説明

陰極複合材料及びその製造方法、陰極及びリチウムイオン電池

本発明は、陰極材料及びその製法、及び、この材料を備える陰極及びリチウムイオン電池に関する。この材料は、Al、Si、Sn、Sb又は組合せを主成分とした材料Mからなる活性相と材料Xからなる支持相とを備える陰極材料であり、Oは酸素、Yは酸化度m=3、4、5又は6を有するカチオン、Xは酸化度d=1、2、3、4又は5を有するカチオンでXの電気的中性を保証するもので、cは2≦c≦10で、bは1≦b≦4、a=(2c−bm)/dである。活性相及び支持相の間に混合組成物の接触部があり、接触部は元素M、X、Y及びOからなる。XはBPOでもよい。製法は、X及びYの酸化混合物を第1熱処理してXYOを得て、材料を冷却粉砕し、粉砕材料をMと混合して、得られた材料を第2熱処理して本発明の材料を得て、この材料を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極複合材料及びこの製造方法、及び、この材料を備える陰極及びリチウムイオン電池に関する。
特に、本発明は、再充電可能なリチウムイオン電池において有用な陰極材料に関する。
下記の説明において、角括弧([.])の参照は、実施例の後の、参考文献のリストを示す。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池用の陰極材料は、通常、カーボン・ベースの(カーボンを主成分とする)材料である。
【0003】
容積測定及び重量測定におけるキャパシタンスの制限のため、そして、樹枝状結晶(デンドライト)の形成によって生じる危険を制限するために、近年、他の材料に関心が集中している。
【0004】
例えば、スズ・ベースの材料は、特に注目されている。基本的な機構は、低いポテンシャルを有するLi−Sn金属間層の可逆性形成である。この低いポテンシャルは、すなわち、通常、リチウム金属のポテンシャルに対して0.2及び0.6Vとの間であり、最高4.4Li/Sn(モル)までのリチウムのインターカレーション(挿入)又はデインターカレーションに対して提供される。
【0005】
都合の悪いことに、インターカレーション及びデインターカレーションに関連した反応に起因する、体積において100%を超えるこれらの広いバリエーションによって、電極の性能が大幅に制限され、このことにより、例えば、純粋なスズからなる電極の使用が防止される。
【0006】
体積における変化を制限することによって電極の機械的安定度を改良するために、例えば、銅の基板上の電気めっきによって得られる小さいスズ粒子を使用することが、J.O.Besenhard等によって文献[1]で提案された。しかしながら、スズ粒子の層の厚みは、低すぎて実際に有用ではなかった。
【0007】
大部分のスズ・ベースの材料は、スズを主成分として電気化学的に活性な化合物から形成される。この化合物は、活性材料の膨張を制限する不活性なマトリックス中で分散している。最も一般的な例は、文献[2]及び[3]に記載されている富士写真フイルム株式会社によって提案されたアモルファス・スズの複合酸化物(TCO)である。TCOの化学式は、SnMとして記述されうる。ここで、Mは、例えばB(III)、Al(III)及びP(V)といった、金属元素である。電気化学的な活性中心は、酸素原子に束縛されたSn(II)原子であって、マトリックス中に分散している。初めにリチウムを挿入することで、Sn(II)からSn(O)への不可逆性の変換がもたらされ、そして、Li4.4Snに対応する最大ストイキオメトリを有するLi−Sn合金の可逆性電気化学的形成が続く。
【0008】
この機構は、さまざまな技術によって調査された。この技術は、例えばI.A.Courney等によって文献[4]に記載されているX線回折、例えばG.R.Goward等によって文献[5]に記載されているNMR(NMR)、例えばJ.Chouvin等によって文献[6]に記載されているメスバウアー分光等である。容積測定及び重量測定におけるキャパシタンスは、電極材料のガラスマトリックスの組成、その粒度及び調合に主に依存する。これらは、通常、カーボン・ベースの材料のものよりも高い。Y.Idota等に文献[3]で示されるように、容積測定及び重量測定におけるキャパシタンスに対する最高の性能は、それぞれ600mAh/g及び2200mAh/cmであると考えられる。
【0009】
しかしながら、これらの材料は第1の放電で約400mAh/gの不可逆性のキャパシタンスを有する。そして、このことは、これらの材料を使用して製造されうる電池の性能を制限する。
【0010】
TCOに関して2つの主要な問題が、事実存在している。まず、第1のチャージ・サイクルの間において、Sn(0)を生成するSn(II)とLiの反応により、キャパシタンスにおける非可逆性の損失が高いことと、I.A.Courney等によって[4]で述べられるように、スズの集積のために、カーボン・ベースのアノードに比してサイクル性(充電/放電サイクルの数)が低いことである。
