説明

降圧形コンバータ

【課題】 電力効率が高く、より降圧比率の大きな低電圧を出力するのに適した降圧形コンバータを提供すること。
【解決手段】 二つの入力端子1、2間に互いに直列に接続されたスイッチ素子4とインダクタ6とコンデンサ7と、コンデンサ7と閉回路を構成するよう接続されたスイッチ素子8と電流循環用素子9と、電流循環用素子9と閉回路を構成するよう接続されたインダクタ10とコンデンサ11と、スイッチ素子4とインダクタ6とが接続される点Aと、スイッチ素子8とインダクタ10と電流循環用素子9とが接続される点Bとの間に接続されたコンデンサ16と、制御回路17とを備え、コンデンサ16はスイッチ素子4がオンのときに充電され、スイッチ素子4のオフの期間にスイッチ素子4の両端に印加される電圧は、二つの入力端子1、2の間の電圧とコンデンサ16の充電電圧との差の電圧であることを特徴とする降圧形コンバータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流入力電圧をそれよりも低い直流出力電圧に変換するのに適した降圧形コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、CPUなどに代表される電子装置にあっては、複数のLSIデバイスなどが用いられている。それらLSIデバイスの駆動電圧は低電圧化の方向に進んでおり、例えば、0.8V、1.0V、1.2V、1.5V、1.8V、3.3Vなどである。このようなLSIデバイスは、前述のように直流入力電圧は低いものの、100Aを越える直流入力電流を必要とするものもある。このような低い直流入力電圧で比較的大きな直流入力電流を必要とするLSIデバイスなどの電源としては分散形の電源が適しているといわれている。この分散形の電源は、LSIデバイスそれぞれの近傍に、それらLSIデバイスが必要とするそれぞれの直流入力電圧に適した直流出力電圧を出力する降圧形コンバータを設置している。このようにすることによって、各降圧形コンバータとLSIデバイスとの間の配線の抵抗に起因する電力損失を低減し、電子装置全体の総合的な電力効率の向上を図っている。
【0003】
前述したような値の低い直流入力電圧を必要とするLSIデバイスなどのような負荷の従来の代表的な電源としては、降圧比が大きい2段構成の降圧形コンバータが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されている2段構成の降圧形コンバータについて、図9及び図10によって簡潔に説明する。図9において、入力端子1と入力端子2との間には直流入力電源3が接続されている。直流入力電源3と閉回路を構成するように第1のスイッチ素子4と第1の電流循環用素子5とが互いに直列に接続されている。第1のスイッチ素子4と第1の電流循環用素子5との接続点側の点をAとする。第1の電流循環用素子5と閉回路を構成できるように第1のインダクタ6と第1のコンデンサ7とが互いに直列に接続されている。これら回路部品4〜回路部品7が第1段目の降圧形のコンバータを形成し、第1のコンデンサ7は直流入力電源3の直流入力電圧Viよりも低い電圧V1に充電される。その電圧V1は、第1のスイッチ素子4のオン幅の時比率を制御することによって変えられる。
【0004】
第1のコンデンサ7と閉回路を構成し得るように第2のスイッチ素子8と第2の電流循環用素子9とが互いに直列に接続されている。第2の電流循環用素子9と閉回路を構成し得るように第2のインダクタ10と第2のコンデンサ11とが互いに直列に接続されている。回路部品8〜回路部品11が第1のコンデンサ7の電圧V1を降圧する第2段目の降圧形のコンバータを形成する。第2のコンデンサ11の充電電圧は、第2のスイッチ素子8のオン幅の時比率を制御することによって変えられて、第1のコンデンサ7の電圧V1よりも低い電圧になる。第2のコンデンサ11の電圧が出力端子12と13との間に直流出力電圧Voとして出力される。出力端子12と13にはLSIデバイスなどの低電圧の負荷14が接続される。
【0005】
ここで、第1のインダクタ6と第1のコンデンサ7と第2のスイッチ素子8との接続点X、及び第2のインダクタ10と第2のコンデンサ11との接続点Yの間に跨って接続されている第3のコンデンサ15は、位相特性を改善し、回路の安定化及びレギュレーションを向上するための働きを行う。
【0006】
このような従来の降圧形コンバータは、第1のスイッチ素子4と第2のスイッチ素子8がオンのとき、直流入力電源3から負荷14に電流を供給する。第1のスイッチ素子4と第2のスイッチ素子8がオンの期間T1で、第1のインダクタ6、第2のインダクタ10にエネルギーが蓄えられる。この期間T1では、点Aの電圧が直流入力電源3の直流入力電圧Viにほぼ等しい電圧となる。第1のインダクタ6に関連して説明すると、第1のスイッチ素子4がオフになるとき、第1のインダクタ6に蓄えられた前記エネルギーは第1のコンデンサ7と第1の電流循環用素子5とを通して循環電流として流れる。この期間T2では、第1の電流循環用素子5が導通しているので、点Aの電位は接地点Eの電位にほぼ等しくなり、ほぼゼロ電圧となる。したがって、第1のスイッチ素子4がオフの状態にあるとき、第1のスイッチ素子4の両端に印加される電圧は直流入力電源3の直流入力電圧Viにほぼ等しい電圧となる。つまり、第1のスイッチ素子4がスイッチング動作を行なう度に、図10に示すように、点Aの電圧は直流入力電源3の直流入力電圧Viとゼロ電圧との間で変化する。
【0007】
【特許文献1】特開2007−221956公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1のスイッチ素子4がスイッチング動作を行なう度に、点Aの電圧が直流入力電源3の直流入力電圧Viとゼロ電圧との間で変化することにより、第1のスイッチ素子4の内部キャパシタンスCの充放電による電力損失(CV/2)が大きくなるという問題点がある。また、第1の電流循環用素子5がダイオードである場合、そのダイオードの逆方向回復がなされていない時点で、第1のスイッチ素子4がターンオンし、そのダイオードの極性とは逆方向にリカバリー電流が流れるために、更に電力損失を増大させ、ノイズも発生させる。
【0009】
本発明は係る従来の欠点を解決することを課題にし、先ず第1のスイッチ素子の主端子間に印加される電圧を低くすることによって、第1のスイッチ素子のスイッチング損失を低減する。さらに、本発明は第1の電流循環用のダイオードを除去することによって、第1のダイオードのリカバリー損失をゼロにすると共に、リカバリー電流により発生するノイズを除去する。第1の電流循環用素子がFETからなる場合には、回路構成の簡素化を図ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、二つの入力端子の間に互いに直列に接続されている第1のスイッチ素子と第1のインダクタと第1のコンデンサと、前記第1のコンデンサと閉回路を構成するよう互いに直列に接続されている第2のスイッチ素子と電流循環用素子と、前記電流循環用素子と閉回路を構成するよう互いに直列に接続されている第2のインダクタと第2のコンデンサと、前記第1のスイッチ素子と前記第1のインダクタとが接続される点Aと、前記第2のスイッチ素子と前記第2のインダクタと前記電流循環用素子とがそれぞれ接続される点Bとの間に接続されている第3のコンデンサと、前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子のスイッチング動作を制御する制御回路とを備え、前記第3のコンデンサは前記第1のスイッチ素子がオンのときに充電され、前記第1のスイッチ素子のオフの期間に前記第1のスイッチ素子の両端に印加される電圧は、前記入力端子の間の電圧と前記第3のコンデンサの充電電圧との差の電圧であることを特徴とする降圧形コンバータを提供する。
【0011】
第2の発明は、前記第1の発明において、前記電流循環用素子は、前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子がオフした後にオンするFETと該FETに並列に接続された低損失ダイオードとを備え、その低損失ダイオードは、前記FETの内部ダイオードよりも順方向電圧降下が小さく、前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子がオフした後に前記FETがオンするまでの間、前記第1のインダクタ及び前記第2のインダクタに蓄えられたエネルギーによる電流を通流することを特徴とする降圧形コンバータを提供する。
【発明の効果】
【0012】
前記第1の発明によれば、第1のスイッチ素子の両端に印加される電圧を低減したので、第1のスイッチ素子のスイッチング損失を低減できる。また、電流循環用の第1のダイオードを除去したことによって、第1のダイオードのリカバリー損失をゼロにすると共に、リカバリー電流により発生するノイズを除去することができる。したがって、電力効率が高く、低ノイズの降圧形コンバータを提供することが可能である。
【0013】
前記第2の発明によれば、前記第1の発明が奏する効果の他に、第1、第2のスイッチ素子のターンオフから電流循環用素子のFETがターンオンするまでの区間の電力損失を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[実施形態1]
