説明

除電装置

【課題】複数の放電針を一括して、かつ円滑に本体部に取り付けると同時に、各放電針と電極との導通を好適に得ることができる除電装置を提供する。
【解決手段】放電針ユニット13を本体部12に取り付ける際、各放電針23は電極51の各貫通孔52を非接触状態で貫通する一方で、各放電針23に装着された円錐コイルばね24の大径部26は電極51に対して弾性的に接触する。各円錐コイルばね24の小径部25は各放電針23に対して接触状態に維持されているので、各放電針23と電極51との間の導通は、各円錐コイルばね24を介して好適に確保される。電極の各貫通孔の内径は、放電針の外径よりも大きく設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放電針への高電圧の印加を通じたコロナ放電によりイオンを生成し、この生成されるイオンを除電対象へ吹きつける除電装置が知られている。たとえば、特許文献1の除電装置では、本体ケースの前面に設けられたノズルの反対側の後面に当該ノズルと連通する取付穴を形成し、この取付穴に放電針ユニットを螺着してなる。放電針ユニットは、放電針、および当該電極針を保持するホルダを有してなる。ホルダは、放電針が圧入される金属製の放電針支持部、および当該支持部の端部に設けられた樹脂製のノブを備えてなる。
【0003】
放電針ユニットを本体ケースに取り付ける際には、放電針を本体ケースの取付穴に挿入しつつ、放電針ユニットを締め付け方向へ回転させる。これにより、放電針支持部は、取付穴の内部に露出して設けられる電極板のねじ孔に締め付けられる。放電針には、電極を介して高電圧が印加される。放電針のメンテナンスの際には、放電針ユニットを締め付け方向と反対側に回転させることにより、当該放電針ユニットを本体ケースから取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−228069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行文献1の除電装置は、単一の放電針を有するものであるところ、本願の出願人は、複数の放電針を備えることによって、より広い範囲にわたってイオンを放出する除電装置を検討している。さらに本願の出願人は、放電針のメンテナンス作業の利便性の観点から、複数の放電針を一括して着脱する構成の採用についても併せて検討している。この場合には、電極板のねじ孔を単なる貫通孔として形成し、当該貫通孔に対して放電針支持部を緩やかに圧入することにより、放電針と電極板との導通を得る構成の採用が考えられる。
【0006】
この構成を採用する場合には、複数の放電針支持部と、これらが挿入される電極板の複数の貫通孔との同軸度を確保する必要があるところ、当該同軸度の確保は困難である。すなわち、設計時の寸法誤差などに起因して、各放電針支持部と各貫通孔との同軸度にずれが発生するところ、当該同軸度のずれは、放電針、ひいては放電針支持部の個数を増やすほど累積的に増大する。このため、各放電針支持部を電極の各貫通孔に円滑に挿入することが困難となる状況の発生が懸念される。
【0007】
また、各放電針の各貫通孔に対する位置精度、または電極板の貫通孔あるいは放電針支持部の加工精度などによっては、電極板の貫通孔の内周面と、放電針支持部の外周面との間に隙間などが形成されることが想定される。この場合には、電極板と各放電針支持部との接触面積が十分に確保することができず、電極板と各放電針支持部との良好な導通が得られないおそれがある。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、複数の放電針を一括して、かつ円滑に本体部に取り付けると同時に、各放電針と電極との導通を好適に得ることができる除電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基台に対して複数の放電針が設けられてなる放電針ユニットと、イオンの放出口が形成された第1の面と、前記複数の放電針がそれぞれ挿入される複数の挿入口が形成された第2の面とが互いに反対側に設けられてなる本体部と、を備え、前記放電針ユニットは、前記各放電針を前記各挿入口に挿入する態様で前記第2の面に対して着脱可能に設ける一方で、前記本体部の内部には、前記各挿入口に対応する複数の貫通孔が形成された電極を設け、前記放電針ユニットを前記第2の面に取り付けたとき、前記各放電針は、前記電極の各貫通孔を非接触状態で貫通するとともに、当該各放電針に設けられた導通部材を介して前記電極に対して導通状態に接続され、前記導通部材として、前記各放電針に挿通されるコイルばねを採用し、当該各コイルばねは、前記各放電針に対して接触状態に維持される小径部、および前記各放電針に対して非接触状態かつ前記電極に対して弾性的に接触した状態に維持される大径部を備えてなることをその要旨とする。
【0010】
本発明によれば、放電針ユニットを本体部に取り付ける際、各放電針は電極の各貫通孔に挿通される一方で、各放電針に装着されたコイルばねの大径部は電極に対して弾性的に接触する。各コイルばねの小径部は各放電針に対して接触状態に維持されているので、各放電針と電極との間の導通は、コイルばねを介して好適に確保される。また、電極の各貫通孔の内径は、放電針の外径よりも大きく設定することができる。このため、放電針ユニットを本体部に装着するに際して、各貫通孔の内径と放電針の外径との差の分だけ、各放電針の各貫通孔に対する位置精度の影響を受けにくくなる。また、貫通孔の内径を大きくできる分、各放電針と電極における各貫通孔の周縁部などとの干渉の発生が抑制される。したがって、複数の放電針を一括して、かつ円滑に本体部に取り付けることが可能となる。同時に、各放電針と電極との導通を好適に得ることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の除電装置において、前記基台は板状に形成されるとともに、当該基台の前記本体部側の面が前記第2の面に当接することにより前記複数の放電針の前記挿入口に対する挿入深さが決定されることをその要旨とする。
