説明

防音パネル

【課題】 壁の高さを高くせずに、騒音を低減することが可能であり、しかも、設置にかかる手間を減少した防音パネルを提供する。
【解決手段】 防音パネル1は、筐体2と、筐体2内に所要間隔で配された複数枚の反射板16と、反射板間に配された吸音材4とを備えており、複数枚の反射板16が一体化された反射板組立体3が形成されて、該反射板組立体3が筐体2に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道分野、建築分野等で使用される防音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
道路、鉄道、工場、商業施設では、近隣住民への騒音が問題であり、防音壁や防音パネルを使用して、騒音の低減が図られている。防音壁では、壁を高くすることで、騒音を低減することが可能であるが、壁を高くすることは、種々の弊害があり、壁の高さを高くせずに、騒音を低減する手段が求められている。
【0003】
そこで、特許文献1には、複数枚の互いに略平行な反射板と、反射板間に配された吸音材とを備えている防音パネルによって、壁の高さを高くせずに、騒音を低減することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−255098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の防音パネルによると、壁の高さを高くせずに、大きな騒音低減効果が得られるという利点を有しているが、防音パネルの組立てに際し、反射板を所定間隔で固定していく必要があるので、防音パネルの組立てに手間がかかるという問題があった。また、吸音材を設ける場合には、特許文献1の図7に示されているように、反射板間の吸音材を個別に被覆して、各反射板をリベット等で筐体に固定する必要があり、この点でも防音パネルの組立てに手間がかかるという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、壁の高さを高くせずに、騒音を低減することが可能であり、しかも、組立てにかかる手間を減少した防音パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による防音パネルは、筐体と、筐体内に所要間隔で配された複数枚の反射板と、反射板間に配された吸音材とを備えている防音パネルであって、複数枚の反射板が一体化された反射板組立体が形成されて、該反射板組立体が筐体に固定されていることを特徴とするものである。
【0008】
所要間隔で配された複数枚の反射板は、ある音源に対して所定の角度で互いに略平行に設けられることによって、壁面に取り付けられたときに、壁面と音源(例えば車輌)との間で多重反射して壁外部に漏れていた騒音の多重反射部分の方向を変え、吸音パネルへの入射回数を意図的に増やすことで減衰量を増すことができる。また、吸音材を反射板で斜めに仕切ることにより、通常は壁に垂直方向を吸音材の厚みとみなすが、反射板に平行な厚みに吸音材があるとみなされ、幅広い周波数での吸音効果が得られるようになる。さらに、反射板間で騒音が多重反射するため、音の減衰量が大きくなることによって、防音効果を増大することができる。
【0009】
そして、これらの複数枚の反射板が一体化されることで、反射板組立体が形成され、この反射板組立体が筐体に固定されることで、個々の反射板を筐体に固定する工程が不要となり、防音パネルの組立て(製造)の手間を大幅に少なくするすることができる。こうして得られた防音パネルを設置面に所要数取り付けていくことで、騒音低減が必要な箇所に防音パネルを設置することができる。
【0010】
防音パネルは、基本的に長方形状とされ、縦型(垂直方向に長く水平方向に短い)で使用されることがあり、また、横型(水平方向に長く垂直方向に短い)で使用されることがある。1つの筐体内に配置される反射板組立体は、1つであってもよく、また、2つ以上とされて、筐体内において左右および/または上下に並んで配置されるようにしてもよい。
【0011】
複数枚の反射板が一体化された反射板組立体は、垂直状の連結部と連結部から傾斜方向に張り出した複数枚の反射板からなるものとされる。このような反射板組立体を得るには、例えば、連結部と反射板とが別部材とされて、長尺状の連結部材(連結部)に反射板が適宜な手段(溶接、リベット、ねじ等)で一体化されるようにしてもよいが、1枚の板材から反射板組立体を形成することがより好ましい。このような反射板組立体は、例えば、1枚の板材から各反射板に相当する部分を切り起こすことで形成することができ、また、1枚の長尺状の板材を長さ方向に所定間隔で所要範囲を折り込むようにして、折り込まれて重なった部分を反射板、折り込まない部分を連結部として、これらを交互に配置することで形成することもできる。
