説明

除菌剤組成物

【課題】優れた除菌性に加えて、脱臭効果を有し、爽快性を与える除菌剤組成物を提供する。
【解決手段】ハイドロオキシフェニールエーテルまたはその誘導体と一塩基オキシ酸又は多塩基オキシ酸との混合物に1種又は2種以上のアルコールを混合して得られる脱臭性を有する除菌剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は日常生活上、身の回りの除菌、除カビまたは脱臭などに用いられる除菌剤に関する。また本発明の除菌剤は、食品関係をのぞく、衣類、履物や身につける物その他物品類を対象とする除菌、除カビ、脱臭などに用いられる。
【背景技術】
【0002】
食品関係以外の除菌に関して、脱臭効果を合わせ求められることが多い。例えば、靴箱や靴等の履物類や靴下から発生する不快臭が問題とされる。この臭いの原因の一つは、人の足の裏にあるエクリン腺から出る汗により、靴の中が蒸れる。足の裏の発汗量は、体の他の部分に比し、40倍〜50倍以上あり、体の中では、最も発汗する場所と言われている。15分間の歩行で,靴の中の温度は40℃近くとなり、湿度は90%程度になることが知られている。この値は靴の中の臭いの素となる細菌が繁殖するのに最も適した値である。一般に靴の中からは10〜20種類の細菌が検出されている。そのうちで臭いの素となる細菌はおおよそ4種で、通常100万個以上棲息すると言われている。汗自身は無臭であるが、細菌によって分解されると不快な分解臭、発酵臭を生じる。その他、足以外の身体の発汗部分でも温湿度により細菌で分解,発酵を生じる条件下では臭気を伴うことが多い。このような場合には、除菌性と同時に脱臭効果は重要と考えられる。従来の市販の除菌剤は、一般的には除菌性は優れていても、消臭効果を十分に持ち合わせていない場合には、爽快性を感じることは少ない。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする問題点は、上記の如く、臭いの素となる細菌を除菌成分で除き、消臭成分で不快な臭いの発生を抑えることにある。そこで、除菌性に効果のある化合物と、いくつかの脱臭成分との適切な組み合わせにより、またその混合割合から効果ある範囲を検討し、消臭性を合わせ持つ優れた除菌剤組成物を提供することにある。
【問題を解決するための手段】
【0004】
実際に使用済みの不快臭の残る靴下より菌を採取し、本発明除菌剤組成物による除菌効果及び脱臭効果をみた。さらに黄色ブドウ球菌、大腸菌のそれぞれについて、純粋培養したものを用い、これをブランクとし、さらにこれに調製した除菌剤組成物を加えたものとを、一定条件で培養した後、菌数を比較する。除菌剤組成物の評価については、培養の結果、菌数0のものを厳選し、これを除菌効果ありとし、また臭気については、複数の検査員の官能検査で確認することで、本発明が狙う優れた除菌剤組成物を見出だした。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、上記の組成物を不快臭の著しい部分に噴霧あるいは塗布することで,除菌と同時に脱臭効果を得る。この対象として、例えば、履物の脱着の折、足元から発生する不快臭に対し、本発明の組成物を噴霧あるいは塗布することで、除菌し、それと同時に臭気を除去することが出来る。その結果、足元に爽快感を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明おいて、ハイドロキシフェニールエーテルまたはその誘導体は例えば、モノクロロハイドロキシジフェニールエーテル、ジクロロハイドロキシジフェニールエーテル、トリクロロハイドロキシジフェニールエーテル、テトラクロロジフェニールエーテルなどを挙げることができる。代表的なものとして、トリクロロハイドロキシジフェニールエーテル(以下トリクロサンという)は、一般細菌に対する殺菌力に加えて、ブドウ球菌などグラム陽性菌に対する静菌力において優れた効力をもつ抗菌成分である。手指などの皮膚に適用した場合、良好な持続効果や累積効果を発揮することが知られている。また組成としては、0.01〜2.0重量%の範囲で、好ましくは0.05〜1.0重量%が効果的である。
【0007】
一方、一塩基オキシ酸は、例えばグルコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、β−オキシ酪酸等、また多塩基オキシ酸ではタルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などを挙げることができる。さらに、組成としては0.05〜5.0重量%の範囲であるが、特に0.5〜2.0重量%が好ましい。上記の限界範囲は、いずれも規定した割合より少ない場合は、その効果が乏しく、また上限を超えると、好ましくない影響が発生する場合がある。
