防眩性フィルム、偏光板、画像表示装置および防眩性フィルムの製造方法
【課題】防眩性と、白ボケの防止とを両立した優れた表示特性を有するとともに、外観欠点となる防眩層表面の突起状物の発生を防止して製品の歩留まりを向上させた防眩性フィルムを提供する。
【解決手段】透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有する防眩性フィルムであって、前記防眩層が、樹脂、粒子およびチキソトロピー付与剤を含む防眩層形成材料を用いて形成されており、前記防眩層が、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤が凝集することによって、前記防眩層の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、前記凸状部を形成する凝集部において、前記粒子が、前記防眩層の面方向に、複数集まった状態で存在する。
【解決手段】透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有する防眩性フィルムであって、前記防眩層が、樹脂、粒子およびチキソトロピー付与剤を含む防眩層形成材料を用いて形成されており、前記防眩層が、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤が凝集することによって、前記防眩層の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、前記凸状部を形成する凝集部において、前記粒子が、前記防眩層の面方向に、複数集まった状態で存在する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性フィルム、偏光板、画像表示装置および防眩性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防眩性フィルムは、陰極管表示装置(CRT)、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)およびエレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の、様々な画像表示装置において、外光の反射や像の映り込みによるコントラストの低下を防止するために、ディスプレイ表面に配置される。ディスプレイの最表面に防眩性フィルムを用いる場合には、明るい環境下での使用では光の拡散により黒表示の画像が白っぽくなる「白ボケ」という問題がある。この白ボケは防眩性フィルムの防眩性(拡散性)を落とすことで対応可能であるが、トレードオフとして映り込み防止が損なわれ本来の機能を低下させることになる。このように、防眩性の向上と白ボケ改善は、一般的に相反関係にあるとされているが、これらの特性を両立させるための、種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、防眩層を形成する微粒子含有塗料を基材上に塗工し、乾燥させる際に、溶媒の揮発時に発生する対流により塗工層表面のベナードセル構造を形成させることで、表面形状をなだらかなものに制御する提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、微粒子により三次元立体構造凝集部を形成させることで、表示特性を向上させるとの提案がある(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、防眩層の凹凸形状をなだらかにするために、防眩層の表面に表面調整層を形成した2層構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−257255号公報
【特許文献2】特許第4641846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1では、微粒子が平面状に集合することを利用して、ベナードセルを形成することにより防眩層表面をなだらかな凹凸構造とし、防眩性とコントラストとの両立を図っている。しかし、ベナードセルを利用して所望の形状を作るためには、塗工・乾燥工程において極めて緻密な生産条件の制御が必要となる。
【0007】
一方、特許文献2では、防眩層表面をなだらかな凹凸構造とするために、粒子を凝集させて形成した防眩層の表面に、さらに表面調整層を形成した2層構造となっている。このため、防眩層が1層構造のものと比べ、製造工程が多く、生産性が悪い。
【0008】
そこで、本発明者らは、表面がなだらかな凹凸構造を有する防眩層を、粒子を凝集させて形成するとともに、生産性とコストを考慮して防眩層を2層構造ではなく、1層構成で形成すべく、新規開発に着手した。鋭意開発を進めていたところ、粒子の凝集を利用して形成した1層構成の防眩層では、外観検査(暗室における蛍光灯での目視による)で防眩性フィルムの表面に欠点が見つかるという新たな課題に直面した。この外観欠点を有する防眩性フィルムは、製品として使用できず廃棄することになる。さらに、例えば防眩性フィルムを用いて枚葉状態の偏光板にしたものに外観欠点が見つかると、その外観欠点が1箇所であっても偏光板自体を廃棄しなければならない。このため、特に大型の液晶パネル用の偏光板ほど、外観欠点に対する廃棄面積が広くなり、歩留りが極めて悪くなる。
【0009】
この外観欠点のメカニズムについて検討を重ねた結果、この原因が防眩層表面に発生する突起状物(「ブツ」とも言う)に起因することが分かった。この突起状物の外観欠点は、なだらかな表面形状を有する防眩層を形成した場合に、特に顕著に現れると考えられる。すなわち、防眩層表面の凹凸形状が粗く(算術平均表面粗さRaが高い)、防眩性が高い防眩性フィルムでは、仮にこの突起状物を有するとしても、防眩効果による光の拡散によってそれほど顕著な外観欠点として現れなかったと考えられる。
【0010】
本発明者らは、さらに検討を進めるべく、この突起状物を断面して走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、複数の粒子が防眩層の厚み方向に重なりあって存在することが、この突起状物の発生要因であることを突き止めた。
【0011】
この突起状物を防眩層から無くすためには、使用する粒子の部数を減らしたり、粒径の小さな粒子を採用したりすることが考えられる。しかし、その場合、防眩性と、白ボケの防止とを両立した所望するなだらかな表面凹凸形状を形成することは困難であった。さらに、粒子に対して防眩層の厚みを厚くして、粒子の厚み方向の重なりを防止することも考えられるが、その場合、フィルムにカールが発生する等の問題が生じてしまう。
【0012】
そこで、本発明は、粒子の凝集を利用して防眩層を形成した防眩性フィルムであり、防眩性と、白ボケの防止とを両立した優れた表示特性を有するとともに、外観欠点となる防眩層表面の突起状物の発生を防止して製品の歩留まりを向上させた防眩性フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。さらには、この防眩性フィルムを用いた偏光板および画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の防眩性フィルムは、透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有する防眩性フィルムであって、
前記防眩層が、樹脂、粒子およびチキソトロピー付与剤(チキソ剤、thixotropic agent)を含む防眩層形成材料を用いて形成されており、
前記防眩層が、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤が凝集することによって、前記防眩層の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、
前記凸状部を形成する凝集部において、前記粒子が、前記防眩層の面方向に、複数集まった状態で存在することを特徴とする。
【0014】
本発明の偏光板は、偏光子および防眩性フィルムを有する偏光板であって、前記防眩性フィルムが、前記本発明の防眩性フィルムであることを特徴とする。
【0015】
本発明の画像表示装置は、防眩性フィルムを備える画像表示装置であって、前記防眩性フィルムが前記本発明の防眩性フィルムであることを特徴とする。
【0016】
本発明の画像表示装置は、偏光板を備える画像表示装置であって、前記偏光板が前記本発明の偏光板であることを特徴とする。
【0017】
本発明の防眩性フィルムの製造方法は、透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有する防眩性フィルムの製造方法であって、
樹脂、粒子、チキソトロピー付与剤および溶媒を含む塗工液を、前記透光性基材の少なくとも一方の面に塗工して塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させて前記防眩層を形成する防眩層形成工程を有し、
前記塗工液として、Ti値が1.3〜3.5の範囲のものを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の防眩性フィルムおよびその製造方法によれば、防眩性と、白ボケの防止とを両立した優れた表示特性を有するとともに、粒子の凝集を利用して防眩層を形成しているにもかかわらず、外観欠点となる防眩層表面の突起状物の発生を防止して製品の歩留まりを向上させることができる。さらには、この防眩性フィルムや、この防眩性フィルムを有する偏光板を用いた画像表示装置は、表示特性が優れたものになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は、本発明の実施例1における、防眩性フィルムの防眩層表面を観察した光学顕微鏡(半透過モード)写真である。図1(a)において、スケールは20μmである。図1(b)は、図1(a)の写真において観察される粒子の分布を示した模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1における、防眩性フィルムの断面を観察したSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。(a)および(b)は、同じ箇所を撮影した写真であり、(a)は、倍率2000倍、(b)は、倍率5000倍である。(c)は、同じ防眩性フィルムの別の箇所の写真である。
【図3】図3は、実施例1における、防眩性フィルムの表面形状を3次元的に示したプロファイルである。
【図4】図4(a)は、比較例2における、防眩性フィルムの防眩層表面を観察した光学顕微鏡(半透過モード)写真である。図4(a)において、スケールは20μmである。図4(b)は、図4(a)の写真において観察される粒子の分布を示した模式図である。
【図5】図5(a)は、比較例2における、防眩性フィルムの断面を観察したSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。図5(a)において、スケールは10μmである。図5(b)は、図5(a)の写真において観察される粒子の分布を示した模式図である。
【図6】図6は、比較例2における、防眩性フィルムの表面形状を3次元的に示したプロファイルである。
【図7】図7は、実施例1の防眩性フィルムにおける浸透層を観察した、TEM(透過型電子顕微鏡)写真である。
【図8】図8は、凸状部の高さの定義を説明する模式図である。
【図9A】図9Aは、本発明の防眩性フィルムの一例の構成を示す模式図である。
【図9B】図9Bは、本発明とは異なる、防眩層がチキソトロピー付与剤を含まない防眩性フィルムの一例の構成を示す模式図である。
【図10A】図10Aは、本発明の防眩性フィルムにおける、粒子の凝集に関して推察されるメカニズムを模式的に説明する概略説明図である。
【図10B】図10Bは、本発明とは異なる、防眩層がチキソトロピー付与剤を含まない防眩性フィルムにおける、粒子の凝集に関して推察されるメカニズムを模式的に説明する概略説明図である。
【図10C】図10Cは、本発明の防眩性フィルムにおける、浸透層が形成される場合の粒子の凝集に関して推察されるメカニズムを模式的に説明する概略説明図である。
【図10D】図10Dは、本発明とは異なる、防眩層がチキソトロピー付与剤を含まない防眩性フィルムにおける、浸透層が形成される場合の粒子の凝集に関して推察されるメカニズムを模式的に説明する概略説明図である。
【図11】図11は、本発明の防眩性フィルムにおける、防眩層の厚み方向および面方向の定義の一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記チキソトロピー付与剤が、有機粘土、酸化ポリオレフィンおよび変性ウレアからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0021】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記凸状部の前記防眩層の粗さ平均線からの高さが、前記防眩層の厚みの0.4倍未満であることが好ましい。
【0022】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記防眩層において、最大径が200μm以上の外観欠点が前記防眩層の1m2あたり1個以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記防眩層の厚み(d)が3〜12μmの範囲内にあり、かつ、前記粒子の粒子径(D)が2.5〜10μmの範囲内にあることが好ましい。この場合において、前記厚み(d)と前記粒子径(D)との関係が、0.3≦D/d≦0.9の範囲内にあることが好ましい。
【0024】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記防眩層において、前記樹脂100重量部に対し、前記粒子が0.2〜12重量部の範囲で含まれ、前記チキソトロピー付与剤が0.2〜5重量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0025】
本発明の防眩性フィルムは、前記透光性基材と前記防眩層との間に、前記樹脂が前記透光性基材に浸透して形成された浸透層を有していることが好ましい。
【0026】
つぎに、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の記載により制限されない。
【0027】
本発明の防眩性フィルムは、透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有するものである。前記透光性基材は、特に制限されないが、例えば、透明プラスチックフィルム基材等があげられる。
【0028】
前記透明プラスチックフィルム基材は、特に制限されないが、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下のもの)が好ましく、例えば、特開2008−90263号公報に記載の透明プラスチックフィルム基材があげられる。前記透明プラスチックフィルム基材としては、光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。本発明の防眩性フィルムは、例えば、保護フィルムとして偏光板に使用することもでき、この場合には、前記透明プラスチックフィルム基材としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン等から形成されたフィルムが好ましい。また、本発明において、後述するように、前記透明プラスチックフィルム基材は、偏光子自体であってもよい。このような構成であると、TAC等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので、偏光板若しくは画像表示装置の製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、このような構成であれば、偏光板を、より薄層化することができる。なお、前記透明プラスチックフィルム基材が偏光子である場合には、防眩層が、従来の保護層としての役割を果たすことになる。また、このような構成であれば、防眩性フィルムは、例えば、液晶セル表面に装着される場合、カバープレートとしての機能を兼ねることになる。
【0029】
本発明において、前記透明プラスチックフィルム基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、強度、取り扱い性などの作業性および薄層性などの点を考慮すると、10〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは20〜300μmの範囲であり、最適には、30〜200μmの範囲である。前記透明プラスチックフィルム基材の屈折率は、特に制限されない。前記屈折率は、例えば、1.30〜1.80の範囲であり、好ましくは、1.40〜1.70の範囲である。
【0030】
前記防眩層は、前記樹脂、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤を含む防眩層形成材料を用いて形成される。前記樹脂は、例えば、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線や光で硬化する電離放射線硬化性樹脂があげられる。前記樹脂として、市販の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能である。
【0031】
前記熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂としては、例えば、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化するアクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物が使用でき、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
前記樹脂には、例えば、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。前記反応性希釈剤は、例えば、特開2008−88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができ、例えば、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を含む。前記反応性希釈剤としては、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートが好ましい。これは、防眩層の硬度を、優れたものにできるからである。前記反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等もあげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
前記防眩層を形成するための粒子は、形成される防眩層表面を凹凸形状にして防眩性を付与し、また、前記防眩層のヘイズ値を制御することを主な機能とする。前記防眩層のヘイズ値は、前記粒子と前記樹脂との屈折率差を制御することで、設計することができる。前記粒子としては、例えば、無機粒子と有機粒子とがある。前記無機粒子は、特に制限されず、例えば、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、タルク粒子、カオリン粒子、硫酸カルシウム粒子等があげられる。また、前記有機粒子は、特に制限されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末(PMMA微粒子)、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等があげられる。これらの無機粒子および有機粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0034】
