説明

除湿機

【課題】軽量で騒音が少なく、冬でも除湿能力の高いゼオライトなどを用いた除湿乾燥機において、除湿ロータに含まれる水分量に応じて、ヒータの温度を調整することにより消費電力を抑えることができる除湿乾燥機の提供を目的としている。
【解決手段】除湿機本体1に流入する室内空気の温湿度を検出する湿度センサ13と温度センサ14を設け、吸湿体に流れる風量と室内の温湿度から吸湿体に吸収された水分蓄積量を演算し、再生ヒータ内に再生サーミスタ15を設け、再生ヒータのON時間を調整し、上記再生サーミスタ15の検知信号をフィードバックすることによりヒータの温度を調整することで、除湿ロータ3中の水分蓄積量に応じたヒータ温度に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
除湿材を備えた除湿ロータで空気中の湿気を除去する除湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の除湿装置は、冷凍サイクルを用いないため運転騒音も少なく、軽量でコンパクトに構成できることから、家庭用の除湿装置として普及している。
【0003】
この装置は、除湿材を備えた除湿ロータと呼ぶ回転する吸湿体の一方で室内の空気から吸湿し、吸湿体の他方において、吸湿した水分をヒータで加熱された高温の空気により蒸発させ、吸湿体、すなわち除湿材を再生し、この高温多湿の空気を熱交換器で凝縮して水とする方式である(例えば特許文献1参照)。
【0004】
以下、その除湿装置について図12を参照しながら説明する。
【0005】
図に示すように、除湿ロータ用モータ102で回転駆動される、シリカゲルやゼオライトまたは高分子吸着剤等の除湿材で構成した除湿ロータ103と、除湿ファン用モータ104で駆動される除湿ファン105、除湿ファン105が駆動したとき形成される除湿経路106,再生ファン用モータ107で駆動される再生ファン108、再生ヒータ109、熱交換器110、再生ファン108が駆動したとき形成される再生経路111、熱交換器110の下部に設けた水タンク112と、前記除湿ロータ用モータ102、除湿ファン用モータ104、再生ファン用モータ107、再生ヒータ109を制御する制御回路で構成される。
【0006】
除湿ロータ103は、除湿ロータを構成する除湿材により室内空気から水分を吸湿し、室内空気を除湿する除湿ロータ除湿領域103aと、室内空気から水分を吸湿した除湿材から吸湿した水分を飛ばし除湿材を再生する除湿ロータ再生領域103bに区分され、除湿ロータ103は、除湿ロータ用モータ102で回転駆動され、除湿ロータ除湿領域103a、次に除湿ロータ再生領域103b、次に元に返って、除湿ロータ除湿領域103aと順に回転移動し、室内空気の除湿材による除湿と、除湿材の再生を繰り返し、室内空気を除湿する。
【0007】
ここで、除湿経路106は、矢示のように、室内から吸い込んだ空気を、熱交換器110を経由し、除湿ロータ103の除湿ロータ除湿領域103aを経て屋内に排出するように構成されている。
【0008】
また、再生経路111は、矢示のように、再生ヒータ109から除湿ロータ103の除湿ロータ再生領域103bを経て、熱交換器110からふたたび再生ヒータ109に至る循環経路である。ここで除湿ロータ再生領域103bから分離した水分は熱交換器110にて冷却され、水タンク112に蓄積される構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−236330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来の除湿装置では、吸湿体の水分蓄積量の演算を行ないため、吸湿体中の水分蓄積量を把握することができず、常時ヒータONになり、余分な電力を消費してしまう。