陰イオン性多糖類を含むインサイチュゲルでの生理学的な薬剤の送達
薬学的に活性な物質を、液体、固体および粉末の形態で、動物患者の組織、体液、および粘膜表面に送達するためのインサイチュゲル化組成物であって、陰イオン性多糖類および特に、ゲル化剤としての低メトキシペクチン、調製方法、ならびに動物の組織および粘膜表面への薬学的に活性な薬剤、特にワクチン抗原の送達および徐放のためのインサイチュゲル化組成物の使用方法、を包含する。本発明は、ヒトを含む動物の組織または体液への生理学的に活性な薬剤の送達に関する。本発明は、ペクチンを含む多糖類を含む薬学的組成物を作製および投与する方法に関し、その薬学的組成物は、上記の組織または体液と接触する場合に、生理学的に活性な薬剤を含む「インサイチュ」ゲルを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への参照)
本出願は、2003年、8月29日に出願された米国特許出願第10/652,622号の一部継続であり、そして、この出願からの優先権を主張し、この親出願の全開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
持続性薬物放出または制御された薬物放出を達成するための種々のポリマーベースの薬物送達システムが、記載されてきた(非特許文献1およびその中の参考文献を参照のこと)。これらのシステムの多くの目標は、代表的に、薬物放出の期間を長くすること、薬物の生体利用効率を改良すること、ならびに/または患者のコンプライアンスおよび快適さを改良する注射可能でない薬物送達システムを提供することのうちの1つ以上であった。合成または天然のいずれかのポリマーは、そのポリマーの性質に依存して、種々の機構によって種々の薬剤の送達を提供する。
【0003】
上記のポリマーベースのシステムは、例えば、液体、懸濁液、乳濁液、微粒子および/またはミクロスフェアを含む粉末、フィルム、あるいは錠剤として様々に処方されている。その組成物は、注射、局所投与、あるいは眼、膣、肛門、胃もしくは腸、口腔および鼻腔の粘膜表面への投与、または肺への投与を含む、種々の経路または方法によって投与されている。そのポリマーベースのシステムは、治療剤および予防剤を含む種々の生理学的に活性な薬剤を送達するために使用されており、これらの治療剤および予防剤としては、小分子ベースまたはタンパク質ベースの薬物、核酸、多糖類、脂肪酸およびエステル、細胞およびそのフラグメント、ウイルス、ならびに感染症の予防のためのワクチンが挙げられる。
【0004】
多くの先行技術の薬物送達のためのポリマーベースのシステムにおいて、患者に対する投与の前に、薬物および/または他の薬理学的に活性な物質は、水を吸収し得るポリマーまたはゲル中に包まれるが、それらは実質的に水に不溶性である。ゲルは、ポリマーネットワークの細孔内に可逆的に吸収される液体(すなわち、不連続の液相)を含有する、ポリマー分子の多孔性の三次元ネットワークを含む固体または変形可能なゼリー様の半固体である。ゲルはしばしば、大量の液体および/または優勢な量の液体を含有および/または吸収し得、その液体はしばしば、水または生物学的液体を含む別の液体であるが、それにもかかわらず、ゲル状のポリマー分子のネットワークは、バルク液体または生物学的液体において実質的に不溶性である。その個々のポリマー分子は、ポリマーの性質に依存して、種々の手段において不溶性のネットワークを形成するために架橋され得る。そのポリマー分子間の架橋は、共有結合、配位結合、またはイオン性相互作用、またはさらに弱い分子間力(例えば水素結合)から生じ得る。
【0005】
種々の合成ポリマーおよび天然ポリマーもまた、ポリマー(例えば、デンプンおよび改変されたセルロース、ゲラン、キトサン、ヒアルロン酸、ペクチンなど)を使用する薬物送達の処方物において使用されている。例えば、特許文献1は、ペクチンを含む種々の水溶性ポリマーおよび水に不溶性のポリマーを含む、鼻への投与のための種々の粉末状の薬学的組成物を開示しているが、カルシウム架橋されたゲルを形成し得る低メトキシルペクチンの使用は、記載も示唆もされていない。特許文献2および特許文献3は、最近、医薬、ペプチド、および抗原性ワクチンを鼻表面へ送達するための直径10ミクロン未満の生物付着性のミクロスフェアを処方する際に、ペクチンを含む、ポリマーの長いリストの使用を開示し、そして、その組成物が、インサイチュでゲルであり得るポリマー物質と一緒に処方され得ることを示唆しているが、インサイチュゲル化のための低メトキシルペクチンの使用を教示も示唆もしていない。
【0006】
「インサイチュ」ゲル化は、いくつかの先行技術の薬学的薬物送達システムおよび組成物において記載されており、粘膜表面、組織、傷、腸管外の腔(parental cavity)などへの適用によって組成物または処方物が患者に投与された後に、適用部位でゲル形成することに関する。「インサイチュ」ゲル化組成物は、組織または体液と接触した後のみ、生物付着性ゲルを形成する。インサイチュゲル化組成物のポリマー分子自体は、代表的に、生物学的部位への適用前に水に不溶性のゲルの形態であるために、生物学的適用部位への適用前に、全く架橋されないか、あるいは十分に架橋されないが、しかし、生物学的部位への適用の際、または適用直後、ポリマー分子の多孔性のネットワーク構造内で水および/または生物学的液体を含む架橋されたポリマーゲルネットワークの形成を生じるために、ポリマー架橋が、代表的に起こる。一度、インサイチュゲルが形成されると、少なくとも通常の生理学的条件下で、実質的および/または実際上、水または生物学的液体に不溶性である。水および/または体液の吸収は、通常、インサイチュゲル化のプロセスと同時に起こるが、しかし、水または体液の単なる吸収よりむしろ、その部位へ投与した際の不溶性ポリマーネットワークの形成が、インサイチュゲル化を定義する主要な現象である。
【0007】
インサイチュゲル化し得るポリマーは、以前に記載されている。それらとしては、Poloxamer、Pluronics(非特許文献2)、種々のコポリマー(例えば、PEO−PLLAおよびPEG−PLGA−PEG(非特許文献3;非特許文献4))、セルロースアセトフタレートラテックス(非特許文献5)、Gelrite(非特許文献6)、Carbopol、およびMatrigelが挙げられる。このゲル形成は、温度変化(Poloxamer、Pluronics、PEO−PLLAジブロックコポリマー、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、およびMatrigel)、pH変化(セルロースアセトフタレート(acetophalate)ラテックスおよびCarbopol)、あるいは一価カチオンまたは二価カチオンとの反応(Gelriteおよび/またはアルギン酸塩)によって誘導される。しかし、それらのほとんどは、インサイチュゲル形成のための高いポリマー濃度(>20%)(Poloxamer、PEO−PLLAジブロックコポリマー、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、セルロースおよびアセトフタレートラテックス)を必要とする。熱ゲル化ポリマー(Poloxamer、Pluronics、PEO−PLLAジブロックコポリマー、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、およびMatrigel)はまた、包装または貯蔵の間の温度変化に起因して、投与前にゲル化するという不利益を有する。不運なことに、これらのポリマーのいくつかは、生分解性ではない(例えば、Poloxamer)か、または投与前(PEO−PLLAジブロックコポリマー)もしくは処方の間(PluronicsおよびGelrite)に温度調整を必要とする。CarbopolおよびPluronicの混合物からなる眼用インサイチュゲル化薬物送達の処方物が、いずれか一方からなる処方物より効果的であることが見出された。しかし、Pluronicは、14%で使用される(特許文献7)。従って、そのようなポリマーは、ヒトおよび動物における医療適用にはあまり適していない。さらに、これらのポリマーの多くは、ヒドロゲル(粘性であるがなお流動性の溶液である)のみを形成する(例えば、PoloxamerおよびPluronics)。
【0008】
インサイチュゲル化組成物は、特許文献4に開示されており、この特許文献4は、薬物、フィルムを形成するポリマーおよびゲルを形成するイオン性多糖類を含む液体組成物を開示している。これらの組成物には、別々に適用される2つの成分を使用し、第1の成分は、その本質的部分を形成するのではない二価または多価のカチオン架橋性の溶液であり、それは意図される生物学的適用部位に適用される。別の工程(第1の成分の溶液の適用前、適用後、または適用と同時に起こり得る)において、薬物、フィルムを形成するポリマーおよびイオン性多糖類(例えば、アルギン酸塩)を含む第2の液体成分の溶液は、意図される部位に別々に適用され、生物学的適用部位でのイオン性多糖類と二価または多価のカチオンとの間の化学的架橋反応の結果によって、架橋されて不溶性で生物付着性のインサイチュゲルを形成する。上記の特許文献4は、ゲルを形成するイオン性多糖類というよりむしろ、多くのフィルムを形成するポリマーの1つとしてペクチンを記載している。
【0009】
ペクチンは、ポリマー内のガラクツロン酸残基にカルボン酸側鎖を有する、植物細胞壁から単離される生分解性ヘテロ多糖類である。調べられている全ての野菜および果物は、ペクチンを含有するようである。テンサイ、ヒマワリ、ジャガイモ、およびグレープフルーツ由来のペクチンは、ただ少しだけの他の周知の例である。実質的に全ての天然ペクチンにおいて、ペクチンのカルボン酸基の50%より多くは、メチルエステルの形態で存在し、そしてそのようなペクチンは、「高メトキシル」(HM)ペクチンと呼ばれる。50%未満のカルボン酸基がメチルエステル化されるペクチン(すなわち、低メトキシル(LM)ペクチン)は、天然にまれであり、そして代表的に、天然のHMペクチンから合成プロセスによって調製される。LMペクチンが、二価または多価の金属イオン(例えばカルシウムイオン)での配位/架橋によってゲルを形成し得ることは、当該分野において公知である。ペクチンの化学および生物学は、広範囲に調べられている(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)。
【0010】
特許文献5は、最近、粘膜表面と接触した際にゲル化するように適合された液体の薬学的処方物におけるLMペクチンの使用を開示した。特許文献6は、勃起障害の処置のために適切な薬物の鼻への投与のための液体処方物および固体処方物中の、ペクチンを含む広範囲の種々のポリマーの使用を開示した。特許文献7、特許文献8、特許文献9および特許文献10の記載全体は、インサイチュでゲル化する薬学的組成物の処方物、そのような組成物を調製するために使用されるペクチン、ならびに動物およびヒトに対する組成物の投与に関するそれらの教示のために、これらの特許文献の全体が本明細書中に参考として援用される。
【0011】
非特許文献11は、凍結乾燥された抗原を、4mmのナイロンボールとブレンド(blend)し、そしてこれを滑石粉(炭酸カルシウム)と混合(mix)することによって作製される、動物に対する投与のための牛疫に対する鼻の粉末ワクチンを記載している。Maaら(特許文献11)は、アルミニウム塩とこのアルミニウム塩に吸収された抗原、糖類、アミノ酸、および多糖類を含み得るコロイド物質を含むゲルを形成する粉末ワクチン組成物が、経皮送達によって患者に投与されることを記載している。
【0012】
5ミクロン未満の小さい微粒子を含む粉末もまた、深部肺への肺用の薬物送達のために使用されている。ラクトース粒子は、そのような肺用の薬物送達適用のための微粉化された粒子の薬物と物理的にブレンドするための粗粒子のバルクキャリアとして使用されている(非特許文献12)。LiCalsiら(非特許文献13)は、凍結乾燥された生きた麻疹の肺用の粉末ワクチンを調製した。上記の引用された先行技術において、その薬物または抗原は、キャリア粒子と物理的に混合されるか、またはキャリア粒子の表面上に分散され、そしてラクトースマトリックス全体に分散されない。
【0013】
最近、Illumらは、2つの論文(すなわち、非特許文献14および非特許文献15)において、薬物およびワクチンの鼻への送達の技術水準を概説した。両方の論文は、鼻へのワクチンおよび/または薬物の送達のための粉末を処方するために、ポリマー物質および/または高粘度の生物付着性物質の使用を議論しているが、いずれの論文も、これらの鼻の粉末ワクチン組成物が、中程度の量から多量の、より高い水溶性の賦形剤および/または希釈剤を含むことを開示も示唆もしていない。上記の参照された特許および論文の説明全ては、鼻の粉末の薬物送達組成物の処方物、ならびに動物およびヒトに対する組成物の投与方法に関するそれらの教示のために、上記の参照された特許および論文の全体が参考として本明細書中に援用される。
【0014】
薬物および関連した生物薬剤を送達するための生物工学および関連方法は、ここ数年以上、大きな研究の対象であるが、しかし、これらの薬剤(特に生物薬剤)の送達の分野では進歩が限られてきた。生物薬剤(例えば、ペプチド、タンパク質、核酸、ワクチン、抗原、ならびに生物工学処理した細胞、微生物およびウイルス)は、貯蔵中および適用後の両方において不安定になる傾向がある。動物またはヒトの組織へのそのような薬剤の注射は、時々成功するが、しかし、特に頻繁な投与が必要とされる場合、しばしば経済的および美的に好ましくない。多くの生物薬剤、特に、より高い分子量およびより極性の薬剤(例えば、タンパク質、核酸、抗原など)は、過去において、経口的または粘膜に投与される場合、わずかに吸収されるにすぎない。鼻の粘膜表面への投与は、急速な代謝回転および鼻の粘膜液のクリアランスのために特に困難であり得、それは、およそ15分の半減期で鼻腔から除去されると考えられる。一度、動物に対する投与が成功すると、多くの生物薬剤は、それらが効果的に所望の機能を与え得る前に急速に分解されるので、分解からの保護および/または処方物の徐放の利益を必要とする。従って、多くの望まれてきたものの今のところ満たされていない必要性が、生物薬剤の投与の分野において存在する。
【0015】
このように、薬物送達および/または生物薬剤送達のためのより簡単で、改良されて、そして/またはより効果的なインサイチュゲル化組成物のための重大な必要性が存在する。
【特許文献1】米国特許第4,613,500号明細書
【特許文献2】米国特許第5,707,644号明細書
【特許文献3】米国特許第5,804,212号明細書
【特許文献4】米国特許第5,958,443号明細書
【特許文献5】米国特許第6,432,440号明細書
【特許文献6】米国特許第6,342,251号明細書
【特許文献7】米国特許第6,432,440号明細書
【特許文献8】米国特許第6,342,251号明細書
【特許文献9】米国特許第5,707,644号明細書
【特許文献10】米国特許第5,804,212号明細書
【特許文献11】米国特許公開番号2002/0120228
【非特許文献1】Langer、Nature、392(supplement)、1998、5−10
【非特許文献2】Vadnereら、Int.J.Pharm.、22、1984、207−218、1984
【非特許文献3】Jeongら、Nature 388、1997、860−862
【非特許文献4】Jeongら、J.Controlled Release 63、2000、155−163
【非特許文献5】Gurnyら、J.Controlled Release 1985、353−361
【非特許文献6】Rozierら、Int.J.Pham.57、1989、163−168
【非特許文献7】LinおよびSung、Journal of Controlled Release 69、2000、379−388
【非特許文献8】PilnikおよびVoragen、Advances in plant biochemistry and biotechnology 1、1992、219−270
【非特許文献9】Voragenら、In Food polysaccharides and their applications、Marcel Dekker、Inc.New York、1995、287−339
【非特許文献10】ScholsおよびVoragen、In Progress in Biotechnology 14.Pectins and pectinases、J.VisserおよびA.G.J.Voragen(版).Elsevier Science Publishers B.V.Amsterdam、1996、pp.3−20
【非特許文献11】Andersonら、Vaccine、19、2001、840−843
【非特許文献12】MalcomsonおよびEmbleton、Pharmacuetical Science and Technology Today、Vol 1(9)、1998、394−398
【非特許文献13】LiCalsiら、Vaccine、Vol 19、2001、2629−2636
【非特許文献14】Illumら、「Nasal Vaccines」in Advanced Drug Delivery Reviews、Vol.51、2001、pages 21−42
【非特許文献15】Illumら、「Nasal Drug Delivery:New Developments and Strategies」、Vol.7、No.23、2002年12月、www.drugdiscoverytoday.com
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
本明細書中に開示した発明は、ヒトを含む動物の組織または体液への生理学的に活性な薬剤の送達に関する。本発明は、ペクチンを含む多糖類を含む薬学的組成物を作製および投与する方法に関し、その薬学的組成物は、上記の組織または体液と接触する場合に、生理学的に活性な薬剤を含む「インサイチュ」ゲルを形成する。本発明の組成物は、液体、または固体、あるいは選択されるサイズの範囲のミクロスフェアもしくは微粒子を含む粉末の形態で上記の動物ならびにその組織および体液に投与され得る。
【0017】
本発明の組成物は、感受性の生物薬剤(ペプチド、タンパク質、抗原、ワクチン、核酸、ウイルス、細胞全体またはそのフラグメントを含む)の安定性および/または貯蔵期間を改良するために処方され得る。その組成物は、体液(例えば、血液または血清)と接触しここでゲルを形成するように、体組織、器官、または腔の中に注射によって投与され得るか、あるいはその組成物は、体の種々の粘膜表面(口/消化管、または鼻および肺の腔の粘膜表面を含む)に投与され得る。インサイチュゲルは、一度形成されると、放出を遅くおよび/または調節し得るか、あるいは生理学的に活性な薬剤の生体利用効率を改良する。いくつかの実施形態において、鼻腔に形成されるインサイチュゲルを介する生体分子(例えば、ワクチン、抗原、ペプチド、および/またはタンパク質)の投与は、そのような投与技術によって予測外に改良され得る。
【0018】
本発明のいくつかの局面において、組成物中の二価または多価のカチオンを含む固体またはゲルを誘導する薬剤および/または組成物の封入または同時投与は、改良されたゲル処方物を提供し得、そして制御された薬物放出を提供し得る。
【0019】
本発明の特徴および利点は、以下の本発明の実施形態によって説明され得る。
【0020】
1つの局面において、本発明は、生理学的に活性な薬剤を動物に投与するための固体薬学的組成物に関し、その固体薬学的組成物は、以下:
a)動物における生理反応を誘導するために有効な量の1種以上の生理学的に活性な薬剤;および
b)陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類、および
c)1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む1種以上のゲルを形成する固体多糖類組成物;
を含み、ここで、その薬学的組成物は、動物の組織または体液と接触する場合にゲルを形成する固体形態である。
【0021】
別の局面において、本発明は、生理学的に活性な薬剤を動物に投与するための固体薬学的組成物に関し、その薬学的組成物は、以下:
a)1種以上の生理学的に活性な薬剤;および
b)1種以上のペクチン質、
を含み、ここで、その薬学的組成物は、動物の組織または体液と接触する場合にゲルを形成し得る固体である。
【0022】
関連した局面において、本発明は、動物における生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための組成物を提供し、ここで、その組成物は、以下:
その組成物がその動物の組織または体液と接触する場合に、ゲルを形成するために有効な量において、
動物の体において生理反応を及ぼす量における1種以上の生理学的に活性な薬剤;ならびに
30%未満のメチル化の程度および1×105ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチン質
を含む乾燥形態である。
【0023】
本発明はまた、本発明の組成物を作製するための方法に関する。1つのそのような局面において、本発明は、動物における生理学的に活性な薬剤の徐放のための乾燥組成物を調製するための方法に関し、その方法は、キャリア中でペクチン質と生理学的に活性な薬剤との混合物を溶解して、溶液または分散を得る工程であって、ここで、そのペクチン質の量は、その動物のインサイチュでのゲルに対して効果的であり;そして、そのキャリア中の揮発性成分を除去して、その乾燥組成物を得る工程を包含する。
【0024】
本発明はまた、動物の組織または体液と接触する場合に、ゲル化する固体薬学的組成物または液体薬学的組成物を投与するための方法に関する。1つの局面において、本発明は、任意の順序または組み合わせにおいて、以下の成分、
a.動物における生理反応を誘導するために有効な量の1種以上の生理学的に活性な薬剤;
b.陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類、および
c.1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む1種以上のゲル誘導性固体組成物
を動物の組織または体液に投与し、その動物の組織または体液と接触しているゲルを形成する工程、を包含する方法に関する。
【0025】
すぐ上に記載した実施形態において、上記のa、bおよびcの成分は、任意の順序で投与され得、そして、そのaおよびbの成分は、固体または溶液のいずれかの形態であり得、そして、そのa、b、およびcの成分の任意の組み合わせまたは下位の組み合わせ(sub−combination)は、同時にまたは混合物において投与され得る。
【0026】
本発明はまた、動物の組織または体液と接触する場合にゲル化し得る液体組成物、ならびにその組成物をその組織および体液に適用するための方法に関する。1つのそのような局面において、本発明は、生理学的に活性な薬剤を動物に投与するための方法に関し、その方法は:
a)以下、
i)液体キャリア、
ii)その動物の組織または体液に適用する場合に、溶液または分散物をゲル化するために有効な量の、30%未満のメチル化の程度および4.6×105ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチン質、および
iii)1種以上の生理学的に活性な薬剤、
を含む溶液または分散物を提供する工程;ならびに
b)その溶液または分散物をその動物の組織または体液に適用して、その組織または体液と接触する生理学的に活性な薬剤を含むゲルを形成する工程、
を包含する。
【0027】
別の局面において、本発明は、粉末粒子を含む動物の鼻の粘膜への投与のためのワクチン組成物に関し、その粉末粒子は、以下:
a.動物における免疫応答を誘導するために有効な量の1種以上の抗原、および
b.約30%未満のメチル化の程度および約1×105ダルトンより大きい平均分子量を有する1種以上のペクチンまたはそれらの一価のカチオン塩;
のナノ分散物を含み、ここで、その粉末粒子は、直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得る。
【0028】
いくつかの他の局面において、本発明は、固体形態または液体形態のいずれかで、ワクチン組成物を動物またはヒトに投与するための方法に関し、その方法は、ワクチン組成物をその動物またはヒトの粘膜表面に投与する工程を包含する。1つのそのような局面において、本発明は、動物にワクチン接種するための方法に関し、その方法は、以下の工程:
a.直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得る粉末粒子を含む1種以上の粉末組成物を提供し、その粉末粒子が、以下
i)その組成物が、動物の粘膜表面と接触する場合に、ゲルを形成するために有効な量の、約30%未満のメチル化の程度および1×105ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチン質;
ii)その動物における能動免疫応答を誘導し得る量の、ペプチド、タンパク質、核酸、炭水化物、生細胞または微生物、微生物の死生物またはその一部、あるいはウイルスまたはその一部からなる群より選択される1種以上の抗原を含む、工程;および
b.その粉末をその動物の鼻の組織および/または鼻の液に投与し、その組織または体液と接触しているゲルを形成する工程、および
c.その動物における1種以上の抗原に対する能動免疫応答を誘導する工程
を包含する。
【0029】
上述の議論は、本発明のより適切な特徴のうちのいくつかの要旨を述べている。これらは、本発明のより顕著な特徴および適用のうちのいくつかの単なる例示であると解釈されるべきである。従って、本発明のより完全な理解は、以下の詳細な説明を参照することによって得られ得る。
【0030】
(詳細な説明)
本発明は、以下の本発明の種々の実施形態の詳細な説明およびその中に含まれる実施例および図面ならびにそれらの上記および以下の説明への参照によって、より容易に理解され得る。本発明の化合物、組成物、および/または方法が、開示および記載される前に、他に具体的に記載がなければ、本発明は、特定の出発物質、医薬品または特定の合成方法に限定されないことが理解され、従って、もちろん、それらは変更され得る。本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、限定されることを意図しないこともまた、理解される。
【0031】
(定義)
明細書および本明細書中に記載した様式において、以下の用語は、ここで定義される。
【0032】
「任意の」または「必要に応じて」とは、その後に記載される事象または状況が、起こってもよいか、または起こらなくてもよく、そしてその記載は、前記の事象または状況が起こる場合およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。例えば、用語「任意の賦形剤」とは、その賦形剤が、その組成物中に含まれてもよいか、または含まれなくてもよいことを意味する。
【0033】
明細書および添付の特許請求の範囲に使用されるように、単数の形態「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に指示しない場合、複数の対象を示すことに注意しなければならない。従って、例えば、「芳香族化合物」という言及は、芳香族化合物の混合物を含む。
【0034】
しばしば、範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして本明細書中に表される。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」の使用によって、値が近似として表される場合、その特定の値は、別の実施形態をなすと理解される。各々の範囲の終点は、他の終点に関係して、および他の終点に関係なく、の両方で有意であることがさらに理解される。
【0035】
「薬学的に受容可能」とは、生物学的でない物質か、またはそうでなければ望ましくない物質(すなわち、その物質は、臨床的に受容可能でない生物学的効果を引き起こすことも、その物質が含有される薬学的組成物の他のいずれかの成分とともに有害な様式で相互作用することもなく、関連した活性化合物とともに個体に投与され得る)を意味する。
【0036】
本明細書中で提供されるような化合物の、用語「有効な量」とは、所望の機能の所望の調節(例えば、遺伝子発現、免疫応答を誘導される抗原、タンパク質の機能性、または疾患状態)を提供するための化合物の十分な量を意味する。以下に示すように、必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢、および全身の状態、処置される疾患の重篤度、使用される特定の薬剤、その投与様式などに依存して、被験体から被験体へと変化する。従って、正確な「有効な量」を特定することは、可能ではない。しかし、適切な有効な量は、慣用的な実験のみを使用して、当業者によって決定され得る。
【0037】
本明細書中で定義および使用される用語としての「ゲル」とは、ネットワーク内に可逆的に吸収される液体を含有する有機ポリマー分子の多孔性の3次元ネットワークを含む弾性の固体または変形可能な半固体である。本発明の文脈において、他の液体物質もまた存在し得るが、可逆的に吸収される液体は、代表的に液体の水を含む。本発明の文脈において、ポリマー分子のネットワークは、代表的に、カルボキシル基または硫酸基を含む繰り返し単位を有する多糖類を含む(ペクチンを含む)。本発明の多くの実施形態において、隣接する多糖類の鎖のカルボキシル基または硫酸基のうちの少なくともいくつかは、二価または多価のカチオン(例えば、カルシウムまたはアルミニウム)に配位結合し、純粋な水において実質的に不溶性である、カチオンにより架橋される多糖類分子の3次元ネットワークを形成する。そのようなカチオンにより架橋されて水に不溶性のゲルの存在および正体は、代表的に、純粋で中性の水にゲルのサンプルを最初に数時間入れることによって、実験的に確認されて、それらが、その半固体の形態を維持して、実質的に水に不溶性であるが、金属カチオンのキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のナトリウム塩)の添加が、二価または多価の金属イオンの除去によって急速に溶解するようにゲルを誘導することを確認する。
【0038】
本明細書中で使用される場合、ゲル化とは、架橋されたポリマーネットワークの形成ならびに架橋されたポリマーネットワーク内への液体および/または他の物質の吸収を含むゲルの形成であって、バルク液体において実質的に不溶性である固体または半固体を形成することをいう。インサイチュゲルは、代表的に水を含む適切な前駆物質ポリマーおよび液体から形成され、次いで、架橋されたポリマーネットワークおよび組織または体液に由来する水を含む固体または半固体を形成するように、組織または体液、あるいは模倣された組織または体液と接触する際または接触後に架橋する。
【0039】
「ポリマー」は、代表的にモノマーと呼ばれる10個より多い二価または多価のサブユニットの共有結合によって形成される高分子である。本発明のポリマーは、比較的大きい数の異なる型のモノマーを含み得る天然ポリマー(例えば、タンパク質、核酸、多糖類など)、またはしばしば、1つもしくは少数の異なるモノマーのみを含む人工ポリマー(例えば、ポリアクリレート)の両方を含む。
【0040】
「ゲル誘導剤」とは、ポリマーまたはポリマー溶液にゲルを形成させることができる薬剤である。ゲル誘導薬剤はしばしば、ポリマー鎖間の架橋を誘導することによってゲルの形成を誘導し、それは、本発明の文脈において、同じまたは異なる多糖類分子のカルボキシル置換基または硫酸置換基を架橋し得る。
【0041】
「イオン性ポリマー」とは、イオン化されるか、または容易にイオン化され得る官能基(例えば、カルボン酸またはその相当するカルボキシル基、または有機スルホン酸およびその相当する有機スルホン陰性基)を有するモノマーを有する合成ポリマーまたは天然ポリマーである。
【0042】
「イオンを必要とするゲル(ionotropic gel)」とは、イオンとポリマーの架橋によって形成されるゲルである。「乾燥薬学的調製物」、乾燥薬学的処方物は、粉末、パッド、フィルム、スポンジ、錠剤またはカプセルの形態において20%未満の含水量を有する。
【0043】
「粉末」とは、主に非常に小さい固体粒子または球を含む固体、乾燥物質である。粉末の粒子または球の大部分の最大の寸法は、ミリメートル未満である。上記の定義の文脈において、「乾燥」とは、粉末の通常の自由に流動する物理的特性を有意に阻害する、自由に流れる液体または粉末粒子もしくは球の表面上の過剰な水分(水を含む)が、あるとしても非常に少ないことを意味する。本発明の粉末は、実際に、それらの粒子またはポリマーネットワーク内に吸収された水を含み得るが、しかしそれらの表面上に有意な量の流動可能な液体の水を含まない。
【0044】
「ミクロスフェア」は、小さく、ほぼ連続的に曲線状で、角のない表面を有するほぼ球状の形をした固体粒子であり、その粒子は、約0.1ミクロン(μM)と約250ミクロン(μM)との間の有効直径を有する。本明細書中で定義される場合、ミクロスフェアは、マイクロカプセルを含む。ミクロスフェアと対照に「微粒子」は、平らで、角、菱面体、または不規則な表面を有する。微粒子は、約0.1ミクロンと約250ミクロンとの間の最も長い直線状の寸法を有する。
【0045】
「生理学的に活性な薬剤」とは、動物の体において生理反応を誘導し得る、薬剤、化合物、または組成物をいう。生理学的に活性な薬剤としては、栄養素、低分子薬物および治療剤、高分子薬物および治療剤、薬理学的に活性な物質;診断剤;治療剤;核酸;ペプチド;ポリマー;低分子タンパク質;高分子タンパク質;ならびに生細胞が挙げられる。薬理学的に活性な物質としては、免疫応答を認めない物質(例えば、1種以上の抗原を含むワクチン)が挙げられる。治療剤の例としては、抗菌性物質、抗菌剤、駆虫薬、抗生物質、抗ヒスタミン剤、鬱血除去薬、代謝拮抗剤、抗緑内障剤、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗炎症剤、抗糖尿病剤、麻酔薬、抗鬱剤、抗凝固剤、鎮痛薬、抗凝固剤、目薬(opthalmic agent)、脈管形成因子、免疫抑制薬、および抗アレルギー剤が挙げられる。
【0046】
「ワクチン」は代表的に、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、または核酸、生細胞もしくは死細胞または微生物の全体もしくは一部、ウイルスの全体もしくは一部などの形態において1種以上の抗原を含み、処置した哺乳動物において免疫応答を誘導し得、しばしば、微生物、ウイルス、および/または癌によって引き起こされる疾患を処置もしくは予防するために、抗原または微生物もしくは微生物に由来する組織に対して、抗体の形成(ヒト応答)および/または細胞(T細胞)免疫応答選択性を誘導し得る。
【0047】
本明細書中に使用される場合、用語「ペクチン質」としては、天然に生じるペクチンに由来する1種以上の多糖類物質の主要な割合を含む任意の物質が挙げられる。ペクチン質としては、低メトキシルペクチンおよび高メトキシルペクチン、脱エステル化(de−esterified)ペクチン、ペクチンカルシウムゲル、アロエペクチンナトリウムゲル、ペクチン(pectic)酸、ペクテート(pectate)、ペクチン(pectinic)酸、ペクチネート(pectinate)、プロトペクチン、ならびにペクチン−リッチ物質(例えば、アロエベラ(Aloe vera)内部ゲル細胞壁線維)の個々、集合、またはそれらの組み合わせが挙げられる。上記に議論したように、ペクチンは、植物に内在するか、または植物から調製され、そして大きな割合の無水ガラクツロン酸の単量体ユニットを含む、これらのコロイド状炭水化物複合誘導体についての群の意味である。
【0048】
「脱エステル化」ペクチンとは、人工プロセスによって、複数のメチルエステル基が、ペクチンポリマーから除去されているペクチン由来のペクチンである。
【0049】
「ペクチン酸」とは、たいてい、コロイド状ポリガラクツロン酸から構成され、そして本質的にメチルエステル基のないペクチン質に適用される群の意味である。完全に脱エステル化したペクチンは、ペクチン酸またはポリガラクツロン酸である。「ペクテート」は、通常のペクチン酸またはペクチン酸の酸塩のいずれかである。「ペクチン酸」は、無視できない割合のメチルエステル基を含む、コロイド状ポリガラクツロン酸である。「ペクチネート」は、通常のペクチン酸またはペクチン酸の酸塩のいずれかである。「プロトペクチン」は、植物中に存在し、そして制限加水分解の際に、ペクチン、ペクチン酸などを生成する、水に不溶性の親ペクチンについて適用される。この水に不溶性のペクチンは、植物中に存在するセルロース(例えば、アロエベラ内部ゲルまたは外皮細胞壁線維)と結合され得る。
【0050】
本明細書および特許請求の範囲に使用される場合、化学種の残基とは、構造フラグメントまたは部分が、実際にその化学種から得られるかどうかに関わらず、構造フラグメント、あるいは特定の反応スキームにおける化学種の生成物またはその結果生じる処方物もしくは化学生成物を生じる部分をいう。従って、ペクチン中のGal A残基とは、ガラクツロン酸(galuronic acid)自体が、ペクチン中に存在するか、またはペクチンを調製するために使用されるかどうかに関わらず、ペクチン中の1つ以上のガラクツロン酸の単量体の繰返し単位をいう。
【0051】
後の説明において、基準は、頻繁に「%(w/v)」の単位に合わせられる。この表現によって「%(w/v)」は、100mlの溶液中の物質のグラム数であると定義される。希釈水溶液において、液体の密度は、「%(w/v)」が、100グラムの液体中の固体のグラム数とほぼ等しいように、1ミリリットル当たりおよそ1グラムである。これらの「%(w/v)」単位において、1%(w/v)である溶液は、100ミリリットル当たり1グラム(=1gr/100ml=10mg/ml)に相当する。
【0052】
(本明細書中で使用される略語としては以下が挙げられる)
CMC、カルボキシルメチルセルロース;Da、ダルトン;DM、メチル化の程度;Gal A、ガラクツロン酸;HEC、ヒドロキシエチルセルロース;HM、高メトキシル;HPMC、ヒドロキシプロピルメチルセルロース;kDa、キロダルトン;LM、低メトキシル;PBS、リン酸緩衝生理食塩水;PEG−PLGA−PEG、ポリエチレングリコール−ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)−ポリエチレングリコール;PEO−PLLA、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(L−ラクチド);PEO−PPO−PEO、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)。
【0053】
(インサイチュゲル化のための薬学的組成物)
本発明の薬学的組成物は、固体または液体の形態のいずれかにおいて「インサイチュ」ゲル化組成物であり、その組成物は、1種以上の陰イオン性多糖類および1種以上の生理学的に活性な薬剤を含み、ここで、動物の組織、体液、もしくは粘膜表面への適用の際、または適用直後、組成物中の陰イオン性多糖類は、代表的に、多孔性の3次元ポリマーネットワークの形成によってインサイチュゲルを形成する。動物の組織、体液、または粘膜表面へのこれらの組成物の適用前に、本発明の薬学的組成物およびそれらの組成物のうちのほとんどまたは一部は、代表的に、組織または体液へのそれらの適用前に、純粋な水に溶解するが、しかし、組織または体液への適用の際、陰イオン性多糖類のカルボキシル基または硫酸基は、生理的条件で水または体液のいずれかにおいて実際上不溶性である生物付着性ゲルを形成するように、生物学的流体から吸収される「内因性」の二価のカルシウムとの配位結合によって十分に架橋されるという驚くべき性質を有する。従って、本発明の組成物は、適用してもさらに架橋されることはない、予め架橋されたポリマー組成物を含む、先行技術の組成物とは区別可能である。
【0054】
本発明のゲルに関して、ポリマーネットワークの細孔中の液体は、しばしば水、生理食塩水、または水を含む、処置される動物もしくは患者に由来する生物学的流体を含み、そしてその薬物または薬理学的に活性な物質はまた、代表的に、架橋されたポリマーネットワークの細孔内に閉じ込められる。本発明に関して、ゲルネットワークはしばしば、隣接する糖鎖分子上の陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基と、そのカルボキシル基または硫酸基と配位結合する、架橋する二価または多価のカチオンとの間の配位結合/イオン結合によって形成される。
【0055】
(固体組成物)
いくつかの実施形態において、本発明は、動物に対する生理学的に活性な薬剤の送達のための固体薬学的組成物に関し、その組成物は、以下:
a.動物における生理反応を誘導するために有効な量の1種以上の生理学的に活性な薬剤;
b.陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類、および
c.1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む、1種以上のゲル誘導性固体多糖類組成物;
を含み、ここで、その薬学的組成物は、動物の組織または体液と接触する場合にゲルを形成する固体形態である。
【0056】
上記に関する別の実施形態において、本発明は、動物に対する生理学的に活性な薬剤の投与のための組成物に関し、その組成物は、以下:
a.動物における生理反応を誘導するために有効な量の1種以上の生理学的に活性な薬剤;および
b.約30%未満のメチル化の程度および約1×105ダルトンより大きい平均分子量を有する1種以上のペクチン質
を含み、ここで、その組成物は、動物の組織または体液と接触する場合に、ゲルを形成し得る固体である。
【0057】
上記の固体薬学的組成物は、パッド、錠剤、カプセルまたは粉末を含む、任意の固体形態で固体である。多くの実施形態において、その固体薬学的組成物は、粉末の形態で処方される。
【0058】
さらに別の関連した実施形態において、本発明は、粉末粒子を含む動物に対する鼻への投与のためのワクチン組成物に関し、その組成物は、以下:
a.動物における免疫応答を誘導するために有効な量の1種以上の抗原、および
b.約30%未満のメチル化の程度および約1×105ダルトンより大きい平均分子量を有する1種以上のペクチンまたはその一価のカチオン塩;
のナノ分散物を含み、ここで、その粉末粒子は、直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得る。
【0059】
その粉末は、用語を本明細書中の他の場所で定義したように、多数の微粒子および/またはミクロスフェアとして存在し得る。実際、所望の範囲の粒子サイズを有する粉末は、エマルジョン工程、閉じこめ(encapsulation)工程、噴霧乾燥工程、固体の粉砕または製粉などを含む、当該分野に周知の多くの方法のいずれかによって生成され得る。多くの工程の最終段階において、前駆物質の固体または粉末は、1つ以上の篩のセットを通過する。そのような篩は、その粉末、微粒子および/またはミクロスフェアについての種々の範囲の粒子サイズを生成するために、規定されたサイズおよび所望のサイズの開口(例えば、250μM、200μM、150μM、100μM、80μM、60μM、50μM、40μM、30μM、20μM、11μM、10μM、9μM、5μM、1μMおよび0.1μM)を有する。所望の範囲の粒子サイズとしては、以下の表1に示される適切な範囲の粒子サイズが挙げられ得る。1つの実施形態において、篩の開口は、その粉末、微粒子またはミクロスフェアが通過し得るように約250μM以下のサイズを有する。必要に応じて、その粉末は、次いで、例えば、約11μMと約250μMとの間の粒子サイズを有する固体組成物を生成するために、最も小さい粒子を除去するために別のより小さい篩を用いて処理され得る。
【0060】
粒子サイズ分布についての特定の他の制約に対する有益な効果もまた存在し得る。従って、いくつかの実施形態において、特定された固体組成物の粒子のパーセントは、特定されたサイズの範囲内に落ちる。例えば、粒子の約80%、または約85%、または約90%、または約95%は、特定された粒子サイズの範囲内に落ちることが所望され得る。1つの例を挙げると、いくつかの実施形態において、本発明の固体組成物は、ミクロスフェアを含み、そして90%未満のミクロスフェアは、0.1μMと10μMとの間の直径を有する。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態において、生理学的に活性な薬剤は、イオン性多糖類および/または他の固体成分を含む粒子の表面上に沈着されるか、あるいは生理学的に活性な薬剤を含む粉末は、イオン性多糖類を含む粉末と混合される。それにもかかわらず、本発明の多くの好ましい実施形態において、生理学的に活性な薬剤は、好ましくは、陰イオン性多糖類、増粘剤、賦形剤などの混合物を含む固体マトリックス内に高度に分散される。好ましくは、その固体マトリックス混合物において、その混合物の種々の成分は、いくつかのより高次の分子様の凝集体(特に無機塩類)が存在し得るが、分子レベルでの個々の分子および/またはイオンの混合物の形態で主に分散される。そのような半均質の固体マトリックス混合物は、固体混合物の成分の「ナノ分散物」と呼ばれ得る。さらにより好ましくは、固体混合物の成分およびそれらの構成分子は、固体混合物の成分の「固体溶液」を形成するように、分子レベルで実質的に均一に分散される。そのような「ナノ分散」および「固体溶液」は、感受性の生物学的に活性な薬剤の優れた安定性を提供し、そして代表的に生理学的に活性な薬剤の改良された分散、放出速度のコントロール、および/または生体利用効率を提供する。
【0062】
【表1−1】
【0063】
【表1−2】
*上記の表に二つ一組で示すが、表に記載された成分の特定の部類について記載された終点のいずれかは、その成分の部類について記載された他の対応する終点のいずれかと組み合わされ得、その成分の部類についての新しい範囲を形成することは、本明細書中で明白に企図される。
【0064】
本発明に使用される1種以上の多糖類は、陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有する単糖サブユニットを含むために、中性または陰イオン性のいずれかであり得る。陰イオン性のカルボキシル基は、単量体サブユニットに付着されるカルボン酸の塩、または親のカルボン酸自体のいずれかの形態であり得、それが生理的pHで容易にイオン化可能またはイオン化されることは、理解される。同様に、単糖サブユニットの陰イオン性の硫酸基は、硫酸基を含む単糖の塩および硫酸の酸の形態を含む単量体サブユニットの両方を含む。種々の多糖類は、カルボキシル化されたデンプン、ペクチン質、アルギン酸塩、カラゲーナン、またはゲランを含む、陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を含む。
【0065】
多くの実施形態において、固体薬学的組成物は、カルボン酸の酸の形態または塩の形態のいずれかにおいて1種以上のペクチンを含む。多くの好ましい実施形態において、陰イオン性の多糖類および/またはペクチンが、一価のカチオン(例えば、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、および/またはアンモニウム(NH4+)カチオンを含むカチオン)の塩の形態で存在し、それは、生理的pHで容易に水に溶解する傾向がある。
【0066】
ペクチンは、ラムノース残基が間にあるα−(1→4)結合型ポリガラクツロン酸(Gal A)多糖類ポリマー骨格を有する。Gal A残基は、糖環に結合されるカルボン酸置換基を有し、それは、カルボン酸、その塩、またはそのエステルの形態であり得る。ほとんどのペクチンのGal A含量は、約70〜75%であり、そしてラムノース含量は、代表的に2%より小さい。ラムノース残基は、骨格中で、Gal A残基にα−(1→2)結合され、それらは、骨格鎖中でT形状変形を生じ、多糖類鎖中でより可撓性を導く。中性の糖側鎖は、骨格中のO−3位またはO−4位にてラムノース残基に結合され、ラムノース残基は、骨格上でともにクラスターを形成する傾向がある。これらのラムノースは、ペクチンの「ヘアリー領域」といわれる側鎖を含む領域を含み、一方で、繰り返しで、分枝していないGal A残基の長い伸長は、ペクチンの「スムーズ領域」と名付けられる。
【0067】
糖環上のヒドロキシル基および/またはカルボン酸置換基はまた、しばしば糖でない成分(例えば、メチル基およびアセチル基)に結合される。鎖およびそのモノマーへのラムノース挿入および他の改変の程度は、ペクチンの植物供給源に依存して変化する。メチル化は、カルボン酸メチルエステルを形成するために、Gal A残基のカルボキシル基で生じる。ペクチンの場合、メチル化またはメチルエステル化の程度(「DM」)は、メタノールでエステル化されたカルボキシル基(Gal A残基)の割合として規定される。DMに基づいて、ペクチンは、2つのクラス(50%未満のDMを有する低メトキシル(「LM」)ペクチンおよび50%より高いDMを有する高メトキシル(「HM」)ペクチン)に分けられる。ほとんどの天然ペクチンおよびほとんどの市販のペクチンは、代表的に、柑橘類およびリンゴに由来する、HMペクチンである。
【0068】
LMペクチンは、代表的に、人工化学物質または生化学的な脱エステル化プロセスを介してHMペクチンから得られる。市販のLMペクチンは、代表的に、20〜50%のDMを有する。完全に脱エステル化されたペクチンは、「ペクチン酸」または「ポリガラクツロン酸」といわれる。酸形態のペクチン酸は、不溶性であるが、塩形態では可溶性である。ペクチン酸の通常の塩形態は、ナトリウムまたはカリウムのいずれかである。
【0069】
ペクチンは、代表的に、約3〜4の間の酸性pHレベルで最も安定である。pH3以下では、メトキシル基およびアセチル基ならびに中性糖側鎖の除去が、代表的に起こる。中性およびアルカリ性の条件下では、Gal A残基のメチルエステル基が、カルボン酸またはカルボン酸塩の形態に鹸化されることは公知であるが、しかし、ポリガラクツロナン骨格もまた、メチル化Gal A残基の非還元末端上のグリコシド結合のβ−脱離切断を介して破壊し、LMペクチンの分子量は、代表的に、その親のHMペクチンの分子量より有意に小さいという結果を生じる。一度形成されると、ペクチン酸およびLMペクチンは、限られた数のメチルエステル基のみしか存在しないか、または全く存在しないので、中性およびアルカリ性の条件下で、分子量の減少に対して比較的より耐性があり、その結果、ポリマー鎖のβ−脱離切断は、ゆっくりとなる。
【0070】
HMペクチンおよびLMペクチンの両方は、ゲルを形成する。しかし、これらのゲルは、全体的に異なる機構を介して形成する(Voragenら、In Food polysaccharides and their applications.pp287−339.Marcel Dekker,Inc.New York,1995)。HMペクチンは、低pHにて高濃度の特定の共溶質(co−solute)(例えば、スクロース)の存在下でゲルを形成する。HMペクチンは、代表的に、カルシウムまたは他の多価イオンと反応せず、従って、LMペクチンと同様にカルシウムゲルを形成しない(後出)。しかし、特定のHMペクチンは、ブロック様式(block wise)脱エステル化プロセスによってカルシウム反応性となり得るが、なお50%より高いDMを有する。Christensenら、米国特許第6,083,540号を参照のこと。
【0071】
高い割合のエステル化されていないカルボン酸および/またはカルボキシル基を有するLMペクチンは、十分な濃度のカルシウムカチオンの存在下でゲルを形成することが公知である。カルシウムイオンは、Gal Aポリマーサブユニットの陰イオン性のカルボキシル基と配位結合すると考えられ、従って、「カルシウム反応性」として公知である。カルシウムLMペクチンゲルネットワークは、Ca++が、ポリガラクツロン酸ポリマー鎖の2つの相補的な伸長に沿って相補的なカルボキシル基の配位結合および架橋を引き起こす、一般に「エッグボックス(egg−box)」連結ゾーンといわれるものの形成によって構築されると考えられる。カルシウム−LMペクチンゲル化は、数個の因子(DM、イオン強度、pH、およびペクチンの分子量を含む)によって影響される(Garnierら、Carbohydrate Research 240,219−232,1993;256,71−81,1994)。現在の市販のLMペクチンは、代表的に、7〜14×104Daの分子量および約75%のGal A含量を有する(Voragenら、In Food polysaccharides and their applications.pp287−339.Marcel Dekker,Inc.New York,1995)。代表的なペクチンは、2%未満のラムノース含量を有する。
【0072】
ペクチンは、代表的に、食品業界に利用され、FDAによって「GRAS」(Generally Regarded As Safe)として分類される。それらはまた、コロイド性および抗下痢剤として長く使用されている。最近、ペクチンは、医薬デバイスおよび薬物送達の領域に利用されている(Thakur ら、Critical Reviews in Food Science & Nutrition 37,47−73,1997)。薬物送達の場合において、ペクチンは、結腸への経口薬物送達のための多くの実験処方物において、その存在を見出されている。なぜならば、ペクチンは、腸のこの領域に存在する細菌によって容易に分解されるからである。このペクチンは、関連するゲル化なしで直接的に使用されるか、またはペクチンカルシウムゲルは、投与前に薬物因子をカプセル化するために予備形成されるかのいずれかである。Ashfordら、J.Controlled Release 26,213−220,1993;30,225−232,1994;Munjeriら、J.Controlled Release 46,273−278,1997;Wakerlyら、J.Pharmacy & Pharmacology 49,622−625,1997;International Journal of Pharmaceutics 153,219−224,1997;Miyazakiら、International Journal of Pharmaceutics 204,127−132,2000.
