説明

除雪車

【課題】不陸箇所での手動操作を不要とし、雪を確実に除雪することができる除雪車を提供する。
【解決手段】走行車両2と、この走行車両2の前方に支持された除雪装置3と、走行車両2と除雪装置3との間に設けられ走行車両2に対して除雪装置3を昇降する昇降用シリンダ10,10Aと、走行車両2と除雪装置3との間に設けられ除雪装置3を前後方向に傾動する傾動用シリンダ8,8とを備える。昇降用シリンダ10,10Aと傾動用シリンダ8,8をフローティング状態に設定可能であるから、昇降用シリンダ10,10Aと傾動用シリンダ8,8をフローティング状態に設定することにより、除雪装置3が路面形状に追従し、残雪の少ない除雪を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除雪車に関し、車体の前方に除雪装置を支持した除雪車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路に積もった雪を効率的に除雪するため、オーガにより集積した雪をブロアによって発生させた空気流と遠心力を用いて投棄するロータリー除雪車が普及している(例えば、特許文献1、2参照)。このようなロータリー除雪車は、ヘリカルリボン形状をしたオーガと、回転式ブロアを備えた除雪装置を車両の前部に装着して構成されている。
【0003】
例えば、走行車両のフレームに、除雪装置を、平行リンクをなす上部の傾動用シリンダと下部のリンク片により上下自在に取り付けると共に、前記フレームと除雪装置との間を昇降用シリンダにより連結し、除雪作業時には除雪装置を地上に降下させ、また、回送時には昇降用シリンダで除雪装置を上昇させる構造となっている。除雪装置は、周知のものであり、雪を掻き寄せるオーガと、このオーガよって掻き寄せられた雪を回転翼によって遠方に跳ね飛ばす投雪用ブロアを主体とし、下面にそりを有する。このそりは、除雪作業時に地面に接して除雪装置を補助的に支持するとともに、オーガの上下方向の向きを規制する(例えば特許文献3)。
【特許文献1】特開平10−96219号公報
【特許文献2】特開2000−240027号公報
【特許文献3】特開平6−193025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように昇降用シリンダと傾動用シリンダを備えた除雪車においては、除雪装置の姿勢制御は、昇降用シリンダと傾動用シリンダとの操作により行われており、除雪装置が路面形状に追従するためには、シリンダを制御する必要がある。
【0005】
そこで、昇降用シリンダの圧力を抜き、除雪装置を路面に設置して追従させることが考えられる。しかし、図12に示すように、路面101のすり付け部などにおいて傾斜が大きく変わる傾斜変化箇所102では、除雪装置103による不陸追従が十分にできず、残雪104が多く発生する。これを防止するため、オペレータが手動により傾動用シリンダを操作し、不陸に対応するようにしているが、熟練したオペレータでないと操作が困難である。すなわち、除雪装置は、オペレータが乗る走行車両の前方に位置し、走行車両の姿勢変化をオペレータが感じてから、前方の除雪装置の姿勢を操作しても遅く、また、路面は雪に覆われているため、視認だけでは、路面の傾斜の変化に除雪装置の姿勢を合せることは困難であり、傾斜が大きく変わる箇所では、除雪できずに路面に雪が残ってしまう。
【0006】
また、昇降用シリンダをフリーにすると、走行車両の前輪荷重の接地圧が低下するため、前輪の駆動力が低下し、スリップし易くなるから、積雪条件によっては除雪車が使用できなくなる場合もある。
【0007】