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、吸湿体に含まれる水分量に応じた運転をすることで省エネルギー運転を図る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、この目的を達成するために、本発明は、通過させた空気に含まれる湿気を吸収する吸湿領域と加熱した空気を通過させて含有する湿気を放出させる再生領域を有する回転式の吸湿体と、前記吸湿領域に室内の空気を案内し通過させ室内に再び吹き出すための除湿ファンを設けた除湿経路と、前記再生領域に空気を送る再生ファンとこの空気を加熱する再生ヒータとこの再生領域を経過した空気を当てて冷却する熱交換器とを設けた再生経路とを備え、前記熱交換器を通過した再生経路の空気より分離した水分を蓄積するタンクを備えた本体と、この本体内に本体に流入する室内空気の温湿度を検出する温湿度検知手段と吸湿体に流れる風量と室内の温湿度から吸湿体に吸収された水分蓄積量を演算する手段と前記再生ヒータに再生ヒータ温度検知手段を設け再生ヒータの温度をこの再生ヒータのON時間を調整し再生ヒータ温度を制御する再生ヒータ制御手段を設けることにより、吸湿体に残留する水分蓄積量に応じてヒータ温度を制御することを特徴としたものである。
【0013】
この手段により、吸湿体に残留する水分蓄積量に応じた運転をすることで省エネルギー運転を図ることができる除湿乾燥機が得られる。
【0014】
また、前記水分蓄積量を演算する手段は前記再生ヒータの温度より前記吸湿体から分離した水分量を演算することを特徴としたものである。
【0015】
この手段により、吸湿体から分離した水分量を把握することができるため、吸湿体に残留する水分蓄積量に反映することができる除湿乾燥機が得られる。
【0016】
また、前記吸湿体に蓄積された水分量が一定値以上になった場合、再生ヒータの温度を上げることを特徴とするものである。
【0017】
この手段により、吸湿体の水分蓄積量が飽和状態になる前に吸湿体の吸湿能力を再生することができる除湿乾燥機が得られる。
【0018】
また、除湿機本体に除湿ファンは風量を変化させることができる風量変化手段を設け、前記吸湿体に蓄積された水分量が一定値以上になった場合、なおかつ再生ヒータの出力が最大値であった場合は、除湿ファンの風量を下げて水分流入量を下げることを特徴としたものである。
【0019】
この手段により、吸湿体の吸湿能力を回復が、再生ヒータの最大出力でも追いつかない場合は、吸湿体に流入する水分量を減少することができる除湿乾燥機が得られる。
【0020】
また、前記水分蓄積量を演算する手段は、運転時の風量と吸湿体の回転速度を記憶し、前記温湿度検知手段にて検知した室内の温湿度と前記運転時の風量と吸湿体の回転速度から吸湿体に流入する水分量を吸湿体の部分毎に計算する水分流入量演算手段を有することを特徴としたものである。
【0021】
この手段により、吸湿体の各部分毎の水分量のバラツキを把握することができる除湿乾燥機が得られる。
【0022】
また、前記水分蓄積量を演算する手段により、吸湿体の部分毎に水分蓄積量を演算し、吸湿体の各部分の水分蓄積量に応じて前記再生ヒータの出力を制御することを特徴としたものである。
【0023】
この手段により、吸湿体の各部分の水分蓄積量に応じたヒータの出力の制御を行なうことができる除湿乾燥機が得られる。
【0024】
また、前記水分蓄積量を演算する手段は、再生領域に空気を送る再生ファンの風量と吸湿体の回転速度を記憶し、前記再生温度検知手段の再生温度と風量により蒸発した水分量を吸湿体の部分毎に計算する水分蒸発量演算手段を有することを特徴としたものである。
【0025】
この手段により、吸湿体の各部分の水分蒸発量を把握することができるため、より正確に吸湿体に含まれる水分蓄積量を演算することができる除湿乾燥機が得られる。
【0026】
また、一度本体の電源をOFFしても、OFF前の水分蓄積量を記憶しておく記憶手段を有することを特徴としたものである。
【0027】
