陰極線管
【課題】 製造工程において多量の水を使用せずに短時間の作業でガラスパネル内面に蛍光膜を形成可能であり、かつ、かぶりのない、きれいな蛍光膜を有する陰極線管を提供する。
【解決手段】 ガラスパネル内面に設けられた樹脂膜上に蛍光体を静電的に塗装することにより形成された蛍光膜を有する陰極線管であって、該樹脂膜が、重量平均分子量(Mw)5万以上であり、かつ分子量分布(Mw/Mn)が5以上であるスチレン系(共)重合体から形成されている。
【解決手段】 ガラスパネル内面に設けられた樹脂膜上に蛍光体を静電的に塗装することにより形成された蛍光膜を有する陰極線管であって、該樹脂膜が、重量平均分子量(Mw)5万以上であり、かつ分子量分布(Mw/Mn)が5以上であるスチレン系(共)重合体から形成されている。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、陰極線管に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シャドウマスク型カラーブラウン管において、青、緑、赤の三原色の蛍光膜は、ポリビニルアルコール及び重クロム酸アンモニウムからなる水溶液に蛍光体を分散させた懸濁液をガラスパネルにフローコートにより塗布し、乾燥した後、得られた塗布膜に所定のパターンを有するシャドウマスクをフォトマスクとして露光し、温水シャワーで未露光部分を除去して現像することにより形成されている(特開昭55−28256号公報)。このようなフローコート法は、蛍光体付着量の制御が容易であり、蛍光面の膜厚を均一に制御することができるため、現在最も広く使用されている蛍光膜の形成方法である。
【0003】しかしながら、上記フローコート法は、蛍光体を分散させた懸濁液を、三原色の色毎にガラスパネルに塗布、乾燥、露光、温水シャワー洗浄の繰り返し作業により現像するため、多量の水を必要とする上に、蛍光膜の形成に時間がかかる等の問題点があった。
【0004】また、別の蛍光膜形成方法として、次のスピンコートによる塗布法も行われている。この方法では、まず、スチレン系重合体のトルエン溶液をガラスパネル内面にスピンコートして乾燥し樹脂膜面を形成する。次いで、この樹脂膜面を帯電させ、帯電した樹脂膜面に所定のパターンを有するシャドウマスクをフォトマスクとして露光した後、シャドウマスクを外して静電的に蛍光体を三原色(赤、緑、青)の色順に粉体塗装して、焼成することにより、蛍光膜を形成する方法である。
【0005】しかしながら、上記スピンコートによる塗布法は、樹脂膜面の帯電性が不十分であるため、蛍光体の飛散が発生し、かぶりのない蛍光膜が形成できなくなるという問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点に鑑み、製造工程において多量の水を使用せずに短時間の作業でガラスパネル内面に蛍光膜を形成可能であり、かつ、かぶりのない、きれいな蛍光膜を有する陰極線管を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の陰極線管は、ガラスパネル内面に設けられた樹脂膜上に蛍光体を静電的に塗装することにより形成された蛍光膜を有する陰極線管であって、該樹脂膜が、重量平均分子量(Mw)5万以上であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布が5以上であり、さらに上記スチレン系(共)重合体100重量部に対して、ワックスを2〜15重量部又は極性基を有する共重合性モノマーを0.1〜10重量部を添加してなることを特徴とする。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で用いられるスチレン系(共)重合体としては、スチレン系単量体の単独重合体又は共重合体、及び、スチレン系単量体とその他のビニル系単量体との共重合体が挙げられる。
【0009】上記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0010】上記その他のビニル系単量体としては、上記スチレン系単量体以外の単量体であって、例えば、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル等が好適に用いられる。上記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリルなどが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0011】上記メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0012】上記以外のその他のビニル系単量体として、例えば、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、ビスグリシジルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メタクリロキシエチルホスフェート等が用いられてもよい。
【0013】上記その他のビニル系単量体の中で、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチルが好ましい。
【0014】本発明において用いられるワックスとしては、パラフィンワックス、動植物ワックス等の天然ワックスが用いられるが、中でもパラフィンワックスが好適に用いられる。また、極性基を有する共重合性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等を挙げることができるが、中でもアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。