そこで本発明は上記した問題点に鑑み、不陸箇所での手動操作を不要とし、雪を確実に除雪することができる除雪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、走行車両と、この走行車両の前方に支持された除雪装置と、前記走行車両と前記除雪装置との間に設けられ前記走行車両に対して前記除雪装置を昇降する昇降用シリンダと、前記走行車両と前記除雪装置との間に設けられ前記除雪装置を前後方向に傾動する傾動用シリンダとを備えた除雪車において、前記昇降用シリンダと前記傾動用シリンダをフローティング状態に設定可能なものである。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、前記昇降用シリンダの下部を前記走行車両に連結すると共に、該昇降用シリンダの上部を前記除雪装置に連結し、前記走行車両と除雪装置とを前側を低くした前記傾動用シリンダにより連結すると共に、前記傾動用シリンダの下方で該傾動用シリンダと略平行なリンク片により前記走行車両と除雪装置とを連結したものである。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、前記傾動用シリンダを縮める方向の予圧を加えるものである。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、前記除雪装置は、雪を回収する回収するオーガと、このオーガより接地下面が下方に位置するオーガ用そりとを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1記載の除雪車によれば、前記昇降用シリンダと前記傾動用シリンダをフローティング状態に設定することにより、除雪装置が路面形状に追従し、残雪の少ない除雪を行うことができる。
【0013】
また、請求項2に記載の除雪車によれば、昇降用シリンダを伸縮することにより、走行車両に対して除雪装置を昇降することができ、傾動用シリンダを伸縮することにより、除雪装置を前側傾動・後側傾動させることができ、除雪範囲が拡大し、残雪の少ない除雪を行うことができる。
【0014】
また、請求項3に記載の除雪車によれば、傾動用シリンダをフリーにすると、自重により除雪装置の全重量が路面に加わり、走行車両の駆動力が減少するため、前記傾動用シリンダを縮める方向の予圧を加えて、除雪装置を後上側に引き上げることにより、走行車両の駆動力を確保することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の除雪車によれば、除雪装置の不陸追従性の向上に加え、万一、オーガと路面に接触しそうになっても、オーガ用そりが路面に摺動することにより、その接触を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例1について、図1〜図9を参照して説明する。同図に示すように除雪車1は、道路用の走行車両2と、該走行車両2の前方に設けられた除雪装置3と、この除雪装置3の左右方向に沿って設けられた集雪用のオーガ5と、このオーガ5と走行車両2との間で前記除雪装置3に設けられ該オーガ5により集められた雪を所定の方向に排雪するブロアを備えた排雪装置6とから主に構成されている。尚、前記オーガ5は、前記除雪装置3の左右のオーガ支持部材3A,3Bの間に回転可能に支持されている。
【0017】
ここで、除雪装置3はリンク機構7を介して走行車両2の先端部に支持されており、そのリンク機構7は、ほぼ平行リンクをなす上部の傾動用シリンダ8,8と下部のリンク片9,9を、それぞれ走行車両2の左右に有し、さらに、除雪装置3と走行車両2とを連結する昇降用シリンダ10,10Aを左右に有する。具体的には、走行車両2の前側で上下に枢着部8S,9Sを設け、これら枢着部8S,9Sに対応して、除雪装置3の後側で上下に枢着部8F,9Fを設け、それら枢着部8S,8Fに、前記傾動用シリンダ8の両端を回動可能に連結すると共に、それら枢着部9S,8Fに、前記リンク片9の両端を回動可能に連結し、さらに、前記除雪装置3の後部には、前記枢着部9Fより上方に、枢着部10Fを設け、この枢着部10Fと前記枢着部8Fに、前記昇降用シリンダ10の両端を回動可能に連結し、この昇降用シリンダ10は前側を高くして斜めに配置され、前記傾動用シリンダ8は、前側が低い斜めに配置されている。
【0018】
したがって、走行車両2と除雪装置3との間で左右に2本並列して設けられた前記昇降用シリンダ10,10を伸長することにより、除雪装置3が昇降する。また、走行車両2と除雪装置3との間で左右に2本並列して設けられた前記傾動用シリンダ8,8を伸ばすと、枢着部9Fを略中心にして昇降装置4が前側に傾動し、前記傾動用シリンダ8,8を縮めると、枢着部9Fを略中心にして昇降装置4が後側に傾動する。尚、前記シリンダ8,10には、流体圧シリンダである油圧シリンダが用いられ、単ロッド型往復シリンダを用いている。
