説明

限定再生型情報記憶媒体及び製造方法

本発明は、限定再生型情報記憶媒体で使用するための反応性接着剤配合物を提供する。この反応性接着剤配合物は、1種以上の接着材料、1種以上の接着材料中に配設された1種以上の反応性物質、及び1種以上の接着材料中に配設された1種以上の光漂白抑制物質を含んでいる。1種以上の光漂白抑制物質は、レゾルシノール、4−ヘキシルレゾルシノール及び/又はポリヒドロキシスチレンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には情報記憶媒体に関する。さらに具体的には、本発明は限定再生型光、磁気及び光磁気情報記憶媒体を含む限定再生型情報記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
光、磁気及び光磁気情報記憶媒体は、高性能情報記憶技術の例である。これらの情報記憶技術の各々は、記憶情報1メガバイト当たりの比較的安いコストと共に比較的高い記憶容量を示す。コンパクトディスク(CD)、ディジタルバーサタイルディスク(DVD)、多層構造物(例えば、DVD−5やDVD−9)、多面型構造物(例えば、DVD−10やDVD−18)、光磁気ディスク(MO)、その他の追記型及び書換型フォーマット(例えば、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW及びDVD−RAM)など(以後は総称的に「情報記憶媒体」という)の使用を始めとして、光情報記憶媒体の使用はオーディオ、ビデオ及びコンピューターデータ用途で広く普及している。これらのフォーマットの各々では、データは基板上にディジタルデータ系列としてエンコードされる。例えば、CDのような先行記録型光情報記憶媒体では、データは、射出成形、スタンピングなどによって塑性物質基板の表面に形成された複数のピット及び溝としてエンコードされる。
【0003】
様々な用途では、限定された寿命を有する情報記憶媒体を得ることが望ましい。例えば、音楽、映画及びビデオゲームは所定の期間だけ顧客にレンタルされることが多い。このような所定期間の終了時には、顧客はレンタル商品をレンタル業者に返却しなければならない。その結果、レンタル業者は各レンタル商品を絶えず追跡しなければならない。このような追跡機能は多大の労力、時間及び費用を必要とする。さらに、レンタル商品は顧客によって損害を受けやすい。同様に、ソフトウェアの購入を勧誘するため、サンプル用コンピュータープログラムが潜在的な顧客にしばしば提供される。これらの「デモ」プログラムは、その性質上、限定された寿命を有していなければならない。かくして、限定再生型情報記憶媒体を得ることは望ましい。
【0004】
限定再生型情報記憶媒体を製造するためには、幾つかの通常方法が存在している。1つの方法は、反射層を多孔質層で保護することにより、所定期間後に反射層が酸化されてしまうようにディスクを形成することを含んでいる。反射層が一定の酸化レベルに達すると、ディスクはもはや読出し可能でなくなる。別の方法は、反応性染料及び任意には1種以上の他の添加剤を含む被膜をディスクの表面上に付着させることを含んでいる。酸素に暴露されると、最初は無色である反応性染料が酸化されて所定期間後に不透明又は半透明の層を形成し、ディスクを読出し不可能にする。別法として、反応性染料を含む層をディスクの他の層の間に「サンドイッチ」することもできる。
【0005】
限定再生型情報記憶媒体を製造するための通常方法の各々に関する問題点は、その方法が「無効化し得る」ことである。換言すれば、対応する情報記憶媒体は、個人や零細企業によって限定されない再生可能性を有するように改造され得る。例えば、反応性染料を用いる方法は、不透明又は半透明の層を光漂白することで無効化し得る。光漂白の危険を低減させるために各種の添加剤が使用されてきたが、十分な安全性を与えるものはない。このように、真の限定再生型情報記憶媒体はまだ得られておらず、音楽会社、映画スタジオ、ビデオゲームメーカー、ソフトウェアメーカーなどはその知的財産に対する十分な保護手段を有していない。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0129408号明細書
【特許文献2】米国特許第6011772号明細書
【特許文献3】米国特許第6338933号明細書
【特許文献4】米国特許第6343063号明細書
【特許文献5】米国特許第6434109号明細書
【特許文献6】米国特許第6511728号明細書
【特許文献7】米国特許第6531262号明細書
【特許文献8】米国特許第6537635号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2002/0076647号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2002/0102499号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2002/0172143号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2003/0003394号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2003/0099186号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2003/0112737号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2003/0123379号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2003/0002431号明細書
【発明の開示】
【0006】
本発明は、光、磁気及び光磁気情報記憶媒体を含めた限定再生型情報記憶媒体を提供する。一般に、本発明の情報記憶媒体は、本質的に無色のロイコ染料(例えば、メチレンブルー)のような反応性染料及び1種以上の添加剤を含む接着剤層を含んでいる。好ましくは、1種以上の添加剤はレゾルシノール又はレゾルシノールの誘導体及び任意にはポリ(ヒドロキシスチレン)(PHS)を含んでいる。有利なことには、接着剤層中にメチレンブルー、レゾルシノール及びPHSを含む情報記憶媒体の光漂白は通常の情報記憶媒体の光漂白に比べて顕著に抑制されることが判明した。
【0007】
本発明の一実施形態では、限定再生型情報記憶媒体で使用するための反応性接着剤配合物が、1種以上の接着材料、1種以上の接着材料中に配設された1種以上の反応性物質、及び1種以上の接着材料中に配設された1種以上の光漂白抑制物質を含んでいる。好ましくは、1種以上の光漂白抑制物質はレゾルシノール又は4−ヘキシルレゾルシノールを含む。レゾルシノール又は4−ヘキシルレゾルシノールは、反応性接着剤配合物の全重量を基準にして約0〜約10重量%の範囲内で、好ましくは約2〜約5重量%の範囲内で存在する。1種以上の光漂白抑制物質はまた、ポリヒドロキシスチレンも含み得る。ポリヒドロキシスチレンは、反応性接着剤配合物の全重量を基準にして約0〜約12重量%の範囲内で、好ましくは約7〜約12重量%の範囲内で存在する。任意には、1種以上の光漂白抑制物質はレゾルシノール又は4−ヘキシルレゾルシノールとポリヒドロキシスチレンとの組合せを含む。1種以上の反応性物質は、酸素感受性ロイコメチレンブルー、還元形メチレンブルー、対応する還元形のブリリアントクレジルブルー、ベーシックブルー3、トルイジン0、上述の反応性物質の1種の誘導体、又は上述の反応性物質の1種以上を含む組合せを含む。1種以上の接着材料は、アクリレート、メタクリレート、ウレタン又はビニルモノマーを含むもののような、光学グレードのUV硬化性接着剤又はエポキシ樹脂を含む。
【0008】
本発明の別の実施形態では、限定再生型情報記憶媒体が、1以上の基板、並びに基板の表面に直接又は間接に隣接して配設された反応層及び反応性接着剤層の1以上を含んでいる。反応層を使用する場合には、反応層は1種以上のキャリヤー材料、1種以上のキャリヤー材料中に配設された1種以上の反応性物質、及び1種以上のキャリヤー材料中に配設された1種以上の光漂白抑制物質を含んでいる。反応性接着剤層を使用する場合には、反応性接着剤層は1種以上の接着材料、1種以上の接着材料中に配設された1種以上の反応性物質、及び1種以上の接着材料中に配設された1種以上の光漂白抑制物質を含んでいる。好ましくは、1種以上の光漂白抑制物質はレゾルシノール又は4−ヘキシルレゾルシノールを含む。レゾルシノール又は4−ヘキシルレゾルシノールは、反応性接着剤層の全重量を基準にして約0〜約10重量%の範囲内で、好ましくは約2〜約5重量%の範囲内で存在する。1種以上の光漂白抑制物質はまた、ポリヒドロキシスチレンも含み得る。ポリヒドロキシスチレンは、反応性接着剤層の全重量を基準にして約0〜約12重量%の範囲内で、好ましくは約7〜約12重量%の範囲内で存在する。任意には、1種以上の光漂白抑制物質はレゾルシノール又は4−ヘキシルレゾルシノールとポリヒドロキシスチレンとの組合せを含む。1種以上の反応性物質は、酸素感受性ロイコメチレンブルー、還元形メチレンブルー、対応する還元形のブリリアントクレジルブルー、ベーシックブルー3、トルイジン0、上述の反応性物質の1種の誘導体、又は上述の反応性物質の1種以上を含む組合せを含む。1種以上の接着材料は、アクリレート、メタクリレート、ウレタン又はビニルモノマーを含むもののような、光学グレードのUV硬化性接着剤又はエポキシ樹脂を含む。1種以上のキャリヤー材料は、熱可塑性アクリルポリマー、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリチオレン、UV硬化性有機樹脂、ポリウレタン、熱硬化性アクリルポリマー、アルキド樹脂、ビニル樹脂、或いは上述のキャリヤー材料の1種以上を含む反応生成物又は組合せを含む。1以上の基板は、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、液晶ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン又はテトラフルオロエチレンを含む。好ましくは、1以上の基板は1以上の実質的に無色又は実質的に赤色の基板を含む。
【0009】
図面の簡単な説明
図1は、無色基板を用いた場合における複数の例示的な反応性接着剤配合物の相対光漂白性能を示すグラフである。
【0010】
図2は、赤色基板を用いた場合における複数の例示的な反応性接着剤配合物の相対光漂白性能を示すグラフである。
【0011】
図3は、無色基板及び赤色基板の両方並びに各種の光漂白添加剤を用いた場合における複数の例示的な反応性接着剤配合物の相対光漂白性能を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、光、磁気及び光磁気情報記憶媒体を含めた限定再生型情報記憶媒体を提供する。一般に、本発明の情報記憶媒体は、本質的に無色のロイコ染料(例えば、メチレンブルー)のような反応性染料及び1種以上の添加剤を含む接着剤層を含んでいる。好ましくは、1種以上の添加剤はレゾルシノール又はレゾルシノールの誘導体及び任意にはポリ(ヒドロキシスチレン)(PHS)を含んでいる。有利なことには、接着剤層中にメチレンブルー、レゾルシノール及びPHSを含む情報記憶媒体の光漂白は通常の情報記憶媒体の光漂白に比べて顕著に抑制されることが判明した。
【0013】
情報記憶媒体は、読出しレーザー波長で低い複屈折及び高い光透過率を有する基板を含んでいる。換言すれば、情報記憶媒体は光媒体装置などで読出し可能である。情報記憶媒体はまた、反応性接着剤層、データ層及び反射層も含んでいる。通例、読出しレーザー波長は(青色又は青紫色レーザーを組み込んで)約390〜約430nmの範囲内にあるか、或いは(赤色レーザーを組み込んで)約630〜約650nmの範囲内にある。情報記憶媒体はさらに、吸光層及び任意には反応層を含み得る。基板は、データ層を光媒体装置で読出し可能にするのに十分な光学的透明度を有する材料からなっている(即ち、基板は約±100nm以下の複屈折を有している)。理論的には、これらの性質を示す任意の塑性物質を基板として使用できる。しかし、かかる塑性物質は、所要の加工パラメーター(例えば、約25℃(室温)から約150℃までの温度でのスパッタリングなどによる以後の層の設置)に耐えなければならない。かかる塑性物質はまた、典型的な保存条件(例えば、約70℃までの温度を有する高温の自動車内での保存)にも耐えなければならない。換言すれば、塑性物質は各種の層の蒸着段階中及び最終使用者による保存中の変形を防止するのに十分な熱安定性を有することが望ましい。好適な塑性物質は、約100℃以上、好ましくは約125℃以上、さらに好ましくは約150℃以上、最も好ましくは約200℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂を包含する。その例には、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド及びポリカーボネートがある。約250℃以上のガラス転移温度を有する塑性物質には、m−フェニレンジアミンをスルホンジアニリン又はオキシジアニリンで置換したポリエーテルイミド、並びにポリイミドや上述の塑性物質の1種以上を含む組合せがある。通例、ポリカーボネートが使用される。
【0014】
好適な基板材料には、特に限定されないが、非晶質、結晶質及び半結晶質の熱可塑性樹脂、例えばポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(特に限定されないが、線状及び環状ポリオレフィン、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン及びポリプロピレンを含む)、ポリエステル(特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリシクロヘキシルメチレンテレフタレートを含む)、ポリアミド、ポリスルホン(特に限定されないが、水素化ポリスルホンを含む)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂、ポリスチレン(特に限定されないが、水素化ポリスチレン、シンジオタクチック及びアタクチックポリスチレン、ポリシクロヘキシルエチレン、スチレン−コ−アクリロニトリル及びスチレン−コ−無水マレイン酸を含む)、ポリブタジエン、ポリアクリレート(特に限定されないが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及びメチルメタクリレート−ポリイミドコポリマーを含む)、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル(特に限定されないが、2,6−ジメチルフェノールから導かれたもの、及び2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーを含む)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、液晶ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン及びテトラフルオロエチレン(例えば、テフロン(登録商標))のようなものがある。
【0015】
本明細書で使用する「ポリカーボネート」及び「ポリカーボネート組成物」という用語は、下記の式(I)の構造単位を有する組成物を包含する。
【0016】
【化1】