【0015】上記スチレン系(共)重合体の構成成分中、スチレン系単量体の含有量は、40〜90重量%が好ましく、より好ましくは50〜80重量%である。また、スチレン系(共)重合体の構成成分中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、60重量%以下が好ましく、より好ましくは10〜40重量%である。
【0016】また、ワックスの添加量は、スチレン系(共)重合体100重量部に対して2〜15重量部であり、好ましくは5〜10重量部である。また、極性基を有する共重合性モノマーの添加量は、スチレン系(共)重合体100重量部に対して0.1〜10重量部であり、好ましくは2〜7重量部である。
【0017】上記スチレン系(共)重合体の重量平均分子量(Mw)は、小さくなると均一な樹脂膜の形成が困難となり、樹脂膜に十分な帯電量が得られなくなるので、5万以上に制限され、好ましくは10万以上、より好ましくは20万以上である。
【0018】上記スチレン系(共)重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、5以上に制限され、好ましくは5〜50、より好ましくは10〜30の範囲である。なお、上記重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される値である。
【0019】上記分子量分布(Mw/Mn)が、5未満ではスチレン系(共)重合体を溶液としたときの粘度調整が難しくなり、均一な厚みの樹脂膜が得られ難くなるため、帯電量が不均一となり、均一な膜厚の蛍光膜を形成し難くなる。
【0020】上記樹脂の体積固有抵抗値は、小さくなると十分な電荷保持能力(初期電位、保持電位)が得られにくくなるため、蛍光体の粉体塗装が困難となり、均一な膜厚の蛍光膜を形成しにくくなる。
【0021】上記スチレン系(共)重合体は、従来公知の、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊重合等の重合方法によって合成することができる。
【0022】上記スチレン系(共)重合体を使用して樹脂膜を形成する方法を、図面を参照しながら説明する。まず、図1に示すように、ガラスパネル内面にポリビニルアルコールベースのフォトレジストをスピンコートする。次いで、所定のパターンを有するシャドウマスクを介して露光した後、水洗して未硬化部分を除去、乾燥する(図2及び3)。さらに、グラファイトをスピンコートした後、硫酸でエッチングを行い、ガラスパネル内面にブラックマトリックスを形成する(図4及び5)。
【0023】次に、ブラックマトリックス上に、上記スチレン系(共)重合体の5重量%トルエン溶液をスピンコートした後乾燥して樹脂膜を形成する(図6及び7)。この樹脂膜を帯電させた後所定のパターンを有するシャドウマスクをフォトマスクとして露光する(図7R>7)。露光によって帯電が喪失した部分に、赤色トナー(R)を静電的に粉体塗装する(図8及び9)。同様の操作を繰り返して、緑色トナー(G)及び青色トナー(B)を順次静電的に粉体塗装する。最後に、三色のトナーの粉体塗装面を加熱して焼き付けることにより、蛍光膜を形成する(図10)。
【0024】
【作用】本発明の陰極線管は、ガラスパネル内面に重量平均分子量(Mw)5万以上、かつ分子量分布(Mw/Mn)が5以上のスチレン系重合体からなる樹脂膜を形成することにより、蛍光体の粉体塗装が可能となるため、蛍光体を分散させた懸濁液が不要であり、懸濁液の塗布、乾燥、露光、温水シャワーによる現像の操作がないため製造工程を大幅に短縮でき、大量の水を使用する必要もない。さらに、上記樹脂膜は、体積固有抵抗値が1.0×1016〜9.9×1017Ω・cmの樹脂を使用することにより、樹脂膜の表面に十分な電荷保持能力(初期電位、保持電位)が得られるため、蛍光膜の形成時に蛍光体の飛散がより少なくなり、かぶりのない、きれいな蛍光膜を形成することができる。また、上記樹脂膜を形成しているスチレン系(共)重合体にワックス又は極性基を有する共重合性モノマーを添加することにより、さらに、体積固有抵抗が上がることで、より十分な電荷保持能力(初期電位、保持電位)を得ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。
【0026】(実施例1)5Lのセパラブルフラスコにトルエン1000gを入れ、これにスチレン系共重合体(構成成分:スチレン75重量%及びアクリル酸n−ブチル25重量%、重量平均分子量120万)450gを投入し、混合分散させた。次いで、セパラブルフラスコの気相を窒素ガスにて置換した後、この系をトルエンの沸点まで昇温した。トルエンの還流が起きた状態で撹拌しながら、スチレン600g、メタクリル酸n−ブチル300g及びメタクリル酸メチル100gに、重合開始剤として過酸化ベンゾイル40gを添加した混合溶液を3時間かけて滴下しながら、溶液重合を行った。滴下終了後、さらにトルエンの沸騰する温度にて撹拌しながら1時間熟成した。次いで、系の温度を180℃まで徐々に昇温しながら、減圧下でトルエンを脱溶剤して共重合体を得た。この共重合体を冷却、粉砕して、スチレン系共重合体(A)を得た。このスチレン系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は28万、Mw/Mn=30であった。