前記粒子の重量平均粒径(D)は、2.5〜10μmの範囲内にあることが好ましい。前記粒子の重量平均粒径を、前記範囲とすることで、例えば、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できる防眩性フィルムとすることができる。前記粒子の重量平均粒径は、より好ましくは、3〜7μmの範囲内である。なお、前記粒子の重量平均粒径は、例えば、コールターカウント法により測定できる。例えば、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、粒子が前記細孔を通過する際の粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、前記粒子の数と体積を測定し、重量平均粒径を算出する。
【0035】
前記粒子の形状は、特に制限されず、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の粒子であり、最も好ましくは球形の粒子である。
【0036】
前記防眩層における前記粒子の割合は、前記樹脂100重量部に対し、0.2〜12重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、0.5〜12重量部の範囲であり、さらに好ましくは1〜7重量部の範囲である。前記範囲とすることで、例えば、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できる防眩性フィルムとすることができる。
【0037】
前記防眩層を形成するためのチキソトロピー付与剤としては、例えば、有機粘土、酸化ポリオレフィン、変性ウレア等があげられる。
【0038】
前記有機粘土は、前記樹脂との親和性を改善するために、有機化処理した粘土であることが好ましい。有機粘土としては、例えば、層状有機粘土をあげることができる。前記有機粘土は、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ルーセンタイトSAN、ルーセンタイトSTN、ルーセンタイトSEN、ルーセンタイトSPN、ソマシフME−100、ソマシフMAE、ソマシフMTE、ソマシフMEE、ソマシフMPE(商品名、いずれもコープケミカル(株)製);エスベン、エスベンC、エスベンE、エスベンW、エスベンP、エスベンWX、エスベンN−400、エスベンNX、エスベンNX80、エスベンNO12S、エスベンNEZ、エスベンNO12、エスベンNE、エスベンNZ、エスベンNZ70、オルガナイト、オルガナイトD、オルガナイトT(商品名、いずれも(株)ホージュン製);クニピアF、クニピアG、クニピアG4(商品名、いずれもクニミネ工業(株)製);チクソゲルVZ、クレイトンHT、クレイトン40(商品名、いずれもロックウッド アディティブズ社製)等があげられる。
【0039】
前記酸化ポリオレフィンは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ディスパロン4200−20(商品名、楠本化成(株)製)、フローノンSA300(商品名、共栄社化学(株)製)等があげられる。
【0040】
前記変性ウレアは、イソシアネート単量体あるいはそのアダクト体と有機アミンとの反応物である。前記変性ウレアは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、BYK410(ビッグケミー社製)等があげられる。
【0041】
前記チキソトロピー付与剤は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記凸状部の前記防眩層の粗さ平均線からの高さが、前記防眩層の厚みの0.4倍未満であることが好ましい。より好ましくは、0.01倍以上0.4倍未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.01倍以上0.3倍未満の範囲である。この範囲であれば、前記凸状部に外観欠点となる突起物が形成されることを、好適に防止できる。本発明の防眩性フィルムは、このような高さの凸状部を有することで、外観欠点を生じにくくすることができる。ここで、前記平均線からの高さについて、図8を参照して説明する。図8は、前記防眩層の断面の二次元プロファイルの模式図であり、直線Lは、前記二次元プロファイルにおける粗さ平均線(中心線)である。前記二次元プロファイルにおける粗さ平均線からの頂部(凸状部)の高さHを、本発明における凸状部高さとする。図8において、前記凸状部のうち、前記平均線を越えている部分には、平行斜線を付している。また、前記防眩層の厚みは、防眩性フィルムの全体厚みを測定し、前記全体厚みから、透光性基材の厚みを差し引くことにより算出される、防眩層の厚みである。前記全体厚みおよび前記透光性基材の厚みは、例えば、マイクロゲージ式厚み計によって、測定することができる。
【0043】
前記防眩層における前記チキソトロピー付与剤の割合は、前記樹脂100重量部に対し、0.1〜5重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、0.2〜4重量部の範囲である。
【0044】
前記防眩層の厚み(d)は、特に制限されないが、3〜12μmの範囲内にあることが好ましい。前記防眩層の厚み(d)を、前記範囲とすることで、例えば、防眩性フィルムにおけるカールの発生を防ぐことができ、搬送性不良等の生産性の低下の問題を回避できる。また、前記厚み(d)が前記範囲にある場合、前記粒子の重量平均粒径(D)は、前述のように、2.5〜10μmの範囲内にあることが好ましい。前記防眩層の厚み(d)と、前記粒子の重量平均粒径(D)とが、前述の組み合わせであることで、さらに防眩性に優れる防眩性フィルムとすることができる。前記防眩層の厚み(d)は、より好ましくは、3〜8μmの範囲内である。
【0045】
前記防眩層の厚み(d)と前記粒子の重量平均粒径(D)との関係は、0.3≦D/d≦0.9の範囲内にあることが好ましい。このような関係にあることにより、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止でき、さらに、外観欠点のない防眩性フィルムとすることができる。
【0046】
本発明の防眩性フィルムでは、前述のように、前記防眩層は、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤が凝集することによって、前記防眩層の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、前記凸状部を形成する凝集部において、前記粒子が、前記防眩層の面方向に、複数集まった状態で存在する。これにより、前記凸状部が、なだらかな形状となっている。本発明の防眩性フィルムは、このような形状の凸状部を有することで、防眩性を維持しつつ、かつ、白ボケを防止することができ、さらに、外観欠点を生じにくくすることができる。
【0047】
防眩層の表面形状は、防眩層形成材料に含まれる粒子の凝集状態を制御することで、任意に設計することができる。前記粒子の凝集状態は、例えば、前記粒子の材質(例えば、粒子表面の化学的修飾状態、溶媒や樹脂に対する親和性等)、樹脂(バインダー)または溶媒の種類、組合せ等により制御できる。ここで、本発明では、前記防眩層形成材料に含まれるチキソトロピー付与剤により、前記粒子の凝集状態をコントロールすることができる。この結果、本発明では、前記粒子の凝集状態を前述のようにすることができ、前記凸状部を、なだらかな形状とすることができる。
【0048】
本発明の防眩性フィルムにおいて、透光性基材が樹脂等から形成されている場合、前記透光性基材と防眩層との界面において、浸透層を有していることが好ましい。前記浸透層は、前記防眩層の形成材料に含まれる樹脂成分が、前記透光性基材に浸透して形成される。浸透層が形成されると、透光性基材と防眩層との密着性を向上させることができ、好ましい。前記浸透層は、厚みが0.2〜3μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜2μmの範囲である。例えば、前記透光性基材がトリアセチルセルロースであり、前記防眩層に含まれる樹脂がアクリル樹脂である場合には、前記浸透層を形成させることができる。前記浸透層は、例えば、防眩性フィルムの断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することで、確認することができ、厚みを測定することができる。
【0049】
本発明の防眩性フィルムでは、このような浸透層を有する防眩性フィルムに適用した場合であっても、防眩性と、白ボケの防止とを両立した所望するなだらかな表面凹凸形状を容易に形成することができる。前記浸透層は、前記防眩層との密着性が乏しい透光性基材であるほど、密着性の向上のため、厚く形成することが好ましい。
【0050】
図9Aに、本発明の防眩性フィルムの一例の構成を模式的に示す。図9Aの模式図に示すように、防眩層11において、粒子12およびチキソトロピー付与剤13が凝集して防眩層11の表面に凸状部14が形成されている。粒子12およびチキソトロピー付与剤13の凝集状態は、特に限定されないが、粒子12の少なくとも周りにチキソトロピー付与剤13が存在する傾向にある。凸状部14を形成する凝集部において、粒子12は、防眩層11の面方向に複数集まった状態で存在している。この結果、凸状部14は、なだらかな形状となっている。一方、前記防眩層に前記チキソトロピー付与剤が含まれていない場合、図9Bの模式図に示すように、防眩層11において、粒子12が、防眩層11の面方向だけでなく、その厚み方向にも複数凝集し、凸状部14aおよび14bが形成される。粒子12の面方向の凝集と厚み方向の凝集の度合いにより、例えば、防眩層11の表面に、凸状部14aおよび凸状部14bのような凸状部が形成されることにより外観欠点および白ボケが発生しやすくなる。
【0051】
前述のような形状の凸状部は、以下のメカニズムにより形成されると推察される。ただし、本発明は、この推察により、なんら制限および限定されない。以下の推察は、溶媒を含む前記防眩層形成材料を、透光性基材に塗工等して塗膜を形成することで、前記防眩層を形成する場合を例にあげて説明する。
【0052】
図10Aは、本発明の防眩性フィルムにおいて、防眩層における凝集状態のメカニズムを説明するために、本発明の防眩性フィルムの厚み方向の断面を側面から見た状態を、模式的に示す概略説明図である。図10Bは、本発明とは異なる粒子の凝集状態を、模式的に示す概略説明図である。図10Aおよび図10Bにおいて、(a)は、溶媒を含む前記防眩層形成材料(塗工液)を、透光性基材に塗工等して塗膜を形成した状態を示し、(b)は、塗膜から溶媒を除去して防眩層を形成した状態を示す。
【0053】
図10Aの場合では、樹脂、粒子およびチキソトロピー付与剤を含む防眩層形成材料を用いて防眩層を形成しているのに対し、図10Bの場合では、防眩層形成材料がチキソトロピー付与剤を含んでいない。なお、図10Aでは、図面の見易さを考慮して、前記チキソトロピー付与剤の図示を省略している。
【0054】
以下、図10Aを参照して、前述のような、なだらかな凸状部が形成されるメカニズムを説明する。図10A(a)および(b)に示すように、前記塗膜に含まれる溶媒を除去することで、塗膜の膜厚は収縮(減少)する。塗膜の下面側(裏面側)は前記透光性基材でとまっているため、前記塗膜の収縮は、前記塗膜の上面側(表面側)から起こる。図10A(a)において、前記塗膜の膜厚が減った部分に存在する粒子(例えば、粒子1、粒子4および粒子5)は、この膜厚減少により、前記塗膜の下面側に移動しようとする。これに対し、膜厚変化の影響を受けないか、影響を受けにくい下面寄りの比較的低い位置に存在する粒子(例えば、粒子2、粒子3および粒子6)は、防眩層形成材料に含まれるチキソトロピー付与剤の沈降防止効果(チキソトロピー効果)により、下面側への移動が抑制されている(例えば、二点鎖線10より下面側には移動しない)。このため、前記塗膜の収縮が起こっても、下面側の粒子(粒子2、粒子3および粒子6)は、表面側から移動しようとする粒子(粒子1、粒子4および粒子5)により、下方(裏面側)へ押されず、ほぼその位置に留まっている。前記下面側の粒子(粒子2、粒子3および粒子6)がほぼその位置に留まるため、前記表面側から移動しようとする粒子(粒子1、粒子4および粒子5)は、前記下面側の粒子が存在していない、前記下面側の粒子の隣(前記塗膜の面方向)に移動する。このようにして、本発明の防眩性フィルムでは、前記防眩層において、前記粒子が前記防眩層の面方向に複数集まった状態で存在していると推察される。
【0055】
以上のようにして、前記防眩層において、前記粒子が前記防眩層の面方向に凝集するため、図10A(b)に示すように、前記凸状部が、なだらかな形状となる。また、前記防眩層に、沈降防止効果を有するチキソトロピー付与剤が含まれることで、前記粒子が防眩層の厚み方向に過度に凝集することが回避される。これによって、外観欠点となる防眩層表面の突起状物の発生を防止できる。
【0056】
一方、防眩層形成材料がチキソトロピー付与剤を含んでいない場合では、粒子にはチキソトロピー付与剤の沈降防止効果が働かない。このため、前記膜厚の収縮により、図10B(a)に示すように、下面側の粒子(粒子2、粒子3および粒子6)は、上面側の他の粒子(粒子1、粒子4および粒子5)と共に、透光性基材面側に沈降して集まる(例えば、二点鎖線10より下面側に移動して集まる)。このため、図10B(b)に示すように、前記粒子が前記防眩層の厚み方向に過度に凝集する部分が発生する場合がある。そして、この部分が外観欠点となる防眩層表面の突起状物になると推察される。
【0057】
なお、本発明の防眩性フィルムは、前記凸状部が、前述のようななだらかな形状となり、外観欠点となる防眩層表面の突起状物の発生を防止できるものであれば、例えば、防眩層の厚み方向に直接または間接的に重なる位置で、前記粒子が多少存在していてもよい。前記粒子の重なりを個数で表す場合に、前記防眩層の「厚み方向」とは、図11(a)および(b)の模式図に示すように、例えば、前記透光性基材の面方向(前記防眩層の面方向)とのなす角度が、45〜135度の範囲内の方向を示す。そして、例えば、前記防眩層の厚み(d)が3〜12μmの範囲内にあり、かつ、前記粒子の粒子径(D)が2.5〜10μmの範囲内にあり、さらに前記厚み(d)と前記粒子径(D)との関係が、0.3≦D/d≦0.9の範囲内にある場合に、例えば、前記防眩層の厚み方向に対する前記粒子の重なりは、4個以下が好ましく、より好ましくは3個以下である。
【0058】
つぎに、前述の推察されるメカニズムにおいて、前記透光性基材と前記防眩層との間に、前述の浸透層が形成される場合について、図10Cおよび図10Dの概略説明図を参照して説明する。図10Cは、図10Aを参照して説明したのと同様に、本発明の防眩性フィルムについての概略説明図であり、図10Dは、図10Bを参照して説明したのと同様に、本発明とは異なる防眩性フィルムについての概略説明図である。図10Cおよび図10Dにおいて、(a)は、塗膜から溶媒を除去して防眩層が形成される途中の状態を示し、(b)は、塗膜から溶媒を除去して防眩層を形成した状態を示す。図10Cおよび図10Dにおいて、前記浸透層には、平行斜線を付している。なお、本発明は、以下の説明により、なんら制限および限定されない。
【0059】
図10Cを参照して、本発明の防眩性フィルムの場合について説明する。図10C(a)および(b)に示すように、前記塗膜に含まれる溶媒を除去することで、前記塗膜の膜厚が収縮(減少)して防眩層が形成される。さらに前記防眩層の形成とともに、前記防眩層形成材料に含まれる樹脂が前記透光性基材に浸透することで、前記防眩層と透光性基材との間に浸透層が形成される。図10C(a)に示すように、前記浸透層が形成される前の状態では、前記チキソトロピー付与剤の沈降防止効果により、前記粒子は、前記透光性基材と接さずに、離れた状態で存在する傾向にある。そして、前記浸透層が形成される際には、前記透光性基材側に位置する樹脂、すなわち、前記粒子の下方(透光性基材側)に位置する樹脂が主に前記浸透層に浸透していく。これにより、本発明では、前記透光性基材への前記樹脂の浸透に追随して、前記防眩層の面方向に凝集した粒子群とそれを覆う樹脂とが一緒になって、前記透光性基材側に移動する。すなわち、前記粒子は、図10C(a)に示す凝集状態を維持しながら、図10C(b)に示すように、前記透光性基材側に移動する。これにより、前記防眩層表面側の粒子群とそれを覆う前記樹脂がその表面形状を維持しながら、全体としてあたかも前記透光性基材側へ落ち込むような状態をとる。これにより、本発明の防眩性フィルムでは、前記防眩層の表面形状の変化を受けにくいと推察される。
【0060】
さらに、本発明では、前記チキソトロピー付与剤により、前記樹脂がチキソトロピー(チキソ性)を有している。このため、前記浸透層を厚く形成した場合でも、前記粒子群の表面を覆って凸状部を構成する樹脂は、前記透明性基材側へ移動しにくいと推察される。このような効果も相まって、本発明の防眩性フィルムでは、前記防眩層の表面形状の変化を受けにくいと推察される。
【0061】
以上のように、本発明では、前記防眩層の厚さ方向における粒子と前記透光性基材との位置関係と、前記チキソトロピー付与剤のチキソ性との相乗効果により、前記浸透層を有するものであっても、防眩層の表面形状の変化を受けにくいと推察される。
【0062】
図10Dを参照して、チキソトロピー付与剤を含まない、本発明とは異なる防眩性フィルムの場合について説明する。チキソトロピー付与剤を含んでいない場合、前述のように、粒子にはチキソトロピー付与剤の沈降防止効果が働かない。したがって、図10D(a)に示すように、前記粒子は、前記透光性基材に接した位置で存在する傾向にある。さらに、前記樹脂が前記透光性基材に浸透することで形成される浸透層に、前記粒子は移動することができない。このため、前記浸透層が形成される際には、図10D(a)に示す粒子群は、前記透光性基材に接した状態でその位置に留まり、前記粒子群の周りの樹脂だけが、前記透光性基材へ浸透していくことになる。その結果、図10D(b)に示すように、その位置で留まる前記粒子群に対して前記防眩層表面の樹脂の量が減ることになるため、前記防眩層の表面形状が変化しやすくなり、外観欠点となる防眩層表面の突起状物がより一層目立ち易くなると推察される。
【0063】
本発明の防眩性フィルムは、前記防眩層において、最大径が200μm以上の外観欠点が前記防眩層の1m2あたり1個以下であることが好ましい。より好ましくは、前記外観欠点が無いことである。
【0064】
本発明の防眩性フィルムは、へイズ値が0〜10%の範囲内であることが好ましい。前記ヘイズ値とは、JIS K 7136(2000年版)に準じた防眩性フィルム全体のヘイズ値(曇度)である。前記ヘイズ値は、0〜5%の範囲がより好ましく、さらに好ましくは、0〜3%の範囲である。ヘイズ値を上記範囲とするためには、前記粒子と前記樹脂との屈折率差が0.001〜0.02の範囲となるように、前記粒子と前記樹脂とを選択することが好ましい。ヘイズ値が前記範囲であることにより、鮮明な画像が得られ、また、暗所でのコントラストを向上させることができる。
【0065】
本発明の防眩性フィルムは、前記防眩層表面の凹凸形状において、JIS B 0601(1994年版)に規定される算術平均表面粗さRaが0.02〜0.3μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.2μmの範囲である。防眩性フィルムの表面における外光や像の映り込みを防ぐためには、ある程度の表面の荒れがあることが好ましいが、Raが0.02μm以上あることで前記映り込みを改善することができる。前記Raが上記範囲にあると、画像表示装置等に使用したときに、斜め方向から見た場合の反射光の散乱が抑えられ、白ボケが改善されるとともに、明所でのコントラストも向上させることができる。
【0066】
前記凹凸形状は、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定した表面の平均凹凸間距離Sm(mm)が0.05〜0.4の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.05〜0.3の範囲、さらに好ましくは0.08〜0.3の範囲、最も好ましくは、0.8〜0.25の範囲である。前記範囲とすることで、例えば、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できる防眩性フィルムとすることができる。
