説明

防眩性ハードコート剤および防眩性ハードコートフィルム

【課題】ハードコート剤に防眩性、および高硬度性を付与するための添加物として、高い分散性を示し、かつ所望の特性を容易に発現させることのできるシリカ粒子分を含む防眩性ハードコート剤と、この防眩性ハードコート剤をハードコート層とすることにより、ハードコート層の特性を長期に渡って発現させることができる防眩性ハードコートフィルムを得る。
【解決手段】平均粒子径が1〜10μmのシリカ粒子と、重合性不飽和基を有するイソシアネート化合物とがウレタン結合を介して結合されてなるシリカ含有複合体が、重合性不飽和基を有する重合性化合物を含む溶液中に分散されてなる防眩性ハードコート剤とし、この防眩性ハードコート剤をフィルムのハードコート層とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性ハードコート剤およびこの防眩性ハードコート剤をハードコート層とする防眩性ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイやタッチパネル、パーソナルコンピュータ等に用いられるディスプレイでは、太陽光や蛍光灯などの光が表示画面に映り込むとこの光の反射により画面が見にくくなるという現象がある。そのため、この映り込み現象を抑制するための防眩性フィルムが提供されている。この防眩性フィルムをディスプレイの表示画面に貼付することにより、この現象が抑制される。
【0003】
この防眩性フィルムは、シリコーン系、または、アクリル系の樹脂バインダ中にシリカ粒子が含まれてなるハードコート剤をフィルムの表面に塗工して乾燥させた後、加熱するか、または、紫外線を照射することにより、樹脂分を硬化させて得られるものである。例えば、特許文献1および特許文献2に、所定の屈折率および平均粒径を有するシリカ粒子が含有されたハードコート剤と、このハードコート剤が塗布された防眩性フィルムとが提案されている。
【0004】
上記発明によれば、特許文献1の図1に示されるように、ハードコート剤の乾燥に伴い、シリカ粒子がハードコート剤の表層に現れて凹凸が形成される。この凹凸により反射光が乱反射することにより、フィルムに防眩性が付与されるものである。
【0005】
【特許文献1】特開平9−230103号公報
【特許文献2】特開平9−211202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のハードコート剤は、シリカ粒子を樹脂バインダ中に混合させたものである。しかし、樹脂バインダ中におけるシリカ粒子の分散性については考慮されていないため、シリカ粒子が沈降しやすいものである。そのため、このハードコート剤をフィルムに塗布する際には、ハードコート剤を攪拌しながら行わなければならず、作業性が悪いという問題がある。
【0007】
また、このハードコート剤は、フィルムに塗布した後、乾燥、および、硬化の工程を必要とする。この際にシリカ粒子同士が凝集するので、得られた防眩性フィルムをディスプレイに貼り付けた際に、画像にぎらつきが発するという問題もある。
【0008】
さらに、シリカ粒子と樹脂バインダとの密着性についても考慮されていない。そのため、この防眩性フィルムを長期にわたって使用していると、表層のシリカ粒子の剥がれが発生する。すると、ハードコート層の表層のざらつきが増大したり、防眩性および硬さ特性が失われるという問題もある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ハードコート剤に防眩性、および、高硬度性を付与するための添加物として、高い分散性を示し、かつ、所望の特性を容易に発現させることのできるシリカ粒子分を含む防眩性ハードコート剤と、この防眩性ハードコート剤をハードコート層とすることにより、ハードコート層の特性を長期に渡って発現させることができる防眩性ハードコートフィルムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題解決のための請求項1に記載の発明は、平均粒子径が1〜10μmのシリカ粒子と重合性不飽和基を有するイソシアネート化合物とがウレタン結合を介して結合されてなるシリカ含有複合体が溶液中に分散されてなることを特徴とする防眩性ハードコート剤である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、平均粒子径が1〜10μmのシリカ粒子と、重合性不飽和基を有するイソシアネート化合物とがウレタン結合を介して結合されてなるシリカ含有複合体が重合性不飽和基を有する重合性化合物を含む溶液中に分散されてなることを特徴とする防眩性ハードコート剤である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、平均粒子径が1〜10μmのシリカ粒子と、複数のイソシアネート基を有し、そのイソシアネート基のうち、少なくとも1つのイソシアネート基に重合性不飽和基を有する単量体が導入されたイソシアネート化合物とがウレタン結合を介して結合されてなるシリカ含有複合体が溶液中に分散されてなることを特徴とする防眩性ハ ードコート剤である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、平均粒子径が1〜10μmのシリカ粒子と、複数のイソシアネート基を有し、そのイソシアネート基のうち、少なくとも1つのイソシアネート基に重合性不飽和基を有する単量体が導入されたイソシアネート化合物とがウレタン結合を介して結合されてなるシリカ含有複合体が重合性不飽和基を有する重合性化合物を含む溶液中に分散されてなることを特徴とする防眩性ハードコート剤である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記シリカ含有複合体にシリカ粒子が0.1〜20重量%含有されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の防眩性ハードコート剤である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の防眩性ハードコート剤がフィルム上に塗布されてなることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムである。
【発明の効果】
【0016】
一般的に粒子径が小さくなると凝集しやすく、均一に分散させることが困難であるが、請求項1に記載の発明によれば、ハードコート剤に防眩性および高硬度性を付与するための添加物として平均粒子径が1〜10μmのシリカ粒子を採用しているにも係わらず、シリカ粒子はイソシアネート化合物との複合体として存在し、かつ重合性不飽和基を有しているため、シリカ粒子同士が凝集することなく、重合性不飽和基間での重合が進むことによって、ハードコート剤に防眩性および高硬度性を付与するための添加物として、高い分散性を示すシリカ含有複合体が含まれた防眩性ハードコート剤を得ることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明では、ハードコート剤に防眩性および高硬度性を付与するための添加物として平均粒子径が1〜10μmのシリカ粒子を採用しているにも係わらず、シリカ粒子はイソシアネート化合物との複合体として存在し、かつ重合性不飽和基を有しているため、シリカ粒子同士が凝集することなく、シリカ粒子と結合した重合性不飽和基および溶液中の重合性不飽和基間での重合が進むことによって、ハードコート剤に防眩性および高硬度性を付与するための添加物として、高い分散性を示すシリカ含有複合体が含まれた防眩性ハードコート剤を得ることができる。また、溶液中の重合性不飽和基はハードコート層と基材フィルムとの密着性を向上させる効果もある。
【0018】
請求項3に記載の発明では、複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくとも一つに重合性不飽和基を有する単量体が導入され、しかもシリカ粒子とウレタン結合を介して結合されているので、合成されたシリカ含有複合体は、シリカ粒子、イソシアネート成分、および重合性不飽和基を有する単量体が複合体となって構成されており、シリカ粒子およびイソシアネート成分の性質だけではなく、この重合性不飽和基を有する単量体の性質も併せ持つものである。請求項3に記載の発明によれば、イソシアネート化合物に重合性不飽和基を導入するための単量体を適宜選択することにより、シリカ含有複合体に単量体のもつ性質を付与することができるので、請求項1に記載の発明の効果に加え、所望の特性を発現させるにあたっての分子設計の選択幅を大きくとることができる防眩性ハードコート剤を得ることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明では、複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくとも一つに重合性不飽和基を有する単量体が導入され、しかもシリカ粒子とウレタン結合を介して結合されているので、合成されたシリカ含有複合体は、シリカ粒子、イソシアネート成分、および重合性不飽和基を有する単量体が複合体となって構成されており、シリカ粒子およびイソシアネート成分の性質だけではなく、この重合性不飽和基を有する単量体の性質も併せ持つものである。請求項4に記載の発明によれば、イソシアネート化合物に重合性不飽和基を導入するための単量体を適宜選択することにより、シリカ含有複合体に単量体のもつ性質を付与することができるので、請求項2に記載の発明の効果に加え、所望の特性を発現させるにあたっての分子設計の選択幅を大きくとることができる防眩性ハードコート剤を得ることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から4に記載の防眩性ハードコート剤は、シリカ含有複合体にシリカ粒子が0.1〜20重量%含有されていることを特徴とするものであり、含有されるシリカ含有複合体の分散性が高いので、シリカ含有複合体が凝集あるいは沈降することなく、本発明のハードコート剤をハードコートフィルムとした時に、画像のぎらつきや硬度むらのない防眩性のハードコートフィルムが得られる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1から4に記載の防眩性ハードコート剤は、シリカ含有複合体の分散性が高く、しかも重合性成分を含有しているので、シリカ含有複合体を含む溶液がフィルム上に均一に分散した状態で塗布され、乾燥されるため、シリカ粒子が剥離することなく、フィルムとの密着性に優れ、画像のぎらつきや硬度むらのない防眩性のハードコートフィルムが得られる。
【0022】