【0027】上記スチレン系共重合体(A)の粉砕した樹脂をアルミ製のシャーレーに20g計量し、ホットプレート上で加熱溶融させた後、冷却固化し平滑な樹脂プレートを作製した。この樹脂プレートの体積固有抵抗値を、DSM−8103デジタル絶縁計(東亜電波工業社製)で測定したところ、2.5×1016Ω・cmであった。次に、同樹脂プレートの表面電位についても、DSM−8103デジタル絶縁計(東亜電波工業社製)で測定したところ、初期電位が395V、3分後の保持電位は320Vであった。
【0028】上記スチレン系共重合体(A)の5重量%トルエン溶液を、図1〜5に示す工程でブラックマトリックスを設けたガラスパネル内面にスピンコートした後乾燥して、樹脂膜を形成した。次いで、樹脂膜を帯電させ、シャドウマスクをフォトマスクとして露光した後、シャドウマスクを外して蛍光体を静電的に三原色(R、G、B)の順序で順次粉体塗装し、焼き付けを行うことにより蛍光膜を形成した(図6〜10)。上記一連の操作により、均一な膜厚の樹脂膜を形成することができ十分な帯電量が得られたため、蛍光体の飛散がなく、かぶりのない、きれいな蛍光膜を形成することができた。
【0029】(実施例2)5Lのセパラブルフラスコにトルエン1000gを入れ、これにスチレン系共重合体(構成成分:スチレン75重量%及びアクリル酸n−ブチル25重量%、重量平均分子量120万)300gを投入し、混合分散させた。次いで、セパラブルフラスコの気相を窒素ガスにて置換した後、この系をトルエンの沸点まで昇温した。トルエンの還流が起きた状態で撹拌しながら、スチレン600g、アクリル酸エチル300g及びメタクリル酸メチル100gに、重合開始剤として過酸化ベンゾイル40gを添加した混合溶液を3時間かけて滴下しながら、溶液重合を行った。滴下終了後、さらにトルエンの沸騰する温度にて撹拌しながら1時間熟成した。次いで、系の温度を180℃まで徐々に昇温しながら、減圧下でトルエンを脱溶剤して共重合体を得た。この共重合体を冷却、粉砕して、スチレン系共重合体(B)を得た。このスチレン系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は20万、Mw/Mn=22であった。
【0030】実施例1と同様にして樹脂プレートを作製し、体積固有抵抗値を測定したところ、2.1×1016Ω・cmであり、表面電位については、初期電位が380V、3分後の保持電位は310Vであった。
【0031】上記スチレン系共重合体(B)の5重量%トルエン溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてガラスパネル内面に樹脂膜を形成した後、実施例1と同様にして粉体塗装により蛍光膜を形成した。上記一連の操作により、樹脂膜に十分な帯電が得られたため、蛍光体の飛散がなく、かぶりのない、きれいな蛍光膜を形成することができた。
【0032】(実施例3)5Lのセパラブルフラスコにトルエン1000gを入れ、これにスチレン系共重合体(構成成分:スチレン75重量%及びアクリル酸n−ブチル25重量%、重量平均分子量120万)450g及びパラフィンワックス(日本精蝋社製「HNP−9」)80gを投入し、混合分散させた。次いで、セパラブルフラスコの気相を窒素ガスにて置換した後、この系をトルエンの沸点まで昇温した。トルエンの還流が起きた状態で撹拌しながら、スチレン600g、メタクリル酸n−ブチル300g及びメタクリル酸メチル100gに、重合開始剤として過酸化ベンゾイル40gを添加した混合溶液を3時間かけて滴下しながら、溶液重合を行った。滴下終了後、さらにトルエンの沸騰する温度にて撹拌しながら1時間熟成した。次いで、系の温度を180℃まで徐々に昇温しながら、減圧下でトルエンを脱溶剤して共重合体を得た。この共重合体を冷却、粉砕して、スチレン系共重合体(C)を得た。このスチレン系共重合体(C)の重量平均分子量(Mw)は27万、Mw/Mn=29であった。
【0033】実施例1と同様にして樹脂プレートを作製し、体積固有抵抗値を測定したところ、8.4×1016Ω・cmであり、表面電位については、初期電位が420V、3分後の保持電位は340Vであった。
【0034】上記スチレン系共重合体(C)の5重量%トルエン溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてガラスパネル内面に樹脂膜を形成した後、実施例1と同様にして粉体塗装により蛍光膜を形成した。上記一連の操作により、樹脂膜に十分な帯電が得られたため、蛍光体の飛散がなく、かぶりのない、きれいな蛍光膜を形成することができた。
【0035】(実施例4)5Lのセパラブルフラスコにトルエン1000gを入れ、これにスチレン系共重合体(構成成分:スチレン75重量%及びアクリル酸n−ブチル25重量%、重量平均分子量120万)300gを投入し、混合分散させた。次いで、セパラブルフラスコの気相を窒素ガスにて置換した後、この系をトルエンの沸点まで昇温した。トルエンの還流が起きた状態で撹拌しながら、スチレン600g、メタクリル酸n−ブチル300g、メタクリル酸メチル70及びアクリル酸30gに、重合開始剤として過酸化ベンゾイル40gを添加した混合溶液を3時間かけて滴下しながら、溶液重合を行った。滴下終了後、さらにトルエンの沸騰する温度にて撹拌しながら1時間熟成した。次いで、系の温度を180℃まで徐々に昇温しながら、減圧下でトルエンを脱溶剤して共重合体を得た。この共重合体を冷却、粉砕して、スチレン系共重合体(D)を得た。このスチレン系共重合体(D)の重量平均分子量(Mw)は25万、Mw/Mn=28であった。
【0036】実施例1と同様にして樹脂プレートを作製し、体積固有抵抗値を測定したところ、7.8×1016Ω・cmであり、表面電位については、初期電位が405V、3分後の保持電位は325Vであった。
