説明

除草液およびその製造方法

【課題】自然環境の保全に最適で、しかも高機能かつ低コストの除草剤およびその製造方法を提供する。
【解決手段】除草剤成分としてクエン酸を含む梅酢液、また梅酢液に膠を混合させるようにした除草剤およびその製造方法。これによりこれを植物の枝葉に噴霧あるいは塗布した場合において、植物の成長を阻害することができるばかりでなく短時間にて枯れさせて除草することが可能となる。また梅酢液に膠を混合させてなる場合においては、梅酢液が植物の枝葉の表面に十分に付着するばかりでなく、雨水や灌水などの水利の影響をうけても流されることがないために繰り返し散布や塗布の必要が無く、長時間にわたり枝葉表面に付着するところから除草の効果がより一層確実となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然環境の保全に最適で、しかも高機能かつ低コストの除草液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来既知の除草剤としては多種のものがあるが、例えばイソウロン、カルブチレート等の光合成阻害系除草剤を結合剤とともに粒径0.1〜0.3mmの鉱物に担持させることにより、植物の茎葉および根部からの吸収性を増し、薬剤投下量を減少させるようにした除草剤組成物(特開2005−145946号公報参照)が知られている。また粒径:5〜75μm程度の化学系の農園芸用防除剤に脂肪酸グリセリドなどの食用油脂を含有させることにより植物に対する付着性を増すようにした農園芸用薬剤(特開2005−170892号公報参照)が知られている。
【0003】
またターバシル、ブロマシル、ベンタゾン、メトリブジンの中から選ばれる1種以上の土壌処理効果を有する光合成阻害型除草物質とグリホサートまたはグルホシネートから選ばれる1種以上の茎葉処理効果を有するアミノ酸生合成阻害型除草物質を混合してアルカリ性の水に溶解させてなる除草液剤(特開2007−224002号公報参照)等も知られている。
【特許文献1】特開2005−145946号公報
【特許文献2】特開2005−170892号公報
【特許文献3】特開2007−224002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した既知の各種除草剤にあっては、所謂合成化学薬剤などの自然環境に悪影響を及ぼす薬剤類が用いられ、また雨水や灌水などの水利の影響をうけやすく、また植物に対する付着性も十分ではないために繰り返し散布の必要があり、使用薬剤の種類や使用量にもよるが、多くの場合コスト高となり、しかも完全除草までには多くの日数を要するものが多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明にあっては、上記した課題を解決し、低コストで自然環境に対する悪影響が無く、しかも植物に対する付着性が極めて良好で雨水や灌水などの水利の影響を殆どうけることが無く、短期間で確実に除草することを可能としたものである。具体的にはクエン酸を含む梅酢液に膠を混合させてなる除草液およびその製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記したように梅酢液に膠成分を混合させてなる除草液であるために、これを植物の枝葉に噴霧あるいは塗布した場合において、梅酢液が植物の枝葉表面に十分に付着するばかりでなく、付着した梅酢成分が雨水や灌水などの水利の影響をうけても流されることがないために繰り返し散布や塗布の必要が無く、長時間にわたり枝葉表面に付着させることができる。
【0007】
さらに植物表面に付着した梅酢に含有されている塩分やクエン酸が植物表面から水分を速やかに吸収脱水し、さらに葉緑素を退化させることにより短時間で確実に枯れさせて除草することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下において本発明の具体的な内容を説明すると、本発明者は自然環境に優しく、しかも確実な除草効果が得られる除草物質について種々研究をした結果、除草液物質として塩分と高濃度のクエン酸が有効であることをつきとめた。クエン酸は一般的には調味料として、また疲労物質である乳酸をエネルギー源であるアセチルCoAに変化させたり、キレート作用を利用した金属ミネラルの酸化防止など健康飲料として、また特殊な用途としては、水垢やポット内の洗浄用等としても知られている。
【0009】
本発明者らの研究によれば、クエン酸は植物表面に付着させた場合に葉緑素を退化減少させて植物の成長を阻害するとともに光合成を阻止し、きわめて短時間で植物を枯化させることが可能であることを確認した。しかし、広範囲にわたる雑草の除去に用いるには多量のクエン酸を必要とするためにコスト高となるのを免れない。
【0010】