式中、R基の総数の約60%以上は芳香族有機基であり、その残部は脂肪族基、脂環式基又は脂環式基である。好ましくは、Rは芳香族有機基であり、さらに好ましくは下記の式(II)の基である。
【0017】
【化2】

式中、A及びAの各々は単環式二価アリール基であり、YはAとAとを隔てる0、1つ又は2つの原子を有する橋かけ基である。例示的な一実施形態では、1つの原子がAとAとを隔てている。この種の基の非限定的な実例は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン及びアダマンチリデンである。別の例示的な実施形態では、0の原子がAとAとを隔てており、その実例はビフェノールである。橋かけ基Yは、炭化水素基又は飽和炭化水素基(例えば、メチレン、シクロヘキシリデン又はイソプロピリデン)或いはヘテロ原子(例えば、−O−又は−S−)であり得る。
【0018】
ポリカーボネートは、ただ1つの原子がAとAとを隔てているジヒドロキシ化合物の反応で製造できる。本明細書で使用する「ジヒドロキシ化合物」という用語は、例えば、下記の一般式(III)を有するビスフェノール化合物を包含する。
【0019】
【化3】

式中、R及びRは各々独立に水素、ハロゲン原子又は一価炭化水素基を表し、p及びqは各々独立に0〜4の整数であり、Xは下記の式(IV)の基の1つを表す。
【0020】
【化4】

式中、R及びRは各々独立に水素原子又は一価線状若しくは環状炭化水素基を表し、Rは二価炭化水素基である。
【0021】
好適なジヒドロキシ化合物の若干の非限定的な実例には、米国特許第4217438号に名称或いは式(一般式又は特定式)で開示されているもののような二価フェノール及びジヒドロキシ置換芳香族炭化水素が包含される。式(III)で表すことのできる種類のビスフェノール化合物の具体例の非排他的なリストには、以下のものが包含される。1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以後は「ビスフェノールA」又は「BPA」)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(以後は「DMBPA」)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、9,9′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9′−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンや1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(以後は「DMBPC」又は「BCC」)のようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカンなど、並びに上述のビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せ。
【0022】
また、ホモポリマーではなくカーボネートコポリマーの使用が所望される場合には、2種以上の二価フェノールの重合から得られるポリカーボネート、或いは二価フェノールとグリコール、ヒドロキシ−若しくは酸−末端停止ポリエステル、二塩基酸、ヒドロキシ酸又は脂肪族二酸とのコポリマーを使用することも可能である。一般に、有用な脂肪族二酸は約2〜約40の範囲内の炭素原子を有する。好ましい脂肪族二酸はドデカン二酸である。
【0023】
ポリアリーレート及びポリエステルカーボネート樹脂又はこれらのブレンドも使用できる。枝分れポリカーボネート並びに線状ポリカーボネートと枝分れポカーボネートのブレンドも有用である。枝分れポリカーボネートは、重合時に枝分れ剤を添加することで製造できる。
【0024】
枝分れ剤は当業者にとって公知であり、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル、及び上述の枝分れ剤の1種以上を含む混合物であり得る3以上の官能基を含む多官能性有機化合物を含み得る。その具体例には、特に限定されないが、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸三塩化物、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビスフェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エチル)−α,α−ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸及びベンゾフェノンテトラカルボン酸、並びに上述の枝分れ剤の1種以上を含む組合せがある。枝分れ剤は、基板の全重量を基準にして約0.05〜約2重量%の範囲内のレベルで添加できる。枝分れ剤の例及び枝分れポリカーボネートの製造方法は、米国特許第3635895号及び同第4001184号に記載されている。本発明では、すべての種類のポリカーボネート末端基が想定されている。
【0025】
好ましいポリカーボネートは、A及びAの各々がp−フェニレンであり、YがイソプロピリデンであるビスフェノールAを基剤とするものである。好ましくは、ポリカーボネートの重量平均分子量は約5000〜約100000原子質量単位、さらに好ましくは約10000〜約65000原子質量単位、最も好ましくは約15000〜約35000原子質量単位である。
【0026】
ポリカーボネート合成の監視及び評価に際しては、ポリカーボネート生成物中に存在するフリース生成物の濃度を測定することが特に重要である。顕著なフリース生成物の生成はポリマーの枝分れを引き起こし、制御不可能な溶融物挙動をもたらすことがある。本明細書で使用する「フリース」及び「フリース生成物」という用語は、下記の式(V)を有するポリカーボネート中の繰返し単位を意味する。
【0027】
【化5】