【0037】上記スチレン系共重合体(D)の5重量%トルエン溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてガラスパネル内面に樹脂膜を形成した後、実施例1と同様にして粉体塗装により蛍光膜を形成した。上記一連の操作により、樹脂膜に十分な帯電が得られたため、蛍光体の飛散がなく、かぶりのない、きれいな蛍光膜を形成することができた。
【0038】(比較例1)3Lのセパラブルフラスコにトルエン1000gを入れて撹拌し、気相を窒素ガスにて置換した後、この系をトルエンの沸点まで昇温した。トルエンの還流が起きた状態で撹拌しながら、スチレン600g及びメタクリル酸n−ブチル400gに、重合開始剤として過酸化ベンゾイル40gを添加した混合溶液を3時間かけて滴下しながら、溶液重合を行った。滴下終了後、さらにトルエンの沸騰する温度にて撹拌しながら1時間熟成した。次いで、系の温度を180℃まで徐々に昇温しながら、減圧下でトルエンを脱溶剤して共重合体を得た。この共重合体を冷却、粉砕して、スチレン系共重合体(E)を得た。このスチレン系共重合体(E)の重量平均分子量(Mw)は2万、Mw/Mn=3であった。
【0039】実施例1と同様にして樹脂プレートを作製し、体積固有抵抗値を測定したところ、2.0×1015Ω・cmであり、表面電位については、初期電位が150V、3分後の保持電位は90Vであった。
【0040】上記スチレン系共重合体(E)の5重量%トルエン溶液を使用したことこと以外は、実施例1と同様にしてガラスパネル内面に樹脂膜を形成した後、実施例1と同様にして粉体塗装により蛍光膜を形成しようとしたが、スチレン系共重合体(E)溶液の粘度が低く、膜厚が薄くなり過ぎたため、樹脂膜に十分な帯電量が得られず、蛍光体の飛散が起こり、蛍光膜上にかぶりが認められた。
【0041】(比較例2)3Lのセパラブルフラスコに、ポリビニルアルコールの部分ケン化物(日本合成化学社製「ゴーセノールGH−17」)1gを入れて蒸留水1000mlに溶解し、セパラブルフラスコ内の気相を窒素ガスにて置換した後、80℃に昇温した。昇温後、スチレン600g、メタクリル酸n−ブチル200g、及び、重合開始剤として過酸化ベンゾイル5gを添加した混合溶液を5時間かけて等速滴下し、滴下終了後80℃で8時間保持した。次いで、100℃まで昇温し、その温度下で2時間重合を行った後冷却し、脱水及び水洗を繰り返した後乾燥して、スチレン系共重合体(F)を得た。このスチレン系共重合体(F)の重量平均分子量(Mw)は35万、Mw/Mn=3であった。
【0042】実施例1と同様にして樹脂プレートを作製し、体積固有抵抗値を測定したところ、3.3×1015Ω・cmであり、表面電位については、初期電位が180V、3分後の保持電位は110Vであった。
【0043】上記スチレン系共重合体(F)の5重量%トルエン溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてガラスパネル内面に樹脂膜を形成した後、実施例1と同様にして粉体塗装により蛍光膜を形成しようとしたが、スチレン系共重合体(F)溶液の粘度が高く、樹脂膜厚が不均一になったため、帯電むらが起こり、きれいな蛍光膜が形成できなかった。
【0044】
【発明の効果】本発明の陰極線管は、上述の如く構成されており、膜厚の均一な樹脂膜が形成されているため、樹脂膜に帯電させた際に帯電むらがなく十分な帯電量を得ることができる。よって、蛍光体の飛散がなく、かぶりのない、きれいな蛍光膜を有している。また、温水シャワーによる現像及び乾燥工程がないため、製造工程を簡略化でき生産性を向上することができる。さらに、製造工程で温水シャワーが不要であるため、水の使用量を大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フォトレジストをスピンコートする工程を示す模式図である。
【図2】フォトレジストにシャドウマスクをフォトマスクとして露光する工程を示す模式図である。
【図3】フォトレジストの未露光部分を水洗、乾燥する工程を示す模式図である。
【図4】フォトレジスト上にグラファイトをスピンコートする工程を示す模式図である。
【図5】硫酸でエッチングしてブラックマトリックスを形成する工程を示す模式図である。
【図6】ブラックマトリックス上にスチレン系(共)重合体をスピンコートし、樹脂膜を形成する工程を示す模式図である。
【図7】樹脂膜を帯電させる工程を示す模式図である。
【図8】樹脂膜にシャドウマスクをフォトマスクとして露光する工程を示す模式図である。
【図9】帯電した樹脂膜に蛍光体を粉体塗装する工程を示す模式図である。
【図10】粉体塗装した蛍光体を焼き付ける工程を示す模式図である。
【図11】従来の方法において蛍光体をスピンコートする工程を示す模式図である。
【図12】従来の方法において蛍光体にシャドウマスクをフォトマスクとして露光する工程を示す模式図である。
【図13】従来の方法において蛍光体の未露光部分を水洗、乾燥する工程を示す模式図である。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、陰極線管に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シャドウマスク型カラーブラウン管において、青、緑、赤の三原色の蛍光膜は、ポリビニルアルコール及び重クロム酸アンモニウムからなる水溶液に蛍光体を分散させた懸濁液をガラスパネルにフローコートにより塗布し、乾燥した後、得られた塗布膜に所定のパターンを有するシャドウマスクをフォトマスクとして露光し、温水シャワーで未露光部分を除去して現像することにより形成されている(特開昭55−28256号公報)。このようなフローコート法は、蛍光体付着量の制御が容易であり、蛍光面の膜厚を均一に制御することができるため、現在最も広く使用されている蛍光膜の形成方法である。
