説明

除電装置

【課題】感光体の短寿命に影響する要因を軽減できる除電装置を提供する。
【解決手段】光量制御が可能な複数のLEDをアレイ状に並べた除電用光源に沿って、直線移動が可能な表面電位センサを配置し、帯電器にて帯電された感光体が回転し、安定した印刷品質を維持するための必要光量より弱い光量、すなわち光量分布算出用に予め定められた光量を照射した後の感光体表面電位について、前記表面電位センサが測定した結果、電位が最も高い位置において、除電用光源の光量が最も弱いと判断し、その部分の除電後電位が、安定した印刷品質に要求される基準電位以下になるよう、除電用光源の光量を可変制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式印刷装置において感光体表面を露光することにより、表面電位を低下させる除電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真式印刷装置は図2に示すように、円筒状でその中心線を軸として回転し光導電性を有する感光体3に対し、その周囲に、感光体3の表面に電荷を与えるための帯電器1と、感光体3に画像データに応じたレーザ光を照射する露光部2と、感光体3上にトナーを付着させるための現像部4と、感光体3上に付着したトナーを印刷用紙5に転写するための転写部6と、転写後も感光体3上に残留しているトナーを除去するための清掃部10を有している。
【0003】
前記清掃部10は、感光体3の軸方向全域に光を照射し、転写後の感光体3上に残存する電位を0V近傍まで下げ、清掃性を良くするための除電用光源8と、ACコロナ放電によって感光体3及び感光体3上の残留トナーの除電を行う除電器7と、回転するブラシによって感光体上の残留トナーを除去するクリーニングブラシ9などから構成される。
【0004】
以上の構成を有する電子写真式印刷装置が安定した印刷品質を得るために、前記除電用光源8おいては、光を照射した後の感光体3上の電位をムラなく一定以下にすることが要求される。そのためには、感光体3の軸方向全域に対し、必要光量を照射する必要があるが、複数のLEDをアレイ状に並べた除電用光源8は、各素子間で生じる光量バラツキを考慮しなければならず、感光体3に必要最低限の光量に対して数倍の光量を照射することで感光体3全体の必要光量を確保していた。
【0005】
感光体3は帯電、露光を繰り返すことにより、チャージ疲労、光疲労を生じ、残留電位の蓄積や帯電電位の安定性を劣化させることになるため、除電用光源8にて照射する光量については、必要最小限に設定することが望ましい。
【0006】
そこで感光体3全域に均一な光量を確保するために、除電用光源8の各LEDに対応する表面電位センサ12を設け、表面電位センサ12の出力値に基づき、感光体3上の電位が基準値以下となるように、各LEDの光量をフィードバック制御することにより、除電用光源8の光量分布を均一にする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、感光体3除電後、次プロセスの感光体3帯電時の回転軸方向の電位分布を1個の表面電位センサを移動させて検出し、帯電ムラより除電光量のムラを補正する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した光量バラツキを検出するために、多数のLEDに対して同数の表面電位センサを設ける方法は、装置の原価上昇や、制御回路の複雑化を招くという課題があった。
【0009】
また、感光体3の帯電時における電位分布について、表面電位センサ1個を移動させて検出する方法は、電位ムラの要因が帯電器、除電用光源の何れにあるのか判別できない可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、安価な構成で除電用光源の光量分布を算出し、算出結果に基づいて感光体に照射する最低限の光量を決定することで、感光体の短寿命に影響する要因を軽減できる除電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、光量制御が可能な複数のLEDをアレイ状に並べた除電用光源に沿って、直線移動が可能な表面電位センサを配置し、帯電器にて帯電された感光体が回転し、安定した印刷品質を維持するための必要光量より弱い光量、すなわち光量分布算出用に予め定められた光量を照射した後の感光体表面電位について、前記表面電位センサが測定した結果、電位が最も高い位置において、除電用光源の光量が最も弱いと判断し、その部分の除電後電位が、安定した印刷品質に要求される基準電位以下になるよう、除電用光源の光量を可変制御することにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、感光体の回転軸方向全域に亘る除電後の表面電位を検出するため、除電用光源の効力、すなわち光源が照射する光量の強弱の分布について把握できる。また、表面電位センサが1個にて算出できるため、安価に実現可能である。