【0019】
前記オーガ5は回転軸にヘリカルリボン形状をしたブレードを取付けたものであり、軸方向の中央に関して左右対称に配置されている。すなわち、オーガ5のブレードの捩れ方向は左右逆方向とされている。そして、オーガ5を正転方向に回転すると、路面101の雪はオーガ5の中央部に搬送され、オーガ9の中央部に搬送された雪は、前記排雪装置6のブロアにより、空気と共にシュート12から除雪車1の側方に噴出される。尚、ブロア及びシュート12は除雪装置3に設けられており、ブロアはオーガ5の後部、シュート12は排雪装置6の上方に配置されている。
【0020】
また、前記除雪装置3には、前記オーガ5より後方で左右にそり13,13が設けられており、これらそり13,13は、除雪作業時に路面101に接して除雪装置3を補助的に支持するとともに、オーガ5の上下方向の向きを規制する。このそり13は、その基端部13Aが前記除雪装置3に固定され、この基端部13Aにそり本体13Bが高さ調整可能に固定されている。
【0021】
さらに、本実施例では、前記傾動用シリンダ8をフローティング状態に設定可能に構成しており、除雪時のオーガ5の駆動により、除雪装置3には前側に傾動する力が発生するため、図1〜図3などに示すように、オーガ5の下部の左右にオーガ用そり14,14を設け、このオーガ用そり14は、前記オーガ支持部材3Aに上端を固定した基端部15と、この基端部15の下端に設けたそり本体16とを備え、このそり本体16は、オーガ5の中心下方に位置する前後略水平方向の接地下面16Aと、この接地下面16Aの前側で前側に向って高くなる傾斜下面16Bとを有し、これら下面16A,16Bは、オーガ5の外周と僅かに離れた外側で、該外周の略接線方向をなす。
【0022】
また、前記走行車両2は、左右の前輪17,17と左右の後輪18,18とを有し、これら前,後輪17,17,18,18にそれぞれ駆動力が伝達され、また、走行車両2の前部には、運転席2Aが設けられている。
【0023】
次に、図4を用いて、前記除雪車1の油圧装置を説明する。図4中、右上側から、除雪車1右側と左側の前記傾動用シリンダ8,8、前記シュート12のキャップ(図示せず)の開閉用シリンダ21、シュート12の旋回用油圧モータ22、右側と左側の前記昇降用シリンダ10,10Aであり、これらは油圧ポンプ24により作動油タンク25から送られた作動油を動力として、5連の制御弁たる電磁切換弁26,26,26,26,26の切換制御により駆動する。
【0024】
前記左右の傾動用シリンダ8,8のロッド側にロッド側流路31を接続し、前記左右の傾動用シリンダ8,8のヘッド側にヘッド側流路32を接続し、これら流路31,32が対応する前記電磁切換弁26に接続されている。また、右側の昇降用シリンダ10のロッド側にロッド側流路33を接続し、前記左右の傾動用シリンダ8,8のヘッド側にヘッド側流路34を接続し、これら流路33,34が対応する前記電磁切換弁26に接続されている。また、同様に左側の昇降用シリンダ10Aのロッド側にロッド側流路35を接続し、前記左右の傾動用シリンダ8,8のヘッド側にヘッド側流路36を接続し、これら流路35,36が対応する前記電磁切換弁26に接続されている。
【0025】
このような油圧回路において、除雪装置3を路面101に追従するための追従機構は、以下の構成を備える。前記傾動用シリンダ8に接続した前記流路31,32には、路面追従制御の切換を行う制御弁たる電磁切換弁37を接続する。また、前記右側の昇降用シリンダ10に接続した前記流路33,34には、路面追従制御の切換を行う制御弁たる電磁切換弁38を接続する。また、同様に、前記左側の昇降用シリンダ10Aに接続した前記流路35,36には、路面追従制御の切換を行う制御弁たる電磁切換弁39を接続する。
【0026】
図4の右下に示すように、前記油圧ポンプ24には、作動油の供給流量を調節する操作用可変絞り部41が接続され、この操作用可変絞り部41に流路42,43,44,45が接続され、これら流路42,43,44には、前記電磁切換弁37,38,39が接続され、前記流路45には、予圧調整弁46を介して作動油タンク47が接続されている。
【0027】
