能に格納される。
また、危険度演算部12においても再度演算が実行される。危険度演算部12では、図6にステップS5として示されるように、代表データ危険度の演算を行う。この演算では、分離面演算部11によって演算された結果得られ、データベース5に格納された代表データ分離面データ21によって構成される分離面に基づいて、観測・点検データ8からの距離を演算する。具体的には、距離を演算するための関数である危険度関数データ16に、代表データ分離面データ21と観測・点検データ8を入力して、n次元の座標空間において分離面と観測・点検データ8のプロット点との距離を演算している。この距離を代表データ危険度データ22として読み出し可能にデータベース5に格納する。
このとき、観測・点検データ8としては、先に学習データ17と観測・点検データ8との関係において説明したとおり、代表データ20が抽出された観測・点検データ8と同一のデータを用いてもよいし、異なる観測・点検データ8を用いてもよい。すなわち、観測・点検した地点・箇所が同一で異なる時期に得られたデータあるいは異なる地点・箇所で観測・点検して得られたデータのいずれでもよい。但し、最終的な評価の対象としての観測・点検データは、代表データ20を用いて設定された分離面を用いて危険度ランクが設定され、ラフ集合を生成して、評価ルールが生成されるデータである。
【0031】
さらに、SVM解析部3のランク設定部14では、図6にステップS6として示されるように、データベース5から代表データ危険度データ22を読み出して、この代表データ危険度データ22に基づいて、それに対応する観測・点検データ8の危険度ランクの設定を行う。この危険度ランクの設定は、解析データベース4から読み出した所望の解析条件データ9の中の代表データ危険度データ22に対するしきい値を基準に判別される。設定されたそれぞれの観測・点検データ8に対する危険度ランクは、危険度ランクデータ23としてデータベース5に読み出し可能に格納される。
具体的なしきい値としては、危険度ランクの分け方、すなわち、4ランクとするのかあるいは6ランクとするのかによって、そのしきい値は異なる。例えば、4ランクとする場合では、これまでの安全と危険という2つの領域に加えて、「比較的安全」と「比較的危険」を加えて、4ランクとするが、そのしきい値としては、SVM解析で観測・点検データ8から分離面までの距離をf(x)として、f(x)<-1を「危険」、-1≦f(x)<0を「比較的危険」、0≦f(x)≦1を「比較的安全」、-1<f(x)を「安全」とするなどがある。従って、しきい値としては-1,0,1となる。
なお、これまでの説明は代表データ20を抽出する場合について説明したが、例えば観測・点検データ8の信頼性が高く、ノイズを削除して代表データ20を抽出する必要がない場合には、図6のステップS3からステップS5までを実行することなく、ステップS2で得られた危険度データ19を後いて、ステップS6のランク設定部14において危険度ランクを設定してもよい。
【0032】
ラフ集合解析部6のラフ集合生成部26では、図6のステップS7として示されるように、評価対象となる代表データ20の元データである観測・点検データ8をデータベース5から読み出し、ラフ集合を生成する。この観測・点検データ8は、先に代表データ20を抽出した観測・点検データ8と同一であってもよいし、異なるものであってもよいが、ここでは代表データ20を抽出した観測・点検データ8と同一のデータとして説明する。
具体的には、まず、観測・点検データ8に対応するn次元の災害・事故・補修発生要因に対し、この要因に関する属性値に対するカテゴリー区間を設ける。このカテゴリー区間については、先にラフ集合の説明をした際に説明したとおりである。このカテゴリー区間は、予め災害・事故・補修発生要因毎に設定しておいて、これを解析条件データ9として解析データベース4に格納しておくか、あるいは、ラフ集合生成部26による解析時に、出力部7を介してカテゴリー区間の設定について問うように示して、入力部2を介してカテゴリー区間の入力を可能にしておくようにするとよい。そして、この要因毎のカテゴリー区間を組み合わせてモデルを形成する。これも先にラフ集合について説明したとおりである。複数のカテゴリー区間を備えた要因の組合せを本願ではモデルと呼んでいる。さらに、このモデルに代表データ20の元データである観測・点検データ8の内容を代入して、ラフ集合として形成し、ラフ集合データ24として読み出し可能にデータベース5に格納するものである。
【0033】
このようにまず代表データ20を抽出して分離面を構築し、ラフ集合を生成してラフ集合データ24を得ることの作用及び効果について図7乃至図9を参照しながら説明する。
図7(a)は代表データを抽出する前の状態のデータで構築した分離面の概念図であり、(b)はそれに対応したルールの概念図である。図8(a)は代表データで構築した分離面の概念図であり、(b)はそれに対応したルールの概念図である。図9は代表データの概念図である。
図7(a)に示す図では、実線で示される縦軸横軸の2つの要因によってプロットされる発生データと非発生データが、原点から離れる危険側と原点に近い安全側にきれいに分離していないため、分離面はそれらのデータの間を縫うように演算されることになる。これは、測定地点に特有の局所的あるいは特例的な条件によって災害が発生・非発生となっているデータ(以下、ノイズデータという)を多く含んだ状態のデータで分離面を構築しているためである。
このような分離面を用いてルールを設定すると、図7(b)のようになる。この図7(b)では、中央から右側と上側に向かう矢印で囲まれる部分が図4を参照して説明した拡張の概念を含めて設定された危険ルールとして示されており、それらの2つの矢印の根元にハッチングされている部分が、拡張前の危険ルールである。また、同様に、右下にハッチングされている部分が拡張前の安全ルールであり、その安全ルールから左側と下側に伸びる2つの矢印で囲まれる部分が拡張後の安全ルールである。
ところが、この図7(b)に示されるルールでは、拡張後の危険ルールにSVMでは安全と評価されたデータが含まれたり、逆に、拡張後の安全ルールにもSVMで危険と評価されたデータが含まれているなどの矛盾を生じている。
そこで、代表データ20を抽出して分離面を構築することを考えたのである。代表データ20を抽出した後のデータを用いると図8(a)のような分離面が設定され、ルールを設定した場合も図8(b)に示されるようにSVMによる評価と設定されたルールの矛盾が解消されている。このような矛盾を生じさせるノイズデータを削除することで、なるべく多くの危険個所等で適用可能な汎用性の高いルールを提供することが可能なのである。
従って、いかにノイズデータを排除するかということが、重要になってくる。そこで、図6のステップS3の説明時に残しておいた代表データ20の抽出のための危険度に対するしきい値について図9を参照しつつ、説明を加える。
ノイズデータはその周辺のデータと現象(発生・非発生)が異なることから、これらのデータの境界に分離面が構築される。これらのデータはいずれも分離面に近接したデータであるため、分離面の距離f(x)はいずれも|f(x)|≦1となる。本願では、この特性を用いて|f(x)|≦1となるデータをノイズデータとして削除することとした。すなわち、危険度に対するしきい値としては、分離面距離が±1ということになる。このような状態を示したのが図9である。実線で示される分離面(f(x)=0)に対して、点線で示されるのが、分離面距離が±1の部分(f(x)=1,-1)である。実線と点線の間で示される領域が|f(x)|≦1となり、この領域に含まれるデータをノイズデータとして削除して、代表データを抽出しているのである。
