説明

防犯センサ

【課題】 非警戒動作時に受光窓などに対して直接的に妨害行為がなされてしまうことを防止するとともに、たとえ妨害行為がなされた場合であっても一定条件下ではその妨害行為の効果を排除して本来の機能を果たすことが可能な防犯センサを提供する。
【解決手段】 外部からの赤外線を本体11の内部の少なくとも1つの赤外線検出素子へと導く少なくとも1ヶ所の赤外線透過部12と、この赤外線透過部12を外側から覆う遮蔽位置とこの赤外線透過部を外部に露出させる非遮蔽位置との間で移動可能な少なくとも1つの遮蔽部材13と、この遮蔽部材13を遮蔽位置と非遮蔽位置の間で移動させる駆動系とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受動型赤外線検出素子を用いる防犯センサに関し、特に、その動作に対する妨害行為などを検知することが可能な防犯センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、受動型赤外線検出素子を用いるタイプの防犯センサは、警戒区域内に設定される検知エリア内への侵入者からの赤外線を受けて、人体と周囲温度の差から侵入者を検知するように構成されている。このような防犯センサには、検知エリアの光を導入するための赤外線受光窓が設けられているが、この受光窓の外側が何らかの光遮蔽物で覆われてしまう「妨害行為」があると、検知機能を喪失することになる。検知機能を喪失した場合は、不法侵入者があっても警報信号が出力されないことになってしまう。
【0003】
実際の「妨害行為」としては、例えば、防犯センサが設置されている室内への人の出入りの多い非警戒動作時に、防犯センサのカバーの前面に遠赤外線を透過しない透明な塗料をスプレーしたり、粘着テープなどを付着させたりして防犯センサが人体を検知できないようにしておき、人が出入りしなくなった警戒動作時に室内に侵入する場合がある。
【0004】
そこで、検知機能を妨害する光遮蔽物などの有無を検出する放射エネルギー検出装置を備えた防犯センサが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この放射エネルギー検出装置は、防犯センサのカバーにおける人体からの遠赤外線が通過する部分の内面に向けて近赤外線または可視光を出射する投光素子と、前記カバーの内面からの近赤外線の反射光を受光する受光素子とを設け、カバーの内面からの反射光に、カバーの外面に塗布された妨害物からの反射光が加わることによる前記受光素子への入射光量の増加量を検出することで、カバーの外面に妨害物があることを検出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0005】
また、防犯センサの受光窓などの外表面に、遠赤外線を遮蔽するとともに妨害検知用光線である近赤外線から可視光までを透過する透明塗料がスプレー塗布された場合や、透明シールのような妨害物が密着して貼り付けられた場合は、妨害物と受光窓などが一体化した状態となり、妨害物からの反射光量は極端に少なくなるため、妨害物の検出が更に難しくなる可能性がある。
【0006】
このような問題に対して、透明塗料や透明シールなどによる妨害行為がなされたことを正確に検出できる妨害検知機能付き防犯センサも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この防犯センサは、赤外線検出素子を有する本体と、この本体に装着されて、前記赤外線検出素子の検知エリアを設定するレンズまたは赤外線検出素子の赤外線入射面側を覆うカバーと、前記レンズまたはカバーの外面の一部を形成する前面、一端の入射面および他端の出射面を有する導光部材と、前記入射面から導光部材の内部へ投光する投光素子と、投光された光線を前記出射面を通して受光する受光素子と、前記受光素子の受光量に基づいて前記前面への妨害物の付着を検出する検知回路とを備え、前記導光部材の前面に、前記投光された光線の一部を導光部材の外方へ透過させ、他部を内方へ反射させる多数の凹凸が形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、妨害物が貼り付けられるときの押圧力を間接的に検出することにより、上記のような妨害行為を正確に検出できる妨害検知機能付き防犯センサも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この妨害検知機能付き防犯センサは、赤外線検出素子を有する本体と、前記本体に、押圧力を受けたときに変位可能に装着されて、前記赤外線検出素子の検知エリアを設定するレンズまたは赤外線検出素子の入射面側を覆うカバーからなる入光側外囲部材と、妨害検知用光線を投受光する投光素子および受光素子を有し、前記入光側外囲部材の変位による受光素子の受光量の変化を検出する投受光ユニットと、この検出に基づいて妨害行為を検知する検知回路とを備えたことを特徴とするものである。
