説明

防音床材の製造方法、及び、防音床材

【課題】防音効果を備えた床材を廃棄する際に、素材毎の分別回収が容易な床材の製造方法を提供することである。
【解決手段】木質材2と緩衝材3とを重ね合わせた防音床材の製造方法において、木質材と緩衝材との接合面の縁部を含む全体の40〜60%の領域を接着剤で接着した。接着剤を、網目状に、又は間欠的な線状に、又は所定の間隔を置いた複数の平行線状に配置するようにした。接着剤は、ホットメルト系接着剤とした。これにより、素材毎の分別回収が容易な床材の製造方法を提供することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音床材と、防音床材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、床材の基礎の心材に緩衝材を接着させることにより、床材に防音機能を備える手法が採用されており、一般化されている。心材に緩衝材を接着させる技術は、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開平1−239260号公報
【特許文献2】特開平5−287894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1には、基材(心材)に緩衝材を貼着させ、緩衝材の適宜の位置に孔を設けて、この孔にホットメルト樹脂を注入固化させ、この固化したホットメルト樹脂によって周囲の緩衝材を支持することにより、床材上の人や物体の重量によって床材(緩衝材)が沈み込まないようにする構成が開示されている。
【0004】
すなわち、特許文献1の構成では、床材の、ホットメルト樹脂が注入された孔以外の部分に荷重が掛かると、固化したホットメルト樹脂によって荷重による沈み込みを阻止するだけの牽引力が作用しなければならないので、ホットメルト樹脂そのものには、基材と緩衝材とを接着させる以外に、床材の沈み込みを防止する荷重支持機能をも兼ね備えていなければならない。
【0005】
よって、緩衝材には多数の孔を設け、この多数の孔にホットメルト樹脂を注入しなければ、上述の二つの機能を兼ね備えることは不可能である。しかし、このように構成すると、床材を廃棄処分する際には、固化したホットメルト樹脂と緩衝材とを分離するのが困難であり、緩衝材の再利用は不可能に近い。
【0006】
特許文献2には、床板本体に緩衝材を貼着した防音床板において、緩衝材を部分的に溶融硬化することにより、床板を踏んだ際に不安定な沈み込みが生じないようにする構成が開示されている。この特許文献2の構成でも、緩衝材を部分的に溶融硬化させるので、廃棄処分する際に、緩衝材の再利用はしにくい。
【0007】
そこで本発明では、防音効果を備えた床材を廃棄する際に、素材毎の分別回収が容易な床材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明では、木質材と緩衝材とを重ね合わせた防音床材の製造方法において、木質材と緩衝材との接合面の縁部を含む全体の部分的な領域を接着剤で接着するようにした。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記部分的な領域が、接合面全体の領域の40〜60%を占めるようにした。
【0010】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、接着剤を、網目状に、又は間欠的な線状に、又は所定の間隔を置いた複数の平行線状に配置させた。
【0011】
請求項4の発明では、請求項1〜3のうちのいずれかの発明において、前記接着剤として、ホットメルト系接着剤を採用するようにした。
【0012】
請求項5の発明では、請求項1〜請求項4のうちのいずれかの防音床材の製造方法によって防音床材を製造した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、木質材と緩衝材との接合面の縁部を含む全体の部分的な領域を接着するので、木質材と緩衝材との接着性を損じることなく、床材を廃棄処分する際に、木質材と緩衝材とを剥がし易く、素材毎の分別回収を容易に行うことができる防音床材を製造することができる。
【0014】
特に、請求項2の発明を実施すると、接着面全体の40〜60%の領域を接着するようにしたので、上述の効果を、より顕著に奏することができるようになる。
【0015】
また、請求項3の発明を実施することにより、接着剤が密集配置されないので、木質材と緩衝材とを剥離し易くなる。
【0016】
さらに、請求項4の発明では、有害成分を含まないホットメルト系接着剤を使用するので、安全性を向上させることができる。
【0017】
請求項5の発明を実施する、すなわち、請求項1〜請求項4の発明を実施して製造された防音床材は、廃棄処分する際に、木質材と緩衝材とを剥がし易く、素材毎の分別回収を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明を実施して製造される床材1の分解斜視図であり、図2は本発明を実施して製造された床材1の斜視図である。図1に示すように、床材1は、床面2aを備えた木質材2と、緩衝材3とを備えている。緩衝材3の上面には、接着剤4が網目状に配置され、図2に示すように、緩衝材3の上面と木質材2の下面とが接着され、一体化される。