【0012】
反射板は、1枚だけでは吸音効果が不十分であり、複数枚設けられる。反射板は、ある音源に対して所定の角度で互いに隣接する少なくとも2枚が略平行であればよく、他の反射板は所定の角度を保ち非平行でお互いに交差するように設けられていてもよい。また、反射板が水平から傾くことで、内部の吸音材の見かけ厚さが厚くなり、吸音効果が増大する。
【0013】
本発明において略平行とは、厳密な意味での平行のみを意味するのではなく、上記騒音の多重反射の反射の方向を変えうる程度の角度を許容する意味であり、通常は互いに隣接する反射板が±10°以内にあればよい。
【0014】
反射板の角度は音源から入射する音の方向と反射板のなす角度が10°から170°で、より好ましい角度は斜め上向きに(傾斜した反射板の下部が防音壁に固定された状態で)15°から75°の範囲である。防音壁は通常は鉛直に設置されているので反射板は鉛直に対し15°から75°の範囲の角度をなす。このようにすることで、反射板による反射効果を高いものとすることができる。
【0015】
反射板(反射板組立体)の材質は、必要な剛性、耐久性を満たせば、金属、樹脂、木製合板等でよいが、耐久性の面からは、スーパーダイマ鋼板(商品名)、ZAM鋼板(商品名)などの高耐食性メッキ鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板などのメッキ鋼板が好ましく、重量の面からはアルミニウム板が好ましい。
【0016】
反射板の面密度は、0.05g/cm以上であることが好ましい。0.05g/cm未満では反射量が少なく吸音効果が小さい。反射板の面密度の上限は特に限定されないが、重量面から好ましくは7g/cmである。反射板の面密度が0.05g/cm以上であることによって、音の反射量が増大し、音が外に漏れにくくなる。
【0017】
筺体内部の反射板間の空間に吸音材が充填されることによって、防音壁もしくは防音パネルと車輌などの音源との間で発生する多重反射を吸音することで防音効果が大きくなるのみならず、反射板を設けたことで生じるパネル内の多重反射を取り除く(吸音する)ことでさらに防音効果が向上する。
【0018】
吸音材の材質は特に限定されるものではないが、例えばグラスウール、ロックウール、ポリエステル繊維などの合成繊維、金属繊維等、発泡ウレタン樹脂などの発泡樹脂などが挙げられる。また、グラスウールなどの繊維状吸音材は水分を含むと変形するため、撥水性のものを用いることが好ましい。グラスウール、ロックウールなどの吸音材の密度は性能と重量のバランスから決定されるが、重量軽減のため24〜32kg/m程度が好ましい。ポリエステル繊維の密度範囲は10〜40kg/mが好ましい。
【0019】
また、用途に応じて耐候性、難燃性、強度等の確保のために繊維・発泡体自体への難燃処理等が施されていてもよいし、少なくとも音源側(正面板に対向する面)にシート状のものが貼り合わされていてもよい。
【0020】
また、従来のパネルでは吸音材がへたった場合に、パネルの一部に吸音材が偏る現象が起こるが、本パネルでは反射板が固定されていることにより、万が一吸音材のへたりが生じても、各反射板間に吸音材が留まることになる。よって、従来パネルに比べて、へたりが生じた場合の性能低下を抑えることができる。
【0021】
グラスウール、ロックウールなどの吸音材は飛散を防止するためガラスクロスや樹脂フィルム等で覆うことが好ましい。撥水グラスウールを撥水ガラスクロス等の被覆材で覆うことによって、グラスウールの飛散が防止されると共に、降雨によるグラスウールの変形が防止される。被覆材として使用される撥水ガラスクロスは特に限定されるものではないが、性能と飛散防止性能とのバランスから目の密度および厚さはEP12D相当からEP18B相当(JIS R 3414)の範囲にあることが好ましい。
【0022】
筐体の材質は、必要な強度、耐久性を満たせば、金属、樹脂などでよい。耐久性の面からは、スーパーダイマ鋼板(商品名)、ZAM鋼板(商品名)などの高耐食性メッキ鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板などのメッキ鋼板が好ましく、重量の面からはアルミニウム板が好ましい。