【0012】
本発明によれば、基台の本体部側の面が、当該本体部の第2の面に当接する位置まで放電針を挿入口に挿入するだけで、放電針の挿入深さが位置決めされる。このため、放電針ユニットの取り付け作業が簡単になる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の除電装置において、前記第2の面に取り付けられた前記放電針ユニットの一部分を内包するかたちで、かつ前記複数の放電針の並ぶ方向に沿って往復動するスライドホルダを設け、前記スライドホルダは、前記本体部の一部分に対して前記放電針ユニットの取り外し方向において係合する第1の位置と、前記一部分に対する係合が解除される第2の位置との間を変位可能とし、前記放電針ユニットを前記第2の面に取り付けたとき、前記放電針ユニットは、前記各コイルばねを介して前記電極に支持された状態に維持されるとともに、前記スライドホルダが前記第2の位置から第1の位置へ変位したとき、前記各コイルばねの弾性力に抗して前記各放電針の挿入方向へ変位することをその要旨とする。
【0014】
本発明によれば、スライドホルダが第1の位置に保持されている状態においては、スライドホルダが本体部の一部に係合することにより放電針ユニットの本体部からの脱落が規制される。放電針ユニットを本体部から取り外すときは、スライドホルダを第1の位置から第2の位置へスライドさせるだけでよい。スライドホルダと本体部の一部分との係合が解除されるので、放電針ユニットを本体部から簡単に取り外すことができる。工具なども不要である。また、放電針ユニットを第2の面に取り付けたとき、放電針ユニットは、各コイルばねを介して電極に支持された状態に維持される。そしてこの状態で、スライドホルダが第2の位置から第1の位置へ変位したとき、放電針ユニットは、各コイルばねの弾性力に抗して各放電針の挿入方向へ変位する。すなわち、各コイルばねは、電極に押し付けられることにより圧縮される。このため、各コイルばねの電極に対する接触圧が好適に確保される。したがって、各放電針と電極との導通を、より好適に得ることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の除電装置において、前記スライドホルダは、前記本体部の輪郭の範囲内で、前記第1の位置と前記第2の位置との間を変位することをその要旨とする。
【0016】
本発明によれば、スライドホルダが本体部の輪郭からはみ出ることがない。このため、除電装置の設置スペースが節約される。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の除電装置において、複数個の前記放電針ユニットを備えてなることをその要旨とする。
【0017】
除電装置の設置場所、あるいは製品仕様などにより、必要とされる放電針の数は様々である。この場合、必要とされる放電針数に応じた専用の放電針ユニットおよび本体部を用意することも考えられるものの、管理コストなどの観点から、部品の種類は少ないほうが好ましい。この点、本発明によれば、複数の放電針ユニットを組み合わせて使用することにより、放電針ユニットの種類を低減することが可能である。たとえば、放電針ユニットの放電針を4本、必要とされる放電針の数を8本とした場合には、8つの挿入口を有する本体部を用意し、この本体部に対して2つの放電針ユニットを取り付ければよい。また、必要とされる放電針の数を6本とした場合、6つの挿入口を有する本体部を用意し、この本体部に対して、4本の放電針を有する放電針ユニット、および2本の放電針を有する放電針ユニットをそれぞれ取り付ければよい。このように、必要とされる放電針数に応じた全種類の放電針ユニットを用意する必要がないので、その分、部品の管理コストなどの削減に寄与する。さらに、本発明は、つぎのような場合に、特に有効である。すなわち、多数の放電針を列状に設ける場合には、必要とされる放電針の数が増大するほど、放電針ユニットは長大化する。放電針の貫通孔に対する位置精度の誤差も累積的に増大する。この点、本発明のように、複数の放電針ユニットを組み合わせて使用することにより、放電針の貫通孔に対する位置精度の誤差を抑えることが可能である。このため、各放電針ユニットを本体部に対して円滑に装着することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の放電針を一括して、かつ円滑に本体部に取り付けると同時に、各放電針と電極との導通を好適に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は、除電装置の本体部および放電針ユニットの分解斜視図、(b)は、除電装置の斜視図。
【図2】本体部の上部を切断した斜視図。
【図3】図1(b)のA−A線断面図。
【図4】図3のB−B線断面図。
【図5】図3のC−C線断面図。
【図6】図3のD−D線断面図。
【図7】パッキンの圧縮の態様を示す本体部の要部側断面図。
【図8】他の実施の形態における除電装置の本体部および放電針ユニットの分解斜視図。
【図9】(a),(b)は、他の実施の形態における除電装置の本体部および放電針ユニットの分解斜視図。
【図10】他の実施の形態における除電装置の概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、除電装置11は、本体部12、および当該本体部12に着脱可能に取り付けられる放電針ユニット13を備えてなる。
【0021】
<放電針ユニット>