この手段により、電源をOFFしたときの水分蓄積量を次の運転時に考慮することができる除湿乾燥機が得られる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、通過させた空気に含まれる湿気を吸収する吸湿領域と加熱した空気を通過させて含有する湿気を放出させる再生領域を有する回転式の吸湿体と、前記吸湿領域に室内の空気を案内し通過させ室内に再び吹き出すための除湿ファンを設けた除湿経路と、前記再生領域に空気を送る再生ファンとこの空気を加熱する再生ヒータとこの再生領域を経過した空気を当てて冷却する熱交換器とを設けた再生経路とを備え、前記熱交換器を通過した再生経路の空気より分離した水分を蓄積するタンクを備えた本体と、この本体内に本体に流入する室内空気の温湿度を検出する温湿度検知手段と吸湿体に流れる風量と室内の温湿度から吸湿体に残留する水分蓄積量を演算する手段と前記再生ヒータに再生ヒータ温度検知手段を設け再生ヒータの温度をこの再生ヒータのON時間を調整し再生ヒータ温度を制御する再生ヒータ制御手段を設けることにより、吸湿体に含まれる水分蓄積量に応じてヒータ温度を制御することにより、必要最小限の消費電力で室内の除湿運転を行なうことができる除湿機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態1の除湿機の構成を示す図
【図2】本発明の実施形態1の再生ヒータの温度制御の構成を示す図
【図3】本発明の実施形態1の制御演算部の構成を示す図
【図4】温湿度−空気中の水分量を示す図
【図5】本発明の実施形態1の水分吸湿量の演算を示すフローチャート
【図6】吸湿体から分離する水分量−温度特性の例を示す図
【図7】本発明の実施形態1の水分分離量の演算を示すフローチャート
【図8】本発明の実施形態1の演算を示すフローチャート
【図9】本発明の実施形態2の演算を示すフローチャート
【図10】除湿ロータの分割図
【図11】本発明の実施形態3の演算を示すフローチャート
【図12】従来の除湿機の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の請求項1記載の発明は、通過させた空気に含まれる湿気を吸収する吸湿領域と加熱した空気を通過させて含有する湿気を放出させる再生領域を有する回転式の吸湿体と、前記吸湿領域に室内の空気を案内し通過させ室内に再び吹き出すための除湿ファンを設けた除湿経路と、前記再生領域に空気を送る再生ファンとこの空気を加熱する再生ヒータとこの再生領域を経過した空気を当てて冷却する熱交換器とを設けた再生経路とを備え、前記熱交換器を通過した再生経路の空気より分離した水分を蓄積するタンクを備えた本体と、この本体内に本体に流入する室内空気の温湿度を検出する温湿度検知手段と吸湿体に流れる風量と室内の温湿度から吸湿体に吸収された水分蓄積量を演算する手段と前記再生ヒータに再生ヒータ温度検知手段を設け再生ヒータの温度をこの再生ヒータのON時間を調整し再生ヒータ温度を制御する再生ヒータ制御手段を設けることにより、吸湿体に残留する水分蓄積量に応じてヒータ温度を制御することを特徴としたものである。
【0031】
これにより、吸湿体に残留する水分蓄積量に応じて、前記再生ヒータの出力を調整することができる効果がある。
【0032】
本発明の請求項2記載の発明は、前記水分蓄積量を演算する手段は前記再生ヒータの温度より前記吸湿体から分離した水分量を演算することを特徴としたものである。
【0033】
これにより、吸湿体から分離した水分量と吸湿体に流入する水分量から現在吸湿体に残留する水分蓄積量を演算することができる効果がある。
【0034】
本発明の請求項3記載の発明は、前記吸湿体に蓄積された水分量が一定値以上になった場合、再生ヒータの温度を上げることを特徴とするものである。
【0035】
これにより、吸湿体の水分蓄積量が飽和状態になる前に吸湿体の吸湿能力を再生することができる効果がある。
【0036】
本発明の請求項4記載の発明は、除湿機本体に除湿ファンは風量を変化させることができる風量変化手段を設け、吸湿体に蓄積された水分量が一定値以上になった場合、なおかつ再生ヒータの出力が最大値であった場合は、除湿ファンの風量を下げて水分流入量を下げることを特徴としたものである。
【0037】
これにより、吸湿体の吸湿能力を回復が、再生ヒータの最大出力でも追いつかない場合は、吸湿体に流入する水分量を減少することで吸湿体の吸湿能力を再生することができる効果がある。
【0038】