さらに、シリカ含有複合体および重合性化合物は、共に重合性不飽和基を有しているので、この防眩性ハードコート剤を硬化させる際には、シリカ含有複合体同士、あるいはシリカ含有複合体と重合性化合物とが重合反応により強固に結合される。そのため、この防眩性ハードコート剤をハードコート層とする防眩性ハードコートフィルムは、シリカ含有複合体の分散性を保ちつつ、ハードコート層からのシリカ含有複合体の剥がれることなく、ハードコート層の特性を長期に渡って発現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明に用いられるシリカ粒子としては、平均粒子径が1〜10μmのものを用い、さらに好ましくは平均粒子径が2〜5μmのものを用いるとよい。シリカ粒子の粒子径が小さいと、十分な防眩性を得ることができない。また、粒子径が大きいと、画面のぎらつきの原因となり、さらには、シリカ粒子が沈降しやすくなり、分散安定性が低下する。また、シリカ粒子の粒子形状は、光散乱を引き起こしやすい不定形であることが望ましく、さらには、表面上に水酸基を有するシリカ粒子が望ましい。
【0024】
本発明に用いられる重合性不飽和基を有するイソシアネート化合物としては、(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を含む化合物、例えばアクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アクリル酸2−イソシアネートエチル、メタクリル酸2−イソシアネートエチル等を用いることができる。
【0025】
また、複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタントリイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(又は6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、トリエチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリエチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートのオリゴマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体等を用いることができる。また、これらのイソシアネート化合物を、単独、または、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記の複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物には、そのイソシアネート基のうち、少なくとも1つのイソシアネート基に重合性不飽和基を導入する。重合性不飽和基を導入するための化合物としては、水酸基含有アクリレートモノマー等、例えば、単官能アクリレートや多官能アクリレートを用いることができる。このうち、好ましくは多官能アクリレートを用いるとよい。単官能アクリレートとして、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどを用いることができる。多官能アクリレートとしては、トリメチロールプロパンジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパンジアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有アクリレートモノマー等を用いることができる。この多官能アクリレートを用いることにより、アクリレート密度を上げることができ、有機物の架橋度が上げることにより、硬さ特性をより一層引き出すことができる。
【0027】
また、イソシアネート基と反応する重合性不飽和基を持つ化合物としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、ケイヒ酸、マレイン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリロキシプロピルヘキサヒドロゲンフタレ−ト、2−(メタ)アクリロキシエチルヘキサヒドロゲンフタレ−ト等の不飽和脂肪族カルボン酸類、2−(メタ)アクリロキシプロピルフタレ−ト、2−(メタ)アクリロキシプロピルエチルフタレ−ト等のカルボキシル基を有する不飽和芳香族カルボン酸や、ビニルオキシエチルアミン、ビニルオキシドデシルアミン、アリルオキシプロピルアミン、2−メチルアリルオキシへキシルアミン、ビニルオキシ−(2−ヒドロキシ)ブチルアミン等のアミノ基含有モノマー等を用いることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記のイソシアネート化合物のイソシアネート基に重合性不飽和基を導入するための反応、および上記のシリカ粒子と上記のイソシアネート基との反応を促進させるために、触媒を添加するとよい。例えば、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ラウリル酸ジn−ブチルスズ、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどのウレタン化触媒を、反応物の総量100重量部に対して0.01〜1重量部用いるとよい。
【0029】
上記ポリイソシアネートへの重合性不飽和基を導入するための反応は、ウレタン触媒の存在下で、イソシアネート基に対して不活性な溶剤、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、フルフラール等の極性溶剤の1種または2種以上を使用して行われる。また、反応性溶剤としてメチルメタクリレートをはじめとするアクリルモノマーなどをあげることができる。