【0011】
酸化スズ(例えばSnO及びSnO)を主成分とした結晶物質において、他の試験も実行された。これらの物質は、M.Winter及びJ.O.Besenhardによって文献[7]で報告されるように、依然として低いサイクル性を有するという同じ欠点を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それゆえに、従来技術における材料の上述した欠点がなく、特に再充電可能なリチウムイオン電池の製造用に有用である、新規な陰極材料を見出すための現実のニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述したニーズに適応した陰極材料に正に関するものである。実際には、本発明の材料は、低い可逆性、低い第1のサイクル容量損失及び優れたサイクル性(充電/放電サイクルの数)を特に有している。
【0014】
本発明の材料は、Al、Si、Sn、Sb又はこれらの組合せを主成分とする材料Mと、材料Xからなる支持相とを備える活性相を備え、
Oは、酸素であり、
Yは、酸化度m=3、4、5又は6を有するカチオンであり、
Xは、酸化度d=1、2、3、4又は5を有するカチオンであり、このXがXの電気的中性を保証するものであり、
cは、2≦c≦10であり、
bは、1≦b≦4であり、
a=(2c−bm)/dであり、
前記活性相及び前記支持相間に存在している混合組成の接触部(インターフェース)を備え、前記接触部は、元素M、X、Y及びOからなる、材料。
【0015】
本発明の独創性は、陰極材料の性質にある。この陰極材料は、前記成分M及びXから得られる混合組成物の接触部によって、スズ、及び/又はシリコン、及び/又はアルミニウム、及び/又はアンチモンを主成分とした活性相と相互作用する、電気化学的に不活性な、前記支持相を構成する前記式Xを有する材料、からなる。この混合組成物の接触部は、粘着力、すなわち、前記活性相M及び前記支持相Xとの間に結合を維持する力を発生させて、特に活性相の容積測定の変動を吸収するのに役立つ。本発明の材料は、本願明細書において記載される特性が、更に得られる。
【0016】
本発明の文脈において、「サイクリング特性」又は「サイクル性」は、いくつかの電気化学的サイクル間における、容積測定及び重量測定におけるキャパシタンスの保存の特性を意味する。
【0017】
本発明の文脈において、「電気化学的サイクル」は、
電解質の電池内部の陽イオンLiの、そして、電池の外側の電子の、陰極から陽極への移動である、放電ステップと、
電解質の電池内部の陽イオンLiの、そして、電池の外側の電子の、陽極から陰極への移動である、充電ステップと、
を備えるサイクルを意味する。
【0018】
本発明の文脈において、「活性相」は、一つ以上の元素が電気エネルギー(電気化学反応)への化学エネルギーの変換に可逆的に関与する、結晶又はアモルファス相を意味する。
【0019】
本発明の文脈において、「接触部」は、活性相M及び支持材料Xを形成する不活性相の間に位置する結晶又はアモルファス相を意味する
【0020】
本発明の文脈において、「混合組成物」は、活性相M及び不活性相Xの元素を含んでいる構成を意味する。
【0021】
本発明の文脈において、「支持」は、電気化学的変換に直接関与していない、そして、混合組成物の接触部を介して活性種を支持する原子の格子を意味する。これは、結晶又はアモルファス相である。
【0022】
本発明の文脈において、「陰イオン(アニオン)格子物質」は、主に酸素とともに共有結合の形成によって支持格子の構造を提供する元素を意味する。
【0023】
本発明の文脈において、「格子又は対イオン調整剤」は、主にイオン結合の形成によって支持格子の次元数を調整する元素を意味する。この調整剤は、電荷補償を確実にする。
【0024】
本発明では、Xは、好ましくは、酸素とともに非架橋されたイオン結合を形成していて、イオン伝導率に作用している次元数を調整するための格子調整剤である。Xは、例えばアルカリ元素(例えばLi、Na)、アルカリ土類元素(例えばMgIICaII)、1から5の酸化度を有する遷移元素(例えばTi、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag)、酸化度3又は5(例えばBIII、AIII、P、InIII)を有する元素p、又は、これらの組合せから選択される、カチオンであってもよい。
【0025】
本発明において、Yは、好ましくは、電子的伝導率に作用して、下記(i)、(ii)の本発明の材料の形成を可能にする格子物質であり、
(i)四面体ユニットYOを主成分とする化学式(Yを有する陰イオン複合体、及び/又は、
(ii)陰イオン存在物(Yの無限配列で形成される、連続的な一次元、二次元、又は三次元の連続格子、
であって、
(i)、(ii)において、
n=bm−2c≦0であって、1≦b≦4で、mはYの酸化度であって、3、4、5又は6に等しく、そして、2≦c≦10である。