【0067】
本発明の防眩性フィルムは、前記防眩層表面の凹凸形状において、平均傾斜角θa(°)が0.1〜1.5の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0の範囲である。ここで、前記平均傾斜角θaは、下記数式(1)で定義される値である。前記平均傾斜角θaは、例えば、後述の実施例に記載の方法により測定される値である。
平均傾斜角θa=tan−1Δa (1)
【0068】
前記数式(1)において、Δaは、下記数式(2)に示すように、JIS B 0601(1994年度版)に規定される粗さ曲線の基準長さLにおいて、隣り合う山の頂点と谷の最下点との差(高さh)の合計(h1+h2+h3・・・+hn)を前記基準長さLで割った値である。前記粗さ曲線は、断面曲線から、所定の波長より長い表面うねり成分を位相差補償形高域フィルタで除去した曲線である。また、前記断面曲線とは、対象面に直角な平面で対象面を切断したときに、その切り口に現れる輪郭である。
Δa=(h1+h2+h3・・・+hn)/L (2)
【0069】
Ra、Smおよびθaがすべて、上記範囲にあると、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できる防眩性フィルムとすることができる。
【0070】
前記防眩層を形成するにあたり、調製した防眩層形成材料(塗工液)がチキソ性を示していることが好ましく、下記で規定されるTi値が、1.3〜3.5の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.3〜2.8の範囲である。
Ti値=β1/β2
ここで、β1はHAAKE社製レオストレス6000を用いてずり速度20(1/s)の条件で測定される粘度、β2はHAAKE社製レオストレス6000を用いてずり速度200(1/s)の条件で測定される粘度である。
【0071】
Ti値が、1.3未満であると、外観欠点が生じやすくなり、防眩性、白ボケについての特性が悪化する。また、Ti値が、3.5を超えると、前記粒子が凝集しにくく分散状態となりやすくなり、本発明の防眩性フィルムが得られにくくなる。
【0072】
本発明の防眩性フィルムの製造方法は、特に制限されず、いかなる方法で製造されてもよいが、例えば、前記本発明の防眩性フィルムの製造方法により製造できる。前記本発明の防眩性フィルムの製造方法により製造された防眩性フィルムは、上述の本発明の防眩性フィルムと同様の特性を備えていることが好ましい。本発明の防眩性フィルムは、具体的には、例えば、前記樹脂、前記粒子、前記チキソトロピー付与剤および溶媒を含む防眩層形成材料(塗工液)を準備し、前記防眩層形成材料(塗工液)を前記透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材の少なくとも一方の面に塗工して塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させて前記防眩層を形成することにより、製造できる。本発明の防眩性フィルムの製造においては、金型による転写方式や、サンドブラスト、エンボスロールなどの適宜な方式で凹凸形状を付与する方法などを、併せて用いることもできる。
【0073】
前記溶媒は、特に制限されず、種々の溶媒を使用可能であり、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記樹脂の組成、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤の種類、含有量等に応じて、本発明の防眩性フィルムを得るために、最適な溶媒種類や溶媒比率が存在する。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等があげられる。
【0074】
透光性基材として、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)を採用して浸透層を形成する場合は、TACに対する良溶媒が好適に使用できる。その溶媒としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノンなどをあげることができる。
【0075】
また、溶媒を適宜選択することによって、チキソトロピー付与剤による防眩層形成材料(塗工液)へのチキソ性を良好に発現させることができる。例えば、有機粘土を用いる場合には、トルエンおよびキシレンを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、酸化ポリオレフィンを用いる場合には、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルメーテルを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、変性ウレアを用いる場合には、酢酸ブチルおよびメチルイソブチルケトンを好適に、単独使用または併用することができる。
【0076】
前記防眩層形成材料には、各種レベリング剤を添加することができる。前記レベリング剤としては、塗工ムラ防止(塗工面の均一化)を目的に、例えば、フッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を用いることができる。本発明では、防眩層表面に防汚性が求められる場合、または、後述のように反射防止層(低屈折率層)や層間充填剤を含む層が防眩層上に形成される場合などに応じて、適宜レベリング剤を選定することができる。本発明では、例えば、前記チキソトロピー付与剤を含ませることで塗工液にチキソ性を発現させることができるため、塗工ムラが発生しにくい。このため、本発明は、例えば、前記レベリング剤の選択肢を広げられるという優位点を有している。
【0077】
前記レベリング剤の配合量は、前記樹脂100重量部に対して、例えば、5重量部以下、好ましくは0.01〜5重量部の範囲である。
【0078】
前記防眩層形成材料には、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、防汚剤、酸化防止剤等が添加されてもよい。これらの添加剤は一種類を単独で使用してもよく、また二種類以上併用してもよい。
【0079】
前記防眩層形成材料には、例えば、特開2008−88309号公報に記載されるような、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0080】
前記防眩層形成材料を透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材上に塗工する方法としては、例えば、ファンテンコート法、ダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗工法を用いることができる。
【0081】
前記防眩層形成材料を塗工して透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材の上に塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させる。前記硬化に先立ち、前記塗膜を乾燥させることが好ましい。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でもよいし、風を吹きつけての風乾であってもよいし、加熱乾燥であってもよいし、これらを組み合わせた方法であってもよい。
【0082】
前記防眩層形成材料の塗膜の硬化手段は、特に制限されないが、紫外線硬化が好ましい。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜500mJ/cm2が好ましい。照射量が、50mJ/cm2以上であれば、硬化がより十分となり、形成される防眩層の硬度もより十分なものとなる。また、500mJ/cm2以下であれば、形成される防眩層の着色を防止することができる。
【0083】
以上のようにして、透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材の少なくとも一方の面に、前記防眩層を形成することにより、本発明の防眩性フィルムを製造することができる。なお、本発明の防眩性フィルムは、前述の方法以外の製造方法で製造してもよい。本発明の防眩性フィルムの硬度は、鉛筆硬度において、層の厚みにも影響されるが、2H以上の硬度を有することが好ましい。
【0084】
本発明の防眩性フィルムの一例としては、透明プラスチックフィルム基材の片方の面に、防眩層が形成されているものをあげることができる。前記防眩層は、粒子を含んでおり、これによって、防眩層の表面が凹凸形状となっている。なお、この例では、透明プラスチックフィルム基材の片面に防眩層が形成されているが、本発明は、これに限定されず、透明プラスチックフィルム基材の両面に防眩層が形成された防眩性フィルムであってもよい。また、この例の防眩層は、単層であるが、本発明は、これに制限されず、前記防眩層は、二層以上が積層された複数層構造であってもよい。
【0085】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記防眩層の上に、反射防止層(低屈折率層)を配置してもよい。例えば、画像表示装置に防眩性フィルムを装着した場合、画像の視認性を低下させる要因のひとつに空気と防眩層界面での光の反射があげられる。反射防止層は、その表面反射を低減させるものである。なお、防眩層および反射防止層は、透明プラスチックフィルム基材等の両面に形成してもよい。また、防眩層および反射防止層は、それぞれ、二層以上が積層された複数層構造であってもよい。
【0086】
本発明において、前記反射防止層は、厚みおよび屈折率を厳密に制御した光学薄膜若しくは前記光学薄膜を二層以上積層したものである。前記反射防止層は、光の干渉効果を利用して入射光と反射光の逆転した位相を互いに打ち消し合わせることで反射防止機能を発現する。反射防止機能を発現させる可視光線の波長領域は、例えば、380〜780nmであり、特に視感度が高い波長領域は450〜650nmの範囲であり、その中心波長である550nmの反射率を最小にするように反射防止層を設計することが好ましい。
【0087】
光の干渉効果に基づく前記反射防止層の設計において、その干渉効果を向上させる手段としては、例えば、前記反射防止層と前記防眩層の屈折率差を大きくする方法がある。一般的に、二ないし五層の光学薄層(厚みおよび屈折率を厳密に制御した薄膜)を積層した構造の多層反射防止層では、屈折率の異なる成分を所定の厚さだけ複数層形成することで、反射防止層の光学設計の自由度が上がり、より反射防止効果を向上させることができ、分光反射特性も可視光領域で均一(フラット)にすることが可能になる。前記光学薄膜において、高い厚み精度が要求されるため、一般的に、各層の形成は、ドライ方式である真空蒸着、スパッタリング、CVD等で実施される。
【0088】
また、汚染物の付着防止および付着した汚染物の除去容易性の向上のために、フッ素基含有のシラン系化合物若しくはフッ素基含有の有機化合物等から形成される汚染防止層を前記反射防止層上に積層することが好ましい。
【0089】
本発明の防眩性フィルムおよびその製造方法において、前記透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材および前記防眩層の少なくとも一方に対し表面処理を行うことが好ましい。前記透明プラスチックフィルム基材表面を表面処理すれば、前記防眩層または偏光子若しくは偏光板との密着性がさらに向上する。また、前記防眩層表面を表面処理すれば、前記反射防止層または偏光子若しくは偏光板との密着性がさらに向上する。
【0090】
前記透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材の一方の面に前記防眩層が形成されている防眩性フィルムおよびその製造方法において、カール発生を防止するために、他方の面に対し溶剤処理を行ってもよい。また、前記透明プラスチックフィルム基材等の一方の面に前記防眩層が形成されている防眩性フィルムおよびその製造方法において、カール発生を防止するために、他方の面に透明樹脂層を形成してもよい。
【0091】
本発明の防眩性フィルムは、通常、前記透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材側を、粘着剤や接着剤を介して、LCDに用いられている光学部材に貼り合せることができる。なお、この貼り合わせにあたり、前記透光性基材表面に対し、前述のような各種の表面処理を行ってもよい。
【0092】
前記光学部材としては、例えば、偏光子または偏光板があげられる。偏光板は、偏光子の片側または両側に透明保護フィルムを有するという構成が一般的である。偏光子の両面に透明保護フィルムを設ける場合は、表裏の透明保護フィルムは、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置される。また、偏光板は、2枚の偏光板の吸収軸が互いに略直交するように配置される。
【0093】
つぎに、本発明の防眩性フィルムを積層した光学部材について、偏光板を例にして説明する。本発明の防眩性フィルムを、接着剤や粘着剤などを用いて偏光子または偏光板と積層することによって、本発明の機能を有した偏光板を得ることができる。
【0094】
前記偏光子としては、特に制限されず、各種のものを使用できる。前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等があげられる。
【0095】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、位相差値の安定性などに優れるものが好ましい。前記透明保護フィルムを形成する材料としては、例えば、前記透明プラスチックフィルム基材と同様のものがあげられる。
【0096】
前記、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載の高分子フィルムがあげられる。前記高分子フィルムは、前記樹脂組成物を、フィルム状に押出成型することにより製造できる。前記高分子フィルムは、位相差が小さく、光弾性係数が小さいため、偏光板等の保護フィルムに適用した場合には、歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0097】
前記透明保護フィルムは、偏光特性や耐久性などの点から、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂製のフィルムおよびノルボルネン系樹脂製のフィルムが好ましい。前記透明保護フィルムの市販品としては、例えば、商品名「フジタック」(富士フイルム社製)、商品名「ゼオノア」(日本ゼオン社製)、商品名「アートン」(JSR社製)などがあげられる。前記透明保護フィルムの厚みは、特に制限されないが、強度、取扱性等の作業性、薄層性等の点より、例えば、1〜500μmの範囲である。
【0098】
前記防眩性フィルムを積層した偏光板の構成は、特に制限されないが、例えば、前記防眩性フィルムの上に、透明保護フィルム、前記偏光子および前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよいし、前記防眩性フィルム上に、前記偏光子、前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよい。
【0099】
本発明の画像表示装置は、本発明の防眩性フィルムを用いる以外は、従来の画像表示装置と同様の構成である。例えば、LCDの場合、液晶セル、偏光板等の光学部材、および必要に応じ照明システム(バックライト等)等の各構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により製造できる。
【0100】
本発明の画像表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等である。
【実施例】
【0101】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例および比較例により制限されない。なお、下記実施例および比較例における各種特性は、下記の方法により評価または測定を行った。
【0102】
(ヘイズ値)
へイズ値の測定方法は、JIS K 7136(2000年版)のヘイズ(曇度)に準じ、ヘイズメーター((株)村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定した。
【0103】
(表面形状測定)
防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、松浪ガラス工業(株)製のガラス板(厚み1.3mm)を粘着剤で貼り合わせ、高精度微細形状測定器(商品名;サーフコーダET4000、(株)小坂研究所製)を用いて、カットオフ値0.8mmの条件で前記防眩層の表面形状を測定し、算術平均表面粗さRa、平均凹凸間距離Smおよび平均傾斜角θaを求めた。なお、前記高精度微細形状測定器は、前記算術平均表面粗さRaおよび前記平均傾斜角θaを自動算出する。前記算術平均表面粗さRaおよび前記平均傾斜角θaは、JIS B 0601(1994年版)に基づくものである。前記平均凹凸間距離Smは、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定した表面の平均凹凸間距離(mm)である。
【0104】
(防眩性評価)
(1)防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製、厚み2.0mm)を粘着剤で貼り合わせ、裏面の反射をなくしたサンプルを作製した。
(2)一般的にディスプレイを用いるオフィス環境下(約1000Lx)において、サンプルを蛍光灯(三波長光源)で照らし、上記で作製したサンプルの防眩性を、下記の基準で目視にて判定した。
判定基準
AA:防眩性に極めて優れ、写り込む蛍光灯の輪郭の像を残さない。
A :防眩性が良好であるが、写り込む蛍光灯の輪郭の像がわずかに残る。
B :防眩性に劣り、蛍光灯の輪郭の像が写り込む。
C :防眩性がほとんどない。
【0105】
(白ボケ評価)
(1)防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、黒色アクリル板(日東樹脂工業(株)製、厚み1.0mm)を粘着剤で貼り合わせ、裏面の反射をなくしたサンプルを作製した。
(2)一般的にディスプレイを用いるオフィス環境下(約1000Lx)にて、上記で作製したサンプルの平面に対し垂直方向を基準(0°)として60°の方向から見て、白ボケ現象を目視により観察し、下記の判定基準で評価した。
判定基準
AA:白ボケがほとんどない。
A :白ボケがあるが、視認性への影響は小さい。
B :白ボケが強く、視認性を著しく低下させる。
【0106】
(微粒子の重量平均粒径)
コールターカウント法により、微粒子の重量平均粒径を測定した。具体的には、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、微粒子が細孔を通過する際の微粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、微粒子の数と体積を測定し、重量平均粒径を算出した。
【0107】
(防眩層の厚み)
(株)ミツトヨ製のマイクロゲージ式厚み計を用い、防眩性フィルムの全体厚みを測定し、前記全体厚みから、透光性基材の厚みを差し引くことにより、防眩層の厚みを算出した。
【0108】
(凸状部高さ)
防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、松浪ガラス工業(株)製のガラス板(厚み1.3mm)を粘着剤で貼り合わせ、非接触式3次元表面形状測定器(商品名;Wyko、日本ビーコ(株)製)を用いて、対物レンズ10倍、測定面積595μm×452μmにて、前記防眩層の表面形状を測定した。次いで、前記領域で得られた表面形状における凸状部の中心を通る直線で断面した二次元プロファイルを得た。得られた二次元プロファイルにおける中心線(粗さ平均線)からの頂部(凸状部)の高さを、凸状部高さとして算出した。
【0109】
