説明

除帯電電極構造

【課題】放電針の植設作業が容易であるとともに、全体の製造も容易であり、安全性も高く、エアー噴射を行うための手段を備えなくとも、それを備えたのと同様の効果も期待できる、構造単純で安価に製造できる除帯電電極構造を提供する。
【解決手段】金属製の電極保持板8に多数の切り起こし部8aが等間隔に形成され、その各切り起こし部8aに放電針7を圧入させることにより、多数の放電針7が電極保持板8に等間隔に保持され、表裏両面が開口する溝2内において多数のリブ3を長手方向に等間隔に形成した絶縁材製の棒状本体1に対して、各切り起こし部8aを含む電極保持板8の一部分及び放電針7の一部分が各リブ3に埋設され、各放電針7の先端部が、溝2内において各リブ3の一面から突出し、溝2の表側の開口面に向いている。接地電極6が、溝2の表側の開口面の両側縁に平行に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の放電針とアース電極との間で放電させて対象物を除電又は帯電させる棒状の除帯電電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特許文献1(特開2001−35686号)及び特許文献2(特開2005−347117号公報)に開示されているように、放電により生じたイオンをエアー噴射により遠方まで運ぶために、エアー噴射型とした棒状の除帯電電極構造を既に提案している。
【0003】
特許文献1の構造では、多数の放電針を所定の間隔をおいて細長いプリント基板に植設し、このプリント基板を絶縁ホルダ内において樹脂に埋設して、放電針の一部を樹脂表面から突出させ、また、多数のエアー噴射孔を設けたパイプ状の接地電極を放電針の列の両側に配置している。
【0004】
特許文献2の構造では、スリットを形成した接地電極となる外筒内に、外部からエアー供給される針支持用内筒が設置され、この針支持用内筒には、多数の放電針がスリットに沿って所定の間隔で植設されているとともに、放電針と放電針との間にエアー噴射孔が設けられている。
【0005】
しかし、特許文献1の構造によると、多数の放電針をプリント基板に植設することから、プリント基板に、放電針の1本1本を嵌合させるスルホールと、放電針同士を導通させる導通パターンを設けなければならず、放電針の植設に高度の技術を要するとともに、プリント基板を用い、しかもそれを樹脂埋設するのでコスト高となる。
また、パイプ状の接地電極を放電針の列の両側に配置するので、全体の幅が大きくなってしまう。
【0006】
特許文献2の構造によると、円筒形の針支持用内筒に、放電針の1本1本を貫通させる貫通小孔と各放電針の基端を固定する固定小孔とを対向位置に設け、これら両小孔に各放電針を嵌合しなければならないので、これらの両方に放電針を嵌合させるには精密技術を要し、そのために製造コストが高くなる。
また、スリットを形成した外筒が接地電極となるため、放電針の先端からの放電を受ける接地電極が露出することになり、安全上問題がある。
【特許文献1】特開2001−35686号
【特許文献2】特開2005−347117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、放電針の植設作業が容易であるとともに、全体の製造も容易であり、安全性も高く、エアー噴射を行うための手段を備えなくとも、それを備えたのと同様の効果も期待できる、構造単純で安価に製造できる除帯電電極構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明の除帯電電極構造は、金属製の電極保持板に多数の切り起こし部が等間隔に形成され、その各切り起こし部に放電針を圧入させることにより、多数の放電針が電極保持板に等間隔に保持され、表裏両面が開口する溝内において多数のリブを長手方向に等間隔に形成した絶縁材製の棒状本体に対して、各切り起こし部を含む電極保持板の一部分及び放電針の一部分が各リブに埋設され、各放電針の先端部が、溝内において各リブの一面から突出し、溝の表側の開口面に向いている。
【0009】
その具体的形態である請求項2に係る発明は、接地電極が、溝の表側の開口面の両側縁に平行に設けられている。
さらに、請求項3に係る発明は、接地電極が金属製の線材で、溝の表側の開口面の側縁に形成された細溝内に設置されている。
【0010】
請求項4に係る発明は、切り起こし部が電極保持板の一側面からU形に切り起こされ、電極保持板が、その側面を棒状本体の溝の内側面と平行にして各リブを貫通し、多数の放電針の先端部が、溝の中心線に沿って各リブから突出している。