【特許文献1】特開平2−287278号公報
【特許文献2】特開平11−250362号公報
【特許文献3】特開2002−24952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような従来技術が用いられている防犯センサでは、非警戒動作時に受光窓などに対して妨害行為がなされてしまうこと自体は、防ぐことができなかった。また、妨害行為を検出した場合にはそのことを警告できるが、そのままの状態では防犯センサとしての本来の機能を果たすことはできなかった。
【0009】
従来技術のこのような課題に鑑み、本発明の目的は、非警戒動作時に受光窓などに対して直接的に妨害行為がなされてしまうことを防止するとともに、たとえ妨害行為がなされた場合であっても一定条件下ではその妨害行為の効果を排除して本来の機能を果たすことが可能な防犯センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の防犯センサは、外部からの赤外線を本体の内部の少なくとも1つの赤外線検出素子へと導く少なくとも1ヶ所の赤外線透過部と、この赤外線透過部を外側から覆う遮蔽位置とこの赤外線透過部を外部に露出させる非遮蔽位置との間で移動可能な少なくとも1つの遮蔽部材と、この遮蔽部材を前記遮蔽位置と前記非遮蔽位置との間で移動させる駆動系とを備えることを特徴とする。さらに、本発明の防犯センサにおいて、この防犯センサの警戒動作時には前記遮蔽部材を前記非遮蔽位置に移動させるとともに、この防犯センサの非警戒動作時には前記遮蔽部材を前記遮蔽位置に移動させることを特徴としてもよい。
【0011】
ここで、前記赤外線検出素子としては、例えば、受動型赤外線検出素子が挙げられるが、これに限るものではない。前記赤外線透過部としては、例えば、レンズが挙げられるが、これに限るものではない。前記駆動系としては、例えばモーターやギア列を含むものが挙げられる。
【0012】
この発明の防犯センサによれば、非警戒動作時には前記遮蔽部材を前記遮蔽位置に移動させて前記赤外線透過部を外側から覆うとともに、警戒動作時には前記遮蔽部材を前記非遮蔽位置に移動させて前記赤外線透過部を外部へ露出させることができる。これにより、非警戒動作時には前記赤外線透過部が前記遮蔽部材によって保護されるので、前記赤外線透過部に対する直接的な妨害行為などを防止することができる。
【0013】
また、本発明の防犯センサにおいて、前記駆動系による前記遮蔽部材の前記遮蔽位置と前記非遮蔽位置との間の移動が正常に完了したか否かを検出する検出系を備えることを特徴としてもよい。
【0014】
ここで、前記検出系としては、例えば、前記遮蔽部材の実際の移動に応答して所定移動量毎にパルス信号を発生する検出器を含むものが挙げられる。この検出器としては、例えば、フォトインタラプタやフォトリフレクタなどが挙げられる。また、前記駆動系による前記遮蔽部材の前記遮蔽位置と前記非遮蔽位置との間の移動時に、この移動開始時点から所定時間が経過するまでに前記検出器によって所定数以上のパルス信号が発生しない場合に、前記遮蔽部材の移動が正常に完了していないと検出するようにしてもよい。
【0015】
この発明の防犯センサによれば、前記駆動系による前記遮蔽部材の前記遮蔽位置と前記非遮蔽位置との間の移動が正常に完了したか否かを検出することができる。これにより、前記遮蔽部材の移動が正常に完了しなかった場合には警告などを行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明の防犯センサにおいて、前記遮蔽部材は、前記遮蔽位置および前記非遮蔽位置のいずれにおいても前記本体の外側に存在することを特徴としてもよい。
【0017】
この場合、前記遮蔽部材が前記遮蔽位置と前記非遮蔽位置との間の移動中に、前記遮蔽部材が少なくとも一度は前記本体から離れるように構成してもよい。あるいは、前記遮蔽部材が前記遮蔽位置と前記非遮蔽位置との間の移動中に、前記遮蔽部材は常に前記本体に接しているように構成してもよい。
【0018】
この発明の防犯センサによれば、前記遮蔽部材が移動中に接触する範囲内に妨害物などが存在する場合は、前記遮蔽部材によってその妨害物を排除できる可能性がある。
【0019】