式中、Xは上記の式(III)に関連して記載した二価基である。
【0028】
ポリカーボネート組成物は、この種の樹脂組成物中に通常混入される各種の添加剤も含み得る。かかる添加剤には、例えば、充填材又は補強材、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、帯電防止剤、離型剤、追加の樹脂及び発泡剤、並びに上述の添加剤の1種以上を含む組合せがある。
【0029】
基板材料の加工(例えば、溶融法によるポリカーボネートの製造)を助けるため、或いは基板材料の性質(例えば、粘度)を調節するため、1種以上の触媒を使用することもできる。例示的な触媒には、特に限定されないが、水酸化テトラアルキルアンモニウム及び水酸化テトラアルキルホスホニウムがあり、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム及び水酸化テトラブチルホスホニウムが好ましい。1種以上の触媒は、単独でも使用できるし、酸(例えば、リン酸)などの失活剤と組み合わせても使用できる。さらに、配合時にポリマー溶融物中に水を注入し、ベントから水蒸気として除去して残留揮発性化合物を除去することもできる。
【0030】
情報記憶媒体を製造するためには、まず最初に、各種の前駆体を十分に混合し得る通常の反応器(例えば、一軸又は二軸押出機、ニーダー、ブレンダーなど)を用いて基板材料を生成すればよい。押出機は、分解を引き起こすことなしに基板材料前駆体を溶融するのに十分高い温度に維持すべきである。例えばポリカーボネートに関しては、約220〜約360℃の範囲内、好ましくは約260〜約320℃の範囲内の温度が使用できる。同様に、押出機内の滞留時間は分解を最小限に抑えるように制御すべきである。約2分以上までの滞留時間が使用でき、約1.5分までの滞留時間が好ましく、約1分までの滞留時間が特に好ましい。所望の形態(通例はペレット、シート、ウェブなど)に押し出す前に、例えば溶融濾過、スクリーンパックの使用、又はこれらの組合せにより、混合物を任意に濾過して望ましくない夾雑物及び/又は分解生成物を除去できる。
【0031】
塑性組成物が生成された後、各種の成形技術及び/又は加工技術を用いてそれを基板に成形できる。例示的な成形技術及び/又は加工技術には、特に限定されないが、射出成形、フィルムキャスティング、押出し、プレス成形、吹込み成形及びスタンピングがある。基板を製造した後、電気めっき、(スピンコート技術、吹付け塗り技術、蒸着技術、スクリーン印刷技術、塗装技術、浸し塗り技術などによる)コーティング、ラミネーション、スパッタリングなどのような追加の加工を用いて基板上に所望の層を配設できる。通例、基板は約600ミクロン以下の厚さを有する。
【0032】
限定再生型ポリカーボネート情報記憶媒体の一例は、射出成形ポリカーボネート基板を含んでいる。基板上に配設し得る他の各種層には、1以上のデータ層、1以上の誘電体層、1以上の反応層、1以上の接着剤層、1以上の反射層、1以上の保護層、追加の基板、及び1以上の吸光層、並びに上述の層の1以上を含む組合せがある。光情報記憶媒体は、例えば、保護層、反射層、誘電体層及びデータ層を含むと共に、基板に接触した追加の誘電体層及び反応性接着剤層を介して基板の反対側に配設された吸光層を含み、任意には基板と吸光層との間に配設された反応層を含み得る。情報記憶媒体の形態はディスク形に限定されず、読出装置に適応し得る任意の形状及び寸法のものであり得ることは言うまでもない。
【0033】
記録型情報記憶媒体に関しては、データはレーザーでエンコードされる。レーザーで照射された活性データ層は相変化を受け、それによってデータストリームを構成する一連の高反射性又は非反射性領域を形成する。かかるフォーマットでは、レーザービームはまず基板を通過してからデータ層に到達する。データ層では、ビームはエンコードされたデータに従って反射されるか、又は反射されない。次いで、レーザービームは基板を通って戻り、光検出装置に入射し、そこでデータが解釈される。したがって、データ層は基板と反射層との間に配設される。光用途のためのデータ層は、通例、基板上にピット及び/又は溝を含んでいる。好ましくは、データ層は基板の表面に埋め込まれている。通例、基板は射出成形−圧縮技術を用いて製造される。この場合、金型には溶融ポリマーが充填される。金型は、プレフォーム、インサートなどを含み得る。ポリマーを冷却し、それが少なくとも部分的に溶融した状態にあるうちに圧縮することで、らせん状、同心円状又は他の適当な整列状態に配列された所望の表面構造(例えば、ピット及び/又は溝)を基板の所望部分(例えば、基板の片面又は両面)に刻印する。
【0034】
磁気用途又は光磁気用途のための例示的なデータ層は、酸化物(特に限定されないが、酸化ケイ素を含む)、希土類元素や遷移金属合金(例えば、ニッケル、コバルト、クロム、タンタル、白金、テルビウム、ガドリニウム、鉄、ホウ素、及び上述のものの1種以上を含む組合せや合金)、有機染料(例えば、シアニン系及びフタロシアニン系染料)並びに無機相変化化合物(例えば、TeSeSn及びInAgSb)のような、取得可能なデータを記憶し得る任意の材料を含み得る。
【0035】
粉塵、油及びその他の夾雑物からの保護を行う1以上の保護層は、約100ミクロン超から約10Å未満までの厚さを有し得るが、若干の実施形態では約300Å以下の厚さが好ましく、若干の実施形態では約100Å以下の厚さが特に好ましい。1以上の保護層の厚さは、通常、少なくとも一部では、使用する読出し/書込み機構の種類(例えば、光機構、磁気機構又は光磁気機構)によって決定される。例示的な保護層には、特に限定されないが、金、銀、窒化物(例えば、窒化ケイ素及び窒化アルミニウム)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)、酸化物(例えば、二酸化ケイ素)、ポリマー材料(例えば、ポリアクリレート及びポリカーボネート)、炭素フィルム(例えば、ダイヤモンド及びダイヤモンド様炭素)並びに上述のものの1種以上を含む組合せのような耐食性材料がある。
【0036】
データ層の片側又は両側に配設されてしばしば熱制御体として使用され得る1以上の誘電体層は、通例、最大では約1000Å以上、最小では約200Å以下の厚さを有する。例示的な誘電体層には、特に限定されないが、環境に適合すると共に好ましくは周囲の層との反応性をもたない材料のうち、窒化物(例えば、窒化ケイ素及び窒化アルミニウム)、酸化物(例えば、酸化アルミニウム)、硫化物(例えば、硫化亜鉛)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)並びに上述のものの1種以上を含む組合せがある。
【0037】
1以上の反射層は、データ取得を可能にするのに十分な量のエネルギー(例えば、光)を反射するのに十分な厚さを有するべきである。通例、1以上の反射層は約700Åまでの厚さを有し得るが、約300〜約600Åの範囲内の厚さが好ましい。例示的な反射層には、金属(例えば、アルミニウム、金、銀、ケイ素、チタン、及び上述のものの1種以上を含む合金や組合せ)を始めとして、特定のエネルギー場を反射し得る任意の材料がある。
【0038】
1以上の反応層及び/又は1以上の反応性接着剤層は、それぞれ反応性物質を含んでいる。反応性物質は、最初は情報記憶媒体装置によるデータ取得を可能にするのに十分な透過性を与え、後には情報記憶媒体装置によるデータ取得を阻止する1以上の層を形成する。換言すれば、反応性物質は情報記憶媒体装置に付随した光源の波長で所定量の入射光、反射光又はこれらの組合せを吸収する。通例、反射層からの初期パーセント反射率を約50%以上とする層が使用でき、約65%以上の初期パーセント反射率が好ましく、約75%以上の初期パーセント反射率がさらに好ましい。所定の情報記憶媒体が所望の期間(例えば、情報記憶媒体の所望許容再生時間)にわたって酸素(例えば、空気)に暴露された後には、該層は好ましくは反射層からの期間後パーセント反射率を約45%以下に低下させ、約30%以下の期間後パーセント反射率がさらに好ましく、約20%以下の期間後パーセント反射率がさらに一段と好ましく、約10%以下の期間後パーセント反射率が最も好ましい。
【0039】
例示的な反応性物質には、特に限定されないが、酸素感受性ロイコメチレンブルー、還元形のメチレンブルー、ブリリアントクレジルブルー、ベーシックブルー3及びトルイジン0、並びに上述のものの1種以上を含む反応生成物及び組合せがある。これらの物質の構造を以下に示す。
【0040】
【化6】