(外観評価)
1m2の防眩性フィルムを用意し、暗室内で蛍光灯(1000Lx)を用いて、30cmの距離から外観欠点について目視で確認した。確認された外観欠点について、目盛り付きのルーペを用いて観察し、外観欠点の大きさ(最大径)を測定し、200μm以上であるものの個数をカウントした。
【0110】
(凝集状態評価)
防眩性フィルムの面を、垂直方向から光学顕微鏡(オリンパス(株)製、「MX61L」)を用いて、半透過モードで、倍率を500倍として粒子の分布を確認した。粒子が隣り合わせになっているものを面方向に凝集しているものと判断した。
【0111】
(浸透層の厚み)
防眩性フィルムの断面を切断し、その切断面について、透過型電子顕微鏡(TEM、日立製作所(株)製、「H−7650」)で、加速電圧100kVの条件で観察し、樹脂が透光性基材に浸透して形成された浸透層の厚みを測定した。
【0112】
(実施例1)
防眩層形成材料に含まれる樹脂として、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「UV1700B」、固形分100%)80重量部、および、ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)20重量部を準備した。前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:5.0μm、屈折率:1.520)を2重量部、前記チキソトロピー付与剤として有機粘土である合成スメクタイト(コープケミカル(株)製、商品名「ルーセンタイトSAN」)を1.5重量部、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)を3重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「PC4100」、固形分10%)を0.5部混合した。なお、前記有機粘土は、トルエンで固形分が6.0%になるよう希釈して用いた。この混合物を、固形分濃度が40重量%となるように、トルエン/シクロペンタノン(CPN)混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製した。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)の粘度から算出される下記Ti値は、2.0であった。
Ti値=β1/β2
ここで、β1はHAAKE社製レオストレス6000を用いてずり速度20(1/s)の条件で測定される粘度、β2はHAAKE社製レオストレス6000を用いてずり速度200(1/s)の条件で測定される粘度である。
【0113】
透光性基材として、透明プラスチックフィルム基材(トリアセチルセルロースフィルム、富士フイルム(株)製、商品名「フジタック」、厚さ:60μm、屈折率:1.49)を準備した。前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、前記防眩層形成材料(塗工液)を、コンマコータを用いて塗布して塗膜を形成した。そして、この塗膜が形成された透明プラスチックフィルム基材を、約30°の角度で傾斜させながら乾燥工程へと搬送した。乾燥工程において、90℃で2分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み7.5μmの防眩層を形成し、実施例1の防眩性フィルムを得た。得られた防眩性フィルムについて、断面のTEM観察を行い浸透層の厚みを測定した、TEM写真を図7に示す。前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0114】
(実施例2)
前記粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:3.0μm、屈折率:1.52)を用いたこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例2の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.0であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0115】
(実施例3)
前記粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:6.0μm、屈折率:1.52)を用いたこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例3の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.0であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0116】
(実施例4)
実施例1と同様に調製した混合物を、固形分濃度が35重量%となるように希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例4の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.0であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0117】
(実施例5)
前記粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:1.5μm、屈折率:1.52)を用いたこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例5の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.0であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0118】
(実施例6)
前記チキソトロピー付与剤として酸化ポリオレフィン(楠本化成(株)製、商品名「ディスパロン4200−20」)4.0重量部を用いて調製した混合物を、固形分濃度が32重量%となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)/CPN混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例6の防眩性フィルムを得た。前記酸化ポリオレフィンは、PMで固形分が6%になるよう希釈して用いた。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.7であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0119】
(実施例7)
前記チキソトロピー付与剤として変性ウレア(ビックケミ−社製、商品名「BYK410」)0.5重量部を用いて調製した混合物を、固形分濃度が45重量%となるように、メチルイソブチルケトン(MIBK)/CPN混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例7の防眩性フィルムを得た。前記変性ウレアは、MIBKで固形分が6%になるよう希釈して用いた。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.8であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0120】
(実施例8)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を0.4重量部用いて調製した混合物を、固形分濃度が37重量%となるように希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例8の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.3であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0121】
(実施例9)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を1.4重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例9の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.8であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0122】
(実施例10)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を1.5重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例10の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.9であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0123】
(実施例11)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を1.7重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例11の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.1であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0124】
(実施例12)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を2.0重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例12の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.3であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0125】
(実施例13)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を2.5重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例13の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.6であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0126】
(実施例14)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を3.2重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例14の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、3.0であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0127】
(比較例1)
有機粘土を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様な方法にて、比較例1の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.2であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0128】
(比較例2)
比較例1と同様に調製した混合物を、固形分濃度が37重量%となるように希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、比較例1と同様な方法にて、比較例2の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.2であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0129】
(比較例3)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記粒子を8重量部混合したこと以外は、比較例1と同様な方法にて、比較例3の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.2であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0130】
(比較例4)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:3.0μm、屈折率:1.52)を7重量用いて調製した混合物を、固形分濃度が37重量%となるように、PM/CPN混合溶媒(重量比9/1)で希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、比較例1と同様な方法にて、比較例4の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.2であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0131】
このようにして得られた実施例1〜14および比較例1〜4の各防眩性フィルムについて、各種特性を測定若しくは評価した。その結果を、図1〜図6および下記表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
前記表1に示すように、実施例においては、外観評価、防眩性および白ボケのすべてについて、良好な結果が得られた。一方、チキソトロピー付与剤を添加していない比較例1〜4については、外観評価において、外観欠点が認められ、比較例1、2および4では、防眩性についても、実施例よりも劣る結果となった。このように、比較例においては、上記のすべての特性について良好なものは得られなかった。
【0134】
図1(a)および図4(a)に、実施例1および比較例2で得られた防眩性フィルムの防眩層表面を観察した光学顕微鏡(半透過モード)写真を示す。図1(b)および図4(b)は、それぞれ、図1(a)および図4(a)の写真において観察される粒子の分布を示した模式図である。また、図2および図5(a)に、実施例1および比較例2で得られた防眩性フィルムの断面を観察したSEM(走査型電子顕微鏡)写真を示す。図5(b)は、図5(a)の写真において観察される粒子の分布を示した模式図である。そして、図3および図6に、実施例1および比較例2で得られた防眩性フィルムの表面形状を3次元的に示したプロファイルを示す。表面の写真(図1参照)および表面形状の3次元プロファイル(図3参照)からは、実施例1で得られた防眩性フィルムにおいては、粒子が防眩層の面方向に凝集したドメイン構造を有していることがわかる(例えば、図1(a)および(b)中の円で囲った部分等)。そして、複数の凝集部は寄り集まることなく、全体で海島構造を形成している。また、断面写真(図2参照)からは、実施例1で得られた防眩性フィルムにおいては、粒子の少なくとも周りにチキソトロピー付与剤が存在していることがわかる。一方、比較例2で得られた防眩性フィルムでは、粒子が防眩層の厚み方向に多数重なる部分を有している(例えば、図4(a)および(b)中の円で囲った部分等)。この厚み方向の粒子の重なりが増大すると、その部分が外観欠点として視認されることとなる。図6(a)は、比較例2で得られた防眩性フィルムにおける、外観欠点がない部分の3次元プロファイルである。図5(a)は、比較例2で得られた防眩性フィルムにおける、外観欠点の部分の断面写真であり、図6(b)は、同じく外観欠点の部分の3次元プロファイルである。なお、外観欠点が存在する箇所について、凸状部高さを測定したところ、外観欠点の突起物を備えた凸状部高さは、防眩層の厚み(7.5μm)の0.4倍以上となっていた。前記実施例で得られた防眩性フィルムと前記比較例で得られた防眩性フィルムとを比べると、前記実施例で得られた防眩性フィルムの表面形状は、なだらかな凹凸となっていることがわかる。このようななだらかな表面凹凸形状を実現したことにより、防眩性フィルムとして良好なものを得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の防眩性フィルムおよびその製造方法によれば、防眩性と、白ボケの防止とを両立した優れた表示特性を示す。さらに、外観欠点も発生しにくい。したがって、本発明の防眩性フィルムは、例えば、偏光板等の光学部材、液晶パネル、および、LCD(液晶ディスプレイ)やOLED(有機ELディスプレイ)等の画像表示装置に好適に使用でき、その用途は制限されず、広い分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
1〜6、12 粒子
11 防眩層
13 チキソトロピー付与剤
14、14a、14b 凸状部
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性フィルム、偏光板、画像表示装置および防眩性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防眩性フィルムは、陰極管表示装置(CRT)、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)およびエレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の、様々な画像表示装置において、外光の反射や像の映り込みによるコントラストの低下を防止するために、ディスプレイ表面に配置される。ディスプレイの最表面に防眩性フィルムを用いる場合には、明るい環境下での使用では光の拡散により黒表示の画像が白っぽくなる「白ボケ」という問題がある。この白ボケは防眩性フィルムの防眩性(拡散性)を落とすことで対応可能であるが、トレードオフとして映り込み防止が損なわれ本来の機能を低下させることになる。このように、防眩性の向上と白ボケ改善は、一般的に相反関係にあるとされているが、これらの特性を両立させるための、種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、防眩層を形成する微粒子含有塗料を基材上に塗工し、乾燥させる際に、溶媒の揮発時に発生する対流により塗工層表面のベナードセル構造を形成させることで、表面形状をなだらかなものに制御する提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、微粒子により三次元立体構造凝集部を形成させることで、表示特性を向上させるとの提案がある(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、防眩層の凹凸形状をなだらかにするために、防眩層の表面に表面調整層を形成した2層構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−257255号公報
【特許文献2】特許第4641846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1では、微粒子が平面状に集合することを利用して、ベナードセルを形成することにより防眩層表面をなだらかな凹凸構造とし、防眩性とコントラストとの両立を図っている。しかし、ベナードセルを利用して所望の形状を作るためには、塗工・乾燥工程において極めて緻密な生産条件の制御が必要となる。
【0007】
一方、特許文献2では、防眩層表面をなだらかな凹凸構造とするために、粒子を凝集させて形成した防眩層の表面に、さらに表面調整層を形成した2層構造となっている。このため、防眩層が1層構造のものと比べ、製造工程が多く、生産性が悪い。
【0008】