【0003】しかしながら、上記フローコート法は、蛍光体を分散させた懸濁液を、三原色の色毎にガラスパネルに塗布、乾燥、露光、温水シャワー洗浄の繰り返し作業により現像するため、多量の水を必要とする上に、蛍光膜の形成に時間がかかる等の問題点があった。
【0004】また、別の蛍光膜形成方法として、次のスピンコートによる塗布法も行われている。この方法では、まず、スチレン系重合体のトルエン溶液をガラスパネル内面にスピンコートして乾燥し樹脂膜面を形成する。次いで、この樹脂膜面を帯電させ、帯電した樹脂膜面に所定のパターンを有するシャドウマスクをフォトマスクとして露光した後、シャドウマスクを外して静電的に蛍光体を三原色(赤、緑、青)の色順に粉体塗装して、焼成することにより、蛍光膜を形成する方法である。
【0005】しかしながら、上記スピンコートによる塗布法は、樹脂膜面の帯電性が不十分であるため、蛍光体の飛散が発生し、かぶりのない蛍光膜が形成できなくなるという問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点に鑑み、製造工程において多量の水を使用せずに短時間の作業でガラスパネル内面に蛍光膜を形成可能であり、かつ、かぶりのない、きれいな蛍光膜を有する陰極線管を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の陰極線管は、ガラスパネル内面に設けられた樹脂膜上に蛍光体を静電的に塗装することにより形成された蛍光膜を有する陰極線管であって、該樹脂膜が、重量平均分子量(Mw)5万以上であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布が5以上であり、さらに上記スチレン系(共)重合体100重量部に対して、ワックスを2〜15重量部又は極性基を有する共重合性モノマーを0.1〜10重量部を添加してなることを特徴とする。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で用いられるスチレン系(共)重合体としては、スチレン系単量体の単独重合体又は共重合体、及び、スチレン系単量体とその他のビニル系単量体との共重合体が挙げられる。
【0009】上記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0010】上記その他のビニル系単量体としては、上記スチレン系単量体以外の単量体であって、例えば、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル等が好適に用いられる。上記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリルなどが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0011】上記メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0012】上記以外のその他のビニル系単量体として、例えば、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、ビスグリシジルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メタクリロキシエチルホスフェート等が用いられてもよい。
【0013】上記その他のビニル系単量体の中で、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチルが好ましい。
【0014】本発明において用いられるワックスとしては、パラフィンワックス、動植物ワックス等の天然ワックスが用いられるが、中でもパラフィンワックスが好適に用いられる。また、極性基を有する共重合性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等を挙げることができるが、中でもアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。
【0015】上記スチレン系(共)重合体の構成成分中、スチレン系単量体の含有量は、40〜90重量%が好ましく、より好ましくは50〜80重量%である。また、スチレン系(共)重合体の構成成分中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、60重量%以下が好ましく、より好ましくは10〜40重量%である。
【0016】また、ワックスの添加量は、スチレン系(共)重合体100重量部に対して2〜15重量部であり、好ましくは5〜10重量部である。また、極性基を有する共重合性モノマーの添加量は、スチレン系(共)重合体100重量部に対して0.1〜10重量部であり、好ましくは2〜7重量部である。
【0017】上記スチレン系(共)重合体の重量平均分子量(Mw)は、小さくなると均一な樹脂膜の形成が困難となり、樹脂膜に十分な帯電量が得られなくなるので、5万以上に制限され、好ましくは10万以上、より好ましくは20万以上である。
【0018】上記スチレン系(共)重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、5以上に制限され、好ましくは5〜50、より好ましくは10〜30の範囲である。なお、上記重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される値である。