前記操作用可変絞り部41からは、作動油が毎分定量ずつ流路42,43,44,45に送られ、前記予圧調整弁46は、それら流路42,43,44,45が一定の予圧を保つように作動油を作動油タンク47に流すものである。
【0028】
前記左右の傾動用シリンダ8,8に接続した前記電磁切換弁37は、開状態で、前記流路42と前記ロッド側流路31とを連通すると共に、作動油タンク48とヘッド側流路32とを連通し、傾動用シリンダ8,8を縮める方向に予圧が加えられる。また、前記右側の昇降用シリンダ10に接続した前記電磁切換弁38は、開状態で、前記流路43と前記ヘッド側流路34とを連通すると共に、作動油タンク49とロッド側流路33とを連通し、昇降用シリンダ10を伸ばす方向に予圧が加えられる。また、同様に、前記左側の昇降用シリンダ10Aに接続した前記電磁切換弁39は、開状態で、前記流路44と前記ヘッド側流路36とを連通すると共に、作動油タンク50とロッド側流路35とを連通し、昇降用シリンダ10Aを伸ばす方向に予圧が加えられる。
【0029】
この場合、追従機構の各構成部材を設定すると共に、与圧調整弁46を調整することにより、前記予圧を設定し、例えば、除雪装置3の重量が300Kgであれば、昇降用シリンダ10,10Aを伸ばす方向の予圧により、前記除雪装置3の接地重量が軽くなるように調整し、例えば、5分の1以下の接地重量とする。すなわち、除雪装置3の重量の一部を走行車両2により支持する。また、傾動用シリンダ8,8Aに加わる予圧により、除雪装置3を僅かに持ち上げる力を加える。
【0030】
これに対応した予圧の設定例を図10に示す。図10は、昇降用シリンダ10,10Aの説明図であり、一例として、昇降用シリンダ10,10Aの長さLが614mm(枢着部10F,9S間の長さ)、枢着部10F,9S間の水平長さLxが210mm、枢着部10F,9S間の高さLyが577mmの条件で、除雪装置3重量300Kgの5分の1を接地荷重とし、その5分の4を昇降用シリンダ10,10Aで負担する条件で、計算する。昇降用シリンダ10,10Aで負担する垂直荷重Wは、除雪装置3の重量300Kgの5分の1であり、次式で得られる。
【0031】
W=300×4/5×9.8=2352N
垂直荷重Wを支持するための2本の昇降用シリンダ10,10Aによる反力Fは次式で得られる。
【0032】
F=W×614/577=2503N
使用した昇降用シリンダ10,10Aの伸び側の面積Aは、内径が40mmであるから、A=π×40×40/4=1257mm2となる。
【0033】
昇降用シリンダ10,10Aの1本当りの圧力は次式で得られる。
【0034】
P=F/2×A=1MPa
このように上記の条件では、各昇降用シリンダ10,10Aに1MPa程度の予圧を与える。
【0035】
次に、前記構成につき、その作用を説明する。尚、図5(A)〜図8(A)は、本実施例の除雪車1を示し、図5(B)〜図8(B)は、フローティング状態に切り換える構成を備えず、オーガ用そりもない除雪車1Bを対比のために示す。そして、本実施例の除雪車1の各電磁切換弁37,38,39を開状態に切換え、傾動用シリンダ8,8及び昇降用シリンダ10,10Aをフローティング状態に設定する。
【0036】
図5(A)に示すように、平坦な路面101から登り坂となる傾斜変化箇所104において、除雪車1は、オーガ用そり14が路面に摺動し、オーガ5と路面101との緩衝が防止され、一方、図5(B)に示すように、除雪車1Bでは、オーガ5が路面101に干渉する虞がある。
【0037】
図6(A)及び図7(A)に示すように、凸の傾斜変化箇所104においては、除雪車1においては、フローティング状態のシリンダ8,8,10,10Aにより、除雪装置3が不陸に追従し、残雪を少なくでき、一方、図6(B)及び図7(B)に示すように、除雪車1Bでは、除雪装置3は、オペレータが乗る走行車両2の前方に位置し、走行車両1の姿勢変化をオペレータが感じてから、傾動用シリンダ8,8を操作して前方の除雪装置4の姿勢を変えようとしても遅く、また、路面101は雪に覆われているため、視認だけでは、路面101の傾斜の変化に除雪装置3の姿勢を合せることは困難なため、熟練したオペレータでも、図5(B)に示すように、オーガ5が路面101に追従できず、雪が残り易い。
【0038】