本発明の請求項5記載の発明は、前記水分蓄積量を演算する手段は、運転時の風量と吸湿体の回転速度を記憶し、前記温湿度検知手段にて検知した室内の温湿度と風量と吸湿体の回転速度から吸湿体に流入する水分量を吸湿体の部分毎に計算する水分流入量演算手段を有することを特徴としたものである。
【0039】
これにより、吸湿体の各部分毎の水分蓄積量のバラツキを把握することができるため各部分毎に再生ヒータの出力を調整できる効果が得られる。
【0040】
本発明の請求項6記載の発明は、前記水分蓄積量を演算する手段により、吸湿体の部分毎に水分蓄積量を演算し、吸湿体の各部分の水分蓄積量に応じて前記再生ヒータの出力を制御することを特徴としたものである。
【0041】
これにより、吸湿体の各部分の水分量に応じたヒータの出力の制御を行なうので、吸湿体の水分蓄積量を均一にすることができる効果が得られる。
【0042】
本発明の請求項7記載の発明は、前記水分蓄積量を演算する手段は、再生領域に空気を送る再生ファンの風量と吸湿体の回転速度を記憶し、前記再生温度検知手段の再生温度と風量により蒸発した水分量を吸湿体の部分毎に計算する水分蒸発量演算手段を有することを特徴としたものである。
【0043】
これにより、再生経路通過後の吸湿体の1部分の水分蓄積量を把握し初期値とすることができるため、吸湿領域通過後の水分蓄積量も正確に把握することができる。
【0044】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0045】
本発明の請求項8記載の発明は、一度本体の電源をOFFしても、OFF前の水分蓄積量を記憶しておく記憶手段を有することを特徴としたものである。
【0046】
これにより、電源をOFFしても、OFF前の水分蓄積量を記憶しているため再び電源を入れたとき、電源OFF時の状態を考慮した運転が可能になる効果が得られる。
【0047】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0048】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態における除湿機の構成の例を示す図である。
【0049】
除湿機本体1は、除湿ロータ用モータ2で回転駆動される、シリカゲルやゼオライトまたは高分子吸着剤等の除湿材で構成し、通過させた空気に含まれる湿気と臭い成分を吸収する除湿ロータ除湿領域3b加熱した空気を通過させて含有する湿気を放出させる除湿ロータ再生領域3aを有する回転式の吸湿体である除湿ロータ3と、除湿ファン用モータ4で駆動される除湿ファン5と、除湿ファン5が駆動したとき空気を流す除湿経路6と、再生ファン用モータ7で駆動される再生ファン8と再生ファン8により送風された空気を加熱する再生ヒータ9と前記除湿ロータ再生領域3aを経過した空気を当てて冷却する熱交換器10と、これら再生ファン8と再生ヒータ9と熱交換器10とを設け再生ファン8を駆動したとき空気を流す再生経路11と、熱交換器10の下部に設けた水タンク12とを備えており、さらに室内の温湿度を把握するために湿度センサ13と温度センサ14を除湿機本体1に設け、これらの信号を受信し、除湿機本体を制御するための制御演算部16を本体の中に設ける。
【0050】
除湿ロータ3は、すでに説明したように除湿ロータを構成する除湿材により室内空気から水分を吸湿し、室内空気を除湿する除湿ロータ除湿領域3bと、加熱した空気を通過させて除湿材から吸湿した水分を飛ばし除湿材を再生する除湿ロータ再生領域3aに区分される。除湿ロータ3は、除湿ロータ用モータ2で回転駆動され、除湿ロータ除湿領域3b、次に除湿ロータ再生領域3a、次に元に返って、除湿ロータ除湿領域3bと順に回転移動し、除湿材による室内空気の除湿と、除湿材の再生を繰り返し、室内空気を除湿する。
【0051】
ここで、除湿経路6は、矢示のように、室内から吸い込んだ空気を、熱交換器10を経由し、除湿ロータ3の除湿ロータ除湿領域3bを経て屋内に排出するように構成されている。
【0052】
また、再生経路11は、矢示のように、再生ヒータ9から除湿ロータ3の除湿ロータ再生領域3aを経て、熱交換器10からふたたび再生ヒータ9に至る循環経路である。
【0053】