いくつかの実施形態において、ペクチンは、約70%、50%、30%、25%、20%、19%、18%、15%、14%、12%、10%、9%または5%と同等またはそれ未満のメチル化(DM)の程度を有する。代表的に、メチル化のより低い程度は、必ずしも、改良されたゲル化特性を導くとは限らないが、多くの他の因子が、ペクチンのゲル化特性の決定に関与する。
【0073】
ペクチン質またはペクチンの分子量は、そのゲル化特性において重要な因子であり、より高い分子量は、代表的に、より良いゲル化特性を生じる。ペクチンのゲル化における分子量の重要性は、米国特許第5,929,051号に記載され、ペクチンおよびアロエペクチンの特徴を教示するために、その全体が本明細書中に参考として援用される。多くの実施形態において、ペクチン質またはペクチンは、約4.6×105ダルトン、または約5.0×105ダルトンより大きい平均分子量を有する。代替として、ペクチン質またはペクチンは、約2×105ダルトン、3×105ダルトン、4×105ダルトン、6×105ダルトン、7×105ダルトン、8×105ダルトン、または9×105ダルトンと同等またはそれ未満の平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態において、ペクチン質またはペクチンは、1×106ダルトンより大きい分子量および10%未満のメチル化の程度を有する。
【0074】
本発明のいくつかの好ましいペクチン(例えば、DelSite Biotechnologies Incから入手可能なアロエペクチン)および/またはそれらの水溶性の一価カチオン塩、硬い弾力性のゲルは、0.5%(w/v)LMペクチンおよび30〜60mg/gのCa2+を有し得る。
【0075】
本発明の固体組成物は、少量の水、特にペクチンを含む水を含み得、それは、ペクチンにより吸収される残りの水を有する傾向がある。従って、本発明の固体組成物は、約20重量%、あるいは約15重量%、約12重量%、約10重量%、約9重量%、約8重量%、約7重量%、約6重量%、約5重量%、約3重量%、約2重量%、約1重量%またはそれ以下の水を含み得る。任意の割合の水で、上記の粒子は、粉末の形態で固体の自由流動を有意に妨げる有意な粘性を引き起こすために、過剰の自由に流動する液体または水分が、粒子の表面上に見られないという意味で、代表的に「乾燥」と記載され得る。貯蔵中の生理学的に活性な薬剤の安定性を改良するためか、または固体の物理的特性を改良するために、より低い割合の水の重量が、本発明のいくつかの実施形態において好まれる。
【0076】
(活性な薬剤)
本発明の組成物(液体または固体)は、1種以上の生理学的に活性な薬剤を含み得、その用語は本明細書中の他の場所で定義される。いくつかの実施形態において、その生理学的に活性な薬剤としては、治療剤、診断剤、炭水化物、脂質、ペプチド、核酸、生細胞、死細胞の全てまたは一部、微生物の全てまたは一部、ウイルスの全てまたは一部、ワクチン、抗原、およびタンパク質が挙げられ得る。本発明の組成物は、治療剤(例えば、低分子の薬物)を含み得る。多くの実施形態において、本発明の組成物は、分子、細胞、ウイルス、抗原などを含む、広範囲の種々のより大きい生物学的因子を含み得る。
【0077】
いくつかの好ましい実施形態において、その生理学的に活性な薬剤は、ペプチド、タンパク質、生細胞、死細胞の全てもしくは一部、またはウイルスの全てもしくは一部、不活性化された微生物もしくはウイルス、生きている弱毒化された微生物もしくはウイルス、ファージ、サブユニットワクチンタンパク質、サブユニットワクチンペプチド、サブユニットワクチン炭水化物、レプリコン、ウイルス性ベクター、プラスミド、ならびに他の免疫活性遺伝子および組換え物質、またはそれらの混合物を含む、ワクチンの調製物のための抗原である。いくつかの実施形態において、1種以上の抗原は、インフルエンザ、ジフテリア、破傷風、および百日咳、SARS、AIDS、コレラ、細菌性赤痢、髄膜炎、斑、肝炎、デング熱、黄熱、脳炎、マラリア、ヘルペス、麻疹、腸チフス、結核、発疹チフス、中耳炎、炭疽またはそれらの混合物の予防のための抗原から独立して選択される。
【0078】
いくつかの実施形態において、1種以上の抗原は、インフルエンザ、またはその混合物(例えば、1種以上の不活性化されたインフルエンザウイルスまたは弱毒化されたインフルエンザウイルス(ビリオン全て))、またはそのサブユニット(ビリオン成分(split virion)、サブビリオン)(例えば、1種以上のウイルス性膜糖タンパク質(例えば、赤血球凝集素(HA)またはノイラミニダーゼ(NA)))、あるいはウイルス性内部タンパク質(例えば、ヌクレオカプシドタンパク質)またはその混合物のための抗原である。現在、サブビリオン成分抗原およびサブユニット抗原は、インフルエンザのためのワクチンの調製物に最も広く使用されている。代表的に、前年に意図される個体群に広まった例示的な2種または3種のウイルス株のインフルエンザウイルスは、ニワトリの卵の胚において増殖されて尿膜腔液から得られるか、または特定の動物細胞株(例えば、MDCK(Madin−Darbyイヌ腎臓))の細胞において増殖され、化学薬品(例えば、ホルムアルデヒド)で不活性化され、精製されて、精製された完全なウイルスを得る。完全な不活性化されたウイルスまたは弱毒化されたウイルスは、完全なビリオンワクチンを調製するために使用され得るか、または精製されたウイルスは、それらを小成分(例えば膜タンパク質HAおよびNAならびにそれらの種々の公知のサブタイプ)に分離するために化学物質によって壊され得、次いで、タンパク質抗原がさらに精製され得る。次いで、1種以上の株由来の抗原は、最終ワクチンを生成するために組み合わされる。
【0079】
多くのサブビリオンインフルエンザワクチンのためのインフルエンザワクチン用量は、しばしばHA含量に基づいて処方される。好ましくは、インフルエンザのための1種以上の抗原は、組成物中に存在し、そして/または哺乳動物もしくは40以上のヒト赤血球凝集抑制(HAI)力価において誘導し得る量で患者に対して投与される。鼻への投与のための粉末インフルエンザワクチン組成物は、代表的に、単位投与のために、粉末用量当たり、現在広まっているウイルス株の各々3種に由来する約5〜50μgのHAを含むように、処方され得る。
【0080】
タンパク質および他の生物学的物質に基づくワクチン抗原および他の薬理学的に活性な薬剤は、しばしば、本発明の組成物中に存在するか、または他の人工の薬物もしくは治療剤より有意により低い濃度で(例えば、微生物のレベルで)本発明の方法によって投与される。動物における医学的に受容可能なレベルの免疫を誘導するために必要とされるワクチン抗原の量は、もちろん、種および動物の体重、哺乳動物および/または個体の特定の型の免疫系の特徴とともに変化する。それにも関わらず、例示的な目的のためだけに、1種以上の抗原は、組成物の約0.001重量%〜約10重量%、または約0.01重量%〜約1重量%、または約0.05重量%〜約0.5重量%の量で組成物中に存在し得る。
【0081】
本発明に使用される生物学的因子は、他の物質より、貯蔵中ならびに適用中および適用後に、安定性が有意に低い傾向がある。本発明の組成物は、そのような生物学的因子の安定化および貯蔵に関して予測外に優れ得る。特に、適切なゲル化多糖類(特にペクチン)と混合して、そして固体を形成するために乾燥した場合、固体組成物中の多糖類の極性および他のキャリアおよび/または賦形剤、ならびに固体組成物の低い水含量は、生物学的分子の有効期間を有意に延長し得るが、そうでなければ、室温、または低温貯蔵条件下でさえ、貯蔵される水溶液中で不安定であり得る。さらに、組織または体液への適用後、一旦インサイチュゲルの中に組み込まれると、大きい生物学的因子は、高い程度の生体利用効率であるが、所望のゆっくりとした放出速度を達成するように、多糖類マトリックスによって安定化される傾向があり、そしてより小さい化合物よりゆっくりとゲルから放出される傾向がある。本発明の組成物のこれらの所望の特性は、ワクチンの投与および関連した抗原において特に重要であり得る。
【0082】
別の局面において、本発明は、生理学的に活性な薬剤を動物に送達するための方法に関し、その方法は、任意の順序または組み合わせにおいて、動物の組織または体液に以下の成分
a)動物における生理反応を誘導するために有効な量における1種以上の生理学的に活性な薬剤;
b)陰イオン性カルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類、および
c)1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む、1種以上のゲル誘導性固体組成物;
を投与する工程を包含し、動物の組織または体液と接触してゲルを形成する。
【0083】
この実施形態、および本発明の固体組成物の他の実施形態において、1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含むゲル誘導性固体組成物は、必要に応じて、生理学的に活性な薬剤および/または他の固体賦形剤の存在下またはそれらの混合物において、化学的に明確な固相として存在する。そのようなゲル誘導性固体組成物の目的は、ゲル化の速度および/または有効性を誘導および/または改良するために、適用部位での組織または体液からインサイチュで利用可能な組成物を補うためにゲルを誘導する二価または多価のカチオンの「外因性」の補助的な固体供給源を提供することである。
【0084】
ゲル誘導性固体組成物の二価または多価のカチオンは、代表的に、薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩の形態で存在し、それは、所望のゲルに対する傾向が改良されるか、またはゲルを形成するために必要な陰イオン性多糖類の濃度が所望されるように、隣接する多糖類鎖の陰性基を急速および効率的に架橋するために、陰イオン性ポリマーのゲル化のために必要な二価または多価のカチオンの補助的な供給源を提供する。薬学的に受容可能なカルシウム塩およびアルミニウム塩は、ゲル誘導性固体組成物の部分としての使用のために好ましい塩である。
【0085】
いくつかの実施形態において、薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩は、水、生理食塩水、または体液(例えば、血清または粘膜分泌物)に容易に溶解する。体液と接触して、可溶性の薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩は、急速に溶解し、カチオンを水溶性媒体の中へ遊離させ、陰イオン性多糖類(例えば、ペクチン)と接触する溶液の中へ急速に拡散させて、陰イオン性多糖類を架橋するために陰性基を配位結合する。そのような容易に可溶する二価または多価のカチオンの例としては、ハロゲン化カルシウム、特に塩化カルシウムが挙げられる。
【0086】
他の実施形態において、薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩は、生物学的流体、または体液におけるMerck Indexの専門用語の「実質的に不溶性」の水性環境において不十分にしか溶解できない。好ましくは、そのような不十分な溶解性の薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩は、室温および生理的pHで水に溶解せず、1リットルの塩につき5×10−3モルより多くを含むか、またはより好ましくは1リットルの不十分な溶解性の塩につき1×10−5モルより多くを含まない溶液を形成する。不十分な溶解性の薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩の例としては、リン酸カルシウムおよび水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0087】
そのような不十分な溶解性の薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩を含む本発明の組成物において、陰イオン性多糖類は、不十分な溶解性の塩の固体粒子の表面に拡散する傾向があり、粒子の表面で二価または多価のカチオンと反応し、その結果、ゲルは、ゲル誘導性固体組成物の粒子の表面で形成する傾向がある。従って、ゲル誘導性固体組成物の封入は、組織の表面または粘膜表面上に生理学的に活性な薬剤を含む陰イオン性多糖類と、そこに分散されるゲル誘導性固体組成物の多数の粒子とのゲル化された凝集体の形成を導く傾向がある。そのようなゲル化された凝集体は、ゲル誘導性固体組成物を含まない組成物と比較して優れた生物付着性を提供し得、そして、それらのゲル内に閉じこめられる生理学的に活性な薬剤の予測外にゆっくりかつ優れた送達を生じ得る傾向がある、通常より高い濃度の二価または多価のカチオンの存在のために、ゲルの溶解に対してより耐性があり得る。
【0088】
上記の方法において、成分cが固体として投与される限り、成分a、bおよびcは、任意の順序、組み合わせ、または物理的形態で投与され得、そして、ゲルは、組織または液体の体液と接触して形成される。本方法のいくつかの実施形態において、成分a、bおよびcは、粉末組成物の成分として投与され、その成分は、1種以上の固相の物理的混合物の形態であり得る。いくつかの実施形態において、固体成分cは、粉末粒子を含む別の固相として存在するが、一方、他の実施形態において、固体成分cはまた、生理学的に活性な薬剤と一緒に分子レベルで混合物中に存在し得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、成分aおよびbは、別々または混合された粉末として投与されるが、成分cは、異なる固相および化学的に別の固相として存在する。例えば、成分aおよびbは、成分aを含む1種以上の粉末と、成分bを含む1種以上の粉末との物理的混合物として投与され得、それらは、成分cとは別々、または成分cと一緒に投与され得る。
【0090】
いくつかの好ましい実施形態において、成分aおよびbは、液体キャリア中に1種以上の生理学的に活性な薬剤および1種以上の多糖類を溶解することによって調製される固体組成物として投与され、次いで、十分な液体キャリアを除去して、固体混合組成物を形成し、ここで、その薬剤および多糖類は、本質的に分子レベルで混合される。成分cは、固体混合組成物の投与前、投与と同時または投与後に投与され得、それは、しばしば粉末の形態で投与される。
【0091】
上記のように、本発明のいくつかの実施形態は、ワクチンおよび/または抗原を動物および/またはヒトに投与するための組成物および方法に関する。従って、いくつかの実施形態において、本発明は、ワクチンを動物の鼻粘膜に投与するための方法に関し、その方法は、動物の粘膜表面に以下:
a)別々にまたは一緒に以下:
i)組成物が動物の粘膜表面と接触する場合に、ゲルを形成するために有効な量の陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類;
ii)動物における活性な免疫応答を誘導し得る量におけるペプチド、タンパク質、核酸、生細胞、死細胞もしくはその一部、またはウイルスからなる群より選択される1種以上の抗原
を含むミクロスフェアまたは微粒子を含む1種以上の粉末を投与する工程;ならびに
b)粉末を動物の鼻組織および/または鼻液に投与して、組織または体液と接触する際にゲルを形成する工程、ならびに
c)動物における1種以上の抗原に対する能動免疫応答を誘導する工程、
を包含する。
【0092】
(液体組成物)
いくつかの他の実施形態において、成分aおよびbは、液体キャリア中の溶液として投与されるが、成分cは、別々の固体として投与される。
【0093】
さらに別の実施形態において、本発明は、動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法に関し、その方法は:
a)以下
i)液体キャリア、
ii)動物の組織または体液に適用される場合、溶液または分散物をゲル化するために有効な量の30%未満のメチル化の程度および4.6×105ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチン質、および
iii)1種以上の生理学的に活性な薬剤、
を含む溶液または分散を提供する工程;ならびに
b)溶液または分散を動物の組織または体液に適用して、組織と接触する際に生理学的に活性な薬剤を含むゲルを形成する工程、
を包含する。
【0094】
液体組成物を適用する上記方法のいくつかの実施形態において、ペクチン質は、アロエペクチンであり得、その有益な特徴は、記載されている。液体組成物を適用する上記方法の関連した実施形態において、生理学的に活性な薬剤は、生物学的因子(例えば、ペプチド、タンパク質、抗原、ワクチン、生細胞、死細胞の全てもしくは一部、またはウイルスの全てもしくは一部)である。関連した実施形態において、組織または体液は、鼻の粘膜表面を含む、粘膜表面であり得る。
【0095】
液体組成物を適用する上記方法において、その組成物は、それらの貯蔵特性を改良するために、特定の薬剤で改変され得る。実施例25および本明細書中の他の場所にさらに記載されるように、多価カチオンの塩(例えば、塩化ナトリウムおよび/または塩化アンモニウム)、または緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液)が、溶液の生理的pH、およびイオン強度を提供するために、液体組成物に添加され得る。さらに、そのような溶液は、最初の貯蔵のための使用される場合に、いくつかの予測外の優れた特性を有し、次いで、生理学的に活性な薬剤を適用する。NaClまたはNH4Clが、適切な濃度で、ペクチンおよび抗原を含む溶液に添加される場合、その溶液は、貯蔵のために冷却(約4℃で)される場合、可逆的にゲルを形成し得る。そのように形成されるゲルは、感受性の生物学的に活性な薬剤を沈殿および/または崩壊から安定化および保護し得る。組成物が、動物またはヒトに対する投与のための貯蔵から除去される場合、ゲルは、透明のまま溶解し、粘膜表面などへの注射による投与のために適切である遊離溶液に沈殿する。
【0096】
さらに、少量の二価カチオンの塩は、実施例24に記載されるように、それらをゲル化せずに溶液に添加され得、改変された溶液が組織または体液に適用される場合に有益であり、インサイチュゲル化が促進される。
【0097】
さらに、その溶液は、本明細書中の他の場所で記載される他の増粘剤および/または賦形剤を含み得る。
【0098】
ワクチンの鼻への投与は、そのような投与の多くの利点のために、特に興味深い。鼻への投与は、代表的に、注射に関連する不快感および費用を避け、また、代表的に、感受性の抗原に対する消化管の酸および酵素の破壊効果を避ける。身体が、別の全身および粘膜の免疫系を維持し、粘膜の免疫系が、多くの伝染病のネガティブな効果に抵抗する際に非常に重要であることもまた公知である。多くの場合において、抗原の鼻への投与は、全身および粘膜の免疫系の両方において免疫反応を刺激し得る。それにも関わらず、ワクチンの鼻への投与が、チャレンジされ得る。なぜなら、鼻粘膜表面が、それ自体急速に再生し、非常に短い期間で外来の因子を除去することは周知であるからである。従って、ワクチンの鼻への投与における多くの先行技術の試みは、鼻粘膜からのワクチン組成物の急速なクリアランスのために、治療的な成功を達成せず、その結果、特に高分子量およびより高い極性の抗原(例えば、タンパク質)の場合において、不十分な時間および接触が、動物における所望のレベルの免疫応答を効率的に誘導するために、維持される。
【0099】
本発明は、組成物ならびに鼻の粘膜表面に付着する抗原を含むインサイチュゲルを形成する組成物、およびワクチンの抗原成分についての延長された残留時間を提供することによって、先行技術の問題を予測外に克服するそれらの組成物を投与する方法を提供する。実施例26および図10を参照のこと。実施例22および図8に示すように、その結果は、動物における予測外に改良されてかつ優れた能動免疫応答の誘導である。
【0100】
多くの実施形態において、動物の鼻粘膜へのワクチンおよび/または抗原の投与後、その動物の免疫応答は、動物の肺洗浄物中のIgAレベルによって測定される場合、多糖類を含まないコントロール組成物を投与するコントロール実験で得られるIgAレベルと比較して、約10%より多く増加し得る。好ましくは、動物の免疫応答は、動物の肺洗浄物中のIgAレベルによって測定される場合、多糖類を含まないコントロール組成物を投与するコントロール実験において得られるIgAレベルと比較して、約25%、50%、75%、100%、150%、または200%より多く増加する。
【0101】
ゲル化イオン性ポリマーを有する粉末処方物の1つの独特の利点は、投与後、一貫したゲル化を確実にするために、乾燥されたゲル誘導剤と粉末処方物とを混合する能力であることが、理解される。従って、乾燥粉末として作製されるゲル誘導剤は、粉末処方物に添加され得る。誘導剤は、乾燥状態であるので、送達前または水和前にゲル化しない。送達後、ゲル誘導剤は、溶解されて、それによって、ゲル化イオン性ポリマーとの相互作用を介して処方物の粉末粒子のゲル化を促進する。
【0102】
ペクチン、アルギン酸塩、およびポリホスファゼンのようなポリマーについて、ゲル誘導剤は、種々の2+、3+、および他の多価金属イオンであり得る。これらのイオンの例としては、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、第二鉄、およびアルミニウムが挙げられる。それらは、それ自体、または賦形剤の存在下で粉末として調製され得る。誘導剤の粉末粒子密度およびサイズは、一貫したかつ均質な様式で活性な薬剤の処方物の粉末と混合されるように調整され得る。
【0103】
(賦形剤およびアジュバント)
さらに、結合剤、充填剤または増量剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、および味覚マスキング剤を含む、薬学的に受容可能な賦形剤の他の群が、使用され得る。結合剤は、自由に流動する粉末を生じるために使用され;充填剤は、粉末容積を増大させるために使用され;滑沢剤は、粉末の流動を増加させるために使用され;味覚マスキング剤は、医薬の不快な風味を減少させるために使用される。
【0104】
薬学的に受容可能な賦形剤の1つの好ましい分類は、薬学的に受容可能な単糖類または二糖類、あるいはそれらの混合物、あるいはアルキル化、ヒドロキルアルキル化、またはアシル化されたそれらの誘導体である。そのような単糖類または二糖類は、代表的に無毒であり、そして/または「安全なので一般に受容される(Generally Accepted As Safe)」と分類され、水または生物学的流体に容易に溶解し、高価ではない。そのような薬学的に受容可能な単糖類または二糖類の例としては、リボース、アラビノース、キシロース、フルクトース、グルコース、ラムノース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、マルトース、キシリトール、マンニトール、およびトレハロースが挙げられる。薬学的に受容可能な単糖類または二糖類の好ましいサブセットとしては、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、マルトース、マンニトール、およびトレハロースが挙げられる。特に、一水和物の形態のラクトースが、好ましい賦形剤である。
【0105】
薬学的に受容可能な単糖類または二糖類は、任意の濃度で存在し得るが、しかし、いくつかの実施形態において、比較的高い濃度(すなわち、約10.0重量%〜約99.9重量%の濃度、または好ましくは約30重量%〜約99.5重量%、または約50重量%〜約99.5重量%、または約80重量%〜約99.5重量%)で存在する。単糖類または二糖類が、比較的高い濃度で固体組成物中に存在する場合、その結果として生じる粒子の粉末粒子は、組成物のゲル化前に部分的に溶解する傾向があり得るか、または体液の粘膜表面と接触する際に部分的に崩壊する傾向があり得る。単糖類または二糖類は、急速に溶解または吸収されるが、生物学的表面(例えば、粘膜表面)を横切って十分に分散されて、その生物学的表面に付着される活性な薬剤および/またはペクチンもしくは他の陰イオン性多糖類の濃縮されて粘性のある生物付着性ゲル残基を残す傾向がある。
【0106】
本発明の組成物中の賦形剤としての単糖類または二糖類の上記の使用は、低い濃度で投与されるワクチン抗原および他の生物学的因子の鼻への投与のための微粒子/ミクロスフェア粉末処方物の形成に関して特に有益であり得る。賦形剤、希釈剤、および/または増量剤としての単糖類または二糖類の存在は、粒子が、10〜250ミクロンサイズの範囲における比較的大きい粒子として調製されることを可能にし、その範囲は、ガス注入および類似の技術によって組成物が投与されされる場合、鼻粘膜上のほとんどの粒子の沈積物を生じるサイズの範囲であることが公知であり、さらに短期間に単糖類または二糖類は、鼻の粘膜表面に十分に分散および/または付着される生理学的に活性な薬剤を含む、濃縮されて、粘性があり、粘膜付着性のインサイチュゲル残留物をそのままにして、溶解および/または吸収される。
【0107】
薬学的に受容可能な単糖類または二糖類は、固体処方物において特に好ましい賦形剤であり、それらは、代表的にいくらか不安定であり、代表的に低い濃度で投与される、薬学的に活性な薬剤、特に生物薬剤(例えば、ペプチド、タンパク質、抗原など)のための水溶性の希釈剤および/または安定剤を容易に形成し得る。
【0108】
本発明の組成物はまた、1種以上のさらなる薬学的に受容可能なアジュバントもしくは吸収促進因子またはそれらの混合物を含み得る。アジュバントは、主用な薬理学的に活性な薬剤の有効性または活性を改良するか、あるいはそれらに寄与する処方物中の添加剤である。ワクチン組成物に関して、アジュバントは、ワクチン抗原に対する患者に生じる免疫応答を改良する。いくつかの実施形態において、本発明のワクチン組成物は、リポ多糖類、E.Coli熱不安定エンテロトキシン(LT)、コレラ毒素(CT)、モノホスホリル脂質A(MPL)、サポニン、シストシン(cystosine)リン酸グアノシン(CpG)、サイトカイン、またはそれらの誘導体、アルミニウム塩、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、あるいはそれらの混合物からなる群から選択される1種以上のワクチンアジュバントを含む。
【0109】
粘膜表面、および特に鼻の粘膜表面への薬理学的に活性な薬剤の投与に関して、1種以上の吸収促進因子の封入は、活性な薬剤の吸収を改良するために、粘膜表面、細胞膜、または細胞内接合部に作用し得る。本発明の組成物の粘膜投与に関して、適切な吸収促進因子は、界面活性剤、粘液溶解剤、タンパク質または核酸分解酵素インヒビター、キレート剤(例えば、EGTA、EDTA)、アシルグリセロール、脂肪酸および塩、チロキサポール、サリチル酸塩、胆汁酸塩およびアナログならびにフシジン酸(fusidate)、またはそれらの混合物を封入し得る。
【0110】
(アロエペクチン)
アロエペクチンは、最近、米国特許第5,929,051号(その全体が本明細書中で参考として援用される)中で記載されたアロエベラ植物から単離される。アロエペクチンは、天然にLMペクチンであり、カルシウムゲル化の能力がある。さらに、アロエペクチンは、特にゲル化に関連する様々な独特の化学的特性(高分子量(1×106Daより大きい)、高Gal A含量(75%、80%、85%より多く、そして多くの場合90%より多い)および低DM(10%未満)を含む)を有し得る。10%以下のDMは、ほぼペクチン酸である、アロエペクチンを作製するが、実施例27、表8に示すように、他の市販の低DMペクチンおよびペクチン酸より、有意に高い分子量を有する。アロエペクチンはまた、それらの高いGalA含量のために、他のペクチンと比較して、ポリマーにおいて有意により高いパーセントのカルボキシル基を有する。アロエペクチンはまた、代表的に、多糖類の骨格において所望の高い程度の分枝、および他のペクチンにおける約2%と比較して、3%より大きいか、または4%より大きくなり得るそれらの高いラムノース含量の結果として、著しく可撓性のポリマー骨格を有する。このような低DM、高分子量、ならびに高Gal A含量および高ラムノース含量を有するペクチンは、以前に米国特許第5,929,051号に記載されていない。最近、薬学的適用のために適切な純度で市販されているアロエペクチンは、完成した製品として、オフホワイト粉末であり、完全に水溶性である一方、以前に市販されているLMペクチンおよび/または実験的なLMペクチンは、有意な量の不溶性物質を含み、それによって薬学的適用のために望ましくない黄〜黄褐色の粉末である。
【0111】
アロエベラの葉は、外側の緑色外皮および透明な内部ゲル(これはまた、果肉といわれる)の2つの部分から構成される。アロエペクチンは、内部ゲルまたは外皮細胞壁線維から抽出される。わずかにアルカリ性pHのキレート剤の使用は、最も効率的な抽出方法であることが見出されている。アロエペクチンは、これまでに記載したペクチンと比較して独特である。アロエペクチンは、精製されたペクチン調製物において、4%を超える高いラムノース含量を有し、この含量は、他のペクチン(柑橘類、リンゴ、甜菜およびヒマワリ)において述べられるよりも少なくとも2倍高い。ラムノースは、ペクチン骨格において重要な糖であり、この含量は、分子の可撓性に影響する。アロエペクチンはまた、他のいずれのペクチンにおいて記載されていない、稀有な糖、3−OMe−ラムノースを有する。アロエペクチンは、天然LMであり、一般的には、30%未満、そして10%未満の低さであり得るDMを有する。アロエペクチンのGal A含量は、70%より多く、そして90%を超える高さであり得る。アロエペクチンは、カルシウムの存在下でゲル化し得る。一価カチオン(例えば、ナトリウム、カリウムおよびリチウム)は、ゲルの形成を促進する。
【0112】
アロエペクチンは、1つ以上の以下の特徴によって、他のペクチンと区別され得る:
1.高分子量(1×106Daより大きい)および高い固有粘度(550ml/gより大きい);
2.高いラムノース含量(4%より大きい);
3.高いガラクツロン酸含量(90%より大きい);
4.3−OMe−ラムノースを含有する;
5.天然LMであり、10%未満の低さのDMを有する;
6.カルシウムゲル化の能力;
7.低温(4℃)での一価カチオンベースのゲル化の能力。
【0113】
本発明者らは、投与の経路として、身体への注射によってか、または創傷表面への局所塗布によって、ゲル化していない液体ペクチンが、投与部位でインサイチュでゲルを形成し得ることを見出した。このインサイチュのゲルは、インビトロで形成されたカルシウムゲルのように硬くかつ非流動性であり、このゲルは、粘稠性であるが流動性溶液であるヒドロゲルと区別される。このアロエペクチンのインサイチュでのゲル化は、安定な固体のインサイチュゲルを形成するために必要とされる最小限のアロエペクチンの濃度が、2.5mg/mlまたは0.25%(w/v)ほどの低さであり、そして増粘剤を添加する場合、さらにより低くなり得るほど、特に効率的であることが見出された。
【0114】
さらに、一価カチオンのゲル化の能力は、生理学的pHで塩化ナトリウムおよび/または塩化アンモニウムならびにイオン強度を含む感受性の生物学的分子を含む組成物を調製するために有利に適用され得、感受性の生物学的因子を安定化し得るゲルを形成するために、冷却される場合、可逆的にゲル化する。次いで、そのようにして処方されるゲルは、室温に戻る場合、再び溶解して、実施例25に記載されるように、透明で、沈殿する遊離の液体薬学的組成物を形成する。次いで、再び溶解された溶液は、種々の投与方法によって、組織または体液に適用され得、インサイチュゲルを形成する。
【0115】
ゲル組成物は、等張性または等張透圧性に作製され得、そして哺乳動物の体液(例えば、涙液の滴)のpHに調整され得る。このような体液のpHおよび浸透圧は、それぞれ、7.4および29mOsm/kgである。例えば、体液のpHおよび浸透圧に一致する、望ましいpHおよび浸透圧の条件で、薬理学的処置を必要とする哺乳動物の身体の領域に薬理学的に活性な医薬を送達することは有利である。必要に応じて、本発明の薬学的組成物は、滅菌状態で提供され得る。
【0116】
どんな理論によっても束縛されることを望まないが、ペクチンのインサイチュでのゲル化は、体液中のカルシウムイオンによって、主に媒介されると考えられる。血液は、8.5〜10.3mEq/dlのカルシウム濃度を有する。ペクチンのカルシウムゲル化は、体液の通常の成分でもあるNaClの存在下で増強される。血液中には、134mEq/LのNaClが存在する。
【0117】
インサイチュゲルはまた、種々の薬剤の存在下で形成し、種々の薬剤としては、以下が挙げられる:カプセル化または捕捉された形態の広範な薬剤を送達するためのペクチンの能力を示す、低有機化合物、タンパク質、核酸、生細胞、および皮下注射後の他のポリマー。不十分に可溶性の化合物(例えば、シルバデン(silvadene))が組込まれた場合、このインサイチュゲルは、なお形成された。一旦、送達されると、このペクチンインサイチュゲルは、明らかに遅い放出効果を発揮した。このことは、低有機モデル化合物(ファストグリーン)を用いて、インビトロ条件ならびにインビボ条件下で実証された。さらに、bFGFが、ペクチンインサイチュゲルと送達される場合、このゲルを取り囲む有意に増加した細胞増殖が観察された。
【0118】
アロエペクチンは、現在市販のペクチン(LMペクチン、およびポリガラクツロン酸、ならびにインサイチュゲル化のためのアミド化LMペクチンが挙げられる)よりもより効果的である。十分に形成されたインサイチュゲルは、アロエペクチンについての濃度よりも、10倍より高い濃度で、市販のポリガラクツロン酸またはLMペクチンを用いてのみ得られた。現在市販のLMペクチンおよびポリガラクツロン酸は、より低いGal A含量(約75%)、はるかにより低い分子量(7〜14×104Da)、および15〜50%のDMを有する。カルシウムゲルを形成し得る、他のポリマーが存在する。1つの例は、アルギン酸塩である。しかし、アルギン酸塩は、以前に、試験した濃度で明確に規定されたインサイチュゲルを形成し得ると考えられていなかった。アルギン酸塩は、グルウロン酸(guluronic acid)(G)およびマンウロン酸(manuronic acid)(M)から構成される多糖類のブロックコポリマーである(Moeら、In Food polysaccharides and their applications.pp287−339.Marcel Dekker,Inc.New York,1995)。アルギン酸塩中のこれら2つの残基は、G−ブロック、M−ブロック、または交互のMG−ブロックとして存在する。G−ブロックのみが、カルシウムゲル化を生じる。総G含量は、供給源に依存して広範に変動し;最大G含量は、約70%である。さらに、このアルギン酸塩カルシウムゲル化は、生理学的な流体中に存在するNaClの存在によって阻害される。
【0119】
いくつかの他のポリマーもまた、インサイチュゲル化が可能であることを示されてきた。しかし、これらのほとんどは、インサイチュゲル化について高いポリマー濃度(>20%)を必要とする(ポロキサマー(Poloxamer)、PEO−PLLAジブロックコポリマー(copoly)、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、セルロースおよびアセトファラートラテックス)。これらのポリマーのいくつかは、生分解性でない(例えば、ポロキサマー)か、または投与前(PEO−PLLAジブロックコポリマー)もしくは処方中(プルロニクス(Pluronics)およびゲルライト(Gelrite))に温度の操作を必要とする。熱的にゲル化するポリマー(ポロキサマー、プルロニクス、PEO−PLLAジブロックコポリマー、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、およびマトリゲル(Matrigel))はまた、パッケージングまたは貯蔵の間の周囲温度の変化に起因して、投与前のゲル化という不都合を有する。さらに、これらのポリマーの多くは、粘稠であるが、なお流動性溶液であるヒドロゲルのみを形成する(例えば、ポロキサマーおよびプルロニクス)。さらに、いくつかのポリマー処方物は、2つの異なるポリマーまたはゲル化が生じるための第2の成分の適用を必要とする。ペクチン(特に、アロエペクチン)は、インサイチュでのゲル化を達成するために必要とされるポリマー濃度が、非常に低く(χ0.25%,w/v)、そして増粘剤を添加する場合、さらにより低くし得るという点で、これらのポリマーまたは組成物よりも有利である。この調製物は、温度もしくはpHの調整、またはインサイチュでのゲル化を生じるための第2の成分の適用を必要としない。このゲルは、透明であり、そしてPEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマーおよびプルロニクスのように、特定の濃度範囲を超えてゲルの曇りの著しい増加が存在しない。
【0120】
生物工学の進歩は、ますますタンパク質ベースの治療法を生成する。タンパク質は、本質的に不安定である。適切な処方物および送達は、これらのインビボでの機能に重要である(Langer、Nature 392,5〜10,1998;PutneyおよびBurke、Nature Biotechnology 16,153〜157,1998)。ペクチンインサイチュゲルは、その穏やかなゲル化条件のために、タンパク質送達について、特に適切である。多くのタンパク質薬剤(例えば、創傷治癒のための増殖因子および治療的新脈管形成のための脈管形成因子)はまた、持続性の様式で局所的に送達されることを意図される。これはまた、ペクチンインサイチュゲルを用いて達成され得る。bFGFが、アロエペクチンインサイチュゲルとともに送達された場合、ゲルを取り囲む有意に増加した細胞増殖が観察された。
【0121】
生理学的に活性な薬剤は、最終的な組成物または処方物の重量を規準にして、約0.01%〜約90%より多くまで変化し得る。使用される生理学的に活性な薬剤の量は、生理学的に活性な薬剤の型、形態、および性質に依存する。
【0122】
ペクチン質の範囲は、組成物の総重量を規準にして、約0.01%〜約40%、好ましくは約0.1%〜約20%、より好ましくは、約0.25%〜約2%まで変化し得る。使用されるペクチン質の量は、生理学的に活性な薬剤の型、形態および性質に依存する。必要に応じて、キャリアまたは賦形剤が使用され得る。
【0123】
本発明に使用されるキャリアとしては、水;生理食塩水;緩衝化水溶液;油/水エマルジョンのようなエマルジョン;アジュバンド;湿潤剤;錠剤;およびカプセルのような薬学的に受容可能な任意のキャリアが挙げられる。そのキャリアは、最終組成物または処方物の重量を規準にして、約0%〜約90%まで変化し得る。存在するキャリアの量は、生理学的に活性な薬剤、およびその処方物または組成物が送達される様式に依存する。
【0124】
代表的な緩衝剤としては、アルカリまたはアルカリ土類の炭酸塩、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、およびコハク酸塩、および/または塩化アンモニウムが挙げられる。代表的な防腐剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、ホウ酸フェニル水銀、パラベン、ベンジルアルコール、およびフェニルエタノールが挙げられる。
【0125】
従って、本発明の1つの実施形態は、生理学的に活性な化合物の持続送達のための組成物を提供し、そしてその組成物は、ペクチン、および薬学的に受容可能な増粘剤を含むかまたは含まない生理学的に活性な化合物を含む。好ましくは、この組成物は、動物の体に組成物が投与されると、液体からゲルに変化し、従って、生理学的に活性な化合物の放出は、維持または制御される。
【0126】
ポリビニルピロリドン(「PVP」)、カルボキシメチルセルロース(「CMC」)、ヒドロキシエチルセルロース(「HPMC」)、アルギン酸ナトリウム、コラーゲン、ゼラチン、およびヒアルロン酸のような生分解性増粘剤が、処方物に加えられ得る。このような増粘剤の添加は、以下に記載するようにゲル化効率に影響を及ぼさず、より低いペクチン濃度でのゲルマトリックスの密度およびインサイチュでのゲル化を増強する利点を提供する。さらに、pH、イオン強度および温度の変化に応答するポリマーはまた、そのポリマーがペクチンのゲル化と相乗的である限り、使用され得る。さらに、異なるペクチンのブレンドが、増粘剤を伴うかまたは伴わずに使用され得る。他の増粘剤としては、Carbopol、Gelrite、キトサン、およびキシログルカンが挙げられる。その増粘剤は、最終組成物または処方物の重量を規準にして、約0%〜90%まで変化し得る。使用される生分解性増粘剤の量は、生理学的に活性な薬剤および組成物または処方物が使用される様式に依存する。
【0127】
本発明のなお別の実施形態は、医療用デバイスとして使用するための薬学的に受容可能な増粘剤を含むかまたは含まないペクチンからなる組成物を提供することである。
【0128】
好ましくは、ペクチン質は、ペクチンのガラクツロン酸の単量体のサブユニットのカルボキシル置換基が、カルシウムイオンを配位結合して、それによってカルシウム架橋されたゲルを形成するために反応し得るという点で、カルシウム反応物である。このようなカルシウム反応物ゲルの形成は、種々の分光学および/または配位結合されたカルシウムをゲルから除去して、それによってゲルの溶解を引き起こすために使用され得る、カルシウムキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸およびその塩(「EDTA」))と架橋されたゲルの反応を含む、ウェットケミカル法(wet chemical methods)によって決定され得る。
【0129】
より好ましくは、ペクチン質は、LMペクチンまたはポリガラクツロン酸である。さらにより好ましくは、ペクチン質は、アロエペクチンである。
【0130】
治療薬または診断用薬を含む、ペクチンがインサイチュでゲル化する組成物は、種々の手段によって動物に投与または送達され得る。例えば、その組成物は、眼、粘膜表面または創傷に局所的に適用され得る。その組成物はまた、非経口的(例えば、皮下、筋肉内)、または腹腔内注射を介して送達され得る。その組成物はまた、器官、関節腔、または腫瘍に注射され得る。
【0131】
ペクチンは、多くの異なる植物供給源から抽出され得る。ペクチンは、柑橘類およびリンゴに加えて、例えば、ジャガイモ、グレープフルーツ、テンサイ、およびヒマワリの頭部から得られる。ペクチンは修飾され得る。例えば、アミド化ペクチンは、アンモニアで処理することによって製造され得る。アロエペクチン様ペクチンは、異なる植物種に存在し得または異なる植物供給源由来のペクチンは、本明細書中に開示される原理に基づいて、インサイチュでのゲル化力を増強するように製造され、再加工され、および/または修飾され得ると考えられる。さらに、50%未満のDMを含むLMペクチンが、そのカルシウム反応性のために本発明において使用されるのに好ましいが、特定のHMペクチンがまた、カルシウム感受性であり、カルシウムゲルを形成し得ることが知られており、従って、そのペクチンがインサイチュでのゲル化のために使用され得る(Tibbitsら、Carbohydrate research 310,101−107,1998)。さらに、ブロック様式でエステル分解されたHMペクチンは、まだ50%より多いDMを含んでいるが、ブロック様式によるエステル分解によってカルシウム感受性が与えられ、使用され得る。Christensenら、米国特許第6,083,540号を参照のこと。
【0132】
従って、上記の特定の実施形態が、本発明と同じ目的を実行するための他の構築物を改変または設計するための基礎として容易に利用され得ることは、当業者に理解されるべきである。このような等価構築物は、添付の特許請求の範囲および/または実施例に示されたような本発明の精神および範囲から逸脱しないこともまた、当業者に理解されるべきである。
【実施例】
【0133】
(実施例1)
(アロエペクチンのインサイチュでのゲル化)
(アロエペクチンの抽出)
アロエペクチンを、アロエベラの葉の果肉または外皮のいずれかから調製された細胞壁繊維から抽出した。このペクチンを抽出する一般的な方法は、報告されている。Voragenら、In Food polysaccharides and their applications.p.287〜339.Marcel Dekker,Inc.New York,1995を参照のこと。米国特許第5,929,051号(この内容全体は、本明細書中で参考として詳細に援用される)もまた、参照のこと。アロエペクチンの抽出は、EDTAのようなキレート剤を用いてかまたは温水、加熱した希酸(HCl、pH1.5〜3)、および冷却した希塩基(NaOHおよびNa2CO3;pH10)を含む他の条件下で達成した。
【0134】
最初の抽出に続き、残った線維を粗い濾過および微細濾過によって除去した。このペクチンをエタノールで沈殿させた。このペクチン沈殿物を、乾燥させる前にさらにエタノール溶液でリンスした。
【0135】
果肉または外皮の細胞壁線維のいずれかからこの様式で得られたアロエペクチンを、分子量(1×105Daより大きい)、低DM(50%未満)、およびGal A含有量(80%より大きい)で特徴付けた。好ましくは、分子量が1×106Daより大きく、DMは10%未満であり、そしてGal A含有量が90%より多いことであった。
【0136】
このペクチンの分子量を、標準としてプルランを用いて、HPLCベースのサイズ排除クロマトグラフィーによって決定した。DMを、選択的還元法(Manessら、Analytical Biochemistry 185,346−352,1990)およびHPLCベースの方法(Voragenら、Food Hydrocolloids,1,65−70、1986)によって決定した。Gal A含有量を、m−ヒドロキシジフェニル法(Blumenkrantz,N.およびAsboe−Hansen,G.Analytical Biochemistry 54,484−489,1973)によって決定した。これら3つの参考文献の各々の内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0137】
(インビボでの注射によって投与されるアロエペクチン溶液のインサイチュゲル化)
アロエペクチンを最初に、滅菌した脱イオン水に溶解し、そして次いで、等容量の2×生理食塩水(0.3M NaCl)と混合した。アロエペクチンは、食塩水に容易に溶解し得なかった。しかし、一旦水に溶解したら、ペクチンは、食塩水と混合して、生理学的イオン強度を達成し得る。このようにして得られた生理食塩水中のペクチン溶液は、透明なままであった。このペクチン溶液は、室温で自由流動性であり、そしてポリマーの濃度に依存して5.0〜6.0のpHを有した。指示されない限り、温度またはpHの調整を行う必要はなかった。この調製物を、動物の使用プロトコルに従って、Swiss Websterマウス(1部位につき0.05mlまたは0.1ml)の下腹部領域に皮下注射した。マウスを、注射後、種々の時間に屠殺し、ゲル化を試験した。
【0138】
注射部位の皮膚の腫張は、生理食塩水コントロールの場合のように時間と共には消失しなかった。注射部位にわたる皮膚を外科的に切開した場合、球または楕円のような形のゲル破片を観測した。このゲルは、澄んで、透明でかつ硬かった。これは、周囲の組織から容易に分離し得た。このゲルを外科的に皮膚と共に切除し、ホルマリンで固定し、切片化し、H&Eで染色し、そして顕微鏡下で調べた。このゲルを軽く染色しただけではあるが、はっきりと見え、そして皮膚組織によって囲まれていた。同様のインサイチュゲル化を、ラットにおいても観察した。その注射部位での腫張は、ラットにおいては、分厚い皮膚および被毛に起因して、マウスにおいてと同様に明白でなかった。しかし、注射部位の皮膚を外科的に切開した場合、同様のインサイチュゲルが観察された。ラットにおいて、1mlのアロエペクチン溶液を下腹部領域に皮下注射し得、そして同様に非常に大きなゲル破片を得た。
【0139】
このゲル化は、ペクチン濃度依存性である。χ0.25%(w/v)の濃度で、固体の硬いゲルを得た。α0.1%(w/v)では、ゲル化は観察されなかった。0.1%と0.25%との間の濃度で、軟らかいゲルを得た。アロエペクチン溶液のpHを、希水酸化ナトリウムで約7.2に調整した場合、このインサイチュゲルがまた形成された。
【0140】
このインサイチュゲル化能は、アロエペクチンの分子量に依存する。非常に低い分子量(約3×104Da)を有するが、同じDMおよびGal A含量を有するアロエペクチンを用いた場合に、0.5%(w/v)で試験すると、インサイチュゲル化は観察されなかった。
【0141】
腹腔内経路および筋肉経路を介した注射後、インサイチュゲルがまた形成されたが、この形成したゲルは、皮下注射後に形成されるゲルと同程度の均一な形状を有しないようであった。
【0142】
(実施例2)
(創傷表面への局所投与後のインサイチュゲル化)
生理食塩水中のアロエペクチン調製物(0.5%、w/v)を、マウスまたはラットにおける新しい全層切除した皮膚創傷に直接適用した。生理食塩水中の0.5%(w/v)のCMC調製物および市販のヒドロゲル創傷包帯剤をコントロールとして使用した。この創傷は、動物使用プロトコルに従って生検穿孔鋏(biopsy punch)を用いて作製した。4時間後、ラットを屠殺し、そして創傷を外科的に取り除いた。創傷をホルマリンで固定し、切片化し、そしてH&Eで染色した。アロエペクチン調製物を用いた場合、創傷表面上にゲルの層が明らかに形成されたが、CMCまたは市販のヒドロゲル創傷包帯剤を用いた場合には形成されなかった。