放電針ユニット13は、矩形板状の基台21、および当該基台21の下面に設けられた4つの保持部22、および各保持部22に保持される4つの放電針23を備えてなる。基台21および各保持部22は、合成樹脂材料により一体成型されている。各保持部22は、円柱状に形成されるとともに、基台21の延びる方向に沿って一定間隔をおいて直線状に設けられている。図5に併せて示されるように、各保持部22の先端部には、放電針23の基端部が嵌合状態で固定されている。各放電針23の中間部には、円錐コイルばね24が挿通された状態で固定されている。円錐コイルばね24は、導線が円錐状に巻回されてなる。円錐コイルばね24の小径部25は、放電針23に固定された状態で保持部22の先端に形成された凹部23aに収容されている。円錐コイルばね24の大径部26は、放電針23に非接触状態に維持される。また、基台21の下面には、環状のパッキン27が各保持部22の基部に挿通された状態で装着されている。
【0022】
<本体部>
図1(a)に示すように、本体部12は、合成樹脂材料により直方体状に形成されている。本体部12の上面には、4つの挿入口31が形成されている。各挿入口31は、本体部12の延びる方向に沿って一定間隔をおいて、かつ放電針ユニット13の各放電針23と同軸をなすように設けられている。各挿入口31の内径は、放電針ユニット13の各保持部22の外径よりも大きく設定されている。
【0023】
また、同図に示すように、本体部12の上面には、2つの係合部材32が形成されている。これら係合部材32は、本体部12の延びる方向における両端側において互いに隣り合う2つの挿入口31の間に設けられている。図4に併せて示されるように、係合部材32は、本体部12の延びる方向に対して直交する幅方向において対向する2つの腕部33と、これら腕部33の先端にそれぞれ形成された2つの突部34とを備えてなる。これら突部34は、本体部12の幅方向において、互いに反対側に突出している。また、図3の上部に拡大して示すように、これら突部34の下面において、本体部12の延びる方向における外側には、それぞれ斜面35が形成されている。斜面35は、本体部12の延びる方向に沿って外側へ向かうにつれて、突部34の肉厚が薄くなるように傾斜している。
【0024】
図2に示すように、本体部12の内部には、空気流路100が形成されている。空気流路100は、本体部12の延びる方向に沿って延設されている。また、本体部12(空気流路100)の内部には、4つの筒部41が4つの挿入口31にそれぞれ対応して形成されている。図5に併せて示すように、各挿入口31は各筒部41を貫通して、本体部12の底面の近傍まで延設されている。各挿入口31の底壁の中央には、イオン放出口42が貫通して形成されている。また、図5に示すように、各筒部41の周壁には、小孔41aが形成されている。小孔41aは、筒部41の内方へ向うにつれて縮径する円錐台状に形成されている。すなわち、小孔41aの開口面積は、筒部41の外側から内側へ向うにつれて徐々に小さく設定されている。この小孔41aは、流路面積の絞り部として機能する。
【0025】
図2に示すように、本体部12の内底面において、各筒部41の周囲には、4つの送風穴43が形成されている。図6に示されるように、各送風穴43は、本体部12の底面の近傍まで延設されている。各送風穴43の底壁には、送風口44が貫通して形成されている。
【0026】
図3に破線で示すように、本体部12における空気流路100の下方には、電極51が埋設されている。電極51は、銅などの金属材料により長尺状に形成されている。電極51は空気流路100に沿って延びるとともに、各筒部41に対応する範囲にわたって設けられている。図5に示されるように、電極51は、本体部12の延びる方向において、各挿入口31を貫通して設けられている。電極51において、各挿入口31の内部に露出している部分には、貫通孔52が形成されている。各貫通孔52は、各放電針23に対して同軸をなす。貫通孔52の内径は、放電針23の外径よりも大きく、かつ円錐コイルばね24の大径部26の外径よりも小さく設定されている。
【0027】
図1(b)に示すように、本体部12の端部にはチューブ継手61が設けられている。チューブ継手61には、図示しないエアチューブを介して圧縮空気源が接続される。圧縮空気源からの圧縮空気は、チューブ継手61を介して、本体部12の内部、すなわち空気流路100に供給される。また、本体部12のチューブ継手61と反対側の端部には、電源ケーブル62を介して、図示しない高圧電源(交流)が接続される。高圧電源からの電力は、電源ケーブル62を介して、電極51に印加される。
【0028】
なお、イオン放出口42が開口する本体部12の底面、は本発明の第1の面に相当する。また、挿入口31が形成された本体部12の上面は、本発明の第2の面に相当する。
<放電針ユニットの装着態様>
つぎに、本体部12に対する放電針ユニット13の装着態様について説明する。図1(a)に示されるように、放電針ユニット13は、本体部12に対して上方から装着される。各放電針23および各保持部22は、本体部12の各挿入口31に上方から挿入される。図5に示されるように、放電針ユニット13の下方への変位は、基台21の下面が各パッキン27を介して、本体部12の上面に当接することにより規制される。この状態において、各挿入口31、正確には各筒部41の内周面と各保持部22の外周面との間に形成される隙間は、各パッキン27により上方から閉塞された状態となる。
【0029】
またこの状態において、各円錐コイルばね24の大径部26は、電極51の上面に対して弾性的に接触している。すなわち、各放電針23は、各円錐コイルばね24を介して、電極51に対して導通状態に接続されている。各円錐コイルばね24は、若干圧縮された状態に維持されている。このため、各円錐コイルばね24の電極51に対する接触圧が好適に確保される。またこの状態において、各放電針23は、電極51の各貫通孔52に非接触状態で挿通されている。各放電針23の先端部は、本体部12の各イオン放出口42の内部に非接触状態で挿入されている。