【0013】
請求項2の構成によれば、除電用光源の照射する光量のバラツキが、感光体除電後の表面電位のバラツキとして顕著に現れるため、前記光源の照射する光量が最も弱い位置を把握することができる。
【0014】
請求項3の構成によれば、算出された光量分布より、感光体全域に最低限必要な光量を照射するよう除電用光源を制御するため、感光体短寿命化の要因を軽減することができる。
【0015】
請求項4の構成によれば、除電用光源の光量を制御することで、除電後電位の改善がされない場合、前記光源の異常(光源の汚れ或いは故障)を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した電子写真式印刷装置における除電後電位分布の一例を示す特性図である。
【図2】電子写真式印刷装置の概略構成図である。
【図3】本発明を適用した電子写真式印刷装置の構成図である。
【図4】感光体に照射される光量に対する除電後電位の一例を示す特性図である。
【図5】除電用光源の光量分布を推測する測定工程を示すフローチャートである。
【図6】除電用光源に最低限必要とされる光量設定、及び光源の異常検出の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例を、図1、図3及び図4を用いて説明する。
【0018】
図3に本発明を適用した電子写真式印刷装置の構成例を示す。円筒状の感光体3の周囲に配置された帯電器1と除電用光源8の間に、表面電位センサ12を配置する。表面電位センサ12はスライダ11に支持されており、図示されない駆動源により、除電用光源8に沿って直線移動が可能な構成になっている。
【0019】
感光体3を矢印の方向に回転させながら、帯電器1に高電圧を印加すると、帯電器1の直下を通過した感光体表面が帯電する。帯電器1を通過した後、感光体表面の帯電した部分は、露光部2、現像部4、転写部6を経て、清掃部10に達する。そして、清掃部10に達すると、除電用光源8によって感光体3の表面に光が照射され、除電用光源8の直下を通過した感光体表面の表面電位が下がる。
【0020】
ここで、図4に除電用光源8の光量に対する除電後電位の一特性例を示す。除電用光源8の光量が0の場合、除電後電位は帯電後電位とほぼ同じである。また、除電用光源8の光量を強くするに従い、除電後電位は漸減し、光量がBを超えると除電後電位の減少がほぼ止まる。さらに感光体3に照射する光量を強くしても、除電後電位の変化量は微小となる。
【0021】
前述の電位特性を踏まえ、除電用光源8の光量分布を算出する方法を、図3、図4、及び図5を用いて説明する。
【0022】
まず、表面電位センサ12が感光体の端部に移動し、その出力が例えば帯電後電位の1/2の値となるような光量(安定した印刷品質を維持するための必要光量より弱い光量の例)に除電用光源8の光量を設定する(LEDを駆動する図示されない定電流回路に設定する)。この時の光量が図4のAに相当する。
【0023】
次に帯電器1にて一様に帯電(図5のS11)された感光体3を回転させながら、光量をAに固定された除電用光源8にて光を照射(図5のS12)する。そして、表面電位センサ12は直線移動しながら、除電後の感光体3の表面電位を測定(図5のS13)する。
【0024】
図4に示す通り、光量Aの近傍では、微小な光量変化であっても表面電位の変化量が大きいため、除電用光源8の光量バラツキは、表面電位分布の差となって顕著に現れる。即ち、感光体の表面電位が高い部分は、除電用光源の光量が弱いと判断でき、表面電位が低い部分では光量が強いと判断できる。
【0025】