【0143】
(実施例3)
(ゲル境界移動アッセイ(Gel Frontal Migration Assay)によって測定される場合の体液におけるカルシウムイオンによって媒介されるペクチンのインサイチュゲル化)
体液(例えば、血液、涙液、肺液および鼻分泌物)は、カルシウムイオンを含む(例えば、血液中で8.5〜10.3mEq/dl)。アロエペクチンはカルシウムゲルを形成するので、インサイチュゲル化を模倣する、動物の血清を用いたインビトロでのゲル化アッセイを使用して、アロエペクチンのインサイチュゲル化におけるカルシウムの役割を試験した。このインビトロアッセイを、ゲル境界移動アッセイとして記載する。動物血清をガラスチューブの底部に配置し、そしてアロエペクチン溶液をこの血清の上に重ねた(このペクチン溶液はまた、ペクチン溶液に対する試験溶液の密度に依存してチューブの底部に配置され得る)。組織培養グレードの正常なウシ血清を使用した。2mlの血清をガラスチューブ(0.8×11cm)の底部に配置し、そして1mlのペクチン溶液(0.5〜0.75%、w/v)をそのチューブの上部に配置した。
【0144】
ゲル化は接触線(溶液の境界面)で速効性であり、そしてゲル相またはゲル境界は、時間の経過と共に、ペクチン溶液中で徐々に上方へと広がった。光源下で調べる場合、上部のペクチン相で形成されるゲルを、その増加した濁度によってペクチン溶液から識別し得る。また、ゲルが形成される場合、チューブを傾けても、界面は動かない。界面で形成されるゲルの厚さを、時間と共に測定し得る(そのような測定は、本明細書中の以下で「ゲルの長さ」と言及される)。
【0145】
しかし、体液(例えば血清)を、生理食塩水に対して最初に透析する場合、または溶液から遊離カルシウムを除去するためのEDTA(2価のカチオンに対するキレート剤)もしくはEGTA(カルシウムに対して特異的なキレート剤)を、最終濃度が10mMになるように血清に加える場合、ゲル化は観察されなかった。このことは、体液に存在するカルシウムイオンが、ペクチンのインサイチュゲル化に関与していることを示す証拠である。
【0146】
このペクチンのゲル化はまた、マウスから単離した全血または血漿全てをヘパリン処置する同様のインビボでの実験において試験した場合に生じた。
【0147】
(実施例4)
(他の体液を用いた、ペクチンのインサイチュゲル化)
血清または血液に加え、体液(例えば、涙液、肺液、および鼻液)を含む、多くの他の型のカルシウムが存在する。ペクチンのゲル化がまた、他の体液を用いるインビトロでの実験において起こるかどうかを決定するために、アロエペクチン(生理食塩水中で0.25%)とともに実施例3に記載のゲル境界移動アッセイを使用した。
【0148】
このゲル化は、天然の腹水を用いた場合にも起こった。この場合、モノクローナル抗体産生のためのハイブリドーマを注射したマウス由来の腹水(ascite)を、腹水(peritoneal fluid)として使用した。
【0149】
このゲル化はまた、模擬体液でも起こった。それら模擬体液は、以下である:
1.涙液(100mlにつき、0.68gのNaCl、0.22gのNaHCO3、0.008gのCaCl2.2H2O、および0.14gのKCl(StjernschantzおよびAsitin,Edman,P.(編),「Biopharmaceutics of Ocular Drug Delivery」,CRC Press,Boca Raton,p.1−15,1993を参照のこと)、あるいは100mlにつき、0.268gのウシ血清アルブミン、0.268gのリゾチーム、0.134gのグロブリン、0.008gのCaCl2.2H2O、0.650gのD−グルコース、および0.658gのNaCl(Cohenら、Journal of Controlled Release 44,201−208,1997を参照のこと));
2.肺液(100mlにつき、0.01gのMgCl2.6H2O、0.61gのNaCl、0.03gのKCl、0.027gのNa2HPO4.7H2O、0.007gのNa2SO4、0.018gのCaCl2.2H2O、0.095gのNaHC2O2.3H2O、0.26gのNaHCO3、および0.01gのNa3H5C6O7.2H2O(FisherおよびBriant,Radiation Protection Dosimetry,53,263−267,1994を参照のこと));および
3.鼻分泌物(100mlにつき、0.867gのNaCl、0.44gのNa2HPO4、0.108gのNaH2PO4、0.058gのCaCl2.2H2O、0.31gのKCl、0.636gのアルブミン(Lorinら、Journal of Laboratory Clinical Medicine,2,275−267,1994を参照のこと))
(実施例5)
(NaClが、ペクチンカルシウムゲル化を促進する)
体液(例えば、血液および涙液)はまた、ナトリウムイオンを含む(血液中で135〜146mEq/L)。NaClはLMペクチンのカルシウムゲル化を促進することが示されている。局所または非経口的な使用のための薬理学的調製物を、緩衝化した生理食塩水または緩衝化していない生理食塩水(0.15MのNaCl)あるいは等張性溶液中で、通常、調製する。アロエペクチンを用いてNaCl溶液によって誘導されるゲル化の促進もまた、起こるどうかを決定するために、ゲル境界移動アッセイを使用した。0.15M NaCl(2ml)中で調製したアロエペクチン(0.5%、w/v)溶液をチューブの底部に配置し、そして100mM未満の濃度のCaCl2溶液(0.05ml)をこのペクチン溶液の上部に配置した。ゲルは、時間の経過と共にペクチン溶液において下方向に広がって形成された。ペクチン溶液中の下方へのゲル境界の遊走を、CaCl2の添加後ごとに測定した。この結果は、ゲル境界が、NaClの存在下でより速く遊走する(すなわち、アロエペクチンのカルシウムゲル化は、NaClの存在によって促進される)ことを示した(図1を参照のこと)。NaClの効果はまた、カルシウム濃度の用量依存性であり;そのゲル遊走速度は、0.05MのNaCl中でよりも0.15MのNaCl中での方が速かった。
【0150】
これらの観察は、他のLMペクチンを用いた先の研究結果と一致する(Garnierら、Carbohydrate Research 240,219−232,1993;256,71−81,1994)。図1は、アロエペクチンのカルシウムゲル化に対するNaClの関連を示す棒グラフである。
【0151】
(実施例6)
(ペクチンのインサイチュゲル化は、低濃度のペクチンでより速い)
上記のゲル境界移動アッセイを使用した。正常ウシ血清(2ml)に、生理食塩水(1ml)中の種々の濃度のアロエペクチンを注いだ。室温で18時間後、形成されたゲルの長さ(すなわち、ゲルの厚さ)を測定した。接触相での最初のゲル化は、ペクチン濃度に関わらず、速効性である。しかし、時間の経過と共にゲルの長さが成長する速度は、異なるペクチン濃度で、異なった。0.05%(w/v)で形成されるゲルの長さは、0.5%(w/v)で形成されるゲルの長さよりも約5倍長いので、ペクチン濃度が低くなるほど、ゲル化はより速いことが見出された(図2を参照のこと)。低濃度(<0.2%、w/v)で形成されるゲルは、非常に軟らかく、そして強い攪拌によって破壊することができた。
【0152】
血清の代わりに塩化カルシウム溶液を用いた場合にも、同様の観察がなされた。このことは、ペクチンカルシウムゲル化の速度が、より低いペクチン濃度で高くなることを示す。
【0153】
(実施例7)
(他のポリマーまたは増粘剤の添加は、ペクチンのインサイチュゲル化を促進する)
上記のゲル境界移動アッセイを使用した。ポリマー(例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC、0.45%、w/v)、カルボキシメチルセルロース(CMC、0.45%、w/v)、またはアルギン酸ナトリウム(0.45%、w/v))をアロエペクチン(0.05%、w/v)と混合した。アルギン酸ナトリウムは、インビトロの条件下でCaCl2溶液と一緒にカルシウムゲルを形成し得るが、血清とはインサイチュゲルを形成しなかった。1mlのポリマー溶液を、ゲル境界移動アッセイにおいて2mlの正常ウシ血清に適用した。形成されたゲルの長さを18時間後に測定した。その結果は、他のポリマーの添加がペクチンのインサイチュでのゲル化の速度に影響しないことを示した(図3Aおよび図3Bを参照のこと)。このポリマーをアロエペクチンと異なる割合(0.4%対0.1%)で混合した時にもまた同じ結果が得られた。
【0154】
実施例1に記載したのと同様のインビボでのマウス実験において、生理食塩水でのアロエペクチン(0.375%、w/v)とCMC(0.375%、w/v)との混合物は、マウスへの皮下注射後に、インサイチュゲルを形成した。さらに、増粘剤(0.4%、w/vまたは0.3%、w/vでのアルギン酸ナトリウムまたはHEC)の添加は、より低いアロエペクチン濃度(0.1%、w/vまたは0.2%、w/v)で、より良好な形成されたインサイチュゲルを生じた。この濃度では、インサイチュゲルは、軟らかいか、あるいはアロエペクチン単独では形成されないかのいずれかである(実施例1)。
【0155】
(実施例8)
(他のペクチンおよびアルギン酸塩との比較)
カルシウムゲル化が可能なアロエペクチン以外のいくつかの多糖類を、インビボでのゲル化実験に用いた。他の多糖類は、28%のDMを有する柑橘類由来のLMペクチンおよびリンゴのペクチン(DM=0)から調製したポリガラクツロン酸(これらの両方をSigma Chemical Co.から入手した)、ならびに28〜34%のDMおよび16〜22%のDA(アミド化の程度)を有するアミド化したペクチンを含んでいた。使用前に、これらを脱イオン水に溶解し、濾過し、エタノール沈殿し、そして乾燥した。
【0156】
皮下経路による他のペクチンの溶液を用いてマウスを注射するインサイチュゲル化実験を、実施例1に記載されるように実施した。2匹のマウスにおける4つの注射部位を、各サンプルのために使用した。これらの結果は、皮下注射後、1.0%(w/v)または1.65%(w/v)の濃度で、代わりの多糖類のいずれかを用いてもインサイチュゲル化がはっきりと観察されなかったことを示し、スメア様(smear−like)のゲル物質だけが観察された。しかし、より高い濃度(3.0%、w/vまたは3.3%、w/v)で試験した場合、ポリガラクツロン酸およびアミド化したLMペクチンの両方で、はっきりと(十分)形成されたゲルを観察した。
【0157】
同様に、実施例1に記載の低分子量のアロエペクチンはまた、高濃度(2.5%、w/v)で、インサイチュでゲル化した。
【0158】
64%のDMを有するHM柑橘類ペクチンもまた試験した。LMペクチンについての方法と同様の方法で調製した。HMペクチンについて3%(w/v)の濃度では、ゲル化は観察されなかった。この注射部位は、湿って(wet)かつ水気が多く(watery)、固形のゲル破片は観察されなかった。
【0159】
アルギン酸塩(Keltone HVCRおよび高Gアルギン酸塩Manugel DMB(G含量60〜70%)を含む)も、0.5%の濃度で試験した。皮下注射から4時間後に調べた場合、スメア様のゲル物質だけが観察された。このことは、物質のほとんどが、ゲル化することなく離れて拡散していることを示した。このアルギン酸塩はまた、上記(実施例7)のように、正常な動物血清を用いたインビトロでのインサイチュゲル化アッセイにおいても、ゲルを形成しなかった。これらの結果は共に、LMペクチン、ポリガラクツロン酸、アミド化したLMペクチン、およびアルギン酸塩が、同じ濃度下では、インサイチュゲル化に対して、アロエペクチンほど効果的でないことを示した。
【0160】
(実施例9)
(ペクチンのインサイチュゲルによる、生理学的に活性な薬剤の送達)
薬物送達に使用するためのインサイチュゲル化に関して、この現象が、薬物または診断剤の存在下で起こらねばならない。従って、種々の化合物または薬剤を生理食塩中でアロエペクチン(0.5%(w/v)の最終ペクチン濃度)と混合した。この実験薬剤は、小分子の有機化合物(ファストグリーン、N−エチル−N−(4−[(4−{エチル[3−スルホフェニル)メチル]アミノ}フェニル)−(4−ヒドロキシ−2−スルホフェニル)メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン)−3−スルホベンゼンメタンミニウムヒドロキシド内部塩、ジナトリウム塩、808Da、10mg/ml)、小さいタンパク質(bFGF、17kDa、10μg/ml)、中程度のサイズのタンパク質(ウシ血清アルブミン、66kDa、10mg/ml)、大きなサイズのタンパク質(I型ウシコラーゲン、2mg/ml)、核酸(λDNA Hind IIIフラグメント、200μg/ml)、糖質ポリマー(CMC、0.5%、w/v)、およびRaw 264.7細胞(マウスのマクロファージ株、1×108/ml)を含んだ。この混合物をマウスに皮下注射した。次いで、注射から4時間後に、ゲル化を調べた。この結果は、インサイチュでのゲル化が、アロエペクチン単独のコントロールを用いて形成されたゲルと同様に起こった薬剤全ての存在下で起こったことを示した。
【0161】
さらに、ゲル境界移動アッセイにより、0.5%(w/v)アロエペクチン溶液のインサイチュゲル化もまた、以下の存在下で起こった:1)0.1%(w/v)のシルバデン(silvadene)(スルファジアジン銀)、(創傷処置に一般に使用される難溶性の抗菌剤)、2)0.5%(w/v)ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、および3)0.5%(w/v)のアルギン酸ナトリウム(Keltone HVCR、Kelco)。0.5%(w/v)のHECまたはアルギン酸ナトリウムの存在は、実施例6に記載されるように、インサイチュゲル化の有効性に影響しなかった。
【0162】
従って、このインサイチュゲル化がこれら多くの異なる因子と一緒になって起こるという事実は、ペクチンのインサイチュゲルが広範囲の薬物因子の送達のために使用され得ることを明確に示す。
【0163】
(実施例10)
(インビトロ条件下でのペクチンインサイチュゲルからの小さい有機化合物の徐放)
治療剤および診断剤は、100Da〜10,000Da以上の分子量で大きく異なる。一般に、化合物が小さいほど、徐放効果を達成するのもより困難である。ここで、小さい有機化合物のファストグリーン(食品業界および医薬業界において広く使用される色素)を、試験モデルとして選択した。この色素を、1mg/mlのファストグリーン濃度において生理食塩水中でアロエペクチン(0.5%、w/v)と混合した。生理食塩水中の遊離ペクチンの1mg/ml色素溶液を単独で、コントロールとして使用した。1mlの色素/ペクチン調製物またはこのコントロールを、12kDaまでを排除する(cut off)透析チューブ(直径1cm)内に配置した。次いで、サンプルを有する透析チューブを、30mlのガラスチューブ中の25mlの正常ウシ血清中に配置した。色素/アロエペクチン溶液を受容する1本の血清チューブはまた、最終濃度10mMまでのEDTAを受容し、カルシウムゲル化を防止した。次いで、このサンプルを含む血清チューブを、回転振盪機上で連続的に100rpmで攪拌した。少量の血清(100μl)を種々の時点でサンプリングした。血清中に放出された色素の量を、620nmでのODを測定することによって決定した。既知量のファストグリーンを有する血清サンプルを使用して、検量線を確立した。この結果は、同様の量のファストグリーンが、コントロールおよびEDTAを含む色素/アロエペクチン(ゲル化しない)から放出され、そしてEDTAを含まない色素/アロエペクチン(ゲル化する)から放出される色素の量は、測定した時点で顕著に低下した(p<0.05;スチューデントt−検定)ことを示した(図4を参照のこと)。このことは、アロエペクチンの存在およびそのゲル化が、このモデルの小分子の薬剤の放出を顕著に遅らせたことを示す。
【0164】
(実施例11)
(皮下注射後のペクチンインサイチュゲルからの小さい有機化合物の徐放)
上記で観察された徐放が、インビボ条件下で達成され得るかどうかを決定するために、生理食塩水中のファストグリーン(1mg/ml)/アロエペクチン(0.5%、w/v)または生理食塩水中のファストグリーン単独をマウスに皮下注射した。この注射部位(サンプルにつき2箇所)を4時間後に調べた。ペクチンの存在下で、色は注射前の最初の調製物ほど強くはないが、色素を部分的に保持しているインサイチュゲルが形成されることを見出した。対照的に、コントロールの注射部位は、ゲルおよび色を有さず、従って、色素を保持しなかった。従って、このペクチンインサイチュゲルは色素を保持しており、そして実際にインビボ条件下で、その放出を遅らせた。
【0165】
(実施例12)
(アロエペクチンのインサイチュゲルによるbFGFの局所的送達)
投与部位周囲の組織に局所的な効果を及ぼす成長因子について、成長因子は、ゆっくりな様式または持続する様式で放出されるようにマトリックス中で送達される必要がある。生理食塩水または緩衝液のみの送達は、この点について効果的でない。この実施例において、成長因子(bFGF)を使用した。bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子またはFGF−2)は、線維芽細胞の増殖および脈管形成または血管形成を刺激することが公知の成長因子である。これを、1〜10μg/mlの濃度の生理学的生理食塩水中でアロエペクチン(0.5%、w/v)と混合し、次いでマウスの腹の部位の左隅側または右隅側に皮下注射した。一方はコントロール(ペクチンアロエ)を受け、そして他方は、bFGF含有調製物を受けた。2匹のマウスからのインサイチュゲルを、5〜10日での皮膚と一緒に回収し、そしてホルマリン中で固定化し、切片化し、そしてH&E染色した。ゲルのどちらかの端での2つの同一の部位(ゲルの表面と皮膚の筋肉層との間の垂直方向およびゲルの外側の端から内向きに水平方向に510μm)を選択し、そしてそれぞれのゲルから選択されたこれら2つの領域中の細胞を、NIHイメージソフトウェアを用いて計算した。この結果は、コントロールよりもbFGF処置において、細胞数が2倍よりも高いことを示した(図5)。ゲル周囲の血管形成の増加はまた、高いbFGF濃度(10μg/ml)で観察された。これは、bFGFがインサイチュゲルから放出され、そして周囲の組織中でその機能を発揮することを示している。
【0166】
(実施例13)
(乾燥ペクチン組成物のインサイチュゲル化)
アロエペクチンおよびCMC(それぞれ0.75重量%)の混合物ならびに水中で調製された1.5%CMCを、別々に秤量トレイ中で凍結乾燥した。乾燥物質を、丸いパッド(直径約1cmおよび厚さ約3mm)のように切り抜き、そしてペトリ皿中で10mlの正常なウシ血清に浸した。アロエペクチン/CMCパッドは、透明なゲルを形成し、このゲルは、実験が終了するまでの4日間、インタクトな状態を維持したが、一方CMCのみを含むパッドは、同じ条件下で数時間で溶解したか、または消滅した。従って、これらの結果は、乾燥形態のペクチンはまた、体液で浸された後、ゲルを形成し得ることを示す。
【0167】
(実施例14)
(薬物送達のためのペクチンインサイチュゲルの使用:処方プロセス)
ペクチンのインサイチュゲルを使用して、治療剤または診断剤ならびに体液のpH特性および浸透圧特性を有する低濃度のゲル化ポリマー(ペクチン)を含み、そして投与の際に液体からゲルに変換する能力を有する、生理学的に受容可能な組成物を提供し得る。
【0168】
液体処方物を調製するためのプロセスは、以下の工程を包含する。
【0169】
1.ペクチンを、滅菌水に溶解する。
【0170】
2.緩衝または非緩衝生理食塩水を調製する。
【0171】
3.2つの溶液を混合する。
【0172】
4.生理学的に活性な化合物を、工程3で調製物に添加する。あるいは生理学的に活性な薬剤を、混合の前にいずれかの溶液に添加し得る。
【0173】
水および緩衝または非緩衝生理食塩水あるいは水溶液に加えて、他の薬学的に受容可能なキャリア(乳濁液(例えば、油/水エマルジョン)、アジュバント、種々の型の湿潤剤、錠剤、およびカプセルを含む)もまた、使用され得る。
【0174】
処方物のpHを、適切な緩衝剤(例えば、ホウ酸−ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム(一塩基)−リン酸ナトリウム(二塩基)、およびTris−HCl)を用いて調整する。処方物の浸透圧を、塩(例えば、NaCl、KCLおよびMgCl2)および他の浸透性調整剤(例えば、ソルビトール、スクロース、グリセリンおよびマンニトール)を用いて、体液の浸透圧を模倣するように適応させる。
【0175】
薬学的に受容可能な増粘剤を、添加し得る。この増粘剤は、ポリビニルピロリドン(「PVP」)、改変されたセルロースポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース(「CMC」))、ヒドロキシメチルセルロース(「HPMC」)、ヒドロキシエチルセルロース(「HEC」)、アルギン酸塩、ゼラチン、デキストラン、シクロデキストリンまたはヒアルロン酸であり得る。
【0176】
この処方物を、室温にて貯蔵し得るか、または冷蔵し得る(4℃)。処方物が約0.15M NaClを含む場合、これが4℃で貯蔵される場合、(ナトリウム)ゲルが形成される。適用の前に、このゲルを、室温にて溶液に戻す。粒子であるか処方物を凝集する傾向があるか、または低い水溶性を有する薬物または治療剤(例えば、シルバデン(スルファジアジン銀))について、ゲルマトリックス中の貯蔵は、処方物の凝集または沈殿を予防し得るので、有利であり得る。
【0177】
あるいは、この処方物を、乾燥形態で調製し得る。緩衝水もしくは非緩衝水もしくは生理食塩水中のペクチンおよび生理学的に活性な薬剤の混合物を、凍結乾燥する。あるいは、ペクチン粉末および乾燥した生理学的に活性な薬剤を混合し、そして、所望の形態に圧縮する。乾燥形態は、パッド、錠剤、カプセル、または粉末として使用され得る。
【0178】
処方物または組成物中の生理学的に活性な薬剤およびペクチン質の相対的な量は、送達されるべき特定の薬剤に依存して広範に変化し得る。液体処方物において、薬剤は、約0.01%(w/v)〜約50%(w/v)の範囲であり得、一方、ペクチン質は、約0.01%(w/v)〜約40%(w/v)の範囲であり得る。乾燥処方物または懸濁処方物において、薬剤またはペクチン質のいずれかは、90%(w/v)以上の範囲であり得る。
【0179】
(実施例15)
(分類された陰イオン性多糖類を含む薬学的粉末処方物の調製、およびそれらのゲル化の性質)
以下の表2に詳述されるように、モデルとなる活性な薬剤、種々の陰イオン性多糖類、増粘剤、および任意の賦形剤を含む粉末処方物を調製した。処方物を調製するために使用したイオン性ポリマーを、以下に記載する。
【0180】
高分子量のアロエペクチン、(HMW AP)、DM<10%、Mw>1.0×106Da
低分子量のアロエペクチン(LMW AP)DM<10%、Mw=1.3×105Da
ポリガラクツロン酸、Sigmaから提供される(ポリGal A)、DM<3%、Mw=1.7×105Da
低分子量のペクチン(LMペクチン)DM=26%、Sigma、Mw=2.0×105Da
アルギン酸塩、中間の粘度、Sigma Chemical Co.
米国特許第5929051号の実施例10に記載される手順によって、分子量を、基準としてプルランを使用するサイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography)によって決定した。SECを、TSK−Gel G5000 PWXカラム(Toso Haas)を用いて行なった。サンプルを、0.05%(w/v)アジ化ナトリウムを用いて、水中で0.3mg/mlに調製した。50μlのサンプルを注射して、1分当たり1mlで0.05%アジ化ナトリウムを用いて抽出した。屈折率を直線で測定した。プルラン(4.04×105、7.88×105、および1.66×106Da)を、基準として使用した。分子量を、この基準の線形回帰線に対して計算した。
【0181】
現在、市販のアロエペクチンは、高度に精製およびマイクロ濾過され、cGMP(current Good Manufacturing Practice)の下で作製されている。特に、表に記載した他の多糖類は、かなりの量の不溶性の物質を含み、水に溶解した場合、濁った溶液を生じた。それらを全て、不溶性の物質を除去するためにマイクロ濾過して、アルコールで沈殿させて、使用前に乾燥させた。ウシ血清アルブミン(BSA)およびリゾチームを、薬学的に活性な薬剤として最初に使用した。BSAは、モデルとなる薬剤としての種々の薬学的処方物、特にタンパク質送達のための処方物を検査するために広範囲に使用されている。リゾチームが、抗菌性であることは公知である。ポビドン(ポリビニルピロリドン、K29−32)を、増粘剤として使用し、ラクトースを賦形剤として使用し、その両方を、Sigma Chemical Co.から入手した。
【0182】
粉末処方物を、表2に記載した全ての成分の液体混合物を調製することによって作製し、次いで、溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥した固体を形成した。液体前駆物質溶液および最終粉末の両方の組成物を、表2に示す。
【0183】
【表2】
*括弧内の数は、水分のない主成分についての乾燥形態における各成分の含量パーセント(w/w)を示す。
【0184】
凍結乾燥した固体を、微小容器を有するEberbachブレンダーを使用して製砕した。その結果生じた粉末を、100μmより小さい粒子サイズを有する粉末を生成するために、滅菌した100μmのナイロン膜の篩を使用して篩にかけて、次いで、連続して、種々の細孔サイズの滅菌したナイロン膜(40μm、70μm、および100μm;Cell strainer、Becton Dickinson Labware)を用いて、種々の粒子サイズの粉末(40μmより小さい、40μm〜70μmおよび70μm〜100μm)を得た。100μmより大きい粒子をまた、100μm〜200μmの粒子を生成するために、200μmの篩を使用してさらに篩にかけた。この篩分けを、ガラスフィルターホルダーを使用して減圧下で行い、そして粉末を、0.22μmの膜の上に回収した。この粉末を、室温で貯蔵した。
【0185】
コントロール粉末をまた、イオン性ポリマーを除いて、全ての成分を有する処方物を用いて作製した。
【0186】
2つの粉末処方物を、表2に従って、HMWアロエペクチンを用いて作製し、BSAを有する1つのサンプルおよびBSAを有さない別のコントロールを、調製し、製粉して、100μm未満にするように篩にかけた。これらの2つのサンプル両方の水分含量を、120℃の乾燥温度で、水分分析器を使用して2〜3%(w/w)に決定した。
【0187】
(実施例16)
(粉末処方物のゲル化特性)
実施例15に詳述される調製物の粉末処方物のゲル化特性を示すために、種々のペクチンおよびアルギン酸塩を用いて作製された粉末(10mg、100μmより小さい)を、2mlの生理食塩水で懸濁した。1つのサンプルセットの生理食塩水は、3mM塩化カルシウムを含み、その他は、塩化カルシウムを含まなかった。カルシウムの存在下において、その粉末粒子は水和したが、粒子の形態のままであり、そしてその懸濁液は、濁ったままであった。顕微鏡下で、カルシウム生理食塩水中の粉末粒子は、澄んで、透明なゲル粒子または部分に変化した。対照的に、カルシウムの非存在下で、その粒子は、約10分以内に急速に溶解して、そしてその懸濁は、透明な溶液に変化した(代表的にNaCl生理食塩水中に容易に溶解されないだけでなく、その生理食塩水中でもゲル化しない、高分子量のアロエペクチンを用いて作製された粉末を除いて、以下の議論を参照のこと)。
【0188】
カルシウムキレート剤EDTA(10mM)を、上記のカルシウム生理食塩水で懸濁した粉末に加えた場合、その粒子は、約10分以内に急速に溶解した。
【0189】
ペクチンまたはアルギン酸塩で作製した粉末を、通常ウシ血清中で懸濁した場合、同様の結果を得た。つまり、粉末粒子は、通常ウシ血清を含むカルシウム中で懸濁された後、固体粒子の形態のままであった。しかし、EDTAの添加時に、その粒子は、約10分でほとんど溶解した。同様の結果をまた、模倣の鼻液(100mlあたり、0.867g NaCl、0.44g Na2HPO4、0.108g NaH2PO4、0.058g CaCl2.2H2O、0.31g KCl。Lorinら、Journal of Laboratory Clinical Medicine、2、275−267、1994を参照のこと)中で得た。これらの実験は、カルシウムの非存在下であるが、遊離のカルシウムイオンを含む溶液中で懸濁した粉末粒子が、カルシウム架橋されたゲルを形成するか、あるいはカルシウムを、キレート剤によってゲルから除去した場合、ゲルが形成されなかったか、または安定せず、そして多糖類の粒子が溶解したことを証明する。
【0190】
上記のように、HMWアロエペクチンは、水溶性であるが、NaCl生理食塩水または緩衝生理食塩水に容易に溶解しないか、または部分的にのみ溶解する。HMWアロエペクチンを含む粉末粒子を、遠心分離(5分間、500g)によってNaCl生理食塩水から除去して、水に再懸濁すると、数分間で急速に溶解した。この性質は、低分子量のLMペクチン、ポリガラクツロン酸、LMWアロエペクチン、またはアルギン酸塩から作製された粒子(その粒子は、水およびNaCl生理食塩水の両方に容易に溶解できる)と対照的である。それにも関わらず、カルシウム含有生理食塩水または正常なウシ血清溶液から単離した粒子から調製した粒子を、水に入れた場合、粒子の形態のままであり、種々の多糖類の粉末粒子が、カルシウムイオンの存在下で全てゲル化したことを示した。
【0191】
(実施例17)
(ゲル化のための固体処方物および液体処方物の薬物放出と、コントロールの薬物放出との比較)
異なる陰イオン性多糖類およびファストグリーン色素(1mg/ml)の水溶液からなる液体処方物を、調製した。ファストグリーンは、低分子の治療剤を模倣するために使用した。使用した陰イオン性多糖類ポリマーの濃度は、HMWアロエペクチンについて0.5%、アルギン酸塩について1%、ならびにポリガラクツロン酸、LMWアロエペクチン、およびLM柑橘類ペクチンについて2%であった。固体処方物を調製するために、水溶性処方物の20マイクロリットルを、滴として秤量トレイに置き、凍結乾燥して、次いで、乾燥ディスクとして回収した。
【0192】
この乾燥処方物ディスク、または20マイクロリットルの液体処方物を、10mMのEDTAを添加した、または添加していない、60mmペトリ皿の3.5ミリリットルの正常なウシ血清の中に入れた。薬剤の放出を模倣する、ファストグリーン色素の拡散を、その処方物の最初の挿入点付近のグリーン色素の直径の拡散円を時間に対して測定することによって観測した。
【0193】
EDTAを有さない正常なウシ血清において、乾燥処方物ディスクは、固体ディスクの形態のままであり、透明かつ固体のゲル部分へと徐々に変化した。24時間後、全ての色素が、離れた所へ拡散した場合、乾燥処方物由来のゲルは、澄んで、透明に変化した。乾燥処方物のゲル化を、10mMのEDTAを有する生理食塩水中にゲルディスクを浸漬することによって、さらに確認し、それは、約30分で急速に溶解した。EDTAを含む正常なウシ血清において、乾燥処方物ディスクはまた、ディスクまたはフィルムのいずれかとして徐々に溶解した。
【0194】
対照的に、ほとんどの液体処方物は、元の滴に似ている別のゲル部分の形成を有さずに、徐々に溶解および/または離れた所へ拡散し、そして、2時間後、ペトリ皿を穏やかに振盪した後に検出した後、ゲル部分の薄層のみを形成した。従って、粉末処方物が、液体処方物より効率的にゲル化したことは、明らかである。それにも関わらず、25Gニードルを介して50mMのCaCl2溶液に滴下した場合、液体処方物は全て、まとまって、ゲルビーズを形成した。それにも関わらず、HMWアロエペクチンで作製された液体処方物は、まとまって、血清中の元の滴サイズより少しだけ大きいサイズを有するゲルの小片を形成した。これは、高分子量のアロエペクチンによって示されるゲル化についての高い効率を明確に示す。同時に、これらの観察は、乾燥処方物のインサイチュゲル化の効率が、液体処方物の効率より優れ得ることを、示す。
【0195】
EDTAを有する、および有さない正常なウシ血清中に浸された処方物の周囲に拡散するファストグリーンの円の直径を、乾燥処方物および液体処方物の両方について時間に対して測定した(図6を参照のこと)。EDTAを有さない固体サンプルまたは液体サンプルのいずれかのゲル化は、ゲル化が、乾燥処方物でより効率的であるという観察と一致して、色素または薬物放出が、ゆっくりであることを示す。同じ観察を、EDTAを有さない血清より、EDTAを有する血清中で少しだけ速い色素の拡散を示すHMWアロエペクチンを有する乾燥処方物を除いて、全ての処方物で観察した。これは、HMWアロエペクチンのもう一方の別の異なる特徴である、HMWアロエペクチンが、生理食塩水中にわずかに可溶性かまたは不溶性という事実に関連し得る。
【0196】
(実施例18)
(多糖類/薬剤の粉末処方物のインサイチュゲル化を誘導するための可溶性カルシウム塩を含む粉末の使用)
タンパク質の活性な薬剤(BSA)およびLMWアロエペクチンまたはアルギン酸塩から選択される多糖類を含む2つの粉末処方物(表2に記載されるような、サンプル2および5)を、100μm未満の粒子サイズを有する粉末を生成するために、篩にかけた。カルシウム含有粉末を、2.5%(w/v)ポリビニルピロリドン、10%(w/v)ラクトース、および1%(w/v)塩化カルシウムを含む液体処方物から作製し、その溶液を乾燥し、固体を粉砕して、粉末を40μm未満の粒子サイズに篩にかけて作製し、乾燥後、7.4%の塩化カルシウム含量を有するゲル誘導粉末を生じた。この多糖類粉末およびゲル誘導粉末を、重量比4:1で混合し、その粉末混合物の1.48%(w/w)の最終塩化カルシウム含量を生じた。
【0197】
その粉末混合物を、生理食塩水(1ml中に5mg)中で懸濁した。全ての3つの混合していない粉末(すなわち、ペクチン+タンパク質、アルギン酸塩+タンパク質、およびカルシウム含有ゲル誘導粉末)を、NaCl生理食塩水中に個々に懸濁した場合、溶解した。それにも関わらず、LMWアロエペクチン+タンパク質、またはアルギン酸塩+タンパク質を含む粉末を有するカルシウムゲル誘導粉末の混合物は、NaCl生理食塩水中に溶解しなかった。同じ結果をまた、活性な薬剤としてリゾチームを用いて得た。これらの結果は、カルシウム含有粉末が、体液の生理食塩水モデルと接触する場合、多糖類/タンパク質粉末をゲル化するために誘導することを示す。
【0198】
(実施例19)
(多糖類/薬剤の粉末処方物のインサイチュゲル化を誘導するための非常に低い溶解性の多価カチオン塩を含む粉末の使用)
水酸化アルミニウム(Al(OH)3)は、非常に低い水溶性であるが、ヒトの使用のための薬学的なアジュバントとして承認されている。Sigma Chemical Co.から購入した水酸化アルミニウム懸濁液は、白っぽく、濁っていたが、均質な粒子懸濁液であった。アロエペクチン溶液(水に1ml当たり2mg)は、水酸化アルミニウム粒子の目に見える大きい凝集体の形成によって示されるように、不溶性の水酸化アルミニウムゲル懸濁液と混合した場合、ゲルを形成した。同じ観察をまた、他のペクチンおよびアルギン酸塩で観察した。その凝集体は、適切なポリマー/水酸化アルミニウムの比を、達成した場合、大きくて容易に目に見えた。同様の結果をまた、形成された凝集体は、水酸化アルミニウムを用いた凝集体ほど、大きくなかったが、リン酸カルシウム(Sigma Chemical Co.)で観察した。水酸化アルミニウムおよびリン酸カルシウムの両方は、比較的、不溶性の物質(Merck Index、第13版)であるが、これらの非常に低い溶解性の塩は、水和した場合、表面で明らかにイオン化され、アロエペクチンと反応し得る。
【0199】
さらに、この観察を調査するために、水酸化アルミニウムおよびリン酸カルシウムの粉末を、水または生理食塩水(1ml当たり10mg)中で懸濁して、次いで、種々の最終濃度(2.5〜0.0012mg/ml)でHMWアロエペクチン溶液と混合した。大きい凝集体の形成によって示される同じゲル化を、観察した。この同じ観察をまた、アルギン酸塩、LMペクチン、およびポリガラクツロン酸を用いて行ない、非常に低い溶解性の二価または多価の金属カチオンの塩をゲル誘導剤として使用することが可能であることを示した。
【0200】
例として、実施例15のようなアロエペクチン(HMW)を用いて作製した粉末処方物を、水酸化アルミニウム粉末と3:1の比で混合した。その混合物(10mg)を、2mlの生理食塩水中で懸濁した。大きい凝集体が、すぐに形成された。トルイジンブルーを、イオン性ポリマーの粉末粒子を染色するために、懸濁液に添加した。30分またはそれ以上の後、懸濁液の小さい滴を、スライドガラスの上に置いて、顕微鏡下で観察した。この凝集体は、ピンクに染色した処方物の粉末粒子および不透明な灰色がかった水酸化アルミニウム粒子の両方からなり、その凝集体の形成を確認した。
【0201】
第2の例として、LMWアロエペクチンを用いて作製した粉末処方物を、水酸化アルミニウム粉末と3:1の比で混合し、そして、その粉末混合物を、生理食塩水中で懸濁した。凝集体は、形成されたが、少数のピンクに染色された処方物の粉末粒子を顕微鏡下で観察し、そしてその凝集体は、主に水酸化アルミニウム粒子からなるように見えた。これは、その処方物の粉末粒子が溶解し、そしてその不溶性の塩が、処方物粒子全体のゲル化を引き起こさなかったことを示す。
【0202】
しかし、多糖類処方物/水酸化アルミニウムの粉末混合物を、3mMの塩化カルシウムを含む生理食塩水中で懸濁した場合、その多糖類の処方物粒子を再び観察し、形成された凝集体はまた、その処方物粒子および水酸化アルミニウム粒子からなった。同じ凝集体の形成をまた、混合物を、正常なウシ血清中で懸濁した場合に観察した。
【0203】
非常に低い溶解性の金属イオンの塩は、処方物粒子を含む多糖類に容易に浸透し得ず、そしてそれによって、粒子全体のゲル化を引き起こし得ず、粒子の表面上のポリマーの架橋またはゲル化のみを引き起こし得る。なぜなら、それらは、非常に低い溶解性であるか、または不溶性に近いため、解けていない多価のカチオン含有粒子は、ゲルのための物理的キャリア、または二価もしくは多価のカチオンを架橋する持続性の供給源として作用し得るからである。さらに、処方物の粉末粒子および非常に低い溶解性の固体ゲル誘導薬剤は、ゲル化した凝集体組成物の形成を引き起こし得る。混合物中のこれらの2つの異なる粉末の比および相対的な粒子サイズに依存して、形成される凝集体のサイズおよび他の特徴は、変化および/または調節され得る。高い比または低い比で、凝集体の粒子サイズは、非常に小さくなり得、別の型の粒子によって囲まれる1つの型の1つの粒子を有するが、約1の比で、その粒子は、大きなネットワークを形成するネットワークとして相互接続し得る。従って、種々の条件下で形成される凝集体ゲル複合体は、投与部位(例えば、粘膜表面および/または鼻腔)で形成されるインサイチュゲルの物理的特性、溶解特性、および持続放出の特性を調節するために使用され得る。
【0204】
(実施例20)
(粉末処方物由来の薬学的に活性な薬剤の持続性放出)
活性な薬剤の放出に対するインサイチュゲル化の粉末処方物の効果を、放出媒体として模倣した鼻液(SNF)を使用して評価した。その粉末処方物を、種々の量のポビドン、およびラクトースを用いて上記のように作製したが、全ては、同じタンパク質(BSA)含量(主成分の乾燥重量に対して0.1%)を有した(表3を参照のこと)。コントロール粉末は、イオン性ポリマー(HMWアロエペクチン)を除いて全ての成分を含有した。
【0205】
【表3】
10mgの粉末を、0.25mlのSNF中で懸濁した。30分後、その溶液または上清を、遠心分離によって粒子またはペレットから分離し、その上清およびペレット中のタンパク質を、SDSゲル電気泳動およびデンシトメトリー分析によって分析した。各々の処方物由来のタンパク質薬剤の放出パーセントを、以下の式−[上清中のタンパク質/(上清中のタンパク質+ペレット中のタンパク質)]×100%によって測定した。タンパク質が、コントロール粉末からほとんど全て放出し(90%より高く放出した)、そのタンパク質が全て完全に溶解したことを観察した。これに対して、そのタンパク質の放出は、アロエペクチンを有する粉末から有意にゆっくりとなり;55%(処方物1)または68%(処方物2)のみが、イオン性ポリマーを用いて作製した粉末と一緒に放出した(図7)。同様の結果をまた、活性な薬剤としてリゾチームを用いて得た。タンパク質の放出が、処方物1より、処方物2からより速くなったこともまた見出された。その処方物2は、2.5%のPVPおよび10%のラクトースを有したが、処方物1は、15%のPVPを含み、ラクトースは含まなかった(表3)。これは、放出速度が、使用した賦形剤の量および型によってさらに調整され得ることを示す。
【0206】
(実施例21)
(薬学的に活性な薬剤、多糖類、ゲル誘導組成物、および他の賦形剤の粉末の物理的混合物)
表2のような粉末処方物を、活性な薬剤の非存在下で作製し、適切なサイズに篩分けした。薬学的に受容可能な賦形剤を有するか、または有さないで作製した活性な薬剤の粉末を、次いで、ポリマー粉末と混合した。本明細書中の他の場所で記載したような1種以上の固体ゲル誘導組成物もまた、必要に応じて含み得る。次いで、粉末の混合物を、動物に送達した。
【0207】
(実施例22)
(抗原を含む粉末ワクチン処方物の動物に対する鼻腔内送達)
高分子量のアロエペクチンおよびジフテリア毒素変異体CRM(DT−CRM)抗原を含む粉末ワクチン処方物を、水溶液中で表4に記載した成分を溶解することによって調製し、その溶液を凍結乾燥して、粉末を生じ、その粉末を粉砕し、次いで、その粉末を篩分けした。抗原を除いて全ての成分を含むコントロール処方物を、同様に調製した。
【0208】
【表4】
このワクチン処方物を、10mgの粉末処方物につき7.75μgの抗原を送達するために作製した。200g〜250gの重さのラットを、まず麻酔して、10mgの粉末を、以前に記載した(RydenおよびEdman、Int.J.Pharm.83(1992)、pp.1〜10;Schipperら、Pharm.Res.10(1993)、pp.682〜686)ように、5mlのシリンジに連結した200μlのピペットチップを使用して各々の鼻孔内へ、ゴム管を介して3mlの空気を使用して送達した。
【0209】
血清サンプルを、接種後1週間のラットから回収して、特定の血清IgG(免疫グロブリンG)を、ELISA(酵素免疫測定法)によってアッセイした。IgG力価についての終点を、バックグラウンド(添加した血清を有さない抗原をコーティングしたウェルの吸光度)より50%大きい吸光度値を有する最も高い希釈の逆数として測定した。
【0210】
DT粉末を受容した2匹のラットは、たった1週間後、800の平均IgG力価を有するDT−CRM抗原に対する特定の抗体を発現した。DT−CRM抗原を有さないコントロール処方物を受容した2匹のコントロールのラットは、そのような抗体を発現しなかった(図8)。この結果は、粉末ワクチン処方物を鼻に投与する工程が、ラットにおける特定の免疫応答を効率的に誘導したことを示す。
【0211】
(実施例23)
(非経口での動物に対する粉末処方物の送達)
実施例16に記載したように、粉末粒子は、カルシウム含有生理食塩水中で懸濁した場合、粒子として残るか、またはゲル粒子に変化する。従って、その粉末を、カルシウム生理食塩水またはカルシウム緩衝生理食塩水中で懸濁した後、粒子懸濁液として注射し得る。代替として、その処方物の粉末を、実施例17に記載したように、カルシウム粉末と予備混合し得、その粉末を、動物の組織への注射の前に生理食塩水または緩衝生理食塩水中で懸濁する。より小さい粉末粒子サイズが、懸濁した粉末の注射に関する実施形態のために所望され得るが、100μmより小さい粉末粒子サイズを有する実施例16に記載した処方物の粉末を使用した。
【0212】
各粉末(80mg)を、3mMのCaCl2を含む0.4mlの生理食塩水中で懸濁して、マウスに皮下に注射した(注射部位につき0.1ml、マウス当たり2つの部位)。注射後4時間で、そのマウスを屠殺して、皮膚をはがして、注射部位を調べた。水和してゲル化した粒子を表す小結節または隆起した領域を、イオン性ポリマーを有する粉末処方物を有する注射部位で観察した。対照的に、そのような小結節または隆起した領域を、イオン性ポリマーを有さないで作製したコントロール粉末で観察しなかった。さらに、その注射部位(コントロール由来の注射部位を含む)は、おそらくポリビニルピロリドン(より高い水吸収性ポリマー)の存在のために、非常に湿っていた。
【0213】
(実施例24)
(外因性のゲル誘導剤および組成物によって影響される場合の液体処方物のゲル化)
0.6%(w/v)のHMWアロエペクチン水溶液を、0.3%(w/v)の最終ポリマー濃度および0.0019〜0.5%(w/v)の最終塩化カルシウム二水和物の濃度を達成するために、種々の濃度で、1:1の比(1ml対1ml)で、塩化カルシウム二水和物溶液と混合した。以下の表5を参照のこと。混合物を、すぐに一緒にボルテックスして、次いで、チューブを室温の状態にしておき、時間に対して観察した。チューブを傾けた場合、その溶液は、完全または部分的に凝固して、もはや自由に流動しなかったので、完全または部分的なゲル化が、上記の0.03125%(w/v)(2.125mM)の最終塩化カルシウム濃度で混合すると、はっきりと生じた。0.0156%のCaCl2濃度で、溶液の濃度が増加して顆粒状のゲル部分が存在した。しかし、0.0078%より小さい(0.53M)またはそれより低い最終濃度で、ゲル化の徴候はなく、その混合物は均質のままであり、24時間より後もそのままであった。
【0214】
【表5】
二価カチオンの結合が、インサイチュゲル化を増加し得ることを示すために、実施例3に記載したように、正常なウシ血清ゲルを用いて境界移動アッセイを行なった。従って、0%、0.0039%、または0.0078%の塩化カルシウムまたは塩化亜鉛を含む1ml当たり3mgの1mlペクチン溶液を、10×75mmのガラス試験管中の3mlの正常なウシ血清の上に徐々に層にした。間期に開始して、ゲルは、ペクチン溶液相中に徐々に形成した。そのゲルは、溶液と比較して、ゲルのわずかに増加した濁度のために、光源下で容易に識別され得る。従って、界面でのペクチン溶液相中のゲルの長さ(厚さ)を、時間に対して測定した。その結果は、塩化カルシウムを添加しなかったコントロールと比較した場合、ゲル化が、試験した外因性の塩化カルシウム濃度の両方で増加したことを示した(図9)。
【0215】
溶液をカルシウムイオンを含む組織または体液に投与する場合、改良されたゲルが誘導されるという予測外の結果を有する、少量の二価カチオン(例えば、カルシウムまたは亜鉛)(すなわち、約0.0156%(w/v)未満)を、有意なゲル化を引き起こさないペクチン/薬剤溶液に添加し得るという点で、表5の結果が、有利に利用され得ることは、注目すべきである。
【0216】
(実施例25)
(LMペクチンの溶液特性に対する種々の一価カチオンの影響)
NaClおよびNH4Clを、種々の濃度で水中で調製した。次いで、それらを、LMペクチン、HMWアロエペクチン、またはHMペクチンの溶液と1:1v/vで混合した。このHMペクチン(DM=64%、Sigma chemical Co)を、実施例15に記載したような不溶性の物質を除去するために濾過した。次いで、その溶液を1時間、室温で観察した。次いで、それらを、2時間以上、4℃で冷却して、再び調べた。
【0217】
50%未満のメチル化の程度を有するペクチンは、室温で塩濃度に依存してペクチンの沈殿物を示した(表6および表7を参照のこと)。HMWアロエペクチンは、最も沈殿物を形成する傾向があり、続いてLMペクチンである。HMWアロエペクチンを使用して、ペクチンの濃度に依存する影響もまた、観察した(すなわち、より低い濃度でのペクチンは、沈殿物を形成する傾向が少ない)。例えば、沈殿物の形成は、0.5%のHMWアロエペクチン溶液での0.15NaCl中でゆっくりと起こるが、0.1%のペクチン溶液では起こらなかった。さらに、沈殿物を、0.15MのNaCl中の0.5%のLMWアロエペクチンで観察しなかったため、分子量の影響が存在した。HMペクチン溶液は、試験した任意の濃度または室温でいずれかの塩を有する沈殿物またはゲルを形成しなかった。
【0218】
【表6】
4℃での冷却は、沈殿物の形成を増加する。それにも関わらず、0.1%のHMWアロエペクチンを用いると、透明のゲルが、0.15Mおよび0.2MのNaClで形成した。このゲルは、可逆的であり、室温に戻る場合、溶液に戻るように変化する。この可逆的なゲル化は、4℃と室温との間で変化することによって数回にわたって行なわれ得る。一旦、室温で溶液に戻る変化をすると、その調製物はまだ、実施例25に記載したように正常なウシ血清を有するインサイチュでゲル状である。
【0219】
