説明

防音パネル

【課題】面板の洗浄が効果的になされる防音パネルを提供する。
【解決手段】面板の周囲に枠材を配置し、前記面板の雨水を導く面と面板の上部に配置させた上枠材の内側面との間に雨水が伝わる隙間を形成させて、上方から流下する雨水を面板の一方の面に導く導水路を形成させ、この隙間の全部又は一部に1mm以上2mm以下の大きさに形成させた幅狭部を形成させると共に、雨水が導かれる面に前記幅狭部の部分を含めて親水性を付与させる。
前記幅狭部を形成させることで、導水路に導かれた雨水が面板の雨水が導かれる面に伝い流れずに上枠材から流れ落ちてしまうような問題が生じず、効果的に雨水が導かれる面上に雨水を導き洗浄させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や鉄道の沿線等に沿って設置される洗浄構造を備えた防音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両からの騒音を遮断するために、道路や鉄道の沿線等に沿って防音壁が設置される。かかる防音壁に用いられる防音パネルにおいて、例えば透視性を有する面板の周囲に枠体を形成した防音パネルが富に用いられている。かかる防音パネルは、設置されて常に車両の排気ガスや塵埃にさらされているために排気ガスや塵埃等により汚染され、汚染がよく目立ち、又その汚染により透視性が損なわれる恐れがある。
【0003】
そこで、防音パネルの表裏面が須く洗浄されるよう、本出願人による特許文献1において、上下に積み重ねられた防音パネルの、上下に隣接する上段の防音パネルの下部より下段の防音パネルの上部にかけて導水孔を形成し、上段の防音パネルの外側の面上に降った雨水を導水孔を伝って下段の防音パネルの内側の面上に導かれるようにした防音パネルの洗浄構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−204520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特許文献1の提案に更に検討を加えて、防音パネルの面板の洗浄が効果的になされるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る防音パネルは、面板の周囲に枠材が配置された防音パネルであって、
上方から流下する雨水を面板の一方の面に導く導水路が設けられ、
該導水路においては雨水が導かれる面と前記面板の上部に配置された上枠材の内側面との間に雨水が伝わる隙間が形成され、
該隙間の全部又は一部に1mm以上2mm以下の大きさに形成された幅狭部が形成されていると共に、雨水が導かれる面には前記幅狭部の部分を含めて親水性が付与されていることを特徴としている。
【0007】
本発明に係る防音パネルによれば、上方から流下する雨水を面板の一方の面に導く導水路を設け、この導水路においては雨水が導かれる面と前記面板の上部に配置させた上枠材の内側面との間に雨水が伝わる隙間を形成させ、この隙間の全部又は一部に1mm以上2mm以下の大きさに形成させた幅狭部を形成させるので、導水路に導かれた雨水が面板の雨水が導かれる面に伝い流れずに上枠材から流れ落ちてしまうような問題が生じず、効果的に雨水が導かれる面上に雨水を導き洗浄させることができる。
また、雨水が導かれる面には前記幅狭部の部分を含めて親水性を付与させているので、雨水が前記幅狭部を通過する際に面板の雨水が導かれる面側に伝わり易く、効果的に雨水が導かれる面上に雨水を導くことができる。
【0008】
また、前記面板を貫通する固定部材を介して前記面板と前記上枠材とを固定させると共に、前記固定部材に貫通された隙間調整部材を前記面板と前記上枠材との間に固定させて前記導水路を形成させれば、前記幅狭部の隙間の大きさが維持されるので、前記雨水が導かれる面上への雨水の導水が安定してなされるので、効果的に面板の洗浄がなされ好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る防音パネルによれば、上枠材の上方からの雨水を面板の面上に導き伝い流れさせ、効果的に洗浄させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に掛かる防音パネルを備えた防音壁の実施の一形態を示す側面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の防音パネルを示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図である。
【図4】図1の湾曲部における防音パネルの主要部の部分拡大図である。
【図5】図1に示す防音パネルの上枠材と面板とを固定する固定部材付近を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図1〜2における形態は、高速道路等の側縁に道路の長手方向に沿って所定間隔を置いて立設されたH型鋼からなる支柱Aと、この支柱A間に上下に積み重ねられて支持された防音パネル1とから構成されたものであって、垂直状の下部から上部が道路の上方に湾曲され、すなわち民地側となされた防音パネル1の外側の面11を凸曲面とし、車道側となされた防音パネル1の内側の面12を凹曲面として設置されている。
