説明

除湿空気供給装置

【課題】高温多湿な所望エリアに地上から除湿空気を十分に供給して環境改善が図れ、所望エリアには除湿ユニット等の機械を設置する必要がない除湿空気供給装置を提供する。
【解決手段】冷媒を圧縮する圧縮機4と、該圧縮機から吐出される温度上昇した圧縮冷媒を、送風機26で強制通風される大気と熱交換させて冷却する放熱器6と、該冷却された圧縮冷媒を減圧膨張させる膨張弁8と、該膨張弁で減圧膨張されて温度降下した冷媒と大気とを熱交換させて大気を冷却除湿する吸熱器10とが順次に管路12で環状に繋がれて形成される除湿空気供給装置2であって、該放熱器には、該放熱器の管路内を流下する圧縮冷媒から気化熱を奪って更に冷却する冷却手段として、例えば散水装置30乃至は液化炭酸ガス槽32が付設されており、該吸熱器の下流側には、該吸熱器を通過して冷却除湿された大気を所望のエリアに導いて供給する送気手段36が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばトンネル構築現場の坑内等の高温多湿な所望のエリアに除湿した空気を供給する除湿空気供給装置の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トンネル構築現場の坑内は粉塵が多くて高温多湿な環境になるため、例えば特開2006−348696号公報や、登録実用新案第3038329号公報等に示されているように、常に地上の新鮮な大気を坑口側から風管を通じて送風機や換気ファンにて送り込んだり、坑内の切り羽側の空気を地上に排出して換気している。
【0003】
ところが、近年においては、地球温暖化現象に起因するものと思われるが、20年ほど前では夏期でも32℃程度までしか上昇しなかった気温が、当時とは比べられないほどに上昇して38℃以上にまで達してしまうことが多々生じており、このような高温の大気を坑内に送り続けると、切羽付近ではその掘削時に発生する熱により40℃以上にもなってしまい、作業環境が悪化されていた。このため、その作業環境の改善策として、現状では、切羽付近を局所的に冷却するスポットクーラーを設置したり、大型の冷却機械ユニットを設置して冷却するようにしている。
【特許文献1】特開2006−348696号公報
【特許文献2】登録実用新案第3038329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スポットクーラーの使用では、その冷却能力は低く、局所的にしか冷風を供給できないので、現実には、熱中症対策程度にしかならず、十分な環境改善には至っていなかった。
【0005】
一方、大型の冷却機械ユニットを使用する場合には、坑内側の吸熱ユニットと地上側の放熱ユニットとを繋いで冷却水配管と廃熱水配管とを坑内から地上に引き回して布設しなければならず、坑内側吸熱ユニットはトンネルの掘進に応じて逐次に移動させると共に、冷却水配管と廃熱水配管とを延長配設していかねばならず、煩雑な作業が必要になるという課題があった。また、大型の坑内側吸熱ユニットを坑内に設置するにあたってはスペース的な制約を受けるという課題があるばかりか、冷却機械本体が高価であるという課題もあった。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、トンネル構築現場の坑内等の高温多湿な所望のエリアに、送気手段を介して除湿した空気を十分に供給して環境改善が図れ、かつ供給対象の所望のエリアには吸熱ユニット等の機械を設置する必要がない除湿空気供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明に係る除湿空気供給装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出されてくる温度上昇した圧縮冷媒を、送風機で強制通風される大気と熱交換して冷却する放熱器と、該冷却された圧縮冷媒を減圧膨張させる膨張弁と、該膨張弁で減圧膨張されて温度降下した冷媒と大気とを熱交換させて大気を冷却除湿する吸熱器と、が順次に管路で環状に繋がれて形成される除湿空気供給装置であって、該放熱器には、該放熱器の管路内を流下する圧縮冷媒から気化熱を奪って更に冷却する冷却手段が付設されており、該吸熱器の下流側には、該吸熱器を通過して冷却除湿された大気を所望のエリアに導いて供給する送気手段が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、前記冷却手段は、前記放熱器の表面に水を散布して、該放熱器の管路内を流下する圧縮冷媒から水の気化熱を奪って冷却する散水装置である構成となし得る。