これらの観察は、沈殿物またはゲル化が、低DMおよびHMWに関連することを示す(すなわち、より低DMおよびより高い分子量は、ペクチンが塩によって沈殿しやすい)。顕著な差異を、NaClとNH4Clとの間で観察し;沈殿物の形成のために必要とされるNH4Clの濃度は、NaClを用いるより、非常に高かった。類似のペクチンの濃度に依存する影響もまた、観察した。表7を参照のこと。0.5%のHMWアロエペクチンを用いると、沈殿物が、室温で0.6Mおよび4℃で0.4Mで生じた。
【0220】
その沈殿物は、白っぽく、塩濃度に依存する微細または大きな顆粒様であり得る。その沈殿物は、切り取った点または沈殿物が最初に現れた濃度で最も微細であった。これは、実際に、薬物送達のために使用され得るペクチンの微細な粒子を作製するための1つの効率的な方法である。
【0221】
【表7】
異なるペクチンの基本的な特性を明らかにすることを越えて、これらの観察は、生理的イオン強度または(0.9%(w/v)〜0.154M NaClによって表されるような)等張液で、HMWアロエペクチンを有する液体処方物を調製するために、処方物が、4℃で溶液として貯蔵されるか、または1mg/mlより大きいペクチン濃度(それは、冷蔵庫で貯蔵され得る必要がある不安定な活性な薬剤(例えば、タンパク質)の液体インサイチュゲル化の処方物の生理的強度として想定され得る)が使用される場合、NaClの代替物が必要とされることを示す。低温貯蔵に対するそのような溶液由来のペクチンのうちのいくつかまたは全ての沈殿物は、非常に望ましくない。そのような処方物に使用され得る1つのそのような代替の塩は、NH4Clである(特に等張液(0.84%(w/v)または0.157M、それはまたイオン強度で0.154MのNaClに等しい)についての濃度で)。この濃度で、NH4Clはまた、そのような液体のペクチンベースの薬学的組成物のインサイチュゲル化を改良する。
【0222】
(実施例26)
(鼻腔中のアロエペクチンのインサイチュゲル化)
0.5%アロエペクチン溶液を、タンパク質(BSA)を有するか、または有さない、10mMのNaH2PO4/Na2HPO4緩衝液、0.84%のNH4Cl、pH7.4中で調製した。その液体処方物を、マウスの鼻孔の上に直接的に滴下することによって、鼻腔内に送達し、続いて、メトファンの吸入(2つの鼻孔の間に一様に分けてマウス1匹あたり20μl)によって麻酔した。接種後4時間で、マウスを屠殺し、組織をホルマリンで固定した。連続的な横断面を、鼻腔前部から始まる眼窩から作製した。
【0223】
ゲルを、トルジエンブルーおよびH&Eを用いて組織断片を染色することによって検出した。そのトルジエンブルーは、ピンク色がかった/紫がかった物質としてインサイチュゲルに現れたが、H&Eは、ゲルを、青白くピンクがかった色に染色した(図10)。そのゲルは、種々の形状およびサイズであり、そして、中隔および中央および下位の甲介近くの領域を含む種々の鼻腔内領域に見出され得る。
【0224】
アロエペクチン濃度の影響を示すために、0.25%または0.5%でのアロエペクチン溶液を、濃度につき2匹のマウスに鼻腔内に送達した。ゲル化を、送達後、4時間、顕微鏡によって調べた。各断面のゲルの領域を、ImageJソフトウェア(National Institute of Health)を使用することによって測定し、mm2として表した。同じ位置で横断面上のゲル領域を、鼻腔内に存在するゲルの相対量の間接的な測定として使用した。従って、その結果は、鼻腔内に形成したゲルの量が、ポリマー濃度に依存することを示唆し、より多くおよびより大きいゲルが、0.25%より0.5%を有して鼻腔内に検出されたことを示した。
【0225】
(実施例27)
(鼻腔でのインサイチュゲル化についての他のペクチンとの比較)
種々の市販のLMペクチンをHMWアロエペクチンといっしょに用いた(表8)。市販のペクチン、すなわちゲヌ(Genu)ペクチンおよびポリガラクツロン酸を、Sigma Chemical Co.から購入し用いた。ゲヌ(Genu)ペクチンLM12Gを再処理することにより得られる1つのサンプルもまた用いた。これを水に溶解し、マイクロ濾過し、アルコール沈澱により回収し、そして真空下で乾燥された後ゲヌ(Genu)ペクチンLM12G(R)と称した。ゲヌ(Genu)ペクチンスプレンディット型100の分子量は、他の低分子量ペクチンと類似であった(表8)。AおよびBとして称される2つの異なるHMWアロエペクチンサンプルを用いた。
【0226】
すべての市販のペクチンサンプルは、水中に2%(w/v)溶液として調製され、それから2倍の生理食塩水(0.3M NaCl)で1:1に希釈された。これら市販のペクチンは、溶かしたとき低pH、すなわち3〜4を示す。この溶液のpHは、NaOHで6.5に調整した。HMWアロエペクチンは、0.84%(w/v)NH4Cl中に0.5%(w/v)の最終濃度で上記のように調製された。HMWアロエペクチン溶液のpHは5.5〜6.0であったので、pH調整は行わなかった。すべてのサンプルを、サンプルあたり2匹のマウスで上記のようにマウスの鼻内に送達した。ゲル形成は、4時間後に上記のように試験した。
【0227】
【表8】
二つの切片を、各マウスで目の眼窩前部に始まる鼻腔から作った。同じ位置の切片についてのそれらのゲル面積は、鼻腔に存在するゲルの相対量の間接的な測定値として用いた。各群2匹のマウスからの4つの切片すべてについての総ゲル面積を決定し、これを4で除算して、1つの鼻の切片あたりの平均ゲル面積を出した。この結果は、ゲルがゲヌ(Genu)ペクチンLM12G、ゲヌ(Genu)ペクチンLM12G(R)、ポリガラクツロン酸およびHMWアロエペクチンで検出されるが、低度のメチル化および代表的な分子量を有するペクチンであるLM18Gおよびスプレンディット型100ペクチンを使用している処方物ではゲルが検出されないことを示した。ゲヌ(Genu)LM12Gおよびポリガラクツロン酸で検出されるゲルの面積は非常に制限されるか、または少なくとも2分の1の濃度で用いられたHMWアロエペクチンから調製される処方物について測定されたゲル面積と比較して6.5分の1から33分の1の大きさであった(表8)。これら結果もまた先行技術のペクチンと比べ、HMWアロエペクチンの予測外にすぐれたゲル化の特性を説明する。
【0228】
(実施例28)
(インサイチュゲルの鼻の残存時間)
インサイチュゲルの鼻の残存時間を決定するために、0.84%(w/v)NH4Cl中HMWアロエペクチン溶液(5mg/ml)を経鼻的に送達し、ゲルの形成を、時間点あたり二匹のマウスを用いて種々の時間点で試験した。ゲル存在の相対量を、上記のように鼻腔組織切片についてゲル面積を測定することにより決定した。
【0229】
この結果は、ゲルが24時間通して鼻腔に存在したが、48時間で消失したことを示した(表9)。鼻腔の切片で測定したゲル面積に基づき、50%クリアランスは24時間で起こった。このように、本ゲルは24から48時間の間、鼻腔にとどまった。
【0230】
【表9−1】
(実施例29)
(動物に液体処方物で経鼻的に送達したあとに続くDT−CRMおよびインフルエンザ抗原に対する増加した免疫応答)
抗原、動物および接種:2つの抗原、DT−CRM(ジフテリア毒素変異体CRM)および不活性サブビリオンインフルエンザウイルス成分抗原(A/New Caledonia/20/99,H1N1)を用いた。7匹の6〜8週齢、雌性Balb/cマウスに、2または3回、鼻内に10日間間隔をあけて抗原(0.5mg/ml)、HMWアロエペクチン(DT−CRMを5mg/mlおよびインフルエンザを2.75mg/ml)、または両方の組み合わせからなる処方物をマウスの鼻孔に直接それらを滴下することにより(20μl/マウス)、接種した。本抗原用量は10μg/マウスであった。本抗原処方物を、0.84%NH4Clおよび10mMリン酸緩衝液(pH7.4)中に調製した。
【0231】
サンプルの収集およびELISA:血液および肺の洗浄物サンプルを、最終接種後2週で回収した。特異的血清IgG(イムノグロブリンG)と肺のIgA(イムノグロブリンA)を、間接的なELISA(酵素結合免疫吸着法)により測定した。インフルエンザ(Flu)、Protein Science Co.より入手されたA/New Caledonia/20/99(H1N1)の組み換え体HA(ヘモアルグチニン)タンパク質もまた、HA特異的応答を検出する抗体として用いた。IgG力価の最終点は、バックグラウンド(血清を加えていない抗原コートしたウェルの吸光度)より50%大きい吸光度を有する最も高い希釈の逆数として決定した。各肺の洗浄物を、2つの別のELISAプロトコールで抗原特異的IgAおよび総IgAについてアッセイした。この結果はng(特異的)/μg(総計)として表した。抗原特異的IgAのレベルを決定するために、本プレートは抗原でコートし、また精製マウスIgAスタンダード(1.0から0.002μg/ml)を連続希釈した。抗原特異的IgAのレベルは、精製IgAスタンダードの吸光度の値により出した標準曲線から計算した。総IgAは、スタンダードとして精製マウスIgAを用いたサンドイッチELISAで決定した。
【0232】
血清中平均IgG力価および標準誤差を伴う肺洗浄物中の特異的IgA/総IgAの比を、すべてのマウスの群で決定した。平均を、スチューデントt検定を用いて比較した。10より大きい力価を有する血清サンプルまたはコントロールより2倍高い特異的IgA/総IgAの比を有する肺洗浄物サンプルを応答するものとみなした。
【0233】
結果
血清IgGおよび肺のIgAの強力な応答性を、抗原をアロエペクチンで送達したときのみ得た。抗原のみでは、最小の応答しか検出できなかったか、または応答が全く検出できなかった。
【0234】
DC−CRM:血清IgGおよび肺のIgA応答性は、単回または複数回、どちらの接種後も、抗原のみを与えるより抗原をアロエペクチンと組み合せたとき、有意に高かった。最大の応答を、アロエペクチン/DT−CRMで単回接種後3週目に検出した。この応答はまた、アロエペクチン/DT−CRMでより早く始まり、2週目で検出できた。
【0235】
3回接種後、アロエペクチン/DT−CRM群のマウスは、DT−CRMのみの群より有意に高い(それぞれ50倍または100倍)血清IgGおよび肺のIgA力価を有した(図11aおよび11b)。加えて、アロエペクチン/DT−CRM群の7匹すべてのマウスは、血清IgGおよび肺のIgA両方に関して応答したが一方で、DT−CRMのみを与えた群では7匹中4匹のみが血清IgGに関して、また7匹中3匹のみが肺のIgAに関して応答した。アロエペクチンのみの群では応答を検出しなかった。
【0236】
インフルエンザ:2回の接種後、アロエペクチン/Flu抗原を受けたマウスはFlu抗原のみを与えられた群より有意に高い血清IgG(6倍)および肺のIgA(60倍)力価を有した(図11cおよび11d)。血清IgGについて、アロエペクチン/Flu抗原群およびFlu抗原のみの両群で、7匹すべてのマウスが応答した。しかしながら、肺のIgAについて、アロエペクチン/Flu抗原群で7匹中6匹のマウスが応答し、Flu抗原のみの群では7匹中1匹のマウスのみが応答した。アロエペクチンのみの群では、応答を検出しなかった。
【0237】
同様の結果をまた、組み換え体HAタンパク質をHA−特異的IgGまたはHA−特異的IgAを測定するELISAにおいて抗原として用いたときに得た。
【0238】
(実施例30)
(ラクトースおよびアロエペクチンを含有する、インサイチュでゲル化するインフルエンザ鼻粉末ワクチン組成物)
粉末鼻インフルエンザワクチン処方物を、ラクトース(Sigma Chemical CoまたはNF grade,Fisher Scientific)、Irving TexasのDelSite Biotechnologies Incから入手した非常に低いメトキシルかつ高分子量のアロエペクチン、およびインフルエンザ抗原溶液の混合により調製した。抗原はサブビリオン抗原成分であり;A/New Caledonia/20/99株、H1N1、に由来した。
【0239】
ラクトースおよびアロエペクチン(AP)を水に溶解し、一方で抗原を表1に示した濃度で水または緩衝化生理食塩水(10mM リン酸,pH7.2;150mM NaClまたはNH4Cl)中に調製し、そのあと指示した容量に混合した。この液体混合物を、そのあと凍結乾燥した。凍結乾燥については、この液体混合物を−80度で1時間凍結し、そのあと100ミクロンHgより小さくなるまで減圧下で(Centrivap,Labconco)、乾燥した。凍結乾燥は、多孔の固体を生じ、40〜100μmの大きさにした粉末を作るために40および100μmの滅菌ナイロン膜(cell strainers,BD)を用いて減圧下マイクロ混合機で製粉した。混合スピードおよび混合時間に依存して、40〜100μm粉末の収率は変動するが、乾燥処方物の50%より大きかった。抗原なしの類似のコントロール処方物はまた、抗原を含有することなしに調製された。
【0240】
【表9−2】
表9に示したように、本粉末を、約98.7wt%のラクトース、1重量%のアロエペクチン、0.289重量%のインフルエンザ抗原を含むように算出し、そして10mg粉末処方物あたり28μg抗原を送達するために処方した。抗原なしのコントロール処方物もまた調製した。
【0241】
3匹の200グラムSprague−Dawleyラットの1群を、抗原含有処方物で鼻内に接種し、3匹のラットの別の群にコントロール処方物を鼻内に接種した。第1にラットを麻酔をかけ、本粉末10mgを、以前記載したように(Ryden and Edman,Int.J.Pharm.83(1992),pp.1−10;Schipper et al.,Pharm.Res.10(1993),pp.682−686)ゴムチューブを通して3mLの空気を用いて、5mLシリンジに連結した200μlピペットチップを用いて各鼻孔に送達した。ラットを、同様の手順を介して10日後に再び処置した。
【0242】
血液サンプルを、2回目の接種後、2、4、6週目にラットから採取した。肺の洗浄サンプルをまた、実験の最後(6週目)に採取した。肺の洗浄を、動物を安楽死させた後、3mlのリン酸緩衝化生理食塩水を用いて気管へ挿入することによって行った。特異的血清IgG(イムノグロブリンG)および肺のIgAを、間接ELISAでアッセイした。96−ウェルプレートを、インフルエンザ抗原でコートし、抗原と結合した、血清サンプル由来の特異的IgGを、抗ラットIgGアルカリホスファターゼ複合体で検出した。IgG力価の最終点を、バックグラウンド(血清を加えない抗原コートしたウェルの吸光度)より50%大きい吸光度の値(410nm)を有する最も高い血清の希釈の逆数として決定した。
【0243】
各肺の洗浄を、2つの異なるELISAプロトコールで抗原特異的IgAおよび総IgAについてアッセイした。この結果を、ng(特異的)/μg(総計)として表した。抗原特異的IgAのレベルを決定するために、プレートを抗原でコートし、また精製ラットIgAスタンダードを連続的に希釈した(1.0〜0.002μg/mL)。抗原特異的IgAのレベルを、精製IgAスタンダードの吸光度の値で出した標準曲線から算出した。総IgAを、スタンダードとして精製ラットIgAを用いるサンドイッチELISAで決定した。
【0244】
特異的血清抗体をまた、ニワトリの赤血球(RBC)を用いた血球凝集抑制アッセイ(HAI)で測定した。HAI力価の終点は、RBCの血球凝集の正の阻害を生じた最も高い血清希釈であった。血清中の平均IgG力価およびHAI力価、また肺の洗浄物中の特異的IgA:総IgAの比を、ラットのすべての群で決定した。
【0245】
コントロール群では、抗体の応答を検出できなかった。ELISAおよびHAIで示したように、高い血清抗体応答を、インフルエンザ抗原粉末処方物を受けた3匹すべてのラットで観察した(表2)。ヒトでは、40以上の血球凝集抑制(HAI)力価を、一般的に正の閾値とみなす。処置したラットから観察されたHAI力価は、1:40よりすべて高く、ELISAによるIgG力価に比例した。加えて、肺の特異的IgAの有意なレベルをまた、実験の最後(すなわち6週目)で検出した。
【0246】
【表10】
(実施例31)
(ラクトース、アロエペクチン、およびポリビニルピロリドンを含むインサイチュでのゲル化のインフルエンザの鼻の粉末ワクチン組成物)
粉末の鼻のインフルエンザワクチン処方物を、表11のメニューに従って、ラクトース(Sigma Chemical CoまたはNFグレード、Fisher Scientific)、アロエペクチン、ポリビニルピロリドン(ポビドンK29−32、USP;Sigma Chemical Co)、およびインフルエンザ抗原溶液(スプリットビリオン;A/New Caledonia/1/99、H1N1)を混合することによって調製した。ラクトース、アロエペクチン、およびポビドンを、水に溶解し、一方、抗原を、水または緩衝生理食塩水(10mMのリン酸、pH7.2;150mMのNaClまたはNH4Cl)中で調製した。次いで、その液体混合物を、凍結乾燥して、上記のように粉末中で作製した。抗原を有さないコントロール処方物もまた、抗原を含まずに調製した。その粉末を、約98.8重量%のラクトース、0.5重量%のアロエペクチン、および0.2重量%の抗原を含むように計算し、10mgの粉末処方物につき20μgの抗原を送達するように処方した。抗原を有さないコントロール処方物もまた、調製した。
【0247】
【表11】
動物実験および抗原の測定を、測定しなかった肺洗浄サンプルを除いて、上記と同様に行なった。抗体応答は、コントロール群において検出されなかった。ELISAおよびHAIによって示すように、高血清抗体応答を、インフルエンザの抗原粉末処方物を受容した全ての3匹のラットにおいて観察した(表4を参照のこと)。
【0248】
【表12】
(実施例32)
(粉末処方物のコントロールのゲル化または沈殿物の形成に対するpHの使用)
pHの変化に応答して、ゲル化または沈殿物を形成する、多くのポリマーが存在する。例えば、キトサングルタミン酸は、6.5までのpHで溶解する。しかし、pH6.5を超えると、不溶性になり、コントロール薬物送達のために使用され得る沈殿物またはゲル様物質を形成する。従って、キトサンを有する液体薬物処方物を、pH6.5以下で調製し、上記の方法を使用して、乾燥粉末中で作製した。送達の後に、これらの粒子は、7.0〜7.4のpHを有する体液または分泌物によって水和され得るが、その内部の緩衝能力のために、それらは、部分的または完全に溶解され得る。しかし、鼻腔内送達の場合において、鼻液は、酸性であり、5.5と同じくらい低いpHを有し得る(Englandら、Clinical Otolaryggology 24、67−68、1999;Iresonら、Clinical Science 100、327−333、2001)。
【0249】
従って、次いで、その処方物の粉末を、緩衝粉末(例えば、pH7.4でのリン酸緩衝液)の適切な量で混合した。送達および水和に対して、その緩衝剤を、水和の際に急速に溶解し、pH7.4で局所的な環境を確実にして、それによって、より長い期間、処方物の粒子の不溶性または不溶性の状態を維持する。
【0250】
本出願、種々の公報、および特許の全体が、参照される。これらの公報および特許の開示は、全ての目的のため、特に薬学的組成物の処方物に関する教示のために、それらの全体が本明細書中で本出願の参考として援用される。
【0251】
好ましい組成物または処方物および方法が開示されているが、多数の改変および変化が、上記の教示の見地を受けて可能であることは、当業者に明らかである。そのような改変および方法が、添付した特許請求の範囲に記載した本発明の精神および範囲から逸脱しないことは、当業者によって、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0252】
本発明の好ましい実施形態のより完全な理解のために、参照として添付の図面と併せて以下の詳細な説明を作成し、ここで、同様の数字は、同様の要素のことをいう。
【図1】図1は、アロエペクチンのカルシウムゲル化に対するNaClの関係を表す棒グラフである。
【図2】図2は、正常な動物血清での種々のアロエペクチン濃度のアロエペクチンのインサイチュゲル化を示す。
【図3A】図3Aは、正常な動物血清でのHEC増粘剤の存在下におけるアロエペクチンのインサイチュゲル化を示す。
【図3B】図3Bは、正常な動物血清でのアルギン酸ナトリウム増粘剤の存在下におけるアロエペクチンのインサイチュゲル化を示す。
【図4】図4は、低分子有機化合物(ファストグリーン)を使用するアロエペクチンのインサイチュゲルで得たゆっくりとした放出効果を示す。
【図5】図5は、定義された領域におけるbFGF処置と細胞数との間の関係を表す棒グラフを示す。
【図6】液体または乾燥処方物からのファストグリーンの放出速度。図6aは、LMペクチンについての結果を示し、そして図6bは、LMWアロエペクチンについての結果を示す。実施例17に記載したように、正常ウシ血清に入れた処方物の周囲の拡散円の直径を、時間に対して測定した。
【図7】実施例20に記載したように、高分子アロエペクチンを含み、模倣した鼻分泌液に懸濁した粉末処方物からの制御されたタンパク質放出。
【図8】実施例22に記載したように、粉末ワクチン処方物のラットに対する鼻腔内送達後のDT−CRM抗原に対する特異的血清IgG応答。
【図9】実施例24に記載したように、正常なウシ血清と接触しているペクチン処方物の改良されたインサイチュでのゲル化は、外来のカルシウムの添加によって達成される。
【図10】実施例26に記載したように、鼻の粘膜表面上のゲルの形成を示す、HMWアロエペクチン溶液(0.5%、w/v)の鼻腔内送達して4時間後の、マウスの鼻腔の連続横断面。
【図11】実施例29に記載したように、アロエペクチンおよびタンパク質抗原(DT−CRM)(aおよびb)または不活性化されたインフルエンザサブビリオン成分抗原(A/New Caledonia/20/99、H1N1)(cおよびd)を含む液体ワクチン組成物の鼻への投与に対するマウスの血清IgGおよび肺IgA免疫応答。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への参照)
本出願は、2003年、8月29日に出願された米国特許出願第10/652,622号の一部継続であり、そして、この出願からの優先権を主張し、この親出願の全開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
持続性薬物放出または制御された薬物放出を達成するための種々のポリマーベースの薬物送達システムが、記載されてきた(非特許文献1およびその中の参考文献を参照のこと)。これらのシステムの多くの目標は、代表的に、薬物放出の期間を長くすること、薬物の生体利用効率を改良すること、ならびに/または患者のコンプライアンスおよび快適さを改良する注射可能でない薬物送達システムを提供することのうちの1つ以上であった。合成または天然のいずれかのポリマーは、そのポリマーの性質に依存して、種々の機構によって種々の薬剤の送達を提供する。
【0003】
上記のポリマーベースのシステムは、例えば、液体、懸濁液、乳濁液、微粒子および/またはミクロスフェアを含む粉末、フィルム、あるいは錠剤として様々に処方されている。その組成物は、注射、局所投与、あるいは眼、膣、肛門、胃もしくは腸、口腔および鼻腔の粘膜表面への投与、または肺への投与を含む、種々の経路または方法によって投与されている。そのポリマーベースのシステムは、治療剤および予防剤を含む種々の生理学的に活性な薬剤を送達するために使用されており、これらの治療剤および予防剤としては、小分子ベースまたはタンパク質ベースの薬物、核酸、多糖類、脂肪酸およびエステル、細胞およびそのフラグメント、ウイルス、ならびに感染症の予防のためのワクチンが挙げられる。
【0004】
多くの先行技術の薬物送達のためのポリマーベースのシステムにおいて、患者に対する投与の前に、薬物および/または他の薬理学的に活性な物質は、水を吸収し得るポリマーまたはゲル中に包まれるが、それらは実質的に水に不溶性である。ゲルは、ポリマーネットワークの細孔内に可逆的に吸収される液体(すなわち、不連続の液相)を含有する、ポリマー分子の多孔性の三次元ネットワークを含む固体または変形可能なゼリー様の半固体である。ゲルはしばしば、大量の液体および/または優勢な量の液体を含有および/または吸収し得、その液体はしばしば、水または生物学的液体を含む別の液体であるが、それにもかかわらず、ゲル状のポリマー分子のネットワークは、バルク液体または生物学的液体において実質的に不溶性である。その個々のポリマー分子は、ポリマーの性質に依存して、種々の手段において不溶性のネットワークを形成するために架橋され得る。そのポリマー分子間の架橋は、共有結合、配位結合、またはイオン性相互作用、またはさらに弱い分子間力(例えば水素結合)から生じ得る。
【0005】
種々の合成ポリマーおよび天然ポリマーもまた、ポリマー(例えば、デンプンおよび改変されたセルロース、ゲラン、キトサン、ヒアルロン酸、ペクチンなど)を使用する薬物送達の処方物において使用されている。例えば、特許文献1は、ペクチンを含む種々の水溶性ポリマーおよび水に不溶性のポリマーを含む、鼻への投与のための種々の粉末状の薬学的組成物を開示しているが、カルシウム架橋されたゲルを形成し得る低メトキシルペクチンの使用は、記載も示唆もされていない。特許文献2および特許文献3は、最近、医薬、ペプチド、および抗原性ワクチンを鼻表面へ送達するための直径10ミクロン未満の生物付着性のミクロスフェアを処方する際に、ペクチンを含む、ポリマーの長いリストの使用を開示し、そして、その組成物が、インサイチュでゲルであり得るポリマー物質と一緒に処方され得ることを示唆しているが、インサイチュゲル化のための低メトキシルペクチンの使用を教示も示唆もしていない。
【0006】
「インサイチュ」ゲル化は、いくつかの先行技術の薬学的薬物送達システムおよび組成物において記載されており、粘膜表面、組織、傷、腸管外の腔(parental cavity)などへの適用によって組成物または処方物が患者に投与された後に、適用部位でゲル形成することに関する。「インサイチュ」ゲル化組成物は、組織または体液と接触した後のみ、生物付着性ゲルを形成する。インサイチュゲル化組成物のポリマー分子自体は、代表的に、生物学的部位への適用前に水に不溶性のゲルの形態であるために、生物学的適用部位への適用前に、全く架橋されないか、あるいは十分に架橋されないが、しかし、生物学的部位への適用の際、または適用直後、ポリマー分子の多孔性のネットワーク構造内で水および/または生物学的液体を含む架橋されたポリマーゲルネットワークの形成を生じるために、ポリマー架橋が、代表的に起こる。一度、インサイチュゲルが形成されると、少なくとも通常の生理学的条件下で、実質的および/または実際上、水または生物学的液体に不溶性である。水および/または体液の吸収は、通常、インサイチュゲル化のプロセスと同時に起こるが、しかし、水または体液の単なる吸収よりむしろ、その部位へ投与した際の不溶性ポリマーネットワークの形成が、インサイチュゲル化を定義する主要な現象である。
【0007】
インサイチュゲル化し得るポリマーは、以前に記載されている。それらとしては、Poloxamer、Pluronics(非特許文献2)、種々のコポリマー(例えば、PEO−PLLAおよびPEG−PLGA−PEG(非特許文献3;非特許文献4))、セルロースアセトフタレートラテックス(非特許文献5)、Gelrite(非特許文献6)、Carbopol、およびMatrigelが挙げられる。このゲル形成は、温度変化(Poloxamer、Pluronics、PEO−PLLAジブロックコポリマー、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、およびMatrigel)、pH変化(セルロースアセトフタレート(acetophalate)ラテックスおよびCarbopol)、あるいは一価カチオンまたは二価カチオンとの反応(Gelriteおよび/またはアルギン酸塩)によって誘導される。しかし、それらのほとんどは、インサイチュゲル形成のための高いポリマー濃度(>20%)(Poloxamer、PEO−PLLAジブロックコポリマー、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、セルロースおよびアセトフタレートラテックス)を必要とする。熱ゲル化ポリマー(Poloxamer、Pluronics、PEO−PLLAジブロックコポリマー、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、およびMatrigel)はまた、包装または貯蔵の間の温度変化に起因して、投与前にゲル化するという不利益を有する。不運なことに、これらのポリマーのいくつかは、生分解性ではない(例えば、Poloxamer)か、または投与前(PEO−PLLAジブロックコポリマー)もしくは処方の間(PluronicsおよびGelrite)に温度調整を必要とする。CarbopolおよびPluronicの混合物からなる眼用インサイチュゲル化薬物送達の処方物が、いずれか一方からなる処方物より効果的であることが見出された。しかし、Pluronicは、14%で使用される(特許文献7)。従って、そのようなポリマーは、ヒトおよび動物における医療適用にはあまり適していない。さらに、これらのポリマーの多くは、ヒドロゲル(粘性であるがなお流動性の溶液である)のみを形成する(例えば、PoloxamerおよびPluronics)。
【0008】
インサイチュゲル化組成物は、特許文献4に開示されており、この特許文献4は、薬物、フィルムを形成するポリマーおよびゲルを形成するイオン性多糖類を含む液体組成物を開示している。これらの組成物には、別々に適用される2つの成分を使用し、第1の成分は、その本質的部分を形成するのではない二価または多価のカチオン架橋性の溶液であり、それは意図される生物学的適用部位に適用される。別の工程(第1の成分の溶液の適用前、適用後、または適用と同時に起こり得る)において、薬物、フィルムを形成するポリマーおよびイオン性多糖類(例えば、アルギン酸塩)を含む第2の液体成分の溶液は、意図される部位に別々に適用され、生物学的適用部位でのイオン性多糖類と二価または多価のカチオンとの間の化学的架橋反応の結果によって、架橋されて不溶性で生物付着性のインサイチュゲルを形成する。上記の特許文献4は、ゲルを形成するイオン性多糖類というよりむしろ、多くのフィルムを形成するポリマーの1つとしてペクチンを記載している。
【0009】
ペクチンは、ポリマー内のガラクツロン酸残基にカルボン酸側鎖を有する、植物細胞壁から単離される生分解性ヘテロ多糖類である。調べられている全ての野菜および果物は、ペクチンを含有するようである。テンサイ、ヒマワリ、ジャガイモ、およびグレープフルーツ由来のペクチンは、ただ少しだけの他の周知の例である。実質的に全ての天然ペクチンにおいて、ペクチンのカルボン酸基の50%より多くは、メチルエステルの形態で存在し、そしてそのようなペクチンは、「高メトキシル」(HM)ペクチンと呼ばれる。50%未満のカルボン酸基がメチルエステル化されるペクチン(すなわち、低メトキシル(LM)ペクチン)は、天然にまれであり、そして代表的に、天然のHMペクチンから合成プロセスによって調製される。LMペクチンが、二価または多価の金属イオン(例えばカルシウムイオン)での配位/架橋によってゲルを形成し得ることは、当該分野において公知である。ペクチンの化学および生物学は、広範囲に調べられている(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)。
【0010】
特許文献5は、最近、粘膜表面と接触した際にゲル化するように適合された液体の薬学的処方物におけるLMペクチンの使用を開示した。特許文献6は、勃起障害の処置のために適切な薬物の鼻への投与のための液体処方物および固体処方物中の、ペクチンを含む広範囲の種々のポリマーの使用を開示した。特許文献7、特許文献8、特許文献9および特許文献10の記載全体は、インサイチュでゲル化する薬学的組成物の処方物、そのような組成物を調製するために使用されるペクチン、ならびに動物およびヒトに対する組成物の投与に関するそれらの教示のために、これらの特許文献の全体が本明細書中に参考として援用される。
【0011】
非特許文献11は、凍結乾燥された抗原を、4mmのナイロンボールとブレンド(blend)し、そしてこれを滑石粉(炭酸カルシウム)と混合(mix)することによって作製される、動物に対する投与のための牛疫に対する鼻の粉末ワクチンを記載している。Maaら(特許文献11)は、アルミニウム塩とこのアルミニウム塩に吸収された抗原、糖類、アミノ酸、および多糖類を含み得るコロイド物質を含むゲルを形成する粉末ワクチン組成物が、経皮送達によって患者に投与されることを記載している。
【0012】
5ミクロン未満の小さい微粒子を含む粉末もまた、深部肺への肺用の薬物送達のために使用されている。ラクトース粒子は、そのような肺用の薬物送達適用のための微粉化された粒子の薬物と物理的にブレンドするための粗粒子のバルクキャリアとして使用されている(非特許文献12)。LiCalsiら(非特許文献13)は、凍結乾燥された生きた麻疹の肺用の粉末ワクチンを調製した。上記の引用された先行技術において、その薬物または抗原は、キャリア粒子と物理的に混合されるか、またはキャリア粒子の表面上に分散され、そしてラクトースマトリックス全体に分散されない。
【0013】
最近、Illumらは、2つの論文(すなわち、非特許文献14および非特許文献15)において、薬物およびワクチンの鼻への送達の技術水準を概説した。両方の論文は、鼻へのワクチンおよび/または薬物の送達のための粉末を処方するために、ポリマー物質および/または高粘度の生物付着性物質の使用を議論しているが、いずれの論文も、これらの鼻の粉末ワクチン組成物が、中程度の量から多量の、より高い水溶性の賦形剤および/または希釈剤を含むことを開示も示唆もしていない。上記の参照された特許および論文の説明全ては、鼻の粉末の薬物送達組成物の処方物、ならびに動物およびヒトに対する組成物の投与方法に関するそれらの教示のために、上記の参照された特許および論文の全体が参考として本明細書中に援用される。
【0014】
薬物および関連した生物薬剤を送達するための生物工学および関連方法は、ここ数年以上、大きな研究の対象であるが、しかし、これらの薬剤(特に生物薬剤)の送達の分野では進歩が限られてきた。生物薬剤(例えば、ペプチド、タンパク質、核酸、ワクチン、抗原、ならびに生物工学処理した細胞、微生物およびウイルス)は、貯蔵中および適用後の両方において不安定になる傾向がある。動物またはヒトの組織へのそのような薬剤の注射は、時々成功するが、しかし、特に頻繁な投与が必要とされる場合、しばしば経済的および美的に好ましくない。多くの生物薬剤、特に、より高い分子量およびより極性の薬剤(例えば、タンパク質、核酸、抗原など)は、過去において、経口的または粘膜に投与される場合、わずかに吸収されるにすぎない。鼻の粘膜表面への投与は、急速な代謝回転および鼻の粘膜液のクリアランスのために特に困難であり得、それは、およそ15分の半減期で鼻腔から除去されると考えられる。一度、動物に対する投与が成功すると、多くの生物薬剤は、それらが効果的に所望の機能を与え得る前に急速に分解されるので、分解からの保護および/または処方物の徐放の利益を必要とする。従って、多くの望まれてきたものの今のところ満たされていない必要性が、生物薬剤の投与の分野において存在する。
【0015】
このように、薬物送達および/または生物薬剤送達のためのより簡単で、改良されて、そして/またはより効果的なインサイチュゲル化組成物のための重大な必要性が存在する。
【特許文献1】米国特許第4,613,500号明細書
【特許文献2】米国特許第5,707,644号明細書
【特許文献3】米国特許第5,804,212号明細書
【特許文献4】米国特許第5,958,443号明細書
【特許文献5】米国特許第6,432,440号明細書
【特許文献6】米国特許第6,342,251号明細書
【特許文献7】米国特許第6,432,440号明細書
【特許文献8】米国特許第6,342,251号明細書
【特許文献9】米国特許第5,707,644号明細書
【特許文献10】米国特許第5,804,212号明細書
【特許文献11】米国特許公開番号2002/0120228
【非特許文献1】Langer、Nature、392(supplement)、1998、5−10
【非特許文献2】Vadnereら、Int.J.Pharm.、22、1984、207−218、1984
【非特許文献3】Jeongら、Nature 388、1997、860−862
【非特許文献4】Jeongら、J.Controlled Release 63、2000、155−163
【非特許文献5】Gurnyら、J.Controlled Release 1985、353−361
【非特許文献6】Rozierら、Int.J.Pham.57、1989、163−168
【非特許文献7】LinおよびSung、Journal of Controlled Release 69、2000、379−388
【非特許文献8】PilnikおよびVoragen、Advances in plant biochemistry and biotechnology 1、1992、219−270
【非特許文献9】Voragenら、In Food polysaccharides and their applications、Marcel Dekker、Inc.New York、1995、287−339
【非特許文献10】ScholsおよびVoragen、In Progress in Biotechnology 14.Pectins and pectinases、J.VisserおよびA.G.J.Voragen(版).Elsevier Science Publishers B.V.Amsterdam、1996、pp.3−20
【非特許文献11】Andersonら、Vaccine、19、2001、840−843
【非特許文献12】MalcomsonおよびEmbleton、Pharmacuetical Science and Technology Today、Vol 1(9)、1998、394−398
【非特許文献13】LiCalsiら、Vaccine、Vol 19、2001、2629−2636
【非特許文献14】Illumら、「Nasal Vaccines」in Advanced Drug Delivery Reviews、Vol.51、2001、pages 21−42
【非特許文献15】Illumら、「Nasal Drug Delivery:New Developments and Strategies」、Vol.7、No.23、2002年12月、www.drugdiscoverytoday.com
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
本明細書中に開示した発明は、ヒトを含む動物の組織または体液への生理学的に活性な薬剤の送達に関する。本発明は、ペクチンを含む多糖類を含む薬学的組成物を作製および投与する方法に関し、その薬学的組成物は、上記の組織または体液と接触する場合に、生理学的に活性な薬剤を含む「インサイチュ」ゲルを形成する。本発明の組成物は、液体、または固体、あるいは選択されるサイズの範囲のミクロスフェアもしくは微粒子を含む粉末の形態で上記の動物ならびにその組織および体液に投与され得る。
【0017】
本発明の組成物は、感受性の生物薬剤(ペプチド、タンパク質、抗原、ワクチン、核酸、ウイルス、細胞全体またはそのフラグメントを含む)の安定性および/または貯蔵期間を改良するために処方され得る。その組成物は、体液(例えば、血液または血清)と接触しここでゲルを形成するように、体組織、器官、または腔の中に注射によって投与され得るか、あるいはその組成物は、体の種々の粘膜表面(口/消化管、または鼻および肺の腔の粘膜表面を含む)に投与され得る。インサイチュゲルは、一度形成されると、放出を遅くおよび/または調節し得るか、あるいは生理学的に活性な薬剤の生体利用効率を改良する。いくつかの実施形態において、鼻腔に形成されるインサイチュゲルを介する生体分子(例えば、ワクチン、抗原、ペプチド、および/またはタンパク質)の投与は、そのような投与技術によって予測外に改良され得る。
【0018】
本発明のいくつかの局面において、組成物中の二価または多価のカチオンを含む固体またはゲルを誘導する薬剤および/または組成物の封入または同時投与は、改良されたゲル処方物を提供し得、そして制御された薬物放出を提供し得る。
【0019】
本発明の特徴および利点は、以下の本発明の実施形態によって説明され得る。
【0020】
1つの局面において、本発明は、生理学的に活性な薬剤を動物に投与するための固体薬学的組成物に関し、その固体薬学的組成物は、以下:
a)動物における生理反応を誘導するために有効な量の1種以上の生理学的に活性な薬剤;および
b)陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類、および
c)1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む1種以上のゲルを形成する固体多糖類組成物;
を含み、ここで、その薬学的組成物は、動物の組織または体液と接触する場合にゲルを形成する固体形態である。
【0021】
別の局面において、本発明は、生理学的に活性な薬剤を動物に投与するための固体薬学的組成物に関し、その薬学的組成物は、以下:
a)1種以上の生理学的に活性な薬剤;および
b)1種以上のペクチン質、
を含み、ここで、その薬学的組成物は、動物の組織または体液と接触する場合にゲルを形成し得る固体である。
【0022】
関連した局面において、本発明は、動物における生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための組成物を提供し、ここで、その組成物は、以下:
その組成物がその動物の組織または体液と接触する場合に、ゲルを形成するために有効な量において、
動物の体において生理反応を及ぼす量における1種以上の生理学的に活性な薬剤;ならびに
30%未満のメチル化の程度および1×105ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチン質
を含む乾燥形態である。
【0023】
本発明はまた、本発明の組成物を作製するための方法に関する。1つのそのような局面において、本発明は、動物における生理学的に活性な薬剤の徐放のための乾燥組成物を調製するための方法に関し、その方法は、キャリア中でペクチン質と生理学的に活性な薬剤との混合物を溶解して、溶液または分散を得る工程であって、ここで、そのペクチン質の量は、その動物のインサイチュでのゲルに対して効果的であり;そして、そのキャリア中の揮発性成分を除去して、その乾燥組成物を得る工程を包含する。
【0024】
本発明はまた、動物の組織または体液と接触する場合に、ゲル化する固体薬学的組成物または液体薬学的組成物を投与するための方法に関する。1つの局面において、本発明は、任意の順序または組み合わせにおいて、以下の成分、
a.動物における生理反応を誘導するために有効な量の1種以上の生理学的に活性な薬剤;
b.陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類、および
c.1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む1種以上のゲル誘導性固体組成物
を動物の組織または体液に投与し、その動物の組織または体液と接触しているゲルを形成する工程、を包含する方法に関する。
【0025】
すぐ上に記載した実施形態において、上記のa、bおよびcの成分は、任意の順序で投与され得、そして、そのaおよびbの成分は、固体または溶液のいずれかの形態であり得、そして、そのa、b、およびcの成分の任意の組み合わせまたは下位の組み合わせ(sub−combination)は、同時にまたは混合物において投与され得る。
【0026】
本発明はまた、動物の組織または体液と接触する場合にゲル化し得る液体組成物、ならびにその組成物をその組織および体液に適用するための方法に関する。1つのそのような局面において、本発明は、生理学的に活性な薬剤を動物に投与するための方法に関し、その方法は:
a)以下、
i)液体キャリア、
ii)その動物の組織または体液に適用する場合に、溶液または分散物をゲル化するために有効な量の、30%未満のメチル化の程度および4.6×105ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチン質、および
iii)1種以上の生理学的に活性な薬剤、
を含む溶液または分散物を提供する工程;ならびに
b)その溶液または分散物をその動物の組織または体液に適用して、その組織または体液と接触する生理学的に活性な薬剤を含むゲルを形成する工程、
を包含する。
【0027】
別の局面において、本発明は、粉末粒子を含む動物の鼻の粘膜への投与のためのワクチン組成物に関し、その粉末粒子は、以下:
a.動物における免疫応答を誘導するために有効な量の1種以上の抗原、および
b.約30%未満のメチル化の程度および約1×105ダルトンより大きい平均分子量を有する1種以上のペクチンまたはそれらの一価のカチオン塩;
のナノ分散物を含み、ここで、その粉末粒子は、直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得る。
【0028】
いくつかの他の局面において、本発明は、固体形態または液体形態のいずれかで、ワクチン組成物を動物またはヒトに投与するための方法に関し、その方法は、ワクチン組成物をその動物またはヒトの粘膜表面に投与する工程を包含する。1つのそのような局面において、本発明は、動物にワクチン接種するための方法に関し、その方法は、以下の工程:
a.直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得る粉末粒子を含む1種以上の粉末組成物を提供し、その粉末粒子が、以下
i)その組成物が、動物の粘膜表面と接触する場合に、ゲルを形成するために有効な量の、約30%未満のメチル化の程度および1×105ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチン質;
ii)その動物における能動免疫応答を誘導し得る量の、ペプチド、タンパク質、核酸、炭水化物、生細胞または微生物、微生物の死生物またはその一部、あるいはウイルスまたはその一部からなる群より選択される1種以上の抗原を含む、工程;および
b.その粉末をその動物の鼻の組織および/または鼻の液に投与し、その組織または体液と接触しているゲルを形成する工程、および
c.その動物における1種以上の抗原に対する能動免疫応答を誘導する工程
を包含する。
【0029】
上述の議論は、本発明のより適切な特徴のうちのいくつかの要旨を述べている。これらは、本発明のより顕著な特徴および適用のうちのいくつかの単なる例示であると解釈されるべきである。従って、本発明のより完全な理解は、以下の詳細な説明を参照することによって得られ得る。
【0030】
(詳細な説明)
本発明は、以下の本発明の種々の実施形態の詳細な説明およびその中に含まれる実施例および図面ならびにそれらの上記および以下の説明への参照によって、より容易に理解され得る。本発明の化合物、組成物、および/または方法が、開示および記載される前に、他に具体的に記載がなければ、本発明は、特定の出発物質、医薬品または特定の合成方法に限定されないことが理解され、従って、もちろん、それらは変更され得る。本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、限定されることを意図しないこともまた、理解される。
【0031】
(定義)
明細書および本明細書中に記載した様式において、以下の用語は、ここで定義される。
【0032】
「任意の」または「必要に応じて」とは、その後に記載される事象または状況が、起こってもよいか、または起こらなくてもよく、そしてその記載は、前記の事象または状況が起こる場合およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。例えば、用語「任意の賦形剤」とは、その賦形剤が、その組成物中に含まれてもよいか、または含まれなくてもよいことを意味する。
【0033】
明細書および添付の特許請求の範囲に使用されるように、単数の形態「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に指示しない場合、複数の対象を示すことに注意しなければならない。従って、例えば、「芳香族化合物」という言及は、芳香族化合物の混合物を含む。
【0034】
しばしば、範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして本明細書中に表される。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」の使用によって、値が近似として表される場合、その特定の値は、別の実施形態をなすと理解される。各々の範囲の終点は、他の終点に関係して、および他の終点に関係なく、の両方で有意であることがさらに理解される。
【0035】
「薬学的に受容可能」とは、生物学的でない物質か、またはそうでなければ望ましくない物質(すなわち、その物質は、臨床的に受容可能でない生物学的効果を引き起こすことも、その物質が含有される薬学的組成物の他のいずれかの成分とともに有害な様式で相互作用することもなく、関連した活性化合物とともに個体に投与され得る)を意味する。
【0036】