ところが、一方で梅を塩漬けにしたときに上がってくる液体である所謂「梅酢」は高濃度の食塩や有機酸が多量に含まれているために浄化が簡単ではなく、河川や下水処理設備への流出も問題があり、多くの梅加工業者らは漬け梅生産後の廃液について、天然アミノ酸やカルシウム、鉄分などのミネラル類、クエン酸やリンゴ酸等の有機酸が豊富にふくまれている点に着目し、その一部は薄めて健康食品等として転用しているものの、その多くは産業廃棄物処理業者に依頼して処理している現状がある。
【0011】
そこで本発明者は本来は廃液処理されることが多い梅酢液の成分に着目し、さらに研究を重ねたところ、梅酢液には食塩のほかにクエン酸等の有機酸が多く含まれており、含有塩分には植物表面から脱水させる機能があるとともに、とくに梅酢原液中のクエン酸等の有機酸は強酸であるところから、これを植物の枝葉に噴霧した場合に葉緑素を退化させてその成長を阻害するばかりでなく短時間で枯れることが確認できたことから、これを除草液として用いた場合に、きわめて低コストにて除草効果を得ることができることが解った。
【0012】
しかし、梅酢液を雑草など植物表面に散布した場合においても、そのままでは植物を伝って流れてしまい、また降雨や植物に対する灌水時にその殆どが流失するために、短時間のうちに繰り返し散布する必要があり、またこれを繰り返したとしてもあまり大きな期待した結果は得られないため、機能的には既存の液体状の化学的除草剤と殆ど変わりがないことになる。
【0013】
そこで、さらに植物表面に付着した梅酢液が降雨や灌水によっても植物表面から流出することがないようにするための添加物を研究し、上記梅酢液と同様に自然環境に優しい物質の開発を考えた結果、膠成分の添加が最良であることを確認した。膠成分を梅酢液に混合すると梅酢成分の植物の枝葉に対する接着性が良好となり、雨水や灌水を受けても植物に付着した梅酢成分の流出がなく、したがって梅酢成分を繰り返し噴霧若しくは塗布する必要ない。
【0014】
〔梅酢液〕
本発明において使用される梅酢液は、梅を塩漬けにして梅干を製造する過程で抽出される梅酢原液である。梅酢原液には既述したように、食塩のほかにクエン酸等の高濃度の有機酸が多く含まれており、植物の枝葉表面に噴霧もしくは塗布した場合に塩分が浸透圧作用により植物細胞内の水分を脱水させてその成長を阻害するばかりでなく葉緑素を減少させ、光合成を阻害して澱粉の生成を無くし、これによって短時間で枯れさせることができる。なおこの場合に梅酢液を加熱沸騰させて水分を蒸発させることにより高濃度の濃縮梅酢液とすると、除草効果がさらに向上することも明らかとなった。
【0015】
〔膠〕
本発明において使用される膠は、ウシや豚など動物の皮膚や骨、腱などの素材を煮て精製したゼラチン質である。一般的には動物の皮膚や骨、腱などの素材から不純物を除去した後、熱処理してゼラチン質の溶液を抽出し、濾過した後に酸またはアルカリでpH調節をおこない、濃縮、殺菌および冷却、さらに乾燥と精製を重ねて得られる。すなわち結合組織の主成分であるコラーゲンに熱を加えてコラーゲン分子の三重螺旋構造が解けることにより抽出されたゼラチン質のうち精製度の低いものをいい、有機蛋白質を主成分としたものである。
【0016】
膠は高温加熱することによりゾル化して溶解するが、冷却に伴って速やかにゲル状に固形化する性質をもち、水分との混合割合を調整することにより固形硬さを適宜調整することができる。本発明において使用される膠については、単に植物の枝葉表面に粘着させる目的にて用いられるところから、木工用など汎用の工業用接着剤として用いられている膠で足りる。なお膠は天然自然のものであるため生分解性があり、環境にやさしい無公害型の粘着剤であるといえ、この粘着剤である膠を既述した梅酢液に混合して使用した場合においては、より一層好適な除草液として機能させることができる。
【0017】
〔梅酢液に対する膠の混合量〕
梅酢液に対する膠の混合量については、3(重量)%未満では付着力が十分ではないために降雨や灌水により梅酢液が植物枝葉表面より流失しやすく、また反対に15(重量)%を超えると粘度が硬すぎて噴射が困難となるところから、3〜15%の範囲内である必要がある。さらにこの場合に梅酢液に対する膠成分の混合割合について、6〜12(重量)%の範囲内とした場合には噴射が容易でしかも植物枝葉表面に対する粘着性が十分となり、雨水や灌水による流失を殆ど無くすことができる。
【0018】
〔除草剤の製造方法〕
除草液として降雨や灌水による流失を阻止し、もしくは減少させるためには梅酢液の原液に対して膠を少なくとも3〜15%の範囲内、さらに好ましくは6〜12%の範囲内で混合することにより、理想的な除草液を得ることができる。またこの場合における梅酢原液について、これを加熱沸騰させることにより水分を蒸発させることにより、より一層高濃度の濃縮梅酢液としたクエン酸を含む梅酢液とし、これに前記した混合範囲内での膠成分を混合することにより、さらに強力な除草液を得ることができる。
【実施例】
【0019】
下記の条件にて一般的な雑草を対象に除草実験を試みたとこと、以下に示した結果を得ることができた。なお対象とした雑草はドクダミ、ハコベ、コニシキンウであり、実施状況について写真撮影をしたが、カラー撮像でないと明瞭に判別が困難であるため、比較的葉が大きいドクダミについて、これを下記の実施例4の条件(梅酢原液に6%の膠を混合した除草液を噴霧した場合)下で実施した場合の写真を図1〜4として提出する。