【0026】
これらの複合体及び/又は格子は、従って、本発明の陰極材料に存在してもよい。
【0027】
本発明によれば、四面体の複合体は、前記式Yによって縮合されてもよく、ここで、1≦b≦4、2≦c≦10、である。これは、例えば、YO、Y、Y、Y10又はこれらの組合せに関連していてもよい。
【0028】
本発明によれば、Yは、例えばBIII、AIII、SiIV、GeIV、P、Sb、SVI又は、これらの組合せ、から選択されうる。
【0029】
本発明によれば、Mは、上述で規定されたようなものである。本発明では、「M」は、Mとして、すなわち、前記金属の金属形状として、明らかに理解される。本発明の文脈において、「ベースの金属」は、「から成る」(金属単独)、又は、「備える」(例えばこの金属を備える合金)ことを意味する。非限定的な実施例として、MがSnであるとき、X、Y、b及びcは、
X=B、Y=P、a=1、b=1、c=4、
であってもよい。
【0030】
本発明によれば、陰極材料中におけるモル比率[M]/[X]は、好ましくは0.1及び100の間、概して、0.1及び10の間である。このモル比率は、例えば、実施例として示される本発明の材料に対して1及び5の間であってもよい。
【0031】
本発明の陰極材料は、支持相BPOと相互作用する、Sn、Si、又はAl、又はこれらの組合せをベースにする、活性相Mと、これらの2つの相の間に存在している混合組成物の接触部とを備える材料であってもよい。前記接触部は、M、B、P、及びOの元素(エレメント)からなる。例示目的のみのための、この実施例において、MがSnであるときに、モル比率[M]/[BPO]は、例えば1と5の間であり、例えば2.5である。
【0032】
本発明によれば、活性相M中において、元素Al、Si、Sn及びSbは、最大1:1([C]/[M]≦1に相当)のモル比率でカーボンと結合されうる。事実、本発明者は、特にMがSiである場合、活性相中のカーボンの存在が本発明の陰極材料の性能の向上に寄与しうることを観察した。この効果は、確実に、Siよりも別の元素に対して観察されうる。
【0033】
本発明は、更に、本発明の材料を製造する方法に関する。そして、前記方法は、下記の段階、
X及びYの酸化物前駆体を混合すること、
X及びYの酸化物前駆体の混合物を第1熱処理して、材料Xを得ること、
得られたXを冷却し、そして、研削(グリンディング)すること、
活性相Mとともに、得られた下地材料Xを混合すること、
材料Mに対して非酸化雰囲気下で、そして、材料Xの融点の下の温度であって、材料MがXと化学的に反応して前記活性相及び前記支持相の間に接触部を形成するための十分に高い温度で、第2熱処理して、これによって前記陰極材料を得ること、
そして、得られた前記陰極材料を冷却すること、
を含む。
【0034】
この方法において、X、Y、a、b、c及びMは、上述で定めらたようなものである。
【0035】
本発明によれば、X及びYの酸化物前駆体の混合物は、これらの前駆体の粉体の単純な混合によって調整されうる。これらの前駆体は、凝結又は加水分解/凝結(ゾルゲル法)によって、ME−O−ME結合を形成可能な有機及び/又は無機化合物であるように定義されうる。ここで、MEは金属である。例として、炭酸塩(例えばLiCO)酢酸塩ME−(CHCO、水酸化物(ME−OH)、塩化物(例えばAlCl)、硝酸塩Ca(NO、ケイ酸塩LiSi、ME−オキソ・アルコキシド(例えば、ME(OR)、ここで、MEは、Al、Ti、Zn等から選択され、R=OHである)、テトラエトキシシラン(TEOS)等で、形成されていてもよい。このリストは、確かに包括的でないが、当業者は本説明において提供される詳細からどのようにこのリストを完了させるかを知るであろう。
【0036】
本発明によれば、酸化物前駆体Xは、例えばB及び/又はHBOであってもよく、酸化物前駆体Yは、例えばP及び/又はNHPOであってもよい。そして、この場合、製造された支持相Xは、BPOであり、そして、本発明において得られた材料で、混合組成物の接触部は、元素M、B、P及びOから成る。
【0037】
前駆体の混合物中における各々の酸化物の比率は、明らかに、上述で規定された材料Xを得るために適している化学量論的な(ストイキオメトリックな)割合である。これらの酸化物X及びYは、商業的に利用できる。これらは、例えば支持相BPOの場合、一方でB及びHBO間、他方でP及びNHPO間における、全ての組合せであってもよい。
【0038】
本発明によれば、混合を均質にするために、酸化物前駆体X及びYの混合物は、例えばモルタル中で粉砕されたものであってもよい。
【0039】
本発明によれば、第1熱処理は、材料Xを得ることに適している。この処理を行うために、この混合物は、100℃から1200℃の温度に加熱されうる。例えば、BPOにおける試験によって、この材料に対して良好な結晶性を得るために、第1熱処理の温度が、好ましくは300℃及び1000℃の間、より好ましくは500℃及び800℃との間であることが示された。