【0023】
筐体の正面板には、多数の開口が設けられる。開口は、ルーバー状のものとしてもよく、貫通孔としてもよい。開口が設けられる面は、複数でもよく、例えば、防音パネルより上部に音源があり、防音パネル上面に当たって、騒音となるような場合には、筐体上面(天板)にも開口を設けることが好ましい。貫通孔は、例えば当該面を金網やパンチングメタル等で形成してもよい。また、開口率はその面の好ましくは30%以上である。孔径としては、Φ5mm以下が好ましい。正面板の孔径が大きい場合、鳥が内部のグラスウールや被覆材を啄むという問題や、作業時に工具等が孔にあたり被覆材を損傷しやすいという問題等がある。また、雨や太陽光にも曝されやすい。孔径を小さくすることでかつ開口率を30%以上とすることにより、音を導入しつつ、内部を保護することが両立できる。
【0024】
反射板組立体を筐体に固定するには、ボルト、リベット、溶接等あるが、溶接部は、例えばジンクリッチペイントなどで溶接部の耐食性を確保することが好ましい。ボルト、リベットなどを使用する際には、筐体と電位差の小さい材料・メッキを施したものを用いることが電蝕などを防ぐ点で好ましい。
【0025】
略平行に設けられ反射板は、音源に対する角度や位置が著しく変わると性能の低下を招くことから、防音パネル内での位置が経年によりずれることは避ける必要がある。そのためには、反射板は、筐体に1枚ごと固定しておけばよいが、製造における組立では、反射板を1枚ずつ筐体に固定することは非常に煩雑であり、これに代えて、複数枚の反射板が一体化された反射板組立体を筐体に固定することで組立の手間が大幅に減少する。
【0026】
反射板組立体は、1枚の板材から反射板に相当する部分を切り起こすことで形成されていることが好ましい。これにより、防音パネルをより一層容易に製造することができる。
【0027】
反射板組立体を1枚の板材から形成するには、例えばプレス機と金型を用いて、一枚の板材にコの字状の切り目を入れて、これを切り起こすことで連続的に複数の反射板を形成する(残った部分が複数の反射板を連結する連結部となる。)。順送プレス機を用いればこのような製造は可能である。ここで、反射板の幅は、板材の幅よりも狭くする必要があるので、板材の両サイドには、耳が形成されることになり、反射板の幅が狭くなるとともに、反射板間に吸音材を詰め込むと、板材が長手方向に撓みやすいために、作業が二人がかりとなり、作業性が悪化する。そこで、板材の幅をパネル幅よりも大きくしておいて、これに、パネル幅より小さい反射板を形成し、その後、耳を折り曲げることで、板材の両縁に折曲げ縁部を形成して、板材(反射板組立体)の断面を略コの字状とし、反射板組立体の長手方向の剛性を上げることが好ましい。折曲げ縁部は、板材の両縁に設けられることが好ましいが、板材の片縁にだけ設けるようにしてもよい。また、折曲げ縁部は、例えば直角となるように1段設ければよいが、例えば断面くの字状の2段曲げの折曲げ縁部とすることがより好ましい。このようにすると、パネル幅一杯に反射板を設けることができるとともに、吸音材を詰め込んだ状態でも一人の作業者で運搬が可能となる。
【0028】
各反射板に、吸音材の移動を防止するストッパが設けられていることが好ましい。反射板は斜めに傾いているので、設置した吸音材がズレ落ちてしまう懸念があるが、反射板にストッパを設けることで、ズレを防ぎ、長期にわたって性能を発現することが可能となる。このようにするには、板材から反射板を切り起こすに際し、例えば方形状の部分(方形状に限定されるものではない)が残るようにして、この残った部分をストッパとすればよい。
【0029】
反射板組立体は、反射板間に吸音材が配された状態で、被覆材によって覆われていることが好ましい。
【0030】
反射板が一体化されていない場合、反射板間の吸音材を個別に被覆して、各反射板をリベット等で筐体に固定することになるが、1枚の反射板の固定に数カ所のリベット止めが必要であり、反射板が数枚となると数十カ所の固定作業となり、組立て作業に手間がかかるという問題がある。そこで、複数枚の反射板が一体化された反射板組立体を形成しておいて、その反射板間に吸音材を配した後、被覆材で一体的に覆うようにすることで、吸音材を被覆材で覆う作業が容易となるとともに、反射板組立体と筐体とを固定する箇所は数カ所で済むので、防音パネルの製造がより一層容易なものとなる。
【0031】
吸音材として、例えばグラスウール、ロックウールなどを使用する場合には、被覆材を使用することが好ましく、吸音材として、例えばポリエステル繊維を使用する場合には、被覆材を省略することもできる。