【0012】
図3は図1の防音パネルを示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図である。
各防音パネル1は、ポリカーボネートやアクリル等の合成樹脂板、ガラス等の透視性を有し又は不透明な合成樹脂板や金属板等からなる面板2に上枠材3、下枠材4、左右の縦枠材6が配置されて形成されている。
【0013】
図4は図1の湾曲部における防音パネル1の主要部の部分拡大図である。
本実施形態の上枠材3は、防音パネル1の前面側に配置された四角筒形状の上枠主材31と、後面側に配置された略板形状の上枠板32とから構成されており、面板2はその上端を前記上枠主材31と上枠板32との間に挿入させて、上枠材3に固定されている。
また、本実施形態の下枠材4は、防音パネル1の前面側に配置された四角筒形状の下枠主材41と、後面側に配置された略板形状の下枠板42とから構成されており、面板2はその下端を前記下枠主材41と、下枠板42との間に挿入させて、下枠材4に固定されている。
【0014】
前記防音パネル1は、下段側の防音パネル1bの上枠材3に、上段側の防音パネル1aの下枠材4を相対向させて順次上下に積み重ねられており、各防音パネル1a、1bの後面側が外側の面11となり、前面側が内側の面12となるように取り付けられている。
また、上下に隣接する上段の防音パネル1aの下部より下段の防音パネル1bの上部にかけて導水路5が形成されている。この導水路5は、本実施形態では、その入口を上段の防音パネル1aの外側の面11とし、出口を下段の防音パネル1bの内側の面12となるように形成されている。より詳細には、前記導水路5は、上段の防音パネル1aの面板2aの外側の面11を流下する雨水が、上段の防音パネル1aの下枠材4の下枠板42の後面上を流下し、前記下枠材4と下段の防音パネル1bの上枠材3との間の隙間へ流れ落ち、この隙間に連通する下段の防音パネル1bの上枠材3の上枠主材31と上枠板32との間に設けられた隙間へ流れ落ち、更に上枠主材31と面板2bの内側の面12との間に設けられた隙間へ流れ込み、最終的に下段の防音パネル1bの内側の面12へ前記雨水が導かれるように形成されている。
【0015】
尚、本実施形態の防音パネル1bは、前記上枠主材31と上枠板32との間に挿入された面板2bの内側の面12と、これに相対する前記上枠主材31の内側面35との間に隙間が形成されて、前記導水路5の一部を構成するようになされているが、前記面板2bの内側の面12と前記内側面35との隙間の大きさが1mm以上2mm以下となる幅狭部34を形成するように設けられている。
これは、上段の防音パネル1aの下枠材4と下段の防音パネル1bの上枠材3との間の隙間へ流れ落ちた雨水が、前記上枠主材31の内側面35の上へ流れ落ちた場合、その雨水が少量の場合は前記内側面35の面上を水滴状となって流れ落ちていくが、前記幅狭部34の隙間を2mm以下に形成させることで、流れ落ちる雨水の水滴が前記幅狭部34に至ると、前記水滴の上端部分が前記面板2bの内側の面12に接触し、前記水滴が前記面板2bへ伝わり、雨水を面板2bへ導くことができる。
また、前記幅狭部34の隙間の大きさを1mm以上に形成させることで、前記導水路5を多量の雨水が流れるような状況で、全ての雨水が前記幅狭部34を通り流れることができずに防音パネル1bの上枠材3の上側からあふれてしまうような問題が抑制でき、前記面板2bへ雨水を効率よく導くことができる。
【0016】
本実施形態の各防音パネル1a、1bの面板2a、2bは、その外側の面11と内側の面12が、親水性を付与させた親水面となされている。本発明における親水面とは、親水性を付与されて、好ましくは20℃での水の接触角が30゜以下となされた表面を意味し、より好ましくは20℃での水の接触角が20゜以下となされた表面を意味する。
面板2a、2bの表面の水の接触角を30゜以下にすることで、降雨等の水によってその表面が自己浄化されることによる耐汚染性を発現するので好ましい。
【0017】
より詳細には面板2a、2bのその外側の面11と内側の面12には、光触媒を含む光触媒含有層が形成されており、これに紫外線が照射されることにより光触媒が活性化され、その表面が親水化され、前記の外側の面11と内側の面12とが親水面となされるように設けている。
尚、光触媒の種類は特に限定されるものではないが、一般には二酸化チタンが好適に用いられる。二酸化チタンは、ルチル型でもよいが、活性の高さからアナターゼ型のものが好ましく、この二酸化チタンに波長領域が300〜400nm付近の紫外線を照射することによって活性化され、その活性化によって強い酸化力が発現されて、表面に付着した汚染物質は分解されると共に、活性化によってその表面は水との接触角でほぼ0〜20度程度まで親水化される。
【0018】
また、面板2a、2bの外側の面11と内側の面12とを親水面とする方法は、光触媒含有層によるものに限るものではなく、表面にオルガノシリケート化合物の含有層を形成させて親水面としてもよく、その他の方法を用いてもよい。
【0019】
また、特に下段の防音パネル1bの面板2bの内側の面12を、前記幅狭部の部分を含めて親水面とすることで、前記導水路5を流れる雨水が少量の場合に、前記面板2bの内側の面12と前記内側面35との隙間へ流れ込んだ雨水の水滴が前記幅狭部34で前記面板2bの内側の面12へ接触した後に、面板2b側へ雨水がより導かれやすくなるので、前記面板2bへ雨水をより効率よく導くことができる。