本発明に係る実施形態1の第1の降圧形コンバータ100について、図1ないし図4により説明する。図1〜図3において、図9で用いた記号と同じ記号は図9の部材と同じ名称の部材を示すものとする。図1は第1の降圧形コンバータ100の回路構成を示す図であり、図2は図1において第1のスイッチ素子4及び第2のスイッチ素子8がオンで、電流循環用素子9がオフのときの等価回路を示す図、図3は図1において第1のスイッチ素子4及び第2のスイッチ素子8がオフで、電流循環用素子9がオンのときの等価回路を示す図である。図4(A)は降圧形コンバータ100の点Aの電圧を示す図、図4(B)は降圧形コンバータ100の点Bの電圧を示す図である。
【0015】
この降圧形コンバータ100が図9に示した従来の降圧形コンバータと異なる主な点は、第1の電流循環用素子5に相当する素子を回路から削除したこと、及び互いに直列の第1のスイッチ素子4と第1のインダクタ6とが接続される点Aと、第2のスイッチ素子8と電流循環用素子9と第2のインダクタ10とが接続される点Bを跨ぐようにして第3のコンデンサ16を接続したところにある。第1の降圧形コンバータ100では、第1のスイッチ素子4、第2のスイッチ素子8、電流循環用素子9として順方向電圧降下の小さいFETを用いているので、FETとして説明するが、IGBTなど他の半導体素子でも実施可能である。
【0016】
この降圧形コンバータ100の入力端子1、2と直流入力電源3との間の配線はある程度長くても良いが、出力端子12、13と負荷14との間の配線は短いことが望ましい。制御回路17は、第1のFET4と第2のFET8と電流循環用FET9のオンオフを制御する。第1のFET4、第2のFET8は電流循環用FET9とは逆相、つまり第1のFET4、第2のFET8がオンのときにはFET9がオフ、第1のFET4、第2のFET8がオフのときにはFET9がオンするように制御される。制御回路17は、直流入力電源3の電圧Viに対する出力端子12、13間の出力電圧Voの降圧比率に応じた時比率で、第1のFET4と第2のFET8をオンオフさせる。時比率とは、1周期における第1のFET4と第2のFET8のオン期間の割合をいう。
【0017】
第1のFET4、第2のFET8は、必ずしも同時刻にターンオン又はターンオフしなくてもよいが、電力効率を低下させないためには、同時にターンオン、同時にターンオフするのが好ましい。また、制御回路17は第1のFET4、第2のFET8がターンオフした後に、電流循環用FET9をターンオンさせる。ここで、第1のコンデンサ7、第2のコンデンサ11、及び第3のコンデンサ16は、第1のFET4と第2のFET8のスイッチング周波数に対して各々の電圧が定電圧と見なせる程度の大きさのキャパシタンスをそれぞれ有する。
【0018】
次に、第1の降圧形コンバータ100の動作を説明する。制御回路17が第1のFET4と第2のFET8をオンさせている期間T1では、FET4、FET8の順方向電圧降下が小さいから無視すると、図2に示すような等価回路になる。直流入力電源3からの電流は、一方では点Aから、第1のインダクタ6を通して第1のコンデンサ7を図示極性で充電すると共に、更に点Bを介して負荷14側に流れる。また、他方では点Aから第3のコンデンサ16を図示極性で充電し、点Bを介して負荷14側に電流を流す。このとき、制御回路17は電流循環用FET9をオフさせている。第1のFET4がオンしているときの点Aの電圧は、図4(A)に示すように、第1のFET4の順方向電圧降下をゼロとすると、直流入力電源3の電圧Viに等しい電圧となる。
【0019】
次に、制御回路17が第1のFET4と第2のFET8の双方をオフにし、電流循環用FET9をオンさせる。第1のFET4と第2のFET8がターンオフした時点での第1のコンデンサ7の充電電圧がV1、第3のコンデンサ16の充電電圧がV2であるものとする。ここで、制御回路17は、第2のFET8と電流循環用FET9との短絡を防ぐために、第2のFET8がターンオフした後、所定の短い時間の経過後に電流循環用FET9をターンオンさせる。その所定の短い時間では、電流循環用FET9の内部ダイオード(図1では記号9aで示す。)が導通する。ここで、電流循環用FET9の順方向電圧降下が無いものとすると、第1のFET4と第2のFET8の双方がオフし、電流循環用FET9がオンしたときの等価回路は図3のようになる。第1のコンデンサ7の電圧V1、第3のコンデンサ16の電圧V2はそれぞれ図示の極性である。
【0020】
図3の等価回路から、第1のインダクタ6の磁気エネルギーは第1のコンデンサ7、点B、第3のコンデンサ16、点Aを介して循環電流として流れる。このときの点Aの電圧は第3のコンデンサ16の電圧V2と等しく、第1のインダクタ6が(V2−V1)の電圧を担うことになる。また、第2のインダクタ10に蓄えられた磁気エネルギーは、第1のFET4と第2のFET8の双方がオフのときに、第2のコンデンサ11、電流循環用FET9、点Bを含む閉回路で電流を循環させると共に、負荷14へ電流を供給する。