【0032】
筐体は、多数の開口が設けられた正面板、正面板の上下に配された天板および底板、正面板の左右に配された1対の側面板ならびに正面板に対向しかつ遮音性を有する背面板からなること(背面板有り)があり、また、多数の開口が設けられた正面板、正面板の上下に配された天板および底板ならびに正面板の左右に配された1対の側面板からなること(背面板無し)がある。背面板無しの場合、反射板組立体の背面に背面補強材が固定され、背面補強材が筐体の天板および底板に固定されていることが好ましい。
【0033】
すなわち、筐体の背面側の開口については、背面板無しと背面板有りとが用途に応じて使い分けられることが好ましい。例えば、既に、遮音性および壁としての強度が充分にある壁(防音壁)が設置されている場合には、パネルに遮音性を付与する必要が無く、つまり背面板はない方が、重量も軽くなり、施工性や取付部の負荷、経済性の面で有利である。一方、新規に壁を設置する場合もしくは既設壁を交換する場合には、遮音性を付与する必要があり、筐体の背面側が遮音性を有する背面板で覆われている構成とすることが好ましい。
【0034】
背面板有りの構成では、屋上や鉄道の防音壁のように上部に開放空間があり音の回り込み成分がある場合には、遮音性能を得るために、背面板の面密度が9kg/m以上あることが好ましい。コンクリートの壁であれば、強度の面から数cm以上の厚さの遮音板となるが、鋼板であれば、1mm程度の厚みがあれば強度面でも遜色ない上に、軽量な壁とすることができる。背面板有りの防音パネルは、例えば、H鋼を互いに対向するように垂直に立てて、防音パネルを横型として、1対のH鋼間に落とし込むことで設置することができる。
【0035】
防音パネルとしての強度(剛性)を付与するためには、上記の厚みの背面板に凹凸を設けることで断面係数を上げることができる。ここで、H鋼にパネルを落とし込んで壁を形成するような場合に、H鋼との接触面が少なくなると、パネルをH鋼に取り付ける際に、パネルの厚み方向の強度不足に繋がるので、背面板の少なくとも1カ所に凹部が設けられているようにして、背面板を内部側にくぼませることで、H鋼との接触面を大きく取ることが好ましい。
【0036】
本発明の防音パネルは、反射板無しの防音パネルと比較して非常に騒音低減効果が大きいため、パネル間に隙間があるとそこからの音漏れが原因で、騒音低減効果が小さくなってしまう。そこで、複数のパネル同士をつなげる際の隙間を少なくするために、隣接する面に重ね合わせ用凹凸部を設けることで、直接的に音が外部に抜けることを防止することが好ましい。すなわち、隙間が生じたとしても、その隙間が表面側から背面側に見通すことができないように、隙間(音の通路)が屈曲したものとされることが好ましい。具体的には、防音パネル同士の突き合わせ構造として、一方の突き合わせ面に凸部が形成され、他方の突き合わせ面に凸部に合致する凹部が形成されており、隣接する防音パネル同士が突き合わされた際に、一方の防音パネルの凸部と他方の防音パネルの凹部とが嵌め合わされるものとされる。このようにすることで、本発明の防音パネルの効果が確実に発揮される。防音パネルに凹凸を形成する代わりに、防音パネル同士を結合する結合金具に凹凸を設けることにより、隙間がある場合でも、音が透過しにくいようにすることも可能である。
【0037】
背面板有りの防音パネルにおいては、防音パネル(筐体)の側面下部に、水抜き用開口を設けておくことがより好ましい。
【0038】
上記パネルを組み立てるには、まず、複数枚の反射板を一体化することで1または複数の反射板組立体を形成し、次いで、反射板組立体の反射板間に吸音材を配置し、次いで、反射板間に吸音材が配された状態で、反射板組立体を被覆材によって覆い、次いで、被覆材によって覆われた反射板組立体を筐体に固定すればよい。
【発明の効果】
【0039】
この発明の防音パネルによると、複数枚の反射板が一体化された反射板組立体が形成されて、該反射板組立体が筐体に固定されているので、個々の反射板を筐体に固定する工程が不要となり、防音パネルを容易に製造することができる。そして、こうして得られた防音パネルを設置面に所要数取り付けていくことで、騒音低減が必要な箇所に容易に防音パネルを設置することができ、設置にかかる手間を減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、この発明による防音パネルの第1実施形態を示す中間省略垂直縦断面図である。