【0019】上記分子量分布(Mw/Mn)が、5未満ではスチレン系(共)重合体を溶液としたときの粘度調整が難しくなり、均一な厚みの樹脂膜が得られ難くなるため、帯電量が不均一となり、均一な膜厚の蛍光膜を形成し難くなる。
【0020】上記樹脂の体積固有抵抗値は、小さくなると十分な電荷保持能力(初期電位、保持電位)が得られにくくなるため、蛍光体の粉体塗装が困難となり、均一な膜厚の蛍光膜を形成しにくくなる。
【0021】上記スチレン系(共)重合体は、従来公知の、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊重合等の重合方法によって合成することができる。
【0022】上記スチレン系(共)重合体を使用して樹脂膜を形成する方法を、図面を参照しながら説明する。まず、図1に示すように、ガラスパネル内面にポリビニルアルコールベースのフォトレジストをスピンコートする。次いで、所定のパターンを有するシャドウマスクを介して露光した後、水洗して未硬化部分を除去、乾燥する(図2及び3)。さらに、グラファイトをスピンコートした後、硫酸でエッチングを行い、ガラスパネル内面にブラックマトリックスを形成する(図4及び5)。
【0023】次に、ブラックマトリックス上に、上記スチレン系(共)重合体の5重量%トルエン溶液をスピンコートした後乾燥して樹脂膜を形成する(図6及び7)。この樹脂膜を帯電させた後所定のパターンを有するシャドウマスクをフォトマスクとして露光する(図7R>7)。露光によって帯電が喪失した部分に、赤色トナー(R)を静電的に粉体塗装する(図8及び9)。同様の操作を繰り返して、緑色トナー(G)及び青色トナー(B)を順次静電的に粉体塗装する。最後に、三色のトナーの粉体塗装面を加熱して焼き付けることにより、蛍光膜を形成する(図10)。
【0024】
【作用】本発明の陰極線管は、ガラスパネル内面に重量平均分子量(Mw)5万以上、かつ分子量分布(Mw/Mn)が5以上のスチレン系重合体からなる樹脂膜を形成することにより、蛍光体の粉体塗装が可能となるため、蛍光体を分散させた懸濁液が不要であり、懸濁液の塗布、乾燥、露光、温水シャワーによる現像の操作がないため製造工程を大幅に短縮でき、大量の水を使用する必要もない。さらに、上記樹脂膜は、体積固有抵抗値が1.0×1016〜9.9×1017Ω・cmの樹脂を使用することにより、樹脂膜の表面に十分な電荷保持能力(初期電位、保持電位)が得られるため、蛍光膜の形成時に蛍光体の飛散がより少なくなり、かぶりのない、きれいな蛍光膜を形成することができる。また、上記樹脂膜を形成しているスチレン系(共)重合体にワックス又は極性基を有する共重合性モノマーを添加することにより、さらに、体積固有抵抗が上がることで、より十分な電荷保持能力(初期電位、保持電位)を得ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。
【0026】(実施例1)5Lのセパラブルフラスコにトルエン1000gを入れ、これにスチレン系共重合体(構成成分:スチレン75重量%及びアクリル酸n−ブチル25重量%、重量平均分子量120万)450gを投入し、混合分散させた。次いで、セパラブルフラスコの気相を窒素ガスにて置換した後、この系をトルエンの沸点まで昇温した。トルエンの還流が起きた状態で撹拌しながら、スチレン600g、メタクリル酸n−ブチル300g及びメタクリル酸メチル100gに、重合開始剤として過酸化ベンゾイル40gを添加した混合溶液を3時間かけて滴下しながら、溶液重合を行った。滴下終了後、さらにトルエンの沸騰する温度にて撹拌しながら1時間熟成した。次いで、系の温度を180℃まで徐々に昇温しながら、減圧下でトルエンを脱溶剤して共重合体を得た。この共重合体を冷却、粉砕して、スチレン系共重合体(A)を得た。このスチレン系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は28万、Mw/Mn=30であった。
【0027】上記スチレン系共重合体(A)の粉砕した樹脂をアルミ製のシャーレーに20g計量し、ホットプレート上で加熱溶融させた後、冷却固化し平滑な樹脂プレートを作製した。この樹脂プレートの体積固有抵抗値を、DSM−8103デジタル絶縁計(東亜電波工業社製)で測定したところ、2.5×1016Ω・cmであった。次に、同樹脂プレートの表面電位についても、DSM−8103デジタル絶縁計(東亜電波工業社製)で測定したところ、初期電位が395V、3分後の保持電位は320Vであった。
【0028】上記スチレン系共重合体(A)の5重量%トルエン溶液を、図1〜5に示す工程でブラックマトリックスを設けたガラスパネル内面にスピンコートした後乾燥して、樹脂膜を形成した。次いで、樹脂膜を帯電させ、シャドウマスクをフォトマスクとして露光した後、シャドウマスクを外して蛍光体を静電的に三原色(R、G、B)の順序で順次粉体塗装し、焼き付けを行うことにより蛍光膜を形成した(図6〜10)。上記一連の操作により、均一な膜厚の樹脂膜を形成することができ十分な帯電量が得られたため、蛍光体の飛散がなく、かぶりのない、きれいな蛍光膜を形成することができた。
