説明

防眩性溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

【課題】コイル全長、全幅に渡って表面形態を制御し、光沢度を低減した実用に十分な防眩性を有する溶融めっき鋼板、およびそれを比較的簡易な方法かつ安定的に製造できる方法を提供する。
【解決手段】溶融亜鉛系めっき鋼板の任意表面の粗さ曲線において、算術平均粗さRaが0.3μm以上2.0μm以下、且つ、粗さ曲線における輪郭曲線要素の平均長さRSmが100μm超、300μm以下であり、且つ、該溶融亜鉛系めっき鋼板の任意の10μm×10μmの表面に、円相当径が0.05μm以上1.0μm以下であるAl系の酸化物が少なくとも5個以上存在することを特徴とする防眩性に優れる溶融亜鉛系めっき鋼板であり、溶融亜鉛めっき後の冷却条件と調質圧延ワークロール粗度により造りこむ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関するものであり、より詳しくは、自動車、家電、建材などに使われる防眩性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車、家電、建材などに用いられる溶融亜鉛めっき鋼板は、一般的に、表面の油分、酸化膜などを除去した鋼板を溶融した亜鉛浴に浸漬した後に引き上げ、直ちにガスワイピングで亜鉛付着量を所定の量に制御し、空冷または、水冷、あるいは気水冷却などによって冷却して製造される。このようにして製造された溶融亜鉛めっき鋼板は表面光沢に富んでいるため、用途によっては不向きとなる場合がある。例えば、家電製品のバックパネル、建材分野ではガードレールや屋根・壁材などに溶融亜鉛めっき鋼板が無塗装で用いられる場合は、太陽光や照明などの光の照り返しによる眩しさが、不快感や安全性などの観点から問題となる。このため、眩しさを低減した表面処理鋼板がこれまで開発されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、溶融亜鉛めっき層の表面の結晶粒径を50μm以下とし、表面の平均粗度Raを0.4〜1.0μmとすることを特徴とする耐眩性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。本方法で溶融亜鉛めっき鋼板の光沢度を低減することは可能であるものの、めっき浴中の有効Al濃度が0.25%程度の比較的高濃度にAlを含有するめっき浴の場合に有効な方法であり、Al濃度が0.20%以下のめっき浴に対してはその原因は定かではないが、しわが十分に形成されず光沢度100以下を付与させることが困難な場合がある。さらに、板厚が薄い溶融亜鉛めっき鋼板や亜鉛付着量が小さい溶融亜鉛めっき鋼板の場合には、そのめっき浴から引上げた後の降温速度が大きいため、表面結晶粒径50μm以下を得るために必要とされる、水スプレー冷却の開始温度425℃以上を、コイル全長、全幅に渡って均一に確保することは困難である。
【0004】
また、特許文献2は、防眩性を目的とものではないが、亜鉛めっき皮膜の算術平均粗さRaを0.50μm以上、1.50μm以下、かつ、平均山間隔Smを40μm以上100μm以下とすることで、「ぎらつき感」、つまり、金属光沢が不均一にぎらぎらして見える表面状態を抑制した溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができるとされる。表面の光沢度は表面形態の影響を受けるため、本方法の範囲に溶融亜鉛めっき鋼板の表面粗度を制御することで、光沢度を低減することが可能である。しかしながら、本方法では、一般的な室内光に対する防眩性には効果があるものの、直射日光のような強い光に対する防眩性に対しては効果が不十分である。
【特許文献1】特許第3148542号
【特許文献2】特開2004−27263号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、表面形態を制御し、光沢度を低減した溶融亜鉛めっき鋼板が種々提案されているものの、製造条件範囲が狭かったり実用には不十分な防眩効果であったりする。このため、コイル全長、全幅に渡って実用に十分な防眩性を有する溶融めっき鋼板、および、それを比較的簡易な方法、かつ、安定的に製造できる方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者らは、種々、操業条件を変化させ、得られた溶融亜鉛めっきの光沢度と、その表面状態を詳細に調査した結果、以下のことが判明した。すなわち、溶融亜鉛めっき鋼板の防眩性を向上させるには、溶融亜鉛めっき鋼板めっき表面において、任意の粗さ曲線におけるJIS B 0601で定義される算術平均粗さRaを大きく、かつ、輪郭曲線要素の平均長さRSmを小さくすることに加え、溶融亜鉛めっき表面に微細なAl系酸化物を分散させることが重要であることを見出した。つまり、本発明の要旨とするところは次の通りである。