別の可能な反応性物質には、約48時間を超えると再酸化される染料がある。
【0041】
ロイコメチレンブルーの合成方法及び酸素依存性再酸化による着色形メチレンブルーの生成を以下に示す。
【0042】
【化7】

さらに、1以上の反応層及び/又は1以上の反応性接着剤層は、ポリヒドロキシ化合物のような1種以上の光漂白抑制剤を含み得る。好適なポリヒドロキシ化合物には、特に限定されないが、ビフェノール及びビフェノール誘導体、ビスフェノール及びビスフェノール誘導体、他のジオール、ジヒドロキシベンゼン及びトリヒドロキシベンゼン誘導体、並びにこれらの組合せがある。光漂白抑制剤は、ポリヒドロキシスチレン(ポリ−4−ビニルフェノール)のような小さい分子又はポリマーであり得る。ポリヒドロキシ化合物は光漂白を効果的に低減させる。普通には、臨界反射率は約20%未満である。さらに普通には、臨界反射率は約10%未満である。
【0043】
好適なポリヒドロキシ化合物には、下記の式(VI)で表されるものがある。
【0044】
【化8】

式中、Yは非共役橋かけ基(例えば、アルキレン、酸素、硫黄、−OCHCHO−など)を表し、wは0〜3の整数を表す。Eは芳香族基(例えば、フェニレン、ビフェニレン及びナフチレン)を表す。Zは、特に限定されないがハロゲン(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)を始めとする無機原子、特に限定されないがニトロを始めとする無機基、特に限定されないがアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール又はシクロアルキルのような一価炭化水素基を始めとする有機基、或いはOR(式中、Rは水素或いはアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール又はシクロアルキルのような一価炭化水素基である。)のようなオキシ基であり得る。mは0(この値を含む)から置換のために利用できるE上の位置の数までの任意の整数を表し、tは1以上の整数を表し、uは0又は1以上の整数を表す。若干の特定の実施形態では、Zはハロ基又はC〜Cアルキル基を含む。式(VI)で表されるように2以上のZ置換基が存在する場合、これらは同一のものでも相異なるものでもよい。芳香族残基の2以上の環内炭素原子がZ及びヒドロキシル基で置換される場合、芳香族残基E上のヒドロキシル基及びZの位置はオルト位、メタ位又はパラ位に変化し得ると共に、これらの基は隣接関係、非対称関係又は対称関係にあり得る。
【0045】
例示的なポリヒドロキシ化合物には、下記の式(VII)で表されるものがある。
【0046】
【化9】

式中、Rは、特に限定されないがハロゲン(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)を始めとする無機原子、特に限定されないがニトロを始めとする無機基、特に限定されないが水素或いはアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール又はシクロアルキルのような一価炭化水素基を始めとする有機基、OR(式中、Rは水素或いはアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール又はシクロアルキルのような一価炭化水素基である。)のようなオキシ基、或いはC(O)ORのようなエステル基であり得る。
【0047】
例示的なポリヒドロキシ化合物には、特に限定されないが、レゾルシノール、2,4−ビレゾルシノール、me4ビフェノール、ビスフェノールA、1,1,1−トリス(p−ヒドロキシフェニル)エタン(以後は「THPE」)、4−ヘキシルレゾルシノール、4,4′−ビフェノール、3,3′−ビフェノール、2,2′−ビフェノール、2,2′,6,6′−テトラメチル−3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ビフェノール、2,2′,6,6′−テトラメチル−3,3′,5−トリブロモ−4,4′−ビフェノール、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジオール、3,3′−ジ−tert−ブチルビフェニル−4,4′−ジオール、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェニル−4,4′−ジオール、2,2′−ジ−tert−ブチル−5,5′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジオール、3,3′−ジ−tert−ブチル−5,5′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジオール、3,3′,5,5′−テトラ−tert−ブチルビフェニル−4,4′−ジオール、2,2′,3,3′,5,5′−ヘキサメチルビフェニル−4,4′−ジオール、2,2′,3,3′,5,5′,6,6′−オクタメチルビフェニル−4,4′−ジオール、3,3′−ジ−n−ヘキシルビフェニル−4,4′−ジオール、3,3′−ジ−n−ヘキシル−5,5′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジオール、2−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、5−ヘプチルレゾルシノール、レゾルシノールモノアセテート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4,2′,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、4−ヘキシルレゾルシノール、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,2,4−トリヒドロキシベンゼンなどがある。普通には、ポリヒドロキシ化合物は反応層又は反応性接着剤層の全重量を基準にして約1〜約20重量%の範囲内、さらに普通には約3〜約15重量%の範囲内、最も普通には約5〜約10重量%の範囲内で存在する。別の実施形態では、ポリヒドロキシ化合物は約2〜約4重量%の範囲内で存在する。
【0048】
他の好適なポリヒドロキシ化合物には、
・次式のカルドール(カシューナット殻液中に存在するアルキル(アルケニル)レゾルシノールの混合物)、
【0049】
【化10】

・2−メチルカルドール、
・2,4−ジヒドロキシ安息香酸のエステル(例えば、ベンジルエステル)、
・次式のような3,5−ジヒドロキシ安息香酸のエステル、
【0050】
【化11】

・次式のようなアルキレン−ビス(二価フェノール)エーテル、
【0051】
【化12】

・次式のようなm−アミノフェノールのジアミド、
【0052】
【化13】

・次式のp−キシリレン−ビス−2,4−ジヒドロキシベンゾエート、
【0053】
【化14】

・次式の1,3−ビス(4′−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、
【0054】
【化15】

・2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、
・2,4,2′,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン
・2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノン、
・2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
・2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、
・2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、
・フェニル−1−ヒドロキシナフトエート(モノヒドロキシ)、
・ポリヒドロキシスチレン、
・2−(2−ヒドロキシ−p−アニソイル)安息香酸、
・2,4−ジヒドロキシ安息香酸、
・2,5−ジヒドロキシ安息香酸、
・3,5−ジヒドロキシ安息香酸、
・1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(モノヒドロキシ)、及び
・ポリビニルフェノール
がある。
【0055】
上述の反応性物質に加え、その他多数の染料及び遮光性物質を合成し、情報記憶媒体を限定再生型にするために役立てることができる。例えば、他の可能な反応性物質は米国特許第4404257号及び同第5815484号に見出すことができる。反応性物質はまた、上述の反応性物質の1種以上を含む混合物でもあり得る。
【0056】
反応層及び/又は反応性接着剤層中の反応性物質の量は、情報記憶媒体の所望寿命に依存する。例えば、反応層中の反応性物質の量は、最小では反応層の全重量を基準にして約0.1重量%であり、約1重量%が好ましい。反応性物質の最大量は約10重量%であり、約7重量%が好ましく、約6重量%がさらに好ましく、約5重量%が最も好ましい。
【0057】
1以上の反応層に関しては、反応性物質は、基板の表面の少なくとも一部に対する付着、含浸、又は付着と含浸の組合せのためにキャリヤーと混合することが好ましい。キャリヤーは、普通には反応層の全重量を基準にして約65〜約85%の範囲内、さらに普通には約70〜約80%の範囲内で存在する。例示的なキャリヤーには、熱可塑性アクリルポリマー、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリチオレン、UV硬化性有機樹脂、ポリウレタン、熱硬化性アクリルポリマー、アルキド樹脂、ビニル樹脂など、並びに上述のものの1種以上を含む組合せがある。ポリエステルには、例えば、例えばフマル酸又はマレイン酸を始めとする脂肪族ジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類との反応生成物、並びに上述のものの1種以上を含む反応生成物及び混合物がある。
【0058】
キャリヤーとして使用できる例示的なエポキシ樹脂には、特に限定されないが、1つ又は複数のエポキシ官能基を含むモノマー、ダイマー、オリゴマー又はポリマーのエポキシ材料がある。その例には、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応生成物、エピクロロヒドリンとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂との反応生成物、などがある。その他の有機樹脂は、米国特許第3697395号及び同第3697402号に示されているようなポリオレフィンとポリチオールとの混合物の形態のものであり得る。
【0059】
本明細書で使用する「熱可塑性アクリルポリマー」という用語は、1種以上のアクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーの重合で得られる熱可塑性ポリマーをその範囲内に包含するものである。これらのモノマーは、下記の一般式(VIII)で表される。
【0060】
【化16】

式中、Wは水素又はメチル基であり、Rはアルキル基、好ましくは約1〜約20の範囲内の炭素原子を含むアルキル基である。Rで表されるアルキル基の若干の非限定的な例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどがある。
【0061】
式(VII)で表されるアクリル酸エステルモノマーの若干の非限定的な例には、アクリル酸メチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどがある。式(VII)で表されるメタクリル酸エステルモノマーの若干の非限定的な例には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸プロピルなど、並びに上述のものの1種以上を含む反応生成物及び組合せがある。
【0062】
上述のアクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーのコポリマーも、本明細書で使用される「熱可塑性アクリルポリマー」という用語の範囲内に包含される。好ましくは、熱可塑性アクリルポリマーはポリ(メタクリル酸メチル/メタクリル酸)のコポリマーである。アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーの重合による熱可塑性アクリルポリマーの製造は、当業者にとって公知である任意の重合技術で行うことができる。熱可塑性アクリルポリマーは、普通には約0.300立方センチメートル/グラム(cm−1)未満、さらに普通には約0.250cm−1未満、最も普通には約0.200cm−1未満の固有粘度を有する。
【0063】
反応層を使用する場合、基板に対する反応層の密着性を向上させるため、これらの間にプライマーを使用できる。プライマーとして有用な熱可塑性アクリルポリマーには、ただ1種のアクリル酸エステルモノマーから導かれたアクリルホモポリマー、ただ1種のメタクリル酸エステルモノマーから導かれたメタクリルホモポリマー、2種以上のアクリル酸エステルモノマー、2種以上のメタクリル酸エステルモノマー、又はアクリル酸エステルモノマーとメタクリル酸エステルモノマーから導かれたコポリマーなど、並びに上述のものの1種以上を含む組合せがある。
【0064】
上述の熱可塑性アクリルポリマーの2種以上(例えば、2種以上のアクリルホモポリマー、2種以上のアクリルコポリマー、2種以上のメタクリルホモポリマー、2種以上のメタクリルコポリマー、アクリルホモポリマーとメタクリルホモポリマー、アクリルコポリマーとメタクリルコポリマー、アクリルホモポリマーとメタクリルコポリマー、アクリルコポリマーとメタクリルホモポリマー、及びこれらの反応生成物)の混合物も使用できる。
【0065】
任意には、塗装、浸し塗り、吹付け、スピンコート法、スクリーン印刷などの各種塗布技術を用いて基板上に反応層を設置できる。例えば、反応層は、ポリカーボネートに対して実質的に不活性であるが(即ち、ポリカーボネートを攻撃したりそれに悪影響を及ぼしたりしないが)、キャリヤーを溶解し得る比較的揮発性の溶媒(好ましくは有機溶媒)と混合できる。一般に、溶媒中のキャリヤーの濃度は約5重量%以上であり、約10重量%以上が好ましい一方、ポリマーの上限は約25重量%であり、約20重量%以下が好ましい。若干の好適な有機溶媒の例には、エチレングリコールジアセテート、ブトキシエタノール、メトキシプロパノール、低級アルカノールなどがある。一般に、コーティング溶液中の溶媒の濃度は約70重量%以上であり、約75重量%以上が好ましい一方、溶媒の上限は約95重量%であり、約85重量%以下が好ましい。
【0066】
反応層は、艶消し剤、界面活性剤、チキソトロープ剤など、並びに上述のものの1種以上を含む反応生成物及び組合せのような各種添加剤も任意に含み得る。
【0067】
反応層の厚さは、使用する特定の反応性物質、反応層中でのその濃度、並びに初期及び所望期間後における反応層の所望吸収特性に依存する。反応性物質をコーティング組成物中に使用した場合、反応層は最小で約1ミクロン(μ)の厚さを有し得るが、約2μが好ましく、約3μがさらに好ましい。上限については、厚さは約15μ以上までであり得るが、10μまでが好ましく、約6μまでがさらに好ましい。反応性物質を接着剤中に使用した場合、反応層は30〜80ミクロンであり、さらに好ましくは40〜60ミクロンであり得る。
【0068】
通例、反応層及び/又は反応性接着剤層は、反射層と基板との間に配設される。反応層及び反射層は、第一の基板と第二の基板との間にサンドイッチ状態にあり得る。サンドイッチ状態にある反応層は、サンドイッチ状態にない場合の反応層に関するパーセント反射率である第二のパーセント反射率を超える第一のパーセント反射率を有する。
【0069】
本発明の一実施形態では、情報記憶媒体は幾つかの段階で製造される。これらの段階は、第一の基板及び第二の基板を用意し、第一の基板上に反応層を任意に配設し、第二の基板上に反射層を配設し、情報記憶媒体中に1以上の反応層又は反応性接着剤層が存在することを条件にして反射層上に反応層を任意に配設し、これらの層が前記第一の基板と前記第二の基板との間に配設されるようにして第一の基板を第二の基板に接着することを含んでいる。
【0070】
本発明の別の実施形態では、情報記憶媒体は、第一の基板及び第二の基板を用意し、第一の基板上に反応層を配設し、前記反応層上に反射層を配設し、これらの層が前記第一の基板と前記第二の基板との間に配設されるようにして前記第一の基板を前記第二の基板に接着することで製造される。この場合にも、反応層の代わりに反応性接着剤層を使用できる。
【0071】
本発明のさらに別の実施形態では、情報記憶媒体は、第一の基板及び第二の基板を用意し、第一の基板上に反応層を任意に配設し、第一の基板上に反応層を配設するならば反応層上に金層を配設することを条件にして、第一の基板上に半反射層(例えば、金、銀、銀合金及び/又はケイ素)を配設し、金層上に反応層を任意に配設し、第二の基板上に反射層を配設し、情報記憶媒体中に1以上の反応層が存在することを条件にして反射層上に反応層を任意に配設し、これらの層が前記第一の基板と前記第二の基板との間に配設されるようにして前記第一の基板を前記第二の基板に接着することで製造される。この場合にも、反応層の代わりに反応性接着剤層を使用できる。
【0072】
通例、成形された基板は、反応層を基板上に配設する前に脱気される。さらに、反応層を形成するために使用する反応体は、通例は不活性環境中に保たれる。情報記憶媒体を製造した後、ディスクは使用時まで不活性環境中に保たれるのが通例である。通例、脱気は任意の不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン又はヘリウム)を用いて行うことができる。
【0073】
存在するもう1つの層は第二の基板である。第二の基板は、通例、第一の基板に関して上述した物理的性質を満足する材料である。第二の基板はまた、第二の基板が反応層に到達する光を濾光するための吸光層となるように着色剤を含むことができる。光漂白抵抗性は、基板を通って反応層に到達し得る光の波長を制限することで向上させ得る。吸光層は、通例、約390〜約630nmの範囲内の1以上の波長で約90%未満の光を透過する。本発明のさらに別の実施形態では、吸光層は普通には約455〜約620nmの範囲内の1以上の波長で約10%未満の光を透過し、さらに普通には約475〜約620nmの範囲内で約10%未満の光を透過する。最も普通には、吸光層は約550〜約620nmの範囲内の1以上の波長で約1%未満の光を透過する。本発明のさらに別の実施形態では、吸光層は普通には約390〜約620nmの範囲内の1以上の波長で約60%未満の光を透過し、さらに普通には約390〜約620nmの範囲内の1以上の波長で約40%未満の光を透過し、最も普通には約390〜約620nmの範囲内の1以上の波長で約10%未満の光を透過する。吸光層は反応層とレーザービームとの間に配設される。通例、吸光層は約600ミクロン以下の厚さを有する。
【0074】
通例、吸光層中には着色剤又は着色剤の組合せが存在している。着色剤は、普通には吸光層の全重量を基準にして約0.00001〜約2重量%の範囲内、さらに普通には約0.001〜約1重量%の範囲内、最も普通には約0.01〜約0.5重量%の範囲内で存在している。着色剤はまた、着色剤を配設する層を形成するために使用する材料中に溶解し得るように選択するのが好ましい。DVD層用として使用される材料中に可溶の着色剤には、染料(例えば、「溶剤染料」)、有機着色剤、顔料などがあり、これらは染料のような挙動を示す。即ち、着色剤は塑性物質中に分散すると共に、約200nm以上の粒度をもった凝集体を形成せず、約50nm以下の凝集体粒度が好ましい。若干の好適な着色剤には、特に限定されないが、アントラキノン類、ペリレン類、ペリノン類、インダントロン類、キナクリドン類、キサンテン類、オキサジン類、オキサゾリン類、チオキサンテン類、インジゴイド、チオインジゴイド、ナフタルイミド、シアニン類、キサンテン類、メチン、ラクトン、クマリン類、ビス−ベンゾオキサゾリルチオフェン(BBOT)、ナフタレンテトラカルボン酸誘導体、モノアゾ及びジスアゾ顔料、トリアリールメタン、アミノケトン、ビス(スチリル)ビフェニル誘導体などの化学的部類に属するもの、並びに上述の着色剤の1種以上を含む組合せがある。
【0075】
以下は、商業的に入手できる好適な染料の部分リストである。
【0076】
カラー・インデックス・ソルベントレッド52
カラー・インデックス・ソルベントレッド207
カラー・インデックス・ディスパースオレンジ47
カラー・インデックス・ソルベントオレンジ60
カラー・インデックス・ディスパースイエロー54
カラー・インデックス・ディスパースイエロー201
カラー・インデックス・ピグメントイエロー138
カラー・インデックス・ソルベントバイオレット36
カラー・インデックス・ソルベントバイオレット13
カラー・インデックス・ディスパースバイオレット26
カラー・インデックス・ソルベントブルー97
カラー・インデックス・ソルベントブルー59
カラー・インデックス・ソルベントグリーン3
カラー・インデックス・ソルベントグリーン28
カラー・インデックス・ソルベントレッド135
カラー・インデックス・ソルベント179
1,5−ジヒドロキシ−4,8−ビス(フェニルアミノ)−9,10−アントラセンジオン
上述の層の任意の組合せを接着できる接着剤層も存在している。本発明の好ましい実施形態では、接着剤層は(以下に一層詳しく説明される)反応性接着剤層からなる。任意には、反応性接着剤層は情報記憶媒体に付随した単独の反応層からなる。接着剤層は、酸素が透過できる層を形成し得ると共に、(それが所望されない限りは)データ取得装置からの光が情報記憶媒体を通して伝送されるのを実質的に妨害しない(例えば、データ取得装置が使用する光の波長で実質的に透明であり、及び/又は情報記憶媒体からの反射率を約50%以上、好ましくは約65%以上、さらに好ましくは約75%以上にする)任意の材料を含み得る。例示的な接着材料には、特に限定されないが、アクリレート(例えば、架橋アクリレートなど)、シリコンハードコートなど、並びに上述のものの1種以上を含む反応生成物及び組合せのようなUV材料がある。UV材料の他の例は、米国特許第4179548号及び同第4491508号に記載されている。若干の有用な多官能性アクリレートモノマーには、例えば、次式のジアクリレート、トリアクリレート及びテトラアクリレートがある。
【0077】
【化17】