【0029】(実施例2)5Lのセパラブルフラスコにトルエン1000gを入れ、これにスチレン系共重合体(構成成分:スチレン75重量%及びアクリル酸n−ブチル25重量%、重量平均分子量120万)300gを投入し、混合分散させた。次いで、セパラブルフラスコの気相を窒素ガスにて置換した後、この系をトルエンの沸点まで昇温した。トルエンの還流が起きた状態で撹拌しながら、スチレン600g、アクリル酸エチル300g及びメタクリル酸メチル100gに、重合開始剤として過酸化ベンゾイル40gを添加した混合溶液を3時間かけて滴下しながら、溶液重合を行った。滴下終了後、さらにトルエンの沸騰する温度にて撹拌しながら1時間熟成した。次いで、系の温度を180℃まで徐々に昇温しながら、減圧下でトルエンを脱溶剤して共重合体を得た。この共重合体を冷却、粉砕して、スチレン系共重合体(B)を得た。このスチレン系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は20万、Mw/Mn=22であった。
【0030】実施例1と同様にして樹脂プレートを作製し、体積固有抵抗値を測定したところ、2.1×1016Ω・cmであり、表面電位については、初期電位が380V、3分後の保持電位は310Vであった。
【0031】上記スチレン系共重合体(B)の5重量%トルエン溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてガラスパネル内面に樹脂膜を形成した後、実施例1と同様にして粉体塗装により蛍光膜を形成した。上記一連の操作により、樹脂膜に十分な帯電が得られたため、蛍光体の飛散がなく、かぶりのない、きれいな蛍光膜を形成することができた。
【0032】(実施例3)5Lのセパラブルフラスコにトルエン1000gを入れ、これにスチレン系共重合体(構成成分:スチレン75重量%及びアクリル酸n−ブチル25重量%、重量平均分子量120万)450g及びパラフィンワックス(日本精蝋社製「HNP−9」)80gを投入し、混合分散させた。次いで、セパラブルフラスコの気相を窒素ガスにて置換した後、この系をトルエンの沸点まで昇温した。トルエンの還流が起きた状態で撹拌しながら、スチレン600g、メタクリル酸n−ブチル300g及びメタクリル酸メチル100gに、重合開始剤として過酸化ベンゾイル40gを添加した混合溶液を3時間かけて滴下しながら、溶液重合を行った。滴下終了後、さらにトルエンの沸騰する温度にて撹拌しながら1時間熟成した。次いで、系の温度を180℃まで徐々に昇温しながら、減圧下でトルエンを脱溶剤して共重合体を得た。この共重合体を冷却、粉砕して、スチレン系共重合体(C)を得た。このスチレン系共重合体(C)の重量平均分子量(Mw)は27万、Mw/Mn=29であった。
【0033】実施例1と同様にして樹脂プレートを作製し、体積固有抵抗値を測定したところ、8.4×1016Ω・cmであり、表面電位については、初期電位が420V、3分後の保持電位は340Vであった。
【0034】上記スチレン系共重合体(C)の5重量%トルエン溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてガラスパネル内面に樹脂膜を形成した後、実施例1と同様にして粉体塗装により蛍光膜を形成した。上記一連の操作により、樹脂膜に十分な帯電が得られたため、蛍光体の飛散がなく、かぶりのない、きれいな蛍光膜を形成することができた。
【0035】(実施例4)5Lのセパラブルフラスコにトルエン1000gを入れ、これにスチレン系共重合体(構成成分:スチレン75重量%及びアクリル酸n−ブチル25重量%、重量平均分子量120万)300gを投入し、混合分散させた。次いで、セパラブルフラスコの気相を窒素ガスにて置換した後、この系をトルエンの沸点まで昇温した。トルエンの還流が起きた状態で撹拌しながら、スチレン600g、メタクリル酸n−ブチル300g、メタクリル酸メチル70及びアクリル酸30gに、重合開始剤として過酸化ベンゾイル40gを添加した混合溶液を3時間かけて滴下しながら、溶液重合を行った。滴下終了後、さらにトルエンの沸騰する温度にて撹拌しながら1時間熟成した。次いで、系の温度を180℃まで徐々に昇温しながら、減圧下でトルエンを脱溶剤して共重合体を得た。この共重合体を冷却、粉砕して、スチレン系共重合体(D)を得た。このスチレン系共重合体(D)の重量平均分子量(Mw)は25万、Mw/Mn=28であった。
【0036】実施例1と同様にして樹脂プレートを作製し、体積固有抵抗値を測定したところ、7.8×1016Ω・cmであり、表面電位については、初期電位が405V、3分後の保持電位は325Vであった。
【0037】上記スチレン系共重合体(D)の5重量%トルエン溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてガラスパネル内面に樹脂膜を形成した後、実施例1と同様にして粉体塗装により蛍光膜を形成した。上記一連の操作により、樹脂膜に十分な帯電が得られたため、蛍光体の飛散がなく、かぶりのない、きれいな蛍光膜を形成することができた。
【0038】(比較例1)3Lのセパラブルフラスコにトルエン1000gを入れて撹拌し、気相を窒素ガスにて置換した後、この系をトルエンの沸点まで昇温した。トルエンの還流が起きた状態で撹拌しながら、スチレン600g及びメタクリル酸n−ブチル400gに、重合開始剤として過酸化ベンゾイル40gを添加した混合溶液を3時間かけて滴下しながら、溶液重合を行った。滴下終了後、さらにトルエンの沸騰する温度にて撹拌しながら1時間熟成した。次いで、系の温度を180℃まで徐々に昇温しながら、減圧下でトルエンを脱溶剤して共重合体を得た。この共重合体を冷却、粉砕して、スチレン系共重合体(E)を得た。このスチレン系共重合体(E)の重量平均分子量(Mw)は2万、Mw/Mn=3であった。
【0039】実施例1と同様にして樹脂プレートを作製し、体積固有抵抗値を測定したところ、2.0×1015Ω・cmであり、表面電位については、初期電位が150V、3分後の保持電位は90Vであった。