また、本実施の形態における再生ヒータ9の温度制御の構成の例を図2に示す。再生ヒータ9はスイッチング素子であるヒータ制御用トライアック18のゲートを制御演算部16に電気的に接続し、再生ヒータ9のON/OFFを制御できるように構成されている。さらに再生ヒータ9には温度の変化により抵抗値が変化する再生サーミスタ15を隣接させ、補正抵抗17と直列に接続し、補正抵抗17の電位差をサンプリングできるように電気的に制御演算部16に接続する。このような構成にすることで再生ヒータ9の温度を把握できるようにする。再生ヒータ9の温度調整に関して、制御演算部16にて周期Tの矩形波をヒータ制御用トライアック18に印加する。ヒータ制御用トライアック18をONする時間TONが変化すれば、再生ヒータ9に印加される電圧の実効値も変化するため、再生サーミスタ15の温度を調整できる。尚、本実施の形態ではトライアックを利用しているがリレーを用いることでも温度調整は可能である。また、本実施の形態においては、再生ヒータ9の温度を0℃〜400℃まで調整できるのが好ましい。
【0054】
次に、制御演算部16の構成について図3に示す。制御演算部16は各センサ等の信号等を受信し、信号の結果を演算したり、除湿機本体の各部に命令を出力する制御部16aと使用者が除湿機本体のON/OFFを行なう操作部16b,使用者に運転の状態を伝えるための表示部16c、そして各パラメータを記憶するメモリ部16dにより構成されている。
【0055】
次に、制御演算部16にて実行される演算について示す。図4は温湿度における空気中の水分量を示す図である。このデータを、メモリ部16dに記憶させておく。さらに、除湿ファン5の風量による単位時間あたりの空気流入量Aや除湿ロータ除湿領域3bの吸湿効率Xをあらかじめ、計測しメモリ部16dに記憶させておくことで、除湿ロータ3が吸湿する水分量すなわち水分吸湿量を演算することが可能になる。尚、水分吸湿量の演算は除湿ロータ3の水分貯蓄量を求める上で必要なパラメータの一つである。図5に前記水分吸湿量の演算を示すフローを示す。まず、演算をONしたときに室内の温湿度の状況を把握する。その後、除湿ファン5の駆動を判定し、駆動していなかった場合は水分吸湿量を0と判定する。駆動していた場合はメモリ部16dと通信し、先に読み込んだ温湿度の状況下での空気中の水分量Wと除湿ファン5による単位時間あたりの空気流入量Aと吸湿効率Xを読み込む。これらのパラメータを掛け算した値が単位時間当たりの水分吸湿量Kとなる。この水分吸湿量Kのパラメータを求める工程を本実施の形態ではSTEP1とする。尚、除湿ファン5の単位時間あたりの空気流入量Aと吸湿効率Xは製品の構成によりあらかじめ求めておく必要がある。
【0056】
また、除湿ロータ3の水分蓄積量を演算する上で、上記水分吸湿量の他に除湿ロータ再生領域3aでの水分分離量を把握する必要があるため、図6のようにあらかじめ除湿ロータ3の温度−水分分離特性を計測し、メモリ部16dに記憶しておく必要がある。さらに、除湿ロータ再生領域3aの面積や分離効率も測定しておきメモリ部16dに記憶させる。これらを把握した上で、本実施の形態の水分分離量の演算を示すフローを図7に示す。まず、演算を開始したときに、再生ヒータ9及び再生ファン8が駆動しているか判定する。駆動していない場合は、水分分離量は0と判定する。駆動していた場合は再生サーミスタ15から再生ヒータ9の温度を読み込み、メモリ部16dと通信し、先ほど読み込んだ温度での単位時間当たりの水分分離量B’と除湿ロータ再生領域3aの面積Sと分離効率Zをメモリ部16dから読み込む。これらのパラメータを掛け算した値が単位時間当たりの水分分離量Bとなる。この単位時間当たりの水分分離量Bのパラメータを求める工程を本実施の形態ではSTEP2とする。
【0057】