【0040】
選択される温度での前駆体の混合物の加熱は、1℃/分及び20℃/分の間、好ましくは1℃/分及び5℃/分の間、の温度上昇の後、好ましく行われる。温度上昇は、例えばNHPOのような前駆体に対して、NHの突然の解放を避けるために、そして、酸化物前駆体X及びY間における反応を助けるために、あまり急速でないことが好ましい。
【0041】
前駆体の混合物は、2〜12時間の間、熱処理温度に維持されうる。例えば、NHPOのような前駆体の場合、この混合物は、NHの可能な解放を促進して、酸化物前駆体X及びYを完全に反応させるために、好ましくは最低3時間この温度に維持される。そして、例えば6時間の期間は、化合物の良好な均質度に対して充分であるが、より長い期間が用いられてもよい。このように、例えば、3〜6時間の期間は、材料BPOを製造するために有利であると考えられる。
【0042】
得られた材料Xは、それから、例えば、それが外気温度で置かれることを許容することによって、冷やされる。
【0043】
本発明によれば、材料Xを研削(グリンディング)するステップは、マイクロ・メートルサイズ(微粒子)及び/又はナノ・メートルサイズ(ナノ粒子)の粒子粒度分布を得るために、好ましく実行される。研削は、機械的研削(例えばボールミル)又はマニュアル(例えばモルタルにおいて)であってもよい。微粒子は、一般に0.1及び100μm間のサイズを有する粒子を意味する。ナノ粒子のサイズは、通常、100ナノメートルより小さい。
【0044】
材料Xは、それから、活性材料Mと混合される。材料Mは、粉末形態であることが好ましく、材料Xと等価の粒子粒度分布を有することが好ましい。
【0045】
第2熱処理は、本発明の方法によれば、材料Xと活性相Mとの間に混合組成物の接触部を形成することに適している。この接触部は上述のように規定される。この接触部は、元素M、X、Y及びOからなる化合物又は混合物の形態であり、その物理化学的な特性についてまだ決定されていない。発明者は、それが非晶質(アモルファス)材料であると考えている。この接触部を得るための本質的条件は、この第2熱処理に対して用いられる温度である。
【0046】
この第2熱処理において、混合物は、それ故、材料X及び活性相Mの間に上述の接触部を形成するために十分に高い温度であって、Xの融解を回避するために十分に低い温度まで、加熱される。さらにまた、この第2熱処理の加熱時間は、良好な均質度及び完全な反応に充分な長さであることが好ましいが、金属Mの形成を防止するためにあまり長くしないことが好ましい。
【0047】
本発明によれば、第2熱処理は、通常、2〜12時間の期間に、100及び1200℃間の温度で、有利に行われる。
【0048】
例えば、XがBPOであってMがSnであるときに、最適範囲が300℃及び600℃の間にあることが、試験によって示された。例えば、XがBPOであってMがSnであるときに、有益な加熱時間が4時間及び8時間の間にあることが試験によって示された。
【0049】
本発明によれば、一般に、第2熱処理は、Mに対して非酸化雰囲気下で実施されることが好ましい。これは、アルゴン及び/又は窒素といった不活性雰囲気であることが好ましく、Mの酸化を避けるために乾燥していることが好ましい。この雰囲気は、少量の水素含量、好ましくは5%で若干還元されていることが有益である。この雰囲気は、従って、好ましく制御される。
【0050】
本発明によれば、得られた陰極材料は、例えば上記の通りに、好ましくは酸化処理を回避する制御雰囲気下において、例えば外気温度で、例えば急冷(クエンチング)によって、冷やされてもよい。
【0051】
本発明は、従って、特に以下の特徴を有するリチウムイオン電池を製造するために有用な新しい種類の陰極材料に関する。
黒鉛(372mAh/g)よりも高い重量測定におけるキャパシタンス、
黒鉛(837mAh/cm)よりも高い容積測定におけるキャパシタンス。
【0052】
本発明の製造方法及び得られた材料は、再充電可能なリチウムイオン電池用途において、
従来技術のカーボン、スズ、シリコン、アルミニウム及びアンチモンをベースとした陰極に関して性能及び容積測定及び重量測定におけるキャパシタンスを改良すること、
低い供給電圧、良好な可逆性、低い第1のサイクル容量損失及び優れたサイクル性(Liのインターカレーション及びデインターカレーション)を得ること、
を供する。この材料は、数サイクルの後でも高い保持キャパシティを保つ。
【0053】
この材料の製造方法は、迅速であり、低減されたコストで行うことができる。
【0054】
さらにまた、本発明は、より高い安全性及び環境に対するより大きな考慮を供する。
【0055】
本発明は、それ故、本発明の陰極材料を備える再充電可能なリチウムイオン電池の陰極にも関する。この種の電極には、リチウムイオン電池の用途が見いだされている。
【0056】