そこで、本発明者らは、表面がなだらかな凹凸構造を有する防眩層を、粒子を凝集させて形成するとともに、生産性とコストを考慮して防眩層を2層構造ではなく、1層構成で形成すべく、新規開発に着手した。鋭意開発を進めていたところ、粒子の凝集を利用して形成した1層構成の防眩層では、外観検査(暗室における蛍光灯での目視による)で防眩性フィルムの表面に欠点が見つかるという新たな課題に直面した。この外観欠点を有する防眩性フィルムは、製品として使用できず廃棄することになる。さらに、例えば防眩性フィルムを用いて枚葉状態の偏光板にしたものに外観欠点が見つかると、その外観欠点が1箇所であっても偏光板自体を廃棄しなければならない。このため、特に大型の液晶パネル用の偏光板ほど、外観欠点に対する廃棄面積が広くなり、歩留りが極めて悪くなる。
【0009】
この外観欠点のメカニズムについて検討を重ねた結果、この原因が防眩層表面に発生する突起状物(「ブツ」とも言う)に起因することが分かった。この突起状物の外観欠点は、なだらかな表面形状を有する防眩層を形成した場合に、特に顕著に現れると考えられる。すなわち、防眩層表面の凹凸形状が粗く(算術平均表面粗さRaが高い)、防眩性が高い防眩性フィルムでは、仮にこの突起状物を有するとしても、防眩効果による光の拡散によってそれほど顕著な外観欠点として現れなかったと考えられる。
【0010】
本発明者らは、さらに検討を進めるべく、この突起状物を断面して走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、複数の粒子が防眩層の厚み方向に重なりあって存在することが、この突起状物の発生要因であることを突き止めた。
【0011】
この突起状物を防眩層から無くすためには、使用する粒子の部数を減らしたり、粒径の小さな粒子を採用したりすることが考えられる。しかし、その場合、防眩性と、白ボケの防止とを両立した所望するなだらかな表面凹凸形状を形成することは困難であった。さらに、粒子に対して防眩層の厚みを厚くして、粒子の厚み方向の重なりを防止することも考えられるが、その場合、フィルムにカールが発生する等の問題が生じてしまう。
【0012】
そこで、本発明は、粒子の凝集を利用して防眩層を形成した防眩性フィルムであり、防眩性と、白ボケの防止とを両立した優れた表示特性を有するとともに、外観欠点となる防眩層表面の突起状物の発生を防止して製品の歩留まりを向上させた防眩性フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。さらには、この防眩性フィルムを用いた偏光板および画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の防眩性フィルムは、透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有する防眩性フィルムであって、
前記防眩層が、樹脂、粒子およびチキソトロピー付与剤(チキソ剤、thixotropic agent)を含む防眩層形成材料を用いて形成されており、
前記防眩層が、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤が凝集することによって、前記防眩層の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、
前記凸状部を形成する凝集部において、前記粒子が、前記防眩層の面方向に、複数集まった状態で存在することを特徴とする。
【0014】
本発明の偏光板は、偏光子および防眩性フィルムを有する偏光板であって、前記防眩性フィルムが、前記本発明の防眩性フィルムであることを特徴とする。
【0015】
本発明の画像表示装置は、防眩性フィルムを備える画像表示装置であって、前記防眩性フィルムが前記本発明の防眩性フィルムであることを特徴とする。
【0016】
本発明の画像表示装置は、偏光板を備える画像表示装置であって、前記偏光板が前記本発明の偏光板であることを特徴とする。
【0017】
本発明の防眩性フィルムの製造方法は、透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有する防眩性フィルムの製造方法であって、
樹脂、粒子、チキソトロピー付与剤および溶媒を含む塗工液を、前記透光性基材の少なくとも一方の面に塗工して塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させて前記防眩層を形成する防眩層形成工程を有し、
前記塗工液として、Ti値が1.3〜3.5の範囲のものを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の防眩性フィルムおよびその製造方法によれば、防眩性と、白ボケの防止とを両立した優れた表示特性を有するとともに、粒子の凝集を利用して防眩層を形成しているにもかかわらず、外観欠点となる防眩層表面の突起状物の発生を防止して製品の歩留まりを向上させることができる。さらには、この防眩性フィルムや、この防眩性フィルムを有する偏光板を用いた画像表示装置は、表示特性が優れたものになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は、本発明の実施例1における、防眩性フィルムの防眩層表面を観察した光学顕微鏡(半透過モード)写真である。図1(a)において、スケールは20μmである。図1(b)は、図1(a)の写真において観察される粒子の分布を示した模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1における、防眩性フィルムの断面を観察したSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。(a)および(b)は、同じ箇所を撮影した写真であり、(a)は、倍率2000倍、(b)は、倍率5000倍である。(c)は、同じ防眩性フィルムの別の箇所の写真である。
【図3】図3は、実施例1における、防眩性フィルムの表面形状を3次元的に示したプロファイルである。
【図4】図4(a)は、比較例2における、防眩性フィルムの防眩層表面を観察した光学顕微鏡(半透過モード)写真である。図4(a)において、スケールは20μmである。図4(b)は、図4(a)の写真において観察される粒子の分布を示した模式図である。
【図5】図5(a)は、比較例2における、防眩性フィルムの断面を観察したSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。図5(a)において、スケールは10μmである。図5(b)は、図5(a)の写真において観察される粒子の分布を示した模式図である。
【図6】図6は、比較例2における、防眩性フィルムの表面形状を3次元的に示したプロファイルである。
【図7】図7は、実施例1の防眩性フィルムにおける浸透層を観察した、TEM(透過型電子顕微鏡)写真である。
【図8】図8は、凸状部の高さの定義を説明する模式図である。
【図9A】図9Aは、本発明の防眩性フィルムの一例の構成を示す模式図である。
【図9B】図9Bは、本発明とは異なる、防眩層がチキソトロピー付与剤を含まない防眩性フィルムの一例の構成を示す模式図である。
【図10A】図10Aは、本発明の防眩性フィルムにおける、粒子の凝集に関して推察されるメカニズムを模式的に説明する概略説明図である。
【図10B】図10Bは、本発明とは異なる、防眩層がチキソトロピー付与剤を含まない防眩性フィルムにおける、粒子の凝集に関して推察されるメカニズムを模式的に説明する概略説明図である。
【図10C】図10Cは、本発明の防眩性フィルムにおける、浸透層が形成される場合の粒子の凝集に関して推察されるメカニズムを模式的に説明する概略説明図である。
【図10D】図10Dは、本発明とは異なる、防眩層がチキソトロピー付与剤を含まない防眩性フィルムにおける、浸透層が形成される場合の粒子の凝集に関して推察されるメカニズムを模式的に説明する概略説明図である。
【図11】図11は、本発明の防眩性フィルムにおける、防眩層の厚み方向および面方向の定義の一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記チキソトロピー付与剤が、有機粘土、酸化ポリオレフィンおよび変性ウレアからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0021】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記凸状部の前記防眩層の粗さ平均線からの高さが、前記防眩層の厚みの0.4倍未満であることが好ましい。
【0022】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記防眩層において、最大径が200μm以上の外観欠点が前記防眩層の1m2あたり1個以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記防眩層の厚み(d)が3〜12μmの範囲内にあり、かつ、前記粒子の粒子径(D)が2.5〜10μmの範囲内にあることが好ましい。この場合において、前記厚み(d)と前記粒子径(D)との関係が、0.3≦D/d≦0.9の範囲内にあることが好ましい。
【0024】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記防眩層において、前記樹脂100重量部に対し、前記粒子が0.2〜12重量部の範囲で含まれ、前記チキソトロピー付与剤が0.2〜5重量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0025】
本発明の防眩性フィルムは、前記透光性基材と前記防眩層との間に、前記樹脂が前記透光性基材に浸透して形成された浸透層を有していることが好ましい。
【0026】
つぎに、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の記載により制限されない。
【0027】
本発明の防眩性フィルムは、透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有するものである。前記透光性基材は、特に制限されないが、例えば、透明プラスチックフィルム基材等があげられる。
【0028】
前記透明プラスチックフィルム基材は、特に制限されないが、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下のもの)が好ましく、例えば、特開2008−90263号公報に記載の透明プラスチックフィルム基材があげられる。前記透明プラスチックフィルム基材としては、光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。本発明の防眩性フィルムは、例えば、保護フィルムとして偏光板に使用することもでき、この場合には、前記透明プラスチックフィルム基材としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン等から形成されたフィルムが好ましい。また、本発明において、後述するように、前記透明プラスチックフィルム基材は、偏光子自体であってもよい。このような構成であると、TAC等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので、偏光板若しくは画像表示装置の製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、このような構成であれば、偏光板を、より薄層化することができる。なお、前記透明プラスチックフィルム基材が偏光子である場合には、防眩層が、従来の保護層としての役割を果たすことになる。また、このような構成であれば、防眩性フィルムは、例えば、液晶セル表面に装着される場合、カバープレートとしての機能を兼ねることになる。
【0029】
本発明において、前記透明プラスチックフィルム基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、強度、取り扱い性などの作業性および薄層性などの点を考慮すると、10〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは20〜300μmの範囲であり、最適には、30〜200μmの範囲である。前記透明プラスチックフィルム基材の屈折率は、特に制限されない。前記屈折率は、例えば、1.30〜1.80の範囲であり、好ましくは、1.40〜1.70の範囲である。
【0030】
前記防眩層は、前記樹脂、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤を含む防眩層形成材料を用いて形成される。前記樹脂は、例えば、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線や光で硬化する電離放射線硬化性樹脂があげられる。前記樹脂として、市販の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能である。
【0031】
前記熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂としては、例えば、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化するアクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物が使用でき、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
前記樹脂には、例えば、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。前記反応性希釈剤は、例えば、特開2008−88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができ、例えば、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を含む。前記反応性希釈剤としては、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートが好ましい。これは、防眩層の硬度を、優れたものにできるからである。前記反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等もあげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
前記防眩層を形成するための粒子は、形成される防眩層表面を凹凸形状にして防眩性を付与し、また、前記防眩層のヘイズ値を制御することを主な機能とする。前記防眩層のヘイズ値は、前記粒子と前記樹脂との屈折率差を制御することで、設計することができる。前記粒子としては、例えば、無機粒子と有機粒子とがある。前記無機粒子は、特に制限されず、例えば、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、タルク粒子、カオリン粒子、硫酸カルシウム粒子等があげられる。また、前記有機粒子は、特に制限されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末(PMMA微粒子)、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等があげられる。これらの無機粒子および有機粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0034】
前記粒子の重量平均粒径(D)は、2.5〜10μmの範囲内にあることが好ましい。前記粒子の重量平均粒径を、前記範囲とすることで、例えば、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できる防眩性フィルムとすることができる。前記粒子の重量平均粒径は、より好ましくは、3〜7μmの範囲内である。なお、前記粒子の重量平均粒径は、例えば、コールターカウント法により測定できる。例えば、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、粒子が前記細孔を通過する際の粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、前記粒子の数と体積を測定し、重量平均粒径を算出する。
【0035】
前記粒子の形状は、特に制限されず、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の粒子であり、最も好ましくは球形の粒子である。
【0036】
前記防眩層における前記粒子の割合は、前記樹脂100重量部に対し、0.2〜12重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、0.5〜12重量部の範囲であり、さらに好ましくは1〜7重量部の範囲である。前記範囲とすることで、例えば、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できる防眩性フィルムとすることができる。
【0037】
前記防眩層を形成するためのチキソトロピー付与剤としては、例えば、有機粘土、酸化ポリオレフィン、変性ウレア等があげられる。
【0038】
前記有機粘土は、前記樹脂との親和性を改善するために、有機化処理した粘土であることが好ましい。有機粘土としては、例えば、層状有機粘土をあげることができる。前記有機粘土は、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ルーセンタイトSAN、ルーセンタイトSTN、ルーセンタイトSEN、ルーセンタイトSPN、ソマシフME−100、ソマシフMAE、ソマシフMTE、ソマシフMEE、ソマシフMPE(商品名、いずれもコープケミカル(株)製);エスベン、エスベンC、エスベンE、エスベンW、エスベンP、エスベンWX、エスベンN−400、エスベンNX、エスベンNX80、エスベンNO12S、エスベンNEZ、エスベンNO12、エスベンNE、エスベンNZ、エスベンNZ70、オルガナイト、オルガナイトD、オルガナイトT(商品名、いずれも(株)ホージュン製);クニピアF、クニピアG、クニピアG4(商品名、いずれもクニミネ工業(株)製);チクソゲルVZ、クレイトンHT、クレイトン40(商品名、いずれもロックウッド アディティブズ社製)等があげられる。
【0039】
前記酸化ポリオレフィンは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ディスパロン4200−20(商品名、楠本化成(株)製)、フローノンSA300(商品名、共栄社化学(株)製)等があげられる。
【0040】
前記変性ウレアは、イソシアネート単量体あるいはそのアダクト体と有機アミンとの反応物である。前記変性ウレアは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、BYK410(ビッグケミー社製)等があげられる。
【0041】
前記チキソトロピー付与剤は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記凸状部の前記防眩層の粗さ平均線からの高さが、前記防眩層の厚みの0.4倍未満であることが好ましい。より好ましくは、0.01倍以上0.4倍未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.01倍以上0.3倍未満の範囲である。この範囲であれば、前記凸状部に外観欠点となる突起物が形成されることを、好適に防止できる。本発明の防眩性フィルムは、このような高さの凸状部を有することで、外観欠点を生じにくくすることができる。ここで、前記平均線からの高さについて、図8を参照して説明する。図8は、前記防眩層の断面の二次元プロファイルの模式図であり、直線Lは、前記二次元プロファイルにおける粗さ平均線(中心線)である。前記二次元プロファイルにおける粗さ平均線からの頂部(凸状部)の高さHを、本発明における凸状部高さとする。図8において、前記凸状部のうち、前記平均線を越えている部分には、平行斜線を付している。また、前記防眩層の厚みは、防眩性フィルムの全体厚みを測定し、前記全体厚みから、透光性基材の厚みを差し引くことにより算出される、防眩層の厚みである。前記全体厚みおよび前記透光性基材の厚みは、例えば、マイクロゲージ式厚み計によって、測定することができる。
【0043】
前記防眩層における前記チキソトロピー付与剤の割合は、前記樹脂100重量部に対し、0.1〜5重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、0.2〜4重量部の範囲である。