【0007】
(1)溶融亜鉛系めっき鋼板のめっき表面の粗さ曲線において、算術平均粗さRaが0.3μm以上2.0μm以下、かつ粗さ曲線における輪郭曲線要素の平均長さRSmが100μm超、300μm以下であり、かつ該溶融亜鉛系めっき鋼板の10μm×10μmの表面に、円相当径が0.05μm以上1.0μm以下であるAl系の酸化物が少なくとも5個以上存在することを特徴とする防眩性に優れる溶融亜鉛系めっき鋼板。
(2)熱延鋼板または冷延鋼板を、浴温度450〜480℃の溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、引き上げた後、1秒以上4秒以内にめっき表面温度が400℃以下となるように冷却し、表面の算術平均粗さRaが1.0μm以上3.0μm以下、粗さ曲線における輪郭曲線要素の平均長さRSmが50μm以上300μm以下のワークロールで調質圧延を実施することを特徴とする防眩性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(3)ワークロール表面にCrめっきを施していることを特徴とする(2)に記載の防眩性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、従来以上に、コイル全長、全幅に渡って実用に十分な防眩性を有する。また、その製造も比較的簡易で安定的に実施できる。このため、家電、建材などに用いることができ、産業上の価値は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
前述のように溶融亜鉛めっき鋼板の粗さ曲線における算術平均粗さRaを大きく、かつ、輪郭曲線要素の平均長さRSmを小さくすることに加え、溶融亜鉛めっき表面に微細なAl系酸化物を分散させることにより、防眩性を向上させるとの知見から、以下、順に本発明を詳細に説明する。
【0010】
<めっき表面の算術平均粗さRa>
めっき表面の算術平均粗さRaは、本発明において重要な因子のひとつであり、0.3μm以上2.0μm以下とする必要がある。Raが0.3μm未満であれば、表面が平滑に近づき光沢を抑制できない。一方、Raが2.0μmを超える場合は、めっき付着量が20g/m程度の薄い溶融亜鉛めっき鋼板においては、極端にめっきが薄い部分ができることとなり、耐食性の観点から好ましくない。
【0011】
<めっき表面の粗さ曲線における輪郭曲線要素の平均長さRSm>
めっき表面の粗さ曲線における輪郭曲線要素の平均長さRSmも、本発明において重要な因子のひとつであり、100μm超、300μm以下とする必要がある。RSmが300μmを超える場合、平滑部が連続的に存在する領域が大きくなるため、光沢が増すため好ましくない。RSmは小さい方が好ましいが、100μm以下では防眩性の観点からは十分過ぎるだけでなく、逆に凹凸の程度が過度であり、耐食性の低下や後処理をした場合のむらの原因となり好ましくない。このため、RSmは100μm超、300μm以下の範囲とする。
【0012】
図1は、極低炭素鋼をめっき原板とした溶融亜鉛めっき鋼板を種々の条件で調質圧延し、表面のRa、RSmと表面光沢を調査した結果である。溶融亜鉛めっきにおいては、鋼板をAlを0.13%含む溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、引上げた後、冷却した。片面当たりの亜鉛付着量は約40g/mとなるようにした。表面のRa、RSmの測定は、株式会社東京精密製の粗度計、ハンディサーフE−40Aを用い、評価長さ4mm、カットオフ値0.8mm、JIS B 0601 2001に準拠して行った。また、光沢の測定は、株式会社堀場製作所製のグロスチェッカー、IG−320を用い、入射角60度で行い、光沢度が100以下の場合を○印(合格)、100を超える場合を×印(不合格)、光沢度は100以下であるが、耐食性が不合格である場合は△印(不合格)で表した。なお、耐食性評価は、溶融亜鉛めっき鋼板を50mm(幅方向)×100mm(圧延方向)のサイズに切断し、圧延方向の半分(50mm)の位置で60度の角度で折り曲げた後、平らに戻してJIS Z 2371に準拠した塩水噴霧試験を行い、1000時間後の赤錆発生率が、20%以下であるものを合格、それ以上であるものを不合格とした。図1から、鋼板表面の算術平均粗さRaが0.3μm以上2.0μm以下、且つ、粗さ曲線における輪郭曲線要素の平均長さRSmが100μm超、300μm以下を満たさない場合には、不合格となることが分かる。
【0013】