【0008】
上記の二成分は実施例でも明らかな如く、どちらが欠けても、また組成が不適切でも十分な効果は得られない重要な要素であることを本発明で見出した。この二成分に加えるアルコールはエチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどを用いることができる。また、これらのアルコールは、一種または二種以上混合して使用することも出来る。
【0009】
また上記以外に必要に応じて少量の添加物を加えることが出来る。たとえば、安定剤,希釈剤、調製剤、着色剤、消臭剤、清涼剤、香料などを添加することができる。また、本発明の除菌剤は、液体、スプレー剤、泡状、噴射剤などの形態で、あるいは紙、不織布、ガーゼ、スポンジなどに含浸させてウェットペーパーなどにして用いることも出来る。
【0010】
定量的に除菌効果をみるべく、菌数をブランクと比較計数するために、たとえば黄色ブドウ球菌では、Staphylococcus aureus NBRC No.3060,3183,3761などを用いることができる。また大腸菌では、Escherichia coliNBRC No.3301が代表的である。
【実施例】
【0011】
つぎに本発明を実施例にもとづき、さらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0012】
試験菌として、まず使用済みの靴下で、明らかに臭気を放つ部分より、採取した菌を用い、除菌剤の組成を下記のごとく変えて、その除菌効果及び脱臭効果をみた。
【0013】
試験方法は標準寒天培地およびサブロー培地として直径60mmのシャーレにとり、10倍に希釈した上記試験菌をそれぞれ20μL塗沫し、培地より15cm離して下記試験サンプルを約2秒間噴射する。試験サンプルを噴射していないものをブランクとし、両者を37℃にて24時間培養した後、発育集落の菌数を計測する。細菌は標準寒天培地で、カビ(真菌類)はサブロー寒天培地でそれぞれ試験をおこなった。
【0014】
また、試験サンプルとして、乳酸0%でトリクロサン003%,乳酸1.0%で、トリクロサン0%,乳酸1.0%で、トリクロサン0.03%および乳酸1.0%でトリクロサン0.3%(いずれも重量%)のものに、それぞれアルコールを加えて100%とした除菌剤組成物を用い、除菌効果をブランクと比較した。これらの結果を表1に示す。また、脱臭効果の評価は5人の検査員による臭気有無の官能検査でチェックした。
【実施例2】
【0015】
つぎに試験菌として、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus,NBRC3060),大腸菌(Escherichia coli,NBRC3301)を用い、それぞれの菌について、本発明の組成物と市販除菌剤の他社製品とについて、上記と同様の方法で標準寒天培地におけるブランクとの比較試験を行った。その結果を表2に示す。菌数の計数はいずれもn=5の平均値である。
【0016】


【0017】
また、官能検査として、上記試験に使用した使用済み靴下(不快臭あり)に、本発明組成物をスプレー噴霧したところ、5人のうち全員が不快臭の消失を確認した。
【0018】

なお、表2記載の本発明組成は、乳酸1.0%、トリクロサン0.03%、緑茶エキス0.5%およびイソプロピルアルコールを含むエチルアルコールからなる組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロオキシフェニールエーテルまたはその誘導体と一塩基オキシ酸または多塩基オキシ酸とを主成分とする脱臭効果を合わせ持つ含アルコール除菌剤組成物。
【請求項2】
請求項1におけるハイドロオキシフェニールエーテルまたはその誘導体が0.01%〜2.0重量%であり、一塩基オキシ酸または多塩基オキシ酸が0.05〜5.0重量%の範囲の混合物に、1種または2種以上のアルコールを混合して得られる脱臭効果を合わせ持つ除菌剤組成物。

【公開番号】特開2006−28149(P2006−28149A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235674(P2004−235674)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(596152316)北沢薬品株式会社 (2)
【Fターム(参考)】