【0030】
<空気供給経路>
本体部12および放電針ユニット13が組み付けられることにより、本体部12の内部には、空気流路100から分岐するかたちで2つの空気供給経路が形成される。
【0031】
すなわち、図5に矢印で示されるように、各筒部41の小孔41a、当該各筒部41の内周面と各保持部22の外周面との間の隙間(各挿入口31)、および電極51の各貫通孔52から第1の分岐流路101が形成されている。また、図6に矢印で示されるように、各送風穴43から、第2の分岐流路102が形成されている。そして、外部から空気流路100へ供給される圧縮空気は、第1の分岐流路101を介して、各イオン放出口42から外部へ放出される(第1の空気供給経路)。また、空気流路100へ供給される圧縮空気は、第2の分岐流路102を介して、各送風口44から放出される(第2の空気供給経路)。
【0032】
空気流路100から第1の分岐流路101に分流する空気は、各放電針23の周囲を通過する空気流、すなわちシースエアとして、各放電針23の先端付近に発生するイオンとともに各イオン放出口42から外部へ放出される。そして、各イオン放出口42から放出されるイオンの周囲には、各送風口44から放出される空気流、すなわちアシストエアが発生することにより、イオンがより遠くまで飛ばされる。
【0033】
空気流路100と第1の分岐流路101との境界部分には、流路面積の絞り部として小孔41aが形成されている。このため、第1の分岐流路101に供給される空気圧力は、空気流路100に供給される圧縮空気の圧力よりも小さくなる。この第1の分岐流路101に供給される空気圧力は、各保持部22、ひいては放電針ユニット13に対してその取り外し方向へ向けて作用するところ、外部からの圧縮空気をそのまま第1の分岐流路101に供給する場合と異なり、放電針ユニット13に作用する空気圧力は小さなものとなる。
【0034】
ここで、各放電針23の周囲を通過する空気流(シースエア)は、各放電針23への不純物の析出、あるいは付着などを抑制する効果を奏するものの、当該空気流の流速が速くなりすぎるとイオンが発生しにくくなる。この点、本例では、空気流路100と第1の分岐流路101との間の流路面積を小孔41aにより絞ることにより、放電針23の周囲を通過する空気流の流速、あるいは圧力が好適に低減される。このため、イオンの発生がシースエアにより阻害されることはなく、イオンの発生効率が好適に維持される。
【0035】
ちなみに、第1の分岐流路101における放電針23の先端側の流路面積を絞ることも考えられる。この場合には、イオンの生成効率は維持されるものの、第1の分岐流路101に供給される空気圧力は、空気流路100に供給される圧縮空気の圧力と同程度になるので、保持部22、ひいては放電針ユニット13に作用する空気圧力は大きなものとなる。当該空気圧力が大きくなるほど、第1の分岐流路101(正確には、挿入口31における放電針23の挿入側の端部)の密封の難易度が高くなる。本例では、第1の分岐流路101の空気圧力が低減されるので、気密状態も確保しやすい。
【0036】
<保持機構>
本例の除電装置11は、放電針ユニット13の本体部12からの脱落を抑制するために、また、各第1の分岐流路101の気密状態を確保する目的で、本体部12には、放電針ユニット13の保持機構201が設けられている。
【0037】
図1(a)に示すように、保持機構201は、2つのスライドホルダ202を備えてなる。スライドホルダ202は、矩形状の天板203と、当該天板203に直交する2つの側壁204を備えてなる。これら側壁204は、天板203の延びる方向に沿う2つの長側縁に設けられるとともに、天板203の延びる方向に直交する幅方向において互いに対向している。2つの側壁204の対向間隔は、放電針ユニット13の基台21の幅と同じ程度に設定されている。また、2つの側壁204の先端縁には、それぞれ矩形板状の係合部材205が形成されている。これら係合部材205は、それぞれ天板203に対して平行をなして対向している。スライドホルダ202の内形形状は、基台21の端部の外形形状に対応している。
【0038】
これらスライドホルダ202は、2つの側壁204を下方へ向けて、基台21の両端側から中央へ向けてスライドさせるかたちで装着される。図4に示すように、2つの係合部材205は、基台21と本体部12の上面との間に形成される隙間に介在される。
【0039】
図3に示されるように、スライドホルダ202は、本体部12に取り付けられた放電針ユニット13の基台21の端部を内包するかたちで、かつ各放電針23の並ぶ方向に沿って往復摺動する。具体的には、スライドホルダ202は、図3に実線で示される第1の位置P1と、同じく2点鎖線で示す第2の位置P2との間を変位する。
【0040】
第1の位置P1は、放電針ユニット13が本体部12に対して固定的に保持された保持状態となる位置である。すなわち、スライドホルダ202の係合部材205が、本体部12の一部分である係合部材32の突部34に対して、放電針ユニット13の取り外し方向において係合する。このため、放電針23の引き抜き方向へ放電針ユニット13が変位することが規制される。
【0041】
第2の位置P2は、放電針ユニット13の保持状態が解除されて非保持状態となる位置である。すなわち、スライドホルダ202の係合部材205は、本体部12側の係合部材32の突部34から外れた位置に存在する。また、当該係合部材205は、図1(a)に示されるように、放電針ユニット13に対しても外れた位置に存在する。すなわち、放電針ユニット13の取り外し方向において、当該放電針ユニット13に干渉するものは存在しない。このため、放電針23を本体部12から取り外すことができる。
【0042】