次に、本実施の形態における動作のフローを図8に示す。まず、運転をONしたときに前記STEP1で水分吸湿量KのパラメータおよびSTEP2で水分分離量Bのパラメータを求める演算を実行する。その後、求められた単位時間当たりの水分吸湿量Kから単位時間当たりの水分分離量Bを引いた値が単位時間当たりの水分蓄積量P’となる。この値に前回までの水分蓄積量P1を加算し、現在までの水分蓄積量Pをもとめる。このSTEP2後から現在までの水分蓄積量Pを演算するまでの工程を以下STEP3とする。尚、初期使用時のP1は0としておく。そして現在までの水分蓄積量Pの値が最低蓄積量L以下であれば、ヒータ出力を下げる。最低蓄積量L以上であれば、高蓄積量G以上かどうかの判定を行なう。高蓄積量G以下ならばSTEP1からの演算を再び行なう。高蓄積量G以上ならば、除湿ロータ3の現在の水分蓄積量Pが非常に多いと判断し、再生ヒータ9の出力を上昇させて、STEP1〜3を実行する。その後、再度高蓄積量G以上かどうかの判定を行ない、高蓄積量G以上ならば再度ヒータ出力を上昇させ、前記作業を繰り返す。高蓄積量G以下ならば、再生ヒータ9の出力を減少させ、STEP1からの演算を再び行なう。尚、この再生ヒータ出力を上昇させた後、STEP1〜3を実行しPの値を判定するまでの工程を以下STEP4とする。これらの工程を行なうことで必要最小限の電力で、ヒータ出力を抑えることが可能になる。尚、本実施の形態の最低蓄積量Lと高蓄積量Gのパラメータに関しては、最低蓄積量Lに関しては除湿ロータ3の吸収効率が問題にならない程度で設定し、高蓄積量Gは吸収効率が大きく低下する直前の値で設定する。
【0058】
(実施の形態2)
本実施の形態での構成は実施の形態1において、除湿ファンの風量を制御する場合で説明する。まず、本実施の形態では除湿ファン用モータ4の回転数を変更できる構成になっている。これを行なうためには、DCモータを使用し、PWM方式などで段階的に回転数を制御できるのが好ましい。尚、本実施の形態の構成においては、除湿ファンのモータの風量を変更できるようにすること以外はすべて同じ構成であるため説明を省略する。
【0059】
図9は本実施の形態の演算方法をフローで表したものである。
【0060】
動作の手順においてはまず、運転をONしたときに前記STEP1とSTEP2の演算を実行する。その後、求められた単位時間当たりの水分吸湿量Kから単位時間当たりの水分分離量Bを引いた値が単位時間当たりの水分蓄積量P’となる。この値に前回までの水分蓄積量P1を加算し、現在までの水分蓄積量Pをもとめる。このSTEP2後から現在までの水分蓄積量Pを演算するまでの工程を以下STEP3とする。尚、初期使用時のP1は0としておく。そして現在までの水分蓄積量Pの値が最低蓄積量L以下であれば、ヒータ出力を下げる。N以上であれば、高蓄積量G以上かどうかの判定を行なう。高蓄積量G以下ならばし、STEP1からの演算を再び行なう。高蓄積量G以上ならば、除湿ロータ3の現在の水分蓄積量Pが非常に多いと判断し、再生ヒータ9の出力を上昇させて、STEP1〜3を実行する。その後、水分蓄積量Pの値が再度高蓄積量G以上かどうかの判定を行ない、高蓄積量G以下ならば、再生ヒータ9の出力を減少させ、STEP1の演算まで戻る。高蓄積量G以上ならば再生ヒータ9の出力が最大であるかの判定を行ない、最大でなければ再度ヒータ出力を上昇させ、前記作業を繰り返す。最大であれば、除湿ファン5の出力を低下させ、除湿ロータに流入する水分量を減らすことで、除湿ロータ3の再生作業の効率化を図る。その後、STEP1〜3の作業を実行し、水分蓄積量Pの値が再度高蓄積量G以上かどうかの判定を行なう。この再生ファンの出力低下からSTEP1〜3を実施し水分蓄積量Pの値を判定するまでの工程を以下STEP5とする。このSTEP5での水分蓄積量Pの値の判定においてG以上ならば再度、STEP5の工程を実行する。高蓄積量G以下ならば再生ファンの出力を上昇した後、ヒータ出力を低下させSTEP1の演算まで戻る。この作業を行なうことで、除湿ロータ3の回復が間に合わないときの回復作業の効率化を図れる。尚、風量が変化する仕様にした場合はSTEP1工程の除湿ファン5による単位時間面積当たりの空気流入量Aも変動するため、風量毎の単位時間面積当たりの空気流入量A’値を測定し、メモリに記憶させておく必要がある。
【0061】
(実施の形態3)
本実施の形態の基本的な構成については実施の形態1と同等であるため説明を省略する。
【0062】
図10に示すように除湿ロータ3をN等分した場合の図である。除湿機本体起動時の初期位置において一番上にある面をS1と設定し、時計回りにS2、S3・・・SNと名づける。