【0044】
前記防眩層の厚み(d)は、特に制限されないが、3〜12μmの範囲内にあることが好ましい。前記防眩層の厚み(d)を、前記範囲とすることで、例えば、防眩性フィルムにおけるカールの発生を防ぐことができ、搬送性不良等の生産性の低下の問題を回避できる。また、前記厚み(d)が前記範囲にある場合、前記粒子の重量平均粒径(D)は、前述のように、2.5〜10μmの範囲内にあることが好ましい。前記防眩層の厚み(d)と、前記粒子の重量平均粒径(D)とが、前述の組み合わせであることで、さらに防眩性に優れる防眩性フィルムとすることができる。前記防眩層の厚み(d)は、より好ましくは、3〜8μmの範囲内である。
【0045】
前記防眩層の厚み(d)と前記粒子の重量平均粒径(D)との関係は、0.3≦D/d≦0.9の範囲内にあることが好ましい。このような関係にあることにより、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止でき、さらに、外観欠点のない防眩性フィルムとすることができる。
【0046】
本発明の防眩性フィルムでは、前述のように、前記防眩層は、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤が凝集することによって、前記防眩層の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、前記凸状部を形成する凝集部において、前記粒子が、前記防眩層の面方向に、複数集まった状態で存在する。これにより、前記凸状部が、なだらかな形状となっている。本発明の防眩性フィルムは、このような形状の凸状部を有することで、防眩性を維持しつつ、かつ、白ボケを防止することができ、さらに、外観欠点を生じにくくすることができる。
【0047】
防眩層の表面形状は、防眩層形成材料に含まれる粒子の凝集状態を制御することで、任意に設計することができる。前記粒子の凝集状態は、例えば、前記粒子の材質(例えば、粒子表面の化学的修飾状態、溶媒や樹脂に対する親和性等)、樹脂(バインダー)または溶媒の種類、組合せ等により制御できる。ここで、本発明では、前記防眩層形成材料に含まれるチキソトロピー付与剤により、前記粒子の凝集状態をコントロールすることができる。この結果、本発明では、前記粒子の凝集状態を前述のようにすることができ、前記凸状部を、なだらかな形状とすることができる。
【0048】
本発明の防眩性フィルムにおいて、透光性基材が樹脂等から形成されている場合、前記透光性基材と防眩層との界面において、浸透層を有していることが好ましい。前記浸透層は、前記防眩層の形成材料に含まれる樹脂成分が、前記透光性基材に浸透して形成される。浸透層が形成されると、透光性基材と防眩層との密着性を向上させることができ、好ましい。前記浸透層は、厚みが0.2〜3μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜2μmの範囲である。例えば、前記透光性基材がトリアセチルセルロースであり、前記防眩層に含まれる樹脂がアクリル樹脂である場合には、前記浸透層を形成させることができる。前記浸透層は、例えば、防眩性フィルムの断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することで、確認することができ、厚みを測定することができる。
【0049】
本発明の防眩性フィルムでは、このような浸透層を有する防眩性フィルムに適用した場合であっても、防眩性と、白ボケの防止とを両立した所望するなだらかな表面凹凸形状を容易に形成することができる。前記浸透層は、前記防眩層との密着性が乏しい透光性基材であるほど、密着性の向上のため、厚く形成することが好ましい。
【0050】
図9Aに、本発明の防眩性フィルムの一例の構成を模式的に示す。図9Aの模式図に示すように、防眩層11において、粒子12およびチキソトロピー付与剤13が凝集して防眩層11の表面に凸状部14が形成されている。粒子12およびチキソトロピー付与剤13の凝集状態は、特に限定されないが、粒子12の少なくとも周りにチキソトロピー付与剤13が存在する傾向にある。凸状部14を形成する凝集部において、粒子12は、防眩層11の面方向に複数集まった状態で存在している。この結果、凸状部14は、なだらかな形状となっている。一方、前記防眩層に前記チキソトロピー付与剤が含まれていない場合、図9Bの模式図に示すように、防眩層11において、粒子12が、防眩層11の面方向だけでなく、その厚み方向にも複数凝集し、凸状部14aおよび14bが形成される。粒子12の面方向の凝集と厚み方向の凝集の度合いにより、例えば、防眩層11の表面に、凸状部14aおよび凸状部14bのような凸状部が形成されることにより外観欠点および白ボケが発生しやすくなる。
【0051】
前述のような形状の凸状部は、以下のメカニズムにより形成されると推察される。ただし、本発明は、この推察により、なんら制限および限定されない。以下の推察は、溶媒を含む前記防眩層形成材料を、透光性基材に塗工等して塗膜を形成することで、前記防眩層を形成する場合を例にあげて説明する。
【0052】
図10Aは、本発明の防眩性フィルムにおいて、防眩層における凝集状態のメカニズムを説明するために、本発明の防眩性フィルムの厚み方向の断面を側面から見た状態を、模式的に示す概略説明図である。図10Bは、本発明とは異なる粒子の凝集状態を、模式的に示す概略説明図である。図10Aおよび図10Bにおいて、(a)は、溶媒を含む前記防眩層形成材料(塗工液)を、透光性基材に塗工等して塗膜を形成した状態を示し、(b)は、塗膜から溶媒を除去して防眩層を形成した状態を示す。
【0053】
図10Aの場合では、樹脂、粒子およびチキソトロピー付与剤を含む防眩層形成材料を用いて防眩層を形成しているのに対し、図10Bの場合では、防眩層形成材料がチキソトロピー付与剤を含んでいない。なお、図10Aでは、図面の見易さを考慮して、前記チキソトロピー付与剤の図示を省略している。
【0054】
以下、図10Aを参照して、前述のような、なだらかな凸状部が形成されるメカニズムを説明する。図10A(a)および(b)に示すように、前記塗膜に含まれる溶媒を除去することで、塗膜の膜厚は収縮(減少)する。塗膜の下面側(裏面側)は前記透光性基材でとまっているため、前記塗膜の収縮は、前記塗膜の上面側(表面側)から起こる。図10A(a)において、前記塗膜の膜厚が減った部分に存在する粒子(例えば、粒子1、粒子4および粒子5)は、この膜厚減少により、前記塗膜の下面側に移動しようとする。これに対し、膜厚変化の影響を受けないか、影響を受けにくい下面寄りの比較的低い位置に存在する粒子(例えば、粒子2、粒子3および粒子6)は、防眩層形成材料に含まれるチキソトロピー付与剤の沈降防止効果(チキソトロピー効果)により、下面側への移動が抑制されている(例えば、二点鎖線10より下面側には移動しない)。このため、前記塗膜の収縮が起こっても、下面側の粒子(粒子2、粒子3および粒子6)は、表面側から移動しようとする粒子(粒子1、粒子4および粒子5)により、下方(裏面側)へ押されず、ほぼその位置に留まっている。前記下面側の粒子(粒子2、粒子3および粒子6)がほぼその位置に留まるため、前記表面側から移動しようとする粒子(粒子1、粒子4および粒子5)は、前記下面側の粒子が存在していない、前記下面側の粒子の隣(前記塗膜の面方向)に移動する。このようにして、本発明の防眩性フィルムでは、前記防眩層において、前記粒子が前記防眩層の面方向に複数集まった状態で存在していると推察される。
【0055】
以上のようにして、前記防眩層において、前記粒子が前記防眩層の面方向に凝集するため、図10A(b)に示すように、前記凸状部が、なだらかな形状となる。また、前記防眩層に、沈降防止効果を有するチキソトロピー付与剤が含まれることで、前記粒子が防眩層の厚み方向に過度に凝集することが回避される。これによって、外観欠点となる防眩層表面の突起状物の発生を防止できる。
【0056】
一方、防眩層形成材料がチキソトロピー付与剤を含んでいない場合では、粒子にはチキソトロピー付与剤の沈降防止効果が働かない。このため、前記膜厚の収縮により、図10B(a)に示すように、下面側の粒子(粒子2、粒子3および粒子6)は、上面側の他の粒子(粒子1、粒子4および粒子5)と共に、透光性基材面側に沈降して集まる(例えば、二点鎖線10より下面側に移動して集まる)。このため、図10B(b)に示すように、前記粒子が前記防眩層の厚み方向に過度に凝集する部分が発生する場合がある。そして、この部分が外観欠点となる防眩層表面の突起状物になると推察される。
【0057】
なお、本発明の防眩性フィルムは、前記凸状部が、前述のようななだらかな形状となり、外観欠点となる防眩層表面の突起状物の発生を防止できるものであれば、例えば、防眩層の厚み方向に直接または間接的に重なる位置で、前記粒子が多少存在していてもよい。前記粒子の重なりを個数で表す場合に、前記防眩層の「厚み方向」とは、図11(a)および(b)の模式図に示すように、例えば、前記透光性基材の面方向(前記防眩層の面方向)とのなす角度が、45〜135度の範囲内の方向を示す。そして、例えば、前記防眩層の厚み(d)が3〜12μmの範囲内にあり、かつ、前記粒子の粒子径(D)が2.5〜10μmの範囲内にあり、さらに前記厚み(d)と前記粒子径(D)との関係が、0.3≦D/d≦0.9の範囲内にある場合に、例えば、前記防眩層の厚み方向に対する前記粒子の重なりは、4個以下が好ましく、より好ましくは3個以下である。
【0058】
つぎに、前述の推察されるメカニズムにおいて、前記透光性基材と前記防眩層との間に、前述の浸透層が形成される場合について、図10Cおよび図10Dの概略説明図を参照して説明する。図10Cは、図10Aを参照して説明したのと同様に、本発明の防眩性フィルムについての概略説明図であり、図10Dは、図10Bを参照して説明したのと同様に、本発明とは異なる防眩性フィルムについての概略説明図である。図10Cおよび図10Dにおいて、(a)は、塗膜から溶媒を除去して防眩層が形成される途中の状態を示し、(b)は、塗膜から溶媒を除去して防眩層を形成した状態を示す。図10Cおよび図10Dにおいて、前記浸透層には、平行斜線を付している。なお、本発明は、以下の説明により、なんら制限および限定されない。
【0059】
図10Cを参照して、本発明の防眩性フィルムの場合について説明する。図10C(a)および(b)に示すように、前記塗膜に含まれる溶媒を除去することで、前記塗膜の膜厚が収縮(減少)して防眩層が形成される。さらに前記防眩層の形成とともに、前記防眩層形成材料に含まれる樹脂が前記透光性基材に浸透することで、前記防眩層と透光性基材との間に浸透層が形成される。図10C(a)に示すように、前記浸透層が形成される前の状態では、前記チキソトロピー付与剤の沈降防止効果により、前記粒子は、前記透光性基材と接さずに、離れた状態で存在する傾向にある。そして、前記浸透層が形成される際には、前記透光性基材側に位置する樹脂、すなわち、前記粒子の下方(透光性基材側)に位置する樹脂が主に前記浸透層に浸透していく。これにより、本発明では、前記透光性基材への前記樹脂の浸透に追随して、前記防眩層の面方向に凝集した粒子群とそれを覆う樹脂とが一緒になって、前記透光性基材側に移動する。すなわち、前記粒子は、図10C(a)に示す凝集状態を維持しながら、図10C(b)に示すように、前記透光性基材側に移動する。これにより、前記防眩層表面側の粒子群とそれを覆う前記樹脂がその表面形状を維持しながら、全体としてあたかも前記透光性基材側へ落ち込むような状態をとる。これにより、本発明の防眩性フィルムでは、前記防眩層の表面形状の変化を受けにくいと推察される。
【0060】
さらに、本発明では、前記チキソトロピー付与剤により、前記樹脂がチキソトロピー(チキソ性)を有している。このため、前記浸透層を厚く形成した場合でも、前記粒子群の表面を覆って凸状部を構成する樹脂は、前記透明性基材側へ移動しにくいと推察される。このような効果も相まって、本発明の防眩性フィルムでは、前記防眩層の表面形状の変化を受けにくいと推察される。
【0061】
以上のように、本発明では、前記防眩層の厚さ方向における粒子と前記透光性基材との位置関係と、前記チキソトロピー付与剤のチキソ性との相乗効果により、前記浸透層を有するものであっても、防眩層の表面形状の変化を受けにくいと推察される。
【0062】
図10Dを参照して、チキソトロピー付与剤を含まない、本発明とは異なる防眩性フィルムの場合について説明する。チキソトロピー付与剤を含んでいない場合、前述のように、粒子にはチキソトロピー付与剤の沈降防止効果が働かない。したがって、図10D(a)に示すように、前記粒子は、前記透光性基材に接した位置で存在する傾向にある。さらに、前記樹脂が前記透光性基材に浸透することで形成される浸透層に、前記粒子は移動することができない。このため、前記浸透層が形成される際には、図10D(a)に示す粒子群は、前記透光性基材に接した状態でその位置に留まり、前記粒子群の周りの樹脂だけが、前記透光性基材へ浸透していくことになる。その結果、図10D(b)に示すように、その位置で留まる前記粒子群に対して前記防眩層表面の樹脂の量が減ることになるため、前記防眩層の表面形状が変化しやすくなり、外観欠点となる防眩層表面の突起状物がより一層目立ち易くなると推察される。
【0063】
本発明の防眩性フィルムは、前記防眩層において、最大径が200μm以上の外観欠点が前記防眩層の1m2あたり1個以下であることが好ましい。より好ましくは、前記外観欠点が無いことである。
【0064】
本発明の防眩性フィルムは、へイズ値が0〜10%の範囲内であることが好ましい。前記ヘイズ値とは、JIS K 7136(2000年版)に準じた防眩性フィルム全体のヘイズ値(曇度)である。前記ヘイズ値は、0〜5%の範囲がより好ましく、さらに好ましくは、0〜3%の範囲である。ヘイズ値を上記範囲とするためには、前記粒子と前記樹脂との屈折率差が0.001〜0.02の範囲となるように、前記粒子と前記樹脂とを選択することが好ましい。ヘイズ値が前記範囲であることにより、鮮明な画像が得られ、また、暗所でのコントラストを向上させることができる。
【0065】
本発明の防眩性フィルムは、前記防眩層表面の凹凸形状において、JIS B 0601(1994年版)に規定される算術平均表面粗さRaが0.02〜0.3μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.2μmの範囲である。防眩性フィルムの表面における外光や像の映り込みを防ぐためには、ある程度の表面の荒れがあることが好ましいが、Raが0.02μm以上あることで前記映り込みを改善することができる。前記Raが上記範囲にあると、画像表示装置等に使用したときに、斜め方向から見た場合の反射光の散乱が抑えられ、白ボケが改善されるとともに、明所でのコントラストも向上させることができる。
【0066】
前記凹凸形状は、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定した表面の平均凹凸間距離Sm(mm)が0.05〜0.4の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.05〜0.3の範囲、さらに好ましくは0.08〜0.3の範囲、最も好ましくは、0.8〜0.25の範囲である。前記範囲とすることで、例えば、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できる防眩性フィルムとすることができる。
【0067】
本発明の防眩性フィルムは、前記防眩層表面の凹凸形状において、平均傾斜角θa(°)が0.1〜1.5の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0の範囲である。ここで、前記平均傾斜角θaは、下記数式(1)で定義される値である。前記平均傾斜角θaは、例えば、後述の実施例に記載の方法により測定される値である。
平均傾斜角θa=tan−1Δa (1)
【0068】
前記数式(1)において、Δaは、下記数式(2)に示すように、JIS B 0601(1994年度版)に規定される粗さ曲線の基準長さLにおいて、隣り合う山の頂点と谷の最下点との差(高さh)の合計(h1+h2+h3・・・+hn)を前記基準長さLで割った値である。前記粗さ曲線は、断面曲線から、所定の波長より長い表面うねり成分を位相差補償形高域フィルタで除去した曲線である。また、前記断面曲線とは、対象面に直角な平面で対象面を切断したときに、その切り口に現れる輪郭である。
Δa=(h1+h2+h3・・・+hn)/L (2)
【0069】
Ra、Smおよびθaがすべて、上記範囲にあると、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できる防眩性フィルムとすることができる。
【0070】
前記防眩層を形成するにあたり、調製した防眩層形成材料(塗工液)がチキソ性を示していることが好ましく、下記で規定されるTi値が、1.3〜3.5の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.3〜2.8の範囲である。
Ti値=β1/β2
ここで、β1はHAAKE社製レオストレス6000を用いてずり速度20(1/s)の条件で測定される粘度、β2はHAAKE社製レオストレス6000を用いてずり速度200(1/s)の条件で測定される粘度である。
【0071】
Ti値が、1.3未満であると、外観欠点が生じやすくなり、防眩性、白ボケについての特性が悪化する。また、Ti値が、3.5を超えると、前記粒子が凝集しにくく分散状態となりやすくなり、本発明の防眩性フィルムが得られにくくなる。
【0072】
本発明の防眩性フィルムの製造方法は、特に制限されず、いかなる方法で製造されてもよいが、例えば、前記本発明の防眩性フィルムの製造方法により製造できる。前記本発明の防眩性フィルムの製造方法により製造された防眩性フィルムは、上述の本発明の防眩性フィルムと同様の特性を備えていることが好ましい。本発明の防眩性フィルムは、具体的には、例えば、前記樹脂、前記粒子、前記チキソトロピー付与剤および溶媒を含む防眩層形成材料(塗工液)を準備し、前記防眩層形成材料(塗工液)を前記透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材の少なくとも一方の面に塗工して塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させて前記防眩層を形成することにより、製造できる。本発明の防眩性フィルムの製造においては、金型による転写方式や、サンドブラスト、エンボスロールなどの適宜な方式で凹凸形状を付与する方法などを、併せて用いることもできる。
【0073】
前記溶媒は、特に制限されず、種々の溶媒を使用可能であり、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記樹脂の組成、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤の種類、含有量等に応じて、本発明の防眩性フィルムを得るために、最適な溶媒種類や溶媒比率が存在する。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等があげられる。
【0074】
透光性基材として、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)を採用して浸透層を形成する場合は、TACに対する良溶媒が好適に使用できる。その溶媒としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノンなどをあげることができる。
【0075】
また、溶媒を適宜選択することによって、チキソトロピー付与剤による防眩層形成材料(塗工液)へのチキソ性を良好に発現させることができる。例えば、有機粘土を用いる場合には、トルエンおよびキシレンを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、酸化ポリオレフィンを用いる場合には、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルメーテルを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、変性ウレアを用いる場合には、酢酸ブチルおよびメチルイソブチルケトンを好適に、単独使用または併用することができる。