【図2】図2(a)は、同正面図で、図2(b)は、図2(a)のb部の拡大図である。
【図3】図3は、この発明による防音パネルで使用される反射板組立体を模式的に示す斜視図である。
【図4】図4は、この発明による防音パネルの製造時における組立て手順を示す一部省略垂直縦断面図である。
【図5】図5は、この発明による防音パネルの第2実施形態を示す中間省略垂直縦断面図である。
【図6】図6は、この発明による防音パネルの第3実施形態を示す一部省略垂直縦断面図である。
【図7】図7は、この発明による防音パネルで使用される反射板組立体の変形例を模式的に示す斜視図である。
【図8】図8は、この発明による防音パネルで使用される反射板組立体の他の変形例を模式的に示す斜視図である。
【図9】図9は、この発明による防音パネルで使用される反射板組立体の折曲げ縁部の変形例を示す平面図である。
【図10】図10は、この発明による防音パネルで使用される反射板組立体のさらに他の変形例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。以下の説明において、上下は、図1の上下をいうものとする。
【0042】
図1から図4までに示すように、この発明による防音パネル(1)の第1実施形態は、縦長直方体状の筐体(2)と、筐体(2)内に配された反射板組立体(3)および吸音材(4)とを備えている。
【0043】
筐体(2)は、鋼板製で、正面板(11)、正面板(11)の上下に配された天板(12)および底板(13)と、正面板(11)の左右に配された1対の側面板(14)と、正面板(11)に対向する背面板(15)とからなる。
【0044】
正面板(11)には、図2に示すように、多数の貫通孔(開口)(11a)が設けられている。これに対し、背面板(15)は、その面密度が9kg/m以上とされて、遮音性を有するものとされている。
【0045】
図1に示すように、正面板(11)と天板(12)とは一体に形成されており、また、背面板(15)と側面板(14)と底板(13)とが一体に形成されている。そして、天板(12)の背面側に設けられた下方突出縁部と背面板(15)の上端部とがリベット(21)で結合され、底板(13)の正面側に設けられた上方突出縁部と正面板(11)の下端部とがリベット(21)で結合されている。
【0046】
反射板組立体(3)は、上下方向に所要間隔で配された複数枚の反射板(16)とこれらを連結する連結部(17)とからなる。連結部(17)は垂直状(正面板(11)および背面板(15)に平行)に設けられており、反射板(16)は、連結部(17)から斜め上方に張り出すように設けられている。反射板組立体(3)は、その連結部(17)が複数の連結金具(22)を介して背面板(15)に固定されている。
【0047】
防音パネル(1)は、例えば、長さ(高さ)約2m、幅約1m、厚さ5〜6cm程度とされ、反射板組立体(3)は、例えば、長さ(高さ)2m程度、幅0.5m程度とされて、筐体(2)内に左右に並んで配置されている。複数枚の反射板(3)は、鉛直に対して、所要角度(例えば23°程度)傾斜させられて、互いに略平行となるように配置されている。
【0048】
反射板組立体(3)は、プレス成形品で、図3に示すように、複数枚の反射板(16)は、長方形状の1枚の板材から各反射板(16)に相当する部分を切り起こすことで形成されている。反射板組立体(3)は、その両縁に折曲げ縁部(18)が形成されることで、水平断面略コの字状に形成されている。
【0049】
反射板組立体(3)は、プレス機と金型とを用いて、一枚の板材にコの字状の切り目(19)を入れてこれを切り起こすことを連続的に行うことで得ることができる(残った部分が複数の反射板(16)を連結する連結部(17)となる。)。反射板(16)は、コの字状の切り目(19)と折曲げ縁部(18)との間に若干の耳部が残るように切り起こされている。反射板(16)を切起しで形成する場合、板材の両縁に耳が残ることになるが、板材の幅をパネル幅よりも大きくしておいて、これに、パネル幅よりも小さい反射板(16)を形成し、その後、板材の両縁に残った耳を折り曲げることで、パネル幅ほぼ一杯に反射板(16)を設けることができる。折曲げ縁部(18)は、反射板組立体(3)の長手方向の剛性を上げることに寄与し、これにより、複数の反射板(16)間に吸音材(4)を詰め込んだ状態でも一人の作業者で運搬が可能となる。
【0050】