【0021】
したがって、点Aの電圧は図4(A)に示すようになり、点Bの電圧は図4(B)に示すようになる。前述したように、第1のFET4がオンしている期間T1では、点Aの電圧は第1のFET4を通して直流入力電源3に短絡されているので、直流入力電源3の電圧Viにほぼ等しい。第1のFET4と第2のFET8のオフの期間T2では、点Aの電圧は、第3のコンデンサ16の電圧V2に等しくなる。このことから、第1のFET4のスイッチング動作時に、第1のFET4の両端、つまり主端子であるドレイン端子とソース端子との間に印加される電圧は直流入力電源3の電圧Viと第3のコンデンサ16の電圧V2との間で変化するだけである。図10に示した従来の降圧形コンバータの場合には、第1のスイッチ素子のスイッチング動作時に、第1のスイッチ素子の両端の電圧が直流入力電源の電圧とゼロ電圧の間で変化するのに比べて、この実施形態1では第1のスイッチ素子4の両端に印加される電圧の変化が明らかに小さくなる。
【0022】
この降圧形コンバータ100にあっては、第1のコンデンサ7の電圧V1、及び第3のコンデンサ16の電圧V2は前述したように電圧源と見なせるために一定である。また、第1のインダクタ6、第2のインダクタ10の各周期の平均電圧はゼロとなる。図2の等価回路から、第1のコンデンサ7の電圧V1と第3のコンデンサ16の電圧V2との和は直流入力電源3の電圧Viとなる。つまり、Vi=V1+V2となる。第1のFET4、第2のFET8の時比率をDで表すと、図2及び図3の等価回路から、第1のコンデンサ7の電圧V1はVi/(2−D)となり、第3のコンデンサ16の電圧V2は(1−D)Vi/(2−D)となる。出力電圧Voは、第1のコンデンサ7の電圧V1に時比率Dを乗じた電圧(D・Vi)であるから、直流入力電源3の電圧Viとの関係式で示すと、出力電圧VoはD・Vi/(2−D)となる。
【0023】
前述から、第1のFET4の両端に印加される電圧は、電圧Viと電圧V2との差であるから、Vi−(1−D)Vi/(2−D)であり、最終的にVi/(2−D)で表せる。降圧形コンバータでは、降圧比を大きくするときには、時比率Dは当然に0.5よりも小さな数値であるので、この式からも明らかに第1のFET4の両端に印加される電圧は、小さくなる。例えば直流入力電源3の電圧Viが12Vで、出力電圧が1Vのときには、第1のFET4の両端の電圧はおよそ7Vである。第1のFET4のスイッチング動作時に生じる電力損失が低減されるのは明らかである。また、電流循環用FET9は第1のインダクタ6の磁気エネルギー、及び第2のインダクタ10の磁気エネルギーの双方を還流させる働きを行い、従来の回路における第1の電流循環用素子を省略することができた。したがって、第1の電流循環用素子を省略したので、そのリカバリー損失やノイズの発生を防ぐことができ、また、回路構成を簡素化できる。
【0024】
次に、この降圧形コンバータ100と図9に示した回路構成の従来の降圧形コンバータとの実験結果及びシミュレーション結果について比較を行なう。双方の降圧形コンバータとも、第1のインダクタ6のインダクタンスは1.5μH、第2のインダクタ10のインダクタンスは1.5μH、第1のコンデンサ7のキャパシタンスは20μFとした。また、降圧形コンバータ100の第2のコンデンサ11のキャパシタンスは450μF、第3のコンデンサ16のキャパシタンスは20μFであり、図9に示した回路構成の従来の降圧形コンバータの第2のコンデンサ11のキャパシタンスは400μFとした。双方の降圧形コンバータともほぼ同一特性の第1のFET4、及びほぼ同一特性の第2のFET8を用いるものとし、それらのスイッチング周波数を500kHzとした。直流入力電源3の直流電圧を12Vとして負荷14を流れる負荷電流を0〜15Aの範囲で変え、第1のFET4と第2のFET8の時比率Dを制御して出力電圧Voを1.0V、0.8Vと一定に保った。このときの入力端子1、2の入力電流、入力電圧、及び出力端子12、13の出力電流、出力電圧を測定して、入力電力及び出力電力を算出し、出力電力×100/入力電力で電力効率を求めて、それぞれ図5〜図7のグラフで表している。
【0025】
図5は、第1のFET4と第2のFET8の時比率Dを変えたときの電圧変換率(出力電圧/入力電圧)を算出した実験値、計算値を示している。図5の曲線Xは、実施形態1の降圧形コンバータ100の計算値を示し、黒丸は実験値を示している。また、曲線Yは図9に示した従来の降圧形コンバータの計算値を示す。黒丸で示される実験値が計算値にほとんど一致し、本発明に係る降圧形コンバータ100は従来の降圧形コンバータに比べて電圧変換率が高くなっており、降圧比は幾分低くなっている。