【0020】
図5は図1に示す防音パネルの上枠材3と面板2とを固定する固定部材9付近を示す断面図である。
本実施形態の上枠材3は、ボルト9aと、ナット9bを固定部材9として、両者の締結によって上枠主材31と上枠板32とを固定させており、面板2bは上枠材3への挿入部分に形成させた貫通穴21に前記ボルト9aの雄ねじを挿通させて、前記上枠材3に固定されている。
【0021】
上枠材3と面板2bとの固定をより詳細に説明すると、上枠主材31の後面側には、後方に開口する溝部33が長手方向に沿って形成されている。溝部33はその内部に前記ボルト9aのボルト頭部を収納可能な大きさに形成されており、前記ボルト9aのボルト頭部を溝部33に収納させ、その雄ねじ部分を溝部33の開口部分から後方へ突出させて取り付け可能に形成させている。また、溝部33の開口部分には、溝の内側方向へ突出する開口縁を備えており、溝部33の内部にボルト頭部を収納させたボルト9aが、後方へ抜け落ちることを防止させている。
上記の如く前記溝部33に固定されたボルト9aは、その雄ねじ部分を隙間調整部材6に貫通させ、更に面板2bの貫通穴21に挿通させ、更に上枠板32を貫通させ、最後にナット9bを螺結させて、上枠材3と面板2bとを固定させている。
【0022】
前記隙間調整部材6は、中央に円形の貫通穴を有する均一な厚みの円盤形状に形成されており、平ワッシャーのような形状に形成されている。この隙間調整部材6の貫通穴に前記ボルト9aの雄ねじ部分を挿通させて、前記上枠主材31と面板2bとの間に固定させることで、前記上枠主材31の内側面35と面板2bの内側の面12との隙間が前記隙間調整部材6の厚みの大きさに保たれて、前記幅狭部34を形成するようになされている。
本実施形態の隙間調整部材6は1.5mmの厚みに形成されているが、前記幅狭部34を1mm以上2mm以下に形成される範囲の好適な厚みを選択して用いることができる。
尚、本実施形態の上枠材3においては、上枠主材31と上枠板32とを固定させている全てのボルト9aの雄ねじ部分にそれぞれ隙間調整部材6を取り付けており、内側面35と面板2bの内側の面との隙間の大きさを面板2bの全長に亘って均一にし、各隙間調整部材6の間の隙間を雨水が効率よく流れるように構成させている。
【0023】
また、本実施形態では、面板2bの内側の面12と上枠主材31の内側面35との隙間の大きさが、前記隙間調整部材に接している部分を除いて上枠材3の内部に挿入された前記面板2bの挿入部分の略全体において均一になされ、前記幅狭部34が形成されるように設けられている。このため、前記導水路5を流れる雨水が上枠材3の内部に流入した後、より確実に前記幅狭部34に至って前記面板2bに接触し、その内側の面12に導かれるようになされている。
【0024】
また、本実施形態の導水路5は、上下方向に積み重ねられた防音パネル1a、1bにおいて、その入口を上段の防音パネル1aの外側の面11とし、出口を下段の防音パネル1bの内側の面12となるように形成されているが、これに限るものではなく、下段の防音パネル1bの上に防音パネル1a以外の部材を配置させて、その外側の面を流下する雨水を下段の防音パネル1bの上枠材3の上枠主材31と上枠板32との間に設けられた隙間へ流れ込ませて、下段の防音パネル1bの内側の面12へ前記雨水が導かれるように形成させてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 防音パネル
2 面板
21 貫通穴
3 上枠材
31 上枠主材
32 上枠板
33 溝部
34 幅狭部
35 内側面
4 下枠材
41 下枠主材
42 下枠板
5 導水路
6 隙間調整部材
9 固定部材
9a ボルト
9b ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面板の周囲に枠材が配置された防音パネルであって、
上方から流下する雨水を面板の一方の面に導く導水路が設けられ、
該導水路においては雨水が導かれる面と前記面板の上部に配置された上枠材の内側面との間に雨水が伝わる隙間が形成され、
該隙間の全部又は一部に1mm以上2mm以下の大きさに形成された幅狭部が形成されていると共に、雨水が導かれる面には前記幅狭部の部分を含めて親水性が付与されていることを特徴とする防音パネル。
【請求項2】
前記面板を貫通する固定部材を介して前記面板と前記上枠材とが固定されると共に、前記固定部材に貫通された隙間調整部材が前記面板と前記上枠材との間に固定されて前記導水路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防音パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−246902(P2011−246902A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118995(P2010−118995)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】