【0030】
上記のシリカ粒子、および重合性不飽和基が導入されたイソシアネート化合物を、有機溶剤または反応性溶剤中に混合し、さらに、必要に応じて触媒の存在下でこれらを混合することにより、シリカ粒子の水酸基とイソシアネート化合物のイソシアネート基とがウレタン結合により結合し、シリカ含有複合体が得られる。
【0031】
シリカ含有複合体中に含まれるシリカ粒子の含有量は0.1重量%以上20重量%以下である。20重量%を超えるとシリカ粒子とイソシアネート基とのウレタン反応時にシリカ粒子が凝集し、防眩ハードコートフィルムにした際のぎらつきの原因となる。また、目標とする光学性能に応じ、重合性不飽和基を有する化合物を任意に混合することができる。
【0032】
複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、および水酸基含有アクリレートモノマーとを有機溶剤または反応性溶剤中に混合し、必要に応じて触媒の存在下で混合すると、イソシアネート化合物のイソシアネート基に、水酸基含有アクリレートモノマーの水酸基がウレタン結合により結合され、イソシアネート化合物にアクリレートの重合性不飽和基が導入される。この工程の後、この重合性不飽和基が導入されたイソシアネート化合物、およびシリカ粒子を有機溶剤または反応性溶剤中で必要に応じて触媒の存在下で混合することにより、シリカ含有複合体が得られる。この反応方式を個別方式と称することとする。
【0033】
上記の個別方式は、イソシアネート化合物に重合性不飽和基を導入する工程の後、シリカ粒子を結合するという工程を経ている。これらの反応を一括で同時に行わせることもできる。この方法は、有機溶剤、または、反応性溶剤に、シリカ粒子、複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、および、水酸基含有アクリレートモノマーをすべて混合し、これらを必要に応じて触媒の存在下で混合するという反応方式である。この方式によれば、シリカ粒子とイソシアネート化合物とのウレタン結合、および水酸基含有アクリレートモノマーとイソシアネート化合物とのウレタン結合を同時に行った後、シリカ含有複合体が得られる。この反応方式を一括方式と称することとする。
【0034】
シリカ含有複合体を得るには、上記の個別方式、あるいは一括方式のいずれの方式でもよく、これら反応方式の選択は、シリカ含有複合体の製造効率や、シリカ含有複合体に求められる特性等を考慮し、適宜選択する。その上で、水酸基含有アクリレートモノマーとイソシアネート化合物とのウレタン結合、およびシリカ粒子とイソシアネート化合物とのウレタン結合におけるこれらの十分な結合性を確保するには、個別方式を選択することが好ましい。
【0035】
反応にあたっては経時的にIR、またはアミン滴定を行い、残存するイソシアネート基の濃度を測定する。そして、濃度の変化がなくなった時点をもってイソシアネート基とシリカ粒子との反応の終点とする。未反応のイソシアネート基が残っていると、保存性の低下につながるため、未反応のイソシアネート基はブロック剤でブロックするとよい。ブロック剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や、または前記のイソシアネート基と反応される化合物を用いることができる。
【0036】
シリカ含有複合体と混合し、重合させる重合性不飽和基を有する重合性化合物としては、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、不飽和ニトリルモノマー、不飽和カルボン酸、アミド基含有モノマー、メチロール基含有モノマー、アルコキシメチル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、多官能性モノマー、ビニルエステル等の分子鎖中に重合性不飽和基をもつ重合性化合物を用いることもできる。
【0037】
アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルの例としてメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートなどが挙げられる。不飽和ニトリルモノマーの例としてアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。不飽和カルボン酸の例としてアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、モノアルキルイタコネート等がある。アミド基含有モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等を用いることができる。メチロール基含有モノマーとしては、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジメチロールアクリルアミド、ジメチロールメタクリルアミド等を用いることができる。アルコキシメチル基含有モノマーとしては、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等を用いることができる。エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレートを用いることができる。多官能性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を用いることができる。ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、オレフィン、例えば、ブタジエン、イソプレン、塩素含有ビニルモノマー、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、その他スチレン等も用いることができる。これらの重合性不飽和基をもつ化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらモノマーのうち特に多官能モノマーを用いることにより有機分の架橋密度を向上することができ硬化特性を一層引き出すことができる。