図2は、調質圧延のワークロール表面のRaと溶融亜鉛めっき鋼板表面のRaの関係である。溶融亜鉛めっき鋼板表面のRaは、ワークロール表面のRaに依存し、溶融亜鉛めっき鋼板表面のRaを本発明の範囲である0.3μm以上、2.0μm以下とするには、ワークロール表面のRaを1.0μm以上3.0μm以下とする必要があることが分かる。同様に、図3から、溶融亜鉛めっき鋼板表面のRSmも調質圧延のワークロール表面のRSmに依存し、本発明の範囲のRSmを得るには、ワークロール表面のRSmを50μm以上300μmとすることが必要であることが分かる。
【0014】
<表面のAl系酸化物>
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の表面には、Al系の酸化物が微細に存在していることが必要である。元来、AlはZnよりも比重が小さいことから凝固時は溶融亜鉛めっき表面に皮膜上に濃化し、平滑表面を形成することで光沢を増加させる効果があり、Alは酸化物として存在していると推定される。これは大気中で行うフラックス方式の溶融亜鉛めっきにおいて、めっき浴にAlを添加する目的の一つが、製品の表面光沢を向上させることであることからも分かる。しかしながら、本発明者らが詳細に調査したところ、Al酸化物を微細に分散させることで光沢は逆に低減することが分かった。
【0015】
そこで発明者らは、溶融亜鉛めっき表面のAl系酸化物の分布や形態が防眩性に影響するのではないかと考え、それらの影響を調査した。ここでAl系酸化物とは、めっき表面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、加速電圧20kV、観察倍率5000倍の条件で任意の10μm×10μmの表面を2次電子像で観察した際に、周囲よりも暗部(黒色部)として見える部分であり、かつ、EDS(エネルギー分散型X線分光)で分析した際に、暗部のAl濃度が正常部のAl濃度の5倍以上である部分と定義し、これらの条件で、表面のAl酸化物を同定した後、それらの円相当径と個数を求めている。その結果を図4に示す。10μm×10μmの表面にAl酸化物の円相当径が0.05μm以上1.0μm以下で、かつその個数が5個以上であれば、光沢度が100以下であり、かつ、耐食性も前記の評価基準において合格であり、問題なかった。Al酸化物の個数が10μm×10μmの表面に5個に満たなければ防眩性が十分に発揮されない。Al酸化物の個数の上限は特には規定しないが、多すぎると耐食性が劣化する場合があるため、50個以下であることが好ましい。
【0016】
またAl系酸化物の形態は、円相当径が0.05μm未満では防眩性の向上に不十分である。逆に、1.0μmを超えるAl酸化物が存在しても、めっき表面に微細な入り組んだ凹凸が形成されにくくなるため防眩性は確保できない。
【0017】
このようにAl系酸化物の形態と分布によって防眩性が左右される理由は定かではないが、Al酸化物はZnよりも硬度が大きいため、めっき後の調質圧延の際に、ロールの粗度転写とは別に、めっき表面に不均一な変形が導入され、光の乱反射を促進するためと推定される。溶融亜鉛めっき鋼板の表面のRaおよびRSmを本発明の範囲にすることに加え、Al酸化物を分散させることにより、その相乗効果で防眩性は一層向上する。
【0018】
次にこのようなAl系酸化物の形態を得る方法について説明する。発明者らは溶融亜鉛めっき以後の条件で、鋼板を溶融亜鉛めっき浴から引上げてから、400℃に到達するまでの時間と、その後の調質圧延条件が大きな影響を及ぼすことが判明した。
【0019】
図5は、溶融亜鉛めっき後、引上げてから溶融亜鉛めっき鋼板の表面温度が400℃以下になるまでの冷却時間と、Al酸化物の円相当径の関係を図示したものである。所定のRaおよびRSmを得られる調質圧延条件のうち、Al酸化物の粉砕効果が最も大きい条件(ワークロールのRaが3.0μm、RSmが60μm)において、冷却時間が4秒であれば、Al酸化物の円相当径は約1μmとなり合格である。冷却時間が4秒を超える場合、調質圧延のワークロールのRaを大きく、あるいは、RSmを小さくすることで、1μm以下のAl酸化物を実現できるが、その場合、溶融亜鉛めっき鋼板のRa、または、RSmが図3で示す合格の範囲外となり不適である。また、鋼板を溶融亜鉛めっき浴から引上げてから、400℃に到達するまでの時間が1秒未満である場合、十分な量のAl酸化物が生成しないため、冷却時間は1秒以上とする必要がある。
【0020】
次にAl系酸化物の分布を得る方法について説明する。図6は、溶融亜鉛めっき後、引上げてから溶融亜鉛めっき鋼板の表面温度が400℃以下になるまでの冷却時間と、Al酸化物の個数の関係を図示したものである。冷却時間が1秒未満であれば、Al酸化物の個数は5個未満となり不適である。冷却時間が4秒超の場合、その後の調質圧延におけるワークロール粗度によっては10μm×10μmの表面にAl系酸化物が50個以上となり耐食性が劣化するため好ましくない。
【0021】
<めっき原板>