また、本発明の防犯センサにおいて、前記遮蔽部材は、前記遮蔽位置においては前記本体の外側に存在するとともに前記非遮蔽位置においては前記本体の内側に存在することを特徴としてもよい。
【0020】
この場合、前記遮蔽部材は複数であって、前記防犯センサの警戒動作時には前記複数の遮蔽部材が一体となって前記赤外線透過部を覆うように構成してもよい。さらに、この防犯センサの非警戒動作時には前記複数の遮蔽部材は前記本体の内側のそれぞれ異なる場所へ移動されるように構成してもよい。
【0021】
この発明の防犯センサによれば、外観が従来の防犯センサとほぼ同様であるため設置時の違和感が少なく、前記遮蔽部材の存在に気付かれにくい効果もある。
【0022】
また、本発明の防犯センサにおいて、前記遮蔽部材の材質は遮光性を有することを特徴としてもよい。
【0023】
この発明の防犯センサによれば、非警戒動作時は前記赤外線透過部が前記遮蔽部材によって覆われるので、太陽光などが直接当たらなくなる。前記赤外線透過部が太陽光の紫外線などによる影響を受けて劣化しやすい材質でできている場合には、そのような影響を低減できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の防犯センサによれば、非警戒動作時には前記赤外線透過部が前記遮蔽部材によって保護されるので、前記赤外線透過部に対する直接的な妨害行為などを防止することができる。また、前記遮蔽部材が移動中に接触する範囲内に妨害物などが存在する場合は、前記遮蔽部材によってその妨害物を排除できる可能性がある。
【0025】
なお、前記遮蔽部材の材質として遮光性を有するものを使用した場合は、前記赤外線透過部が太陽光の紫外線などによって受ける影響などを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0027】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る防犯センサ10の警戒動作状態における外観を示しており、(a)は左側面、(b)は正面図である。図2は、この防犯センサ10の非警戒動作状態における外観を示しており、(a)は左側面、(b)は正面図である。
【0028】
これらの図に示すように、防犯センサ10の本体11は縦長の箱形状で正面がゆるやかに湾曲している。本体11の正面下部に形成された開口部にはレンズ12がはめ込まれており、防犯センサ10の正面方向の検知対象領域内の物体から発せられる赤外線を本体11に内蔵されている受動型赤外線検出素子(不図示)へ導くようになっている。本体11の両側面には所定角度範囲内で回転可能な回転軸15がそれぞれわずかに突出しており、これらの回転軸15は本体11に内蔵されているモーターおよびギア列などを含む駆動系(不図示)によって回転させられる。さらに、これらの回転軸15の先端面には、回転軸15の回転角度に連動して伸縮する細長い棒状のアーム14の各一端が、回転軸15と直交するようにそれぞれ連結されている。これらのアーム14の各他端には、レンズ12を外側から覆うことが可能なバリア13が回転可能に連結されている。なお、バリア13の材質としては遮光性を有するもの、例えば、アルミニウムなどの金属が挙げられるが、これに限るものでない。
【0029】
防犯センサ10の警戒動作状態では、図1(a)および(b)に示すように、本体11の両側面の各回転軸15は、各アーム14が本体11正面斜め上方を向くような角度にそれぞれ停止しており、各アーム14はそれぞれ最も伸びた状態である。これらの各アーム14によって、バリア13は本体11の上方に跳ね上げられたような位置に支持されており、レンズ12は外部へ露出した状態となっている。
【0030】
防犯センサ10の非警戒動作状態では、図2(a)および(b)に示すように、本体11の両側面の各回転軸15は、各アーム14が本体11正面斜め下方を向くような角度にそれぞれ停止しており、各アーム14はそれぞれ最も縮んだ状態である。これらの各アーム14によって、バリア13はレンズ12の外側を完全に覆う位置に固定されており、レンズ12は外部から隔離された状態となっている。
【0031】
なお、防犯センサ10が警戒動作状態から非警戒動作状態に移行するときは、各回転軸15が各アーム14の先端が下降する方向へそれぞれ回転する。その回転に連動して各アーム14も少しずつ縮んでいき、最終的にバリア13がレンズ12を覆う位置に来たら各アーム14は最も縮んだ状態となり、バリア13を防犯センサ10に密着させて固定する。逆に、防犯センサ10が非警戒動作状態から警戒動作状態に移行するときは、まず、各アーム14が少し伸びることによりバリア13を防犯センサ10から少し離す。そして、各回転軸15が各アーム14の先端が上昇する方向へそれぞれ回転するとともに、その回転に連動して各アーム14も少しずつ伸びていくことにより、バリア13が防犯センサ10の正面上方まで移動される。