【0026】
図6は、出力電圧Voが1.0Vのときの電力効率−出力電流特性を示す。図6の曲線Xは実施形態1の降圧形コンバータの100の実験値を示す。また、曲線Yは図9に示した従来の降圧形コンバータの実験値を示す。図7は出力電圧Voが0.8Vのときの電力効率−出力電流特性を示す。図7の曲線Xは実施形態1の降圧形コンバータの100の実験値を示し、曲線Yは図9に示した従来の降圧形コンバータの実験値を示す。これら図面から、この降圧形コンバータ100は従来の降圧形コンバータに比べて、電圧変換率−時比率及び電力効率が高く、入力電圧よりもより大幅に低い出力電圧を得たいときに優れていることが分かる。
【0027】
[実施形態2]
第2の実施形態に係る降圧形コンバータ200について、図8により説明する。降圧形コンバータ200が降圧形コンバータ100と異なる点は、電流循環用素子9がFET91と、FET91と並列に接続されたショットキーバリアダイオード、又はFET91の内部ダイオードよりも順方向電圧降下の小さなダイオードである低損失ダイオード92とからなるところにある。図8において、図1で用いた記号と同一の記号は図1で説明した部材と同じ名称の部材を示すものとする。
【0028】
図3の等価回路で説明したように、第1のスイッチ素子4と第2のスイッチ素子8とがオフすると、それまでに第1のインダクタ6に蓄えられたエネルギーは、第1のインダクタ6と第1のコンデンサ7と電流循環用素子9と点Bと第3のコンデンサ16と点Aとを含む閉回路を電流として循環する。同様に、第1のスイッチ素子4と第2のスイッチ素子8とがオフすると、それまで第2のインダクタ10に蓄えられたエネルギーは、第2のインダクタ10と点Bと電流循環用素子9と第2のコンデンサ11とを含む閉回路を循環電流として流れる。したがって、電流循環用素子9は第1のインダクタ6に蓄えられたエネルギーによる循環電流と、第2のインダクタ10に蓄えられたエネルギーによる循環電流の双方を通流させることになる。
【0029】
他方、第2のスイッチ素子8がターンオフする前に電流循環用素子9のFET91がターンオンすると、短絡状態になって点Bが接地され、第1のコンデンサ7が瞬間的に放電されてしまうので、これは避けなければならない。このため、従来から制御回路17は第1のスイッチ素子4と第2のスイッチ素子8とがターンオフした後、所定の時間が経過するまでFET91をターンオンさせないデッドタイムを設けている。低損失ダイオード92が接続されていなければ、第1のスイッチ素子4と第2のスイッチ素子8とがターンオフするときに、前記所定時間はFET91の内部ダイオード(図1の記号9aに相当する。)が導通して前記循環電流を流す。
【0030】
ここで、FETの内部ダイオードはPN接合型のダイオードであるので、ショットキーバリアダイオードのような低損失ダイオードに比べて順方向電圧降下が大きくなるために、順方向損失が大きい。この実施形態2では、第1のインダクタ6に蓄えられたエネルギーによる循環電流と、第2のインダクタ10に蓄えられたエネルギーによる循環電流を通流させるので、FET91の内部ダイオードの順方向損失は無視できない。したがって、この実施形態2ではFET91の内部ダイオードに比べて順方向電圧降下が小さな低損失ダイオード92をFET91に並列に接続している。したがって、低損失ダイオード92は、FET91の内部ダイオードに代わって、第1のスイッチ素子4と第2のスイッチ素子8とがターンオフした後、FET91がターンオンするまでの前記所定の時間、第1のインダクタ6に蓄えられたエネルギーによる循環電流と、第2のインダクタ10に蓄えられたエネルギーによる循環電流を通流させる。
【0031】
この降圧形コンバータ200によれば、電流循環用素子9がFET91と、FET91と並列に接続された低損失ダイオード92とからなり、このように低損失で蓄積電荷のないショットキーバリアダイオードをFET91に並列に接続することによって、デッドタイム中の電力損失を低減すると共に、FET8のターンオン時のリカバリー損失を低減できる。
【0032】