本明細書中で提供されるような化合物の、用語「有効な量」とは、所望の機能の所望の調節(例えば、遺伝子発現、免疫応答を誘導される抗原、タンパク質の機能性、または疾患状態)を提供するための化合物の十分な量を意味する。以下に示すように、必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢、および全身の状態、処置される疾患の重篤度、使用される特定の薬剤、その投与様式などに依存して、被験体から被験体へと変化する。従って、正確な「有効な量」を特定することは、可能ではない。しかし、適切な有効な量は、慣用的な実験のみを使用して、当業者によって決定され得る。
【0037】
本明細書中で定義および使用される用語としての「ゲル」とは、ネットワーク内に可逆的に吸収される液体を含有する有機ポリマー分子の多孔性の3次元ネットワークを含む弾性の固体または変形可能な半固体である。本発明の文脈において、他の液体物質もまた存在し得るが、可逆的に吸収される液体は、代表的に液体の水を含む。本発明の文脈において、ポリマー分子のネットワークは、代表的に、カルボキシル基または硫酸基を含む繰り返し単位を有する多糖類を含む(ペクチンを含む)。本発明の多くの実施形態において、隣接する多糖類の鎖のカルボキシル基または硫酸基のうちの少なくともいくつかは、二価または多価のカチオン(例えば、カルシウムまたはアルミニウム)に配位結合し、純粋な水において実質的に不溶性である、カチオンにより架橋される多糖類分子の3次元ネットワークを形成する。そのようなカチオンにより架橋されて水に不溶性のゲルの存在および正体は、代表的に、純粋で中性の水にゲルのサンプルを最初に数時間入れることによって、実験的に確認されて、それらが、その半固体の形態を維持して、実質的に水に不溶性であるが、金属カチオンのキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のナトリウム塩)の添加が、二価または多価の金属イオンの除去によって急速に溶解するようにゲルを誘導することを確認する。
【0038】
本明細書中で使用される場合、ゲル化とは、架橋されたポリマーネットワークの形成ならびに架橋されたポリマーネットワーク内への液体および/または他の物質の吸収を含むゲルの形成であって、バルク液体において実質的に不溶性である固体または半固体を形成することをいう。インサイチュゲルは、代表的に水を含む適切な前駆物質ポリマーおよび液体から形成され、次いで、架橋されたポリマーネットワークおよび組織または体液に由来する水を含む固体または半固体を形成するように、組織または体液、あるいは模倣された組織または体液と接触する際または接触後に架橋する。
【0039】
「ポリマー」は、代表的にモノマーと呼ばれる10個より多い二価または多価のサブユニットの共有結合によって形成される高分子である。本発明のポリマーは、比較的大きい数の異なる型のモノマーを含み得る天然ポリマー(例えば、タンパク質、核酸、多糖類など)、またはしばしば、1つもしくは少数の異なるモノマーのみを含む人工ポリマー(例えば、ポリアクリレート)の両方を含む。
【0040】
「ゲル誘導剤」とは、ポリマーまたはポリマー溶液にゲルを形成させることができる薬剤である。ゲル誘導薬剤はしばしば、ポリマー鎖間の架橋を誘導することによってゲルの形成を誘導し、それは、本発明の文脈において、同じまたは異なる多糖類分子のカルボキシル置換基または硫酸置換基を架橋し得る。
【0041】
「イオン性ポリマー」とは、イオン化されるか、または容易にイオン化され得る官能基(例えば、カルボン酸またはその相当するカルボキシル基、または有機スルホン酸およびその相当する有機スルホン陰性基)を有するモノマーを有する合成ポリマーまたは天然ポリマーである。
【0042】
「イオンを必要とするゲル(ionotropic gel)」とは、イオンとポリマーの架橋によって形成されるゲルである。「乾燥薬学的調製物」、乾燥薬学的処方物は、粉末、パッド、フィルム、スポンジ、錠剤またはカプセルの形態において20%未満の含水量を有する。
【0043】
「粉末」とは、主に非常に小さい固体粒子または球を含む固体、乾燥物質である。粉末の粒子または球の大部分の最大の寸法は、ミリメートル未満である。上記の定義の文脈において、「乾燥」とは、粉末の通常の自由に流動する物理的特性を有意に阻害する、自由に流れる液体または粉末粒子もしくは球の表面上の過剰な水分(水を含む)が、あるとしても非常に少ないことを意味する。本発明の粉末は、実際に、それらの粒子またはポリマーネットワーク内に吸収された水を含み得るが、しかしそれらの表面上に有意な量の流動可能な液体の水を含まない。
【0044】
「ミクロスフェア」は、小さく、ほぼ連続的に曲線状で、角のない表面を有するほぼ球状の形をした固体粒子であり、その粒子は、約0.1ミクロン(μM)と約250ミクロン(μM)との間の有効直径を有する。本明細書中で定義される場合、ミクロスフェアは、マイクロカプセルを含む。ミクロスフェアと対照に「微粒子」は、平らで、角、菱面体、または不規則な表面を有する。微粒子は、約0.1ミクロンと約250ミクロンとの間の最も長い直線状の寸法を有する。
【0045】
「生理学的に活性な薬剤」とは、動物の体において生理反応を誘導し得る、薬剤、化合物、または組成物をいう。生理学的に活性な薬剤としては、栄養素、低分子薬物および治療剤、高分子薬物および治療剤、薬理学的に活性な物質;診断剤;治療剤;核酸;ペプチド;ポリマー;低分子タンパク質;高分子タンパク質;ならびに生細胞が挙げられる。薬理学的に活性な物質としては、免疫応答を認めない物質(例えば、1種以上の抗原を含むワクチン)が挙げられる。治療剤の例としては、抗菌性物質、抗菌剤、駆虫薬、抗生物質、抗ヒスタミン剤、鬱血除去薬、代謝拮抗剤、抗緑内障剤、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗炎症剤、抗糖尿病剤、麻酔薬、抗鬱剤、抗凝固剤、鎮痛薬、抗凝固剤、目薬(opthalmic agent)、脈管形成因子、免疫抑制薬、および抗アレルギー剤が挙げられる。
【0046】
「ワクチン」は代表的に、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、または核酸、生細胞もしくは死細胞または微生物の全体もしくは一部、ウイルスの全体もしくは一部などの形態において1種以上の抗原を含み、処置した哺乳動物において免疫応答を誘導し得、しばしば、微生物、ウイルス、および/または癌によって引き起こされる疾患を処置もしくは予防するために、抗原または微生物もしくは微生物に由来する組織に対して、抗体の形成(ヒト応答)および/または細胞(T細胞)免疫応答選択性を誘導し得る。
【0047】
本明細書中に使用される場合、用語「ペクチン質」としては、天然に生じるペクチンに由来する1種以上の多糖類物質の主要な割合を含む任意の物質が挙げられる。ペクチン質としては、低メトキシルペクチンおよび高メトキシルペクチン、脱エステル化(de−esterified)ペクチン、ペクチンカルシウムゲル、アロエペクチンナトリウムゲル、ペクチン(pectic)酸、ペクテート(pectate)、ペクチン(pectinic)酸、ペクチネート(pectinate)、プロトペクチン、ならびにペクチン−リッチ物質(例えば、アロエベラ(Aloe vera)内部ゲル細胞壁線維)の個々、集合、またはそれらの組み合わせが挙げられる。上記に議論したように、ペクチンは、植物に内在するか、または植物から調製され、そして大きな割合の無水ガラクツロン酸の単量体ユニットを含む、これらのコロイド状炭水化物複合誘導体についての群の意味である。
【0048】
「脱エステル化」ペクチンとは、人工プロセスによって、複数のメチルエステル基が、ペクチンポリマーから除去されているペクチン由来のペクチンである。
【0049】
「ペクチン酸」とは、たいてい、コロイド状ポリガラクツロン酸から構成され、そして本質的にメチルエステル基のないペクチン質に適用される群の意味である。完全に脱エステル化したペクチンは、ペクチン酸またはポリガラクツロン酸である。「ペクテート」は、通常のペクチン酸またはペクチン酸の酸塩のいずれかである。「ペクチン酸」は、無視できない割合のメチルエステル基を含む、コロイド状ポリガラクツロン酸である。「ペクチネート」は、通常のペクチン酸またはペクチン酸の酸塩のいずれかである。「プロトペクチン」は、植物中に存在し、そして制限加水分解の際に、ペクチン、ペクチン酸などを生成する、水に不溶性の親ペクチンについて適用される。この水に不溶性のペクチンは、植物中に存在するセルロース(例えば、アロエベラ内部ゲルまたは外皮細胞壁線維)と結合され得る。
【0050】
本明細書および特許請求の範囲に使用される場合、化学種の残基とは、構造フラグメントまたは部分が、実際にその化学種から得られるかどうかに関わらず、構造フラグメント、あるいは特定の反応スキームにおける化学種の生成物またはその結果生じる処方物もしくは化学生成物を生じる部分をいう。従って、ペクチン中のGal A残基とは、ガラクツロン酸(galuronic acid)自体が、ペクチン中に存在するか、またはペクチンを調製するために使用されるかどうかに関わらず、ペクチン中の1つ以上のガラクツロン酸の単量体の繰返し単位をいう。
【0051】
後の説明において、基準は、頻繁に「%(w/v)」の単位に合わせられる。この表現によって「%(w/v)」は、100mlの溶液中の物質のグラム数であると定義される。希釈水溶液において、液体の密度は、「%(w/v)」が、100グラムの液体中の固体のグラム数とほぼ等しいように、1ミリリットル当たりおよそ1グラムである。これらの「%(w/v)」単位において、1%(w/v)である溶液は、100ミリリットル当たり1グラム(=1gr/100ml=10mg/ml)に相当する。
【0052】
(本明細書中で使用される略語としては以下が挙げられる)
CMC、カルボキシルメチルセルロース;Da、ダルトン;DM、メチル化の程度;Gal A、ガラクツロン酸;HEC、ヒドロキシエチルセルロース;HM、高メトキシル;HPMC、ヒドロキシプロピルメチルセルロース;kDa、キロダルトン;LM、低メトキシル;PBS、リン酸緩衝生理食塩水;PEG−PLGA−PEG、ポリエチレングリコール−ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)−ポリエチレングリコール;PEO−PLLA、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(L−ラクチド);PEO−PPO−PEO、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)。
【0053】
(インサイチュゲル化のための薬学的組成物)
本発明の薬学的組成物は、固体または液体の形態のいずれかにおいて「インサイチュ」ゲル化組成物であり、その組成物は、1種以上の陰イオン性多糖類および1種以上の生理学的に活性な薬剤を含み、ここで、動物の組織、体液、もしくは粘膜表面への適用の際、または適用直後、組成物中の陰イオン性多糖類は、代表的に、多孔性の3次元ポリマーネットワークの形成によってインサイチュゲルを形成する。動物の組織、体液、または粘膜表面へのこれらの組成物の適用前に、本発明の薬学的組成物およびそれらの組成物のうちのほとんどまたは一部は、代表的に、組織または体液へのそれらの適用前に、純粋な水に溶解するが、しかし、組織または体液への適用の際、陰イオン性多糖類のカルボキシル基または硫酸基は、生理的条件で水または体液のいずれかにおいて実際上不溶性である生物付着性ゲルを形成するように、生物学的流体から吸収される「内因性」の二価のカルシウムとの配位結合によって十分に架橋されるという驚くべき性質を有する。従って、本発明の組成物は、適用してもさらに架橋されることはない、予め架橋されたポリマー組成物を含む、先行技術の組成物とは区別可能である。
【0054】
本発明のゲルに関して、ポリマーネットワークの細孔中の液体は、しばしば水、生理食塩水、または水を含む、処置される動物もしくは患者に由来する生物学的流体を含み、そしてその薬物または薬理学的に活性な物質はまた、代表的に、架橋されたポリマーネットワークの細孔内に閉じ込められる。本発明に関して、ゲルネットワークはしばしば、隣接する糖鎖分子上の陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基と、そのカルボキシル基または硫酸基と配位結合する、架橋する二価または多価のカチオンとの間の配位結合/イオン結合によって形成される。
【0055】
(固体組成物)
いくつかの実施形態において、本発明は、動物に対する生理学的に活性な薬剤の送達のための固体薬学的組成物に関し、その組成物は、以下:
a.動物における生理反応を誘導するために有効な量の1種以上の生理学的に活性な薬剤;
b.陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類、および
c.1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む、1種以上のゲル誘導性固体多糖類組成物;
を含み、ここで、その薬学的組成物は、動物の組織または体液と接触する場合にゲルを形成する固体形態である。
【0056】
上記に関する別の実施形態において、本発明は、動物に対する生理学的に活性な薬剤の投与のための組成物に関し、その組成物は、以下:
a.動物における生理反応を誘導するために有効な量の1種以上の生理学的に活性な薬剤;および
b.約30%未満のメチル化の程度および約1×105ダルトンより大きい平均分子量を有する1種以上のペクチン質
を含み、ここで、その組成物は、動物の組織または体液と接触する場合に、ゲルを形成し得る固体である。
【0057】
上記の固体薬学的組成物は、パッド、錠剤、カプセルまたは粉末を含む、任意の固体形態で固体である。多くの実施形態において、その固体薬学的組成物は、粉末の形態で処方される。
【0058】
さらに別の関連した実施形態において、本発明は、粉末粒子を含む動物に対する鼻への投与のためのワクチン組成物に関し、その組成物は、以下:
a.動物における免疫応答を誘導するために有効な量の1種以上の抗原、および
b.約30%未満のメチル化の程度および約1×105ダルトンより大きい平均分子量を有する1種以上のペクチンまたはその一価のカチオン塩;
のナノ分散物を含み、ここで、その粉末粒子は、直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得る。
【0059】
その粉末は、用語を本明細書中の他の場所で定義したように、多数の微粒子および/またはミクロスフェアとして存在し得る。実際、所望の範囲の粒子サイズを有する粉末は、エマルジョン工程、閉じこめ(encapsulation)工程、噴霧乾燥工程、固体の粉砕または製粉などを含む、当該分野に周知の多くの方法のいずれかによって生成され得る。多くの工程の最終段階において、前駆物質の固体または粉末は、1つ以上の篩のセットを通過する。そのような篩は、その粉末、微粒子および/またはミクロスフェアについての種々の範囲の粒子サイズを生成するために、規定されたサイズおよび所望のサイズの開口(例えば、250μM、200μM、150μM、100μM、80μM、60μM、50μM、40μM、30μM、20μM、11μM、10μM、9μM、5μM、1μMおよび0.1μM)を有する。所望の範囲の粒子サイズとしては、以下の表1に示される適切な範囲の粒子サイズが挙げられ得る。1つの実施形態において、篩の開口は、その粉末、微粒子またはミクロスフェアが通過し得るように約250μM以下のサイズを有する。必要に応じて、その粉末は、次いで、例えば、約11μMと約250μMとの間の粒子サイズを有する固体組成物を生成するために、最も小さい粒子を除去するために別のより小さい篩を用いて処理され得る。
【0060】
粒子サイズ分布についての特定の他の制約に対する有益な効果もまた存在し得る。従って、いくつかの実施形態において、特定された固体組成物の粒子のパーセントは、特定されたサイズの範囲内に落ちる。例えば、粒子の約80%、または約85%、または約90%、または約95%は、特定された粒子サイズの範囲内に落ちることが所望され得る。1つの例を挙げると、いくつかの実施形態において、本発明の固体組成物は、ミクロスフェアを含み、そして90%未満のミクロスフェアは、0.1μMと10μMとの間の直径を有する。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態において、生理学的に活性な薬剤は、イオン性多糖類および/または他の固体成分を含む粒子の表面上に沈着されるか、あるいは生理学的に活性な薬剤を含む粉末は、イオン性多糖類を含む粉末と混合される。それにもかかわらず、本発明の多くの好ましい実施形態において、生理学的に活性な薬剤は、好ましくは、陰イオン性多糖類、増粘剤、賦形剤などの混合物を含む固体マトリックス内に高度に分散される。好ましくは、その固体マトリックス混合物において、その混合物の種々の成分は、いくつかのより高次の分子様の凝集体(特に無機塩類)が存在し得るが、分子レベルでの個々の分子および/またはイオンの混合物の形態で主に分散される。そのような半均質の固体マトリックス混合物は、固体混合物の成分の「ナノ分散物」と呼ばれ得る。さらにより好ましくは、固体混合物の成分およびそれらの構成分子は、固体混合物の成分の「固体溶液」を形成するように、分子レベルで実質的に均一に分散される。そのような「ナノ分散」および「固体溶液」は、感受性の生物学的に活性な薬剤の優れた安定性を提供し、そして代表的に生理学的に活性な薬剤の改良された分散、放出速度のコントロール、および/または生体利用効率を提供する。
【0062】
【表1−1】
【0063】
【表1−2】
*上記の表に二つ一組で示すが、表に記載された成分の特定の部類について記載された終点のいずれかは、その成分の部類について記載された他の対応する終点のいずれかと組み合わされ得、その成分の部類についての新しい範囲を形成することは、本明細書中で明白に企図される。
【0064】
本発明に使用される1種以上の多糖類は、陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有する単糖サブユニットを含むために、中性または陰イオン性のいずれかであり得る。陰イオン性のカルボキシル基は、単量体サブユニットに付着されるカルボン酸の塩、または親のカルボン酸自体のいずれかの形態であり得、それが生理的pHで容易にイオン化可能またはイオン化されることは、理解される。同様に、単糖サブユニットの陰イオン性の硫酸基は、硫酸基を含む単糖の塩および硫酸の酸の形態を含む単量体サブユニットの両方を含む。種々の多糖類は、カルボキシル化されたデンプン、ペクチン質、アルギン酸塩、カラゲーナン、またはゲランを含む、陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を含む。
【0065】
多くの実施形態において、固体薬学的組成物は、カルボン酸の酸の形態または塩の形態のいずれかにおいて1種以上のペクチンを含む。多くの好ましい実施形態において、陰イオン性の多糖類および/またはペクチンが、一価のカチオン(例えば、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、および/またはアンモニウム(NH4+)カチオンを含むカチオン)の塩の形態で存在し、それは、生理的pHで容易に水に溶解する傾向がある。
【0066】
ペクチンは、ラムノース残基が間にあるα−(1→4)結合型ポリガラクツロン酸(Gal A)多糖類ポリマー骨格を有する。Gal A残基は、糖環に結合されるカルボン酸置換基を有し、それは、カルボン酸、その塩、またはそのエステルの形態であり得る。ほとんどのペクチンのGal A含量は、約70〜75%であり、そしてラムノース含量は、代表的に2%より小さい。ラムノース残基は、骨格中で、Gal A残基にα−(1→2)結合され、それらは、骨格鎖中でT形状変形を生じ、多糖類鎖中でより可撓性を導く。中性の糖側鎖は、骨格中のO−3位またはO−4位にてラムノース残基に結合され、ラムノース残基は、骨格上でともにクラスターを形成する傾向がある。これらのラムノースは、ペクチンの「ヘアリー領域」といわれる側鎖を含む領域を含み、一方で、繰り返しで、分枝していないGal A残基の長い伸長は、ペクチンの「スムーズ領域」と名付けられる。
【0067】
糖環上のヒドロキシル基および/またはカルボン酸置換基はまた、しばしば糖でない成分(例えば、メチル基およびアセチル基)に結合される。鎖およびそのモノマーへのラムノース挿入および他の改変の程度は、ペクチンの植物供給源に依存して変化する。メチル化は、カルボン酸メチルエステルを形成するために、Gal A残基のカルボキシル基で生じる。ペクチンの場合、メチル化またはメチルエステル化の程度(「DM」)は、メタノールでエステル化されたカルボキシル基(Gal A残基)の割合として規定される。DMに基づいて、ペクチンは、2つのクラス(50%未満のDMを有する低メトキシル(「LM」)ペクチンおよび50%より高いDMを有する高メトキシル(「HM」)ペクチン)に分けられる。ほとんどの天然ペクチンおよびほとんどの市販のペクチンは、代表的に、柑橘類およびリンゴに由来する、HMペクチンである。
【0068】
LMペクチンは、代表的に、人工化学物質または生化学的な脱エステル化プロセスを介してHMペクチンから得られる。市販のLMペクチンは、代表的に、20〜50%のDMを有する。完全に脱エステル化されたペクチンは、「ペクチン酸」または「ポリガラクツロン酸」といわれる。酸形態のペクチン酸は、不溶性であるが、塩形態では可溶性である。ペクチン酸の通常の塩形態は、ナトリウムまたはカリウムのいずれかである。
【0069】
ペクチンは、代表的に、約3〜4の間の酸性pHレベルで最も安定である。pH3以下では、メトキシル基およびアセチル基ならびに中性糖側鎖の除去が、代表的に起こる。中性およびアルカリ性の条件下では、Gal A残基のメチルエステル基が、カルボン酸またはカルボン酸塩の形態に鹸化されることは公知であるが、しかし、ポリガラクツロナン骨格もまた、メチル化Gal A残基の非還元末端上のグリコシド結合のβ−脱離切断を介して破壊し、LMペクチンの分子量は、代表的に、その親のHMペクチンの分子量より有意に小さいという結果を生じる。一度形成されると、ペクチン酸およびLMペクチンは、限られた数のメチルエステル基のみしか存在しないか、または全く存在しないので、中性およびアルカリ性の条件下で、分子量の減少に対して比較的より耐性があり、その結果、ポリマー鎖のβ−脱離切断は、ゆっくりとなる。
【0070】
HMペクチンおよびLMペクチンの両方は、ゲルを形成する。しかし、これらのゲルは、全体的に異なる機構を介して形成する(Voragenら、In Food polysaccharides and their applications.pp287−339.Marcel Dekker,Inc.New York,1995)。HMペクチンは、低pHにて高濃度の特定の共溶質(co−solute)(例えば、スクロース)の存在下でゲルを形成する。HMペクチンは、代表的に、カルシウムまたは他の多価イオンと反応せず、従って、LMペクチンと同様にカルシウムゲルを形成しない(後出)。しかし、特定のHMペクチンは、ブロック様式(block wise)脱エステル化プロセスによってカルシウム反応性となり得るが、なお50%より高いDMを有する。Christensenら、米国特許第6,083,540号を参照のこと。
【0071】
高い割合のエステル化されていないカルボン酸および/またはカルボキシル基を有するLMペクチンは、十分な濃度のカルシウムカチオンの存在下でゲルを形成することが公知である。カルシウムイオンは、Gal Aポリマーサブユニットの陰イオン性のカルボキシル基と配位結合すると考えられ、従って、「カルシウム反応性」として公知である。カルシウムLMペクチンゲルネットワークは、Ca++が、ポリガラクツロン酸ポリマー鎖の2つの相補的な伸長に沿って相補的なカルボキシル基の配位結合および架橋を引き起こす、一般に「エッグボックス(egg−box)」連結ゾーンといわれるものの形成によって構築されると考えられる。カルシウム−LMペクチンゲル化は、数個の因子(DM、イオン強度、pH、およびペクチンの分子量を含む)によって影響される(Garnierら、Carbohydrate Research 240,219−232,1993;256,71−81,1994)。現在の市販のLMペクチンは、代表的に、7〜14×104Daの分子量および約75%のGal A含量を有する(Voragenら、In Food polysaccharides and their applications.pp287−339.Marcel Dekker,Inc.New York,1995)。代表的なペクチンは、2%未満のラムノース含量を有する。
【0072】
ペクチンは、代表的に、食品業界に利用され、FDAによって「GRAS」(Generally Regarded As Safe)として分類される。それらはまた、コロイド性および抗下痢剤として長く使用されている。最近、ペクチンは、医薬デバイスおよび薬物送達の領域に利用されている(Thakur ら、Critical Reviews in Food Science & Nutrition 37,47−73,1997)。薬物送達の場合において、ペクチンは、結腸への経口薬物送達のための多くの実験処方物において、その存在を見出されている。なぜならば、ペクチンは、腸のこの領域に存在する細菌によって容易に分解されるからである。このペクチンは、関連するゲル化なしで直接的に使用されるか、またはペクチンカルシウムゲルは、投与前に薬物因子をカプセル化するために予備形成されるかのいずれかである。Ashfordら、J.Controlled Release 26,213−220,1993;30,225−232,1994;Munjeriら、J.Controlled Release 46,273−278,1997;Wakerlyら、J.Pharmacy & Pharmacology 49,622−625,1997;International Journal of Pharmaceutics 153,219−224,1997;Miyazakiら、International Journal of Pharmaceutics 204,127−132,2000.
いくつかの実施形態において、ペクチンは、約70%、50%、30%、25%、20%、19%、18%、15%、14%、12%、10%、9%または5%と同等またはそれ未満のメチル化(DM)の程度を有する。代表的に、メチル化のより低い程度は、必ずしも、改良されたゲル化特性を導くとは限らないが、多くの他の因子が、ペクチンのゲル化特性の決定に関与する。
【0073】
ペクチン質またはペクチンの分子量は、そのゲル化特性において重要な因子であり、より高い分子量は、代表的に、より良いゲル化特性を生じる。ペクチンのゲル化における分子量の重要性は、米国特許第5,929,051号に記載され、ペクチンおよびアロエペクチンの特徴を教示するために、その全体が本明細書中に参考として援用される。多くの実施形態において、ペクチン質またはペクチンは、約4.6×105ダルトン、または約5.0×105ダルトンより大きい平均分子量を有する。代替として、ペクチン質またはペクチンは、約2×105ダルトン、3×105ダルトン、4×105ダルトン、6×105ダルトン、7×105ダルトン、8×105ダルトン、または9×105ダルトンと同等またはそれ未満の平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態において、ペクチン質またはペクチンは、1×106ダルトンより大きい分子量および10%未満のメチル化の程度を有する。
【0074】
本発明のいくつかの好ましいペクチン(例えば、DelSite Biotechnologies Incから入手可能なアロエペクチン)および/またはそれらの水溶性の一価カチオン塩、硬い弾力性のゲルは、0.5%(w/v)LMペクチンおよび30〜60mg/gのCa2+を有し得る。
【0075】
本発明の固体組成物は、少量の水、特にペクチンを含む水を含み得、それは、ペクチンにより吸収される残りの水を有する傾向がある。従って、本発明の固体組成物は、約20重量%、あるいは約15重量%、約12重量%、約10重量%、約9重量%、約8重量%、約7重量%、約6重量%、約5重量%、約3重量%、約2重量%、約1重量%またはそれ以下の水を含み得る。任意の割合の水で、上記の粒子は、粉末の形態で固体の自由流動を有意に妨げる有意な粘性を引き起こすために、過剰の自由に流動する液体または水分が、粒子の表面上に見られないという意味で、代表的に「乾燥」と記載され得る。貯蔵中の生理学的に活性な薬剤の安定性を改良するためか、または固体の物理的特性を改良するために、より低い割合の水の重量が、本発明のいくつかの実施形態において好まれる。
【0076】
(活性な薬剤)
本発明の組成物(液体または固体)は、1種以上の生理学的に活性な薬剤を含み得、その用語は本明細書中の他の場所で定義される。いくつかの実施形態において、その生理学的に活性な薬剤としては、治療剤、診断剤、炭水化物、脂質、ペプチド、核酸、生細胞、死細胞の全てまたは一部、微生物の全てまたは一部、ウイルスの全てまたは一部、ワクチン、抗原、およびタンパク質が挙げられ得る。本発明の組成物は、治療剤(例えば、低分子の薬物)を含み得る。多くの実施形態において、本発明の組成物は、分子、細胞、ウイルス、抗原などを含む、広範囲の種々のより大きい生物学的因子を含み得る。
【0077】
いくつかの好ましい実施形態において、その生理学的に活性な薬剤は、ペプチド、タンパク質、生細胞、死細胞の全てもしくは一部、またはウイルスの全てもしくは一部、不活性化された微生物もしくはウイルス、生きている弱毒化された微生物もしくはウイルス、ファージ、サブユニットワクチンタンパク質、サブユニットワクチンペプチド、サブユニットワクチン炭水化物、レプリコン、ウイルス性ベクター、プラスミド、ならびに他の免疫活性遺伝子および組換え物質、またはそれらの混合物を含む、ワクチンの調製物のための抗原である。いくつかの実施形態において、1種以上の抗原は、インフルエンザ、ジフテリア、破傷風、および百日咳、SARS、AIDS、コレラ、細菌性赤痢、髄膜炎、斑、肝炎、デング熱、黄熱、脳炎、マラリア、ヘルペス、麻疹、腸チフス、結核、発疹チフス、中耳炎、炭疽またはそれらの混合物の予防のための抗原から独立して選択される。
【0078】
いくつかの実施形態において、1種以上の抗原は、インフルエンザ、またはその混合物(例えば、1種以上の不活性化されたインフルエンザウイルスまたは弱毒化されたインフルエンザウイルス(ビリオン全て))、またはそのサブユニット(ビリオン成分(split virion)、サブビリオン)(例えば、1種以上のウイルス性膜糖タンパク質(例えば、赤血球凝集素(HA)またはノイラミニダーゼ(NA)))、あるいはウイルス性内部タンパク質(例えば、ヌクレオカプシドタンパク質)またはその混合物のための抗原である。現在、サブビリオン成分抗原およびサブユニット抗原は、インフルエンザのためのワクチンの調製物に最も広く使用されている。代表的に、前年に意図される個体群に広まった例示的な2種または3種のウイルス株のインフルエンザウイルスは、ニワトリの卵の胚において増殖されて尿膜腔液から得られるか、または特定の動物細胞株(例えば、MDCK(Madin−Darbyイヌ腎臓))の細胞において増殖され、化学薬品(例えば、ホルムアルデヒド)で不活性化され、精製されて、精製された完全なウイルスを得る。完全な不活性化されたウイルスまたは弱毒化されたウイルスは、完全なビリオンワクチンを調製するために使用され得るか、または精製されたウイルスは、それらを小成分(例えば膜タンパク質HAおよびNAならびにそれらの種々の公知のサブタイプ)に分離するために化学物質によって壊され得、次いで、タンパク質抗原がさらに精製され得る。次いで、1種以上の株由来の抗原は、最終ワクチンを生成するために組み合わされる。
【0079】
多くのサブビリオンインフルエンザワクチンのためのインフルエンザワクチン用量は、しばしばHA含量に基づいて処方される。好ましくは、インフルエンザのための1種以上の抗原は、組成物中に存在し、そして/または哺乳動物もしくは40以上のヒト赤血球凝集抑制(HAI)力価において誘導し得る量で患者に対して投与される。鼻への投与のための粉末インフルエンザワクチン組成物は、代表的に、単位投与のために、粉末用量当たり、現在広まっているウイルス株の各々3種に由来する約5〜50μgのHAを含むように、処方され得る。
【0080】
タンパク質および他の生物学的物質に基づくワクチン抗原および他の薬理学的に活性な薬剤は、しばしば、本発明の組成物中に存在するか、または他の人工の薬物もしくは治療剤より有意により低い濃度で(例えば、微生物のレベルで)本発明の方法によって投与される。動物における医学的に受容可能なレベルの免疫を誘導するために必要とされるワクチン抗原の量は、もちろん、種および動物の体重、哺乳動物および/または個体の特定の型の免疫系の特徴とともに変化する。それにも関わらず、例示的な目的のためだけに、1種以上の抗原は、組成物の約0.001重量%〜約10重量%、または約0.01重量%〜約1重量%、または約0.05重量%〜約0.5重量%の量で組成物中に存在し得る。
【0081】
本発明に使用される生物学的因子は、他の物質より、貯蔵中ならびに適用中および適用後に、安定性が有意に低い傾向がある。本発明の組成物は、そのような生物学的因子の安定化および貯蔵に関して予測外に優れ得る。特に、適切なゲル化多糖類(特にペクチン)と混合して、そして固体を形成するために乾燥した場合、固体組成物中の多糖類の極性および他のキャリアおよび/または賦形剤、ならびに固体組成物の低い水含量は、生物学的分子の有効期間を有意に延長し得るが、そうでなければ、室温、または低温貯蔵条件下でさえ、貯蔵される水溶液中で不安定であり得る。さらに、組織または体液への適用後、一旦インサイチュゲルの中に組み込まれると、大きい生物学的因子は、高い程度の生体利用効率であるが、所望のゆっくりとした放出速度を達成するように、多糖類マトリックスによって安定化される傾向があり、そしてより小さい化合物よりゆっくりとゲルから放出される傾向がある。本発明の組成物のこれらの所望の特性は、ワクチンの投与および関連した抗原において特に重要であり得る。
【0082】
別の局面において、本発明は、生理学的に活性な薬剤を動物に送達するための方法に関し、その方法は、任意の順序または組み合わせにおいて、動物の組織または体液に以下の成分
a)動物における生理反応を誘導するために有効な量における1種以上の生理学的に活性な薬剤;
b)陰イオン性カルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類、および
c)1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む、1種以上のゲル誘導性固体組成物;
を投与する工程を包含し、動物の組織または体液と接触してゲルを形成する。
【0083】
この実施形態、および本発明の固体組成物の他の実施形態において、1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含むゲル誘導性固体組成物は、必要に応じて、生理学的に活性な薬剤および/または他の固体賦形剤の存在下またはそれらの混合物において、化学的に明確な固相として存在する。そのようなゲル誘導性固体組成物の目的は、ゲル化の速度および/または有効性を誘導および/または改良するために、適用部位での組織または体液からインサイチュで利用可能な組成物を補うためにゲルを誘導する二価または多価のカチオンの「外因性」の補助的な固体供給源を提供することである。
【0084】
ゲル誘導性固体組成物の二価または多価のカチオンは、代表的に、薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩の形態で存在し、それは、所望のゲルに対する傾向が改良されるか、またはゲルを形成するために必要な陰イオン性多糖類の濃度が所望されるように、隣接する多糖類鎖の陰性基を急速および効率的に架橋するために、陰イオン性ポリマーのゲル化のために必要な二価または多価のカチオンの補助的な供給源を提供する。薬学的に受容可能なカルシウム塩およびアルミニウム塩は、ゲル誘導性固体組成物の部分としての使用のために好ましい塩である。
【0085】
いくつかの実施形態において、薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩は、水、生理食塩水、または体液(例えば、血清または粘膜分泌物)に容易に溶解する。体液と接触して、可溶性の薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩は、急速に溶解し、カチオンを水溶性媒体の中へ遊離させ、陰イオン性多糖類(例えば、ペクチン)と接触する溶液の中へ急速に拡散させて、陰イオン性多糖類を架橋するために陰性基を配位結合する。そのような容易に可溶する二価または多価のカチオンの例としては、ハロゲン化カルシウム、特に塩化カルシウムが挙げられる。
【0086】
他の実施形態において、薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩は、生物学的流体、または体液におけるMerck Indexの専門用語の「実質的に不溶性」の水性環境において不十分にしか溶解できない。好ましくは、そのような不十分な溶解性の薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩は、室温および生理的pHで水に溶解せず、1リットルの塩につき5×10−3モルより多くを含むか、またはより好ましくは1リットルの不十分な溶解性の塩につき1×10−5モルより多くを含まない溶液を形成する。不十分な溶解性の薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩の例としては、リン酸カルシウムおよび水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0087】
そのような不十分な溶解性の薬学的に受容可能な二価または多価のカチオンの塩を含む本発明の組成物において、陰イオン性多糖類は、不十分な溶解性の塩の固体粒子の表面に拡散する傾向があり、粒子の表面で二価または多価のカチオンと反応し、その結果、ゲルは、ゲル誘導性固体組成物の粒子の表面で形成する傾向がある。従って、ゲル誘導性固体組成物の封入は、組織の表面または粘膜表面上に生理学的に活性な薬剤を含む陰イオン性多糖類と、そこに分散されるゲル誘導性固体組成物の多数の粒子とのゲル化された凝集体の形成を導く傾向がある。そのようなゲル化された凝集体は、ゲル誘導性固体組成物を含まない組成物と比較して優れた生物付着性を提供し得、そして、それらのゲル内に閉じこめられる生理学的に活性な薬剤の予測外にゆっくりかつ優れた送達を生じ得る傾向がある、通常より高い濃度の二価または多価のカチオンの存在のために、ゲルの溶解に対してより耐性があり得る。
【0088】
上記の方法において、成分cが固体として投与される限り、成分a、bおよびcは、任意の順序、組み合わせ、または物理的形態で投与され得、そして、ゲルは、組織または液体の体液と接触して形成される。本方法のいくつかの実施形態において、成分a、bおよびcは、粉末組成物の成分として投与され、その成分は、1種以上の固相の物理的混合物の形態であり得る。いくつかの実施形態において、固体成分cは、粉末粒子を含む別の固相として存在するが、一方、他の実施形態において、固体成分cはまた、生理学的に活性な薬剤と一緒に分子レベルで混合物中に存在し得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、成分aおよびbは、別々または混合された粉末として投与されるが、成分cは、異なる固相および化学的に別の固相として存在する。例えば、成分aおよびbは、成分aを含む1種以上の粉末と、成分bを含む1種以上の粉末との物理的混合物として投与され得、それらは、成分cとは別々、または成分cと一緒に投与され得る。
【0090】
いくつかの好ましい実施形態において、成分aおよびbは、液体キャリア中に1種以上の生理学的に活性な薬剤および1種以上の多糖類を溶解することによって調製される固体組成物として投与され、次いで、十分な液体キャリアを除去して、固体混合組成物を形成し、ここで、その薬剤および多糖類は、本質的に分子レベルで混合される。成分cは、固体混合組成物の投与前、投与と同時または投与後に投与され得、それは、しばしば粉末の形態で投与される。
【0091】
上記のように、本発明のいくつかの実施形態は、ワクチンおよび/または抗原を動物および/またはヒトに投与するための組成物および方法に関する。従って、いくつかの実施形態において、本発明は、ワクチンを動物の鼻粘膜に投与するための方法に関し、その方法は、動物の粘膜表面に以下:
a)別々にまたは一緒に以下:
i)組成物が動物の粘膜表面と接触する場合に、ゲルを形成するために有効な量の陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類;
ii)動物における活性な免疫応答を誘導し得る量におけるペプチド、タンパク質、核酸、生細胞、死細胞もしくはその一部、またはウイルスからなる群より選択される1種以上の抗原
を含むミクロスフェアまたは微粒子を含む1種以上の粉末を投与する工程;ならびに
b)粉末を動物の鼻組織および/または鼻液に投与して、組織または体液と接触する際にゲルを形成する工程、ならびに
c)動物における1種以上の抗原に対する能動免疫応答を誘導する工程、
を包含する。
【0092】
(液体組成物)
いくつかの他の実施形態において、成分aおよびbは、液体キャリア中の溶液として投与されるが、成分cは、別々の固体として投与される。
【0093】
さらに別の実施形態において、本発明は、動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法に関し、その方法は:
a)以下
i)液体キャリア、
ii)動物の組織または体液に適用される場合、溶液または分散物をゲル化するために有効な量の30%未満のメチル化の程度および4.6×105ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチン質、および
iii)1種以上の生理学的に活性な薬剤、
を含む溶液または分散を提供する工程;ならびに
b)溶液または分散を動物の組織または体液に適用して、組織と接触する際に生理学的に活性な薬剤を含むゲルを形成する工程、
を包含する。
【0094】
液体組成物を適用する上記方法のいくつかの実施形態において、ペクチン質は、アロエペクチンであり得、その有益な特徴は、記載されている。液体組成物を適用する上記方法の関連した実施形態において、生理学的に活性な薬剤は、生物学的因子(例えば、ペプチド、タンパク質、抗原、ワクチン、生細胞、死細胞の全てもしくは一部、またはウイルスの全てもしくは一部)である。関連した実施形態において、組織または体液は、鼻の粘膜表面を含む、粘膜表面であり得る。
【0095】
液体組成物を適用する上記方法において、その組成物は、それらの貯蔵特性を改良するために、特定の薬剤で改変され得る。実施例25および本明細書中の他の場所にさらに記載されるように、多価カチオンの塩(例えば、塩化ナトリウムおよび/または塩化アンモニウム)、または緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液)が、溶液の生理的pH、およびイオン強度を提供するために、液体組成物に添加され得る。さらに、そのような溶液は、最初の貯蔵のための使用される場合に、いくつかの予測外の優れた特性を有し、次いで、生理学的に活性な薬剤を適用する。NaClまたはNH4Clが、適切な濃度で、ペクチンおよび抗原を含む溶液に添加される場合、その溶液は、貯蔵のために冷却(約4℃で)される場合、可逆的にゲルを形成し得る。そのように形成されるゲルは、感受性の生物学的に活性な薬剤を沈殿および/または崩壊から安定化および保護し得る。組成物が、動物またはヒトに対する投与のための貯蔵から除去される場合、ゲルは、透明のまま溶解し、粘膜表面などへの注射による投与のために適切である遊離溶液に沈殿する。
【0096】
さらに、少量の二価カチオンの塩は、実施例24に記載されるように、それらをゲル化せずに溶液に添加され得、改変された溶液が組織または体液に適用される場合に有益であり、インサイチュゲル化が促進される。
【0097】
さらに、その溶液は、本明細書中の他の場所で記載される他の増粘剤および/または賦形剤を含み得る。
【0098】
ワクチンの鼻への投与は、そのような投与の多くの利点のために、特に興味深い。鼻への投与は、代表的に、注射に関連する不快感および費用を避け、また、代表的に、感受性の抗原に対する消化管の酸および酵素の破壊効果を避ける。身体が、別の全身および粘膜の免疫系を維持し、粘膜の免疫系が、多くの伝染病のネガティブな効果に抵抗する際に非常に重要であることもまた公知である。多くの場合において、抗原の鼻への投与は、全身および粘膜の免疫系の両方において免疫反応を刺激し得る。それにも関わらず、ワクチンの鼻への投与が、チャレンジされ得る。なぜなら、鼻粘膜表面が、それ自体急速に再生し、非常に短い期間で外来の因子を除去することは周知であるからである。従って、ワクチンの鼻への投与における多くの先行技術の試みは、鼻粘膜からのワクチン組成物の急速なクリアランスのために、治療的な成功を達成せず、その結果、特に高分子量およびより高い極性の抗原(例えば、タンパク質)の場合において、不十分な時間および接触が、動物における所望のレベルの免疫応答を効率的に誘導するために、維持される。
【0099】
本発明は、組成物ならびに鼻の粘膜表面に付着する抗原を含むインサイチュゲルを形成する組成物、およびワクチンの抗原成分についての延長された残留時間を提供することによって、先行技術の問題を予測外に克服するそれらの組成物を投与する方法を提供する。実施例26および図10を参照のこと。実施例22および図8に示すように、その結果は、動物における予測外に改良されてかつ優れた能動免疫応答の誘導である。
【0100】
多くの実施形態において、動物の鼻粘膜へのワクチンおよび/または抗原の投与後、その動物の免疫応答は、動物の肺洗浄物中のIgAレベルによって測定される場合、多糖類を含まないコントロール組成物を投与するコントロール実験で得られるIgAレベルと比較して、約10%より多く増加し得る。好ましくは、動物の免疫応答は、動物の肺洗浄物中のIgAレベルによって測定される場合、多糖類を含まないコントロール組成物を投与するコントロール実験において得られるIgAレベルと比較して、約25%、50%、75%、100%、150%、または200%より多く増加する。
【0101】
ゲル化イオン性ポリマーを有する粉末処方物の1つの独特の利点は、投与後、一貫したゲル化を確実にするために、乾燥されたゲル誘導剤と粉末処方物とを混合する能力であることが、理解される。従って、乾燥粉末として作製されるゲル誘導剤は、粉末処方物に添加され得る。誘導剤は、乾燥状態であるので、送達前または水和前にゲル化しない。送達後、ゲル誘導剤は、溶解されて、それによって、ゲル化イオン性ポリマーとの相互作用を介して処方物の粉末粒子のゲル化を促進する。
【0102】
ペクチン、アルギン酸塩、およびポリホスファゼンのようなポリマーについて、ゲル誘導剤は、種々の2+、3+、および他の多価金属イオンであり得る。これらのイオンの例としては、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、第二鉄、およびアルミニウムが挙げられる。それらは、それ自体、または賦形剤の存在下で粉末として調製され得る。誘導剤の粉末粒子密度およびサイズは、一貫したかつ均質な様式で活性な薬剤の処方物の粉末と混合されるように調整され得る。
【0103】
(賦形剤およびアジュバント)
さらに、結合剤、充填剤または増量剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、および味覚マスキング剤を含む、薬学的に受容可能な賦形剤の他の群が、使用され得る。結合剤は、自由に流動する粉末を生じるために使用され;充填剤は、粉末容積を増大させるために使用され;滑沢剤は、粉末の流動を増加させるために使用され;味覚マスキング剤は、医薬の不快な風味を減少させるために使用される。
【0104】
薬学的に受容可能な賦形剤の1つの好ましい分類は、薬学的に受容可能な単糖類または二糖類、あるいはそれらの混合物、あるいはアルキル化、ヒドロキルアルキル化、またはアシル化されたそれらの誘導体である。そのような単糖類または二糖類は、代表的に無毒であり、そして/または「安全なので一般に受容される(Generally Accepted As Safe)」と分類され、水または生物学的流体に容易に溶解し、高価ではない。そのような薬学的に受容可能な単糖類または二糖類の例としては、リボース、アラビノース、キシロース、フルクトース、グルコース、ラムノース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、マルトース、キシリトール、マンニトール、およびトレハロースが挙げられる。薬学的に受容可能な単糖類または二糖類の好ましいサブセットとしては、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、マルトース、マンニトール、およびトレハロースが挙げられる。特に、一水和物の形態のラクトースが、好ましい賦形剤である。
【0105】