【0032】
図3は、本発明の第1実施形態に係る防犯センサ10が非警戒動作状態から警戒動作状態に移行する途中で、ある種の妨害行為の効果を排除する例の説明図であり、(a)は非警戒動作状態において妨害行為がなされた後を示し、(b)は警戒動作状態に移行する途中で妨害物を排除する直前を示し、(c)は妨害物を排除した後を示している。
【0033】
例えば、図3(a)に示すように、壁面90に取り付けられている防犯センサ10の非警戒動作中に、深いボウル状の妨害物91がすっぽりと被せられた場合を考える。この状態では、レンズ12には防犯センサ10の検知対象領域内の物体から発せられる赤外線が到達しないため、侵入者などの検知は不可能となる。
【0034】
防犯センサ10が非警戒動作状態から警戒動作状態に移行する途中で、図3(b)に示すように、バリア13は妨害物91の内面に接触する。
【0035】
バリア13の上方への移動力が妨害物91を固定している力より強ければ、図3(c)に示すように、バリア13の移動力によって妨害物91の固定が外れ、妨害物91は落下する。これにより、レンズ12には防犯センサ10の検知対象領域内の物体から発せられる赤外線が到達するようになり、侵入者などの検知が可能となる。
【0036】
一方、バリア13の上方への移動力が妨害物91を固定している力より弱ければ、妨害物91の固定は外れず、バリア13の上方への移動はできなくなってそのまま停止する。バリア13の最も上方の位置までの移動が完了しなかったことを防犯センサ10が検出すると、回転軸15の回転が停止されるとともに、防犯センサ10から異常警告信号が出力される。この異常警告信号は、例えば警備センターなどに伝達されるようにしておくことが望ましい。このようにすることで、防犯センサ10に何らかの妨害行為がなされたか、あるいは何らかの異常が発生したことなどが認識される。
【0037】
また、本体11内部に、本体11が無理にこじ開けられたことを検出するタンパースイッチが配置されている場合は、前記異常警告信号をこのタンパースイッチに対応するタンパー信号として出力するようにしてもよい。このようにすれば、前記異常警告信号用として専用の出力端子を設けることが不要になる。
【0038】
なお、例えば、防犯センサ10に対して妨害物91が十分大きいため、バリア13の移動中に妨害物91に全く接触しないことも考えられる。そのような場合は、防犯センサ10によって妨害物91の存在が認識されないため、前記異常警告信号も発生せず、侵入者などの検知も不可能になる。そこで、上述の特許文献1のような従来技術も併用することにより、このような問題に対処することが望ましい。
【0039】
図4は、この防犯センサ10が非警戒動作状態から警戒動作状態へ移行する処理の概略を示すフローチャートである。
【0040】
防犯センサ10が非警戒動作状態から警戒動作状態に移行する処理では、最初に、上述したように本体11に内蔵されている前記駆動系による駆動が開始される(ステップS41)。この駆動によって回転軸15が回転し、アーム14が伸びるとともにその先端が上昇し、バリア13は上方へと移動される。
【0041】
さらに、タイマーT1がスタートするとともにカウンタC1が0に初期化される(ステップS42)。ここで、これらのタイマーT1およびカウンタC1は、例えば、防犯センサ10全体を制御する制御回路やマイクロコンピュータなどが有していればそれらを使用してもよいし、別に専用回路を設けてもよい。また、カウンタC1はバリア13の実際の移動に連動して発生する信号をカウントできるようにしておく。例えば、前記駆動系のギア列の最終段のギアまたは回転軸15の回転を、フォトインタラプタなどを用いて検出することによってパルス信号を発生させ、そのパルス信号をカウンタC1に入力してカウントさせるようにしてもよい。バリア13の移動が正常に行われているときは、バリア13の移動に連動してパルス信号が発生し、そのパルス信号に応じてカウンタC1のカウント値が増加する。バリア13の移動が完了するまでには所定数のパルスが発生し、バリア13の移動が完了するとパルスは発生しなくなる。バリア13の移動が途中で停止すると、カウンタC1のカウント値が所定数に到達する前にパルスの発生が停止してしまう。そこで、バリア13の移動開始時点から所定時間が経過するまでにカウンタC1のカウント値が所定数に到達するか否かに基づいて、バリア13の移動が正常に行われているか否かの判定を行う。なお、前記所定時間としては、例えば、通常時におけるバリア13の移動の所要時間の2倍程度とすればよい。