図7(A)に示すように、下り坂から平坦な路面101になる傾斜変化箇所104において、除雪車1は、オーガ用そり14が路面に摺動し、オーガ5と路面101との緩衝が防止され、一方、図7(B)に示すように、除雪車1Bでは、オーガ5が路面101に干渉する虞がある。
【0039】
図9において、鎖線は、本実施例の除雪車による除雪状態を示し、従来に比べて、不陸箇所への追従性に優れることがわかる。
【0040】
このように本実施例では、走行車両2と、この走行車両2の前方に支持された除雪装置3と、走行車両2と除雪装置3との間に設けられ走行車両2に対して除雪装置3を昇降する昇降用シリンダ10,10Aと、走行車両2と除雪装置3との間に設けられ除雪装置3を前後方向に傾動する傾動用シリンダ8,8とを備えた除雪車において、昇降用シリンダ10,10Aと傾動用シリンダ8,8をフローティング状態に設定可能であるから、昇降用シリンダ10,10Aと傾動用シリンダ8,8をフローティング状態に設定することにより、除雪装置3が路面形状に追従し、残雪の少ない除雪を行うことができる。
【0041】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、昇降用シリンダ10,10Aの下部を走行車両2に連結すると共に、該昇降用シリンダ10,10Aの上部を除雪装置3に連結し、走行車両2と除雪装置3とを前側を低くした前記傾動用シリンダ8,8により連結すると共に、傾動用シリンダ8,8の下方で該傾動用シリンダ8,8と略平行な左右のリンク片9,9により走行車両2と除雪装置3とを連結したから、昇降用シリンダ10,10Aを伸縮することにより、走行車両2に対して除雪装置3を昇降することができ、傾動用シリンダ8,8を伸縮することにより、除雪装置3を前側傾動・後側傾動させることができ、除雪範囲が拡大し、残雪の少ない除雪を行うことができる。
【0042】
また、このように本実施例では、傾動用シリンダ8,8を縮める方向の予圧を加えるから、傾動用シリンダ8,8をフリーにすると、自重により除雪装置3の全重量が路面101に加わり、走行車両2の駆動力が減少するため、傾動用シリンダ8,8を縮める方向の予圧を加えて、除雪装置3を後上側に引き上げることにより、走行車両2の駆動力を確保することができる。
【0043】
また、このように本実施例では、除雪装置3は、雪を回収する回収するオーガ5と、このオーガ5より接地下面16Aが下方に位置するオーガ用そり14とを備えるから、除雪装置3の不陸追従性の向上に加え、万一、オーガ5と路面101に接触しそうになっても、オーガ用そり14が路面104に摺動することにより、その接触を防止できる。
【0044】
図11は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、前記傾動用シリンダ8,8に接続した前記流路31,32に、電磁切換弁37Aを接続し、前記右側の昇降用シリンダ10に接続した前記流路33,34に、電磁切換弁38Aを接続し、前記左側の昇降用シリンダ10Aに接続した前記流路35,36に、電磁切換弁39Aを接続している。
【0045】
前記電磁切換弁37Aは、開状態で、前記作動油タンク48から前記流路31への作動油の一方向の流れを許容すると共に、前記流路32から作動油タンク48への作動油の一方向の流れを許容する。また、前記電磁切換弁38Aは、開状態で、前記流路33から作動油タンク49への作動油の一方向の流れを許容すると共に、作動油タンク49から前記流路34への作動油の一方向の流れを許容する。また、同様に、前記電磁切換弁39Aは、開状態で、前記流路35から作動油タンク50への作動油の一方向の流れを許容すると共に、作動油タンク50から前記流路36への作動油の一方向の流れを許容する。
【0046】
したがって、電磁切換弁37Aを開状態に切り換えることにより、傾動用シリンダ8,8は縮む方向にフリーとなったフローティング状態に設定することができ、電磁切換弁38A,39Aを開状態に切り換えることにより、昇降用シリンダ10,10Aは伸びる方向にフリーとなったフローティング状態に設定することができる。
【0047】