薬学的に受容可能な単糖類または二糖類は、任意の濃度で存在し得るが、しかし、いくつかの実施形態において、比較的高い濃度(すなわち、約10.0重量%〜約99.9重量%の濃度、または好ましくは約30重量%〜約99.5重量%、または約50重量%〜約99.5重量%、または約80重量%〜約99.5重量%)で存在する。単糖類または二糖類が、比較的高い濃度で固体組成物中に存在する場合、その結果として生じる粒子の粉末粒子は、組成物のゲル化前に部分的に溶解する傾向があり得るか、または体液の粘膜表面と接触する際に部分的に崩壊する傾向があり得る。単糖類または二糖類は、急速に溶解または吸収されるが、生物学的表面(例えば、粘膜表面)を横切って十分に分散されて、その生物学的表面に付着される活性な薬剤および/またはペクチンもしくは他の陰イオン性多糖類の濃縮されて粘性のある生物付着性ゲル残基を残す傾向がある。
【0106】
本発明の組成物中の賦形剤としての単糖類または二糖類の上記の使用は、低い濃度で投与されるワクチン抗原および他の生物学的因子の鼻への投与のための微粒子/ミクロスフェア粉末処方物の形成に関して特に有益であり得る。賦形剤、希釈剤、および/または増量剤としての単糖類または二糖類の存在は、粒子が、10〜250ミクロンサイズの範囲における比較的大きい粒子として調製されることを可能にし、その範囲は、ガス注入および類似の技術によって組成物が投与されされる場合、鼻粘膜上のほとんどの粒子の沈積物を生じるサイズの範囲であることが公知であり、さらに短期間に単糖類または二糖類は、鼻の粘膜表面に十分に分散および/または付着される生理学的に活性な薬剤を含む、濃縮されて、粘性があり、粘膜付着性のインサイチュゲル残留物をそのままにして、溶解および/または吸収される。
【0107】
薬学的に受容可能な単糖類または二糖類は、固体処方物において特に好ましい賦形剤であり、それらは、代表的にいくらか不安定であり、代表的に低い濃度で投与される、薬学的に活性な薬剤、特に生物薬剤(例えば、ペプチド、タンパク質、抗原など)のための水溶性の希釈剤および/または安定剤を容易に形成し得る。
【0108】
本発明の組成物はまた、1種以上のさらなる薬学的に受容可能なアジュバントもしくは吸収促進因子またはそれらの混合物を含み得る。アジュバントは、主用な薬理学的に活性な薬剤の有効性または活性を改良するか、あるいはそれらに寄与する処方物中の添加剤である。ワクチン組成物に関して、アジュバントは、ワクチン抗原に対する患者に生じる免疫応答を改良する。いくつかの実施形態において、本発明のワクチン組成物は、リポ多糖類、E.Coli熱不安定エンテロトキシン(LT)、コレラ毒素(CT)、モノホスホリル脂質A(MPL)、サポニン、シストシン(cystosine)リン酸グアノシン(CpG)、サイトカイン、またはそれらの誘導体、アルミニウム塩、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、あるいはそれらの混合物からなる群から選択される1種以上のワクチンアジュバントを含む。
【0109】
粘膜表面、および特に鼻の粘膜表面への薬理学的に活性な薬剤の投与に関して、1種以上の吸収促進因子の封入は、活性な薬剤の吸収を改良するために、粘膜表面、細胞膜、または細胞内接合部に作用し得る。本発明の組成物の粘膜投与に関して、適切な吸収促進因子は、界面活性剤、粘液溶解剤、タンパク質または核酸分解酵素インヒビター、キレート剤(例えば、EGTA、EDTA)、アシルグリセロール、脂肪酸および塩、チロキサポール、サリチル酸塩、胆汁酸塩およびアナログならびにフシジン酸(fusidate)、またはそれらの混合物を封入し得る。
【0110】
(アロエペクチン)
アロエペクチンは、最近、米国特許第5,929,051号(その全体が本明細書中で参考として援用される)中で記載されたアロエベラ植物から単離される。アロエペクチンは、天然にLMペクチンであり、カルシウムゲル化の能力がある。さらに、アロエペクチンは、特にゲル化に関連する様々な独特の化学的特性(高分子量(1×106Daより大きい)、高Gal A含量(75%、80%、85%より多く、そして多くの場合90%より多い)および低DM(10%未満)を含む)を有し得る。10%以下のDMは、ほぼペクチン酸である、アロエペクチンを作製するが、実施例27、表8に示すように、他の市販の低DMペクチンおよびペクチン酸より、有意に高い分子量を有する。アロエペクチンはまた、それらの高いGalA含量のために、他のペクチンと比較して、ポリマーにおいて有意により高いパーセントのカルボキシル基を有する。アロエペクチンはまた、代表的に、多糖類の骨格において所望の高い程度の分枝、および他のペクチンにおける約2%と比較して、3%より大きいか、または4%より大きくなり得るそれらの高いラムノース含量の結果として、著しく可撓性のポリマー骨格を有する。このような低DM、高分子量、ならびに高Gal A含量および高ラムノース含量を有するペクチンは、以前に米国特許第5,929,051号に記載されていない。最近、薬学的適用のために適切な純度で市販されているアロエペクチンは、完成した製品として、オフホワイト粉末であり、完全に水溶性である一方、以前に市販されているLMペクチンおよび/または実験的なLMペクチンは、有意な量の不溶性物質を含み、それによって薬学的適用のために望ましくない黄〜黄褐色の粉末である。
【0111】
アロエベラの葉は、外側の緑色外皮および透明な内部ゲル(これはまた、果肉といわれる)の2つの部分から構成される。アロエペクチンは、内部ゲルまたは外皮細胞壁線維から抽出される。わずかにアルカリ性pHのキレート剤の使用は、最も効率的な抽出方法であることが見出されている。アロエペクチンは、これまでに記載したペクチンと比較して独特である。アロエペクチンは、精製されたペクチン調製物において、4%を超える高いラムノース含量を有し、この含量は、他のペクチン(柑橘類、リンゴ、甜菜およびヒマワリ)において述べられるよりも少なくとも2倍高い。ラムノースは、ペクチン骨格において重要な糖であり、この含量は、分子の可撓性に影響する。アロエペクチンはまた、他のいずれのペクチンにおいて記載されていない、稀有な糖、3−OMe−ラムノースを有する。アロエペクチンは、天然LMであり、一般的には、30%未満、そして10%未満の低さであり得るDMを有する。アロエペクチンのGal A含量は、70%より多く、そして90%を超える高さであり得る。アロエペクチンは、カルシウムの存在下でゲル化し得る。一価カチオン(例えば、ナトリウム、カリウムおよびリチウム)は、ゲルの形成を促進する。
【0112】
アロエペクチンは、1つ以上の以下の特徴によって、他のペクチンと区別され得る:
1.高分子量(1×106Daより大きい)および高い固有粘度(550ml/gより大きい);
2.高いラムノース含量(4%より大きい);
3.高いガラクツロン酸含量(90%より大きい);
4.3−OMe−ラムノースを含有する;
5.天然LMであり、10%未満の低さのDMを有する;
6.カルシウムゲル化の能力;
7.低温(4℃)での一価カチオンベースのゲル化の能力。
【0113】
本発明者らは、投与の経路として、身体への注射によってか、または創傷表面への局所塗布によって、ゲル化していない液体ペクチンが、投与部位でインサイチュでゲルを形成し得ることを見出した。このインサイチュのゲルは、インビトロで形成されたカルシウムゲルのように硬くかつ非流動性であり、このゲルは、粘稠性であるが流動性溶液であるヒドロゲルと区別される。このアロエペクチンのインサイチュでのゲル化は、安定な固体のインサイチュゲルを形成するために必要とされる最小限のアロエペクチンの濃度が、2.5mg/mlまたは0.25%(w/v)ほどの低さであり、そして増粘剤を添加する場合、さらにより低くなり得るほど、特に効率的であることが見出された。
【0114】
さらに、一価カチオンのゲル化の能力は、生理学的pHで塩化ナトリウムおよび/または塩化アンモニウムならびにイオン強度を含む感受性の生物学的分子を含む組成物を調製するために有利に適用され得、感受性の生物学的因子を安定化し得るゲルを形成するために、冷却される場合、可逆的にゲル化する。次いで、そのようにして処方されるゲルは、室温に戻る場合、再び溶解して、実施例25に記載されるように、透明で、沈殿する遊離の液体薬学的組成物を形成する。次いで、再び溶解された溶液は、種々の投与方法によって、組織または体液に適用され得、インサイチュゲルを形成する。
【0115】
ゲル組成物は、等張性または等張透圧性に作製され得、そして哺乳動物の体液(例えば、涙液の滴)のpHに調整され得る。このような体液のpHおよび浸透圧は、それぞれ、7.4および29mOsm/kgである。例えば、体液のpHおよび浸透圧に一致する、望ましいpHおよび浸透圧の条件で、薬理学的処置を必要とする哺乳動物の身体の領域に薬理学的に活性な医薬を送達することは有利である。必要に応じて、本発明の薬学的組成物は、滅菌状態で提供され得る。
【0116】
どんな理論によっても束縛されることを望まないが、ペクチンのインサイチュでのゲル化は、体液中のカルシウムイオンによって、主に媒介されると考えられる。血液は、8.5〜10.3mEq/dlのカルシウム濃度を有する。ペクチンのカルシウムゲル化は、体液の通常の成分でもあるNaClの存在下で増強される。血液中には、134mEq/LのNaClが存在する。
【0117】
インサイチュゲルはまた、種々の薬剤の存在下で形成し、種々の薬剤としては、以下が挙げられる:カプセル化または捕捉された形態の広範な薬剤を送達するためのペクチンの能力を示す、低有機化合物、タンパク質、核酸、生細胞、および皮下注射後の他のポリマー。不十分に可溶性の化合物(例えば、シルバデン(silvadene))が組込まれた場合、このインサイチュゲルは、なお形成された。一旦、送達されると、このペクチンインサイチュゲルは、明らかに遅い放出効果を発揮した。このことは、低有機モデル化合物(ファストグリーン)を用いて、インビトロ条件ならびにインビボ条件下で実証された。さらに、bFGFが、ペクチンインサイチュゲルと送達される場合、このゲルを取り囲む有意に増加した細胞増殖が観察された。
【0118】
アロエペクチンは、現在市販のペクチン(LMペクチン、およびポリガラクツロン酸、ならびにインサイチュゲル化のためのアミド化LMペクチンが挙げられる)よりもより効果的である。十分に形成されたインサイチュゲルは、アロエペクチンについての濃度よりも、10倍より高い濃度で、市販のポリガラクツロン酸またはLMペクチンを用いてのみ得られた。現在市販のLMペクチンおよびポリガラクツロン酸は、より低いGal A含量(約75%)、はるかにより低い分子量(7〜14×104Da)、および15〜50%のDMを有する。カルシウムゲルを形成し得る、他のポリマーが存在する。1つの例は、アルギン酸塩である。しかし、アルギン酸塩は、以前に、試験した濃度で明確に規定されたインサイチュゲルを形成し得ると考えられていなかった。アルギン酸塩は、グルウロン酸(guluronic acid)(G)およびマンウロン酸(manuronic acid)(M)から構成される多糖類のブロックコポリマーである(Moeら、In Food polysaccharides and their applications.pp287−339.Marcel Dekker,Inc.New York,1995)。アルギン酸塩中のこれら2つの残基は、G−ブロック、M−ブロック、または交互のMG−ブロックとして存在する。G−ブロックのみが、カルシウムゲル化を生じる。総G含量は、供給源に依存して広範に変動し;最大G含量は、約70%である。さらに、このアルギン酸塩カルシウムゲル化は、生理学的な流体中に存在するNaClの存在によって阻害される。
【0119】
いくつかの他のポリマーもまた、インサイチュゲル化が可能であることを示されてきた。しかし、これらのほとんどは、インサイチュゲル化について高いポリマー濃度(>20%)を必要とする(ポロキサマー(Poloxamer)、PEO−PLLAジブロックコポリマー(copoly)、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、セルロースおよびアセトファラートラテックス)。これらのポリマーのいくつかは、生分解性でない(例えば、ポロキサマー)か、または投与前(PEO−PLLAジブロックコポリマー)もしくは処方中(プルロニクス(Pluronics)およびゲルライト(Gelrite))に温度の操作を必要とする。熱的にゲル化するポリマー(ポロキサマー、プルロニクス、PEO−PLLAジブロックコポリマー、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、およびマトリゲル(Matrigel))はまた、パッケージングまたは貯蔵の間の周囲温度の変化に起因して、投与前のゲル化という不都合を有する。さらに、これらのポリマーの多くは、粘稠であるが、なお流動性溶液であるヒドロゲルのみを形成する(例えば、ポロキサマーおよびプルロニクス)。さらに、いくつかのポリマー処方物は、2つの異なるポリマーまたはゲル化が生じるための第2の成分の適用を必要とする。ペクチン(特に、アロエペクチン)は、インサイチュでのゲル化を達成するために必要とされるポリマー濃度が、非常に低く(χ0.25%,w/v)、そして増粘剤を添加する場合、さらにより低くし得るという点で、これらのポリマーまたは組成物よりも有利である。この調製物は、温度もしくはpHの調整、またはインサイチュでのゲル化を生じるための第2の成分の適用を必要としない。このゲルは、透明であり、そしてPEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマーおよびプルロニクスのように、特定の濃度範囲を超えてゲルの曇りの著しい増加が存在しない。
【0120】
生物工学の進歩は、ますますタンパク質ベースの治療法を生成する。タンパク質は、本質的に不安定である。適切な処方物および送達は、これらのインビボでの機能に重要である(Langer、Nature 392,5〜10,1998;PutneyおよびBurke、Nature Biotechnology 16,153〜157,1998)。ペクチンインサイチュゲルは、その穏やかなゲル化条件のために、タンパク質送達について、特に適切である。多くのタンパク質薬剤(例えば、創傷治癒のための増殖因子および治療的新脈管形成のための脈管形成因子)はまた、持続性の様式で局所的に送達されることを意図される。これはまた、ペクチンインサイチュゲルを用いて達成され得る。bFGFが、アロエペクチンインサイチュゲルとともに送達された場合、ゲルを取り囲む有意に増加した細胞増殖が観察された。
【0121】
生理学的に活性な薬剤は、最終的な組成物または処方物の重量を規準にして、約0.01%〜約90%より多くまで変化し得る。使用される生理学的に活性な薬剤の量は、生理学的に活性な薬剤の型、形態、および性質に依存する。
【0122】
ペクチン質の範囲は、組成物の総重量を規準にして、約0.01%〜約40%、好ましくは約0.1%〜約20%、より好ましくは、約0.25%〜約2%まで変化し得る。使用されるペクチン質の量は、生理学的に活性な薬剤の型、形態および性質に依存する。必要に応じて、キャリアまたは賦形剤が使用され得る。
【0123】
本発明に使用されるキャリアとしては、水;生理食塩水;緩衝化水溶液;油/水エマルジョンのようなエマルジョン;アジュバンド;湿潤剤;錠剤;およびカプセルのような薬学的に受容可能な任意のキャリアが挙げられる。そのキャリアは、最終組成物または処方物の重量を規準にして、約0%〜約90%まで変化し得る。存在するキャリアの量は、生理学的に活性な薬剤、およびその処方物または組成物が送達される様式に依存する。
【0124】
代表的な緩衝剤としては、アルカリまたはアルカリ土類の炭酸塩、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、およびコハク酸塩、および/または塩化アンモニウムが挙げられる。代表的な防腐剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、ホウ酸フェニル水銀、パラベン、ベンジルアルコール、およびフェニルエタノールが挙げられる。
【0125】
従って、本発明の1つの実施形態は、生理学的に活性な化合物の持続送達のための組成物を提供し、そしてその組成物は、ペクチン、および薬学的に受容可能な増粘剤を含むかまたは含まない生理学的に活性な化合物を含む。好ましくは、この組成物は、動物の体に組成物が投与されると、液体からゲルに変化し、従って、生理学的に活性な化合物の放出は、維持または制御される。
【0126】
ポリビニルピロリドン(「PVP」)、カルボキシメチルセルロース(「CMC」)、ヒドロキシエチルセルロース(「HPMC」)、アルギン酸ナトリウム、コラーゲン、ゼラチン、およびヒアルロン酸のような生分解性増粘剤が、処方物に加えられ得る。このような増粘剤の添加は、以下に記載するようにゲル化効率に影響を及ぼさず、より低いペクチン濃度でのゲルマトリックスの密度およびインサイチュでのゲル化を増強する利点を提供する。さらに、pH、イオン強度および温度の変化に応答するポリマーはまた、そのポリマーがペクチンのゲル化と相乗的である限り、使用され得る。さらに、異なるペクチンのブレンドが、増粘剤を伴うかまたは伴わずに使用され得る。他の増粘剤としては、Carbopol、Gelrite、キトサン、およびキシログルカンが挙げられる。その増粘剤は、最終組成物または処方物の重量を規準にして、約0%〜90%まで変化し得る。使用される生分解性増粘剤の量は、生理学的に活性な薬剤および組成物または処方物が使用される様式に依存する。
【0127】
本発明のなお別の実施形態は、医療用デバイスとして使用するための薬学的に受容可能な増粘剤を含むかまたは含まないペクチンからなる組成物を提供することである。
【0128】
好ましくは、ペクチン質は、ペクチンのガラクツロン酸の単量体のサブユニットのカルボキシル置換基が、カルシウムイオンを配位結合して、それによってカルシウム架橋されたゲルを形成するために反応し得るという点で、カルシウム反応物である。このようなカルシウム反応物ゲルの形成は、種々の分光学および/または配位結合されたカルシウムをゲルから除去して、それによってゲルの溶解を引き起こすために使用され得る、カルシウムキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸およびその塩(「EDTA」))と架橋されたゲルの反応を含む、ウェットケミカル法(wet chemical methods)によって決定され得る。
【0129】
より好ましくは、ペクチン質は、LMペクチンまたはポリガラクツロン酸である。さらにより好ましくは、ペクチン質は、アロエペクチンである。
【0130】
治療薬または診断用薬を含む、ペクチンがインサイチュでゲル化する組成物は、種々の手段によって動物に投与または送達され得る。例えば、その組成物は、眼、粘膜表面または創傷に局所的に適用され得る。その組成物はまた、非経口的(例えば、皮下、筋肉内)、または腹腔内注射を介して送達され得る。その組成物はまた、器官、関節腔、または腫瘍に注射され得る。
【0131】
ペクチンは、多くの異なる植物供給源から抽出され得る。ペクチンは、柑橘類およびリンゴに加えて、例えば、ジャガイモ、グレープフルーツ、テンサイ、およびヒマワリの頭部から得られる。ペクチンは修飾され得る。例えば、アミド化ペクチンは、アンモニアで処理することによって製造され得る。アロエペクチン様ペクチンは、異なる植物種に存在し得または異なる植物供給源由来のペクチンは、本明細書中に開示される原理に基づいて、インサイチュでのゲル化力を増強するように製造され、再加工され、および/または修飾され得ると考えられる。さらに、50%未満のDMを含むLMペクチンが、そのカルシウム反応性のために本発明において使用されるのに好ましいが、特定のHMペクチンがまた、カルシウム感受性であり、カルシウムゲルを形成し得ることが知られており、従って、そのペクチンがインサイチュでのゲル化のために使用され得る(Tibbitsら、Carbohydrate research 310,101−107,1998)。さらに、ブロック様式でエステル分解されたHMペクチンは、まだ50%より多いDMを含んでいるが、ブロック様式によるエステル分解によってカルシウム感受性が与えられ、使用され得る。Christensenら、米国特許第6,083,540号を参照のこと。
【0132】
従って、上記の特定の実施形態が、本発明と同じ目的を実行するための他の構築物を改変または設計するための基礎として容易に利用され得ることは、当業者に理解されるべきである。このような等価構築物は、添付の特許請求の範囲および/または実施例に示されたような本発明の精神および範囲から逸脱しないこともまた、当業者に理解されるべきである。
【実施例】
【0133】
(実施例1)
(アロエペクチンのインサイチュでのゲル化)
(アロエペクチンの抽出)
アロエペクチンを、アロエベラの葉の果肉または外皮のいずれかから調製された細胞壁繊維から抽出した。このペクチンを抽出する一般的な方法は、報告されている。Voragenら、In Food polysaccharides and their applications.p.287〜339.Marcel Dekker,Inc.New York,1995を参照のこと。米国特許第5,929,051号(この内容全体は、本明細書中で参考として詳細に援用される)もまた、参照のこと。アロエペクチンの抽出は、EDTAのようなキレート剤を用いてかまたは温水、加熱した希酸(HCl、pH1.5〜3)、および冷却した希塩基(NaOHおよびNa2CO3;pH10)を含む他の条件下で達成した。
【0134】
最初の抽出に続き、残った線維を粗い濾過および微細濾過によって除去した。このペクチンをエタノールで沈殿させた。このペクチン沈殿物を、乾燥させる前にさらにエタノール溶液でリンスした。
【0135】
果肉または外皮の細胞壁線維のいずれかからこの様式で得られたアロエペクチンを、分子量(1×105Daより大きい)、低DM(50%未満)、およびGal A含有量(80%より大きい)で特徴付けた。好ましくは、分子量が1×106Daより大きく、DMは10%未満であり、そしてGal A含有量が90%より多いことであった。
【0136】
このペクチンの分子量を、標準としてプルランを用いて、HPLCベースのサイズ排除クロマトグラフィーによって決定した。DMを、選択的還元法(Manessら、Analytical Biochemistry 185,346−352,1990)およびHPLCベースの方法(Voragenら、Food Hydrocolloids,1,65−70、1986)によって決定した。Gal A含有量を、m−ヒドロキシジフェニル法(Blumenkrantz,N.およびAsboe−Hansen,G.Analytical Biochemistry 54,484−489,1973)によって決定した。これら3つの参考文献の各々の内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0137】
(インビボでの注射によって投与されるアロエペクチン溶液のインサイチュゲル化)
アロエペクチンを最初に、滅菌した脱イオン水に溶解し、そして次いで、等容量の2×生理食塩水(0.3M NaCl)と混合した。アロエペクチンは、食塩水に容易に溶解し得なかった。しかし、一旦水に溶解したら、ペクチンは、食塩水と混合して、生理学的イオン強度を達成し得る。このようにして得られた生理食塩水中のペクチン溶液は、透明なままであった。このペクチン溶液は、室温で自由流動性であり、そしてポリマーの濃度に依存して5.0〜6.0のpHを有した。指示されない限り、温度またはpHの調整を行う必要はなかった。この調製物を、動物の使用プロトコルに従って、Swiss Websterマウス(1部位につき0.05mlまたは0.1ml)の下腹部領域に皮下注射した。マウスを、注射後、種々の時間に屠殺し、ゲル化を試験した。
【0138】
注射部位の皮膚の腫張は、生理食塩水コントロールの場合のように時間と共には消失しなかった。注射部位にわたる皮膚を外科的に切開した場合、球または楕円のような形のゲル破片を観測した。このゲルは、澄んで、透明でかつ硬かった。これは、周囲の組織から容易に分離し得た。このゲルを外科的に皮膚と共に切除し、ホルマリンで固定し、切片化し、H&Eで染色し、そして顕微鏡下で調べた。このゲルを軽く染色しただけではあるが、はっきりと見え、そして皮膚組織によって囲まれていた。同様のインサイチュゲル化を、ラットにおいても観察した。その注射部位での腫張は、ラットにおいては、分厚い皮膚および被毛に起因して、マウスにおいてと同様に明白でなかった。しかし、注射部位の皮膚を外科的に切開した場合、同様のインサイチュゲルが観察された。ラットにおいて、1mlのアロエペクチン溶液を下腹部領域に皮下注射し得、そして同様に非常に大きなゲル破片を得た。
【0139】
このゲル化は、ペクチン濃度依存性である。χ0.25%(w/v)の濃度で、固体の硬いゲルを得た。α0.1%(w/v)では、ゲル化は観察されなかった。0.1%と0.25%との間の濃度で、軟らかいゲルを得た。アロエペクチン溶液のpHを、希水酸化ナトリウムで約7.2に調整した場合、このインサイチュゲルがまた形成された。
【0140】
このインサイチュゲル化能は、アロエペクチンの分子量に依存する。非常に低い分子量(約3×104Da)を有するが、同じDMおよびGal A含量を有するアロエペクチンを用いた場合に、0.5%(w/v)で試験すると、インサイチュゲル化は観察されなかった。
【0141】
腹腔内経路および筋肉経路を介した注射後、インサイチュゲルがまた形成されたが、この形成したゲルは、皮下注射後に形成されるゲルと同程度の均一な形状を有しないようであった。
【0142】
(実施例2)
(創傷表面への局所投与後のインサイチュゲル化)
生理食塩水中のアロエペクチン調製物(0.5%、w/v)を、マウスまたはラットにおける新しい全層切除した皮膚創傷に直接適用した。生理食塩水中の0.5%(w/v)のCMC調製物および市販のヒドロゲル創傷包帯剤をコントロールとして使用した。この創傷は、動物使用プロトコルに従って生検穿孔鋏(biopsy punch)を用いて作製した。4時間後、ラットを屠殺し、そして創傷を外科的に取り除いた。創傷をホルマリンで固定し、切片化し、そしてH&Eで染色した。アロエペクチン調製物を用いた場合、創傷表面上にゲルの層が明らかに形成されたが、CMCまたは市販のヒドロゲル創傷包帯剤を用いた場合には形成されなかった。
【0143】
(実施例3)
(ゲル境界移動アッセイ(Gel Frontal Migration Assay)によって測定される場合の体液におけるカルシウムイオンによって媒介されるペクチンのインサイチュゲル化)
体液(例えば、血液、涙液、肺液および鼻分泌物)は、カルシウムイオンを含む(例えば、血液中で8.5〜10.3mEq/dl)。アロエペクチンはカルシウムゲルを形成するので、インサイチュゲル化を模倣する、動物の血清を用いたインビトロでのゲル化アッセイを使用して、アロエペクチンのインサイチュゲル化におけるカルシウムの役割を試験した。このインビトロアッセイを、ゲル境界移動アッセイとして記載する。動物血清をガラスチューブの底部に配置し、そしてアロエペクチン溶液をこの血清の上に重ねた(このペクチン溶液はまた、ペクチン溶液に対する試験溶液の密度に依存してチューブの底部に配置され得る)。組織培養グレードの正常なウシ血清を使用した。2mlの血清をガラスチューブ(0.8×11cm)の底部に配置し、そして1mlのペクチン溶液(0.5〜0.75%、w/v)をそのチューブの上部に配置した。
【0144】
ゲル化は接触線(溶液の境界面)で速効性であり、そしてゲル相またはゲル境界は、時間の経過と共に、ペクチン溶液中で徐々に上方へと広がった。光源下で調べる場合、上部のペクチン相で形成されるゲルを、その増加した濁度によってペクチン溶液から識別し得る。また、ゲルが形成される場合、チューブを傾けても、界面は動かない。界面で形成されるゲルの厚さを、時間と共に測定し得る(そのような測定は、本明細書中の以下で「ゲルの長さ」と言及される)。
【0145】
しかし、体液(例えば血清)を、生理食塩水に対して最初に透析する場合、または溶液から遊離カルシウムを除去するためのEDTA(2価のカチオンに対するキレート剤)もしくはEGTA(カルシウムに対して特異的なキレート剤)を、最終濃度が10mMになるように血清に加える場合、ゲル化は観察されなかった。このことは、体液に存在するカルシウムイオンが、ペクチンのインサイチュゲル化に関与していることを示す証拠である。
【0146】
このペクチンのゲル化はまた、マウスから単離した全血または血漿全てをヘパリン処置する同様のインビボでの実験において試験した場合に生じた。
【0147】
(実施例4)
(他の体液を用いた、ペクチンのインサイチュゲル化)
血清または血液に加え、体液(例えば、涙液、肺液、および鼻液)を含む、多くの他の型のカルシウムが存在する。ペクチンのゲル化がまた、他の体液を用いるインビトロでの実験において起こるかどうかを決定するために、アロエペクチン(生理食塩水中で0.25%)とともに実施例3に記載のゲル境界移動アッセイを使用した。
【0148】
このゲル化は、天然の腹水を用いた場合にも起こった。この場合、モノクローナル抗体産生のためのハイブリドーマを注射したマウス由来の腹水(ascite)を、腹水(peritoneal fluid)として使用した。
【0149】
このゲル化はまた、模擬体液でも起こった。それら模擬体液は、以下である:
1.涙液(100mlにつき、0.68gのNaCl、0.22gのNaHCO3、0.008gのCaCl2.2H2O、および0.14gのKCl(StjernschantzおよびAsitin,Edman,P.(編),「Biopharmaceutics of Ocular Drug Delivery」,CRC Press,Boca Raton,p.1−15,1993を参照のこと)、あるいは100mlにつき、0.268gのウシ血清アルブミン、0.268gのリゾチーム、0.134gのグロブリン、0.008gのCaCl2.2H2O、0.650gのD−グルコース、および0.658gのNaCl(Cohenら、Journal of Controlled Release 44,201−208,1997を参照のこと));
2.肺液(100mlにつき、0.01gのMgCl2.6H2O、0.61gのNaCl、0.03gのKCl、0.027gのNa2HPO4.7H2O、0.007gのNa2SO4、0.018gのCaCl2.2H2O、0.095gのNaHC2O2.3H2O、0.26gのNaHCO3、および0.01gのNa3H5C6O7.2H2O(FisherおよびBriant,Radiation Protection Dosimetry,53,263−267,1994を参照のこと));および
3.鼻分泌物(100mlにつき、0.867gのNaCl、0.44gのNa2HPO4、0.108gのNaH2PO4、0.058gのCaCl2.2H2O、0.31gのKCl、0.636gのアルブミン(Lorinら、Journal of Laboratory Clinical Medicine,2,275−267,1994を参照のこと))
(実施例5)
(NaClが、ペクチンカルシウムゲル化を促進する)
体液(例えば、血液および涙液)はまた、ナトリウムイオンを含む(血液中で135〜146mEq/L)。NaClはLMペクチンのカルシウムゲル化を促進することが示されている。局所または非経口的な使用のための薬理学的調製物を、緩衝化した生理食塩水または緩衝化していない生理食塩水(0.15MのNaCl)あるいは等張性溶液中で、通常、調製する。アロエペクチンを用いてNaCl溶液によって誘導されるゲル化の促進もまた、起こるどうかを決定するために、ゲル境界移動アッセイを使用した。0.15M NaCl(2ml)中で調製したアロエペクチン(0.5%、w/v)溶液をチューブの底部に配置し、そして100mM未満の濃度のCaCl2溶液(0.05ml)をこのペクチン溶液の上部に配置した。ゲルは、時間の経過と共にペクチン溶液において下方向に広がって形成された。ペクチン溶液中の下方へのゲル境界の遊走を、CaCl2の添加後ごとに測定した。この結果は、ゲル境界が、NaClの存在下でより速く遊走する(すなわち、アロエペクチンのカルシウムゲル化は、NaClの存在によって促進される)ことを示した(図1を参照のこと)。NaClの効果はまた、カルシウム濃度の用量依存性であり;そのゲル遊走速度は、0.05MのNaCl中でよりも0.15MのNaCl中での方が速かった。
【0150】
これらの観察は、他のLMペクチンを用いた先の研究結果と一致する(Garnierら、Carbohydrate Research 240,219−232,1993;256,71−81,1994)。図1は、アロエペクチンのカルシウムゲル化に対するNaClの関連を示す棒グラフである。
【0151】
(実施例6)
(ペクチンのインサイチュゲル化は、低濃度のペクチンでより速い)
上記のゲル境界移動アッセイを使用した。正常ウシ血清(2ml)に、生理食塩水(1ml)中の種々の濃度のアロエペクチンを注いだ。室温で18時間後、形成されたゲルの長さ(すなわち、ゲルの厚さ)を測定した。接触相での最初のゲル化は、ペクチン濃度に関わらず、速効性である。しかし、時間の経過と共にゲルの長さが成長する速度は、異なるペクチン濃度で、異なった。0.05%(w/v)で形成されるゲルの長さは、0.5%(w/v)で形成されるゲルの長さよりも約5倍長いので、ペクチン濃度が低くなるほど、ゲル化はより速いことが見出された(図2を参照のこと)。低濃度(<0.2%、w/v)で形成されるゲルは、非常に軟らかく、そして強い攪拌によって破壊することができた。
【0152】
血清の代わりに塩化カルシウム溶液を用いた場合にも、同様の観察がなされた。このことは、ペクチンカルシウムゲル化の速度が、より低いペクチン濃度で高くなることを示す。
【0153】
(実施例7)
(他のポリマーまたは増粘剤の添加は、ペクチンのインサイチュゲル化を促進する)
上記のゲル境界移動アッセイを使用した。ポリマー(例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC、0.45%、w/v)、カルボキシメチルセルロース(CMC、0.45%、w/v)、またはアルギン酸ナトリウム(0.45%、w/v))をアロエペクチン(0.05%、w/v)と混合した。アルギン酸ナトリウムは、インビトロの条件下でCaCl2溶液と一緒にカルシウムゲルを形成し得るが、血清とはインサイチュゲルを形成しなかった。1mlのポリマー溶液を、ゲル境界移動アッセイにおいて2mlの正常ウシ血清に適用した。形成されたゲルの長さを18時間後に測定した。その結果は、他のポリマーの添加がペクチンのインサイチュでのゲル化の速度に影響しないことを示した(図3Aおよび図3Bを参照のこと)。このポリマーをアロエペクチンと異なる割合(0.4%対0.1%)で混合した時にもまた同じ結果が得られた。
【0154】
実施例1に記載したのと同様のインビボでのマウス実験において、生理食塩水でのアロエペクチン(0.375%、w/v)とCMC(0.375%、w/v)との混合物は、マウスへの皮下注射後に、インサイチュゲルを形成した。さらに、増粘剤(0.4%、w/vまたは0.3%、w/vでのアルギン酸ナトリウムまたはHEC)の添加は、より低いアロエペクチン濃度(0.1%、w/vまたは0.2%、w/v)で、より良好な形成されたインサイチュゲルを生じた。この濃度では、インサイチュゲルは、軟らかいか、あるいはアロエペクチン単独では形成されないかのいずれかである(実施例1)。
【0155】
(実施例8)
(他のペクチンおよびアルギン酸塩との比較)
カルシウムゲル化が可能なアロエペクチン以外のいくつかの多糖類を、インビボでのゲル化実験に用いた。他の多糖類は、28%のDMを有する柑橘類由来のLMペクチンおよびリンゴのペクチン(DM=0)から調製したポリガラクツロン酸(これらの両方をSigma Chemical Co.から入手した)、ならびに28〜34%のDMおよび16〜22%のDA(アミド化の程度)を有するアミド化したペクチンを含んでいた。使用前に、これらを脱イオン水に溶解し、濾過し、エタノール沈殿し、そして乾燥した。
【0156】
皮下経路による他のペクチンの溶液を用いてマウスを注射するインサイチュゲル化実験を、実施例1に記載されるように実施した。2匹のマウスにおける4つの注射部位を、各サンプルのために使用した。これらの結果は、皮下注射後、1.0%(w/v)または1.65%(w/v)の濃度で、代わりの多糖類のいずれかを用いてもインサイチュゲル化がはっきりと観察されなかったことを示し、スメア様(smear−like)のゲル物質だけが観察された。しかし、より高い濃度(3.0%、w/vまたは3.3%、w/v)で試験した場合、ポリガラクツロン酸およびアミド化したLMペクチンの両方で、はっきりと(十分)形成されたゲルを観察した。
【0157】
同様に、実施例1に記載の低分子量のアロエペクチンはまた、高濃度(2.5%、w/v)で、インサイチュでゲル化した。
【0158】
64%のDMを有するHM柑橘類ペクチンもまた試験した。LMペクチンについての方法と同様の方法で調製した。HMペクチンについて3%(w/v)の濃度では、ゲル化は観察されなかった。この注射部位は、湿って(wet)かつ水気が多く(watery)、固形のゲル破片は観察されなかった。
【0159】
アルギン酸塩(Keltone HVCRおよび高Gアルギン酸塩Manugel DMB(G含量60〜70%)を含む)も、0.5%の濃度で試験した。皮下注射から4時間後に調べた場合、スメア様のゲル物質だけが観察された。このことは、物質のほとんどが、ゲル化することなく離れて拡散していることを示した。このアルギン酸塩はまた、上記(実施例7)のように、正常な動物血清を用いたインビトロでのインサイチュゲル化アッセイにおいても、ゲルを形成しなかった。これらの結果は共に、LMペクチン、ポリガラクツロン酸、アミド化したLMペクチン、およびアルギン酸塩が、同じ濃度下では、インサイチュゲル化に対して、アロエペクチンほど効果的でないことを示した。
【0160】
(実施例9)
(ペクチンのインサイチュゲルによる、生理学的に活性な薬剤の送達)
薬物送達に使用するためのインサイチュゲル化に関して、この現象が、薬物または診断剤の存在下で起こらねばならない。従って、種々の化合物または薬剤を生理食塩中でアロエペクチン(0.5%(w/v)の最終ペクチン濃度)と混合した。この実験薬剤は、小分子の有機化合物(ファストグリーン、N−エチル−N−(4−[(4−{エチル[3−スルホフェニル)メチル]アミノ}フェニル)−(4−ヒドロキシ−2−スルホフェニル)メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン)−3−スルホベンゼンメタンミニウムヒドロキシド内部塩、ジナトリウム塩、808Da、10mg/ml)、小さいタンパク質(bFGF、17kDa、10μg/ml)、中程度のサイズのタンパク質(ウシ血清アルブミン、66kDa、10mg/ml)、大きなサイズのタンパク質(I型ウシコラーゲン、2mg/ml)、核酸(λDNA Hind IIIフラグメント、200μg/ml)、糖質ポリマー(CMC、0.5%、w/v)、およびRaw 264.7細胞(マウスのマクロファージ株、1×108/ml)を含んだ。この混合物をマウスに皮下注射した。次いで、注射から4時間後に、ゲル化を調べた。この結果は、インサイチュでのゲル化が、アロエペクチン単独のコントロールを用いて形成されたゲルと同様に起こった薬剤全ての存在下で起こったことを示した。
【0161】
さらに、ゲル境界移動アッセイにより、0.5%(w/v)アロエペクチン溶液のインサイチュゲル化もまた、以下の存在下で起こった:1)0.1%(w/v)のシルバデン(silvadene)(スルファジアジン銀)、(創傷処置に一般に使用される難溶性の抗菌剤)、2)0.5%(w/v)ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、および3)0.5%(w/v)のアルギン酸ナトリウム(Keltone HVCR、Kelco)。0.5%(w/v)のHECまたはアルギン酸ナトリウムの存在は、実施例6に記載されるように、インサイチュゲル化の有効性に影響しなかった。
【0162】
従って、このインサイチュゲル化がこれら多くの異なる因子と一緒になって起こるという事実は、ペクチンのインサイチュゲルが広範囲の薬物因子の送達のために使用され得ることを明確に示す。
【0163】
(実施例10)
(インビトロ条件下でのペクチンインサイチュゲルからの小さい有機化合物の徐放)
治療剤および診断剤は、100Da〜10,000Da以上の分子量で大きく異なる。一般に、化合物が小さいほど、徐放効果を達成するのもより困難である。ここで、小さい有機化合物のファストグリーン(食品業界および医薬業界において広く使用される色素)を、試験モデルとして選択した。この色素を、1mg/mlのファストグリーン濃度において生理食塩水中でアロエペクチン(0.5%、w/v)と混合した。生理食塩水中の遊離ペクチンの1mg/ml色素溶液を単独で、コントロールとして使用した。1mlの色素/ペクチン調製物またはこのコントロールを、12kDaまでを排除する(cut off)透析チューブ(直径1cm)内に配置した。次いで、サンプルを有する透析チューブを、30mlのガラスチューブ中の25mlの正常ウシ血清中に配置した。色素/アロエペクチン溶液を受容する1本の血清チューブはまた、最終濃度10mMまでのEDTAを受容し、カルシウムゲル化を防止した。次いで、このサンプルを含む血清チューブを、回転振盪機上で連続的に100rpmで攪拌した。少量の血清(100μl)を種々の時点でサンプリングした。血清中に放出された色素の量を、620nmでのODを測定することによって決定した。既知量のファストグリーンを有する血清サンプルを使用して、検量線を確立した。この結果は、同様の量のファストグリーンが、コントロールおよびEDTAを含む色素/アロエペクチン(ゲル化しない)から放出され、そしてEDTAを含まない色素/アロエペクチン(ゲル化する)から放出される色素の量は、測定した時点で顕著に低下した(p<0.05;スチューデントt−検定)ことを示した(図4を参照のこと)。このことは、アロエペクチンの存在およびそのゲル化が、このモデルの小分子の薬剤の放出を顕著に遅らせたことを示す。
【0164】
(実施例11)
(皮下注射後のペクチンインサイチュゲルからの小さい有機化合物の徐放)
上記で観察された徐放が、インビボ条件下で達成され得るかどうかを決定するために、生理食塩水中のファストグリーン(1mg/ml)/アロエペクチン(0.5%、w/v)または生理食塩水中のファストグリーン単独をマウスに皮下注射した。この注射部位(サンプルにつき2箇所)を4時間後に調べた。ペクチンの存在下で、色は注射前の最初の調製物ほど強くはないが、色素を部分的に保持しているインサイチュゲルが形成されることを見出した。対照的に、コントロールの注射部位は、ゲルおよび色を有さず、従って、色素を保持しなかった。従って、このペクチンインサイチュゲルは色素を保持しており、そして実際にインビボ条件下で、その放出を遅らせた。
【0165】
(実施例12)
(アロエペクチンのインサイチュゲルによるbFGFの局所的送達)
投与部位周囲の組織に局所的な効果を及ぼす成長因子について、成長因子は、ゆっくりな様式または持続する様式で放出されるようにマトリックス中で送達される必要がある。生理食塩水または緩衝液のみの送達は、この点について効果的でない。この実施例において、成長因子(bFGF)を使用した。bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子またはFGF−2)は、線維芽細胞の増殖および脈管形成または血管形成を刺激することが公知の成長因子である。これを、1〜10μg/mlの濃度の生理学的生理食塩水中でアロエペクチン(0.5%、w/v)と混合し、次いでマウスの腹の部位の左隅側または右隅側に皮下注射した。一方はコントロール(ペクチンアロエ)を受け、そして他方は、bFGF含有調製物を受けた。2匹のマウスからのインサイチュゲルを、5〜10日での皮膚と一緒に回収し、そしてホルマリン中で固定化し、切片化し、そしてH&E染色した。ゲルのどちらかの端での2つの同一の部位(ゲルの表面と皮膚の筋肉層との間の垂直方向およびゲルの外側の端から内向きに水平方向に510μm)を選択し、そしてそれぞれのゲルから選択されたこれら2つの領域中の細胞を、NIHイメージソフトウェアを用いて計算した。この結果は、コントロールよりもbFGF処置において、細胞数が2倍よりも高いことを示した(図5)。ゲル周囲の血管形成の増加はまた、高いbFGF濃度(10μg/ml)で観察された。これは、bFGFがインサイチュゲルから放出され、そして周囲の組織中でその機能を発揮することを示している。
【0166】
(実施例13)
(乾燥ペクチン組成物のインサイチュゲル化)
アロエペクチンおよびCMC(それぞれ0.75重量%)の混合物ならびに水中で調製された1.5%CMCを、別々に秤量トレイ中で凍結乾燥した。乾燥物質を、丸いパッド(直径約1cmおよび厚さ約3mm)のように切り抜き、そしてペトリ皿中で10mlの正常なウシ血清に浸した。アロエペクチン/CMCパッドは、透明なゲルを形成し、このゲルは、実験が終了するまでの4日間、インタクトな状態を維持したが、一方CMCのみを含むパッドは、同じ条件下で数時間で溶解したか、または消滅した。従って、これらの結果は、乾燥形態のペクチンはまた、体液で浸された後、ゲルを形成し得ることを示す。
【0167】
(実施例14)
(薬物送達のためのペクチンインサイチュゲルの使用:処方プロセス)
ペクチンのインサイチュゲルを使用して、治療剤または診断剤ならびに体液のpH特性および浸透圧特性を有する低濃度のゲル化ポリマー(ペクチン)を含み、そして投与の際に液体からゲルに変換する能力を有する、生理学的に受容可能な組成物を提供し得る。
【0168】
液体処方物を調製するためのプロセスは、以下の工程を包含する。
【0169】
1.ペクチンを、滅菌水に溶解する。
【0170】
2.緩衝または非緩衝生理食塩水を調製する。
【0171】
3.2つの溶液を混合する。
【0172】
4.生理学的に活性な化合物を、工程3で調製物に添加する。あるいは生理学的に活性な薬剤を、混合の前にいずれかの溶液に添加し得る。
【0173】
水および緩衝または非緩衝生理食塩水あるいは水溶液に加えて、他の薬学的に受容可能なキャリア(乳濁液(例えば、油/水エマルジョン)、アジュバント、種々の型の湿潤剤、錠剤、およびカプセルを含む)もまた、使用され得る。
【0174】
処方物のpHを、適切な緩衝剤(例えば、ホウ酸−ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム(一塩基)−リン酸ナトリウム(二塩基)、およびTris−HCl)を用いて調整する。処方物の浸透圧を、塩(例えば、NaCl、KCLおよびMgCl2)および他の浸透性調整剤(例えば、ソルビトール、スクロース、グリセリンおよびマンニトール)を用いて、体液の浸透圧を模倣するように適応させる。
【0175】
薬学的に受容可能な増粘剤を、添加し得る。この増粘剤は、ポリビニルピロリドン(「PVP」)、改変されたセルロースポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース(「CMC」))、ヒドロキシメチルセルロース(「HPMC」)、ヒドロキシエチルセルロース(「HEC」)、アルギン酸塩、ゼラチン、デキストラン、シクロデキストリンまたはヒアルロン酸であり得る。
【0176】
この処方物を、室温にて貯蔵し得るか、または冷蔵し得る(4℃)。処方物が約0.15M NaClを含む場合、これが4℃で貯蔵される場合、(ナトリウム)ゲルが形成される。適用の前に、このゲルを、室温にて溶液に戻す。粒子であるか処方物を凝集する傾向があるか、または低い水溶性を有する薬物または治療剤(例えば、シルバデン(スルファジアジン銀))について、ゲルマトリックス中の貯蔵は、処方物の凝集または沈殿を予防し得るので、有利であり得る。
【0177】
あるいは、この処方物を、乾燥形態で調製し得る。緩衝水もしくは非緩衝水もしくは生理食塩水中のペクチンおよび生理学的に活性な薬剤の混合物を、凍結乾燥する。あるいは、ペクチン粉末および乾燥した生理学的に活性な薬剤を混合し、そして、所望の形態に圧縮する。乾燥形態は、パッド、錠剤、カプセル、または粉末として使用され得る。
【0178】
処方物または組成物中の生理学的に活性な薬剤およびペクチン質の相対的な量は、送達されるべき特定の薬剤に依存して広範に変化し得る。液体処方物において、薬剤は、約0.01%(w/v)〜約50%(w/v)の範囲であり得、一方、ペクチン質は、約0.01%(w/v)〜約40%(w/v)の範囲であり得る。乾燥処方物または懸濁処方物において、薬剤またはペクチン質のいずれかは、90%(w/v)以上の範囲であり得る。
【0179】
(実施例15)
(分類された陰イオン性多糖類を含む薬学的粉末処方物の調製、およびそれらのゲル化の性質)
以下の表2に詳述されるように、モデルとなる活性な薬剤、種々の陰イオン性多糖類、増粘剤、および任意の賦形剤を含む粉末処方物を調製した。処方物を調製するために使用したイオン性ポリマーを、以下に記載する。
【0180】
高分子量のアロエペクチン、(HMW AP)、DM<10%、Mw>1.0×106Da
低分子量のアロエペクチン(LMW AP)DM<10%、Mw=1.3×105Da
ポリガラクツロン酸、Sigmaから提供される(ポリGal A)、DM<3%、Mw=1.7×105Da
低分子量のペクチン(LMペクチン)DM=26%、Sigma、Mw=2.0×105Da
アルギン酸塩、中間の粘度、Sigma Chemical Co.