【0076】
前記防眩層形成材料には、各種レベリング剤を添加することができる。前記レベリング剤としては、塗工ムラ防止(塗工面の均一化)を目的に、例えば、フッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を用いることができる。本発明では、防眩層表面に防汚性が求められる場合、または、後述のように反射防止層(低屈折率層)や層間充填剤を含む層が防眩層上に形成される場合などに応じて、適宜レベリング剤を選定することができる。本発明では、例えば、前記チキソトロピー付与剤を含ませることで塗工液にチキソ性を発現させることができるため、塗工ムラが発生しにくい。このため、本発明は、例えば、前記レベリング剤の選択肢を広げられるという優位点を有している。
【0077】
前記レベリング剤の配合量は、前記樹脂100重量部に対して、例えば、5重量部以下、好ましくは0.01〜5重量部の範囲である。
【0078】
前記防眩層形成材料には、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、防汚剤、酸化防止剤等が添加されてもよい。これらの添加剤は一種類を単独で使用してもよく、また二種類以上併用してもよい。
【0079】
前記防眩層形成材料には、例えば、特開2008−88309号公報に記載されるような、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0080】
前記防眩層形成材料を透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材上に塗工する方法としては、例えば、ファンテンコート法、ダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗工法を用いることができる。
【0081】
前記防眩層形成材料を塗工して透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材の上に塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させる。前記硬化に先立ち、前記塗膜を乾燥させることが好ましい。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でもよいし、風を吹きつけての風乾であってもよいし、加熱乾燥であってもよいし、これらを組み合わせた方法であってもよい。
【0082】
前記防眩層形成材料の塗膜の硬化手段は、特に制限されないが、紫外線硬化が好ましい。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜500mJ/cm2が好ましい。照射量が、50mJ/cm2以上であれば、硬化がより十分となり、形成される防眩層の硬度もより十分なものとなる。また、500mJ/cm2以下であれば、形成される防眩層の着色を防止することができる。
【0083】
以上のようにして、透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材の少なくとも一方の面に、前記防眩層を形成することにより、本発明の防眩性フィルムを製造することができる。なお、本発明の防眩性フィルムは、前述の方法以外の製造方法で製造してもよい。本発明の防眩性フィルムの硬度は、鉛筆硬度において、層の厚みにも影響されるが、2H以上の硬度を有することが好ましい。
【0084】
本発明の防眩性フィルムの一例としては、透明プラスチックフィルム基材の片方の面に、防眩層が形成されているものをあげることができる。前記防眩層は、粒子を含んでおり、これによって、防眩層の表面が凹凸形状となっている。なお、この例では、透明プラスチックフィルム基材の片面に防眩層が形成されているが、本発明は、これに限定されず、透明プラスチックフィルム基材の両面に防眩層が形成された防眩性フィルムであってもよい。また、この例の防眩層は、単層であるが、本発明は、これに制限されず、前記防眩層は、二層以上が積層された複数層構造であってもよい。
【0085】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記防眩層の上に、反射防止層(低屈折率層)を配置してもよい。例えば、画像表示装置に防眩性フィルムを装着した場合、画像の視認性を低下させる要因のひとつに空気と防眩層界面での光の反射があげられる。反射防止層は、その表面反射を低減させるものである。なお、防眩層および反射防止層は、透明プラスチックフィルム基材等の両面に形成してもよい。また、防眩層および反射防止層は、それぞれ、二層以上が積層された複数層構造であってもよい。
【0086】
本発明において、前記反射防止層は、厚みおよび屈折率を厳密に制御した光学薄膜若しくは前記光学薄膜を二層以上積層したものである。前記反射防止層は、光の干渉効果を利用して入射光と反射光の逆転した位相を互いに打ち消し合わせることで反射防止機能を発現する。反射防止機能を発現させる可視光線の波長領域は、例えば、380〜780nmであり、特に視感度が高い波長領域は450〜650nmの範囲であり、その中心波長である550nmの反射率を最小にするように反射防止層を設計することが好ましい。
【0087】
光の干渉効果に基づく前記反射防止層の設計において、その干渉効果を向上させる手段としては、例えば、前記反射防止層と前記防眩層の屈折率差を大きくする方法がある。一般的に、二ないし五層の光学薄層(厚みおよび屈折率を厳密に制御した薄膜)を積層した構造の多層反射防止層では、屈折率の異なる成分を所定の厚さだけ複数層形成することで、反射防止層の光学設計の自由度が上がり、より反射防止効果を向上させることができ、分光反射特性も可視光領域で均一(フラット)にすることが可能になる。前記光学薄膜において、高い厚み精度が要求されるため、一般的に、各層の形成は、ドライ方式である真空蒸着、スパッタリング、CVD等で実施される。
【0088】
また、汚染物の付着防止および付着した汚染物の除去容易性の向上のために、フッ素基含有のシラン系化合物若しくはフッ素基含有の有機化合物等から形成される汚染防止層を前記反射防止層上に積層することが好ましい。
【0089】
本発明の防眩性フィルムおよびその製造方法において、前記透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材および前記防眩層の少なくとも一方に対し表面処理を行うことが好ましい。前記透明プラスチックフィルム基材表面を表面処理すれば、前記防眩層または偏光子若しくは偏光板との密着性がさらに向上する。また、前記防眩層表面を表面処理すれば、前記反射防止層または偏光子若しくは偏光板との密着性がさらに向上する。
【0090】
前記透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材の一方の面に前記防眩層が形成されている防眩性フィルムおよびその製造方法において、カール発生を防止するために、他方の面に対し溶剤処理を行ってもよい。また、前記透明プラスチックフィルム基材等の一方の面に前記防眩層が形成されている防眩性フィルムおよびその製造方法において、カール発生を防止するために、他方の面に透明樹脂層を形成してもよい。
【0091】
本発明の防眩性フィルムは、通常、前記透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材側を、粘着剤や接着剤を介して、LCDに用いられている光学部材に貼り合せることができる。なお、この貼り合わせにあたり、前記透光性基材表面に対し、前述のような各種の表面処理を行ってもよい。
【0092】
前記光学部材としては、例えば、偏光子または偏光板があげられる。偏光板は、偏光子の片側または両側に透明保護フィルムを有するという構成が一般的である。偏光子の両面に透明保護フィルムを設ける場合は、表裏の透明保護フィルムは、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置される。また、偏光板は、2枚の偏光板の吸収軸が互いに略直交するように配置される。
【0093】
つぎに、本発明の防眩性フィルムを積層した光学部材について、偏光板を例にして説明する。本発明の防眩性フィルムを、接着剤や粘着剤などを用いて偏光子または偏光板と積層することによって、本発明の機能を有した偏光板を得ることができる。
【0094】
前記偏光子としては、特に制限されず、各種のものを使用できる。前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等があげられる。
【0095】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、位相差値の安定性などに優れるものが好ましい。前記透明保護フィルムを形成する材料としては、例えば、前記透明プラスチックフィルム基材と同様のものがあげられる。
【0096】
前記、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載の高分子フィルムがあげられる。前記高分子フィルムは、前記樹脂組成物を、フィルム状に押出成型することにより製造できる。前記高分子フィルムは、位相差が小さく、光弾性係数が小さいため、偏光板等の保護フィルムに適用した場合には、歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0097】
前記透明保護フィルムは、偏光特性や耐久性などの点から、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂製のフィルムおよびノルボルネン系樹脂製のフィルムが好ましい。前記透明保護フィルムの市販品としては、例えば、商品名「フジタック」(富士フイルム社製)、商品名「ゼオノア」(日本ゼオン社製)、商品名「アートン」(JSR社製)などがあげられる。前記透明保護フィルムの厚みは、特に制限されないが、強度、取扱性等の作業性、薄層性等の点より、例えば、1〜500μmの範囲である。
【0098】
前記防眩性フィルムを積層した偏光板の構成は、特に制限されないが、例えば、前記防眩性フィルムの上に、透明保護フィルム、前記偏光子および前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよいし、前記防眩性フィルム上に、前記偏光子、前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよい。
【0099】
本発明の画像表示装置は、本発明の防眩性フィルムを用いる以外は、従来の画像表示装置と同様の構成である。例えば、LCDの場合、液晶セル、偏光板等の光学部材、および必要に応じ照明システム(バックライト等)等の各構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により製造できる。
【0100】
本発明の画像表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等である。
【実施例】
【0101】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例および比較例により制限されない。なお、下記実施例および比較例における各種特性は、下記の方法により評価または測定を行った。
【0102】
(ヘイズ値)
へイズ値の測定方法は、JIS K 7136(2000年版)のヘイズ(曇度)に準じ、ヘイズメーター((株)村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定した。
【0103】
(表面形状測定)
防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、松浪ガラス工業(株)製のガラス板(厚み1.3mm)を粘着剤で貼り合わせ、高精度微細形状測定器(商品名;サーフコーダET4000、(株)小坂研究所製)を用いて、カットオフ値0.8mmの条件で前記防眩層の表面形状を測定し、算術平均表面粗さRa、平均凹凸間距離Smおよび平均傾斜角θaを求めた。なお、前記高精度微細形状測定器は、前記算術平均表面粗さRaおよび前記平均傾斜角θaを自動算出する。前記算術平均表面粗さRaおよび前記平均傾斜角θaは、JIS B 0601(1994年版)に基づくものである。前記平均凹凸間距離Smは、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定した表面の平均凹凸間距離(mm)である。
【0104】
(防眩性評価)
(1)防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製、厚み2.0mm)を粘着剤で貼り合わせ、裏面の反射をなくしたサンプルを作製した。
(2)一般的にディスプレイを用いるオフィス環境下(約1000Lx)において、サンプルを蛍光灯(三波長光源)で照らし、上記で作製したサンプルの防眩性を、下記の基準で目視にて判定した。
判定基準
AA:防眩性に極めて優れ、写り込む蛍光灯の輪郭の像を残さない。
A :防眩性が良好であるが、写り込む蛍光灯の輪郭の像がわずかに残る。
B :防眩性に劣り、蛍光灯の輪郭の像が写り込む。
C :防眩性がほとんどない。
【0105】
(白ボケ評価)
(1)防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、黒色アクリル板(日東樹脂工業(株)製、厚み1.0mm)を粘着剤で貼り合わせ、裏面の反射をなくしたサンプルを作製した。
(2)一般的にディスプレイを用いるオフィス環境下(約1000Lx)にて、上記で作製したサンプルの平面に対し垂直方向を基準(0°)として60°の方向から見て、白ボケ現象を目視により観察し、下記の判定基準で評価した。
判定基準
AA:白ボケがほとんどない。
A :白ボケがあるが、視認性への影響は小さい。
B :白ボケが強く、視認性を著しく低下させる。
【0106】
(微粒子の重量平均粒径)
コールターカウント法により、微粒子の重量平均粒径を測定した。具体的には、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、微粒子が細孔を通過する際の微粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、微粒子の数と体積を測定し、重量平均粒径を算出した。
【0107】
(防眩層の厚み)
(株)ミツトヨ製のマイクロゲージ式厚み計を用い、防眩性フィルムの全体厚みを測定し、前記全体厚みから、透光性基材の厚みを差し引くことにより、防眩層の厚みを算出した。
【0108】
(凸状部高さ)
防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、松浪ガラス工業(株)製のガラス板(厚み1.3mm)を粘着剤で貼り合わせ、非接触式3次元表面形状測定器(商品名;Wyko、日本ビーコ(株)製)を用いて、対物レンズ10倍、測定面積595μm×452μmにて、前記防眩層の表面形状を測定した。次いで、前記領域で得られた表面形状における凸状部の中心を通る直線で断面した二次元プロファイルを得た。得られた二次元プロファイルにおける中心線(粗さ平均線)からの頂部(凸状部)の高さを、凸状部高さとして算出した。
【0109】
(外観評価)
1m2の防眩性フィルムを用意し、暗室内で蛍光灯(1000Lx)を用いて、30cmの距離から外観欠点について目視で確認した。確認された外観欠点について、目盛り付きのルーペを用いて観察し、外観欠点の大きさ(最大径)を測定し、200μm以上であるものの個数をカウントした。
【0110】
(凝集状態評価)
防眩性フィルムの面を、垂直方向から光学顕微鏡(オリンパス(株)製、「MX61L」)を用いて、半透過モードで、倍率を500倍として粒子の分布を確認した。粒子が隣り合わせになっているものを面方向に凝集しているものと判断した。
【0111】
(浸透層の厚み)
防眩性フィルムの断面を切断し、その切断面について、透過型電子顕微鏡(TEM、日立製作所(株)製、「H−7650」)で、加速電圧100kVの条件で観察し、樹脂が透光性基材に浸透して形成された浸透層の厚みを測定した。
【0112】
(実施例1)
防眩層形成材料に含まれる樹脂として、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「UV1700B」、固形分100%)80重量部、および、ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)20重量部を準備した。前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:5.0μm、屈折率:1.520)を2重量部、前記チキソトロピー付与剤として有機粘土である合成スメクタイト(コープケミカル(株)製、商品名「ルーセンタイトSAN」)を1.5重量部、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)を3重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「PC4100」、固形分10%)を0.5部混合した。なお、前記有機粘土は、トルエンで固形分が6.0%になるよう希釈して用いた。この混合物を、固形分濃度が40重量%となるように、トルエン/シクロペンタノン(CPN)混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製した。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)の粘度から算出される下記Ti値は、2.0であった。
Ti値=β1/β2
ここで、β1はHAAKE社製レオストレス6000を用いてずり速度20(1/s)の条件で測定される粘度、β2はHAAKE社製レオストレス6000を用いてずり速度200(1/s)の条件で測定される粘度である。
【0113】
透光性基材として、透明プラスチックフィルム基材(トリアセチルセルロースフィルム、富士フイルム(株)製、商品名「フジタック」、厚さ:60μm、屈折率:1.49)を準備した。前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、前記防眩層形成材料(塗工液)を、コンマコータを用いて塗布して塗膜を形成した。そして、この塗膜が形成された透明プラスチックフィルム基材を、約30°の角度で傾斜させながら乾燥工程へと搬送した。乾燥工程において、90℃で2分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み7.5μmの防眩層を形成し、実施例1の防眩性フィルムを得た。得られた防眩性フィルムについて、断面のTEM観察を行い浸透層の厚みを測定した、TEM写真を図7に示す。前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0114】
(実施例2)
前記粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:3.0μm、屈折率:1.52)を用いたこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例2の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.0であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0115】
(実施例3)
前記粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:6.0μm、屈折率:1.52)を用いたこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例3の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.0であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0116】
(実施例4)