接着剤層は前記多官能性アクリレートモノマーの1種のみを含んでいてもよいし、或いは多官能性アクリレートモノマーの1種以上を含む混合物(及びそのUV光反応生成物)を含んでいてもよいが、好ましいコーティング組成物は、2種の多官能性モノマーの混合物(及びそのUV光反応生成物)、好ましくはジアクリレートとトリアクリレートの混合物(及びそのUV光反応生成物)を含み、特定の場合には少量のモノアクリレートが使用される。任意には、接着剤層は、未硬化接着剤被膜の約50重量%以下の量で、非アクリル系のUV硬化性脂肪族不飽和有機モノマーを含み得る。かかる不飽和有機モノマーには、例えば、N−ビニルピロリドン、スチレンなどの材料、並びに上述の材料の1種以上を含む反応生成物及び組合せがある。
【0078】
任意には、接着剤層はジアクリレート及びトリアクリレートモノマーの混合物を含む。ジアクリレートとトリアクリレートの例示的な混合物には、ヘキサンジオールジアクリレートとペンタエリトリトールトリアクリレートの混合物、ヘキサンジオールジアクリレートとトリメチロールプロパントリアクリレートの混合物、ジエチレングリコールジアクリレートとペンタエリトリトールトリアクリレートの混合物、及びジエチレングリコールジアクリレートとトリメチロールプロパントリアクリレートの混合物などがある。
【0079】
接着剤層は、光増感量(即ち、接着剤層の光硬化を行わせるのに有効な量)の光開始剤も含み得る。一般に、この量は接着剤層の全重量を基準にして約0.01重量%(好ましくは約0.1重量%)〜約10重量%(好ましくは約5重量%)である。例示的な光開始剤には、特に限定されないが、紫外線に暴露されると好適な硬質被膜を形成するケトン型及びヒンダードアミン型物質のブレンドがある。ケトン化合物とヒンダードアミン化合物の重量比は約80/20〜約20/80であることが好ましい。通常、約50/50又は約60/40混合物が極めて満足できる。
【0080】
好ましくは窒素のような非酸化雰囲気中で使用される他の可能なケトン型光開始剤には、ベンゾフェノン及び他のアセトフェノン、ベンジル、ベンズアルデヒド及び0−クロロベンズアルデヒド、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、9,10−フェナントレンキノン、9,10−アントラキノン、メチルベンゾインエーテル、エチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、α,α−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシアセトフェノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオール−2−o−ベンゾイルオキシム、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、ホスフィンオキシドなどがある。さらに、上述の光開始剤の1種以上を含む反応生成物及び組合せも包含される。
【0081】
接着剤層の光硬化は、吸光層による影響を受けることもある。約330〜約390ナノメートルの範囲内の1以上の波長で約5%を超える光を透過する吸光層、さらに好ましくは約360〜約370ナノメートルの範囲内の1以上の波長で約10%を超える光を透過する吸光層を使用する場合には、接着剤層は向上した接着能力を有する。接着剤層が「向上した接着能力」を有する場合、情報記憶媒体が45%反射率に達するのに要する時間は、上述の範囲外の光を吸収する吸光層を有する情報記憶媒体が45%反射率に達するのに要する時間を上回る。
【0082】
任意には、接着剤層はまた、艶消し剤、界面活性剤、チキソトロープ剤、UV光安定剤、UV吸収剤、及び/又はレゾルシノールモノベンゾエートや2−メチルレゾルシノールジベンゾエートなどの安定剤、並びに上述のものの1種以上を含む組合せ及び反応生成物も任意に含み得る。かかる安定剤は、未硬化UV層の重量を基準にして約0.1重量%(好ましくは約3重量%)〜約15重量%の量で存在し得る。
【0083】
上述の通り、通常の限定再生型情報記憶媒体は、(ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などからなる)反応層中に本質的に無色のロイコ染料を混入するか、或いは別法として情報記憶媒体の各種層を結合するために使用されるUV硬化性アクリレート反応性接着剤層中にそれを混入することで製造される。酸素に暴露されると、ロイコ染料は酸化されて高度に着色した層を形成し、これが情報記憶媒体を情報記憶媒体装置で再生不可能にするために役立つ。ロイコメチレンブルー/メチレンブルーを染料として用いる限定再生型情報記憶媒体は、日光又は他の強い可視光による光漂白で比較的容易に無効化される結果、情報記憶媒体はもはや限定再生型ではなくなることが判明している。光漂白は、ビフェノール及び/又はポリヒドロキシ(PHS)を染料含有層に添加することで顕著に抑制できる。好ましくは、本発明の情報記憶媒体は、レゾルシノールを混入した1以上の染料含有層も含むことで光漂白をさらに抑制する。染料を含む反応層又は反応性接着剤層にレゾルシノールを添加することで、期限切れの情報記憶媒体の色安定性をウェザロメーター内での約20時間(約1週間の日光暴露)からウェザロメーター内での約200時間(約10週間の日光暴露)に向上させることができる。有利なことには、レゾルシノールを含む反応層及び/又は反応性接着剤層は赤色基板材料との協力作用も示す。
【0084】
一般に、ビフェノール、没食子酸プロピルなどの小分子ポリヒドロキシ化合物については、接着剤中への溶解性が悪いことが認められている。しかし、PHSが相溶化剤として存在する場合、レゾルシノールは接着剤中への良好な溶解性を示す。例えば、PHSを含まずに約10wt%のレゾルシノールを含む配合物は混濁した接着剤を与え、得られる情報記憶媒体は粒子状物質を含む。約7wt%のPHS及び約5wt%のレゾルシノールを含む配合物は僅かに混濁した接着剤を与えるが、得られる情報記憶媒体は適格であるように見える。約12wt%のPHS及び約2〜4wt%のレゾルシノールを含む配合物は比較的透明な接着剤を与え、得られる情報記憶媒体は適格である。また、接着剤配合物は貯蔵中に安定であることも望ましい。冷蔵庫内での約1週間の貯蔵後、約12wt%のPHS及び約5wt%のレゾルシノールを含む配合物はレゾルシノールの析出結晶を含むことがわかった。レゾルシノールの代わりに、接着剤中での溶解性及び長期安定性が向上した代替物を使用できる。例えば、4−ヘキシルレゾルシノール又は4−クロロレゾルシノールを含む配合物は比較的透明な接着剤を与えると共に、これは冷蔵庫内で数週間後にも安定である。表1には、無色基板を用いた場合における若干の例示的な反応性接着剤配合物の光漂白性能をまとめて示す。表1のデータを図1にプロットして示す。
【0085】
【表1】