なお、代表データの抽出はノイズデータを削除するのみではなく、元のデータベースにおける発生・非発生データの割合を乱さないことが有効であるため、これらの割合に対するしきい値も所望に設定して、分離面の距離に関するしきい値と組み合わせることで、これらのしきい値の組み合わせを条件として設定してもよい。
【0034】
このようにして抽出された代表データ20が、図8(a),(b)に示されている黒四角で示される発生データと白丸で示される非発生データであり、ラフ集合データ24が、図8(b)に、縦軸側の要因と横軸側の要因に基づいて、4つのカテゴリー区間によってマトリクス状に区分された領域中に、代表データ20がプロットされた状態のデータとして示されている。
なお、この説明では代表データ20が抽出された状態でラフ集合を説明しているので、矛盾データがそれぞれのモデルで存在していないが、先のステップS7のラフ集合生成部26に関する説明では、元データである観測・点検データ8を用いてラフ集合を生成しているので、矛盾データが含まれている可能性がある。
【0035】
次に、ラフ集合解析部6のランク別評価ルール生成部27では、SVM解析部3のランク設定部14を用いて設定された危険度ランクデータ23と、ラフ集合生成部26で生成されたラフ集合データ24を用いて、危険度ランク別の災害・事故・補修の発生・非発生に関するルールを生成し、そのデータをランク別評価ルールデータ25としてデータベース5に読み出し可能に格納する。
具体的には、ランク別評価ルール生成部27は、ラフ集合データ24に対して、危険度ランクデータ23に沿って、危険度ランク毎に、ラフ集合のモデルに含まれるそれぞれの要因のカテゴリー区間毎の組合せである個々のルールにおける確信度(前述の式(2))とサポート(前述の式(3))を演算する。そして、確信度に対して所望に設定されたしきい値又は条件及び/又はサポートに対して所望に設定されたしきい値又は条件と比較しながら、いずれか、あるいはいずれをも満足する要因とカテゴリー区間の組合せ(ルール)を検索して抽出する。従って、個々のルールとして、1つのルールであるか、あるいは複数のルールとなるかは、確信度及び/又はサポートのしきい値又は条件にもよることになる。これらの確信度及び/又はサポートのしきい値又は条件は、予め定めて、解析条件データ9として解析データベース4に格納しておくとよい。
その際に、さらに、前述のルールの拡張を実行してもよい。その際にも、ルールの拡張を許容するための確信度及び/又はサポートに関するしきい値又は条件を予め定めておき、これを解析条件データ9として格納しておき、解析時に読み出すようにしてもよい。
あるいは、確信度、サポート及びこの拡張のためのしきい値又は条件をその解析の際に入力部2を介して入力するようにしてもよい。もちろん、ルールの設定時にも入力部2を介して入力するようにしてもよいことは同様である。
危険度ランク毎に、確信度及び/又はサポートに対するしきい値又は条件を満足する要因とカテゴリー区間の組合せ(ルール)が求まると、ランク別評価ルール生成部27は、これをランク別評価ルールデータ25としてデータベース5に読み出し可能に格納する。
このようにして得られた危険度ランク毎のルールは、出力部7を介して出力され、従って、任意の危険箇所の観測・点検データが、いずれの評価ルールに該当するかを求めることができ、その該当した評価ルールに基づいたその危険箇所に対する危険度の設定が可能となり、補修の要否や災害・事故の発生・非発生の評価に供することができる。
このようなことから、本実施の形態に係る防災計画支援システム1の利用者に対して、災害・事故の危険性や補修の優先性を検討可能にして、それらに関する事業の計画を支援するものである。
図10は、危険度ランク毎にルールが設定され、そのルールに含まれる観測・点検データ8を模式的に示す図である。
実線で示される分離面(f(x)=0)に対して、分離面距離が−1(f(x)=-1)の点線で示される面より右上の領域が危険な領域であり、点線で示される面から分離面までの領域が比較的危険な領域である。同様に、分離面距離が+1(f(x)=1)の点線で示される面より左下の領域が安全な領域であり、点線で示される面から分離面までの領域が比較的安全な領域である。これらの4つの危険度ランクの領域毎に独立したルールが適用され、それを用いて観測・点検データ8が評価されている。
この図10に示される本実施の形態に係る技術は、図7(b)あるいは図8(b)で示される状態と比較することで、意義が端的に明確になる。すなわち、図7(b)で示される状態は、代表データを抽出しておらず、しかも危険度ランクを設定せず全体でルールを定めているので、矛盾するデータが含まれているうえ、ルールも包括的で全体として観測・点検データに対する評価の精度が低い。また、図8(b)では代表データを抽出することで矛盾するデータが排除される分、精度は高まるものの危険度ランクを設定することなく、全体でルールを定めているので、包括的なルールとなりやはり評価精度に影響が残る。
一方、図10に示される場合では、それぞれ危険度ランク毎にルールが設定されており、評価領域を細分化している。従って、観測・点検データに対する評価の精度が高い。この評価精度の高さへの寄与は、代表データを抽出することとは技術的に異なる要素の寄与であるため、代表データを抽出することを加えると、更に評価精度を向上させることが可能である。
すなわち、危険度ランク毎に評価するということは、そのランクの相違によって、異なるカテゴリー区間がルールとして設定されることから、また、細分化された危険度ランク毎の評価を統合させることで、より高精度に、かつ、より広範に整合性の高い領域をカバーすることができる。
【0036】
なお、この他、SVM解析部3及びラフ集合解析部6に含まれるそれぞれの構成要素は、出力部7に対してそれぞれが演算、抽出、生成、設定等するデータを出力することができることは言うまでもない。
また、本実施の形態においては、システム発明として説明したが、図5に示されるシステムを汎用のコンピュータと捉え、これを動作させるプログラムとして、図6に示すフローチャートを実行させることを考えると、上述の説明はコンピュータが各工程を実行しながら観測・点検データ8から代表データ20を抽出し、その代表データ20を基に危険度ランクを設定し、その危険度ランク毎の災害・事故・補修のルールを生成するプログラムについての実施の形態の説明として成立するものであり、このプログラムについての実施の形態に係る作用、効果については先に説明した防災計画支援システムに係る実施の形態に係る作用、効果と同様である。
【実施例1】
【0037】
以下、具体的なデータを用いた実施例について説明する。
本実施例では、昭和57年7月23日の長崎豪雨における土石流災害(以下、S57.7長崎豪雨災害という)の事例を用いて説明する(発生150渓流、非発生417渓流)。説明に用いる地形・地質要因および降雨要因は、表1に示す18要因とする。また、ラフ集合は連続値データを扱うことができないため、連続値データはカテゴリ値に離散化する必要がある。そのため、データの最大値、最小値等を考慮し、等間隔の5区分を基本としてカテゴリ区分を決定した。各要因のカテゴリ区分を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
上記データを用い、図6のフロー図に示す手順に従って、災害発生危険度に応じた評価ルールの設定を実施した。
まず、SVM解析における解析条件として、ソフトマージン法の誤判別を許容する程度を示すCとガウシアンカーネルの半径(データの影響度)であるrの2つのパラメータの設定を予め行い、これを解析データベース4に解析条件データ9として格納しておく必要があるので、これらについて説明する。