【0063】
本実施の形態では、このN等分された各面毎の水分蓄積量を演算する。その際、各面毎の水分吸湿量は実施の形態1でのSTEP1を、単位面積当たりの計算、つまり単位面積当たりの空気流入量として演算する。また、同様に再生領域における水分分離量も単位面積あたりで計算するため、数式はB’×Zが単位面積当たりの分離量になる。
【0064】
図11は本実施の形態における演算を表すフローチャートである。
【0065】
まず、本実施の形態では除湿ロータ3を150等分して、除湿ロータは60秒で1回転するものであり、60秒後には本の位置に戻ることになる。つまり本実施の形態での実施例では単位時間はこの60/150秒にて演算する。尚、SNは各固定座標を表し、TNは移動後の座標を表している。すなわち、除湿ロータの位置はまず、除湿乾燥機を初起動させたときを初期位置とするため、S1の位置にあるものは初期値をT1とし、単位時間がN回経過したときはS1の位置にあったものは、SNの位置に移動していることになるが移動後の座標を表すためのパラメータとしての位置をTNとする。たとえば、単位時間が4回経過したときはS1の位置にあったものはT4となり、位置的にはS4の初期位置に来たことになる。まず、このブロック図における変動係数は、TN中のNのみである。まず、除湿乾燥機を始めて起動した時は、SN=TNである。次にTNのNのパラメータが151かどうかを判定する。すなわち、T150の隣はT1であるため、T151になればT1になるように変換する。Nの値が150以下ならば、TNのNの値が10〜80の範囲に入っているかを判定する。これは本実施の形態においてS1080の区間が除湿ロータ除湿領域3bとしているため、すなわちこの区間中は室内の空気から水分を吸湿しているので、水分吸湿量を演算することができる。尚、この区間の水分蓄積量は増えるのみとなるため、演算方法としては水分吸湿量を前回の水分蓄積量に加算する計算である。これらの計算のあとTN中のNの数を1カウントし、再度、TNのN=151の判定のところまで戻る。また、TNのNの値が10〜80の範囲外であれば、次に、TNのNの値が90〜120の範囲かどうかを判定する。これは本実施の形態においてS90120の区間が除湿ロータ再生領域3aとしているため、すなわちこの区間中は再生ヒータ9により水分を分離しているので、水分分離量を演算することができる。尚、この区間の水分蓄積量は減るのみとなるため、演算方法としては水分分離量を前回の水分蓄積量に減算する計算となる。また、除湿乾燥機起動時の水分蓄積量は0となるため、初期状態で除湿ロータ再生領域3aにある場合は、この区間移動中はマイナスの値にならずに0として演算する。その後、これらの計算のあとTN中のNの数を1カウントし、再度、TNのN=151の判定のところまで戻る。尚、TNのNの値が90〜120の範囲外であった場合は除湿ロータ再生領域3aにも除湿ロータ除湿領域3bにも入っていないと判断され、水分蓄積量はそのままで、TN中のNの数を1カウントし、再度、TNのN=151の判定のところまで戻る。このように、各部分毎に実行することでより正確に水分蓄積量を演算することができる。尚、本実施の形態では除湿ロータ3を150等分で分割したがこの分割数は変更することもできる。
【0066】
次に、各部分ごとの水分吸湿量を把握した上で、再生ヒータ9の制御方法について説明する。図11の演算方法により求められた除湿ロータ再生領域3aに存在している各部分の水分蓄積量の平均値により、ヒータの温度を調節する。これらの、動作工程は図8と同等であるため説明は省略する。このように、除湿ロータ3を細かく分けて水分蓄積量を演算することでより正確に演算することが可能になる。
【0067】