表2には、赤色基板を用いた場合における若干の例示的な反応性接着剤配合物の光漂白性能をまとめて示す。表2のデータを図2にプロットして示す。
【0086】
【表2】


上記の例1〜6は、後記に実施例39〜44としても示されていることに注意すべきである。また、赤色基板は実質的に赤色(即ち、ピンク色など)であり得ることにも注意すべきである。
【実施例】
【0087】
当業者が本発明をさらに適切に実施できるようにするため、限定ではなく例示を目的として反応性接着剤層用配合物に関する以下の実施例を示す。
【0088】
トリイソプロピルシリルオキシカルボニルロイコメチレンブルーを含むDVD接着剤の例示的な配合
【0089】
【表3】


このDVD接着剤は、使用の数時間以内に混合される3種の液(A、B及びC)を含む空気感受性組成物である。A液を調製するためには、まず空気中で静かに撹拌しながらSartomer社のモノマーSR351及びSR495を室温でブレンドし、次いで撹拌しながら60℃に約1時間加温してポリヒドロキシスチレン粉末(PHS−8E01)を溶解する。次に、弱めた照明条件下でIrgacure 819を添加し、撹拌及び加熱を約1.5時間続ける。この時点以後、粉末及び混合物全体を弱めた光又は黄色フィルターを通した光の下で取り扱う。最後に、Tinuvin 292を添加し、混合物を均質になるまで短時間だけ(約10分間)暗所で撹拌する。A液は比較的安定であり、使用までの数ヵ月間にわたり室温で暗所に貯蔵することができる。B液を調製するためには、モレキュラーシーブ上に貯蔵してあったSartomer社のSR339PIを清浄な乾燥したこはく色のガラスボトル中に入れ、次いでトリイソプロピルシリルオキシカルボニルロイコメチレンブルー(以後は「TIPSOCLMB」)粉末を添加する。ボトルを密封した後、混合物を室温で約1時間撹拌する。この溶液は限られた貯蔵寿命(約1〜2ヵ月)を有しているので、室温以下で暗所に乾燥状態で貯蔵する(これは−20℃で比較的安定である)。C液は、適当なサイズの容器にエチルヘキサン酸第一スズ(Aldrich社のSn(II)2−エチルヘキサノエート)を添加することで調製する。
【0090】
DVD接着剤の使用から数時間以内に、以下の手順を用いて3液を混合する。B液容器を開き、C液の全量を注射器で添加する。次いで、(今ではC液を含む)B液容器を閉じて激しく30秒間振りまぜる。次いで、A液容器を開き、B液容器の全内容物を添加する。次いで、A液容器を閉じて激しく1分間振りまぜ、Sonifier浴中に15分間配設した。DVD接着剤は混合から4時間以内に使用する。
【0091】
DVDを接着するための例示的な手順
DVDハーフディスク(厚さ0.6mmのポリカーボネート)を、データ側を上に向けて実験室用スピンコーターの中心に配設する。ディスクを静止状態に保ちながら、ディスクの中心から直径約30〜40mmの位置に材料の一様な円形リングを描くようにして接着剤をデータ側に塗布する。次いで、へりが下部のディスクから離れる方向に僅かにそるようにして、接着すべきディスクを溶液に向けてゆっくりと降下させる。上部及び下部のディスクの間に空気が閉じ込められないように注意する。数秒後、接着剤が上部及び下部のディスクの間に広がるか、或いは別法として材料がディスクの外径に到達するようにディスクを回転させる。ディスクを500〜1000rpmで約10秒間回転させることで、接着剤層を平坦にすると共に過剰の材料を除去する。この時点で、約1.5インチのランプ距離でフラッシュUVランプ(Xenon CorporationのRC742)を用いてディスクを約2秒間硬化させる。
【0092】
実施例1〜38
以下の表に示すように、様々な濃度のポリヒドロキシスチレン(PHS)及び任意には様々な濃度の安定剤を含む、上述のDVD接着剤配合に基づく各種のDVD接着剤を用いて以下の試料を作製した。これらの実施例では、以下の表に示すように、GE社の無色又は赤色Lexanポリカーボネートを用いてDVD基板を成形した。接着後、DVDを1週間以上空気に暴露することで、反応性染料をメチレンブルーに実質的に転化させた。次いで、酸化したディスクを、約5〜約5.5kW/mの放射束密度で動作するAtlas 3Sun Xenon Weather−o−meter内に下記表中に示した時間だけ配設する。Dr.Schenk Prometeus MT−136光ディスクテスターを用いて、ディスクの反射率を露光前及び露光後に測定した。下記に示す反射率の値は、ディスクへの入射光に対する百分率として表した反射光の強度を示している。表3には、無色基板及び赤色基板の両方を用いると共に、PHSの代わりにその他各種の光漂白添加剤を用いた場合における複数の例示的な反応性接着剤配合物の相対光漂白性能をまとめて示す。表3のデータを図3にプロットして示す。
【0093】
【表4】