【0038】
この防眩性ハードコート剤を各種基材に塗布し、各種基材の性状に影響を与えない程度の熱を加えて溶剤を揮発させた後、加熱、光照射、電子線照射等の方法により、シリカ含有複合体を含む乾燥皮膜を重合させることにより、硬化させる。
【0039】
加熱により硬化させる際は、防眩性ハードコート剤に開始剤を添加しておく。開始剤としては、過酸化物、アゾビス化合物等を用いることができる。過酸化物としては、過酸化ジブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、クメンハイドロ過酸化物等、アゾビス化合物としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド等を用いることができる。
【0040】
光により硬化させる際は、防眩性ハードコート剤に光開始剤を添加しておく。光開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等を用いることができる。また、市販の光開始剤としては、チバガイギー社製のIrgacure184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61(以上、商品名)、BASF社製のLucirinLR8728(商品名)、メルク社製のDarocure1116、1173(以上、商品名)、UCB社製のユベクリルP36(商品名)等を用いることができる。
【0041】
電子線により硬化させる際は、特別な開始剤は必要としない。
【0042】
防眩性ハードコート剤として各種の基材等に対する密着性を確保するために、粘着付与樹脂を適宜配合してもよい。この粘着付与樹脂としては、変成ロジン、重合ロジン、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂等のフェノール系や、クマロンインデン系、脂肪族炭化水素系、テルペン樹脂等の芳香族石油系等の樹脂が使用できる。さらに、これらをカルボキシル変性、または、水酸基変性させたものも使用できる。
【0043】
また、この防眩性ハードコート剤に老化防止を目的として、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物を配合してもよい。
【0044】
また、この防眩性ハードコート剤に帯電防止剤、導電性高分子、金属酸化物等を添加し、帯電防止機能を付与することもできる。帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸グリセリンエステル、アルキルポリエチレンイミン、カチオン系としてアルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリン誘導体、エチレンオキサイドを骨格に持つアクリレート化合物等を用いることができる。また、その他にリチウムイオンなどの金属イオンを混合するイオン伝導型の帯電防止剤も用いることができる。導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、および、これらの誘導体を用いることができる。金属酸化物としては、アンチモンドープ型酸化錫(ATO)、錫ドープ型酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ型酸化亜鉛、アンチモン副酸化物等を用いることができる。
【0045】
上記のようにして得られた防眩性ハードコート剤をフィルムに塗布し、乾燥、硬化させることで、防眩性ハードコートフィルムが得られる。
【0046】
この防眩性ハードコートフィルムの基材となるフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホンフ、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッソ樹脂、ナイロン、アクリル樹脂等からなるフィルムを用いることができる。これらの基材フィルムと防眩ハードコート剤との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいは易接着、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理、電子線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施すことができる。
【0047】