SVMの分析を行う際には、最適な解析を行うためのパラメータスタディが必要である。ソフトマージン法のSVMでは、誤判別の度合いを調整するCとガウシアンカーネルの半径(データの影響度)であるrの2つのパラメータを設定する必要がある。本実施例ではC=5,10,50,100,200,300,400,500の8ケース、r=0.1,0.5,1,2,3,4,5の7ケースの計56ケースでパラメータスタディを行った。パラメータスタディでは、次式に定義する的中率により各ケースにおいて構築される分離面の精度(いかに正確にデータ分類が行われるか)を検証した。
【0040】
【数4】

【0041】
パラメータスタディの検討結果を表2および表3に示す。ここで、SVMによる危険度設定に用いるパラメータは、的中率100.0%のパラメータセットのうち、サポートベクターとなるデータ(|f(x)|≦1となるデータ)数が最も少なくなるC=500、r=4の組み合わせとした(表2、表3)。そして、これを解析条件データ9として解析データベース4に格納した。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
次に、図6のステップS3として記載される代表データ抽出部13による代表データの抽出についてであるが、代表データ20の抽出は、先のパラメータを用いて設定したf(x)値に基づいて実施される。代表データ20は、分離面に近接するノイズデータを削除したデータであることから、災害発生データとしてはより危険なもの(f(x)値がより小さいもの)、非発生データとしてはより安全なもの(f(x)値がより大きいもの)を抽出することになる。ここで、抽出する代表データ20の割合は、前述のとおり元のデータベースにおける発生・非発生データの割合を乱さない方法が最も有効であることから、そのようにした。
上記パラメータに基づくSVM解析により算出したf(x)値に着目すると、f(x)値が−1未満となる発生データ数は32個であった(表3)。そのため、全データにおける発生・非発生データの比率(150:417)の関係が保持できるよう、非発生データからはf(x)値が1より大きくなるデータのうちf(x)が大きい87個を代表データとして抽出した。
すなわち、選択のしきい値として|f(x)|≦1を選択しつつ、さらに、全データに対する発生・非発生データの比率を維持するように非発生データからはf(x)値が1より大きくなるデータのうちf(x)が大きい87個を代表データとして抽出するという条件を基に代表データ20を選択している。通常、発生データと非発生データでは非発生データが多いため、発生・非発生データの比率を維持する際に選択するための条件としては、発生データを先に選択した後に非発生データを選択する際に設定する場合が多いが、その逆であってももちろんよい。
次に、図6のステップS4として記載される分離面演算部11による代表データ分離面の演算についてであるが、代表データ20より構築した分離面の精度を表4に示す。
表より、代表データ20については完全分離が可能であるとともに、元データである観測・点検データ8に対する的中率も75.8%と高い水準を示していることが確認された。そのため、代表データ20より構築した分離面を用いた場合であっても、元データの危険度を精度良く設定できるものと考えられる。
【0045】
【表4】

【0046】
代表データより構築した分離面を用いて元データすべてに対して危険度の設定を行った。ここで、SVM解析により算出されたf(x)値と危険度の関係は、f(x)値が負の値を取れば危険と評価でき、f(x)値が正の値を取れば安全と評価することができる。また、|f(x)|≦1のサポートベクターとなるデータは分離面に近接したデータ群であることから、安全よりの危険(-1≦f(x)<0のデータ)、もしくは危険よりの安全(0≦f(x)≦+1)と考えることができる。これらを踏まえ、災害発生危険度に応じた評価ルールの設定における教師値はf(x)<-1を「危険」、-1≦f(x)<0を「比較的危険」、0≦f(x)≦+1を「比較的安全」、+1<f(x)を「安全」の4つの危険度ランクに区分して用いることとした。
設定した危険度ランクと土石流の発生率との関係を図11に示す。図より、土石流の発生率は危険度ランクが上昇するにつれて増加していることが確認されたことから、設定した危険度ランクは実際の災害発生状況と一致する妥当なランクであると考えられる。また、これにより代表データ20を用いて構築した分離面より設定した危険度は元データにおける災害発生状況を精度よく表わすことが可能で有効なシステムであることが明らかとなった。
【0047】
ここで、本願発明に特徴的な危険度ランク毎にルールを設定するということの意味について実施例を参照しながら説明を加える。
本願発明のように、ラフ集合を用いて汎用的かつ高精度という良いルールを導き出すためには、例えば土砂災害の場合では、土石流の発生・非発生に対して分離性が高い要因を多数含む要因の組み合わせを用いてルールを設定することが有効である。
しかも、設定するルールが発生・非発生ではなく4つに区分した危険度ランクに対応したものであることを考慮すると、土石流の発生・非発生に対する分離性が高いことに加え、4つに区分した危険度ランクに対しても分離性の高い要因を選定する必要がある。
そこで、まず、分離性の高い要因の選定について他の具体例を用いて説明する。例えば、土石流の発生・非発生に対して分離性が高い要因として示される8要因(主渓流長、流域長、流域幅、渓流方位、流域最大傾斜、源頭部面積、地質小分類、実効雨量(半減期72hr))があるので、これを対象に、危険度ランクに対する分離性の検証を行った。ここで、危険度ランクに対する分離性が高い要因とは図12に示す流域最大傾斜のようにカテゴリ値の増加にともなって危険が含まれる割合と比較的危険が含まれる割合の双方が単調増加する要因とする。流域最大傾斜と同様に、危険が含まれる割合が単調増加する要因を図13に示し、比較的危険が含まれる割合が単調増加する要因を図14に示す。図より、流域長、流域幅、流域最大傾斜、地質小分類の4要因が設定した危険度ランクに対して分離性が高い要因であることが確認された。
すなわち、複数の危険度ランクを設定することで、分離性の高い要因を8要因から4要因に絞り込み、そして特定(流域長、流域幅、流域最大傾斜、地質小分類)することが可能であることがわかった。
【0048】
本願のようにラフ集合を用いた発明における解析では、一般的に整合度を高くするとデータの質の低下は防げるものの、現象を説明するために必要となる要因数が増えるため、結果としてルールが煩雑になる。一方、整合度を低くすると現象を説明するために必要となる要因数が減らせるためルールの簡素化が期待できるが、データの質が低下することが懸念される。
本実施例ではデータの質の低下を防ぐため、整合度の要求水準を100.0%とし、当該要求水準を満足する要因の組み合わせのうち、最小要因数であり、かつ危険度ランクに対して分離性が高い要因を多数含む組み合わせ(最急渓床勾配、流域幅、流域形状比、渓流方位、流域最大傾斜、地質小分類、実効雨量(半減期72hr)の7要因)を用いてルールの設定を行った。
また、汎用性が高いルールを設定するため、ラフ集合の解析結果から得られたルールを基に、ルール領域の拡張およびルールの組み合せを行った。ここで、組み合せに用いる拡張ルールの要求水準は、危険度ランクの設定に用いた分離面の精度を踏まえ、確信度が75.0%以上のもののみとした。
【0049】