以上の実施形態では2段形の降圧形コンバータについて述べたが、必要があれば更に降圧するために、第2のコンデンサ11と出力端子12、13との間に、第2のスイッチ素子8と電流循環用素子9と同様にして、第3のスイッチ素子と電流循環用素子を接続しても良い。また、図示していないが、実施形態1又は実施形態2と同様な構成で、それぞれの低入力電圧負荷の入力電圧に対応できる低出力電圧の降圧形コンバータを複数用意し、それら降圧形コンバータの入力端子を入力端子1、2に接続すると共に、各降圧形コンバータを対応する低入力電圧負荷の近傍に設置してもよい。また、通信系統にあっては、一般に電源電圧はDC48Vであるので、直流入力電源3はDC48Vなどを所定の直流電圧に変換する1段形又は本発明の2段形の降圧形コンバータなどであってもよい。なお、図9の高圧形コンバータで用いられている位相補整用のコンデンサ(15)を同様に接続してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態1にかかる降圧形コンバータ100の回路構成を示す図面である。
【図2】降圧形コンバータ100の等価回路を示す図面である。
【図3】降圧形コンバータ100の等価回路を示す図面である。
【図4】降圧形コンバータ100における点Aの電圧、及び点Bの電圧を示す図面である。
【図5】降圧形コンバータ100と従来の同様な構成の降圧形コンバータの電圧変換率−時比率を示す図面である。
【図6】降圧形コンバータ100と従来の同様な構成の降圧形コンバータの電力効率−出力電流特性を示す図面である。
【図7】降圧形コンバータ100と従来の同様な構成の降圧形コンバータの電力効率−出力電流特性を示す図面である。
【図8】本発明の実施形態2にかかる降圧形コンバータ200の回路構成を示す図面である。
【図9】従来の降圧形コンバータの回路構成を示す図面である。
【図10】従来の降圧形コンバータにおける点Aの電圧を示す図面である。
【符号の説明】
【0034】
1、2・・・入力端子
3・・・直流入力電源
4・・・第1のスイッチ素子
5・・・第1の電流循環用素子
6・・・第1のインダクタ
7・・・第1のコンデンサ
8・・・第2のスイッチ素子
9・・・電流循環用素子
10・・・第2のインダクタ
11・・・第2のコンデンサ
12、13・・・出力端子
14・・・負荷
15、16・・・第3のコンデンサ
17・・・制御回路
91・・・電流循環用素子9のFET
92・・・電流循環用素子9の低損失ダイオード
A・・・第1のスイッチ素子4と第1のインダクタ6と第3のコンデンサ16とが接続される点
B・・・第2のスイッチ素子8と第2のインダクタ10と電流循環素子9とが接続される点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの入力端子の間に互いに直列に接続されている第1のスイッチ素子と第1のインダクタと第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサと閉回路を構成するよう互いに直列に接続されている第2のスイッチ素子と電流循環用素子と、
前記電流循環用素子と閉回路を構成するよう互いに直列に接続されている第2のインダクタと第2のコンデンサと、
前記第1のスイッチ素子と前記第1のインダクタとが接続される点Aと、前記第2のスイッチ素子と前記第2のインダクタと前記電流循環用素子とがそれぞれ接続される点Bとの間に接続されている第3のコンデンサと、
前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子のスイッチング動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記第3のコンデンサは前記第1のスイッチ素子がオンのときに充電され、前記第1のスイッチ素子のオフの期間に前記第1のスイッチ素子の両端に印加される電圧は、前記入力端子の間の電圧と前記第3のコンデンサの充電電圧との差の電圧であることを特徴とする降圧形コンバータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記電流循環用素子は、前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子がオフした後にオンするFETと該FETに並列に接続された低損失ダイオードとを備え、
該低損失ダイオードは、前記FETの内部ダイオードよりも順方向電圧降下が小さく、前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子がオフした後に前記FETがオンするまでの間、前記第1のインダクタ及び前記第2のインダクタに蓄えられたエネルギーによる電流を通流することを特徴とする降圧形コンバータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−273236(P2009−273236A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121536(P2008−121536)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【Fターム(参考)】