防眩性ハードコート剤のフィルムへの塗布は、従来公知の方法、例えば、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などにより行うことができる。防眩性ハードコート剤の塗布厚みは、本発明では1〜10μm、より好ましくは2〜5μmとする。これは、塗布厚みが薄いと十分な耐擦傷性や耐スクラッチ性が得られず、また、塗工厚みが厚いとシリカ粒子が表面に露出しないため防眩性能が劣り、フィルムの反りが大きくなる。
【0048】
次に、本発明の実施例を説明する。この実施例は本発明の具体的な例を示すものであって、本発明の実施の形態は、以下に限定されるものではない。
【0049】
本発明にかかる防眩性ハードコート剤を下記の通り調製した。
【0050】
(実施例1)
溶媒としてトルエン100重量部と、平均粒子径2.5μmのシリカ粒子(株式会社トクヤマ製、商品名X−80)10重量部と、イソシアネート化合物として分子量155の2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)(昭和電工株式会社製)を90重量部と、触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫(DBTDL)0.1重量部と加えた混合液を、室温で24時間撹拌した。IRにより、イソシアネート基の濃度を測定して、残存するイソシアネート基が無いことを確認し、シリカ化合物含有単量体を含む溶液を得た。次いで、上記のシリカ化合物含有単量体100重量部に重合開始剤としてIrgacure907(チバガイギー社製、商品名、以下同じ)を2重量部加えて、実施例1の防眩性ハードコート剤を得た。
【0051】
(実施例2)
溶媒としてトルエン100重量部に対し、平均粒子径4.7μmのシリカ粒子(日本シリカ工業株式会社、商品名E−150J)20重量部と、イソシアネート化合物として分子量155の2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)(昭和電工株式会社製)80重量部と、触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫(DBTDL)0.1重量部とを加えた混合液を、室温で24時間撹拌した。IRにて、残存するイソシアネート基が無いことを確認し、シリカ化合物含有単量体を得た。次いで、上記のシリカ化合物含有単量体100重量部に対し、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名A−TMMT)16.7重量部、およびトルエン16.7重量部を混合した溶液を添加し、重合開始剤としてIrgacure907を2重量部加えて、実施例2の防眩性ハードコート剤を得た。
【0052】
(実施例3)
溶媒としてトルエン79.5重量部に対し水酸基含有アクリレートモノマーとして2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)29重量部に、イソシアネート化合物として等モルのイソホロンジイソシアネート(IPDI)50重量部と、触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫(DBTDL)0.1重量部とを加え、HEMA−IPDIモノマーを得た。次いで、このモノマーを平均粒子径8.0μmのシリカ粒子(富士シリシア株式会社、商品名サイリシア450)0.4重量部に添加し、室温で24時間撹拌後、イソプロパノールを加えた。次いで、IRにて残存するイソシアネート基が無いことを確認し、シリカ化合物含有単量体を得た。上記のシリカ化合物含有単量体100重量部に対し、重合開始剤としてIrgacure907を2重量部加えて、実施例3の防眩性ハードコート剤を得た。
【0053】
(実施例4)
溶媒としてトルエン105重量部に対し、水酸基含有アクリレートモノマーとしてペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名A−TMM−3LM−N)60重量部と、イソホロンジイソシアネート(IPDI)24重量部と、触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫(DBTDL)0.1重量部とを加え、ペンタエリスリトールトリアクリレート−IPDIモノマーを得た。次いで、このペンタエリスリトールトリアクリレート−IPDIモノマーを、平均粒子径2.5μmのシリカ粒子(株式会社トクヤマ製、商品名X−80)21重量部に添加し、室温で24時間撹拌後、イソプロパノールを加えた。IRにて残存するイソシアネート基が無いことを確認し、シリカ化合物含有単量体を得た。さらに、上記のシリカ化合物含有単量体100重量部に対し、トルエン16.7重量部およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名A−TMMT)16.7重量部を混合した溶液を添加し、重合開始剤としてIrgacure907を3重量部加えて、実施例4の防眩性ハードコート剤を得た。
【0054】
(実施例5)
溶媒としてメチルエチルケトン83重量部に対し水酸基含有アクリレートモノマーとして2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)29重量部に、イソシアネート化合物として等モルのイソホロンジイソシアネート(IPDI)50重量部と、触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫(DBTDL)0.1重量部とを加え、HEMA−IPDIモノマーを得た。次いで、このモノマーを平均粒子径8.0μmのシリカ粒子(富士シリシア株式会社、商品名サイリシア450)4重量部に添加し、室温で24時間撹拌後、イソプロパノールを加えた。次いで、IRにて残存するイソシアネート基が無いことを確認し、シリカ化合物含有単量体を得た。上記のシリカ化合物含有単量体100重量部に対し、重合開始剤としてIrgacure907を2重量部加えて、実施例5の防眩性ハードコート剤を得た。