反射板(16)を切り起こすに際しては、切り起こす部分を完全な方形状とするのではなく、連結部(17)相当部分に、小さな方形状部分(20)が残るようにすることが好ましい。この方形状部分(20)は、傾斜状の反射板(16)の最下部に位置してかつ垂直状となっていることから、吸音材(4)のズレ落ちを防止するストッパ(20)として機能する。したがって、この実施形態によると、傾斜状の反射板(16)における吸音材(4)のズレ落ちが防止され、長期にわたって防音性能を発現することが可能となる。
【0051】
吸音材(4)としては、グラスウールが使用されており、その飛散を防止するために、反射板組立体(3)は、吸音材としてのグラスウール(4)が反射板(16)間に配された状態で、ガラスクロスからなる被覆材(5)によって覆われている。被覆材(5)は、図4に示すように、吸音材としてのグラスウール(4)が反射板(16)間に配された後、グラスウール(4)を保持した反射板組立体(3)をくるんで、その縁部同士が糊付けされる。
【0052】
図5は、この発明による防音パネル(1)の第2実施形態を示すもので、同図において、防音パネル(1)は、縦長直方体状の筐体(30)と、筐体(30)内に配された反射板組立体(3)および吸音材(4)とを備えている。
【0053】
筐体(30)は、鋼板製で、正面板(31)、正面板(31)の上下に配された天板(32)および底板(33)ならびに正面板(31)の左右に配された1対の側面板(34)からなる。すなわち、この実施形態では、第1実施形態の背面板(15)有りの筐体(2)に対して、筐体(30)が背面板無しのものとされている。
【0054】
天板(32)および底板(33)は、断面コの字状とされて、その開口が上下に対向するように配置され、正面板(31)は、その上端部が天板(32)に、下端部が底板(33)にそれぞれリベット(23)により固定されている。
【0055】
反射板組立体(3)は、第1実施形態と同じものとされており、上下方向に所要間隔で配された複数枚の反射板(16)とこれらを連結する連結部(17)とからなる。反射板組立体(3)の背面に、垂直状の4本の背面補強材(35)が固定され、各背面補強材(35)の上端部が天板(32)に、下端部が底板(33)にそれぞれリベット(24)により固定されている。
【0056】
吸音材(4)および被覆材(5)も第1実施形態と同じものが使用されている。
【0057】
第1および第2実施形態の防音パネル(1)によると、反射板(16)が一体化された反射板組立体(3)を有していることにより、個々の反射板(16)を筐体(2)(30)に固定する工程が不要となり、反射板組立体(3)と筐体(2)(30)とを固定する箇所は数カ所で済み、防音パネル(1)を容易に製造することができる。
【0058】
反射板組立体(3)は、長さ(高さ)2m程度、幅0.5m程度とされていることから、反射板(16)間に吸音材(4)を詰め込むと、板材が長手方向に撓みやすいために、作業が二人がかりとなり、作業性が悪化することになるが、反射板組立体(3)が断面略コの字状とされて、折曲げ縁部(18)が形成されていることで、板材の長手方向の剛性が上がり、パネル幅ほぼ一杯に反射板を設けることができるとともに、吸音材(4)を詰め込んだ状態でも一人の作業者で運搬が可能となる。
【0059】
また、反射板が一体化されていない場合、吸音材(4)を防護するために被覆材(5)でくるむには、反射板(16)間の吸音材(4)を個別に被覆する必要があり、この場合、反射板(16)がバラバラの状態となっていると、全てを被覆材(5)でくるんだ後に、反射板(16)を筐体(2)(30)に固定することが非常に困難なものとなるという問題がある。反射板(16)は、筐体(2)(30)にリベット等で固定されるが、不透明な被覆材(5)の中の反射板(16)の固定孔を探り、1枚の反射板(16)の固定に数カ所のリベット止めが必要であり、反射板(16)が数枚となると数十カ所の固定作業となるためである。第1および第2実施形態の防音パネル(1)によると、図4に示すように、複数枚の反射板(16)および吸音材(4)を被覆材(5)で一体的に覆うようにすることで、非常に煩雑であった吸音材(4)を個別に被覆材(5)で包む作業が不要となり、吸音材(4)を被覆材(5)で覆う作業が容易となり、この点でも、防音パネル(1)の製造が容易なものとなる。
【0060】
こうして得られた防音パネル(1)を設置面に所要数取り付けていくことで、騒音低減が必要な箇所に容易に防音パネル(1)を設置することができる。
【0061】