米国特許第5929051号の実施例10に記載される手順によって、分子量を、基準としてプルランを使用するサイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography)によって決定した。SECを、TSK−Gel G5000 PWXカラム(Toso Haas)を用いて行なった。サンプルを、0.05%(w/v)アジ化ナトリウムを用いて、水中で0.3mg/mlに調製した。50μlのサンプルを注射して、1分当たり1mlで0.05%アジ化ナトリウムを用いて抽出した。屈折率を直線で測定した。プルラン(4.04×105、7.88×105、および1.66×106Da)を、基準として使用した。分子量を、この基準の線形回帰線に対して計算した。
【0181】
現在、市販のアロエペクチンは、高度に精製およびマイクロ濾過され、cGMP(current Good Manufacturing Practice)の下で作製されている。特に、表に記載した他の多糖類は、かなりの量の不溶性の物質を含み、水に溶解した場合、濁った溶液を生じた。それらを全て、不溶性の物質を除去するためにマイクロ濾過して、アルコールで沈殿させて、使用前に乾燥させた。ウシ血清アルブミン(BSA)およびリゾチームを、薬学的に活性な薬剤として最初に使用した。BSAは、モデルとなる薬剤としての種々の薬学的処方物、特にタンパク質送達のための処方物を検査するために広範囲に使用されている。リゾチームが、抗菌性であることは公知である。ポビドン(ポリビニルピロリドン、K29−32)を、増粘剤として使用し、ラクトースを賦形剤として使用し、その両方を、Sigma Chemical Co.から入手した。
【0182】
粉末処方物を、表2に記載した全ての成分の液体混合物を調製することによって作製し、次いで、溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥した固体を形成した。液体前駆物質溶液および最終粉末の両方の組成物を、表2に示す。
【0183】
【表2】
*括弧内の数は、水分のない主成分についての乾燥形態における各成分の含量パーセント(w/w)を示す。
【0184】
凍結乾燥した固体を、微小容器を有するEberbachブレンダーを使用して製砕した。その結果生じた粉末を、100μmより小さい粒子サイズを有する粉末を生成するために、滅菌した100μmのナイロン膜の篩を使用して篩にかけて、次いで、連続して、種々の細孔サイズの滅菌したナイロン膜(40μm、70μm、および100μm;Cell strainer、Becton Dickinson Labware)を用いて、種々の粒子サイズの粉末(40μmより小さい、40μm〜70μmおよび70μm〜100μm)を得た。100μmより大きい粒子をまた、100μm〜200μmの粒子を生成するために、200μmの篩を使用してさらに篩にかけた。この篩分けを、ガラスフィルターホルダーを使用して減圧下で行い、そして粉末を、0.22μmの膜の上に回収した。この粉末を、室温で貯蔵した。
【0185】
コントロール粉末をまた、イオン性ポリマーを除いて、全ての成分を有する処方物を用いて作製した。
【0186】
2つの粉末処方物を、表2に従って、HMWアロエペクチンを用いて作製し、BSAを有する1つのサンプルおよびBSAを有さない別のコントロールを、調製し、製粉して、100μm未満にするように篩にかけた。これらの2つのサンプル両方の水分含量を、120℃の乾燥温度で、水分分析器を使用して2〜3%(w/w)に決定した。
【0187】
(実施例16)
(粉末処方物のゲル化特性)
実施例15に詳述される調製物の粉末処方物のゲル化特性を示すために、種々のペクチンおよびアルギン酸塩を用いて作製された粉末(10mg、100μmより小さい)を、2mlの生理食塩水で懸濁した。1つのサンプルセットの生理食塩水は、3mM塩化カルシウムを含み、その他は、塩化カルシウムを含まなかった。カルシウムの存在下において、その粉末粒子は水和したが、粒子の形態のままであり、そしてその懸濁液は、濁ったままであった。顕微鏡下で、カルシウム生理食塩水中の粉末粒子は、澄んで、透明なゲル粒子または部分に変化した。対照的に、カルシウムの非存在下で、その粒子は、約10分以内に急速に溶解して、そしてその懸濁は、透明な溶液に変化した(代表的にNaCl生理食塩水中に容易に溶解されないだけでなく、その生理食塩水中でもゲル化しない、高分子量のアロエペクチンを用いて作製された粉末を除いて、以下の議論を参照のこと)。
【0188】
カルシウムキレート剤EDTA(10mM)を、上記のカルシウム生理食塩水で懸濁した粉末に加えた場合、その粒子は、約10分以内に急速に溶解した。
【0189】
ペクチンまたはアルギン酸塩で作製した粉末を、通常ウシ血清中で懸濁した場合、同様の結果を得た。つまり、粉末粒子は、通常ウシ血清を含むカルシウム中で懸濁された後、固体粒子の形態のままであった。しかし、EDTAの添加時に、その粒子は、約10分でほとんど溶解した。同様の結果をまた、模倣の鼻液(100mlあたり、0.867g NaCl、0.44g Na2HPO4、0.108g NaH2PO4、0.058g CaCl2.2H2O、0.31g KCl。Lorinら、Journal of Laboratory Clinical Medicine、2、275−267、1994を参照のこと)中で得た。これらの実験は、カルシウムの非存在下であるが、遊離のカルシウムイオンを含む溶液中で懸濁した粉末粒子が、カルシウム架橋されたゲルを形成するか、あるいはカルシウムを、キレート剤によってゲルから除去した場合、ゲルが形成されなかったか、または安定せず、そして多糖類の粒子が溶解したことを証明する。
【0190】
上記のように、HMWアロエペクチンは、水溶性であるが、NaCl生理食塩水または緩衝生理食塩水に容易に溶解しないか、または部分的にのみ溶解する。HMWアロエペクチンを含む粉末粒子を、遠心分離(5分間、500g)によってNaCl生理食塩水から除去して、水に再懸濁すると、数分間で急速に溶解した。この性質は、低分子量のLMペクチン、ポリガラクツロン酸、LMWアロエペクチン、またはアルギン酸塩から作製された粒子(その粒子は、水およびNaCl生理食塩水の両方に容易に溶解できる)と対照的である。それにも関わらず、カルシウム含有生理食塩水または正常なウシ血清溶液から単離した粒子から調製した粒子を、水に入れた場合、粒子の形態のままであり、種々の多糖類の粉末粒子が、カルシウムイオンの存在下で全てゲル化したことを示した。
【0191】
(実施例17)
(ゲル化のための固体処方物および液体処方物の薬物放出と、コントロールの薬物放出との比較)
異なる陰イオン性多糖類およびファストグリーン色素(1mg/ml)の水溶液からなる液体処方物を、調製した。ファストグリーンは、低分子の治療剤を模倣するために使用した。使用した陰イオン性多糖類ポリマーの濃度は、HMWアロエペクチンについて0.5%、アルギン酸塩について1%、ならびにポリガラクツロン酸、LMWアロエペクチン、およびLM柑橘類ペクチンについて2%であった。固体処方物を調製するために、水溶性処方物の20マイクロリットルを、滴として秤量トレイに置き、凍結乾燥して、次いで、乾燥ディスクとして回収した。
【0192】
この乾燥処方物ディスク、または20マイクロリットルの液体処方物を、10mMのEDTAを添加した、または添加していない、60mmペトリ皿の3.5ミリリットルの正常なウシ血清の中に入れた。薬剤の放出を模倣する、ファストグリーン色素の拡散を、その処方物の最初の挿入点付近のグリーン色素の直径の拡散円を時間に対して測定することによって観測した。
【0193】
EDTAを有さない正常なウシ血清において、乾燥処方物ディスクは、固体ディスクの形態のままであり、透明かつ固体のゲル部分へと徐々に変化した。24時間後、全ての色素が、離れた所へ拡散した場合、乾燥処方物由来のゲルは、澄んで、透明に変化した。乾燥処方物のゲル化を、10mMのEDTAを有する生理食塩水中にゲルディスクを浸漬することによって、さらに確認し、それは、約30分で急速に溶解した。EDTAを含む正常なウシ血清において、乾燥処方物ディスクはまた、ディスクまたはフィルムのいずれかとして徐々に溶解した。
【0194】
対照的に、ほとんどの液体処方物は、元の滴に似ている別のゲル部分の形成を有さずに、徐々に溶解および/または離れた所へ拡散し、そして、2時間後、ペトリ皿を穏やかに振盪した後に検出した後、ゲル部分の薄層のみを形成した。従って、粉末処方物が、液体処方物より効率的にゲル化したことは、明らかである。それにも関わらず、25Gニードルを介して50mMのCaCl2溶液に滴下した場合、液体処方物は全て、まとまって、ゲルビーズを形成した。それにも関わらず、HMWアロエペクチンで作製された液体処方物は、まとまって、血清中の元の滴サイズより少しだけ大きいサイズを有するゲルの小片を形成した。これは、高分子量のアロエペクチンによって示されるゲル化についての高い効率を明確に示す。同時に、これらの観察は、乾燥処方物のインサイチュゲル化の効率が、液体処方物の効率より優れ得ることを、示す。
【0195】
EDTAを有する、および有さない正常なウシ血清中に浸された処方物の周囲に拡散するファストグリーンの円の直径を、乾燥処方物および液体処方物の両方について時間に対して測定した(図6を参照のこと)。EDTAを有さない固体サンプルまたは液体サンプルのいずれかのゲル化は、ゲル化が、乾燥処方物でより効率的であるという観察と一致して、色素または薬物放出が、ゆっくりであることを示す。同じ観察を、EDTAを有さない血清より、EDTAを有する血清中で少しだけ速い色素の拡散を示すHMWアロエペクチンを有する乾燥処方物を除いて、全ての処方物で観察した。これは、HMWアロエペクチンのもう一方の別の異なる特徴である、HMWアロエペクチンが、生理食塩水中にわずかに可溶性かまたは不溶性という事実に関連し得る。
【0196】
(実施例18)
(多糖類/薬剤の粉末処方物のインサイチュゲル化を誘導するための可溶性カルシウム塩を含む粉末の使用)
タンパク質の活性な薬剤(BSA)およびLMWアロエペクチンまたはアルギン酸塩から選択される多糖類を含む2つの粉末処方物(表2に記載されるような、サンプル2および5)を、100μm未満の粒子サイズを有する粉末を生成するために、篩にかけた。カルシウム含有粉末を、2.5%(w/v)ポリビニルピロリドン、10%(w/v)ラクトース、および1%(w/v)塩化カルシウムを含む液体処方物から作製し、その溶液を乾燥し、固体を粉砕して、粉末を40μm未満の粒子サイズに篩にかけて作製し、乾燥後、7.4%の塩化カルシウム含量を有するゲル誘導粉末を生じた。この多糖類粉末およびゲル誘導粉末を、重量比4:1で混合し、その粉末混合物の1.48%(w/w)の最終塩化カルシウム含量を生じた。
【0197】
その粉末混合物を、生理食塩水(1ml中に5mg)中で懸濁した。全ての3つの混合していない粉末(すなわち、ペクチン+タンパク質、アルギン酸塩+タンパク質、およびカルシウム含有ゲル誘導粉末)を、NaCl生理食塩水中に個々に懸濁した場合、溶解した。それにも関わらず、LMWアロエペクチン+タンパク質、またはアルギン酸塩+タンパク質を含む粉末を有するカルシウムゲル誘導粉末の混合物は、NaCl生理食塩水中に溶解しなかった。同じ結果をまた、活性な薬剤としてリゾチームを用いて得た。これらの結果は、カルシウム含有粉末が、体液の生理食塩水モデルと接触する場合、多糖類/タンパク質粉末をゲル化するために誘導することを示す。
【0198】
(実施例19)
(多糖類/薬剤の粉末処方物のインサイチュゲル化を誘導するための非常に低い溶解性の多価カチオン塩を含む粉末の使用)
水酸化アルミニウム(Al(OH)3)は、非常に低い水溶性であるが、ヒトの使用のための薬学的なアジュバントとして承認されている。Sigma Chemical Co.から購入した水酸化アルミニウム懸濁液は、白っぽく、濁っていたが、均質な粒子懸濁液であった。アロエペクチン溶液(水に1ml当たり2mg)は、水酸化アルミニウム粒子の目に見える大きい凝集体の形成によって示されるように、不溶性の水酸化アルミニウムゲル懸濁液と混合した場合、ゲルを形成した。同じ観察をまた、他のペクチンおよびアルギン酸塩で観察した。その凝集体は、適切なポリマー/水酸化アルミニウムの比を、達成した場合、大きくて容易に目に見えた。同様の結果をまた、形成された凝集体は、水酸化アルミニウムを用いた凝集体ほど、大きくなかったが、リン酸カルシウム(Sigma Chemical Co.)で観察した。水酸化アルミニウムおよびリン酸カルシウムの両方は、比較的、不溶性の物質(Merck Index、第13版)であるが、これらの非常に低い溶解性の塩は、水和した場合、表面で明らかにイオン化され、アロエペクチンと反応し得る。
【0199】
さらに、この観察を調査するために、水酸化アルミニウムおよびリン酸カルシウムの粉末を、水または生理食塩水(1ml当たり10mg)中で懸濁して、次いで、種々の最終濃度(2.5〜0.0012mg/ml)でHMWアロエペクチン溶液と混合した。大きい凝集体の形成によって示される同じゲル化を、観察した。この同じ観察をまた、アルギン酸塩、LMペクチン、およびポリガラクツロン酸を用いて行ない、非常に低い溶解性の二価または多価の金属カチオンの塩をゲル誘導剤として使用することが可能であることを示した。
【0200】
例として、実施例15のようなアロエペクチン(HMW)を用いて作製した粉末処方物を、水酸化アルミニウム粉末と3:1の比で混合した。その混合物(10mg)を、2mlの生理食塩水中で懸濁した。大きい凝集体が、すぐに形成された。トルイジンブルーを、イオン性ポリマーの粉末粒子を染色するために、懸濁液に添加した。30分またはそれ以上の後、懸濁液の小さい滴を、スライドガラスの上に置いて、顕微鏡下で観察した。この凝集体は、ピンクに染色した処方物の粉末粒子および不透明な灰色がかった水酸化アルミニウム粒子の両方からなり、その凝集体の形成を確認した。
【0201】
第2の例として、LMWアロエペクチンを用いて作製した粉末処方物を、水酸化アルミニウム粉末と3:1の比で混合し、そして、その粉末混合物を、生理食塩水中で懸濁した。凝集体は、形成されたが、少数のピンクに染色された処方物の粉末粒子を顕微鏡下で観察し、そしてその凝集体は、主に水酸化アルミニウム粒子からなるように見えた。これは、その処方物の粉末粒子が溶解し、そしてその不溶性の塩が、処方物粒子全体のゲル化を引き起こさなかったことを示す。
【0202】
しかし、多糖類処方物/水酸化アルミニウムの粉末混合物を、3mMの塩化カルシウムを含む生理食塩水中で懸濁した場合、その多糖類の処方物粒子を再び観察し、形成された凝集体はまた、その処方物粒子および水酸化アルミニウム粒子からなった。同じ凝集体の形成をまた、混合物を、正常なウシ血清中で懸濁した場合に観察した。
【0203】
非常に低い溶解性の金属イオンの塩は、処方物粒子を含む多糖類に容易に浸透し得ず、そしてそれによって、粒子全体のゲル化を引き起こし得ず、粒子の表面上のポリマーの架橋またはゲル化のみを引き起こし得る。なぜなら、それらは、非常に低い溶解性であるか、または不溶性に近いため、解けていない多価のカチオン含有粒子は、ゲルのための物理的キャリア、または二価もしくは多価のカチオンを架橋する持続性の供給源として作用し得るからである。さらに、処方物の粉末粒子および非常に低い溶解性の固体ゲル誘導薬剤は、ゲル化した凝集体組成物の形成を引き起こし得る。混合物中のこれらの2つの異なる粉末の比および相対的な粒子サイズに依存して、形成される凝集体のサイズおよび他の特徴は、変化および/または調節され得る。高い比または低い比で、凝集体の粒子サイズは、非常に小さくなり得、別の型の粒子によって囲まれる1つの型の1つの粒子を有するが、約1の比で、その粒子は、大きなネットワークを形成するネットワークとして相互接続し得る。従って、種々の条件下で形成される凝集体ゲル複合体は、投与部位(例えば、粘膜表面および/または鼻腔)で形成されるインサイチュゲルの物理的特性、溶解特性、および持続放出の特性を調節するために使用され得る。
【0204】
(実施例20)
(粉末処方物由来の薬学的に活性な薬剤の持続性放出)
活性な薬剤の放出に対するインサイチュゲル化の粉末処方物の効果を、放出媒体として模倣した鼻液(SNF)を使用して評価した。その粉末処方物を、種々の量のポビドン、およびラクトースを用いて上記のように作製したが、全ては、同じタンパク質(BSA)含量(主成分の乾燥重量に対して0.1%)を有した(表3を参照のこと)。コントロール粉末は、イオン性ポリマー(HMWアロエペクチン)を除いて全ての成分を含有した。
【0205】
【表3】
10mgの粉末を、0.25mlのSNF中で懸濁した。30分後、その溶液または上清を、遠心分離によって粒子またはペレットから分離し、その上清およびペレット中のタンパク質を、SDSゲル電気泳動およびデンシトメトリー分析によって分析した。各々の処方物由来のタンパク質薬剤の放出パーセントを、以下の式−[上清中のタンパク質/(上清中のタンパク質+ペレット中のタンパク質)]×100%によって測定した。タンパク質が、コントロール粉末からほとんど全て放出し(90%より高く放出した)、そのタンパク質が全て完全に溶解したことを観察した。これに対して、そのタンパク質の放出は、アロエペクチンを有する粉末から有意にゆっくりとなり;55%(処方物1)または68%(処方物2)のみが、イオン性ポリマーを用いて作製した粉末と一緒に放出した(図7)。同様の結果をまた、活性な薬剤としてリゾチームを用いて得た。タンパク質の放出が、処方物1より、処方物2からより速くなったこともまた見出された。その処方物2は、2.5%のPVPおよび10%のラクトースを有したが、処方物1は、15%のPVPを含み、ラクトースは含まなかった(表3)。これは、放出速度が、使用した賦形剤の量および型によってさらに調整され得ることを示す。
【0206】
(実施例21)
(薬学的に活性な薬剤、多糖類、ゲル誘導組成物、および他の賦形剤の粉末の物理的混合物)
表2のような粉末処方物を、活性な薬剤の非存在下で作製し、適切なサイズに篩分けした。薬学的に受容可能な賦形剤を有するか、または有さないで作製した活性な薬剤の粉末を、次いで、ポリマー粉末と混合した。本明細書中の他の場所で記載したような1種以上の固体ゲル誘導組成物もまた、必要に応じて含み得る。次いで、粉末の混合物を、動物に送達した。
【0207】
(実施例22)
(抗原を含む粉末ワクチン処方物の動物に対する鼻腔内送達)
高分子量のアロエペクチンおよびジフテリア毒素変異体CRM(DT−CRM)抗原を含む粉末ワクチン処方物を、水溶液中で表4に記載した成分を溶解することによって調製し、その溶液を凍結乾燥して、粉末を生じ、その粉末を粉砕し、次いで、その粉末を篩分けした。抗原を除いて全ての成分を含むコントロール処方物を、同様に調製した。
【0208】
【表4】
このワクチン処方物を、10mgの粉末処方物につき7.75μgの抗原を送達するために作製した。200g〜250gの重さのラットを、まず麻酔して、10mgの粉末を、以前に記載した(RydenおよびEdman、Int.J.Pharm.83(1992)、pp.1〜10;Schipperら、Pharm.Res.10(1993)、pp.682〜686)ように、5mlのシリンジに連結した200μlのピペットチップを使用して各々の鼻孔内へ、ゴム管を介して3mlの空気を使用して送達した。
【0209】
血清サンプルを、接種後1週間のラットから回収して、特定の血清IgG(免疫グロブリンG)を、ELISA(酵素免疫測定法)によってアッセイした。IgG力価についての終点を、バックグラウンド(添加した血清を有さない抗原をコーティングしたウェルの吸光度)より50%大きい吸光度値を有する最も高い希釈の逆数として測定した。
【0210】
DT粉末を受容した2匹のラットは、たった1週間後、800の平均IgG力価を有するDT−CRM抗原に対する特定の抗体を発現した。DT−CRM抗原を有さないコントロール処方物を受容した2匹のコントロールのラットは、そのような抗体を発現しなかった(図8)。この結果は、粉末ワクチン処方物を鼻に投与する工程が、ラットにおける特定の免疫応答を効率的に誘導したことを示す。
【0211】
(実施例23)
(非経口での動物に対する粉末処方物の送達)
実施例16に記載したように、粉末粒子は、カルシウム含有生理食塩水中で懸濁した場合、粒子として残るか、またはゲル粒子に変化する。従って、その粉末を、カルシウム生理食塩水またはカルシウム緩衝生理食塩水中で懸濁した後、粒子懸濁液として注射し得る。代替として、その処方物の粉末を、実施例17に記載したように、カルシウム粉末と予備混合し得、その粉末を、動物の組織への注射の前に生理食塩水または緩衝生理食塩水中で懸濁する。より小さい粉末粒子サイズが、懸濁した粉末の注射に関する実施形態のために所望され得るが、100μmより小さい粉末粒子サイズを有する実施例16に記載した処方物の粉末を使用した。
【0212】
各粉末(80mg)を、3mMのCaCl2を含む0.4mlの生理食塩水中で懸濁して、マウスに皮下に注射した(注射部位につき0.1ml、マウス当たり2つの部位)。注射後4時間で、そのマウスを屠殺して、皮膚をはがして、注射部位を調べた。水和してゲル化した粒子を表す小結節または隆起した領域を、イオン性ポリマーを有する粉末処方物を有する注射部位で観察した。対照的に、そのような小結節または隆起した領域を、イオン性ポリマーを有さないで作製したコントロール粉末で観察しなかった。さらに、その注射部位(コントロール由来の注射部位を含む)は、おそらくポリビニルピロリドン(より高い水吸収性ポリマー)の存在のために、非常に湿っていた。
【0213】
(実施例24)
(外因性のゲル誘導剤および組成物によって影響される場合の液体処方物のゲル化)
0.6%(w/v)のHMWアロエペクチン水溶液を、0.3%(w/v)の最終ポリマー濃度および0.0019〜0.5%(w/v)の最終塩化カルシウム二水和物の濃度を達成するために、種々の濃度で、1:1の比(1ml対1ml)で、塩化カルシウム二水和物溶液と混合した。以下の表5を参照のこと。混合物を、すぐに一緒にボルテックスして、次いで、チューブを室温の状態にしておき、時間に対して観察した。チューブを傾けた場合、その溶液は、完全または部分的に凝固して、もはや自由に流動しなかったので、完全または部分的なゲル化が、上記の0.03125%(w/v)(2.125mM)の最終塩化カルシウム濃度で混合すると、はっきりと生じた。0.0156%のCaCl2濃度で、溶液の濃度が増加して顆粒状のゲル部分が存在した。しかし、0.0078%より小さい(0.53M)またはそれより低い最終濃度で、ゲル化の徴候はなく、その混合物は均質のままであり、24時間より後もそのままであった。
【0214】
【表5】
二価カチオンの結合が、インサイチュゲル化を増加し得ることを示すために、実施例3に記載したように、正常なウシ血清ゲルを用いて境界移動アッセイを行なった。従って、0%、0.0039%、または0.0078%の塩化カルシウムまたは塩化亜鉛を含む1ml当たり3mgの1mlペクチン溶液を、10×75mmのガラス試験管中の3mlの正常なウシ血清の上に徐々に層にした。間期に開始して、ゲルは、ペクチン溶液相中に徐々に形成した。そのゲルは、溶液と比較して、ゲルのわずかに増加した濁度のために、光源下で容易に識別され得る。従って、界面でのペクチン溶液相中のゲルの長さ(厚さ)を、時間に対して測定した。その結果は、塩化カルシウムを添加しなかったコントロールと比較した場合、ゲル化が、試験した外因性の塩化カルシウム濃度の両方で増加したことを示した(図9)。
【0215】
溶液をカルシウムイオンを含む組織または体液に投与する場合、改良されたゲルが誘導されるという予測外の結果を有する、少量の二価カチオン(例えば、カルシウムまたは亜鉛)(すなわち、約0.0156%(w/v)未満)を、有意なゲル化を引き起こさないペクチン/薬剤溶液に添加し得るという点で、表5の結果が、有利に利用され得ることは、注目すべきである。
【0216】
(実施例25)
(LMペクチンの溶液特性に対する種々の一価カチオンの影響)
NaClおよびNH4Clを、種々の濃度で水中で調製した。次いで、それらを、LMペクチン、HMWアロエペクチン、またはHMペクチンの溶液と1:1v/vで混合した。このHMペクチン(DM=64%、Sigma chemical Co)を、実施例15に記載したような不溶性の物質を除去するために濾過した。次いで、その溶液を1時間、室温で観察した。次いで、それらを、2時間以上、4℃で冷却して、再び調べた。
【0217】
50%未満のメチル化の程度を有するペクチンは、室温で塩濃度に依存してペクチンの沈殿物を示した(表6および表7を参照のこと)。HMWアロエペクチンは、最も沈殿物を形成する傾向があり、続いてLMペクチンである。HMWアロエペクチンを使用して、ペクチンの濃度に依存する影響もまた、観察した(すなわち、より低い濃度でのペクチンは、沈殿物を形成する傾向が少ない)。例えば、沈殿物の形成は、0.5%のHMWアロエペクチン溶液での0.15NaCl中でゆっくりと起こるが、0.1%のペクチン溶液では起こらなかった。さらに、沈殿物を、0.15MのNaCl中の0.5%のLMWアロエペクチンで観察しなかったため、分子量の影響が存在した。HMペクチン溶液は、試験した任意の濃度または室温でいずれかの塩を有する沈殿物またはゲルを形成しなかった。
【0218】
【表6】
4℃での冷却は、沈殿物の形成を増加する。それにも関わらず、0.1%のHMWアロエペクチンを用いると、透明のゲルが、0.15Mおよび0.2MのNaClで形成した。このゲルは、可逆的であり、室温に戻る場合、溶液に戻るように変化する。この可逆的なゲル化は、4℃と室温との間で変化することによって数回にわたって行なわれ得る。一旦、室温で溶液に戻る変化をすると、その調製物はまだ、実施例25に記載したように正常なウシ血清を有するインサイチュでゲル状である。
【0219】
これらの観察は、沈殿物またはゲル化が、低DMおよびHMWに関連することを示す(すなわち、より低DMおよびより高い分子量は、ペクチンが塩によって沈殿しやすい)。顕著な差異を、NaClとNH4Clとの間で観察し;沈殿物の形成のために必要とされるNH4Clの濃度は、NaClを用いるより、非常に高かった。類似のペクチンの濃度に依存する影響もまた、観察した。表7を参照のこと。0.5%のHMWアロエペクチンを用いると、沈殿物が、室温で0.6Mおよび4℃で0.4Mで生じた。
【0220】
その沈殿物は、白っぽく、塩濃度に依存する微細または大きな顆粒様であり得る。その沈殿物は、切り取った点または沈殿物が最初に現れた濃度で最も微細であった。これは、実際に、薬物送達のために使用され得るペクチンの微細な粒子を作製するための1つの効率的な方法である。
【0221】
【表7】
異なるペクチンの基本的な特性を明らかにすることを越えて、これらの観察は、生理的イオン強度または(0.9%(w/v)〜0.154M NaClによって表されるような)等張液で、HMWアロエペクチンを有する液体処方物を調製するために、処方物が、4℃で溶液として貯蔵されるか、または1mg/mlより大きいペクチン濃度(それは、冷蔵庫で貯蔵され得る必要がある不安定な活性な薬剤(例えば、タンパク質)の液体インサイチュゲル化の処方物の生理的強度として想定され得る)が使用される場合、NaClの代替物が必要とされることを示す。低温貯蔵に対するそのような溶液由来のペクチンのうちのいくつかまたは全ての沈殿物は、非常に望ましくない。そのような処方物に使用され得る1つのそのような代替の塩は、NH4Clである(特に等張液(0.84%(w/v)または0.157M、それはまたイオン強度で0.154MのNaClに等しい)についての濃度で)。この濃度で、NH4Clはまた、そのような液体のペクチンベースの薬学的組成物のインサイチュゲル化を改良する。
【0222】
(実施例26)
(鼻腔中のアロエペクチンのインサイチュゲル化)
0.5%アロエペクチン溶液を、タンパク質(BSA)を有するか、または有さない、10mMのNaH2PO4/Na2HPO4緩衝液、0.84%のNH4Cl、pH7.4中で調製した。その液体処方物を、マウスの鼻孔の上に直接的に滴下することによって、鼻腔内に送達し、続いて、メトファンの吸入(2つの鼻孔の間に一様に分けてマウス1匹あたり20μl)によって麻酔した。接種後4時間で、マウスを屠殺し、組織をホルマリンで固定した。連続的な横断面を、鼻腔前部から始まる眼窩から作製した。
【0223】
ゲルを、トルジエンブルーおよびH&Eを用いて組織断片を染色することによって検出した。そのトルジエンブルーは、ピンク色がかった/紫がかった物質としてインサイチュゲルに現れたが、H&Eは、ゲルを、青白くピンクがかった色に染色した(図10)。そのゲルは、種々の形状およびサイズであり、そして、中隔および中央および下位の甲介近くの領域を含む種々の鼻腔内領域に見出され得る。
【0224】
アロエペクチン濃度の影響を示すために、0.25%または0.5%でのアロエペクチン溶液を、濃度につき2匹のマウスに鼻腔内に送達した。ゲル化を、送達後、4時間、顕微鏡によって調べた。各断面のゲルの領域を、ImageJソフトウェア(National Institute of Health)を使用することによって測定し、mm2として表した。同じ位置で横断面上のゲル領域を、鼻腔内に存在するゲルの相対量の間接的な測定として使用した。従って、その結果は、鼻腔内に形成したゲルの量が、ポリマー濃度に依存することを示唆し、より多くおよびより大きいゲルが、0.25%より0.5%を有して鼻腔内に検出されたことを示した。
【0225】
(実施例27)
(鼻腔でのインサイチュゲル化についての他のペクチンとの比較)
種々の市販のLMペクチンをHMWアロエペクチンといっしょに用いた(表8)。市販のペクチン、すなわちゲヌ(Genu)ペクチンおよびポリガラクツロン酸を、Sigma Chemical Co.から購入し用いた。ゲヌ(Genu)ペクチンLM12Gを再処理することにより得られる1つのサンプルもまた用いた。これを水に溶解し、マイクロ濾過し、アルコール沈澱により回収し、そして真空下で乾燥された後ゲヌ(Genu)ペクチンLM12G(R)と称した。ゲヌ(Genu)ペクチンスプレンディット型100の分子量は、他の低分子量ペクチンと類似であった(表8)。AおよびBとして称される2つの異なるHMWアロエペクチンサンプルを用いた。
【0226】
すべての市販のペクチンサンプルは、水中に2%(w/v)溶液として調製され、それから2倍の生理食塩水(0.3M NaCl)で1:1に希釈された。これら市販のペクチンは、溶かしたとき低pH、すなわち3〜4を示す。この溶液のpHは、NaOHで6.5に調整した。HMWアロエペクチンは、0.84%(w/v)NH4Cl中に0.5%(w/v)の最終濃度で上記のように調製された。HMWアロエペクチン溶液のpHは5.5〜6.0であったので、pH調整は行わなかった。すべてのサンプルを、サンプルあたり2匹のマウスで上記のようにマウスの鼻内に送達した。ゲル形成は、4時間後に上記のように試験した。
【0227】
【表8】
二つの切片を、各マウスで目の眼窩前部に始まる鼻腔から作った。同じ位置の切片についてのそれらのゲル面積は、鼻腔に存在するゲルの相対量の間接的な測定値として用いた。各群2匹のマウスからの4つの切片すべてについての総ゲル面積を決定し、これを4で除算して、1つの鼻の切片あたりの平均ゲル面積を出した。この結果は、ゲルがゲヌ(Genu)ペクチンLM12G、ゲヌ(Genu)ペクチンLM12G(R)、ポリガラクツロン酸およびHMWアロエペクチンで検出されるが、低度のメチル化および代表的な分子量を有するペクチンであるLM18Gおよびスプレンディット型100ペクチンを使用している処方物ではゲルが検出されないことを示した。ゲヌ(Genu)LM12Gおよびポリガラクツロン酸で検出されるゲルの面積は非常に制限されるか、または少なくとも2分の1の濃度で用いられたHMWアロエペクチンから調製される処方物について測定されたゲル面積と比較して6.5分の1から33分の1の大きさであった(表8)。これら結果もまた先行技術のペクチンと比べ、HMWアロエペクチンの予測外にすぐれたゲル化の特性を説明する。
【0228】
(実施例28)
(インサイチュゲルの鼻の残存時間)
インサイチュゲルの鼻の残存時間を決定するために、0.84%(w/v)NH4Cl中HMWアロエペクチン溶液(5mg/ml)を経鼻的に送達し、ゲルの形成を、時間点あたり二匹のマウスを用いて種々の時間点で試験した。ゲル存在の相対量を、上記のように鼻腔組織切片についてゲル面積を測定することにより決定した。
【0229】
この結果は、ゲルが24時間通して鼻腔に存在したが、48時間で消失したことを示した(表9)。鼻腔の切片で測定したゲル面積に基づき、50%クリアランスは24時間で起こった。このように、本ゲルは24から48時間の間、鼻腔にとどまった。
【0230】
【表9−1】
(実施例29)
(動物に液体処方物で経鼻的に送達したあとに続くDT−CRMおよびインフルエンザ抗原に対する増加した免疫応答)
抗原、動物および接種:2つの抗原、DT−CRM(ジフテリア毒素変異体CRM)および不活性サブビリオンインフルエンザウイルス成分抗原(A/New Caledonia/20/99,H1N1)を用いた。7匹の6〜8週齢、雌性Balb/cマウスに、2または3回、鼻内に10日間間隔をあけて抗原(0.5mg/ml)、HMWアロエペクチン(DT−CRMを5mg/mlおよびインフルエンザを2.75mg/ml)、または両方の組み合わせからなる処方物をマウスの鼻孔に直接それらを滴下することにより(20μl/マウス)、接種した。本抗原用量は10μg/マウスであった。本抗原処方物を、0.84%NH4Clおよび10mMリン酸緩衝液(pH7.4)中に調製した。
【0231】
サンプルの収集およびELISA:血液および肺の洗浄物サンプルを、最終接種後2週で回収した。特異的血清IgG(イムノグロブリンG)と肺のIgA(イムノグロブリンA)を、間接的なELISA(酵素結合免疫吸着法)により測定した。インフルエンザ(Flu)、Protein Science Co.より入手されたA/New Caledonia/20/99(H1N1)の組み換え体HA(ヘモアルグチニン)タンパク質もまた、HA特異的応答を検出する抗体として用いた。IgG力価の最終点は、バックグラウンド(血清を加えていない抗原コートしたウェルの吸光度)より50%大きい吸光度を有する最も高い希釈の逆数として決定した。各肺の洗浄物を、2つの別のELISAプロトコールで抗原特異的IgAおよび総IgAについてアッセイした。この結果はng(特異的)/μg(総計)として表した。抗原特異的IgAのレベルを決定するために、本プレートは抗原でコートし、また精製マウスIgAスタンダード(1.0から0.002μg/ml)を連続希釈した。抗原特異的IgAのレベルは、精製IgAスタンダードの吸光度の値により出した標準曲線から計算した。総IgAは、スタンダードとして精製マウスIgAを用いたサンドイッチELISAで決定した。
【0232】
血清中平均IgG力価および標準誤差を伴う肺洗浄物中の特異的IgA/総IgAの比を、すべてのマウスの群で決定した。平均を、スチューデントt検定を用いて比較した。10より大きい力価を有する血清サンプルまたはコントロールより2倍高い特異的IgA/総IgAの比を有する肺洗浄物サンプルを応答するものとみなした。
【0233】
結果
血清IgGおよび肺のIgAの強力な応答性を、抗原をアロエペクチンで送達したときのみ得た。抗原のみでは、最小の応答しか検出できなかったか、または応答が全く検出できなかった。
【0234】
DC−CRM:血清IgGおよび肺のIgA応答性は、単回または複数回、どちらの接種後も、抗原のみを与えるより抗原をアロエペクチンと組み合せたとき、有意に高かった。最大の応答を、アロエペクチン/DT−CRMで単回接種後3週目に検出した。この応答はまた、アロエペクチン/DT−CRMでより早く始まり、2週目で検出できた。
【0235】
3回接種後、アロエペクチン/DT−CRM群のマウスは、DT−CRMのみの群より有意に高い(それぞれ50倍または100倍)血清IgGおよび肺のIgA力価を有した(図11aおよび11b)。加えて、アロエペクチン/DT−CRM群の7匹すべてのマウスは、血清IgGおよび肺のIgA両方に関して応答したが一方で、DT−CRMのみを与えた群では7匹中4匹のみが血清IgGに関して、また7匹中3匹のみが肺のIgAに関して応答した。アロエペクチンのみの群では応答を検出しなかった。
【0236】
インフルエンザ:2回の接種後、アロエペクチン/Flu抗原を受けたマウスはFlu抗原のみを与えられた群より有意に高い血清IgG(6倍)および肺のIgA(60倍)力価を有した(図11cおよび11d)。血清IgGについて、アロエペクチン/Flu抗原群およびFlu抗原のみの両群で、7匹すべてのマウスが応答した。しかしながら、肺のIgAについて、アロエペクチン/Flu抗原群で7匹中6匹のマウスが応答し、Flu抗原のみの群では7匹中1匹のマウスのみが応答した。アロエペクチンのみの群では、応答を検出しなかった。
【0237】
同様の結果をまた、組み換え体HAタンパク質をHA−特異的IgGまたはHA−特異的IgAを測定するELISAにおいて抗原として用いたときに得た。
【0238】
(実施例30)
(ラクトースおよびアロエペクチンを含有する、インサイチュでゲル化するインフルエンザ鼻粉末ワクチン組成物)
粉末鼻インフルエンザワクチン処方物を、ラクトース(Sigma Chemical CoまたはNF grade,Fisher Scientific)、Irving TexasのDelSite Biotechnologies Incから入手した非常に低いメトキシルかつ高分子量のアロエペクチン、およびインフルエンザ抗原溶液の混合により調製した。抗原はサブビリオン抗原成分であり;A/New Caledonia/20/99株、H1N1、に由来した。
【0239】
ラクトースおよびアロエペクチン(AP)を水に溶解し、一方で抗原を表1に示した濃度で水または緩衝化生理食塩水(10mM リン酸,pH7.2;150mM NaClまたはNH4Cl)中に調製し、そのあと指示した容量に混合した。この液体混合物を、そのあと凍結乾燥した。凍結乾燥については、この液体混合物を−80度で1時間凍結し、そのあと100ミクロンHgより小さくなるまで減圧下で(Centrivap,Labconco)、乾燥した。凍結乾燥は、多孔の固体を生じ、40〜100μmの大きさにした粉末を作るために40および100μmの滅菌ナイロン膜(cell strainers,BD)を用いて減圧下マイクロ混合機で製粉した。混合スピードおよび混合時間に依存して、40〜100μm粉末の収率は変動するが、乾燥処方物の50%より大きかった。抗原なしの類似のコントロール処方物はまた、抗原を含有することなしに調製された。
【0240】
【表9−2】
表9に示したように、本粉末を、約98.7wt%のラクトース、1重量%のアロエペクチン、0.289重量%のインフルエンザ抗原を含むように算出し、そして10mg粉末処方物あたり28μg抗原を送達するために処方した。抗原なしのコントロール処方物もまた調製した。
【0241】
3匹の200グラムSprague−Dawleyラットの1群を、抗原含有処方物で鼻内に接種し、3匹のラットの別の群にコントロール処方物を鼻内に接種した。第1にラットを麻酔をかけ、本粉末10mgを、以前記載したように(Ryden and Edman,Int.J.Pharm.83(1992),pp.1−10;Schipper et al.,Pharm.Res.10(1993),pp.682−686)ゴムチューブを通して3mLの空気を用いて、5mLシリンジに連結した200μlピペットチップを用いて各鼻孔に送達した。ラットを、同様の手順を介して10日後に再び処置した。
【0242】
血液サンプルを、2回目の接種後、2、4、6週目にラットから採取した。肺の洗浄サンプルをまた、実験の最後(6週目)に採取した。肺の洗浄を、動物を安楽死させた後、3mlのリン酸緩衝化生理食塩水を用いて気管へ挿入することによって行った。特異的血清IgG(イムノグロブリンG)および肺のIgAを、間接ELISAでアッセイした。96−ウェルプレートを、インフルエンザ抗原でコートし、抗原と結合した、血清サンプル由来の特異的IgGを、抗ラットIgGアルカリホスファターゼ複合体で検出した。IgG力価の最終点を、バックグラウンド(血清を加えない抗原コートしたウェルの吸光度)より50%大きい吸光度の値(410nm)を有する最も高い血清の希釈の逆数として決定した。
【0243】
各肺の洗浄を、2つの異なるELISAプロトコールで抗原特異的IgAおよび総IgAについてアッセイした。この結果を、ng(特異的)/μg(総計)として表した。抗原特異的IgAのレベルを決定するために、プレートを抗原でコートし、また精製ラットIgAスタンダードを連続的に希釈した(1.0〜0.002μg/mL)。抗原特異的IgAのレベルを、精製IgAスタンダードの吸光度の値で出した標準曲線から算出した。総IgAを、スタンダードとして精製ラットIgAを用いるサンドイッチELISAで決定した。
【0244】
特異的血清抗体をまた、ニワトリの赤血球(RBC)を用いた血球凝集抑制アッセイ(HAI)で測定した。HAI力価の終点は、RBCの血球凝集の正の阻害を生じた最も高い血清希釈であった。血清中の平均IgG力価およびHAI力価、また肺の洗浄物中の特異的IgA:総IgAの比を、ラットのすべての群で決定した。
【0245】
コントロール群では、抗体の応答を検出できなかった。ELISAおよびHAIで示したように、高い血清抗体応答を、インフルエンザ抗原粉末処方物を受けた3匹すべてのラットで観察した(表2)。ヒトでは、40以上の血球凝集抑制(HAI)力価を、一般的に正の閾値とみなす。処置したラットから観察されたHAI力価は、1:40よりすべて高く、ELISAによるIgG力価に比例した。加えて、肺の特異的IgAの有意なレベルをまた、実験の最後(すなわち6週目)で検出した。
【0246】
【表10】
(実施例31)
(ラクトース、アロエペクチン、およびポリビニルピロリドンを含むインサイチュでのゲル化のインフルエンザの鼻の粉末ワクチン組成物)
粉末の鼻のインフルエンザワクチン処方物を、表11のメニューに従って、ラクトース(Sigma Chemical CoまたはNFグレード、Fisher Scientific)、アロエペクチン、ポリビニルピロリドン(ポビドンK29−32、USP;Sigma Chemical Co)、およびインフルエンザ抗原溶液(スプリットビリオン;A/New Caledonia/1/99、H1N1)を混合することによって調製した。ラクトース、アロエペクチン、およびポビドンを、水に溶解し、一方、抗原を、水または緩衝生理食塩水(10mMのリン酸、pH7.2;150mMのNaClまたはNH4Cl)中で調製した。次いで、その液体混合物を、凍結乾燥して、上記のように粉末中で作製した。抗原を有さないコントロール処方物もまた、抗原を含まずに調製した。その粉末を、約98.8重量%のラクトース、0.5重量%のアロエペクチン、および0.2重量%の抗原を含むように計算し、10mgの粉末処方物につき20μgの抗原を送達するように処方した。抗原を有さないコントロール処方物もまた、調製した。
【0247】
【表11】
動物実験および抗原の測定を、測定しなかった肺洗浄サンプルを除いて、上記と同様に行なった。抗体応答は、コントロール群において検出されなかった。ELISAおよびHAIによって示すように、高血清抗体応答を、インフルエンザの抗原粉末処方物を受容した全ての3匹のラットにおいて観察した(表4を参照のこと)。
【0248】
【表12】
(実施例32)
(粉末処方物のコントロールのゲル化または沈殿物の形成に対するpHの使用)
pHの変化に応答して、ゲル化または沈殿物を形成する、多くのポリマーが存在する。例えば、キトサングルタミン酸は、6.5までのpHで溶解する。しかし、pH6.5を超えると、不溶性になり、コントロール薬物送達のために使用され得る沈殿物またはゲル様物質を形成する。従って、キトサンを有する液体薬物処方物を、pH6.5以下で調製し、上記の方法を使用して、乾燥粉末中で作製した。送達の後に、これらの粒子は、7.0〜7.4のpHを有する体液または分泌物によって水和され得るが、その内部の緩衝能力のために、それらは、部分的または完全に溶解され得る。しかし、鼻腔内送達の場合において、鼻液は、酸性であり、5.5と同じくらい低いpHを有し得る(Englandら、Clinical Otolaryggology 24、67−68、1999;Iresonら、Clinical Science 100、327−333、2001)。
【0249】
従って、次いで、その処方物の粉末を、緩衝粉末(例えば、pH7.4でのリン酸緩衝液)の適切な量で混合した。送達および水和に対して、その緩衝剤を、水和の際に急速に溶解し、pH7.4で局所的な環境を確実にして、それによって、より長い期間、処方物の粒子の不溶性または不溶性の状態を維持する。
【0250】
本出願、種々の公報、および特許の全体が、参照される。これらの公報および特許の開示は、全ての目的のため、特に薬学的組成物の処方物に関する教示のために、それらの全体が本明細書中で本出願の参考として援用される。
【0251】
好ましい組成物または処方物および方法が開示されているが、多数の改変および変化が、上記の教示の見地を受けて可能であることは、当業者に明らかである。そのような改変および方法が、添付した特許請求の範囲に記載した本発明の精神および範囲から逸脱しないことは、当業者によって、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0252】
本発明の好ましい実施形態のより完全な理解のために、参照として添付の図面と併せて以下の詳細な説明を作成し、ここで、同様の数字は、同様の要素のことをいう。
【図1】図1は、アロエペクチンのカルシウムゲル化に対するNaClの関係を表す棒グラフである。
【図2】図2は、正常な動物血清での種々のアロエペクチン濃度のアロエペクチンのインサイチュゲル化を示す。
【図3A】図3Aは、正常な動物血清でのHEC増粘剤の存在下におけるアロエペクチンのインサイチュゲル化を示す。
【図3B】図3Bは、正常な動物血清でのアルギン酸ナトリウム増粘剤の存在下におけるアロエペクチンのインサイチュゲル化を示す。
【図4】図4は、低分子有機化合物(ファストグリーン)を使用するアロエペクチンのインサイチュゲルで得たゆっくりとした放出効果を示す。
【図5】図5は、定義された領域におけるbFGF処置と細胞数との間の関係を表す棒グラフを示す。
【図6】液体または乾燥処方物からのファストグリーンの放出速度。図6aは、LMペクチンについての結果を示し、そして図6bは、LMWアロエペクチンについての結果を示す。実施例17に記載したように、正常ウシ血清に入れた処方物の周囲の拡散円の直径を、時間に対して測定した。
【図7】実施例20に記載したように、高分子アロエペクチンを含み、模倣した鼻分泌液に懸濁した粉末処方物からの制御されたタンパク質放出。
【図8】実施例22に記載したように、粉末ワクチン処方物のラットに対する鼻腔内送達後のDT−CRM抗原に対する特異的血清IgG応答。
【図9】実施例24に記載したように、正常なウシ血清と接触しているペクチン処方物の改良されたインサイチュでのゲル化は、外来のカルシウムの添加によって達成される。
【図10】実施例26に記載したように、鼻の粘膜表面上のゲルの形成を示す、HMWアロエペクチン溶液(0.5%、w/v)の鼻腔内送達して4時間後の、マウスの鼻腔の連続横断面。
【図11】実施例29に記載したように、アロエペクチンおよびタンパク質抗原(DT−CRM)(aおよびb)または不活性化されたインフルエンザサブビリオン成分抗原(A/New Caledonia/20/99、H1N1)(cおよびd)を含む液体ワクチン組成物の鼻への投与に対するマウスの血清IgGおよび肺IgA免疫応答。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の送達のための固体薬学的組成物であって、該組成物が以下:
a.動物における生理反応を誘導するために有効な量における1種以上の生理学的に活性な薬剤;
b.陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類、および
c.1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む1種以上のゲル誘導性固体多糖類組成物;
を含み、ここで、該薬学的組成物は、動物の組織または体液と接触する場合にゲルを形成する固体形態である、固体薬学的組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、ペクチン質、アルギン酸塩、カラゲーナン、およびゲランからなる群より選択される、固体薬学的組成物。
【請求項3】
パッド、錠剤、またはカプセルの形態である、請求項1に記載の固体薬学的組成物。
【請求項4】
粉末の形態である請求項1に記載の固体薬学的組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の固体薬学的組成物であって、前記粉末は、微粒子またはミクロスフェアが、直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得るように適切な粒子サイズを有する多数の該微粒子および/またはミクロスフェアを含む、固体薬学的組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、1種以上のペクチンを含む、固体薬学的組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、70%未満のメチル化の程度を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、50%未満のメチル化の程度を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、25%未満のメチル化の程度を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、10%未満のメチル化の程度を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、約4.0×105ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、約1.0×106ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、約1.0×106ダルトンより大きい平均分子量、および約10%未満のメチル化の程度を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項14】
請求項6に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上のペクチンが、アロエペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項15】
請求項6に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上のペクチンが、約80%w/wより大きいガラクツロン酸含有量を有する、固体薬学的組成物。
【請求項16】
請求項6に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上のペクチンが、モル基準で4%より大きいラムノース含有量を有する、固体薬学的組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記組織または体液が、正常なウシ血清である、固体薬学的組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、治療剤、診断剤、炭水化物、脂質、ペプチド、核酸、生細胞、死細胞の全てまたは一部、微生物の全てまたは一部、ウイルスの全てまたは一部、ワクチン、抗原、およびタンパク質からなる群より選択される、固体薬学的組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、ペプチドまたはタンパク質を含む、固体薬学的組成物。
【請求項20】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、1種以上の抗原を含む、固体薬学的組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の抗原が、ペプチド、タンパク質、生細胞の全てまたは一部、死細胞の全てまたは一部、ウイルスの全てまたは一部、不活性化された微生物またはウイルス、生きている弱毒化された微生物またはウイルス、ファージ、サブユニットワクチンタンパク質、サブユニットワクチンペプチド、サブユニットワクチン炭水化物、レプリコン、ウイルス性ベクター、プラスミドから独立して選択される、固体薬学的組成物。
【請求項22】
請求項20に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の抗原が、インフルエンザについての抗原から独立して選択される、固体薬学的組成物。
【請求項23】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記二価または多価の金属カチオンが、カルシウム、マグネシウム、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、またはアルミニウムである、固体薬学的組成物。
【請求項24】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記二価または多価の金属カチオンが、カルシウムまたはアルミニウムである、固体薬学的組成物。
【請求項25】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記薬学的に受容可能な塩が、1リットルにつき少なくとも約1×10−5モルの範囲まで水に溶解する、固体薬学的組成物。
【請求項26】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記薬学的に受容可能な塩が、水に溶解しないで、1リットルにつき少なくとも1×10−5モルを含む溶液を形成する、固体薬学的組成物。
【請求項27】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な塩が、水酸化アルミニウムまたはリン酸カルシウムを含む、固体薬学的組成物。
【請求項28】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記ゲル誘導性多糖類組成物が、1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む、固体薬学的組成物。
【請求項29】
請求項28に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤が、単糖類または二糖類、結合剤、充填剤または増量剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、および味覚マスキング剤からなる群より選択される、固体薬学的組成物。
【請求項30】
1種以上の薬学的に受容可能な増粘剤をさらに含む、請求項1に記載の固体薬学的組成物。
【請求項31】
請求項29に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な増粘剤が、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、ヒアルロン酸からなる群より選択される、固体薬学的組成物。
【請求項32】
請求項29に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な増粘剤が、ポリビニルピロリドンを含む、固体薬学的組成物。
【請求項33】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤、および前記1種以上の多糖類が、分子レベルで固体混合物として存在し、そして前記1種以上のゲル誘導性固体組成物が、別の固相である、固体薬学的組成物。
【請求項34】
請求項33に記載の固体組成物であって、前記分子レベルでの混合物が、液体キャリア中に前記1種以上の生理学的に活性な薬剤、および前記1種以上の多糖類を溶解し、次いで、分子レベルでの固体混合物を生成するために該液体キャリアを除去する工程によって生成される、固体組成物。
【請求項35】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤、前記1種以上の多糖類、および前記1種以上のゲル誘導性固体多糖類組成物が、別々の固体成分の物理混合物として存在する、固体薬学的組成物。
【請求項36】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記動物がヒトである、固体薬学的組成物。
【請求項37】
約30.0%〜約99.5%の1種以上の薬学的に受容可能な単糖類または二糖類をさらに含む、請求項1に記載の固体薬学的組成物。
【請求項38】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記単糖類または二糖類が、リボース、アラビノース、キシロース、フルクトース、グルコース、ラムノース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、マルトース、キシリトール、マンニトール、およびトレハロースまたはそれらの混合物から選択される、固体薬学的組成物。
【請求項39】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記単糖類または二糖類が、ラクトースである、固体薬学的組成物。
【請求項40】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項1に記載の固体薬学的組成物を、動物の組織または体液に投与して、該動物の組織または体液と接触しているゲルを形成する工程を包含する、方法。
【請求項41】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項1に記載の固体薬学的組成物、またはその成分の液体懸濁液を、動物の組織または体液に投与して、該動物の組織または体液と接触しているゲルを形成する工程を包含する、方法。
【請求項42】
請求項40に記載の方法であって、前記動物の組織または体液が、粘膜表面、血液、血清、涙液、肺液、間質液、または鼻分泌物からなる群より選択される、方法。
【請求項43】
請求項40に記載の方法であって、前記動物がヒトである、方法。
【請求項44】
請求項40に記載の方法であって、前記動物の組織または体液が、鼻粘膜表面または鼻分泌物である、方法。
【請求項45】
請求項40に記載の工程によって形成されるゲル。