SVMの分析結果を用いて設定した危険度ランクに応じた評価ルールを元のデータベースに適用した場合の精度(以下、適用精度)を表5に示す。ここで、表中における整合データおよび矛盾データは、「安全」もしくは「比較的安全」のルールに対しては、非発生データを整合データ、発生データを矛盾データと評価している。
一方、「危険」もしくは「比較的危険」のルールに対しては、発生データを整合データ、非発生データを矛盾データと評価する。なお、表中においてルールを構成する要因のカテゴリー値は、各カテゴリーに含まれる最大、最小値を記載しており、「↓」「↑」の表記は、ルール領域の拡張の概念よりそのカテゴリー値以下、以上を意味している。また、表中の「*」についてはどのようなカテゴリー値でも良いことを意味する。表5より、設定した評価ルールは、最急渓床勾配、流域幅、流域形状比、渓流方位、流域最大傾斜、地質小分類、実効雨量(半減期72hr)の7つの要因から構成されている。当該ルールの実現象に対する精度は78.7%を示しており、危険度ランクの設定に用いた分離面の精度(75.8%)を若干上回る結果となっている。また、ルールの汎用性を示すサポートは100.0%となっていることから、当該ルールを用いることでS57.7長崎災害の事例のすべてを約8割の精度で説明することが可能である。
設定したルール内容に着目すると、「安全」と評価できる渓流と「比較的安全」と評価できる渓流の特徴は比較的類似した結果となっており、「渓床勾配及び流域最大傾斜が緩くて流域の規模が小さく、かつ安山岩質凝灰岩、輝石安山岩、第三紀層、下平閃緑岩類が分布する北向きの渓流であり、かつ長期降雨が少ない地域」という特徴を有する渓流は危険性が低いと評価することができる。この中でも「北向きの渓流」という特徴は「安全」のルールにのみ出現し、「第三紀層、下平閃緑岩類が分布する渓流」という特徴は「比較的安全」のルールにのみ出現していることから、危険性が低い渓流において危険度を区分する上で重要な指標であると考えられる。
一方、危険性が高いと評価される渓流の特徴に着目すると、これらの渓流は「渓床勾配及び流域最大傾斜が急な規模の大きい渓流であり、かつ角閃石安山岩が分布する地域の渓流」という特徴を有している。その中でも「角閃石安山岩が分布する地域」という特徴は、「危険」のルールにのみ出現していることから、危険性が高い渓流の危険度を区分する上で重要な指標であると考えられる。また、流域最大傾斜と流域幅に関しては「比較的危険」のルールよりも「危険」のルールの方がより危険側の条件となっており、「比較的危険」と「危険」の違いが明確に表れている。
また、評価ルールにより設定した危険度ランクと土石流の発生率との関係(図15)に着目すると、「安全」と評価された箇所では土石流の発生率が12.5%と低いが、危険側に区分されるにつれて土石流の発生率は上昇しており、最も危険側となる危険と評価される危険箇所では土石流の発生率が87.5%にまで上昇している。
また、実施例1に係る防災計画支援システムで設定した評価ルールに基づく土石流の発生率と特許文献1に開示されている方法で設定した評価ルールに基づく土石流の発生率を比較したグラフを図16に示す。この図16に着目すると、実施例1では、土砂災害の危険性が「安全」、「比較的安全」、「比較的危険」、「危険」という4つの区分に分けられており、この危険性を「危険」と「安全」という2つの区分での評価を行う特許文献1よりも実際の災害の発生・非発生に対する整合性が向上することも確認できる。そのため、設定した評価ルールは、実際の災害の発生・非発生に対して整合性の高い危険度ランクを把握できる有効なルールであると考えられる。
さらに、本実施例で理解されるように、危険度ランク毎にルールを分けたことで、危険度ランク毎にルールを構成する要因が異なる場合もあり、危険度の程度とより注意すべき重要な要因との関係を明らかにすることができるという優れた効果を端的に発揮していることが明確になっており、本願発明における独特の効果の一つであるといえる。
【0050】
【表5】

【実施例2】
【0051】
次に、実施例2として、危険度ランクを実施例1での4ランクから5ランクにした場合について説明する。
5区分での検討にあたっては、4区分の評価ルールにおける危険度ランクのうち0≦f(x)≦+1に該当する「比較的安全」をf(x)=0.5で2つに区分し、f(x)<-1を「危険」、-1≦f(x)<0を「比較的危険」、0≦f(x)≦+0.5を「比較的安全」、+0.5≦f(x)≦+1を「安全」、+1<f(x)を「特に安全」の5つの危険度ランクに区分することとした。設定した危険度ランクと土石流の発生率との関係を図17に示す。
5区分の評価ルールの設定を行った際と同様の手順により、危険度ランクに応じた評価ルールの設定を行った。設定した評価ルールの適用精度を表6に示す。ここで、表中における整合データおよび矛盾データは、安全側(特に安全、安全、比較的安全)のルールに対しては、非発生データを整合データ、発生データを矛盾データと評価している。
一方、危険側(危険、比較的危険)のルールに対しては、発生データを整合データ、非発生データを矛盾データと評価している。また、その他表中の標記については表5と同様である。
【0052】
【表6】

【0053】
表6より、設定した5区分の評価ルールは、最急渓床勾配、流域幅、谷深比、渓流方位、0次谷の数、流域最大傾斜、実効雨量(半減期72hr)の7つの要因から構成されている。当該ルールの実現象に対する精度は78.6%を示しており、4区分の評価ルールと概ね同等の結果となっている。一方、ルールの汎用性を示すサポートは98.1%と高い水準を示しているものの、4区分評価ルールにおけるサポートに比べては若干ではあるものの劣る結果となった。
このように5つの危険度ランクに沿って設定されたルールを用いても、4つの危険度ランクに沿って設定されたルールと同様に、災害や事故の発生危険度あるいは建造物の補修等の要否について定量的に把握することができ、防災事業や補修事業に対する優先順位を高精度かつ高汎用度をもって決定するための支援を行うことが可能である。
【実施例3】
【0054】
次に、実施例3として、2004年に実施された大阪環状線の路下点検データを用いて構造物補修の要否に関する評価ルールの設定例について説明する。
検討に用いる補修の発生に関係する要因としては9要因(ボルトの緩み、ボルトの欠損、異常音、排水管のつまり、排水管の損傷、漏水、止水工、伸縮本体の損傷、さび・腐食)を用いる。また、教師値については専門技術者判断に基づく補修の要否を用いる。
土砂災害を対象とした実施例1,2においては、局所的かつ特例的な条件により災害が発生・非発生となっているノイズを多く含むデータを用いたことから、ノイズデータを除いた代表データから構築した分離面に基づき、危険度の設定を行ったが、実施例3で対象とするデータは点検結果を踏まえて専門技術者が補修の要否を判断したデータであることから、ノイズは極めて少ないデータであると考えられる。そのため、実施例3においては、対象とするデータすべてを用いて構築した分離面に基づいて危険度を設定する。
これは、先に図6を参照しながら、ステップS3からステップS5を省略してステップS2で得られた危険度データ19を、ステップS6のランク設定部14を用いて危険度ランクを設定する場合に該当するものである。