本発明はそれ故、少なくとも一つの陽極、少なくとも一つの陰極、及び、電解質を備える、再充電可能なリチウムイオン電池にも関する。前記電池は、上述の少なくとも一つの陰極が本発明による陰極材料を備えるという点を特徴とする。
【0057】
本発明によるリチウムイオン電池の製造には、単に本発明による材料で既知の陰極材料と置き換えることによって、当業者に知られている方法の任意の一つを用いることができる。
【0058】
文献[3]は、本発明によってリチウムイオン電池を製造するために、リチウムイオン電池のための生産プロトコル及び有用な材料の例を述べる。本発明による材料によってこの文献に記載されている陰極材料を交換することで、製造には十分である。
【0059】
文献[3]に関して、他の陽極材料は、リチウムイオン電池を製造するために、本発明において有用でもある。例えば、LiFePO、LiCoO、置換されたLiCoO(Li(CoNiMn)OといったCoの部分的な置換によって得られる)、LiMnが言及されうる。
【0060】
前記電解質は、電池の電極との間に、Liイオンの輸送を提供する。本発明のリチウムイオン電池における有用な電解質は、当業者に知られているものである。例えば、以下のものに言及されうる。
例えば溶媒の例として、LiPF溶媒といった液体、エチレンカーボネート/プロピレンカーボネート(1:1比率のEC/PC)、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1:1比率のEC/DEC)、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(1:1:3比率のPC/EC/DMC)、
LiXF(ここで、X=P、As、Sb)といったポリマー、+P(EO)(酸化ポリエチレン)、
LiBOBといった固体。
【0061】
他の効果は、本願明細書に追加される図を参照して、説明のために提供されて非限定的な以下の実施例の表示から、当業者に更に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
[実施例1:Sn及びBPOをベースにした本発明による材料の製造]
この実施例では、陰極材料は、BPO及びβSnを用いるセラミック法によって合成される。
【0063】
BPOの合成のために、2つの前駆体HBO及びNHPOは化学量論的な比率で混合されて、この混合物は、均質度のためのアゲートモルタルの下地(グラウンド)である。得られた混合物は、アルミニウムるつぼに置かれて、1℃/分の温度上昇の後、3時間加熱されて(第1熱処理)、前駆体NHPOから出るNHの可能な放出を得て、これらの前駆体との間に完全な反応ができるようにする。6時間の期間によって、良好な均質度が得られうる。材料BPOは、結晶体又は非結晶形で、得られる。
【0064】
BOは、Bと置換されうることが試験によって示されている。NHPOは、Pと置換されうることが他の試験によって示されている。一方でB及びHBO間での、他方でP及びNHPO間での、全ての組合せは、有効である。他の前駆体又はこれらの組合せは、従って、考慮されうる。
【0065】
材料BPOは、そして、空気中及びアゲートモルタルのグラウンドにおいて冷却され、マイクロ粒子の粒度分布のBPOの結晶化された粒子を製造する。
【0066】
BPO(510mg)のこれらの粒子は、β−Sn(1432mg)と混合される。この混合物は、アゲートモルタル中に細かく挽かれ、6時間の不活性雰囲気(アルゴン)下において、初期に500℃の温度で、水平炉のガラス質カーボン・ボート中で加熱される(第2熱処理)。不活性雰囲気は、Snの酸化処理を防止する。
【0067】
温度は、Sn及びBPOの間の接触部を形成するために十分に高い、すなわち、230℃(スズの金属の融解点)を超えていなければならず、BPOの融解を回避するために低い、すなわち、800℃より低くなければならない、ことが試験によって示されている。最適範囲は300及び600℃の間にあることが様々な試験によって示されている。
【0068】
4〜8時間の加熱時間によって、スズ金属の成長を回避して、良好な均質度及び完全な反応を可能にすることが他の試験によって示されている。
【0069】
得られた陰極材料は、酸化処理を回避するために、500℃及び外気温度との間で不活性雰囲気下において、急冷によって冷却される。そして、1及び10μmの間の粒度を得るために、アゲートモルタル中で、又は、機械的研磨によって粉末にされる。
【0070】
得られた材料は、活性相Snと支持相BPO(BPO/Snの比率0.4)とを具備している。元素Sn、B、P及びOからなる混合接触部が、支持相及び活性相の間に明らかに存在する。
【0071】
実際、2つの結晶相(β−Sn(活性材料)及びBPO(不活性基材))及びアモルファス相の存在を現している明らかに顕著なピークがX線回折解析によって示される。これは、活性材料及び不活性材料が、材料合成温度によって部分的に反応することを示唆する。
【0072】