【請求項46】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の投与のための方法であって、該方法が、任意の順序または組み合わせにおいて以下の成分、
a.動物における生理反応を誘導するために有効な量の1種以上の生理学的に活性な薬剤;
b.陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類、および
c.1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む1種以上のゲル誘導性固体組成物
を動物の組織または体液に投与して、該動物の組織または体液と接触しているゲルを形成する工程を包含する、方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であって、成分a、成分b、および成分cが、粉末組成物の成分として投与される、方法。
【請求項48】
請求項46に記載の方法であって、成分aおよび成分bが、別々の粉末または混合された粉末として投与される、方法。
【請求項49】
請求項46に記載の方法であって、成分aおよび成分bが、成分aを含む1種以上の粉末と成分bを含む1種以上の粉末との混合物として投与される、方法。
【請求項50】
請求項46に記載の方法であって、成分aおよび成分bが、固体組成物の成分として投与され、該固体組成物は、液体キャリア中に1種以上の生理学的に活性な薬剤および1種以上のイオン性多糖類を溶解し、次いで、十分な液体キャリアを除去して、該固体混合組成物を形成する工程によって調製される、方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法であって、前記固体混合組成物が、粉末の形態である、方法。
【請求項52】
請求項46に記載の方法であって、成分aおよび成分bが、液体キャリア中の溶液として投与される、方法。
【請求項53】
請求項46に記載の方法であって、前記1種以上の多糖類が、低メトキシルペクチンを含む、方法。
【請求項54】
請求項46に記載の方法であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、ペプチド、タンパク質、またはワクチンを含む、方法。
【請求項55】
請求項46に記載の方法であって、前記組織体液が、鼻粘膜表面または鼻分泌物である、方法。
【請求項56】
請求項46に記載の方法であって、前記動物がヒトである、方法。
【請求項57】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の制御放出のための組成物であって、該組成物が、以下:
a.動物における生理反応を誘導するために有効な量の1種以上の生理学的に活性な薬剤;および
b.約30%未満のメチル化の程度および約1×105ダルトンより大きい平均分子量を有する1種以上のペクチン質、
を含み、ここで、該組成物は、動物の組織または体液と接触する場合にゲルを形成し得る固体である、組成物。
【請求項58】
請求項57に記載の組成物であって、前記組成物が、パッド、錠剤、カプセル、または粉末の形態である、組成物。
【請求項59】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、約15%未満のメチル化の程度を有する、組成物。
【請求項60】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、約5.0×105ダルトンより大きい平均分子量を有する、組成物。
【請求項61】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、1×106ダルトンより大きい分子量および10%未満のメチル化の程度を有する、組成物。
【請求項62】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、約90%w/wより大きいガラクツロン酸含有量を有する、組成物。
【請求項63】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、3−メトキシ−ラムノースを含む、組成物。
【請求項64】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、モル基準で4%より大きいラムノース含有量を有する、組成物。
【請求項65】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、アロエペクチンである、組成物。
【請求項66】
請求項57に記載の組成物であって、前記組成物が、約20重量%以下の水を含む、組成物。
【請求項67】
微粒子またはミクロスフェアが、直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得るように適切な粒子サイズを有する該微粒子および/またはミクロスフェアを含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項68】
請求項57に記載の組成物であって、前記組成物が、粉末の形態である、組成物。
【請求項69】
請求項68に記載の組成物であって、前記粉末は、微粒子および/またはミクロスフェアが、直径100μMの開口サイズを有する篩を通過し得るが、直径約0.1μMの開口サイズを有する篩を通過し得ないように適切な粒子サイズを有する少なくとも約80重量%の該微粒子および/またはミクロスフェアを含む、組成物。
【請求項70】
微粒子および/またはミクロスフェアから本質的になる請求項68に記載の組成物であって、該微粒子および/またはミクロスフェアは、それらが直径約50μMの開口サイズを有する篩を通過し得るが、直径10μMの開口サイズを有する篩を通過し得ない粒子サイズを有する、組成物。
【請求項71】
請求項57に記載の組成物であって、前記固体組成物が、ミクロスフェアを含み、該ミクロスフェアの90%未満が、0.1μMと10μMとの間の直径を有する、組成物。
【請求項72】
1種以上の薬学的に受容可能な増粘剤をさらに含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項73】
請求項72に記載の組成物であって、前記1種以上の増粘剤が、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、ヒアルロン酸、またはアルギン酸塩からなる群より選択される、組成物。
【請求項74】
請求項72に記載の組成物であって、前記1種以上の増粘剤が、ポリビニルピロリドンを含む、組成物。
【請求項75】
請求項72に記載の組成物であって、前記増粘剤が、該組成物の約0.1重量%〜約90重量%を構成する、組成物。
【請求項76】
約30.0%〜約99.5%の1種以上の薬学的に受容可能な単糖類または二糖類をさらに含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項77】
請求項76に記載の組成物であって、前記単糖類または二糖類が、リボース、アラビノース、キシロース、フルクトース、グルコース、ラムノース、グルコサミン、ガラトサミン、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、マルトース、キシリトール、マンニトール、およびトレハロース、またはそれらの混合物から選択される、組成物。
【請求項78】
請求項76に記載の組成物であって、前記単糖類または二糖類が、ラクトースである、組成物。
【請求項79】
請求項57に記載の組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、治療剤、診断剤、炭水化物、脂質、ペプチド、核酸、生細胞、死細胞の全てまたは一部、微生物の全てまたは一部、ウイルスの全てまたは一部、ワクチン、抗原、およびタンパク質からなる群より選択される、1種以上の薬理学的に活性な物質を含む、組成物。
【請求項80】
請求項57に記載の組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、動物における疾患または疾患状態を処置するために有効な量の治療剤を含む、組成物。
【請求項81】
請求項57に記載の組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、ペプチドまたはタンパク質を含む、組成物。
【請求項82】
請求項57に記載の組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、1種以上の抗原を含む、組成物。
【請求項83】
請求項82に記載の組成物であって、前記1種以上の抗原が、ペプチド、タンパク質、生細胞の全てまたは一部、死細胞の全てまたは一部、あるいはウイルスの全てまたは一部、不活性化された微生物またはウイルス、生きている弱毒化された微生物またはウイルス、ファージ、サブユニットワクチンタンパク質、サブユニットワクチンペプチド、サブユニットワクチン炭水化物、レプリコン、ウイルス性ベクター、プラスミドから独立して選択される、組成物。
【請求項84】
請求項82に記載の組成物であって、前記1種以上の抗原が、インフルエンザについての抗原から独立して選択される、組成物。
【請求項85】
請求項82に記載の組成物であって、前記1種以上の抗原は、該組成物が前記動物の鼻粘膜に投与される場合、該動物における能動免疫応答を誘導する、組成物。
【請求項86】
請求項82に記載の組成物であって、動物に対する該組成物の投与後、該動物の免疫応答が、動物の肺洗浄物中のIgAレベルによって測定される場合、前記ペクチン質を含まないコントロール組成物を投与するコントロール実験において得たIgAレベルと比較して、約10%より多く増加する、組成物。
【請求項87】
請求項57に記載の組成物であって、該組成物の重量に基づいて、前記生理学的に活性な薬剤が、該組成物の約0.01%〜約90%を構成する、組成物。
【請求項88】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、該組成物の約0.0001重量%〜約99重量%を構成する、組成物。
【請求項89】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、該組成物の約0.001重量%〜約50重量%を構成する、組成物。
【請求項90】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、該組成物の約0.005重量%〜約20重量%を構成する、組成物。
【請求項91】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、該組成物の約0.01重量%〜約10重量%を構成する、組成物。
【請求項92】
ゲル誘導性固体多糖類薬剤をさらに含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項93】
請求項92に記載の組成物であって、前記ゲル誘導性固体多糖類薬剤が、1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む、組成物。
【請求項94】
請求項93に記載の組成物であって、前記二価または多価の金属カチオンが、カルシウム、マグネシウム、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、またはアルミニウムである、組成物。
【請求項95】
請求項93に記載の組成物であって、前記薬学的に受容可能な塩が、水に溶解して、1リットルにつき少なくとも約1×10−5モルの該塩を含む溶液を形成する、組成物。
【請求項96】
請求項93に記載の組成物であって、前記薬学的に受容可能な塩が、カルシウム塩である、組成物。
【請求項97】
請求項93に記載の組成物であって、前記薬学的に受容可能な塩が、ハロゲン化カルシウム塩である、組成物。
【請求項98】
請求項93に記載の組成物であって、前記薬学的に受容可能な塩が、水に溶解することができないように水に実質的に不溶性であり、1リットルにつき少なくとも1×10−5モルの該塩を含む溶液を形成する、組成物。
【請求項99】
請求項93に記載の組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な塩が、水酸化アルミニウムまたはリン酸カルシウムを含む、組成物。
【請求項100】
請求項93に記載の組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な塩が、該組成物の約0.1%(w/w)〜約80%(w/w)を構成する、組成物。
【請求項101】
請求項93に記載の組成物であって、前記1種以上の二価または多価の金属カチオン塩が、該金属カチオンを含むゲルを形成するように、前記ペクチン質のカルボキシル基を架橋するために該ペクチン質と反応する、組成物。
【請求項102】
請求項93に記載の組成物であって、前記1種以上の二価または多価の金属カチオン塩は、該組成物が動物の組織または体液と接触する場合に、該組成物を誘導してゲルを形成する、組成物。
【請求項103】
請求項57に記載の組成物であって、前記動物の組織または体液が、粘膜表面、血液、血清、涙液、肺液、間質液、または鼻分泌物からなる群から選択される、組成物。
【請求項104】
請求項57に記載の組成物であって、前記動物の組織または体液が、鼻分泌物である、組成物。
【請求項105】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項57に記載の組成物を該動物の組織または体液と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項106】
請求項105に記載の方法であって、前記組成物が、前記組織または体液に対する投与の際あるいは投与後に、該組織または体液と接触している、前記生理学的に活性な薬剤を含むゲルを形成する、方法。
【請求項107】
請求項105に記載の方法であって、前記ゲルが、前記組織または体液に対する前記生理学的に活性な薬剤の持続性放出を提供する、方法。
【請求項108】
請求項105に記載の方法であって、前記動物の組織または体液が、鼻粘膜表面であり、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、インフルエンザについての抗原である、方法。
【請求項109】
請求項105の工程によって形成される、ゲル。
【請求項110】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項57に記載の固体薬学的組成物の液体懸濁液、またはそれらの成分を、動物の組織または体液に投与し、該動物の組織または体液と接触しているゲルを形成する工程を包含する、方法。
【請求項111】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項57に記載の組成物を該動物の眼、粘膜表面、または傷と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項112】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項57に記載の組成物を、血液、血清、涙液、肺液、間質液、または鼻分泌物からなる群から選択される該動物の1種以上の体液と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項113】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項57に記載の組成物を、ヒトの鼻粘膜表面および鼻分泌物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項114】
請求項57に記載の組成物を作製する方法であって、該方法が、任意の順序で、前記生理学的に活性な薬剤、前記ペクチン質、および1種以上の任意の成分を混合し、該混合物を該固体組成物を形成するように処理する工程を包含する、方法。
【請求項115】
請求項114に記載の方法であって、前記1種以上の任意の成分が増粘剤を含む、方法。
【請求項116】
請求項114に記載の方法であって、前記1種以上の任意の成分がポリビニルピロリドンを含む、方法。
【請求項117】
請求項114に記載の方法であって、前記薬学的に活性な薬剤および前記ペクチン質が、液体キャリア中で溶解され、次いで、該液体キャリアの揮発性成分が、前記固体組成物を形成するために除去される、方法。
【請求項118】
請求項114に記載の方法であって、前記生理学的に活性な薬剤、前記ペクチン質、およびいくらかの任意の成分が固体であり、それらが混合され、固体として処理される、方法。
【請求項119】
請求項114に記載の方法であって、前記任意の成分が、二価または多価の金属カチオンの1種以上の薬学的に受容可能な塩を含むゲル誘導性固体薬剤を含む、方法。
【請求項120】
動物にワクチン接種するための方法であって、該方法が、以下の工程:
a.直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得る粉末粒子を含む1種以上の粉末組成物を提供する工程であって、該粉末粒子が、以下
i)該組成物が動物の粘膜表面と接触する場合にゲルを形成するために有効な量の、約30%未満のメチル化の程度および1×105ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチン質;
ii)該動物における能動免疫応答を誘導し得る量の、ペプチド、タンパク質、核酸、生細胞、死細胞またはその一部、あるいはウイルスからなる群より選択される1種以上の抗原
を含む、工程;および
b.該粉末を該動物の鼻組織および/または鼻液に投与して、該組織または体液と接触しているゲルを形成する工程、および
c.該動物における1種以上の抗原に対する能動免疫応答を誘導する工程
を包含する、方法。
【請求項121】
請求項120に記載の方法であって、前記ペクチン質が、約1.0×106ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチンのナトリウム塩、カリウム塩、またはNH4+塩である、方法。
【請求項122】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の陰イオン性多糖類が、約1.0×106ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチンのナトリウム塩、カリウム塩、またはNH4+塩である、固体薬学的組成物。
【請求項123】
粉末粒子を含む、動物に対する鼻への投与のためのワクチン組成物であって、該粉末粒子が、以下:
a.動物における免疫応答を誘導するために有効な量の1種以上の抗原、および
b.約30%未満のメチル化の程度および約1×105ダルトンより大きい平均分子量を有する1種以上のペクチンまたはそれらの一価のカチオン塩;
のナノ分散物を含む、ワクチン組成物であって、
ここで、該粉末粒子は、直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得る、ワクチン組成物。
【請求項124】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記粉末粒子が、前記1種以上の抗原および前記1種以上のペクチンまたはそれらの一価のカチオン塩の実質的に均一の固体である、ワクチン組成物。
【請求項125】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記ペクチンが、カルシウムイオンと架橋して、動物の鼻粘膜と接触する場合にゲルを形成する水溶性の一価のカチオン塩として存在する、ワクチン組成物。
【請求項126】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記粉末粒子の少なくとも約90%が、直径約11μMの開口サイズを有する篩を通過しない、組成物。
【請求項127】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記粉末粒子の少なくとも約90%が、約12μMと約60μMとの間の粒子サイズを有するミクロスフェアまたは微粒子である、ワクチン組成物。
【請求項128】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の抗原が、ペプチド、タンパク質、核酸、生細胞、死細胞またはその一部、あるいはウイルスの全てまたはその一部からなる群より独立して選択される、ワクチン組成物。
【請求項129】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の抗原が、少なくとも1種のインフルエンザについての抗原を含む、ワクチン組成物。
【請求項130】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の抗原が、含む、組成物。
【請求項131】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上のペクチンが、約1.0×106ダルトンより大きい平均分子量、および約10%未満のメチル化の程度を有するペクチンのナトリウム塩、カリウム塩、またはNH4+塩から独立して選択される、ワクチン組成物。
【請求項132】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記ペクチン質が、該組成物の約0.01重量%〜約10重量%を構成する、ワクチン組成物。
【請求項133】
1種以上の薬学的に受容可能な増粘剤をさらに含む、請求項123に記載の組成物。
【請求項134】
請求項123に記載の組成物であって、前記1種以上の増粘剤が、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、ヒアルロン酸、またはアルギン酸塩からなる群より選択される、組成物。
【請求項135】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の増粘剤が、ポリビニルピロリドンを含む、ワクチン組成物。
【請求項136】
1種以上の薬学的に受容可能な単糖類または二糖類をさらに含む、請求項123に記載のワクチン組成物。
【請求項137】
請求項136に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な単糖類または二糖類が、リボース、アラビノース、キシロース、フルクトース、グルコース、ラムノース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、マルトース、キシリトール、マンニトール、およびトレハロースからなる群より独立して選択される、ワクチン組成物。
【請求項138】
請求項136に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な単糖類または二糖類がラクトースである、組成物。
【請求項139】
請求項136に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な単糖類または二糖類が、約10.0重量%〜約99.9重量%の量において存在する、ワクチン組成物。
【請求項140】
請求項136に記載のワクチン組成物であって、前記単糖類または二糖類が、約50.0重量%〜約99.5重量%の量において存在する、ワクチン組成物。
【請求項1】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の送達のための固体薬学的組成物であって、該組成物が以下:
a.動物における生理反応を誘導するために有効な量における1種以上の生理学的に活性な薬剤;
b.陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類、および
c.1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む1種以上のゲル誘導性固体多糖類組成物;
を含み、ここで、該薬学的組成物は、動物の組織または体液と接触する場合にゲルを形成する固体形態である、固体薬学的組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、ペクチン質、アルギン酸塩、カラゲーナン、およびゲランからなる群より選択される、固体薬学的組成物。
【請求項3】
パッド、錠剤、またはカプセルの形態である、請求項1に記載の固体薬学的組成物。
【請求項4】
粉末の形態である請求項1に記載の固体薬学的組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の固体薬学的組成物であって、前記粉末は、微粒子またはミクロスフェアが、直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得るように適切な粒子サイズを有する多数の該微粒子および/またはミクロスフェアを含む、固体薬学的組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、1種以上のペクチンを含む、固体薬学的組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、70%未満のメチル化の程度を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、50%未満のメチル化の程度を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、25%未満のメチル化の程度を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、10%未満のメチル化の程度を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、約4.0×105ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、約1.0×106ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の多糖類が、約1.0×106ダルトンより大きい平均分子量、および約10%未満のメチル化の程度を有するペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項14】
請求項6に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上のペクチンが、アロエペクチンである、固体薬学的組成物。
【請求項15】
請求項6に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上のペクチンが、約80%w/wより大きいガラクツロン酸含有量を有する、固体薬学的組成物。
【請求項16】
請求項6に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上のペクチンが、モル基準で4%より大きいラムノース含有量を有する、固体薬学的組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記組織または体液が、正常なウシ血清である、固体薬学的組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、治療剤、診断剤、炭水化物、脂質、ペプチド、核酸、生細胞、死細胞の全てまたは一部、微生物の全てまたは一部、ウイルスの全てまたは一部、ワクチン、抗原、およびタンパク質からなる群より選択される、固体薬学的組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、ペプチドまたはタンパク質を含む、固体薬学的組成物。
【請求項20】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、1種以上の抗原を含む、固体薬学的組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の抗原が、ペプチド、タンパク質、生細胞の全てまたは一部、死細胞の全てまたは一部、ウイルスの全てまたは一部、不活性化された微生物またはウイルス、生きている弱毒化された微生物またはウイルス、ファージ、サブユニットワクチンタンパク質、サブユニットワクチンペプチド、サブユニットワクチン炭水化物、レプリコン、ウイルス性ベクター、プラスミドから独立して選択される、固体薬学的組成物。
【請求項22】
請求項20に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の抗原が、インフルエンザについての抗原から独立して選択される、固体薬学的組成物。
【請求項23】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記二価または多価の金属カチオンが、カルシウム、マグネシウム、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、またはアルミニウムである、固体薬学的組成物。
【請求項24】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記二価または多価の金属カチオンが、カルシウムまたはアルミニウムである、固体薬学的組成物。
【請求項25】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記薬学的に受容可能な塩が、1リットルにつき少なくとも約1×10−5モルの範囲まで水に溶解する、固体薬学的組成物。
【請求項26】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記薬学的に受容可能な塩が、水に溶解しないで、1リットルにつき少なくとも1×10−5モルを含む溶液を形成する、固体薬学的組成物。
【請求項27】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な塩が、水酸化アルミニウムまたはリン酸カルシウムを含む、固体薬学的組成物。
【請求項28】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記ゲル誘導性多糖類組成物が、1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む、固体薬学的組成物。
【請求項29】
請求項28に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤が、単糖類または二糖類、結合剤、充填剤または増量剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、および味覚マスキング剤からなる群より選択される、固体薬学的組成物。
【請求項30】
1種以上の薬学的に受容可能な増粘剤をさらに含む、請求項1に記載の固体薬学的組成物。
【請求項31】
請求項29に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な増粘剤が、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、ヒアルロン酸からなる群より選択される、固体薬学的組成物。
【請求項32】
請求項29に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な増粘剤が、ポリビニルピロリドンを含む、固体薬学的組成物。
【請求項33】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤、および前記1種以上の多糖類が、分子レベルで固体混合物として存在し、そして前記1種以上のゲル誘導性固体組成物が、別の固相である、固体薬学的組成物。
【請求項34】
請求項33に記載の固体組成物であって、前記分子レベルでの混合物が、液体キャリア中に前記1種以上の生理学的に活性な薬剤、および前記1種以上の多糖類を溶解し、次いで、分子レベルでの固体混合物を生成するために該液体キャリアを除去する工程によって生成される、固体組成物。
【請求項35】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤、前記1種以上の多糖類、および前記1種以上のゲル誘導性固体多糖類組成物が、別々の固体成分の物理混合物として存在する、固体薬学的組成物。
【請求項36】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記動物がヒトである、固体薬学的組成物。
【請求項37】
約30.0%〜約99.5%の1種以上の薬学的に受容可能な単糖類または二糖類をさらに含む、請求項1に記載の固体薬学的組成物。
【請求項38】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記単糖類または二糖類が、リボース、アラビノース、キシロース、フルクトース、グルコース、ラムノース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、マルトース、キシリトール、マンニトール、およびトレハロースまたはそれらの混合物から選択される、固体薬学的組成物。
【請求項39】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記単糖類または二糖類が、ラクトースである、固体薬学的組成物。
【請求項40】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項1に記載の固体薬学的組成物を、動物の組織または体液に投与して、該動物の組織または体液と接触しているゲルを形成する工程を包含する、方法。
【請求項41】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項1に記載の固体薬学的組成物、またはその成分の液体懸濁液を、動物の組織または体液に投与して、該動物の組織または体液と接触しているゲルを形成する工程を包含する、方法。
【請求項42】
請求項40に記載の方法であって、前記動物の組織または体液が、粘膜表面、血液、血清、涙液、肺液、間質液、または鼻分泌物からなる群より選択される、方法。
【請求項43】
請求項40に記載の方法であって、前記動物がヒトである、方法。
【請求項44】
請求項40に記載の方法であって、前記動物の組織または体液が、鼻粘膜表面または鼻分泌物である、方法。
【請求項45】
請求項40に記載の工程によって形成されるゲル。
【請求項46】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の投与のための方法であって、該方法が、任意の順序または組み合わせにおいて以下の成分、
a.動物における生理反応を誘導するために有効な量の1種以上の生理学的に活性な薬剤;
b.陰イオン性のカルボキシル基または硫酸基を有するサブユニットを含む1種以上の多糖類、および
c.1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む1種以上のゲル誘導性固体組成物
を動物の組織または体液に投与して、該動物の組織または体液と接触しているゲルを形成する工程を包含する、方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であって、成分a、成分b、および成分cが、粉末組成物の成分として投与される、方法。
【請求項48】
請求項46に記載の方法であって、成分aおよび成分bが、別々の粉末または混合された粉末として投与される、方法。
【請求項49】
請求項46に記載の方法であって、成分aおよび成分bが、成分aを含む1種以上の粉末と成分bを含む1種以上の粉末との混合物として投与される、方法。
【請求項50】
請求項46に記載の方法であって、成分aおよび成分bが、固体組成物の成分として投与され、該固体組成物は、液体キャリア中に1種以上の生理学的に活性な薬剤および1種以上のイオン性多糖類を溶解し、次いで、十分な液体キャリアを除去して、該固体混合組成物を形成する工程によって調製される、方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法であって、前記固体混合組成物が、粉末の形態である、方法。
【請求項52】
請求項46に記載の方法であって、成分aおよび成分bが、液体キャリア中の溶液として投与される、方法。
【請求項53】
請求項46に記載の方法であって、前記1種以上の多糖類が、低メトキシルペクチンを含む、方法。
【請求項54】
請求項46に記載の方法であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、ペプチド、タンパク質、またはワクチンを含む、方法。
【請求項55】
請求項46に記載の方法であって、前記組織体液が、鼻粘膜表面または鼻分泌物である、方法。
【請求項56】
請求項46に記載の方法であって、前記動物がヒトである、方法。
【請求項57】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の制御放出のための組成物であって、該組成物が、以下:
a.動物における生理反応を誘導するために有効な量の1種以上の生理学的に活性な薬剤;および
b.約30%未満のメチル化の程度および約1×105ダルトンより大きい平均分子量を有する1種以上のペクチン質、
を含み、ここで、該組成物は、動物の組織または体液と接触する場合にゲルを形成し得る固体である、組成物。
【請求項58】
請求項57に記載の組成物であって、前記組成物が、パッド、錠剤、カプセル、または粉末の形態である、組成物。
【請求項59】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、約15%未満のメチル化の程度を有する、組成物。
【請求項60】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、約5.0×105ダルトンより大きい平均分子量を有する、組成物。
【請求項61】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、1×106ダルトンより大きい分子量および10%未満のメチル化の程度を有する、組成物。
【請求項62】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、約90%w/wより大きいガラクツロン酸含有量を有する、組成物。
【請求項63】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、3−メトキシ−ラムノースを含む、組成物。
【請求項64】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、モル基準で4%より大きいラムノース含有量を有する、組成物。
【請求項65】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、アロエペクチンである、組成物。
【請求項66】
請求項57に記載の組成物であって、前記組成物が、約20重量%以下の水を含む、組成物。
【請求項67】
微粒子またはミクロスフェアが、直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得るように適切な粒子サイズを有する該微粒子および/またはミクロスフェアを含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項68】
請求項57に記載の組成物であって、前記組成物が、粉末の形態である、組成物。
【請求項69】
請求項68に記載の組成物であって、前記粉末は、微粒子および/またはミクロスフェアが、直径100μMの開口サイズを有する篩を通過し得るが、直径約0.1μMの開口サイズを有する篩を通過し得ないように適切な粒子サイズを有する少なくとも約80重量%の該微粒子および/またはミクロスフェアを含む、組成物。
【請求項70】
微粒子および/またはミクロスフェアから本質的になる請求項68に記載の組成物であって、該微粒子および/またはミクロスフェアは、それらが直径約50μMの開口サイズを有する篩を通過し得るが、直径10μMの開口サイズを有する篩を通過し得ない粒子サイズを有する、組成物。
【請求項71】
請求項57に記載の組成物であって、前記固体組成物が、ミクロスフェアを含み、該ミクロスフェアの90%未満が、0.1μMと10μMとの間の直径を有する、組成物。
【請求項72】
1種以上の薬学的に受容可能な増粘剤をさらに含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項73】
請求項72に記載の組成物であって、前記1種以上の増粘剤が、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、ヒアルロン酸、またはアルギン酸塩からなる群より選択される、組成物。
【請求項74】
請求項72に記載の組成物であって、前記1種以上の増粘剤が、ポリビニルピロリドンを含む、組成物。
【請求項75】
請求項72に記載の組成物であって、前記増粘剤が、該組成物の約0.1重量%〜約90重量%を構成する、組成物。
【請求項76】
約30.0%〜約99.5%の1種以上の薬学的に受容可能な単糖類または二糖類をさらに含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項77】
請求項76に記載の組成物であって、前記単糖類または二糖類が、リボース、アラビノース、キシロース、フルクトース、グルコース、ラムノース、グルコサミン、ガラトサミン、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、マルトース、キシリトール、マンニトール、およびトレハロース、またはそれらの混合物から選択される、組成物。
【請求項78】
請求項76に記載の組成物であって、前記単糖類または二糖類が、ラクトースである、組成物。
【請求項79】
請求項57に記載の組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、治療剤、診断剤、炭水化物、脂質、ペプチド、核酸、生細胞、死細胞の全てまたは一部、微生物の全てまたは一部、ウイルスの全てまたは一部、ワクチン、抗原、およびタンパク質からなる群より選択される、1種以上の薬理学的に活性な物質を含む、組成物。
【請求項80】
請求項57に記載の組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、動物における疾患または疾患状態を処置するために有効な量の治療剤を含む、組成物。
【請求項81】
請求項57に記載の組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、ペプチドまたはタンパク質を含む、組成物。
【請求項82】
請求項57に記載の組成物であって、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、1種以上の抗原を含む、組成物。
【請求項83】
請求項82に記載の組成物であって、前記1種以上の抗原が、ペプチド、タンパク質、生細胞の全てまたは一部、死細胞の全てまたは一部、あるいはウイルスの全てまたは一部、不活性化された微生物またはウイルス、生きている弱毒化された微生物またはウイルス、ファージ、サブユニットワクチンタンパク質、サブユニットワクチンペプチド、サブユニットワクチン炭水化物、レプリコン、ウイルス性ベクター、プラスミドから独立して選択される、組成物。
【請求項84】
請求項82に記載の組成物であって、前記1種以上の抗原が、インフルエンザについての抗原から独立して選択される、組成物。
【請求項85】
請求項82に記載の組成物であって、前記1種以上の抗原は、該組成物が前記動物の鼻粘膜に投与される場合、該動物における能動免疫応答を誘導する、組成物。
【請求項86】
請求項82に記載の組成物であって、動物に対する該組成物の投与後、該動物の免疫応答が、動物の肺洗浄物中のIgAレベルによって測定される場合、前記ペクチン質を含まないコントロール組成物を投与するコントロール実験において得たIgAレベルと比較して、約10%より多く増加する、組成物。
【請求項87】
請求項57に記載の組成物であって、該組成物の重量に基づいて、前記生理学的に活性な薬剤が、該組成物の約0.01%〜約90%を構成する、組成物。
【請求項88】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、該組成物の約0.0001重量%〜約99重量%を構成する、組成物。
【請求項89】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、該組成物の約0.001重量%〜約50重量%を構成する、組成物。
【請求項90】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、該組成物の約0.005重量%〜約20重量%を構成する、組成物。
【請求項91】
請求項57に記載の組成物であって、前記ペクチン質が、該組成物の約0.01重量%〜約10重量%を構成する、組成物。
【請求項92】
ゲル誘導性固体多糖類薬剤をさらに含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項93】
請求項92に記載の組成物であって、前記ゲル誘導性固体多糖類薬剤が、1種以上の薬学的に受容可能な二価または多価の金属カチオンの塩を含む、組成物。
【請求項94】
請求項93に記載の組成物であって、前記二価または多価の金属カチオンが、カルシウム、マグネシウム、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、またはアルミニウムである、組成物。
【請求項95】
請求項93に記載の組成物であって、前記薬学的に受容可能な塩が、水に溶解して、1リットルにつき少なくとも約1×10−5モルの該塩を含む溶液を形成する、組成物。
【請求項96】
請求項93に記載の組成物であって、前記薬学的に受容可能な塩が、カルシウム塩である、組成物。
【請求項97】
請求項93に記載の組成物であって、前記薬学的に受容可能な塩が、ハロゲン化カルシウム塩である、組成物。
【請求項98】
請求項93に記載の組成物であって、前記薬学的に受容可能な塩が、水に溶解することができないように水に実質的に不溶性であり、1リットルにつき少なくとも1×10−5モルの該塩を含む溶液を形成する、組成物。
【請求項99】
請求項93に記載の組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な塩が、水酸化アルミニウムまたはリン酸カルシウムを含む、組成物。
【請求項100】
請求項93に記載の組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な塩が、該組成物の約0.1%(w/w)〜約80%(w/w)を構成する、組成物。
【請求項101】
請求項93に記載の組成物であって、前記1種以上の二価または多価の金属カチオン塩が、該金属カチオンを含むゲルを形成するように、前記ペクチン質のカルボキシル基を架橋するために該ペクチン質と反応する、組成物。
【請求項102】
請求項93に記載の組成物であって、前記1種以上の二価または多価の金属カチオン塩は、該組成物が動物の組織または体液と接触する場合に、該組成物を誘導してゲルを形成する、組成物。
【請求項103】
請求項57に記載の組成物であって、前記動物の組織または体液が、粘膜表面、血液、血清、涙液、肺液、間質液、または鼻分泌物からなる群から選択される、組成物。
【請求項104】
請求項57に記載の組成物であって、前記動物の組織または体液が、鼻分泌物である、組成物。
【請求項105】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項57に記載の組成物を該動物の組織または体液と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項106】
請求項105に記載の方法であって、前記組成物が、前記組織または体液に対する投与の際あるいは投与後に、該組織または体液と接触している、前記生理学的に活性な薬剤を含むゲルを形成する、方法。
【請求項107】
請求項105に記載の方法であって、前記ゲルが、前記組織または体液に対する前記生理学的に活性な薬剤の持続性放出を提供する、方法。
【請求項108】
請求項105に記載の方法であって、前記動物の組織または体液が、鼻粘膜表面であり、前記1種以上の生理学的に活性な薬剤が、インフルエンザについての抗原である、方法。
【請求項109】
請求項105の工程によって形成される、ゲル。
【請求項110】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項57に記載の固体薬学的組成物の液体懸濁液、またはそれらの成分を、動物の組織または体液に投与し、該動物の組織または体液と接触しているゲルを形成する工程を包含する、方法。
【請求項111】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項57に記載の組成物を該動物の眼、粘膜表面、または傷と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項112】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項57に記載の組成物を、血液、血清、涙液、肺液、間質液、または鼻分泌物からなる群から選択される該動物の1種以上の体液と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項113】
動物に対する生理学的に活性な薬剤の持続性放出のための方法であって、該方法が、請求項57に記載の組成物を、ヒトの鼻粘膜表面および鼻分泌物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項114】
請求項57に記載の組成物を作製する方法であって、該方法が、任意の順序で、前記生理学的に活性な薬剤、前記ペクチン質、および1種以上の任意の成分を混合し、該混合物を該固体組成物を形成するように処理する工程を包含する、方法。
【請求項115】
請求項114に記載の方法であって、前記1種以上の任意の成分が増粘剤を含む、方法。
【請求項116】
請求項114に記載の方法であって、前記1種以上の任意の成分がポリビニルピロリドンを含む、方法。
【請求項117】
請求項114に記載の方法であって、前記薬学的に活性な薬剤および前記ペクチン質が、液体キャリア中で溶解され、次いで、該液体キャリアの揮発性成分が、前記固体組成物を形成するために除去される、方法。
【請求項118】
請求項114に記載の方法であって、前記生理学的に活性な薬剤、前記ペクチン質、およびいくらかの任意の成分が固体であり、それらが混合され、固体として処理される、方法。
【請求項119】
請求項114に記載の方法であって、前記任意の成分が、二価または多価の金属カチオンの1種以上の薬学的に受容可能な塩を含むゲル誘導性固体薬剤を含む、方法。
【請求項120】
動物にワクチン接種するための方法であって、該方法が、以下の工程:
a.直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得る粉末粒子を含む1種以上の粉末組成物を提供する工程であって、該粉末粒子が、以下
i)該組成物が動物の粘膜表面と接触する場合にゲルを形成するために有効な量の、約30%未満のメチル化の程度および1×105ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチン質;
ii)該動物における能動免疫応答を誘導し得る量の、ペプチド、タンパク質、核酸、生細胞、死細胞またはその一部、あるいはウイルスからなる群より選択される1種以上の抗原
を含む、工程;および
b.該粉末を該動物の鼻組織および/または鼻液に投与して、該組織または体液と接触しているゲルを形成する工程、および
c.該動物における1種以上の抗原に対する能動免疫応答を誘導する工程
を包含する、方法。
【請求項121】
請求項120に記載の方法であって、前記ペクチン質が、約1.0×106ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチンのナトリウム塩、カリウム塩、またはNH4+塩である、方法。
【請求項122】
請求項1に記載の固体薬学的組成物であって、前記1種以上の陰イオン性多糖類が、約1.0×106ダルトンより大きい平均分子量を有するペクチンのナトリウム塩、カリウム塩、またはNH4+塩である、固体薬学的組成物。
【請求項123】
粉末粒子を含む、動物に対する鼻への投与のためのワクチン組成物であって、該粉末粒子が、以下:
a.動物における免疫応答を誘導するために有効な量の1種以上の抗原、および
b.約30%未満のメチル化の程度および約1×105ダルトンより大きい平均分子量を有する1種以上のペクチンまたはそれらの一価のカチオン塩;
のナノ分散物を含む、ワクチン組成物であって、
ここで、該粉末粒子は、直径約250μMの開口サイズを有する篩を通過し得る、ワクチン組成物。
【請求項124】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記粉末粒子が、前記1種以上の抗原および前記1種以上のペクチンまたはそれらの一価のカチオン塩の実質的に均一の固体である、ワクチン組成物。
【請求項125】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記ペクチンが、カルシウムイオンと架橋して、動物の鼻粘膜と接触する場合にゲルを形成する水溶性の一価のカチオン塩として存在する、ワクチン組成物。
【請求項126】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記粉末粒子の少なくとも約90%が、直径約11μMの開口サイズを有する篩を通過しない、組成物。
【請求項127】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記粉末粒子の少なくとも約90%が、約12μMと約60μMとの間の粒子サイズを有するミクロスフェアまたは微粒子である、ワクチン組成物。
【請求項128】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の抗原が、ペプチド、タンパク質、核酸、生細胞、死細胞またはその一部、あるいはウイルスの全てまたはその一部からなる群より独立して選択される、ワクチン組成物。
【請求項129】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の抗原が、少なくとも1種のインフルエンザについての抗原を含む、ワクチン組成物。
【請求項130】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の抗原が、含む、組成物。
【請求項131】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上のペクチンが、約1.0×106ダルトンより大きい平均分子量、および約10%未満のメチル化の程度を有するペクチンのナトリウム塩、カリウム塩、またはNH4+塩から独立して選択される、ワクチン組成物。
【請求項132】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記ペクチン質が、該組成物の約0.01重量%〜約10重量%を構成する、ワクチン組成物。
【請求項133】
1種以上の薬学的に受容可能な増粘剤をさらに含む、請求項123に記載の組成物。
【請求項134】
請求項123に記載の組成物であって、前記1種以上の増粘剤が、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、ヒアルロン酸、またはアルギン酸塩からなる群より選択される、組成物。
【請求項135】
請求項123に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の増粘剤が、ポリビニルピロリドンを含む、ワクチン組成物。
【請求項136】
1種以上の薬学的に受容可能な単糖類または二糖類をさらに含む、請求項123に記載のワクチン組成物。
【請求項137】
請求項136に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な単糖類または二糖類が、リボース、アラビノース、キシロース、フルクトース、グルコース、ラムノース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、マルトース、キシリトール、マンニトール、およびトレハロースからなる群より独立して選択される、ワクチン組成物。
【請求項138】
請求項136に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な単糖類または二糖類がラクトースである、組成物。
【請求項139】
請求項136に記載のワクチン組成物であって、前記1種以上の薬学的に受容可能な単糖類または二糖類が、約10.0重量%〜約99.9重量%の量において存在する、ワクチン組成物。
【請求項140】
請求項136に記載のワクチン組成物であって、前記単糖類または二糖類が、約50.0重量%〜約99.5重量%の量において存在する、ワクチン組成物。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−504129(P2007−504129A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524618(P2006−524618)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/016146
【国際公開番号】WO2005/023176
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(506068416)デルサイト バイオテクノロジーズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/016146
【国際公開番号】WO2005/023176
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(506068416)デルサイト バイオテクノロジーズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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