また、第1の位置P1は、第1の分岐流路101の気密状態が確保される状態でもある。すなわち、図3の上部に拡大して示されるように、2つの係合部材205は、係合部材32の斜面35に当接可能とされている。このため、スライドホルダ202の第2の位置P2から第1の位置P1への変位に伴い、係合部材205の先端部は斜面35に当接する。さらにスライドホルダ202が第2の位置P2へ向けて変位すると、係合部材205の先端部は斜面35に案内されつつ、本体部12側へ変位する。これに伴い、放電針ユニット13は、図7に二点鎖線で示されるように徐々に本体部12側へ変位し、保持部22に装着されたパッキン27は、基台21を介して本体部12の上面に押し付けられるかたちで徐々に圧縮される。やがて係合部材205は斜面35を乗り越えて、当該係合部材205の上面は突部34の下面に対して摺接しつつ第1の位置P1に至る。この状態において、パッキン27は、十分に圧縮されるので、各第1の分岐流路101の気密状態が確保される。また、パッキン27は、基台21を介して放電針ユニット13の挿入方向へ向けて均等に圧縮される。このため、各挿入口における放電針ユニットの挿入方向と反対側の開口端部は、片寄りなく均等に密封される。
【0043】
また、スライドホルダ202が第2の位置P2に維持されている状態で、放電針ユニット13が本体部12に取り付けられた場合、前述したように、基台21の下面が各パッキン27を介して本体部12の上面に当接した状態となる。この状態において、各円錐コイルばね24の大径部26は、電極51の上面に対して弾性的に接触した状態に維持される。すなわち、放電針ユニット13は、各円錐コイルばね24を介して、電極51に支持された状態に維持されるともいえる。そして、この状態で、スライドホルダ202が第2の位置P2から第1の位置P1へ変位したときには、パッキン27が圧縮される分だけ、放電針ユニット13は、各円錐コイルばね24の弾性力に抗して各放電針23の挿入方向へ変位する。すなわち、各円錐コイルばね24は、電極51に押し付けられることにより圧縮される。このため、各円錐コイルばね24の電極51に対する接触圧が好適に確保される。
【0044】
<放電針ユニットの着脱作業>
つぎに、放電針ユニットの着脱作業について説明する。放電針ユニット13は、放電針23をメンテナンスする際などにおいて、本体部12から取り外される。なお、本体部12は、設置対象に固定された状態に保持される。
【0045】
さて、放電針ユニット13を取り外す際には、図1(b)に示される第1の位置P1に保持されているスライドホルダ202を、図1(a)に示される第2の位置P2までスライドさせる。これにより、放電針ユニット13を、上方へ引き抜くかたちで本体部12から取り外すことができる。
【0046】
メンテナンスの完了後、再び放電針ユニット13を本体部12に対して上方から装着する。そして、スライドホルダ202を第2の位置P2から第1の位置P1へスライドさせることにより、放電針ユニット13は本体部12に対して固定的に保持された状態となる。同時に、各挿入口31の気密も確保される。
【0047】
以上で、放電針ユニット13の着脱作業は完了となる。放電針ユニット13を交換する際も同様である。
このように、本例では、放電針ユニット13の着脱方向がイオンの放出方向(図1(a),(b)中の下方)と反対側とされている。このため、本体部12のイオン放出口42を、ワーク(帯電体)に近づけて使用する場合であれ、放電針ユニット13の着脱に際してワークが邪魔になることはなく、放電針ユニット13の着脱作業を円滑に行うことができる。
【0048】
<除電装置の動作>
つぎに、前述のように構成した除電装置の動作を説明する。
電極51および各円錐コイルばね24を介して各放電針23に高圧電源からの高電圧(交流)が印加されると、各放電針23の先端付近にコロナ放電が発生して各放電針23の周囲の空気がイオン化される。本例では、各放電針23に対して交流電圧を印加することによりコロナ放電を発生させる交流方式が採用されているので、プラスおよびマイナスのイオンが交互に生成される。
【0049】
コロナ放電により各放電針23の周囲に生成されるイオンは、空気流路100から第1の分岐流路101に分流して各放電針23の周囲を通過するシースエアとともに、各イオン放出口42から外部に放出される。各放電針23の周囲にシースエアを流すことにより、各放電針23における異物(絶縁体)の析出、あるいは異物の付着などが抑制される。また、第1の分岐流路101の上流側に設けられた小孔41aにより、シースエアの圧力は、空気流路100に供給される空気圧力よりも小さくされる。このため、イオンの発生効率が維持される。
【0050】
そして、各イオン放出口42から放出されるイオンの周囲には、空気流路100から第2の分岐流路102に分流して各送風口44から放出されるアシストエアが発生する。このアシストエアにより、各イオン放出口42から放出されるイオンがより遠くまで運ばれる。当該イオンが除電対象に供給されることにより、当該対象の電荷が中和されて静電気が除去される。
【0051】
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)放電針ユニット13を本体部12に取り付ける際、各放電針23は電極51の各貫通孔52を非接触状態で貫通する一方で、各放電針23に装着された円錐コイルばね24の大径部26は電極51に対して弾性的に接触する。各円錐コイルばね24の小径部25は各放電針23に対して接触状態に維持されているので、各放電針23と電極51との間の導通は、各円錐コイルばね24を介して好適に確保される。
【0052】