【0042】
前記駆動系の駆動中は、タイマーT1およびカウンタC1が常に監視されている。まず、タイマーT1の計時値が前記所定時間に到達しているか否かの判定が行われ(ステップS43)、前記所定時間以上であればステップS47に進み、そうでなければステップS44に進む。さらに、カウンタC1のカウント値が前記所定数に到達しているか否かの判定が行われ(ステップS44)、前記所定数以上であればステップS45に進み、そうでなければステップS43に戻る。
【0043】
タイマーT1の計時値が前記所定時間に到達する前にカウンタC1のカウント値が前記所定数に到達した場合は、バリア13の移動は正常に完了したと判断される。そこで、前記駆動系による駆動停止後(ステップS45)、防犯センサ10の警戒動作の開始によって(ステップS46)、警戒動作状態への移行処理が終了する。
【0044】
一方、カウンタC1のカウント値が前記所定数に到達する前にタイマーT1の計時値が前記所定時間に到達した場合は、バリア13の移動の途中で何らかの異常が発生したと判断される。そこで、前記駆動系による駆動停止後(ステップS47)、防犯センサ10は異常警告信号を出力する(ステップS48)。そして、警戒動作を開始することなく、移行処理が終了する。
【0045】
なお、防犯センサ10が警戒動作状態から非警戒動作状態に移行する処理もほぼ同様に行うことができる。ただし、前記駆動系は逆方向に駆動する必要があり、警戒動作はバリア13の移動開始前に終了させておく。
【0046】
以上で説明した第1実施形態の構成によれば、防犯センサ10が非警戒動作状態であれば、レンズ12はバリア13によって完全に覆われており、外部から隔離された状態となっている。これにより、レンズ12に対して透明塗料がスプレー塗布されたり、透明シールなどが貼り付けられたりするなどの妨害行為を防止することができる。
【0047】
また、例えば、非警戒動作状態で防犯センサ10全体が何らかの妨害物などで覆われたような場合でも、バリア13が移動中に接触する範囲内にあれば、その妨害物を排除できる可能性がある。妨害物を排除できた場合には、防犯センサ10本来の機能を果たすことができ、排除できなかった場合でも、異常を検出して警告を発することは可能である。
【0048】
さらに、バリア13の材質として遮光性を有するものを使用することで、非警戒動作状態ではレンズ12に太陽光などが直接当たらなくなる。レンズ12が太陽光の紫外線などによる影響を受けて劣化しやすい材質(例えば、ポリエチレン)でできている場合には、そのような影響を低減できる。特に、直射日光が当たるような屋外に防犯センサ10が設置されており、警戒動作が専ら夜間に行なわれる場合には極めて有効である。
【0049】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係る防犯センサ20の警戒動作状態における外観を示しており、(a)は左側面、(b)は正面図、(c)は右側面図である。図6は、この防犯センサ20の非警戒動作状態における外観を示しており、(a)は左側面、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【0050】
これらの図に示すように、防犯センサ20は両側面方向を監視するタイプの受動型赤外線感知器である。本体21の両側面には、矩形状のレンズ22が上下に所定間隔で2個ずつ配置されている。本体21内部には2系統の赤外線感知系(不図示)が配置されており、防犯センサ20の両側面方向の物体から発せられる赤外線がレンズ22を通してこれらの赤外線感知系に到達する。
【0051】
また、本体21の両側面には、縦長矩形状で中央部にレンズ22と同一形状の開口部を有するバリア23が、本体21に接するとともに所定範囲内で上下方向に移動可能にそれぞれ連結されている。なお、これらのバリア23は、本体21に内蔵されている駆動系(不図示)によって上下に移動されるように構成されているが、この駆動系とバリア23の連結機構などについての図示は省略している。
【0052】
防犯センサ20の警戒動作状態では、図5(a)〜(c)に示すように、バリア23はその開口部の位置がレンズ22の上側の方の位置と一致するように移動されている。したがって、防犯センサ20の両側面のレンズ22は上下ともに外部へ露出した状態となっている。
【0053】