【0009】
また、前記冷却手段は、前記放熱器の下部を液化炭酸ガス中に浸漬させて、該放熱器の管路内を流下する圧縮冷媒から液化炭酸ガスの気化熱を奪って冷却する液化炭酸ガス槽である構成となし得る。
【0010】
また、前記冷却手段は、前記放熱器の表面に水を散布して、該放熱器の管路内を流下する圧縮冷媒から水の気化熱を奪って冷却する散水装置と、前記放熱器の下部を液化炭酸ガス中に浸漬させて、該放熱器の管路内を流下する圧縮冷媒から液化炭酸ガスの気化熱を奪って冷却する液化炭酸ガス槽とからなる構成となし得る。
【0011】
また、前記散水装置には、ポンプから吐出される井戸水が供給される構成となし得る。
【0012】
あるいは、前記散水装置には、クーリングタワーで冷却された水がポンプによって供給される構成となし得る。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る除湿空気供給装置によれば、トンネル構築現場の坑内等の高温多湿な所望のエリアに、除湿した空気を十分に供給して環境改善を図ることができる。また、除湿した空気を送気手段を介して高温多湿な所望のエリアに供給するので、供給対象の所望エリアには、吸熱ユニット等の大型の機械を設置する必要がなく、その設置スペースの制約を解消することができる。さらに、供給対象である高温多湿な所望エリアに十分な量の除湿空気を供給すると、その湿度が低下した分だけ水分の蒸発を促進させることができ、当該蒸発時の気化熱で供給対象である所望エリアの温度を降下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る除湿空気供給装置2の第1実施形態の全体構成を示す概略図であり、この第1実施形態では、図2に示すように、当該除湿空気供給装置2によって除湿空気を供給する供給対象の所望エリアとして、高温多湿な構築中のトンネル坑38内に適用した場合を例示している。
【0015】
図1に示すように、この除湿空気供給装置2はその基本的な構成が、冷媒を圧縮する圧縮機4と、この圧縮機4から吐出されてくる圧縮によって温度上昇した圧縮冷媒を大気と熱交換させて冷却する放熱器6と、その冷却された圧縮冷媒を減圧膨張させる膨張弁8と、この膨張弁8で減圧膨張されて温度降下した冷媒と大気とを熱交換させて大気を冷却除湿する吸熱器10とが順次に管路12で環状に繋がれてなり、吸熱器10を流下した冷媒は管路12を介して再び上記圧縮機4の吸い込み側に環流されるようになっている。
【0016】
そして、放熱器6と膨張弁8との間には、当該放熱器6で放熱冷却された冷媒を貯留するガスレシーバー14が介設されている。また、放熱器6と吸熱器10とには共に空冷型のプレートフィン式のものが採用されていて、図3(a),(b)に示すように、管路12をなす伝熱管22が多数のプレートフィン24を貫通して設けられており、その伝熱管22は4本に並列に分岐されてそれぞれ葛折りに屈曲形成されている。また、図1に示すように、放熱器6と吸熱器10とにはそれぞれ送風機26,28によって大気が強制的に通風されるようになっている。
【0017】
ここで、図1に示すように、放熱器6にあっては、上記送風機26に加えて更に2つの冷却手段が設けられている。即ち、その一つめの冷却手段は、放熱器6の表面に多数のノズルから水を散布して吹きかけることによって、当該放熱器6の伝熱管22(管路12)内を流下する圧縮空気から水の気化熱を奪って冷却する散水装置30となっている。この散水装置30は放熱器6の上部において主にそのプレートフィン24の表面に水を散布して吹きかけるようになっており、前記クーリングタワー18の配管19に繋がれて冷却された水が供給されるようになっている。