SVMを用いて危険度の設定を行うにあたり、実施例1と同様に、誤判別の度合いを調整するCとガウシアンカーネルの半径(データの影響度)であるrの2つのパラメータの検討を行った。パラメータスタディの検討結果を表7および表8に示す。表より、的中率100.0%のパラメータセットのうち、サポートベクターとなるデータ(|f(x)|≦1となるデータ)数が最も少なくなる組み合わせは12通りあることが確認された。ここで、rはデータの影響度に関するパラメータであるため、一般的にrはより大きい値を用いることで、より汎用性を有した分離面が構築できる。一方、Cは誤判別の度合いを調整するパラメータであるため、大きな値を採用した場合、より完全分離に近い汎用性が乏しい分離面が構築される。そのためCはより小さい値を採用することが望ましい。それらを踏まえ本実施例では、C=50、r=5を用いた。
当該パラメータを用いて構築した分離面を用いて元データすべてに対して危険度の設定を行った。ここで、設定した危険度に応じた危険度ランクは実施例1と同様にf(x)<-1を「危険」、-1≦f(x)<0を「比較的危険」、0≦f(x)≦+1を「比較的安全」、+1<f(x)を「安全」の4つの危険度ランクに区分することとした
SVMによって設定した危険度ランクと補修の要否の関係を図18に示す。図より、補修箇所率(該当するデータのうち補修が必要となるデータの割合)は危険度ランクが上昇するにつれて増加していることが確認されたことから、設定した危険度ランクは実際の補修の要否と一致する妥当なランクであると考えられる。
【0055】
【表7】

【0056】
【表8】

【0057】
このような危険度ランクに応じた評価ルールの設定を行った。ここで、ルールの設定にあたっては図18に示したとおり実際の現象と設定した危険度ランクが矛盾するデータは無いことから、対象データすべてを用いることとした。
ルールの設定に用いる要因は、整合度は100.0%を満足する要因の組み合わせを用いることとした。対象とするデータを用いて整合度の検討を行った結果、100.0%を満足する要因の組み合わせは1通りのみであった。
そのため、本実施例3では高分離性要因の検討による組み合わせの評価は行わず、当該要因の組み合わせを採用し、ラフ集合を用いた分析によりルールの設定を行った。ここで、組み合せに用いる拡張ルールの要求水準は、「危険」および「安全」のルールについては確信度100.0%、「比較的危険」および「比較的安全」のルールについては確信度80.0%以上のもののみとした。
SVMの分析結果を用いて設定した危険度ランクに応じた評価ルールおよびその適用精度を表9に示す。ここで、表中における整合データおよび矛盾データは、「安全」もしくは「比較的安全」のルールに対しては、当面補修の必要性は無いとされているデータを整合データ、補修の必要性があるとされているデータを矛盾データと評価している。
一方、「危険」もしくは「比較的危険」のルールに対しては、補修の必要性があるとされているデータを整合データ、当面補修の必要性は無いとされているデータを矛盾データと評価している。
【0058】
【表9】

【0059】
表9より、設定した評価ルールは、ボルトの欠損、異常音、排水樋のつまり、漏水、止水工、その他(さび・腐食)の6つの要因から構成されている。
当該ルールの実現象に対する精度は97.5%を示しており、危険度ランクの設定に用いた分離面の精度(100.0%)には若干劣るものの、十分高い精度を有したルールであることが確認できる。また、ルールの汎用性を示すサポートは100.0%となっていることから、当該ルールの汎用性も非常に高いものであると評価できる。
設定したルールの内容に着目すると、「安全」と評価できる箇所の特徴は「様々な項目において異常がない」という実現象と整合した内容となっている。
一方、「安全」以外のルールの内容に着目すると、漏水と止水工が非常に重要な評価指標であることが確認できる。「止水工がBもしくはC判定」であれば比較的安全と評価できるため当面補修は必要ないが、「止水工がA判定」となった場合、補修の必要性が生じてくる。「止水工がA判定」となる箇所の中でも「漏水がBもしくはA判定」であった場合、非常に危険な状態となるため補修の必要性はより増大するものと考えられる。
また、評価ルールにより設定した危険度ランクと補修の要否の関係(図19)に着目すると、「安全」と評価された箇所では補修が必要となる箇所は含まれていないが、危険側に区分されるにつれて補修が必要となる箇所の割合は上昇していることが確認できるため、設定した評価ルールは妥当な結果であると考えられる。
以上の結果から、ボルトの欠損、異常音、排水樋のつまり、漏水、止水工、その他(さび・腐食)という6つの要因を用いて設定した評価ルールを用いつつ、しかも危険度ランク毎に評価ルールを異ならせて補修の要否について評価することによれば、これらの評価ルールを用いることなく、単に分離面からの距離を危険度ランクとして補修の要否を評価した場合とそん色のない高い評価精度を実現することができたことになる。
【0060】
以上説明したとおり、本実施の形態及び実施例で説明したように、SVMによる危険度ランクを設定し、ラフ集合を用いた災害発生危険度ランクに応じた評価ルールを設定して、これを出力する防災計画支援システム1によれば、危険度評価システムの構築と、これを用いることで任意の危険箇所に対する防災計画を立案支援することが期待できる。
最後に図6に示したフロー図を簡略化した模式図を含めて、防災計画支援全体の流れを図20に示して説明する。
まず、対象とする災害の危険性がある箇所に関する地形・地質等の情報を収集する。これが観測・点検データ8及び学習データ17である。これは、新規に調査を行い必要な情報を収集しても良いし、既存の土石流危険渓流調査カルテのデータや道路防災総点検データ等がある場合は、これらを利用することも可能である。
次いで、点線で囲まれたフローに移るが、これらのフローが本実施の形態に係る防災計画支援システム1あるいは防災計画支援プログラムの工程に該当するフローである。
収集されたデータを用いてSVMにより危険度の設定を行う。図6では、代表データ20を抽出する場合には、ステップS5に該当し、代表データ20を抽出しない場合には、ステップS2に該当する。本実施の形態及び実施例1,2ではノイズを多く含むデータを用いたことから、ノイズデータを除いた代表データ20から構築した分離面に基づき、危険度の設定を行ったが、前述のとおりノイズデータが少ないデータや予めスクリーニングが行われているデータであれば、対象とするデータすべてから構築した分離面に基づいて危険度を設定しても良い。
次いで、設定した危険度に基づいて危険度ランクの区分を行い(図6のステップS6)、ラフ集合を用いた分析(図6のステップS7)により、当該危険度ランクに応じた評価ルールの設定を行う(図6のステップS8)。ここで、危険度ランクの区分数は、利用者の要望に応じて適宜設定することで、得られる災害発生危険度に応じた評価ルールの利便性はさらに向上するものと考えられる。
次に、任意の危険箇所の調査データに対して、この一連の流れによって得られる災害発生危険度に応じた評価ルールを危険度の評価基準として用いることにより、任意の危険箇所の調査データから当該危険箇所が該当する評価ルールを検索する。そして、その評価ルールに基づけば、評価ルールは災害発生危険度に応じて設定されているので、逆にそこから任意の危険箇所に関する危険度ランクを把握することが可能となる。任意の危険箇所に関する危険度が把握できれば、危険箇所間の優先順位を策定することができ、補修工事等の防災計画の立案を合理的、効率的に支援することができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