これらの分析の結果は、図1中にプロットされている。x軸上において、2θは、度数での回折角の2倍を表す。初期材料は、β−Sn及びBPOの結晶粒子及び2つの結晶相間での接触部でのアモルファス相SnBPOによって、形成された複合材料であると考えられる。この構造は、Snが例えばSi又はAl(下記の実施例)で置き換えられても、得られる。
【0073】
アモルファス相中におけるスズの存在は、119Snのメスバウアー分光によって確認されている。メスバウアー・スペクトル(図2(a))は、スズに対する2つの酸化度の存在、Sn(0)(β−Sn)及びSn(II)を示す。Sn(II)に関連するサブスペクトル2及び3は、スズの複合酸化物(TCO)で見られるものと類似しており、スズを含有する反応から予想されるように、ガラスを形成する元素である、ガラス質スズのホウ素含有リン酸塩(ボロフォスフェート)のアモルファス相の存在を示唆している。Sn(0)に関連するサブスペクトル1は、βSnに起因する。これらの分析の結果は、図2中にプロットされる。この図において、「Rt」は、相対的な透過率(入射ビームに対する透過ビームの強度の比率)を表し、そして、「V」は、mm/sでの速度を表す。
【0074】
このようなマイクロストラクチャは、従来技術において調べられたスズをベースとした複合構造物とは異なっており、均質でアモルファスである。
【0075】
電子顕微鏡分析で直径約10μmの粒子が現れ、局所化学分析でスズが比較的豊富な粒子が現れる。図3は、この実施例によって得られた材料を示している写真である。この写真において、1cmは、45μmに対応する。明るいゾーンは、スズの最も豊富なゾーンに対応する。
【0076】
[実施例2:本発明による材料の電気化学的特徴描写のためのリチウムイオン試験電池]
これらの実験は、実施例1に従って得られた材料の電気化学的特性を調査する目的で行った。
【0077】
この目的のために、実施例1で得られた材料(90重量%)と、電気伝導及び安定化材料としてカーボンブラック(10重量%)との粉末の混合物を、ペレット中に押圧した。これらのペレットは、陽極を形成する。
【0078】
陰極を、シート状のリチウムで構成した。
【0079】
2つの電極の電気化学的電池を、形成した。電気化学的試験は、SWAGELOCKセル(商業ブランド)で行った。
【0080】
電解質は、エチレン炭酸塩と、1MのLiPFを含むジメチルカーボネートとの(1:3の)溶液である。
【0081】
この電池の充電/放電サイクルを、リチウム金属に対して1.5及び0.40Vの間での電位範囲におけるC/20(C=1 Limol−l−1)で、直流電流静的モードで実施した。図4Aは、この電池の充電/放電特性を示す。
【0082】
第1の放電の間、電位は、約0.5のLi mol−1の挿入とともに、1.5Vから0.4Vに減少する。この低い電位の値及びメスバウアー測定値によって、硝子体(アモルファス)相に属するSn(II)のSn(0)への還元が示される。
【0083】
最大4.2のLi mol−1のリチウムの追加的な挿入によって、添付した図2(b)における第1の放電終了時に得られたメスバウアー・スペクトルで示されるように、Li−Sn合金の形成がもたらされる。
【0084】
第1の充電の間におけるこれらのLi−Sn合金からのLiの抽出は、従来技術においてβSnに対して観察されるような、LiSn結晶相を含む二相反応に対応する3つの明らかに画定された台地の中で形成されるポテンシャル曲線を示すが、本発明の材料については、この反応は可逆性である。
【0085】
この観察される可逆容量は、約550mAh/gである。このキャパシタンスはスズのTCOのアモルファス化合物に対して得られたもの(約600mAh/g)に近接しているが、第1のサイクルにおける不可逆的損失である160mAh/gは、TCOのもの(約400mAh/g)より低い。
【0086】
特に可逆性(特定のキャパシタンス)に関して、得られた結果によって、従来技術のTCOに対する本発明の化合物の優位性が確認される。
【0087】
本発明における材料の10サイクルでの周期的な保持特性は、98%より大きい。
【0088】
[実施例3:Si及びBPOをベースとした本発明による材料の製造]
この実施例は、活性相がSiから成って支持相がBPOである本発明によって、材料の製造を可能にする。この実施例では、BPO/Siの割合は、0.4である。
【0089】
使用される方法は、実施例1のものである。Si及びBPOの割合は、それぞれ797mg及び1203mgである。
【0090】
スズのものと同程度の電気化学的曲線が、得られている。
【0091】
得られた材料は、実施例2におけるものと同様に、テストされている。この材料は、活性相Siと支持相BPO(BPO/Siの割合0.4)とを具備している。
【0092】
この結果によって、特に可逆性に関して、TCOに対する本発明の化合物の優位性が確認される。
【0093】
[実施例4:Al及びBPOをベースにした本発明による材料の製造]