本発明を適用した電子写真式印刷装置における、除電後電位分布の一例を示す図を図1に示す。本測定では、図1に示した除電後電位が最も高い位置(除電用光源の光量が最も弱い位置)を把握することが目的であり、図5のS14にて電位のピークを検出し、図5のS15にて図示されない記憶装置にピーク電位と表面電位センサ12の位置を記憶させる。以降、図5のS16により感光体の回転軸方向全域に亘る電位分布の測定を実施する。測定終了後、現状設定されている通常の印刷動作時の除電光量にて感光体3を除電して、表面電位測定処理を終了する。
【0026】
次に前述の結果を踏まえて、除電用光源8に必要とされる最低限の光量設定、及び前記光源の異常検出について、図3、図4、及び図6を用いて説明する。
【0027】
図6のS21として、前記結果より最も光量が弱いと判断された位置に表面電位センサ12を移動する。
【0028】
次に帯電器1にて一様に帯電(図6のS22)された感光体3を回転させながら、現状設定されている除電光量にて除電用光源8が光を照射(図6のS23)し、除電後の表面電位を測定(図6のS24)する。
【0029】
現在の表面電位センサ12の位置は、最も光量の弱い位置であるため、感光体3全域に亘り除電基準となる電位に下がらない場合には、表面電位センサ12の位置が最も高電位となって現れる。この場合図6のS25にて、除電光量が不足していると判断され、除電用光源8の光量を予め定められた光量増加量に従い、1ランク強める設定に変更(LEDを駆動する図示されない定電流回路の設定電流を増加する)する(図6のS26)。
【0030】
感光体3全域の電位が除電基準以下の場合には、現状の光量設定で十分と判断され、光量設定の処理は終了する。これは図4におけるBの位置にあたり、必要最低限の光量となる。
【0031】
前記図6のS25にて光量不足と判断された場合の説明に戻ると、図6のS26にて光量設定が変更された場合、除電用光源8を構成するLEDの駆動電流上限であるかを判断(図6のS27)し、上限に達していない場合には、図6のS21に戻り、図6のS27にて光量が十分と判断されるまで処理が繰り返される。
【0032】
また、図6のS27にて、上限に達した場合には、LED発光面の汚れ、或いはLEDが点灯していない故障にて十分な光量が確保できないことになり、除電用光源8の異常を報告(図6のS28)して光量設定の処理を終了する。
【0033】
尚、除電用光源8の光量分布は、イニシャライズ時や予め設定された印刷量終了後などに測定することが考えられる。また、除電用光源8を交換した直後は、必ず光量分布を再測定する必要がある。
【符号の説明】
【0034】
1は帯電器、2は光源、3は感光体、4は現像部、5は印刷用紙、6は転写部、7は除電器、8は除電用光源、9はクリーナブラシ、10は清掃部、11はスライダ、12は表面電位センサである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開平5−241491号公報
【特許文献2】特開2007−79168号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導電性を有し回転する感光体の周囲に、前記感光体の回転軸方向に複数のLEDをアレイ状に配置した除電用光源と、同じく回転軸方向に直線移動が可能な表面電位センサと、感光体を帯電させるための帯電器を備えた電子写真式印刷装置において、
前記表面電位センサを直線移動させ、除電後の表面電位分布を測定することで、除電用光源の光量分布を算出する構成になっていることを特徴とする除電装置。
【請求項2】
前記表面電位分布を測定する際の除電用光源の光量は、光量が最も弱い位置を把握するために、安定した印刷品質を維持するために除電機能に必要とする光量より弱い設定とすることを特徴とする請求項1に記載の除電装置。
【請求項3】
前記光量分布の算出値から得られた除電後の表面電位分布において、表面電位が最も高かった部分の除電後電位を所定値以下に保つように、除電用光源の光量を可変制御することを特徴とする請求項1記載の除電装置。
【請求項4】
前記光量分布の算出値から得られた除電後の表面電位分布において、表面電位が所定値を越える部分が存在した場合、除電用光源の汚れ或いは故障として異常を検出することを特徴とする請求項1記載の除電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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