自治体や防災センターなど公的な機関における防災計画や事故予防あるいは補修の要否に関する計画の立案業務やハザードマップ作成など幅広い用途がある。また、教育機関などにおいて災害や事故の未然防止や避難訓練用の教材としても活用が見込まれ、さらに、建設・土木事業を営む私企業においても、防災事業や維持管理事業のニーズ掘り起こしや事業提案のためのツール、あるいは公的機関との連携を図るための共有ツールとして活用が可能であり、企業の防災技術や維持管理技術に関する研究開発や設計事業などの用途にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】SVMの基本的概念を模式的に示す概念図である。
【図2】SVMによる観測・点検データに対する距離と危険度についての基本的な概念を表現した2次元イメージ図である。
【図3】ラフ集合の基本的概念を模式的に示す概念図である。
【図4】(a)及び(b)は、ラフ集合の拡張を説明するための概念図である。
【図5】本実施の形態に係る防災計画支援システムの構造図である。
【図6】本実施の形態に係る防災計画支援システムにおいて実行される演算の工程を示すフローチャートである。
【図7】(a)は代表データを抽出する前の状態のデータで構築した分離面の概念図であり、(b)はそれに対応したルールの概念図である。
【図8】(a)は代表データで構築した分離面の概念図であり、(b)はそれに対応したルールの概念図である。
【図9】代表データの概念図である。
【図10】本実施の形態に係る防災計画支援システムにおいて、危険度ランク毎にルールが設定され、そのルールに観測・点検データが含まれる様子を模式的に示す図である。
【図11】実施例1に係る防災計画支援システムにおいて設定した危険度ランクと土石流の発生率との関係を示すグラフである。
【図12】実施例1に係る防災計画支援システムにおいて危険度ランクに対する分離性が高い要因を説明するためのグラフである。
【図13】実施例1に係る防災計画支援システムにおいて流域最大傾斜と同様に危険が含まれる割合が単調増加する要因を説明するためのグラフである。
【図14】実施例1に係る防災計画支援システムにおいて流域最大傾斜と同様に比較的危険が含まれる割合が単調増加する要因を説明するためのグラフである。
【図15】実施例1に係る防災計画支援システムにおいて評価ルールにより設定した危険度ランクと土石流の発生率との関係を示すグラフである。
【図16】この実施例1に係る防災計画支援システムで設定した評価ルールに基づく土石流の発生率と特許文献1に開示されている方法で設定した評価ルールに基づく土石流の発生率を比較したグラフである。
【図17】実施例2に係る防災計画支援システムにおいて評価ルールにより設定した危険度ランクと土石流の発生率との関係を示すグラフである。
【図18】実施例3に係る防災計画支援システムにおいてSVMによって設定した危険度(f(x))の値と該当箇所の関係を示すグラフである。
【図19】実施例3に係る防災計画支援システムにおいてラフ集合で設定したランク別評価ルールと該当箇所の関係を示すグラフである。
【図20】図6のフロー図を簡略化した模式図を含めて、防災計画支援全体の流れを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0063】
1…防災計画支援システム 2…入力部 3…SVM解析部 4…解析データベース 5…データベース 6…ラフ集合解析部 7…出力部 8…観測・点検データ 9…解析条件データ 10…解析条件設定部 11…分離面演算部 12…危険度演算部 13…代表データ抽出部 14…ランク設定部 15…分離面関数データ 16…危険度関数データ 17…学習データ 18…分離面データ 19…危険度データ 20…代表データ 21…代表データ分離面データ 22…代表データ危険度データ 23…危険度ランクデータ 24…ラフ集合データ 25…ランク別評価ルールデータ 26…ラフ集合生成部 27…ランク別評価ルール生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当初分離面解析なし+代表データ抽出なし
観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をサポートベクターマシン(以下、SVMという)を用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する危険度演算部と、
前記災害・事故・補修発生危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定部と、
前記n次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に予め設定されたカテゴリー区間を組み合わせて,又はn次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に入力されるカテゴリー区間を組み合わせて,モデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成部と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成部と、
前記抽出されたルールを出力する出力部と、
を有し、前記抽出されたルールを出力して災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とする防災計画支援システム。
【請求項2】
当初分離面解析なし+代表データ抽出あり
観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する危険度演算部と、
前記災害・事故・補修発生危険度に対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式を基準として、該当する前記災害・事故・補修発生危険度を抽出すると共に、この抽出された前記災害・事故・補修発生危険度に対応する前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データを代表データとして抽出する代表データ抽出部と、
この代表データを学習データとし,この代表データにおける災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をサポートベクターマシンを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる代表データ分離面を解析する分離面演算部と、
この分離面演算部で解析された代表データ分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生代表データ危険度として演算する前記危険度演算部と、
前記災害・事故・補修発生代表データ危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定部と、
前記n次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に予め設定されたカテゴリー区間を組み合わせて,又はn次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に入力されるカテゴリー区間を組み合わせて,モデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成部と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成部と、
前記抽出されたルールを出力する出力部と、
を有し、前記抽出されたルールを出力して災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とする防災計画支援システム。
【請求項3】
当初分離面解析あり+代表データ抽出なし