【0011】
請求項5に係る発明は、棒状本体の溝の裏側の開口がリブにより複数の小開口に仕切られている。
請求項6に係る発明は、電極保持板を給電用ケーブルと接続するとともに、接地電極をアース線と接続するためのコネクタが棒状本体の一端に設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、金属製の電極保持板に形成された多数の切り起こし部に放電針を圧入して保持するので、放電針の保持構造が単純で、しかも、放電針をこのように保持した電極保持板は、その各切り起こし部を含む一部分を放電針の一部分と共に、絶縁材製の棒状本体の溝内においてその各リブに埋設されているので、安全性が高く、しかも、全体としても単純な構造であるため、安価に製造できる。
棒状本体の溝は表裏両面が開口しているので、エアーが抜けることになり、その裏側から送風すれば、イオンを遠方へ運ぶことができる。
【0013】
請求項2に係る発明によると、接地電極が、溝の表側の開口面の両側縁に平行に設けられているので、放電針からの放電は、接地電極との間で絶縁材製の棒状本体の一部分を介して行われ、放電針と接地電極との間に静電容量が介在することになるので、火花放電が防止される。
【0014】
請求項3に係る発明によると、接地電極が金属製の線材で、棒状本体の表面の細溝内に設置されているので、安全である。
【0015】
請求項4に係る発明によると、多数の放電針は、電極保持板の切り起こし部にそれぞれ圧入されていても、棒状本体の溝内では、放電針の先端部が溝の中心線に沿って各リブから突出しているので、溝の開口面の両側縁に平行に配置された両側の接地電極との間で、その片側に偏ることなく放電する。
【0016】
請求項5に係る発明によると、棒状本体の溝の裏側の開口がリブにより複数の小開口に仕切られているので、棒状本体の裏側から送風する場合、リブにて整流して各放電針の回りに平均に送風することができる。
【0017】
請求項6に係る発明によると、棒状本体の一端のコネクタにより、給電のためのケーブル接続及びアース線接続ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、除電器に適用した本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
本例の除電器は、図1に示すように、その本体1が樹脂(絶縁材)により角棒状に成型されている。本体1はその全長にわたる溝2を有し、この溝2内には、図2、図3及び図7に示すように、これを横断する多数のリブ3が、長手方向に等間隔に本体1と一体に形成されている。リブ3は、溝2に対して下側(裏側)に偏った位置に設けられているため、溝2の表側となる上面開口2aは全長にわたり開口しているが、溝2の両内側面の下端部には、溝2の幅員を狭くする内縁凸部4がリブ3と一体に全長に形成されているため、溝2の下面(裏側)は、リブ3で仕切られた多数の小開口2bとなっている。
【0020】
本体1の上面には、溝2の上面開口2aの両側縁において細溝5が平行に設けられ、これら細溝5内に金属線材である接地電極6が配置されている。
【0021】
溝2内には、多数の放電針7がその1本1本を各リブ3に埋設して設けられているが、多数の放電針7は独立してそのようになっているのではなく、図8及び図9に示すように、1枚の共通の金属製電極保持板8に保持され、その保持部分(電極保持板8の一部分)と共にリブ3に埋設されている。
【0022】
すなわち、図12及び図13に示すように、電極保持板8は、その一部分に平行な切り込みを入れ、そこを片側にU形に切り起こすことにより、その一側面に多数の切り起こし部8aを等間隔に形成しており、各切り起こし部8aに放電針7を1本ずつ圧入することにより、多数の放電針7が電極保持板8に等間隔に保持されている。
【0023】
そして、このようにした電極保持板8を、その側面が溝2の内側面と平行になるようにして、多数のリブ3に埋設することにより、各切り起こし部8aを含むその周囲が各放電針7の一部と共に各リブ3に埋設され、各放電針7の先端部は溝2内で各リブ3の上面から突出し、放電針7全体としては、図3に示すように溝2の中心線に沿って一直線上に一列に並んでいる。
【0024】
本体1の両端には、溝2の両端を閉じる樹脂製のコネクタ9・10が、互いの凹部と凸部を嵌合させて固着されている。図14にその部分の断面を示す。これらコネクタ9・10は、給電用ケーブル11の端部を受け入れてその心線と電極保持板8とを接続することができるとともに、コネクタ9・10上にネジ12でネジ止めされた金属片であるアース接続端子13にアース線14を接続することにより、接地電極6をアースできるようになっている。