防犯センサ20の非警戒動作状態では、図6(a)〜(c)に示すように、バリア23はその開口部以外の部分でレンズ22の上下をともに覆うような位置へ移動されている。したがって、防犯センサ20の両側面のレンズ22は上下ともに外部から隔離された状態となっている。
【0054】
以上で説明した第2実施形態の構成によれば、防犯センサ20が非警戒動作状態であれば、レンズ22はバリア23によって完全に覆われており、外部から隔離された状態となっている。これにより、レンズ22に対して透明塗料がスプレー塗布されたり、透明シールなどが貼り付けられたりするなどの妨害行為を防止することができる。また、バリア23の材質として遮光性を有するものを使用することで、太陽光の紫外線などの影響によるレンズ22の劣化などを低減できる。さらに、外部に突出するような部材がないので堅牢な構造とすることができ、バリア23などが破壊されたりすることを極力防ぐことができる。
【0055】
<第3実施形態>
図7は、本発明の第3実施形態に係る防犯センサ30の外観図であり、(a)は警戒動作状態を示し、(b)は非警戒動作状態を示している。
【0056】
これらの図に示すように、防犯センサ30の本体31は縦長の箱形状である。本体31の正面下部に形成された開口部にはレンズ32がはめ込まれており、防犯センサ30の正面方向の検知対象領域内の物体から発せられる赤外線を本体31に内蔵されている受動型赤外線検出素子(不図示)へ導くようになっている。
【0057】
また、この防犯センサ30では、バリア33は本体31に内蔵されており、本体31に内蔵されている駆動系(不図示)によって本体31正面の内面とレンズ32の表面との間で上下移動可能に構成されている。なお、レンズ32の上下方向の長さは本体31の上下方向の長さの半分よりも小さいとする。
【0058】
防犯センサ30の警戒動作状態では、図7(a)に示すように、バリア33は本体31の内部でレンズ32を覆わない位置まで待避するように上方へ移動されている。したがって、防犯センサ30のレンズ32は外部へ露出した状態となっている。
【0059】
防犯センサ30の非警戒動作状態では、図7(b)に示すように、バリア33はレンズ32の表面を覆うような位置まで下方へ移動されている。したがって、防犯センサ30のレンズ32は外部から隔離された状態となっている。
【0060】
以上で説明した第3実施形態の構成によれば、防犯センサ30が非警戒動作状態であれば、レンズ32はバリア33によって完全に覆われており、外部から隔離された状態となっている。これにより、レンズ32に対して透明塗料がスプレー塗布されたり、透明シールなどが貼り付けられたりするなどの妨害行為を防止することができる。また、バリア33の材質として遮光性を有するものを使用することで、太陽光の紫外線などの影響によるレンズ32の劣化などを低減できる。さらに、外観が従来の防犯センサとほぼ同様であるため設置時の違和感が少なく、バリア33の存在に気付かれにくい効果もある。
【0061】
<第4実施形態>
図8は、本発明の第4実施形態に係る防犯センサ40の警戒動作状態における外観を示しており、(a)は正面図、(b)は(a)の8b−8b断面図である。図9は、この防犯センサ40の非警戒動作状態における外観を示しており、(a)は正面図、(b)は(a)の9b−9b断面図である。
【0062】
これらの図に示すように、防犯センサ40の本体41は縦長の箱形状である。本体41の正面下部に形成された開口部にはレンズ42がはめ込まれており、防犯センサ40の正面方向の検知対象領域内の物体から発せられる赤外線を本体41に内蔵されている受動型赤外線検出素子(不図示)へ導くようになっている。
【0063】
この防犯センサ40では、湾曲可能な材質で作られるとともに左右に2分割されたバリア43L、43Rが本体41に内蔵されており、本体41に内蔵されている駆動系(不図示)によって本体41の内面とレンズ42の表面との間で移動可能に構成されている。このようにしたのは、第3実施形態とは異なり、レンズ42の上下方向の長さが本体41の上下方向の長さの半分よりも大きいため、レンズ42の全面を覆うことができる大きさの1つのバリアを上方へ移動させて、レンズ42を覆わない位置まで待避させることができないためである。
【0064】
防犯センサ40の警戒動作状態では、図8(a)および(b)に示すように、バリア43Lは本体41の内部でレンズ42を覆わない位置まで待避するように左方へ移動されており、バリア43Rは本体41の内部でレンズ42を覆わない位置まで待避するように右方へ移動されている。したがって、防犯センサ40のレンズ42は外部へ露出した状態となっている。