観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面を解析する分離面演算部と、
この分離面演算部で解析された分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する危険度演算部と、
前記災害・事故・補修発生危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定部と、
前記n次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に予め設定されたカテゴリー区間を組み合わせて,又はn次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に入力されるカテゴリー区間を組み合わせて,モデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成部と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成部と、
前記抽出されたルールを出力する出力部と、
を有し、前記抽出されたルールを出力して災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とする防災計画支援システム。
【請求項4】
当初分離面解析あり+代表データ抽出あり
観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面を解析する分離面演算部と、
この分離面演算部で解析された分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する危険度演算部と、
前記災害・事故・補修発生危険度に対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式を基準として、該当する前記災害・事故・補修発生危険度を抽出すると共に、この抽出された前記災害・事故・補修発生危険度に対応する前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データを代表データとして抽出する代表データ抽出部と、
この代表データを学習データとし,この代表データにおける災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をサポートベクターマシンを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる代表データ分離面を解析する前記分離面演算部と、
この分離面演算部で解析された代表データ分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生代表データ危険度として演算する前記危険度演算部と、
前記災害・事故・補修発生代表データ危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定部と、
前記n次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に予め設定されたカテゴリー区間を組み合わせて,又はn次元の前記災害・事故・補修発生要因毎に入力されるカテゴリー区間を組み合わせて,モデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成部と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又はしきい値を含む論理式を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成部と、
前記抽出されたルールを出力する出力部と、
を有し、前記抽出されたルールを出力して災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とする防災計画支援システム。
【請求項5】
当初分離面解析なし+代表データ抽出なし(請求項1のプログラム)
コンピュータによって、災害・事故・補修の発生・非発生のルールを生成して出力するために実行されるプログラムであって、
コンピュータに、観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離(但し、この距離は、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正としてもよいし、あるいは前記原点側にある場合を負としてもよい。)を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する危険度演算工程と、
前記災害・事故・補修発生危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定工程と、
前記n次元の災害・事故・補修発生要因に対し,この要因に関する属性値に対するカテゴリー区間を設け,この要因毎のカテゴリー区間を組み合わせてモデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成工程と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又は条件及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又は条件を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成工程と、
前記抽出されたルールを出力する出力工程と、
を実行させて災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とする防災計画支援プログラム。
【請求項6】
当初分離面解析なし+代表データ抽出あり(請求項2のプログラム)
コンピュータによって、災害・事故・補修の発生・非発生のルールを生成して出力するために実行されるプログラムであって、
コンピュータに、観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離(但し、この距離は、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正としてもよいし、あるいは前記原点側にある場合を負としてもよい。)を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する第1の危険度演算工程と、
前記災害・事故・補修発生危険度に対する所望のしきい値又は条件を基準として、該当する前記災害・事故・補修発生危険度を抽出すると共に、この抽出された前記災害・事故・補修発生危険度に対応する前記要因毎のn次元の観測・点検データを代表データとして抽出する代表データ抽出工程と、
この代表データを学習データとし,この代表データにおける災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をサポートベクターマシンを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる代表データ分離面を解析する分離面演算工程と、
この分離面演算工程で解析された代表データ分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生代表データ危険度として演算する第2の危険度演算工程と、
前記災害・事故・補修発生代表データ危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定工程と、