【0055】
(実施例6)
溶媒としてトルエン100重量部と、平均粒子径3.1μmのシリカ粒子(株式会社トクヤマ製、商品名UF−310)10重量部と、イソシアネート化合物として分子量155の2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製)を90重量部と、触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫(DBTDL)0.1重量部と加えた混合液を、室温で24時間撹拌した。そして、IRにより、イソシアネート基の濃度を測定して、残存するイソシアネート基が無いことを確認し、シリカ化合物含有単量体を含む溶液を得た。次いで、上記のシリカ化合物含有単量体に重合開始剤としてIrgacure907(チバガイギー社製、商品名、以下同じ)を5重量部加えて、実施例1の防眩性ハードコート剤を得た。
【0056】
厚みが188μmのPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、東レ株式会社製、商品名ルミラー)に上記の実施例1〜6の防眩性ハードコート剤を、それぞれ硬化後の膜厚が5μmとなるよう塗布した。次いで、80W/cmの高圧水銀灯で300mJ/cmの紫外線を塗布面に放射し、塗布面を硬化させ、それぞれ、実施例1〜6の防眩性ハードコートフィルムを得た。
【0057】
上記実施例1〜6の防眩性ハード剤、および防眩性ハードコートフィルムの特性比較のため、比較例1〜5のコート剤、およびこれらコート剤が塗布されてなる比較例1〜5のコートフィルムを、下記の通り調製した。これらの比較例は、以下に記載の観点において、特性比較を行うことを目的としている。
比較例1:シリカ粒子およびイソシアネート化合物がウレタン結合されていない。
比較例2:硬化剤にシリカ粒子を単に混合させたもの。
比較例3:シリカ粒子の平均粒子径が10μmより大きい。
比較例4:シリカ粒子の平均粒子径が1μmより小さい。
比較例5:シリカ粒子を含まない。
【0058】
(比較例1)
溶媒としてトルエン100重量部に対し、イソシアネート化合物として、分子量155の2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI、昭和電工株式会社製)100重量部と、等モル以上のイソプロパノールと、触媒として、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫(DBTDL)0.04重量部とを加えて、イソシアネート基を不活性化した。この混合溶液に、平均粒子径2.5μmのシリカ粒子(株式会社トクヤマ製、商品名X−80)10重量部を混合し、室温で24時間攪拌した。次いで、上記のシリカ化合物含有単量体100重量部に重合開始剤としてIrgacure907を2重量部加えて、比較例1のコート剤を得た。
【0059】
(比較例2)
溶媒としてトルエン100重量部に対し、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名A−TMMT)100重量部を混合した溶液に、平均粒子径4.7μmのシリカ粒子(日本シリカ工業株式会社、商品名E−150J)20重量部を混合し、室温で24時間攪拌した後、重合開始剤としてIrgacure907を3重量部加え、比較例2のコート剤を得た。
【0060】
(比較例3)
実施例1の防眩性ハードコート剤において、平均粒子径2.5μmのシリカ粒子に代えて、平均粒子径11.3μmのシリカ粒子(富士シリシア化学株式会社製、商品名780)を用い、その他の組成物、組成物の配合割合、および調製方法を同一とした比較例3のコート剤を得た。
【0061】
(比較例4)
実施例1の防眩性ハードコート剤において、平均粒子径2.5μmのシリカ粒子に代えて、平均粒子径0.2μmのシリカ粒子(株式会社トクヤマ製、商品名SH−03)を用い、その他の組成物、組成物の配合割合、および、調製方法を同一とした比較例4のコート剤を得た。
【0062】
(比較例5)
実施例1の防眩性ハードコート剤において、シリカ粒子を混合させず、その他の組成物、組成物の配合割合、および、調製方法を同一とした比較例5のコート剤を得た。
【0063】
上記の比較例1〜5のコート剤を、PETフィルムに実施例と同じ方法で塗布し、硬化させ、比較例1〜5のコートフィルムを得た。
【0064】
上記の通り得られた実施例1〜6の防眩性ハードコート剤、および比較例1〜4のコート剤のシリカ沈降を測定した。なお、比較例5のコート剤には、シリカ粒子が含まれていないので、この測定は行わない。さらに、実施例1〜6の防眩性ハードコートフィルム、および比較例1〜5のコートフィルムのぎらつき、ペン摺動耐久性、全光線透過率、ヘイズ度、写像鮮明度、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性、払拭性、および接触角を測定した。上記の各測定項目の測定方法、および測定結果に対する評価の基準は下記の通りである。
【0065】
(シリカ粒子沈降性)