【0040】上記スチレン系共重合体(E)の5重量%トルエン溶液を使用したことこと以外は、実施例1と同様にしてガラスパネル内面に樹脂膜を形成した後、実施例1と同様にして粉体塗装により蛍光膜を形成しようとしたが、スチレン系共重合体(E)溶液の粘度が低く、膜厚が薄くなり過ぎたため、樹脂膜に十分な帯電量が得られず、蛍光体の飛散が起こり、蛍光膜上にかぶりが認められた。
【0041】(比較例2)3Lのセパラブルフラスコに、ポリビニルアルコールの部分ケン化物(日本合成化学社製「ゴーセノールGH−17」)1gを入れて蒸留水1000mlに溶解し、セパラブルフラスコ内の気相を窒素ガスにて置換した後、80℃に昇温した。昇温後、スチレン600g、メタクリル酸n−ブチル200g、及び、重合開始剤として過酸化ベンゾイル5gを添加した混合溶液を5時間かけて等速滴下し、滴下終了後80℃で8時間保持した。次いで、100℃まで昇温し、その温度下で2時間重合を行った後冷却し、脱水及び水洗を繰り返した後乾燥して、スチレン系共重合体(F)を得た。このスチレン系共重合体(F)の重量平均分子量(Mw)は35万、Mw/Mn=3であった。
【0042】実施例1と同様にして樹脂プレートを作製し、体積固有抵抗値を測定したところ、3.3×1015Ω・cmであり、表面電位については、初期電位が180V、3分後の保持電位は110Vであった。
【0043】上記スチレン系共重合体(F)の5重量%トルエン溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてガラスパネル内面に樹脂膜を形成した後、実施例1と同様にして粉体塗装により蛍光膜を形成しようとしたが、スチレン系共重合体(F)溶液の粘度が高く、樹脂膜厚が不均一になったため、帯電むらが起こり、きれいな蛍光膜が形成できなかった。
【0044】
【発明の効果】本発明の陰極線管は、上述の如く構成されており、膜厚の均一な樹脂膜が形成されているため、樹脂膜に帯電させた際に帯電むらがなく十分な帯電量を得ることができる。よって、蛍光体の飛散がなく、かぶりのない、きれいな蛍光膜を有している。また、温水シャワーによる現像及び乾燥工程がないため、製造工程を簡略化でき生産性を向上することができる。さらに、製造工程で温水シャワーが不要であるため、水の使用量を大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フォトレジストをスピンコートする工程を示す模式図である。
【図2】フォトレジストにシャドウマスクをフォトマスクとして露光する工程を示す模式図である。
【図3】フォトレジストの未露光部分を水洗、乾燥する工程を示す模式図である。
【図4】フォトレジスト上にグラファイトをスピンコートする工程を示す模式図である。
【図5】硫酸でエッチングしてブラックマトリックスを形成する工程を示す模式図である。
【図6】ブラックマトリックス上にスチレン系(共)重合体をスピンコートし、樹脂膜を形成する工程を示す模式図である。
【図7】樹脂膜を帯電させる工程を示す模式図である。
【図8】樹脂膜にシャドウマスクをフォトマスクとして露光する工程を示す模式図である。
【図9】帯電した樹脂膜に蛍光体を粉体塗装する工程を示す模式図である。
【図10】粉体塗装した蛍光体を焼き付ける工程を示す模式図である。
【図11】従来の方法において蛍光体をスピンコートする工程を示す模式図である。
【図12】従来の方法において蛍光体にシャドウマスクをフォトマスクとして露光する工程を示す模式図である。
【図13】従来の方法において蛍光体の未露光部分を水洗、乾燥する工程を示す模式図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガラスパネル内面に設けられた樹脂膜上に蛍光体を静電的に塗装することにより形成された蛍光膜を有する陰極線管であって、該樹脂膜が、重量平均分子量(Mw)5万以上であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布が5以上であり、さらに上記スチレン系(共)重合体100重量部に対して、ワックスを2〜15重量部又は極性基を有する共重合性モノマーを0.1〜10重量部添加してなることを特徴とする陰極線管。
【請求項1】 ガラスパネル内面に設けられた樹脂膜上に蛍光体を静電的に塗装することにより形成された蛍光膜を有する陰極線管であって、該樹脂膜が、重量平均分子量(Mw)5万以上であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布が5以上であり、さらに上記スチレン系(共)重合体100重量部に対して、ワックスを2〜15重量部又は極性基を有する共重合性モノマーを0.1〜10重量部添加してなることを特徴とする陰極線管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2000−133129(P2000−133129A)
【公開日】平成12年5月12日(2000.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−299850
【出願日】平成10年10月21日(1998.10.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成12年5月12日(2000.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成10年10月21日(1998.10.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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