実施例1と同様に調製した混合物を、固形分濃度が35重量%となるように希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例4の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.0であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0117】
(実施例5)
前記粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:1.5μm、屈折率:1.52)を用いたこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例5の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.0であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0118】
(実施例6)
前記チキソトロピー付与剤として酸化ポリオレフィン(楠本化成(株)製、商品名「ディスパロン4200−20」)4.0重量部を用いて調製した混合物を、固形分濃度が32重量%となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)/CPN混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例6の防眩性フィルムを得た。前記酸化ポリオレフィンは、PMで固形分が6%になるよう希釈して用いた。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.7であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0119】
(実施例7)
前記チキソトロピー付与剤として変性ウレア(ビックケミ−社製、商品名「BYK410」)0.5重量部を用いて調製した混合物を、固形分濃度が45重量%となるように、メチルイソブチルケトン(MIBK)/CPN混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例7の防眩性フィルムを得た。前記変性ウレアは、MIBKで固形分が6%になるよう希釈して用いた。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.8であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0120】
(実施例8)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を0.4重量部用いて調製した混合物を、固形分濃度が37重量%となるように希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例8の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.3であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0121】
(実施例9)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を1.4重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例9の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.8であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0122】
(実施例10)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を1.5重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例10の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.9であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0123】
(実施例11)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を1.7重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例11の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.1であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0124】
(実施例12)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を2.0重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例12の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.3であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0125】
(実施例13)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を2.5重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例13の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.6であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0126】
(実施例14)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を3.2重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例14の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、3.0であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0127】
(比較例1)
有機粘土を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様な方法にて、比較例1の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.2であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0128】
(比較例2)
比較例1と同様に調製した混合物を、固形分濃度が37重量%となるように希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、比較例1と同様な方法にて、比較例2の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.2であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0129】
(比較例3)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記粒子を8重量部混合したこと以外は、比較例1と同様な方法にて、比較例3の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.2であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0130】
(比較例4)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:3.0μm、屈折率:1.52)を7重量用いて調製した混合物を、固形分濃度が37重量%となるように、PM/CPN混合溶媒(重量比9/1)で希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、比較例1と同様な方法にて、比較例4の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.2であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0131】
このようにして得られた実施例1〜14および比較例1〜4の各防眩性フィルムについて、各種特性を測定若しくは評価した。その結果を、図1〜図6および下記表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
前記表1に示すように、実施例においては、外観評価、防眩性および白ボケのすべてについて、良好な結果が得られた。一方、チキソトロピー付与剤を添加していない比較例1〜4については、外観評価において、外観欠点が認められ、比較例1、2および4では、防眩性についても、実施例よりも劣る結果となった。このように、比較例においては、上記のすべての特性について良好なものは得られなかった。
【0134】
図1(a)および図4(a)に、実施例1および比較例2で得られた防眩性フィルムの防眩層表面を観察した光学顕微鏡(半透過モード)写真を示す。図1(b)および図4(b)は、それぞれ、図1(a)および図4(a)の写真において観察される粒子の分布を示した模式図である。また、図2および図5(a)に、実施例1および比較例2で得られた防眩性フィルムの断面を観察したSEM(走査型電子顕微鏡)写真を示す。図5(b)は、図5(a)の写真において観察される粒子の分布を示した模式図である。そして、図3および図6に、実施例1および比較例2で得られた防眩性フィルムの表面形状を3次元的に示したプロファイルを示す。表面の写真(図1参照)および表面形状の3次元プロファイル(図3参照)からは、実施例1で得られた防眩性フィルムにおいては、粒子が防眩層の面方向に凝集したドメイン構造を有していることがわかる(例えば、図1(a)および(b)中の円で囲った部分等)。そして、複数の凝集部は寄り集まることなく、全体で海島構造を形成している。また、断面写真(図2参照)からは、実施例1で得られた防眩性フィルムにおいては、粒子の少なくとも周りにチキソトロピー付与剤が存在していることがわかる。一方、比較例2で得られた防眩性フィルムでは、粒子が防眩層の厚み方向に多数重なる部分を有している(例えば、図4(a)および(b)中の円で囲った部分等)。この厚み方向の粒子の重なりが増大すると、その部分が外観欠点として視認されることとなる。図6(a)は、比較例2で得られた防眩性フィルムにおける、外観欠点がない部分の3次元プロファイルである。図5(a)は、比較例2で得られた防眩性フィルムにおける、外観欠点の部分の断面写真であり、図6(b)は、同じく外観欠点の部分の3次元プロファイルである。なお、外観欠点が存在する箇所について、凸状部高さを測定したところ、外観欠点の突起物を備えた凸状部高さは、防眩層の厚み(7.5μm)の0.4倍以上となっていた。前記実施例で得られた防眩性フィルムと前記比較例で得られた防眩性フィルムとを比べると、前記実施例で得られた防眩性フィルムの表面形状は、なだらかな凹凸となっていることがわかる。このようななだらかな表面凹凸形状を実現したことにより、防眩性フィルムとして良好なものを得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の防眩性フィルムおよびその製造方法によれば、防眩性と、白ボケの防止とを両立した優れた表示特性を示す。さらに、外観欠点も発生しにくい。したがって、本発明の防眩性フィルムは、例えば、偏光板等の光学部材、液晶パネル、および、LCD(液晶ディスプレイ)やOLED(有機ELディスプレイ)等の画像表示装置に好適に使用でき、その用途は制限されず、広い分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
1〜6、12 粒子
11 防眩層
13 チキソトロピー付与剤
14、14a、14b 凸状部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有する防眩性フィルムであって、
前記防眩層が、樹脂、粒子およびチキソトロピー付与剤を含む防眩層形成材料を用いて形成されており、
前記防眩層が、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤が凝集することによって、前記防眩層の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、
前記凸状部を形成する凝集部において、前記粒子が、前記防眩層の面方向に、複数集まった状態で存在することを特徴とする防眩性フィルム。
【請求項2】
前記チキソトロピー付与剤が、有機粘土、酸化ポリオレフィンおよび変性ウレアからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1記載の防眩性フィルム。
【請求項3】
前記凸状部の前記防眩層の粗さ平均線からの高さが、前記防眩層の厚みの0.4倍未満であることを特徴とする、請求項1または2記載の防眩性フィルム。
【請求項4】
前記防眩層において、最大径が200μm以上の外観欠点が前記防眩層の1m2あたり1個以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の防眩性フィルム。
【請求項5】
前記防眩層の厚み(d)が3〜12μmの範囲内にあり、かつ、前記粒子の粒子径(D)が2.5〜10μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の防眩性フィルム。
【請求項6】
前記厚み(d)と前記粒子径(D)との関係が、0.3≦D/d≦0.9の範囲内にあることを特徴とする、請求項5記載の防眩性フィルム。
【請求項7】
前記防眩層において、前記樹脂100重量部に対し、前記粒子が0.2〜12重量部の範囲で含まれ、前記チキソトロピー付与剤が0.2〜5重量部の範囲で含まれていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の防眩性フィルム。
【請求項8】
前記透光性基材と前記防眩層との間に、前記樹脂が前記透光性基材に浸透して形成された浸透層を有していることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の防眩性フィルム。
【請求項9】
偏光子および防眩性フィルムを有する偏光板であって、
前記防眩性フィルムが、請求項1から8のいずれか一項に記載の防眩性フィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項10】
防眩性フィルムを備える画像表示装置であって、
前記防眩性フィルムが、請求項1から8のいずれか一項に記載の防眩性フィルムであることを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
偏光板を備える画像表示装置であって、
前記偏光板が、請求項9記載の偏光板であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項12】
透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有する防眩性フィルムの製造方法であって、
樹脂、粒子、チキソトロピー付与剤および溶媒を含む塗工液を、前記透光性基材の少なくとも一方の面に塗工して塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させて前記防眩層を形成する防眩層形成工程を有し、
前記塗工液として、Ti値が1.3〜3.5の範囲のものを用いることを特徴とする防眩性フィルムの製造方法。
【請求項1】
透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有する防眩性フィルムであって、
前記防眩層が、樹脂、粒子およびチキソトロピー付与剤を含む防眩層形成材料を用いて形成されており、
前記防眩層が、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤が凝集することによって、前記防眩層の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、
前記凸状部を形成する凝集部において、前記粒子が、前記防眩層の面方向に、複数集まった状態で存在することを特徴とする防眩性フィルム。
【請求項2】
前記チキソトロピー付与剤が、有機粘土、酸化ポリオレフィンおよび変性ウレアからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1記載の防眩性フィルム。
【請求項3】
前記凸状部の前記防眩層の粗さ平均線からの高さが、前記防眩層の厚みの0.4倍未満であることを特徴とする、請求項1または2記載の防眩性フィルム。
【請求項4】
前記防眩層において、最大径が200μm以上の外観欠点が前記防眩層の1m2あたり1個以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の防眩性フィルム。
【請求項5】
前記防眩層の厚み(d)が3〜12μmの範囲内にあり、かつ、前記粒子の粒子径(D)が2.5〜10μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の防眩性フィルム。
【請求項6】
前記厚み(d)と前記粒子径(D)との関係が、0.3≦D/d≦0.9の範囲内にあることを特徴とする、請求項5記載の防眩性フィルム。
【請求項7】
前記防眩層において、前記樹脂100重量部に対し、前記粒子が0.2〜12重量部の範囲で含まれ、前記チキソトロピー付与剤が0.2〜5重量部の範囲で含まれていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の防眩性フィルム。
【請求項8】
前記透光性基材と前記防眩層との間に、前記樹脂が前記透光性基材に浸透して形成された浸透層を有していることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の防眩性フィルム。
【請求項9】
偏光子および防眩性フィルムを有する偏光板であって、
前記防眩性フィルムが、請求項1から8のいずれか一項に記載の防眩性フィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項10】
防眩性フィルムを備える画像表示装置であって、
前記防眩性フィルムが、請求項1から8のいずれか一項に記載の防眩性フィルムであることを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
偏光板を備える画像表示装置であって、
前記偏光板が、請求項9記載の偏光板であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項12】
透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有する防眩性フィルムの製造方法であって、
樹脂、粒子、チキソトロピー付与剤および溶媒を含む塗工液を、前記透光性基材の少なくとも一方の面に塗工して塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させて前記防眩層を形成する防眩層形成工程を有し、
前記塗工液として、Ti値が1.3〜3.5の範囲のものを用いることを特徴とする防眩性フィルムの製造方法。
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−33240(P2013−33240A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−146165(P2012−146165)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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