【0020】
〔実施例1〕梅酢原液のみからなる除草液を噴霧した場合
[経過時間] [状態] [灌水] [噴霧]
2〜3時間 変らず 流失 良好
24時間 変らず
4〜5日 変らず
〔実施例2〕梅酢原液に2%の膠を混合した除草液を噴霧した場合
[経過時間] [状態] [灌水] [噴霧]
2〜3時間 少し萎れる 殆ど流失 良好
24時間 灌水流失後は復活
4〜5日 復活
〔実施例3〕梅酢原液に3%の膠を混合した除草液を噴霧した場合
[経過時間] [状態] [灌水] [噴霧]
2〜3時間 萎れる 一部流失 良好
24時間 床伏せ(灌水一部流失後は約35時間)
4〜5日 枯れ(灌水一部流失後は約7日)
〔実施例4〕梅酢原液に6%の膠を混合した除草液を噴霧した場合〔図1参照〕
[経過時間] [状態] [灌水] [噴霧]
2〜3時間 萎れる 流失せず 良好 〔図2参照〕
24時間 床伏せ(葉に衰え) 〔図3参照〕
4〜5日 枯れ 〔図4参照〕
〔実施例5〕梅酢原液に12%の膠を混合した除草液を噴霧した場合
[経過時間] [状態] [灌水] [噴霧]
2〜3時間 萎れる 流失せず 良好
24時間 床伏せ
4〜5日 枯れ
〔実施例6〕梅酢原液に15%の膠を混合した除草液を噴霧した場合
[経過時間] [状態] [灌水] [噴霧]
2〜3時間 萎れる 流失せず やや良好
24時間 床伏せ
4〜5日 枯れ
〔実施例7〕梅酢原液に16%の膠を混合した除草液を噴霧した場合
[経過時間] [状態] [灌水] [噴霧]
2〜3時間 やや困難
24時間 (除草困難)
4〜5日 (除草困難)
〔実施例8〕高濃度濃縮梅酢液に対して6〜12%の膠を混合した除草液を噴霧した場合
[経過時間] [状態] [灌水] [噴霧]
1〜2時間 萎れる 流失せず 良好
18時間 床伏せ
2〜4日 枯れ
※上記各実施例において、「萎れる」は葉緑素が減少しつつ変色し、雑草が傾き始 めた状態、「床伏せ」は葉に劣えを生じて床に添わせた状態となることをいう。
【0020】
〔評価〕
上記した各実施例によれば、実施例1では梅酢原液のみからなる除草液だと殆ど効果がなく、実施例2でも膠成分の混合割合いが2%程度では植物に対する粘着力が十分ではなく、灌水あるいは雨水により梅酢液が流失し、繰り返し散布の必要がある。また実施例3〜6のように膠の混合割合を3%〜15%の範囲内とした場合においては噴霧した除草剤が植物の枝葉表面に付着後約2〜3時間程度で乾燥付着して短期間での除草効果が得られ、雨水や灌水による影響をうけないことが判明した。
【0021】
また実施例7では膠成分の配合割合を16%以上とすると除草剤の噴射が困難となるために実用的ではなくなることが判明した。さらに実施例8では梅酢液を高濃度に濃縮して用いた場合においては、除草効果が一層向上し、より一層短時間で除草を達成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】除草対象の一例をあらわしたドクダミの生成状態(除草液散布前)をあらわした撮影図。(写真)
【図2】本発明の除草液をスプレー散布し、2〜3時間経過後の雑草の状態をあらわした撮影図。(写真)
【図3】除草液をスプレー散布後24時間経過後の雑草の状態をあらわした撮影図。(写真)
【図4】除草液をスプレー散布後4日間経過後の雑草の状態をあらわした撮影図。(写真)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梅酢液に膠を混合させてなる除草液。
【請求項2】
梅酢液に対して3〜15%の膠を混合させてなる除草液。
【請求項3】
梅酢液に対して6〜12%の膠を混合させてなる除草液。
【請求項4】
梅酢液がクエン酸を含む梅酢原液であるところの請求項1〜3の何れか1に記載の除草液。
【請求項5】
梅酢液に対して3〜15%の膠を混合させるようにした除草液の製造方法。
【請求項6】
梅酢液に対して6〜12%の膠を混合させるようにした除草液の製造方法。
【請求項7】
梅酢液がクエン酸を含む梅酢原液であるところの請求項5または請求項6に記載の除草液の製造方法。
【請求項8】
梅酢原液を濃縮して高濃度の濃縮梅酢液としたクエン酸を含む梅酢液からなる除草液の製造方法。
【請求項9】
梅酢原液を濃縮して高濃度の濃縮梅酢液とするとともに、該高濃度濃縮梅酢液に対して3〜15%の膠を混合させてなる除草液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−116384(P2010−116384A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316232(P2008−316232)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(308027617)株式会社ユニック (3)
【Fターム(参考)】