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の原板の種類は何ら問わない。熱延鋼板でも冷延鋼板でもよい。また、その成分についても何ら限定するものはないが、家電用途、建材用途を考慮した場合、極低炭素鋼や低炭素鋼を原板とすることが好ましい。
【0022】
<めっき付着量>
めっき付着についても何ら限定しない。但し、好ましくは、鋼板片面当たりの亜鉛付着量は、20g/m以上600g/m以下である。20g/m未満であれば耐食性が不足し、600g/m以上であれば加工性に劣り、実用的でない。
【0023】
<めっき組成>
めっき組成としては、Zn、Alを含んでいれば、その量は特に限定しない。但し、好ましくは、Znを95%以上、Alを0.1%以上0.2%未満含んでいることである。Alは防眩性の向上には必須な原子であるとともに、加工性の向上にも有用な元素である。Alが0.1%未満の場合には、防眩性の向上には不十分な量であるばかりでなく、めっき中にZn−Feの合金層が成長し加工性に劣る。一方、0.2%以上では防眩性には十分すぎるほどであり、それ以上に添加しても徒にコストを増大させるだけである。特に好ましい範囲としては、0.12%以上0.14%以下である。この範囲であれば、防眩性の向上にも十分であるばかりでなく、生成するAl酸化物量が過多となり耐食性が低下傾向となることを抑制することができる。他に、Fe、Mg、Si、Mn、Ni、Pb、Cd、Asなどの元素を含んでいても何ら問題はない。
【0024】
次に、本発明の防眩性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板の実現方法について記す。本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、熱延鋼板または冷延鋼板を、浴温度450〜480℃の溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、引き上げた後、前述の知見から1秒以上4秒以内にめっき表面温度が400℃以下となるように冷却する。所定の冷却速度を確保できれば、その冷却方法は一切問わず、例えば、水スプレー、気水噴霧、ガス冷却などの他、金属や酸化物などの微粒子を含んだ溶液の噴霧が挙げられる。このような条件で冷却することで、粗大なAl酸化物の生成を抑制する。得られた溶融亜鉛めっき鋼板は、その両面を、表面の算術平均粗さRaが1.0μm以上3.0μm以下、粗さ曲線における輪郭曲線要素の平均長さRSmが50μm以上300μm以下のワークロールで圧下率3%以下の調質圧延をする。
【0025】
このような条件で圧延することにより、表面に濃化したAl酸化物が粉砕され、粒径0.05μm以上1.0μm以下のサイズとなり、効果的に光を乱反射するとともに、ワークロール表面の粗度転写と相まって、防眩性に優れる溶融亜鉛鍍金鋼板を実現できる。上記の冷却速度で冷却できない場合は、粗大なAl酸化物が形成され、前記の調質圧延条件で圧延してもAl酸化物が十分に分断されないため光沢度を低減できない。一方、調質圧延条件が前記の範囲外の場合には、Al酸化物を効果的に分断できないか、溶融亜鉛めっき表面の算術平均粗さRa、または粗さ曲線における輪郭曲線要素の平均長さRSmが本発明の範囲外となるため不適である。
【0026】
なお、調質圧延のワークロールには、所定の粗度を備えた上に硬質表面処理を施したワークロールを用いることが好ましい。硬質表面処理を施すことにより、ロールの磨耗が減少する上に防眩性が向上する。これは硬質表面処理層により、ワークロールによる溶融亜鉛めっき表層のAl系酸化物の破砕が防眩性に有利に働くためと推定される。硬質表面処理としては、Crめっき、Ni−Wめっき、W溶射などが挙げられる。図7は、それぞれ調質圧延のワークロールに無垢のワークロール、表面にCrめっきを施したワークロールを用いた場合の、圧延長さとAl酸化物の円相当径の関係である。圧延前のワークロール粗度は、いずれもRa2.5μm、RSm160μmで同じであるが、Al酸化物の円相当径はCrめっきを用いた方が小さい。
【実施例1】
【0027】
極低炭素鋼の冷延鋼板を、800℃で所定の時間焼鈍し、Alを0.13%含む、浴温度450℃の溶融亜鉛めっき浴に浸漬した後引き上げ、0.5〜5秒ででめっき表面温度が400℃以下となるように冷却した。その後、表面の算術平均粗さRaが0.6μm〜4.0μm、粗さ曲線における輪郭曲線要素の平均長さRSmが40μm〜340μmを有する無垢のワークロールで圧下率2%の調質圧延をした。得られた溶融亜鉛めっき鋼板の表面のRa、RSmを前述の粗度測定方法で測定し、また、めっき表面も前述の分析方法にてAl酸化物を同定し、円相当径と個数を測定した。
【0028】