前記n次元の災害・事故・補修発生要因に対し,この要因に関する属性値に対するカテゴリー区間を設け,この要因毎のカテゴリー区間を組み合わせてモデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成工程と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又は条件及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又は条件を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成工程と、
前記抽出されたルールを出力する出力工程と、
を実行させて災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とする防災計画支援プログラム。
【請求項7】
当初分離面解析あり+代表データ抽出なし(請求項3のプログラム)
コンピュータによって、災害・事故・補修の発生・非発生のルールを生成して出力するために実行されるプログラムであって、
コンピュータに、観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面を解析する分離面演算工程と、
この分離面演算工程で解析された分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離(但し、この距離は、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正としてもよいし、あるいは前記原点側にある場合を負としてもよい。)を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する危険度演算工程と、
前記災害・事故・補修発生危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定工程と、
前記n次元の災害・事故・補修発生要因に対し,この要因に関する属性値に対するカテゴリー区間を設け,この要因毎のカテゴリー区間を組み合わせてモデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成工程と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又は条件及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又は条件を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成工程と、
前記抽出されたルールを出力する出力工程と、
を実行させて災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とする防災計画支援プログラム。
【請求項8】
当初分離面解析あり+代表データ抽出あり(請求項4のプログラム)
コンピュータによって、災害・事故・補修の発生・非発生のルールを生成して出力するために実行されるプログラムであって、
コンピュータに、観測・点検対象箇所において災害・事故・補修の発生要因(要因数をnとする。n≧2)を,n次元座標空間を構成する座標軸に対応させ、前記災害・事故・補修の発生要因毎に観測・点検されたn次元の観測・点検データを学習データとし,前記観測・点検対象箇所における災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をSVMを用いて災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる分離面を解析する第1の分離面演算工程と、
この第1の分離面演算工程で解析された分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離(但し、この距離は、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正としてもよいし、あるいは前記原点側にある場合を負としてもよい。)を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生危険度として演算する第1の危険度演算工程と、
前記災害・事故・補修発生危険度に対する所望のしきい値又は条件を基準として、該当する前記災害・事故・補修発生危険度を抽出すると共に、この抽出された前記災害・事故・補修発生危険度に対応する前記要因毎のn次元の観測・点検データを代表データとして抽出する代表データ抽出工程と、
この代表データを学習データとし,この代表データにおける災害・事故・補修の発生・非発生を教師値として用い,災害・事故・補修の発生・非発生の可能性をサポートベクターマシンを用いて解析して災害・事故・補修の発生・非発生の境界を形成させる代表データ分離面を解析する第2の分離面演算工程と、
この第2の分離面演算工程で解析された代表データ分離面と、前記観測・点検対象箇所において観測・点検された前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データと、を用い、前記n次元の観測・点検データが示す前記n次元座標空間中での座標点から前記分離面までの距離であって、前記座標点が前記分離面に対して前記n次元座標空間の原点側にある場合を正値あるいは負値のいずれの値としても取りうる距離を前記観測・点検対象箇所の災害・事故・補修発生代表データ危険度として演算する第2の危険度演算工程と、
前記災害・事故・補修発生代表データ危険度に応じて、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データに対してランク付けを行うランク設定工程と、
前記n次元の災害・事故・補修発生要因に対し,この要因に関する属性値に対するカテゴリー区間を設け,この要因毎のカテゴリー区間を組み合わせてモデルを形成し、前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクをこのモデル内に代入して、ラフ集合を形成するラフ集合生成工程と、
前記災害・事故・補修の発生要因毎のn次元の観測・点検データ及び前記ランクを含んだ前記ラフ集合の前記災害・事故・補修発生要因毎のカテゴリー区間の組合せを前記ランクに応じたルールとして生成し、このルール毎の災害・事故・補修の確信度とサポートを演算し、前記確信度に対する所望のしきい値又は条件及び/又は前記サポートに対する所望のしきい値又は条件を基準として、前記ルールを抽出する災害・事故・補修のルール生成工程と、
前記抽出されたルールを出力する出力工程と、
を実行させて災害・事故の防止あるいは補修選定などの計画評価やその支援に供することを特徴とする防災計画支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−174125(P2012−174125A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37328(P2011−37328)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【出願人】(594162308)西日本技術開発株式会社 (16)
【出願人】(591260672)中電技術コンサルタント株式会社 (58)
【出願人】(598154947)株式会社 エイト日本技術開発 (16)
【出願人】(508142734)株式会社北海道技術コンサルタント (5)
【Fターム(参考)】