上記において、第2実施形態の防音パネル(1)は、筐体(30)の背面側が開口しているので、これが取り付けられる壁面が遮音性を有している場合に好適なものとなっている。一方、第2実施形態の防音パネル(1)では、正面板(11)に多数の貫通孔(11a)が設けられているので、この防音パネル(1)単独での遮音性は十分なものではなく、新規に防音壁を設置する場合には、第1実施形態のものが好適となる。
【0062】
例えば、厚みが16.5mmの既存の防音壁がある場合、第2実施形態の背面板(15)無しの防音パネル(1)の厚さは、この厚みの制約を受けて、大きくできないが、防音壁に代えて、第1実施形態の厚み1mmの背面板(15)付きの防音パネル(1)を使用すると、16.5mm→1mmの厚みの低減が可能となり、その分防音パネル(1)の厚さ(反射板(16)の水平方向長さ)を大きくとることができ、より大きな騒音低減効果を得ることができる。
【0063】
新規に防音壁を設置する場合、例えば、垂直状に設けられた1対のH鋼間に複数枚の防音パネルを落とし込むことで、防音壁が形成される。この場合の好ましい形態として、図6に示すように、防音パネル(1)の背面板(15)には、防音パネル(1)としての強度(剛性)を付与するための凹部(41)が設けられ、また、筐体(2)の上下面に、防音パネル(1)同士を上下に突き合わせる際の構造として、重ね合わせ用凹凸部(42)(43)が設けられ、筐体(2)の側面下部に、水抜き用の開口(44)が設けられる。
【0064】
背面板(15)の強度付与用凹部(41)は、複数(少なくとも1つ)設けられ、これにより、背面板(15)の断面係数が高いものとなり、積み重ねる際の強度が確保される。
【0065】
また、重ね合わせ用凹凸部(42)(43)としては、例えば、筐体(2)の底板(13)(一方の突き合わせ面)に重ね合わせ用凸部(42)が形成され、筐体(2)の天板(12)(他方の突き合わせ面)に、凸部(42)に合致する重ね合わせ用凹部(43)が形成される。これにより、上下に隣接する防音パネル(1)同士が重ね合わせられた際に、一方の防音パネル(1)の凸部(42)と他方の防音パネル(1)の凹部(43)とが嵌め合わされ、直接的に音が外部に抜けることが防止される。なお、凸部(42)および凹部(43)の形状は、図示したもの限定されることなく、種々の形状が可能である。
【0066】
上記において、反射板組立体(3)は、複数枚の反射板(16)が一体化されたものであればよく、図3に示したものに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、反射板組立体(3)は、プレス成形に際してコの字状の切り目(55)を左右1対のものが上下に並ぶように形成することで、左右1対となるようにかつ上下方向に所要間隔で配された複数枚の反射板(51)とこれらを連結する連結部(52)とからなるものとしてもよい。図3に示したものと同様に、折曲げ縁部(53)が形成される。この場合、左右の反射板(51)の間に縦長の方形状部分(54)が残ることになり、この方形状部分(54)がストッパとして機能する。
【0067】
また、反射板組立体(3)は、図3に示す左右対称形状(左右両側に連結部がある両持ち形状)に限定されるものではなく、図8に示すように、左右の片側にだけ連結部がある片持ち形状としてもよい。図8において、反射板組立体(3)は、プレス成形に際して逆L字状の切り目(59)を板材の一方の縁部に連なるように形成し、この部分を切り起こすことで反射板(56)が形成され、所要間隔で配された複数枚の反射板(56)とこれらを連結する連結部(57)とからなるものとされている。左右の片側(図の左側)には、図3に示したものと同様に、折曲げ縁部(58)が形成される。
【0068】
図3および図7に示す両持ちの反射板組立体(3)ならびに図8に示す片持ちの反射板組立体(3)いずれの場合でも、縁部が折り曲げられている(折曲げ縁部(18)(53)(58)が設けられている)。これらの折曲げ縁部(18)(53)(58)は、上述のように、防音パネル(1)の製造時の反射板組立体(3)の剛性を上げて、取扱い性を向上させるものであり、上記においては、いずれも、1段だけかつ略直角をなすように折り曲げられている。この折曲げの角度は、1段でかつ直角に限定されるものではなく、より剛性を向上させるために、上記折曲げ縁部(18)(53)(58)に代えて、図9(a)に示すように、まず、90°よりも若干大きい鈍角で折り曲げて第1折曲げ部(61a)を形成し、もう一度180°よりも若干小さい鈍角で折り曲げて第2折曲げ部(61b)を形成することで、断面略くの字状の2段曲げの折曲げ縁部(61)とすることが好ましい。また、図9(b)に示すように、まず、直角で折り曲げて第1折曲げ部(62a)を形成し、その縁部を鈍角で折り曲げて第2折曲げ部(62b)を形成することで、2段曲げの折曲げ縁部(62)とすることもできる。また、図9(c)に示すように、まず、直角で折り曲げて第1折曲げ部(63a)を形成し、鈍角で折り曲げて第2折曲げ部(63b)を形成し、鋭角で折り曲げて第3折曲げ部(63c)を形成し、さらに、鈍角で折り曲げて第4折曲げ部(63d)を形成することで、多段曲げの折曲げ縁部(63)とすることもできる。