内径16φの試験管(呼び寸法18×165)に実施例の防眩性ハードコート剤、または、比較例のコート剤を10g入れて静置し、上澄み液の層厚みが2mmに到達する時間を測定した。
評価基準
合格○:6時間より長い。 不合格×:0〜6時間。
【0066】
(ぎらつき評価)
全面に緑色を表示させた液晶ディスプレイ表面上に、実施例の防眩ハードコートフィルム、または比較例のコートフィルムを置き、30cm離れたところから目視する。この際の特定の部分の輝度が高くなる「不自然な輝き」の有無を確認した。
評価基準
合格○:「不自然な輝き」が認められない。 不合格×:「不自然な輝き」が認められる。
【0067】
(ペン摺動耐久性)
ポリアセタールペン(R0.8)のペン先に300gの垂直荷重をかけ、25mm往復摺動を5万回行う。試験後、防眩ハードコートフィルム上の傷の状態を目視で確認した。
評価基準
合格○:傷が認められない。 不合格×:傷が認められる。
【0068】
(全光線透過率)
JIS K 7361−1(2000年版)3.2の規定に基づき、ヘイズメータ(スガ試験機製)により測定した。
評価基準
合格○:90%以上。 不合格×:90%未満。
【0069】
(ヘイズ度)
JIS K 7136(2000年版)の規定に基づきヘイズメータ(スガ試験機製)により測定した。
評価基準
合格○:2〜15%。 不合格×:2%未満、または15%より大きい。
【0070】
(写像鮮明度)
JIS K 7105(2000年版)の規定に基づきTM式写像性測定器(スガ試験機製)により測定した。
評価基準
ヘイズが10未満の場合; 合格○:80%以上。 不合格×:80%未満。
ヘイズが10以上の場合; 合格○:70%以上。 不合格×:70%未満。
【0071】
(密着性)
JIS K 5600−5−6(1999年版)に基づく碁盤目試験による。塗工面に、カッターナイフで10×10のマス目を作り、このマス目の上にセロファンテープを貼る。次いで、このセロファンテープを斜め45°上方に引っ張り、剥がれなかったマス目を数える。
評価基準
合格○:残りのマス目数100。 不合格×:残りのマス目数100未満。
【0072】
(鉛筆硬度)
JIS K 5600に準じ、斜め45度に固定した鉛筆の真上から荷重をかけ引っ掻き試験を行い、傷の付かない鉛筆硬度を表示した。
評価基準
合格○:鉛筆硬度2H以上。 不合格×:鉛筆硬度2H未満。
【0073】
(擦傷性)
スチールウール#0000(日本スチールウール株式会社製)により、荷重2kg重で10往復摩擦した後、傷の有無を目視確認する。
評価基準
合格○:傷なし。 不合格×:傷あり。
【0074】
評価結果を表1に示す。また、総合評価として、合格数/全評価項目数(=9)を示した。
【表1】

【0075】
上記の総合評価からわかるように、比較例のコート剤およびコートフィルムは、総合評価が9/9のものはなく、所望の特性をすべて満たすコート剤およびコートフィルムは得られなかった。
【0076】
一方、実施例1〜6の防眩性ハードコート剤および防眩性ハードコートフィルムは、総合評価がすべて9/9である。すなわち、本発明により、所望の特性をすべて満たす防眩性ハードコート剤及び防眩性ハードコートフィルムを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1〜10μmのシリカ粒子と重合性不飽和基を有するイソシアネート化合物とがウレタン結合を介して結合されてなるシリカ含有複合体が溶液中に分散されてなることを特徴とする防眩性ハードコート剤。
【請求項2】
平均粒子径が1〜10μmのシリカ粒子と、重合性不飽和基を有するイソシアネート化合物とがウレタン結合を介して結合されてなるシリカ含有複合体が、重合性不飽和基を有する重合性化合物を含む溶液中に分散されてなることを特徴とする防眩性ハードコート剤。
【請求項3】
平均粒子径が1〜10μmのシリカ粒子と、複数のイソシアネート基を有し、そのイソシアネート基のうち、少なくとも1つのイソシアネート基に重合性不飽和基を有する単量体が導入されたイソシアネート化合物とがウレタン結合を介して結合されてなるシリカ含有複合体が溶液中に分散されてなることを特徴とする防眩性ハードコート剤。
【請求項4】
平均粒子径が1〜10μmのシリカ粒子と、複数のイソシアネート基を有し、そのイソシアネート基のうち、少なくとも1つのイソシアネート基に重合性不飽和基を有する単量体が導入されたイソシアネート化合物とがウレタン結合を介して結合されてなるシリカ含有複合体が重合性不飽和基を有する重合性化合物を含む溶液中に分散されてなることを特徴とする防眩性ハードコート剤。
【請求項5】
前記シリカ含有複合体にシリカ粒子が0.1〜20重量%含有されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の防眩性ハードコート剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の防眩性ハードコート剤がフィルム上に塗布されてなることを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。

【公開番号】特開2006−273901(P2006−273901A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91031(P2005−91031)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】