【0018】
また、二つめの冷却手段は、放熱器6の下部を液化炭酸ガス中に浸漬させて、当該放熱器6の伝熱管22(管路12)内を流下する圧縮空気から液化炭酸ガスの気化熱を奪って冷却する液化炭酸ガス槽32となっている。この液化炭酸ガス槽32は放熱器6の下部を覆う箱体状をなし、その内部には、廃水を中和処理するための廃水処理設備(図示省略)に付帯されている液化炭酸ガスボンベ34から液化炭酸ガスが供給管34aを介して供給されるようになっており、この液化炭酸ガス槽32に供給されて気化した炭酸ガスは、上記廃水処理設備に回収管34bを介して戻されて供されるようになっている。
【0019】
そして、吸熱器10の通風方向下流側には、当該吸熱器10を通過されて冷却除湿された大気を所望のエリアに導いて供給する送気手段36が設けられている。ここで、本実施形態では、図2に示すように、当該除湿空気供給装置2は構築中のトンネル坑38内に除湿空気を供給するようになっており、上記送気手段36は、地上部から縦坑40を通ってトンネル坑38内部の切り羽近傍の所望エリアに延びる風管44と、当該風管44の上流端に設けられた送風機ユニット46とからなり、送風機ユニット46に形成される吸気口48に臨んで第2熱交換機10が配設されている。
【0020】
なお、上記冷媒としては、冷凍サイクル等に多用されているガス、例えば、イソブタン、ブタン、プロパン、シクロプロパンなどの炭化水素系や空気などを採用し得る。
【0021】
以上のように構成された本実施形態の除湿空気供給装置2では、圧縮機4で圧縮された冷媒は、その圧縮作用に伴う温度上昇により高温となって放熱器6に向けて吐出される。そして、高温の圧縮冷媒は放熱器6の伝熱管22内を流下して放熱冷却される。この放熱器6には、送風機26と散水装置30と液化炭酸ガス槽32との3つからなる冷却手段が付帯されており、これらの冷却手段によって圧縮冷媒は十分にその温度が低下される。即ち、送風機26での大気の強制通風による圧縮冷媒の冷却に加えて、散水装置30から放熱器6の表面に散布された水が蒸発することによって気化熱が奪われ、更に液化炭酸ガス槽32の液化炭酸ガス中に浸漬された放熱器6の下部にて当該液化炭酸ガスの気化熱が奪われて圧縮冷媒が冷却される。
【0022】
そして、その冷却された圧縮冷媒はエアレシーバ14に流下して、ここに一時的に貯留されてから膨張弁8へと流下し、当該膨張弁8を通過して減圧膨張される。そして、その膨張作用に伴いさらに温度降下を来して大気温よりも十分に低くなって吸熱器10の伝熱管22内へと流れ込む。吸熱器10には送風機28から強制的に大気が通風されており、この大気の空気流と伝熱管22内を流下する冷媒とが熱交換して大気の空気流が冷却される。この冷却により、強制通風される大気の空気流中に含有されている水蒸気が、吸熱器10の伝熱管22およびプレートフィン24の表面に結露して除湿される。
【0023】
そして、この吸熱器10を通過されて冷却除湿された大気の空気流は、送気手段36の送風機ユニット46の吸気口48に吸い込まれ、風管44を通じて構築中のトンネル38の坑内に向けて供給されていく。このようにして、除湿空気供給装置2から十分な量の冷却除湿された空気が高温多湿なトンネル坑38内に供給されて換気される。これによりトンネル坑38内の温度が低下するとともにその湿度も低下して作業環境が大幅に改善される。また、冷却除湿された空気は、その湿度が低下した分だけ水分の蒸発を促進させることができるので、トンネル坑38内の水分を蒸発させるように機能し、その蒸発時の気化熱で更にトンネル坑38内の温度が低下するようになる。特に、湿度の低下により作業員の発汗作用に対して気化熱処理が起こり、汗がサラッと引くようになって、熱中症の軽減に大きく寄与するようになる。
【0024】