また、電極51の各貫通孔52の内径は、各放電針23の外径よりも大きく設定することができる。このため、各放電針23を電極51の各貫通孔52に挿入するに際して、各貫通孔52の内径と各放電針23の外径との差の分だけ、各放電針23の各貫通孔52に対する位置精度の影響を受けにくくなる。また、各貫通孔52の内径を大きくできる分、各放電針23の先端と電極51における各貫通孔52の周縁部などとの干渉の発生が抑制される。したがって、複数の放電針23を一括して、かつ円滑に本体部12に取り付けることが可能となる。
【0053】
(2)本体部12に対する放電針ユニット13の着脱方向を、イオンの放出方向と反対側とした。このため、イオンの放出方向と反対側のスペースを、放電針ユニット13の着脱用のスペースとして有効に利用することができる。すなわち、除電装置11の設置スペースを確保することができれば、放電針ユニット13の着脱用のスペースも確保することが可能であるため、除電装置11の設置の自由度が高められる。
【0054】
(3)本体部12のイオン放出口42を、ワーク(帯電体)に近づけて使用したい場合もある。この点、本例では、放電針ユニット13の着脱方向がイオンの放出と反対側とされていることから、放電針ユニット13の着脱に際してワークが邪魔になることはなく、放電針ユニット13の着脱を簡単に行うことができる。
【0055】
(4)放電針ユニット13を本体部12に取り付けるだけで、各放電針23は電極51に対して導通状態に接続される。このため、放電針ユニット13の本体部12への装着と、各放電針23と電極51との接続作業を別々に行う必要がないので、放電針ユニット13の装着作業が簡単になる。
【0056】
(5)基台21が本体部12に当接する位置まで放電針23を挿入するだけで、放電針23の挿入深さが位置決めされる。このため、放電針ユニット13の取り付け作業が簡単になる。
【0057】
(6)本体部12の一部分である係合部材32に対して放電針ユニット13の取り外し方向において係合する第1の位置P1と、係合部材205に対する係合が解除される第2の位置P2との間を変位するスライドホルダ202を設けた。このため、工具などを使用することなく、スライドホルダ202の操作をするだけで、放電針ユニット13の着脱が可能となる。
【0058】
また、放電針ユニット13を本体部12に取り付けたとき、放電針ユニット13は、各円錐コイルばね24を介して電極51に支持された状態に維持される。そしてこの状態で、スライドホルダ202が第2の位置P2から第1の位置P1へ変位したとき、パッキン27が圧縮される分だけ、放電針ユニット13は、各円錐コイルばね24の弾性力に抗して各放電針23の挿入方向へ変位する。すなわち、各円錐コイルばね24は、電極51に押し付けられることにより圧縮される。このため、各円錐コイルばね24の電極51に対する接触圧が好適に確保される。したがって、各放電針23と電極51との導通を、より好適に得ることができる。
【0059】
(7)本体部12の各挿入口31の密閉装置として、放電針ユニット13の挿入方向において圧縮されるパッキン27を採用することにより、各放電針23(あるいは保持部22)と各挿入口31との同軸度のずれが、密封状態に大きく影響を及ぼすことはない。したがって、複数の放電針23を一括して本体部12に取り付ける際に、各放電針23とそれらの挿入口31との同軸度に関わらず、放電針ユニット13と本体部12との間の気密を確保することができる。
【0060】
(8)各挿入口31はそれぞれ複数のパッキン27により個別に密封するようにした。ここで、各保持部22を含む単一のパッキンを採用することも可能であるところ、当該パッキンはその面積が大きくなるほど、厚み誤差が大きくなる傾向がある。この点、本例によれば、各保持部22に対応して複数のパッキン27が設けられる。単一のパッキンで各挿入口31を密封する場合に比べて、各パッキン27の面積は小さなものとなり、各パッキン27の厚み誤差も低減される。各パッキン27の厚みは均一となるので、密封状態を得るために必要とされるパッキン27の圧縮量も均一なものとなる。したがって、本体部12との間で各パッキン27を挟み込む保持機構201の設計も簡単になる。
【0061】
(9)空気流路100に導入される圧縮空気は、第1および第2の分岐流路101,102を介して、イオン放出口42および送風口44にそれぞれ導かれる。このため、外部から本体部12への圧縮空気の供給ラインは1つだけ設ければよい。外部から本体部12への圧縮空気の供給ラインを、イオン放出口42および送風口44にそれぞれ独立して連通する2系統とすることも考えられるものの、この場合に比べて、本体部12、ひいては除電装置11の体格の小型化が図られる。
【0062】
(10)また、第1の分岐流路101内の空気圧力は、外部からの圧縮空気が導入される空気流路100内の空気圧力よりも小さくなる。このため、すべての流路内の空気圧力を同一とする場合に比べて、放電針ユニット13(正確には、各保持部22)に対して印加される空気圧力も小さなものとなる。したがって、各パッキン27の圧縮量を低減させることが可能になる。この場合であれ、各挿入口31の密閉状態は、好適に維持される。また、何らかの原因により、スライドホルダ202による保持状態が解除された場合であれ、放電針ユニット13は本体部12から脱落しにくくなる。さらに、パッキン27を本体部12側に押さえ付ける力も低減可能であることから、放電針ユニット13の保持機構として、簡易なスライド式の構成を採用可能となる。
【0063】
(11)スライドホルダ202が第2の位置P2から第1の位置P1へスライドさせるだけで、各パッキン27は圧縮されて各挿入口31が密閉された状態となる。このため、放電針ユニット13の取付け作業が簡単になる。また、パッキン27は、基台21を介して放電針ユニット13の挿入方向へ向けて均等に圧縮されるため、各挿入口31における放電針ユニット13の挿入方向と反対側の開口端部は、片寄りなく均等に密封される。
【0064】
<他の実施の形態>