また、これらの演算途中で使用者が電源をOFFした場合は、メモリ部16dにてOFF直前の状態を保存しておき、再び電源がONしたときにはOFF前の状態を読み込み、再度スタートすることができる仕様にもできる。その場合、図11での演算において、TN中のNの数を1カウントするタイミングで、除湿ロータ3の水分蓄積量を各部分毎に記憶するような工程を追加すればよい。このようにすることで、使用者のON/OFFにも対応することができる演算が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の演算方法はデシカウントやシリカゲルで構成される除湿ロータだけでなく、埃や臭いを収集するフィルタの蓄積量の演算にも利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 除湿機本体
2 除湿ロータ用モータ
3 除湿ロータ
3a 除湿ロータ再生領域
3b 除湿ロータ除湿領域
4 除湿ファン用モータ
5 除湿ファン
6 除湿経路
7 再生ファン用モータ
8 再生ファン
9 再生ヒータ
10 熱交換器
11 再生経路
12 水タンク
13 湿度センサ
14 温度センサ
15 再生サーミスタ
16 制御演算部
16a 制御部
16b 操作部
16c 表示部
16d メモリ部
17 補正抵抗
18 ヒータ制御用トライアック
101 除湿機本体
102 除湿ロータ用モータ
103 除湿ロータ
103a 除湿ロータ除湿領域
103b 除湿ロータ再生領域
104 除湿ファン用モータ
105 除湿ファン
106 除湿経路
107 再生ファン用モータ
108 再生ファン
109 再生ヒータ
110 熱交換器
111 再生経路
112 水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過させた空気に含まれる湿気を吸収する吸湿領域と加熱した空気を通過させて含有する湿気を放出させる再生領域を有する回転式の吸湿体と、前記吸湿領域に室内の空気を案内し通過させ室内に再び吹き出すための除湿ファンを設けた除湿経路と、前記再生領域に空気を送る再生ファンとこの空気を加熱する再生ヒータとこの再生領域を経過した空気を当てて冷却する熱交換器とを設けた再生経路とを備え、前記熱交換器を通過した再生経路の空気より分離した水分を蓄積するタンクを備えた本体と、この本体内に本体に流入する室内空気の温湿度を検出する温湿度検知手段と吸湿体に流れる風量と室内の温湿度から吸湿体に吸収された水分蓄積量を演算する手段と前記再生ヒータに再生ヒータ温度検知手段を設け再生ヒータの温度をヒータのON時間を調整し再生ヒータ温度を制御する再生ヒータ制御手段を設けることにより、吸湿体に含まれる水分量に応じてヒータ温度を制御する除湿乾燥機。
【請求項2】
前記水分蓄積量を演算する手段は前記再生ヒータの温度より前記吸湿体から分離した水分量を演算することを特徴とした請求項1記載の除湿乾燥機。
【請求項3】
前記吸湿体に蓄積された水分量が一定値以上になった場合、再生ヒータの温度を上げることを特徴とする請求項1記載の除湿乾燥機。
【請求項4】
除湿機本体に除湿ファンは風量を変化させることができる風量変化手段を設け、前記吸湿体に蓄積された水分量が一定値以上になった場合、なおかつ再生ヒータの出力が最大値であった場合は、除湿ファンの風量を下げて水分流入量を下げることを特徴とした請求項1記載の除湿乾燥機。
【請求項5】
前記水分蓄積量を演算する手段は運転時の風量と吸湿体の回転速度を記憶し、前記温湿度検知手段にて検知した室内の温湿度と風量と吸湿体の回転速度から吸湿体に流入する水分量を吸湿体の部分毎に計算する水分流入量演算手段を有する請求項1記載の除湿乾燥機。
【請求項6】
前記水分蓄積量を演算する手段により、吸湿体の部分毎に水分蓄積量を演算し、吸湿体の各部分の水分量に応じて前記再生ヒータの出力を制御する請求項5記載の除湿乾燥機。
【請求項7】
前記水分蓄積量を演算する手段は再生領域に空気を送る再生ファンの風量と吸湿体の回転速度を記憶し、前記再生ヒータ温度検知手段の温度と風量により蒸発した水分量を吸湿体の部分毎に計算する水分蒸発量演算手段を有する請求項1または6記載の除湿乾燥機。
【請求項8】
一度本体の電源をOFFしても、OFF前の水分蓄積量を記憶しておく記憶手段を有する請求項1、5、7のいずれか一つに記載の除湿乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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