このように本実施例でも、走行車両2と、この走行車両2の前方に支持された除雪装置3と、走行車両2と除雪装置3との間に設けられ走行車両2に対して除雪装置3を昇降する昇降用シリンダ10,10Aと、走行車両2と除雪装置3との間に設けられ除雪装置3を前後方向に傾動する傾動用シリンダ8,8とを備えた除雪車において、昇降用シリンダ10,10Aと傾動用シリンダ8,8をフローティング状態に設定可能であるから、昇降用シリンダ10,10Aと傾動用シリンダ8,8をフローティング状態に設定することにより、除雪装置3が路面形状に追従し、残雪の少ない除雪を行うことができ、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0048】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例1を示すロータリー式の除雪車の側面図である。
【図2】同上、オーガ用そりの側面図である。
【図3】同上、オーガ用そりの正面図である。
【図4】同上、油圧回路図である。
【図5】同上、使用状態の側面図であり、図5(A)は本実施例の除雪車の側面図、図5(B)は他の除雪車の側面図である。
【図6】同上、使用状態の側面図であり、図6(A)は本実施例の除雪車の側面図、図6(B)は他の除雪車の側面図である。
【図7】同上、使用状態の側面図であり、図7(A)は本実施例の除雪車の側面図、図7(B)は他の除雪車の側面図である。
【図8】同上、使用状態の側面図であり、図8(A)は本実施例の除雪車の側面図、図8(B)は他の除雪車の側面図である。
【図9】同上、除雪状態を示す路面の断面図である。
【図10】同上、昇降用シリンダの説明図である。
【図11】本発明の実施例2を示す油圧回路図である。
【図12】従来例による除雪状態を示す路面の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 除雪車
2 走行車両
3 除雪装置
5 オーガ
7 リンク機構
8 傾動用シリンダ
9 リンク片
10,10A 昇降用シリンダ
14 オーガ用そり
101 路面
102 傾斜変化箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両と、この走行車両の前方に支持された除雪装置と、前記走行車両と前記除雪装置との間に設けられ前記走行車両に対して前記除雪装置を昇降する昇降用シリンダと、前記走行車両と前記除雪装置との間に設けられ前記除雪装置を前後方向に傾動する傾動用シリンダとを備えた除雪車において、前記昇降用シリンダと前記傾動用シリンダをフローティング状態に設定可能なことを特徴とする除雪車。
【請求項2】
前記昇降用シリンダの下部を前記走行車両に連結すると共に、該昇降用シリンダの上部を前記除雪装置に連結し、前記走行車両と除雪装置とを前側を低くした前記傾動用シリンダにより連結すると共に、前記傾動用シリンダの下方で該傾動用シリンダと略平行なリンク片により前記走行車両と除雪装置とを連結したことを特徴とする請求項1記載の除雪車。
【請求項3】
前記傾動用シリンダを縮める方向の予圧を加えることを特徴とする請求項1又は2記載の除雪車。
【請求項4】
前記除雪装置は、雪を回収する回収するオーガと、このオーガより接地下面が下方に位置するオーガ用そりとを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の除雪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−35904(P2009−35904A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200082(P2007−200082)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(501028390)国土交通省北陸地方整備局長 (12)
【出願人】(391023518)社団法人日本建設機械化協会 (19)
【出願人】(591117631)株式会社日本除雪機製作所 (18)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【出願人】(591121443)開発工建株式会社 (2)
【出願人】(503132257)新潟トランシス株式会社 (16)
【Fターム(参考)】