図5は除湿空気供給装置2の第2実施形態の全体構成を示す概略図である。この第2実施形態における除湿空気供給装置2が前述の第1実施形態と異なる点は、図示するように、放熱器6の散水装置30への冷却水の供給源が井戸60となっている点のみであり、他の構成は前述の第1実施形態と全く同一となっている。即ち、地上部に掘削した井戸60から地下水をポンプ62で汲み上げて、この地下水を冷却水として放熱器6の散水装置30へと供給するようになっている。
【0025】
ここで、上述の両実施形態では共に、放熱器6には冷却手段として送風機26と散水装置30と液化炭酸ガス槽32とを設けているが、散水装置30と液化炭酸ガス槽32は必要に応じて設置すれば良く、必須のものではない。また、放熱器6にはプレートフィン式のものを用いているがこれに限られるものでもなく、散水装置30を設ける場合にはプレートフィン24に代えて伝熱管22の外周に吸湿性に優れたフェルト材等を巻き付けておくようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る除湿空気供給装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明に係る除湿空気供給装置を構築中のトンネルに適用した例を示す概略図である。
【図3】第1及び第2熱交換機を拡大して示す図であり、(a)は正面図、(b)側断面図である。
【図4】本発明に係る除湿空気供給装置の第2実施形態の全体構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0027】
2 除湿空気供給装置
4 圧縮機
6 放熱器
8 膨張弁
10 吸熱器
12 管路
18 クーリングタワー
22 伝熱管
24 プレートフィン
26 送風機(放熱器用)
28 送風機(吸熱器用)
30 散水装置
32 液化炭酸ガス槽
34 液化炭酸ガスボンベ
36 送気手段
38 トンネル坑
44 風管
46 送風機ユニット
48 吸気口
60 井戸
62 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機から吐出されてくる温度上昇した圧縮冷媒を、送風機で強制通風される大気と熱交換させて冷却する放熱器と、
該冷却された圧縮冷媒を減圧膨張させる膨張弁と、
該膨張弁で減圧膨張されて温度降下した冷媒と大気とを熱交換させて大気を冷却除湿する吸熱器と、
が順次に管路で環状に繋がれて形成される除湿空気供給装置であって、
該放熱器には、該放熱器の管路内を流下する圧縮冷媒から気化熱を奪って更に冷却する冷却手段が付設されており、
該吸熱器の下流側には、該吸熱器を通過して冷却除湿された大気を所望のエリアに導いて供給する送気手段が設けられている、
ことを特徴とする除湿空気供給装置。
【請求項2】
前記冷却手段が、前記放熱器の表面に水を散布して、該放熱器の管路内を流下する圧縮冷媒から水の気化熱を奪って冷却する散水装置であることを特徴とする請求項1に記載の除湿空気供給装置。
【請求項3】
前記冷却手段が、前記放熱器の下部を液化炭酸ガス中に浸漬させて、該放熱器の管路内を流下する圧縮冷媒から液化炭酸ガスの気化熱を奪って冷却する液化炭酸ガス槽であることを特徴とする請求項1に記載の除湿空気供給装置。
【請求項4】
前記冷却手段が、前記放熱器の表面に水を散布して、該放熱器の管路内を流下する圧縮冷媒から水の気化熱を奪って冷却する散水装置と、 前記放熱器の下部を液化炭酸ガス中に浸漬させて、該放熱器の管路内を流下する圧縮冷媒から液化炭酸ガスの気化熱を奪って冷却する液化炭酸ガス槽とからなることを特徴とする請求項1に記載の除湿空気供給装置。
【請求項5】
前記散水装置には、ポンプから吐出される井戸水が供給されることを特徴とする請求項2または4のいずれかに記載の除湿空気供給装置。
【請求項6】
前記散水装置には、クーリングタワーで冷却された水がポンプによって供給されることを特徴とする請求項2または4のいずれかに記載の除湿空気供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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