ヒンダードフェノールの性能によれば、メチレンブルー用の好ましいフェノール性光安定剤は、フェノール性ヒドロキシル基とメチレンブルーの基本部位との密接な関連を可能にするもの、或いは別のやり方でメチレンブルー発色団の破壊なしにメチレンブルーの光励起状態を消失させるようなメチレンブルーとの最適配設で存在するものであることが示唆され得る点に注意すべきである。
【0094】
実施例39〜44
各種のDVD接着剤で、A液がSR238、SR495、SR440、Tinuvin 292、Irgacure 819並びに任意にはポリヒドロキシスチレン及び/又はレゾルシノールを含む下記の基礎配合物を使用した点を除き、上述の試料と同様にして以下の試料を作製した。
【0095】
【表5】


これらの実施例では、以下の表に示すように様々な濃度のポリヒドロキシスチレン及びレゾルシノールを使用した。これらの実施例では、以下の表に示すように、GE社の無色又は赤色Lexanポリカーボネートを用いてDVD基板を成形した。
【0096】
【表6】


実施例45〜56
以下の試料では、12%のPHSと共に、以下の表に示すように様々な濃度の安定剤を含む類似のDVD接着剤を使用した。これらの実施例では、以下の表に示すように、GE社の無色又は赤色Lexanポリカーボネートを用いてDVD基板を成形した。
【0097】
【表7】


実施例57〜59
各種のDVD接着剤で下記の基礎配合物を使用した点を除き、上述の試料と同様にして以下の試料を作製した。
【0098】
【表8】

これらの実施例では、以下の表に示すように、様々な濃度のポリヒドロキシスチレン及び2,4−ジヒドロキシ安息香酸を接着剤のA液に添加してなる、上述の配合に基づく接着剤を使用した。これらの実施例では、GE社の赤色Lexanポリカーボネートを用いてDVD基板を成形した。
【0099】
【表9】


実施例60〜65
以下の試料では、12%のPHSを含むと共に、以下の表に示すように様々な濃度の安定剤を接着剤のA液に添加してなるDVD接着剤を使用した。これらの実施例では、以下の表に示すように、GE社の無色又は赤色Lexanポリカーボネートを用いてDVD基板を成形した。
【0100】
【表10】


実施例66〜79
以下の試料では、12%のPHSを含むと共に、以下の表に示すように様々な濃度の安定剤を接着剤のA液に添加してなるDVD接着剤を使用した。これらの実施例では、以下の表に示すように、GE社の無色又は赤色Lexanポリカーボネートを用いてDVD基板を成形した。
【0101】
【表11】


最後に、表9には、若干の例示的な反応性接着剤の配合をまとめて示す。
【0102】
【表12】


以上、好ましい実施形態及び実施例に関して本発明を例示し説明してきたが、当業者であれば、他の実施形態及び実施例が類似の機能を果たし、及び/又は類似の成果を達成し得ることが容易に理解されよう。すべてのかかる同等な実施形態及び実施例が本発明の技術思想及び技術的範囲内に含まれ、特許請求の範囲によって包括されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】無色基板を用いた場合における複数の例示的な反応性接着剤配合物の相対光漂白性能を示すグラフである。
【図2】赤色基板を用いた場合における複数の例示的な反応性接着剤配合物の相対光漂白性能を示すグラフである。
【図3】無色基板及び赤色基板の両方並びに各種の光漂白添加剤を用いた場合における複数の例示的な反応性接着剤配合物の相対光漂白性能を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
限定再生型情報記憶媒体で使用するための反応性接着剤配合物であって、
1種以上の接着材料、
1種以上の接着材料中に配設された1種以上の反応性物質、及び
1種以上の接着材料中に配設された1種以上の光漂白抑制物質
を含んでなる反応性接着剤配合物。
【請求項2】
1種以上の光漂白抑制物質が次式の構造VIを有するポリヒドロキシ化合物を含む、請求項1記載の反応性接着剤配合物。
【化1】

(式中、Yは非共役橋かけ基(例えば、アルキレン、酸素、硫黄、−OCHCHO−など)を表し、wは0〜3の整数を表す。Eは芳香族基(例えば、フェニレン、ビフェニレン及びナフチレン)を表す。Zは、特に限定されないがハロゲン(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)を始めとする無機原子、特に限定されないがニトロを始めとする無機基、特に限定されないがアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール又はシクロアルキルのような一価炭化水素基を始めとする有機基、或いはOR(式中、Rは水素或いはアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール又はシクロアルキルのような一価炭化水素基である。)のようなオキシ基であり得る。mは0(この値を含む)から置換のために利用できるE上の位置の数までの整数を表し、tは1以上の整数を表し、uは0又は1以上の整数を表す。若干の特定の実施形態では、Zはハロ基又はC〜Cアルキル基を含む。式(VI)で表されるように2以上のZ置換基が存在する場合、これらは同一のものでも相異なるものでもよい。芳香族残基の2以上の環内炭素原子がZ及びヒドロキシル基で置換される場合、芳香族残基E上のヒドロキシル基及びZの位置はオルト位、メタ位又はパラ位に変化し得ると共に、これらの基は隣接関係、非対称関係又は対称関係にあり得る。)
【請求項3】
1種以上の光漂白抑制物質が次式の構造VIIを有するポリヒドロキシ化合物を含む、請求項1記載の反応性接着剤配合物。
【化2】

(式中、Rは、特に限定されないがハロゲン(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)を始めとする無機原子、特に限定されないがニトロを始めとする無機基、特に限定されないが水素或いはアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール又はシクロアルキルのような一価炭化水素基を始めとする有機基、OR(式中、Rは水素或いはアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール又はシクロアルキルのような一価炭化水素基である。)のようなオキシ基、或いはC(O)ORのようなエステル基であり得る。)
【請求項4】
1種以上の光漂白抑制物質が、レゾルシノール、4−ヘキシルレゾルシノール、クロロレゾルシノール、レゾルシノールの酸化生成物、及び2,4−ジヒドロ安息香酸からなる群から選択されるポリヒドロキシ化合物を含む、請求項3記載の反応性接着剤配合物。
【請求項5】
ポリヒドロキシ化合物が、反応性接着剤配合物の全重量を基準にして約0〜約10重量%の範囲内で存在する、請求項3記載の反応性接着剤配合物。
【請求項6】
1種以上の光漂白抑制物質がポリマーのポリヒドロキシ化合物を含む、請求項1記載の反応性接着剤配合物。
【請求項7】
1種以上の光漂白抑制物質がポリヒドロキシスチレンを含む、請求項6記載の反応性接着剤配合物。
【請求項8】
ポリヒドロキシスチレンが、反応性接着剤配合物の全重量を基準にして約0〜約12重量%の範囲内で存在する、請求項7記載の反応性接着剤配合物。
【請求項9】
1種以上の反応性物質が、酸素感受性ロイコメチレンブルー、還元形メチレンブルー、還元形ブリリアントクレジルブルー、還元形ベーシックブルー3、還元形トルイジン0、上述の反応性物質の1種以上の誘導体、及び上述の反応性物質の1種以上を含む組合せからなる群から選択される反応性物質を含む、請求項1記載の反応性接着剤配合物。
【請求項10】
1以上の基板、並びに
基板の表面に直接又は間接に隣接して配設された反応層及び反応性接着剤層の1以上
を含んでなる限定再生型情報記憶媒体であって、
反応層を使用する場合には、反応層が1種以上のキャリヤー材料、1種以上のキャリヤー材料中に配設された1種以上の反応性物質、及び1種以上のキャリヤー材料中に配設された1種以上の光漂白抑制物質を含み、
反応性接着剤層を使用する場合には、反応性接着剤層が1種以上の接着材料、1種以上の接着材料中に配設された1種以上の反応性物質、及び1種以上の接着材料中に配設された1種以上の光漂白抑制物質を含む、限定再生型情報記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−501290(P2007−501290A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521846(P2006−521846)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/020691
【国際公開番号】WO2005/014751
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】