【0019】
ここで、接着剤4の配置面積は、緩衝材3の上面の面積に一致させず、緩衝材3の上面に配置された接着剤4が占める総面積は、緩衝材3の上面の面積及び木質材2の下面の面積の40〜60%(好ましくは、45〜55%)程度に設定されている。
【0020】
接着剤4が示す総面積を増加させるほど、接着強度は増すが、廃棄する際に木質材2と緩衝材3の剥離が困難になる。逆に総面積を減少させ過ぎると、廃棄する際の木質材2と緩衝材3の剥離は容易になるが、接着強度が不足してしまう。そこで、上記したように接着面積を設定すると、接着強度の維持と剥離のし易さの両方を実現することができるようになる。
【0021】
緩衝材3と木質材2とを接着する際には、木質材2の縁2bと緩衝材3の縁3aとを一致させ、接着剤4は、縁2a及び縁3aとを接着する。縁2bと縁3aとが接着されていれば、床材1として使用しているときに木質材2と緩衝材3とが離れることはなく、縁2a又は縁3aの内側において、接着されない部分が50%程度存在しても、木質材2と緩衝材3とは良好に接着され、床材1として十分な機能を発揮することができる。
【0022】
接着剤4としては、ホットメルト系の接着剤を採用するのが好ましい。ホットメルト接着剤は、引火性や毒性を有する有機溶剤が含まれておらず、不燃性で、且つ、接着性に優れている。
【0023】
図3は、図1とは別の本発明を実施して製造される床材5の分解斜視図である。床材5では、接着剤7が、緩衝材3の上面に所定間隔を置いた平行な直線状に配置されている。接着剤7は、等間隔で配置するのが好ましい。等間隔で配置することにより、木質材2と緩衝材3とが全体としてむら無く接着される。
【0024】
図4は、図1、図3とは別の本発明を実施して製造される床材6の分解斜視図である。床材6では、接着剤8が、緩衝材3の上面に、間欠的に配置されている。すなわち、図4の矢印A方向及び矢印B方向に、それぞれ所定の間隔を置いて、接着剤8が配置されている。なお、緩衝材3の縁3aのみには、全周に渡って、連続的に接着剤8を配置するのが好ましい。これにより、木質材2の縁2bと緩衝材3の縁3aとが完全に接着される。
【0025】
以上のように構成された床材1、5、及び6は、木質材2と緩衝材3とが良好に接着され、緩衝材3によって防音機能を備えることができる。また、接着材4、7、及び8の塗布面積が、木質材2の下面の面積及び緩衝材3の上面の面積の40〜60%に設定されているので、廃棄する際に両者を剥がし易く、木質材2と緩衝材3とを分別回収するのが容易であり、素材毎の再利用が図り易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を実施して製造される床材の分解斜視図である。
【図2】本発明を実施して製造された床材の斜視図である。
【図3】図1とは別の本発明を実施して製造される床材の分解斜視図である。
【図4】図1、図3とは別の本発明を実施して製造される床材の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 床材
2 木質材
2a 床面
2b 木質材の縁
3 緩衝材
3a 緩衝材の縁
4 接着剤
5、6 床材
7、8 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質材と緩衝材とを重ね合わせた防音床材の製造方法において、木質材と緩衝材との接合面の縁部を含む全体の部分的な領域を接着剤で接着したことを特徴とする防音床材の製造方法。
【請求項2】
前記部分的な領域が、接合面全体の領域の40〜60%を占めることを特徴とする請求項1に記載の防音床材の製造方法。
【請求項3】
接着剤が、網目状に、又は間欠的な線状に、又は所定の間隔を置いた複数の平行線状に配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の防音床材の製造方法。
【請求項4】
前記接着剤は、ホットメルト系接着剤であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかに記載の防音床材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれかの防音床材の製造方法によって製造されたことを特徴とする防音床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−138575(P2007−138575A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334454(P2005−334454)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】