光沢の測定も前述の方法にて評価し、耐食性の試験も前述と同様に行ったが、1000時間後の赤錆発生率が、20%以下であるものを○印、それ以上であるものを×印で表した。結果を表1に示す。本結果より、本発明の範囲を満たす、鋼板表面のRa、RSm、また、Al酸化物の円相当径および個数を有していれば、めっき後の防眩性に優れ、かつ耐食性にも問題ないことが分かる。
【0029】
【表1】

【実施例2】
【0030】
極低炭素鋼の冷延鋼板を、800℃で所定の時間焼鈍し、Alを0.13%含む、浴温度450℃の溶融亜鉛めっき浴に浸漬した後引き上げ、0.5〜6秒でめっき表面温度が400℃以下となるように冷却した。その後、表面の算術平均粗さRaが0.6μm〜4.0μm、粗さ曲線における輪郭曲線要素の平均長さRSmが40μm〜340μmを有する無垢のワークロールで圧下率2%の調質圧延をした。得られた溶融亜鉛めっき鋼板のRa、RSm、またAl酸化物の円相当径、個数、さらに光沢度や耐食性を実施例1と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0031】
本結果より、本発明の範囲を満たす、鋼板表面のRa、RSm、また、Al酸化物の円相当径および個数を有していれば、めっき後の防眩性に優れ、かつ耐食性にも問題ないことが分かる。
【0032】
【表2】

【実施例3】
【0033】
極低炭素鋼の冷延鋼板を、800℃で所定の時間焼鈍し、Alを0.13%含む、浴温度450℃の溶融亜鉛めっき浴に浸漬した後引き上げ、約2秒でめっき表面温度が400℃以下となるように冷却した。その後、表面の算術平均粗さRaが2.5μm、粗さ曲線における輪郭曲線要素の平均長さRSmが160μmの鋼製無垢のワークロール、もしくは表面にCrめっきを施したワークロールを用い、圧下率2%の調質圧延をした。得られた溶融亜鉛めっき鋼板のRaとRSm、およびAl酸化物の円相当径、個数を、実施例1と同じ方法で調べた。結果を表3に示す。同じRa、RSmを有する無垢ロール、およびCrめっきロールで比較した場合、無垢ロールよりもCrめっきロールを用いた方が、Al酸化物の円相当径は小さく、その個数は多くなり、防眩性に対し、一層有利な結果となった。
【0034】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】溶融亜鉛めっき鋼板表面のRa、RSmと表面光沢を調査した図である。
【図2】RSmごとの調質圧延のワークロール表面のRaと溶融亜鉛めっき鋼板表面のRaの関係で、防眩性の合格の範囲を示す図である。
【図3】Raごとの調質圧延のワークロール表面のRSmと溶融亜鉛めっき鋼板表面のRSmの関係で、防眩性の合格の範囲を示す図である。
【図4】溶融亜鉛めっき鋼板表面のAl酸化物の円相当径と個数の関係で、防眩性の合格の範囲を示す図である。
【図5】溶融亜鉛めっき後、引上げてから溶融亜鉛めっき鋼板の表面温度が400℃以下になるまでの冷却時間と、Al酸化物の円相当径の関係を表した図である。
【図6】溶融亜鉛めっき鋼板の表面温度が400℃以下になるまでの冷却時間と、Al酸化物の個数の関係を表した図である。
【図7】調質圧延のワークロールで無垢のワークロール、Crめっきワークロールを用いた場合の、圧延長さとAl酸化物の円相当径の関係を表した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融亜鉛系めっき鋼板のめっき表面の粗さ曲線において、算術平均粗さRaが0.3μm以上2.0μm以下、かつ粗さ曲線における輪郭曲線要素の平均長さRSmが100μm超、300μm以下であり、かつ該溶融亜鉛系めっき鋼板の10μm×10μmの表面に、円相当径が0.05μm以上1.0μm以下であるAl系の酸化物が少なくとも5個以上存在することを特徴とする防眩性に優れる溶融亜鉛系めっき鋼板。
【請求項2】
熱延鋼板または冷延鋼板を、浴温度450〜480℃の溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、引き上げた後、1秒以上4秒以内にめっき表面温度が400℃以下となるように冷却し、表面の算術平均粗さRaが1.0μm以上3.0μm以下、粗さ曲線における輪郭曲線要素の平均長さRSmが50μm以上300μm以下のワークロールで調質圧延を実施することを特徴とする防眩性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項3】
ワークロール表面にCrめっきを施していることを特徴とする請求項2に記載の防眩性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−43332(P2010−43332A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208899(P2008−208899)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】