この実施例は、活性相がAlから成って支持相がBPOである本発明による材料の製造を可能にする。この実施例では、BPO/Alの割合は、0.4である。
【0094】
使用される方法は、実施例1のものである。Al及びBPOの割合は、それぞれ779mg及び1225mgである。
【0095】
スズのものと同等の電気化学的曲線が、得られている。
【0096】
得られた材料は、実施例2においてのものと同様に、試験されている。この材料は、活性相Alと支持相BPO(BPO/Alの割合0.4)とを具備している。
【0097】
得られた結果によって、従来技術のTCOに対して、特に可逆性に関して、本発明の化合物の優位性が確認されている。
【0098】
[実施例5:本発明の材料を使用してリチウムイオン電池を製造するための方法]
実施例1、3又は4において製造された材料は、陰極を製造するために用いられる。
【0099】
この実施例は、その線図は添付の図5において与えられている、標準製造のボタン電池形状の装置において、本発明による陰極材料の使用を示す。
【0100】
この図は、正極缶(1)、負極電池ターミナル(3)、2つのターミナルを離隔している絶縁グローメット(5)、アノード(7)、セパレータ(9)、カソードコレクタ(11)、及びカソード(13)を示している。これらの部材は、ボタン電池形状のリチウムイオン電池を共に構成する。
【0101】
リチウムイオン電池の陰極は、以下の組成を有するポリフッ化ビニリデン−Nメチル−2−ピロリドン方法(PVDF−NMP)によって調整した。本発明における86%の活性材料(Sn、Al又はSi及びBPO)、6%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)、8%のカーボンの混成物:アセチレンブラック(Noir d’Acetylene de l’Aubetteで売られる参照物Y50A)から得られた4%の非常に純粋なカーボン、及び、4%の黒鉛(Graphit Kropfmuhl AGで売られる参照物UF)、及び、溶媒としてのNメチル−2−ピロリドン(NMP)、である。
【0102】
電解質は、LiPF(1M)のプロピレンカーボネート/エチレン炭酸塩/ジメチルカーボネート(PC/EC/3DMCの割合1:1:3)、そして、陽極材料は、化学式LiCoOを有する。
【0103】
リチウムイオン電池の端末同士に亘る電位差は3.5及び4Vの間にあり、そして、可逆容量は、600mAh/g(図6)で安定している。
【0104】
この図において、「C」は、サイクル数(「Cy」)の関数としてプロットされる重量測定のキャパシタンスmAh/gを表す。
【0105】
[実施例6:Sn、Si及びBPOをベースにした本発明による材料の製造]
この実施例では、活性相がSn及びSiの混合物からなって支持相がBPOである本発明による材料が、製造されている。モル比率は、0.5BPO/0.5Sn、0.5Siである。
【0106】
使用される方法は、実施例1に記載されているものである。
Sn、Si及びBPOの割合は、それぞれ940mg、222mg及び838mgである。
【0107】
得られた材料は、Sn及びSiの混成からなる活性相と支持相BPO(モル比率0.5BPO/0.5Sn、0.5Si)とを具備している。元素Sn、B、P及びOからなる混合接触部が、支持相及び活性相の間に明らかに存在する。
【0108】
図7においてプロットされるX線回折解析で、明らかに3つの結晶化した相、β−Sn(活性相)、Si(活性相)、及びBPO(不活性相)の存在がみられる。
【0109】
実施例1に関しては、アモルファス相のスズの存在は、図8に示される119Snのメスバウアー分光によって確認される。
【0110】
実施例2に記載されたようにテストされた材料は、約650mAh/gの可逆容量を有している。
【0111】
図9は、この種の電池の充電/放電特性を示す。
【0112】
[実施例7:Sn及びCaSiOをベースにした本発明による材料の製造]
この実施例では、活性相がSnからなって支持相がCaSiOである本発明による材料が、製造されている。このモル比率は、0.4CaSiO/1Snである。
【0113】
支持相CaSiOの合成は、前駆体Si(OC及びCa(NO)、4HOを用いたゾルゲル法によって、行った。このゲルの形状は、それから、80℃でオーブンにおいて乾燥して、そして1100℃で4時間溶融した。そして、実施例1に記載されているものと類似の方法によって材料を合成した。
【0114】
Sn及びCaSiOの割合は、それぞれ1437mg及び563mgである。その混合物は、アゲートモルタルにおいて微細に挽かれ、そして、不活性雰囲気(アルゴン)の下で、500℃でアルミニウム・ボートにおいて1/2時間加熱され、7時間の850℃で加熱される。
【0115】
得られた材料は、Snからなる活性相と支持相CaSiO(モル比率0.4CaSiO/1Sn)とを具備している。元素Ca、Sn、Si及びOからなる混合接触部が、支持相及び活性相の間に明らかに存在する。
【0116】