【0069】
また、反射板組立体(3)は、切起しで反射板を形成するのに限定されるものではなく、図10に示すように、1枚の長尺状の板材を長さ方向に所定間隔で所要範囲を折り込むようにして、折り込んで重なった部分を反射板(71)、折り込まない部分を連結部(72)として、これらを交互に配置していくことで反射板組立体(3)を得ることもできる。
【符号の説明】
【0070】
(1) 防音パネル
(2) 筐体
(3) 反射板組立体
(4) 吸音材
(5) 被覆材
(11) 正面板
(12) 天板
(13) 底板
(14) 側面板
(15) 背面板
(16) 反射板
(18) 両縁部
(20) ストッパ
(30) 筐体
(31) 正面板
(32) 天板
(33) 底板
(34) 側面板
(35) 背面補強材
(41) 凹部(強度付与用)
(42) 凸部(重ね合わせ用)
(43) 凹部(重ね合わせ用)
(44) 水抜き用開口
(51) 反射板
(53) 折曲げ縁部
(54) ストッパ
(56) 反射板
(58) 折曲げ縁部
(61)(62)(63)折曲げ縁部
(71) 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、筐体内に所要間隔で配された複数枚の反射板と、反射板間に配された吸音材とを備えている防音パネルであって、複数枚の反射板が一体化された反射板組立体が形成されて、該反射板組立体が筐体に固定されていることを特徴とする防音パネル。
【請求項2】
反射板組立体は、1枚の板材から各反射板に相当する部分を切り起こすことで形成されていることを特徴とする請求項1の防音パネル。
【請求項3】
反射板組立体に折曲げ縁部が形成されていることを特徴とする請求項2の防音パネル。
【請求項4】
各反射板に、吸音材の移動を防止するストッパが設けられていることを特徴とする請求項2または3の防音パネル。
【請求項5】
反射板組立体は、反射板間に吸音材が配された状態で、被覆材によって覆われていることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の防音パネル。
【請求項6】
筐体は、多数の開口が設けられた正面板、正面板の上下に配された天板および底板、正面板の左右に配された1対の側面板ならびに正面板に対向しかつ遮音性を有する背面板からなることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の防音パネル。
【請求項7】
背面板の少なくとも1カ所に、凹部が設けられていることを特徴とする請求項6の防音パネル。
【請求項8】
防音パネル同士の突き合わせ構造として、一方の突き合わせ面に凸部が形成され、他方の突き合わせ面に凸部に合致する凹部が形成されており、隣接する防音パネル同士が突き合わされた際に、一方の防音パネルの凸部と他方の防音パネルの凹部とが嵌め合わされることで、直接的に音が外部に抜けることが防止されることを特徴とする請求項6または7の防音パネル。
【請求項9】
筐体の側面下部に、水抜き用の開口が設けられていることを特徴とする請求項6から8までのいずれかに記載の防音パネル。
【請求項10】
筐体は、多数の開口が設けられた正面板、正面板の上下に配された天板および底板ならびに正面板の左右に配された1対の側面板からなり、反射板組立体の背面に背面補強材が固定され、背面補強材が筐体の天板および底板に固定されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の防音パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−180688(P2012−180688A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44686(P2011−44686)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【Fターム(参考)】