【0025】
両端のコネクタ9・10は雄雌の関係になる構造とすることにより、本例の除電器同士を連結するジョイントとしても利用できる。その際、互いの電極保持板8同士が電気接続されるとともに、互いの接地電極6同士も電気接続される。
【0026】
本例の除電器はこのような構造になっているので、ケーブル11を通じて電極保持板8に高電圧を印加すると、多数の放電針7と接地電極6との間で放電する。図9の断面図から分かるように、その放電は、接地電極6が溝2の上面開口2aの両側縁において細溝5内に配置されているので、接地電極6に対して直接に生ぜず、絶縁材である本体1の一部分を介して行われるので、放電針7と接地電極6との間に本体1の一部分による静電容量が介在することになる。
【0027】
このような放電により溝2内で生じたイオンは、溝2の表側である上面開口2aから外部へ放出されるが、本体1の裏側から送風すれば、多数のリブ3で仕切られた裏側の多数の小開口2bから表側へと抜けるため、多数のリブ3で整流することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は除電器に限らず、イオンで帯電させる帯電器にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用した除電器の全体斜視図である、
【図2】その一部分を段階的に切断した部分斜視図である。
【図3】全体平面図である。
【図4】全体正面部である。
【図5】全体底面図である。
【図6】一端面の拡大図である。
【図7】図3のA−A線での断面図である。
【図8】図4のB−B線での拡大断面図である。
【図9】図4のB−B線での拡大端面図である。
【図10】図4のC−C線での拡大断面図である。
【図11】図4のD−D線での拡大断面図である。
【図12】一本の放電針と電極保持板との関係を示し、(A)は正面図、(B)は斜視図、(C)は分解斜視図である。
【図13】多数本の放電針が電極保持板に保持された状態を示す一部省略正面図である。
【図14】除電器の一端部の構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 本体
2 溝
2a 上面開口
2b 小開口
3 リブ
4 内縁凸部
5 細溝
6 接地電極
7 放電針
8 電極保持板
8a 切り起こし部
9・10 コネクタ
11 給電用ケーブル
12 ネジ
13 アース接続端子
14 アース線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の電極保持板に多数の切り起こし部が等間隔に形成され、その各切り起こし部に放電針を圧入させることにより、多数の放電針が電極保持板に等間隔に保持され、表裏両面が開口する溝内において多数のリブを長手方向に等間隔に形成した絶縁材製の棒状本体に対して、前記各切り起こし部を含む前記電極保持板の一部分及び放電針の一部分が前記各リブに埋設され、各放電針の先端部が、前記溝内において各リブの一面から突出し、溝の表側の開口面に向いていることを特徴とする除帯電電極構造。
【請求項2】
接地電極が、溝の表側の開口面の両側縁に平行に設けられていることを特徴とする請求項1記載の除帯電電極構造。
【請求項3】
接地電極が金属製の線材で、溝の表側の開口面の側縁に形成された細溝内に設置されていることを特徴とする請求項2に記載の除帯電電極構造。
【請求項4】
切り起こし部が電極保持板の一側面からU形に切り起こされ、電極保持板が、その側面を棒状本体の溝の内側面と平行にして各リブを貫通し、多数の放電針の先端部が、溝の中心線に沿って各リブから突出していることを特徴とする請求項2又は3に記載の除帯電電極構造。
【請求項5】
棒状本体の溝の裏側の開口がリブにより複数の小開口に仕切られていることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の除帯電電極構造。
【請求項6】
電極保持板を給電用ケーブルと接続するとともに、接地電極をアース線と接続するためのコネクタが棒状本体の一端に設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の除帯電電極構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate