説明

除電ブラシ製造法

【課題】除電ブラシの製造時間の短縮化及びコスト低減化を図ると共に、導電性線材(導電性緯糸)の抜けを確実に防止する。
【解決手段】複数本の非導電性の経糸12を左右両側に所定間隔を有して対向配置し、該左右両側の経糸12に導電性の緯糸13を左右交互に織成する。次に、経糸12の一側面に導電性又は非導電性の両面テープ14を貼り付けた後、緯糸13の中心部を経方向に切断することで、除電ブラシ10が略3工程で製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は除電ブラシ製造法に関するものであり、特に、プリンタ、複写機、ファクシミリ等のOA機器の用紙搬送部に設置される除電ブラシ製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、此種除電ブラシは、導電性の表面テープと非導電性の裏面テープ(紙材)との間に複数本の導電性線材(繊維)をサンドイッチ状に挟持貼着して形成されている。この除電ブラシを製造するときは、先ず、図5に示すように、箱型枠体1の左辺部1aと右辺部1b間に、複数本の両面テープ2,2…を所定間隔を有して左右方向に掛け渡して、該両面テープ2,2…の左右両端部を前記左辺部1a及び右辺部1bに貼着する。
【0003】
次に、図6に示すように、前記枠体1の上辺部1cと下辺部1d間に導電性線材3を所定回数巻き付けることにより、複数本の両面テープ2,2…に導電性線材3を直交方向に止着する。この後、図7に示すように、該導電性線材3の上から各両面テープ2,2…に夫々アルミニウム製の片面テープ4,4…を貼り付ける。
【0004】
続いて、該片面テープ4,4…から前記両面テープ2,2…を剥離し、該両面テープ2,2…の代わりに、枠体1の内周形状よりも若干サイズの小さい方形の紙材5を片面テープ4,4…の裏側に貼り付ける。
【0005】
このあと、前記片面テープ4,4…及び導電性線材3を型刃(図示せず)で枠体1内周形状に沿って切断することにより、図8に示すように、該枠体1から方形の紙材5を片面テープ4,4…及び導電性線材3と共に分離する。
【0006】
次に、方形の紙材5及び導電性線材3を各片面テープ4,4…の一側辺縁部に沿って切断することにより、図9に示すように、各片面テープ(導電性の表面テープ)4,4…と帯状の紙材(非導電性の裏面テープ)6との間に導電性線材3を挟持貼着して成る除電ブラシ7が製造される。
【0007】
最後に、図10に示すように、複数本の導電性線材3の先端部を片面テープ4,4…と平行に切断することにより、複数本の導電性線材3の長さを均等に揃える(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平2−142000号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術は、除電ブラシを製造するのに少なくとも8つの工程を必要とするので、製造時間が長くなると共に製造コストが高くなる。更に、導電性線材は、取付部である片面テープと紙材の間に挟持貼着されているので、取付部から導電性線材が抜け易く、十分な除電効果を期待し難いという問題があった。
【0009】
又、取付部に対する導電性線材の固定力を高めるために、導電性線材を粘着性樹脂により金属板に固着させる方式も採用されているが、この場合も、多くの工程数を必要とする上に粘着性樹脂及び金属板の材料費が高騰するという欠点を有する。
【0010】
そこで、除電ブラシの製造時間の短縮化及びコスト低減化を図り、且つ、導電性線材たる導電性緯糸の抜けを確実に防止できるようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、経糸と緯糸とによって織成される細幅織物であって、該細幅織物は両側部に経糸が配置され、その間に所定距離を有して空間部を設け、且つ、両端部が前記両側の経糸に織り込まれる導電性緯糸によって梯子状に織成され、更に、前記両側の経糸の一側面に導電性又は非導電性のテープを貼着し、且つ、該導電性緯糸の中心部を経方向に切断して成る除電ブラシ製造法を提供する。
【0012】
この構成によれば、上記除電ブラシは略3工程で製造される。即ち、先ず、両側部に経糸を配置すると共に、その間に所定距離を有して空間部を設け、且つ、前記両側の経糸に導電性緯糸(導電性線材)の両端部を織り込むことで、梯子状の細幅織物を織成する(第1工程)。次に、前記両側の経糸の一側面に導電性又は非導電性の両面テープを貼着した後(第2工程)、該導電性緯糸の中心部を経方向に切断することにより(第3工程)、除電ブラシが2つ同時に製造される。
【0013】
請求項2記載の発明は、経糸と緯糸とによって織成される細幅織物であって、該細幅織物は両側部に経糸が配置され、その間に所定距離を有して空間部を設け、且つ、両端部が前記両側の経糸に織り込まれる導電性緯糸によって梯子状に織成され、更に、該導電性緯糸の中心部を経方向に切断し、且つ、該切断した各経糸の一側面に導電性又は非導電性のテープを貼着して成る除電ブラシ製造法を提供する。
【0014】
この構成によれば、請求項1記載の発明とは、上記導電性緯糸を切断した後に、導電性又は非導電性のテープを貼着した点が異なるだけであるので、略3工程で除電ブラシが製造される。
【0015】
請求項3記載の発明は、上記導電性緯糸の各織成部は上記経糸に複数回往復して織り込まれている請求項1又は2記載の除電ブラシ製造法を提供する。
【0016】
この構成によれば、上記経糸に対して導電性緯糸の各織成部は2回以上往復してジグザグに織り上げられるので、該経糸に対する導電性緯糸の固定力が更に増大する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明は、除電ブラシを製造するのに従来8工程以上要していたのが3工程で済むので、製造時間を大幅に短縮させることができ、又、製造工程数の削減化に加えて、固定用樹脂や金属板が不要であるため大幅なコストダウンも図られる。
【0018】
更に、経糸に導電性緯糸を織成したので、経糸に対する導電性緯糸の固定力が増大する。従って、経糸から導電性緯糸が抜けることを確実に防止でき、使用しても、良好な除電効果を長期間に亘って発揮することができる。
【0019】
請求項2記載の発明も、請求項1記載の発明と同様に、除電ブラシを3工程で製造できるので、除電ブラシの製造時間の短縮化及びコスト低減化が図られ、且つ、導電性緯糸の抜けを確実に防止することができる。又、導電性緯糸を切断して両側の経糸を分離した後に、該経糸に導電性又は非導電性のテープを貼着するので、該テープの貼着作業を容易に行なうことができる。
【0020】
請求項3記載の発明は、導電性緯糸の経糸に対する固定力が更に強化されるので、請求項1又は2記載の発明の効果に比べて、該導電性緯糸の抜け防止効果を一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、除電ブラシの製造時間の短縮化及びコスト低減化を図り、且つ、導電性緯糸(導電性線材)の抜けを確実に防止するという目的を、経糸と緯糸とによって織成される細幅織物であって、該細幅織物は両側部に経糸が配置され、その間に所定距離を有して空間部を設け、且つ、両端部が前記両側の経糸に織り込まれる導電性緯糸によって梯子状に織成され、更に、前記両側の経糸の一側面に導電性又は非導電性のテープを貼着し、且つ、該導電性緯糸の中心部を経方向に切断したことにより実現した。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図4に従って説明する。本実施例に係る除電ブラシ10は、図1に示すように、細幅織物により構成されている。該細幅織物は、取付部11たる非導電性経糸(以下、「経糸」と称する。)12と、該経糸12に織成された多数本の導電性緯糸(以下、「緯糸」と称する。)13,13…とより形成されている。図示例では、該緯糸13,13…の各織成部は、経糸12に2回往復して織り上げられている。
【0023】
前記緯糸13,13…の材料としては、所要の導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ステンレス繊維、カーボン繊維、アモルファス繊維、ジルコニア繊維等の導電性繊維を適宜使用できる。
【0024】
更に、前記経糸12一側面には、アルミニウム等の金属から成る導電性又は非導電性の両面テープ14が貼り付けられている。このため、前記緯糸13,13…の各織成部は、導電性両面テープ14に電気的に接触している。なお、前記両面テープ14に代えて、導電性又は非導電性の片面テープであってもよい。
【0025】
上記除電ブラシ10は、例えばプリンタ、ファクシミリ、複写機等のOA機器の用紙搬送部(アース用金属部)に両面テープ14を貼り付けて使用される。而して、用紙が緯糸13,13…の先端部に接触しながら通過すると、該用紙に帯電していた静電気は、該緯糸13,13…を通って両面テープ14側に移動して除去される。
【0026】
次に、上記除電ブラシ10の製造方法について詳述する。先ず、経糸12を左右両側に配置すると共に、その間に所定間隔を有して空間部を設ける。この場合、左側の経糸12の本数と右側の経糸12の本数とは互いに同数(図示例では4本)とする。次に、図2に示すように、左側の経糸12に緯糸13の一端部を織成した後、該緯糸13を右側の経糸12に交錯させて該交錯部を該経糸12に織成する。
【0027】
以下同様にして、左側の経糸12と右側の経糸12の間にて緯糸13を左右交互に所定回数折り返しながら、該折返し部を当該経糸12に織成する。これにより、左右両側の各経糸12に緯糸13を左右交互に織り上げて成る梯子状の織物が得られる。
【0028】
尚、緯糸13の各織成部における往復織り上げ回数は2回に限定されず、緯糸13や経糸12の長さや本数などに応じて任意に決定できる。例えば、図3に示すように、緯糸13の各織成部は、3回以上往復させて織り上げることもできる。この場合、緯糸13の各織成部は、図4に示すように、経糸12の内側2本に対して、図4における手前側に位置するように織り上げるものとする。
【0029】
次に、各経糸12の一側面に導電性又は非導電性の両面テープ(又は片面テープ)14を貼着して、該両面テープ14を緯糸13,13…の各織成部に共通に接触させる。この後、該緯糸13の左右方向中心部をカットラインLに沿って経方向、即ち、経糸12と平行な縦方向に切断する。なお、前記両面テープ14の左右幅は、緯糸13,13…の左右幅よりも狭く形成する。更に、緯糸13,13…の各織成部は、両面テープ14側に傾斜するように若干角度を有するように形成するのが好ましい。このようにすると、該緯糸13,13…の各織成部が両面テープ14に確実に接触するため、ブラシ使用時に緯糸13,13…から両面テープ14側に電流が円滑に移動する。
【0030】
斯くして、図1に示すように、経糸12に多数本の緯糸13を織成して成る除電ブラシ10が2個同時に製造される。尚、両面テープ14の貼着工程は、緯糸13の切断工程の後に行ってもよい。
【0031】
上述したように、本実施例は、取付部11たる経糸12に緯糸(導電性線材)13を強固に織成したので、緯糸13の各織成部が両面テープ14と経糸12間に挟持固定されていることと相俟って、従来の貼付け方式に比べて、取付部11に対する緯糸13の固定力が格段に増大する。
【0032】
特に、緯糸13の各織成部は、経糸12に2回以上往復して織り上げられているので、経糸12に対する緯糸13の固定力が2倍以上増大する。従って、除電ブラシ10を長期間使用した場合でも、取付部11から緯糸13が抜けるおそれがなく、十分な除電効果を確実に得ることができる。
【0033】
又、本実施例によれば、経糸12と緯糸13の織成と、両面テープ14の貼着と、緯糸13の切断との3つの工程のみで、2個の除電ブラシ10が同時に製造されるので、従来に比べて工程数が半分以下になり、製造時間が大幅に短縮する。更に、工程数の低減に加えて、固定用樹脂や金属板が一切不要であるため、材料費を含むトータルな生産コストも大幅に低減する。
【0034】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る実施例を示し、除電ブラシの正面図。
【図2】実施例に係る経糸に緯糸を織成した状態を説明する工程図。
【図3】本発明に係る緯糸の他の織り込み態様例を示す説明図。
【図4】図2の緯糸の織成部を拡大して示す詳細説明図。
【図5】従来例に係る枠体に両面テープを貼着した状態を説明する工程図。
【図6】従来例に係る片面テープを貼着した状態を説明する工程図。
【図7】従来例に係る紙材を貼り付けた状態を説明する工程図。
【図8】従来例に係る紙材を枠体から分離した状態を説明する工程図。
【図9】従来例に係る紙材を片面テープに沿って切断した状態を説明する工程図。
【図10】従来例に係る除電ブラシを示す正面図
【符号の説明】
【0036】
10 除電ブラシ
11 取付部
12 非導電性経糸
13 導電性緯糸(導電性線材)
14 両面テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸とによって織成される細幅織物であって、該細幅織物は両側部に経糸が配置され、その間に所定距離を有して空間部を設け、且つ、両端部が前記両側の経糸に織り込まれる導電性緯糸によって梯子状に織成され、更に、前記両側の経糸の一側面に導電性又は非導電性のテープを貼着し、且つ、該導電性緯糸の中心部を経方向に切断して成ることを特徴とする除電ブラシ製造法。
【請求項2】
経糸と緯糸とによって織成される細幅織物であって、該細幅織物は両側部に経糸が配置され、その間に所定距離を有して空間部を設け、且つ、両端部が前記両側の経糸に織り込まれる導電性緯糸によって梯子状に織成され、更に、該導電性緯糸の中心部を経方向に切断し、且つ、該切断した各経糸の一側面に導電性又は非導電性のテープを貼着して成ることを特徴とする除電ブラシ製造法。
【請求項3】
上記導電性緯糸の各織成部は上記経糸に複数回往復して織り込まれていることを特徴とする請求項1又は2記載の除電ブラシ製造法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−257845(P2007−257845A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76613(P2006−76613)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(596035662)久保田織物株式会社 (2)
【出願人】(506094127)株式会社ケンエー (1)
【Fターム(参考)】