【0065】
防犯センサ40の非警戒動作状態では、図9(a)および(b)に示すように、バリア43Lはレンズ42の左側半分を覆うような位置まで移動されるとともに、バリア43Rはレンズ42の右側半分を覆うような位置まで移動されている。したがって、防犯センサ40のレンズ42は外部から隔離された状態となっている。
【0066】
以上で説明した第4実施形態の構成によれば、防犯センサ40が非警戒動作状態であれば、レンズ42はバリア43L、43Rによって完全に覆われており、外部から隔離された状態となっている。これにより、レンズ42に対して透明塗料がスプレー塗布されたり、透明シールなどが貼り付けられたりするなどの妨害行為を防止することができる。また、バリアを複数に分割することで、レンズ42を覆わない位置に待避させるために本体41内部に確保すべき空間を小さくできる。さらに、バリア43の材質として遮光性を有するものを使用することで、太陽光の紫外線などの影響によるレンズ42の劣化などを低減できる。外観が従来の防犯センサとほぼ同様であるため違和感も少なく、バリア43の存在に気付かれにくい効果もある。
【0067】
なお、この第4実施形態の変形例として、バリアを左右に分割するのではなく上下に2分割あるいは3分割し、警戒動作時には上下に分割された複数のバリアを重ねるようにして本体41上部の内側に待避させるような構成も考えられる。
【0068】
<その他の変形例など>
本発明は、上述のような受動型赤外線検出素子を用いる防犯センサに限らず、能動型赤外線検知装置などにも適用が可能である。
【0069】
また、バリアとしては、例えば、レンズの前面に複数の細長い板状部材をそれぞれ平行に配置するとともにそれらの角度を同時に調節可能とし、いわゆる窓用ブラインドのように構成してもよい。防犯センサの警戒動作状態では、各板状部材の角度をレンズの前面とほぼ垂直になるように調整すれば、レンズは外部へ露出しているのと同様の状態となる。一方、防犯センサの非警戒動作状態では、各板状部材の角度をレンズの前面とほぼ平行になるように調整すれば、レンズは外部から隔離された状態となる。
【0070】
また、バリアの材質として、遮光性を有するものの代わりに透明なものを使用することも考えられる。この場合は、上述したような太陽光の紫外線などによるレンズの劣化を防止する効果は失われるが、バリア自体を目立ちにくくすることができる。
【0071】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施形態に係る防犯センサの警戒動作状態における外観を示しており、(a)は左側面、(b)は正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る防犯センサの非警戒動作状態における外観を示しており、(a)は左側面、(b)は正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る防犯センサが非警戒動作状態から警戒動作状態に移行する途中で、ある種の妨害行為の効果を排除する例の説明図であり、(a)は非警戒動作状態において妨害行為がなされた後を示し、(b)は警戒動作状態に移行する途中で妨害物を排除する直前を示し、(c)は妨害物を排除した後を示している。
【図4】本発明の第1実施形態に係る防犯センサが非警戒動作状態から警戒動作状態へ移行する処理の概略を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る防犯センサの警戒動作状態における外観を示しており、(a)は左側面、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る防犯センサの非警戒動作状態における外観を示しており、(a)は左側面、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る防犯センサの外観図であり、(a)は警戒動作状態を示し、(b)は非警戒動作状態を示している。
【図8】本発明の第4実施形態に係る防犯センサ40の警戒動作状態における外観を示しており、(a)は正面図、(b)は(a)の8b−8b断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る防犯センサ40の非警戒動作状態における外観を示しており、(a)は正面図、(b)は(a)の9b−9b断面図である。
【符号の説明】
【0073】
10 防犯センサ
11 本体
12 レンズ
13 バリア
14 アーム
15 回転軸
20 防犯センサ
21 本体