なお、前記実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・本例では、各放電針23は直線状に並べて設けたが、各放電針23の配置態様は適宜変更してもよい。たとえば、各放電針23は、複数列に並べてもよいし、千鳥状に並べるなどしてもよい。
【0065】
・本例では、本体部12の内部に圧縮空気を供給するようにしたが、窒素ガスなどの他の気体を供給するようにしてもよい。
・円錐コイルばね24の放電針23に対する取付位置、あるいは長さは、適宜変更してもよい。スライドホルダ202をアンロック位置である第2の位置P2からロック位置である第1の位置P1へ変位させたとき、パッキン27の圧縮に伴い、円錐コイルばね24が徐々に圧縮されればよい。
【0066】
・除電装置11の設置場所、あるいは製品仕様などにより、必要とされる放電針の数は様々である。この場合、必要とされる放電針数に応じた専用の放電針ユニット13および本体部12を用意することも考えられるものの、管理コストなどの観点から、部品の種類は少ないほうが好ましい。この観点に基づき、つぎのような構成を採用してもよい。すなわち、図8に示すように、放電針ユニット13が有する放電針23の個数の自然数倍の挿入口を本体部12に形成する。そして、当該自然数個の放電針ユニット13をそれぞれ本体部12に装着する。この構成によれば、要求される放電針23の数が、放電針ユニット13が有する放電針23の個数の自然数倍であれば、複数個の放電針ユニット13を組み合わせることにより、対応可能である。たとえば、放電針ユニット13の放電針を4本、必要とされる放電針23の数を8本とした場合には、8つの挿入口31を有する本体部12を用意し、この本体部12に対して2つの放電針ユニット13を取り付ければよい。このように、必要とされる放電針数に応じた専用の放電針ユニット13を用意する必要がないので、部品の管理コストなどの削減に寄与する。
【0067】
また、放電針23の個数が異なる複数種類の放電針ユニットを組み合わせて使用することにより、放電針ユニットの種類を低減することも可能である。たとえば、必要とされる放電針23の数を6本とした場合、6つの挿入口31を有する本体部12を用意し、この本体部12に対して、4本の放電針23を有する放電針ユニット、および2本の放電針23を有する放電針ユニットをそれぞれ取り付ければよい。必要とされる放電針23の個数に応じた全種類の放電針ユニットを用意する必要がないので、その分、部品の管理コストなどの削減に寄与する。
【0068】
さらに、この変形例は、つぎのような場合に、特に有効である。すなわち、多数の放電針23を列状に設ける場合には、必要とされる放電針23の数が増大するほど、放電針ユニット13は長大化する。放電針23の貫通孔52に対する位置精度の誤差も累積的に増大する。この点、本変形例のように、複数の放電針ユニット13を組み合わせて使用することにより、放電針23の貫通孔52に対する位置精度の誤差を抑えることが可能である。このため、各放電針ユニット13を本体部12に対して円滑に装着することができる。
【0069】
・本例では、複数個のパッキン27を設け、本体部12の各挿入口31を個別に密封するようにしたが、図9(a)に示すように、複数の保持部22の全体を囲む平面状のパッキン301により一括して本体部12の各挿入口31を密封するようにしてもよい。このようにすれば、単一のパッキンを用意すればよいので、部品点数が低減する。また、図9(b)に示すように、基台21の下面に対して、複数の保持部22の全体を囲む環状のパッキン302を設けてもよい。このようにしても、スライドホルダ202を第2の位置P2から第1の位置P1へスライドさせることにより、パッキン302は本体部12の上面に対して押し付けられる態様で圧縮される。その結果、本体部12と基台21との間の気密、ひいては各挿入口31の内外の気密が確保される。なお、パッキン302は、Oリングに置換することも可能である。放電針ユニット13の本体部12に対する装着方向において、Oリングが圧縮されることにより、各挿入口31の気密を確保することができる。
【0070】
・本例では、パッキン27,301,302を放電針ユニット13に設けたが、本体部12の上面に設けてもよい。
・本例では、空気流路100に供給された圧縮空気を第1および第2の分岐流路101,102に分岐させたが、シースエアおよびアシストエアの供給経路をそれぞれ独立して設けてもよい。すなわち、図10に示すように、本体部12の内部には、第1および第2の空気流路401,402を設ける。第1の空気流路401は、外部から導入される空気を各放電針23の周囲を通過させる態様でイオン放出口42に導く。第2の空気流路402は、外部から導入される空気を各イオン放出口42の周囲に形成される送風口44に導く。ただし、第1の空気流路401に供給される空気圧力は、第2の空気流路402に供給される空気の圧力よりも小さく設定する。
【0071】
なお、これら第1および第2の空気流路401,402は、たとえば空気流路100の内部を、各送風穴43が開口する部分と、各筒部41の小孔41aが開口する部分とに区画することによって形成することも可能である。そして、これら区画された部分に対して個別に圧縮空気を供給する。このようにした場合には、第1および第2の空気流路401,402に供給する圧縮空気の圧力を同一とした場合であれ、各放電針23の周囲には、小孔41aにより圧力が低減された空気が供給される。
【0072】
・本例において、スライドホルダ202は、本体部12の輪郭の範囲内で、第1の位置P1と第2の位置P2との間を変位するようにしてもよい。たとえば、図1(a)に示されるように、第1の位置P1から第2の位置P2に変位したとき、本体部12の両端部からはみ出さない程度に、スライドホルダ202の長さを短縮する。このようにすれば、スライドホルダ202が逃げるスペースを確保する必要がないので、除電装置11の設置スペースが節約される。
【0073】
・本例では、各放電針23と電極51とを接続する導通部材として、円錐コイルばね24を採用したが、たとえば板ばねなどの弾性部材を採用してもよい。また、円錐コイルばねに代えて、鼓形コイルばねを採用してもよい。鼓形コイルばねは、中央がくびれた鼓形のコイルばねである。すなわち、当該鼓形コイルばねを採用する場合、コイルばねの中央部に小径部25を、同じく両端にそれぞれ大径部26を形成することにより、全体として鼓形とする。
【0074】
・本例では、除電装置11には、イオンを発生させる方式として交流方式を採用したが、直流方式を採用してもよい。直流方式は、放電針23に直流電圧を印加してコロナ放電を発生させて、プラスまたはマイナスのいずれかのイオンのみを発生させる方式である。
【0075】
・各保持部22を省略してもよい。すなわち、基台21の下面に対して、直接的に各放電針23を設ける。このようにすれば、挿入口31に保持部22を挿入する場合に比べて、挿入口31の開口面積を小さくすることが可能となる。挿入口31の開口端部の密封も簡単になる。なお、この場合、各放電針23と各筒部41の内周面との間の隙間(各挿入口31)は、第1の分岐流路101を構成する。
【0076】
<他の技術的思想>
次に、前記実施の形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)基台に対して複数の放電針が設けられてなる放電針ユニットと、イオンの放出口が形成された第1の面と、前記複数の放電針がそれぞれ挿入される複数の挿入口が形成された第2の面とが互いに反対側に設けられてなる本体部と、を備え、前記放電針ユニットは、前記複数の放電針を前記複数の挿入口にそれぞれ挿入する態様で前記第2の面に対して着脱可能に取り付けられてなる除電装置。この構成によれば、本体部に設けられるイオンの吹出口を、ワーク(帯電体)に近づけて使用したい場合もある。本発明によれば、放電針ユニットの着脱方向がイオンの吹き出し方向と反対側とされていることから、ワークが邪魔になることはなく、放電針ユニットの着脱を簡単に行うことができる。
【0077】
(ロ)請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の除電装置において、前記第2の面には、前記放電針ユニットの放電針の個数の自然数倍の挿入口を形成したうえで、当該自然数と同数の放電針ユニットが取り付けられてなる除電装置。この構成によれば、必要とされる放電針数に応じた専用の放電針ユニットを用意する必要がないので、部品の管理コストなどを削減可能となる。
【符号の説明】
【0078】
11…除電装置、12…本体部、13…放電針ユニット、21…基台、23…放電針、24…円錐コイルばね、25…小径部、26…大径部、31…挿入口、42…イオン放出口、51…電極、52…貫通孔、202…スライドホルダ、P1…第1の位置、P2…第2の位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に対して複数の放電針が設けられてなる放電針ユニットと、
イオンの放出口が形成された第1の面と、前記複数の放電針がそれぞれ挿入される複数の挿入口が形成された第2の面とが互いに反対側に設けられてなる本体部と、を備え、
前記放電針ユニットは、前記各放電針を前記各挿入口に挿入する態様で前記第2の面に対して着脱可能に設ける一方で、前記本体部の内部には、前記各挿入口に対応する複数の貫通孔が形成された電極を設け、
前記放電針ユニットを前記第2の面に取り付けたとき、前記各放電針は、前記電極の各貫通孔を非接触状態で貫通するとともに、当該各放電針に設けられた導通部材を介して前記電極に対して導通状態に接続され、
前記導通部材として、前記各放電針に挿通されるコイルばねを採用し、当該各コイルばねは、前記各放電針に対して接触状態に維持される小径部、および前記各放電針に対して非接触状態かつ前記電極に対して弾性的に接触した状態に維持される大径部を備えてなる除電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の除電装置において、
前記基台は板状に形成されるとともに、当該基台の前記本体部側の面が前記第2の面に当接することにより前記複数の放電針の前記挿入口に対する挿入深さが決定される除電装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の除電装置において、
前記第2の面に取り付けられた前記放電針ユニットの一部分を内包するかたちで、かつ前記複数の放電針の並ぶ方向に沿って往復動するスライドホルダを設け、
前記スライドホルダは、前記本体部の一部分に対して前記放電針ユニットの取り外し方向において係合する第1の位置と、前記一部分に対する係合が解除される第2の位置との間を変位可能とし、
前記放電針ユニットを前記第2の面に取り付けたとき、前記放電針ユニットは、前記各コイルばねを介して前記電極に支持された状態に維持されるとともに、前記スライドホルダが前記第2の位置から第1の位置へ変位したとき、前記各コイルばねの弾性力に抗して前記各放電針の挿入方向へ変位する除電装置。
【請求項4】
請求項3に記載の除電装置において、
前記スライドホルダは、前記本体部の輪郭の範囲内で、前記第1の位置と前記第2の位置との間を変位する除電装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の除電装置において、複数個の前記放電針ユニットを備えてなる除電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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