22 レンズ
23 バリア
30 防犯センサ
31 本体
32 レンズ
33 バリア
40 防犯センサ
40 本体
42 レンズ
43L バリア(左側)
43R バリア(右側)
90 壁面
91 妨害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの赤外線を本体の内部の少なくとも1つの赤外線検出素子へと導く少なくとも1ヶ所の赤外線透過部と、
この赤外線透過部を外側から覆う遮蔽位置とこの赤外線透過部を外部に露出させる非遮蔽位置との間で移動可能な少なくとも1つの遮蔽部材と、
この遮蔽部材を前記遮蔽位置と前記非遮蔽位置との間で移動させる駆動系とを備えることを特徴とする防犯センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の防犯センサにおいて、
この防犯センサの警戒動作時には前記遮蔽部材を前記非遮蔽位置に移動させるとともに、この防犯センサの非警戒動作時には前記遮蔽部材を前記遮蔽位置に移動させることを特徴とする防犯センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の防犯センサにおいて、
前記駆動系による前記遮蔽部材の前記遮蔽位置と前記非遮蔽位置との間の移動が正常に完了したか否かを検出する検出系を備えることを特徴とする防犯センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の防犯センサにおいて、
前記検出系は、前記遮蔽部材の実際の移動に応答して所定移動量毎にパルス信号を発生する検出器を含むことを特徴とする防犯センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の防犯センサにおいて、
前記駆動系による前記遮蔽部材の前記遮蔽位置と前記非遮蔽位置との間の移動時に、この移動開始時点から所定時間が経過するまでに前記検出器によって所定数以上のパルス信号が発生しない場合に、前記遮蔽部材の移動が正常に完了していないと検出することを特徴とする防犯センサ。
【請求項6】
請求項1または2に記載の防犯センサにおいて、
前記遮蔽部材は、前記遮蔽位置および前記非遮蔽位置のいずれにおいても前記本体の外側に存在することを特徴とする防犯センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の防犯センサにおいて、
前記遮蔽部材が前記遮蔽位置と前記非遮蔽位置との間の移動中に、前記遮蔽部材が少なくとも一度は前記本体から離れることを特徴とする防犯センサ。
【請求項8】
請求項6に記載の防犯センサにおいて、
前記遮蔽部材が前記遮蔽位置と前記非遮蔽位置との間の移動中に、前記遮蔽部材は常に前記本体に接していることを特徴とする防犯センサ。
【請求項9】
請求項1または2に記載の防犯センサにおいて、
前記遮蔽部材は、前記遮蔽位置においては前記本体の外側に存在するとともに前記非遮蔽位置においては前記本体の内側に存在することを特徴とする防犯センサ。
【請求項10】
請求項9に記載の防犯センサにおいて、
前記遮蔽部材は複数であって、
前記防犯センサの警戒動作時には前記複数の遮蔽部材が一体となって前記赤外線透過部を覆うことを特徴とする防犯センサ。
【請求項11】
請求項10に記載の防犯センサにおいて、
この防犯センサの非警戒動作時には前記複数の遮蔽部材は前記本体の内側のそれぞれ異なる場所へ移動されることを特徴とする防犯センサ。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の防犯センサにおいて、
前記赤外線検出素子は受動型赤外線検出素子であることを特徴とする防犯センサ。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の防犯センサにおいて、
前記赤外線透過部はレンズであることを特徴とする防犯センサ。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の防犯センサにおいて、
前記遮蔽部材の材質は遮光性を有することを特徴とする防犯センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−59222(P2006−59222A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242002(P2004−242002)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】