図10においてプロットされるX線回折解析で、明らかに3つの結晶化した相、の存在がみられる。すなわち、β−Sn(活性相)、CaSiO(不活性相)、及び、アモルファス相中にSnO及びCaSiSnOの結晶質の粒子を含んでいる複合ビトロセラミックの接触部、である。
【0117】
図11に示されるメスバウアー・スペクトルによって、様々な相の識別が可能である。サブスペクトル1は、活性相βSnの特徴を示す。アモルファス相のスズの存在は、サブスペクトル2の存在によって、確認される。サブスペクトル3及び4は、SnO及びCaSiSnOの特性を示す。
【0118】
実施例2に記載されたような試験をされた材料は、約650mAh/gの可逆容量を有している。図12は、この種の電池の充電/放電特性を示す。
【0119】
[実施例8:Sn、Si及びCaSiOをベースにした本発明による材料の製造]
この実施例では、活性相がSn及びSiの混合物からなって支持相がCaSiOである本発明による材料が、製造されている。モル比率は、1CaSiO/1Sn、1Siである。
【0120】
使用する方法は、実施例7に記載されているものである。Sn、Si及びCaSiOの割合は、それぞれ903mg、214mg及び883mgである。
【0121】
得られた材料は、Sn及びSiの混合物からなる活性相、及び、支持相CaSiO(モル比率1CaSiO/1Sn、1Si)、及び、元素Ca、Sn、Si、Oからなる混合接触部を有している。
【0122】
図13においてプロットされるX線回折解析で、明らかに3つの結晶相、β−Sn(活性相)、Si(活性相)及びCaSiO(不活性相)、の存在がみられる。
【0123】
実施例2に記載のような試験をされた材料は、約750mAh/gの可逆容量を有する。
【0124】
図14は、この種の電池の充電/放電特性を示す。
【0125】
[文献リスト]
[1] J.0. Besenhard et al. in J. Power Sources 68 (1997) 87.
[2] EP-A-0 651 450 - Y. Idota et al..
[3] Y.Idota et al., Science 276 (1997) 1395.
[4] I.A.Courney et al.,Electrochem.Soc.146 (1999) 59.
[5] G.R.Goward et al., Mater.Chem.10 (2000) 1241.
[6] J.Chouvin et al., Solid State Sciences 6 (2004) 39.
[7] M.Winter and J.0.Besenhard,Electrochemica Acta 45 (1999) 31.
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、Sn及びBPOをベースにした本発明による材料で得られたディフラクトグラム(Cu Ka)である。結晶体相BPO及びβSnに関係するピークが、アスタリスク及び正方形によってそれぞれ確認される。
【図2】図2(a及びb)は、本発明による材料上の119Snのメスバウアー・スペクトルである。(a)は非リチウム化されたときのものであり、(b)は第1の放電終了時のものである。非リチウム化された(a)の同一材料のスペクトルは、Sn(0)(曲線1)の存在を示し、そして、2つの異なる環境のSn(II)(曲線2及び3)の存在を示す。リチウム化された化合物(b)のスペクトルのコンポーネント(曲線1及び2)は、Li−Sn合金に寄与しうる。
【図3】図3は、非リチウム化された本発明の材料における後方散乱モードの走査電子顕微鏡学によって得られた写真である。
【図4】図4は、0.1〜1.2Vの範囲における、本発明の材料M2.5BPOの充電/放出ポテンシャルにおける変化であり、ここでM=Snである。この図において、「NLi」は介在するLiの数を示し、「P」はリチウム金属のポテンシャルに対するV(ボルト)でのポテンシャルであり、「Cs」はmAh/gでの重量測定におけるキャパシタンスである。
【図5】図5は、陰極材料として本発明の材料を使用しているリチウムイオン電池の実施例の線図である。
【図6】図6は、陰極材料として本発明の材料を使用しているリチウムイオン電池に対して充電/放電サイクルの数の関数としての質量のキャパシタンスの変化である。この図において、「C」は、mAh/gでの重量測定のキャパシタンスを表し、「Cy」はサイクル数を表す。
【図7】図7は、Sn、Si及びBPOをベースにした本発明による材料で得られたディフラクトグラム(Cu Ka)である。結晶相BPO、Sn及びSiに関連したピークは、アスタリスク、クロス及び円によってそれぞれ確認される。
【図8】図8は、Sn、Si及びBPOをベースにした本発明による材料上の119Snのメスバウアー・スペクトルである。スペクトルは、Sn(サブスペクトル1)及びSnII(サブスペクトル2)の存在を示す。
【図9】図9は、0.1〜1.2Vの範囲での、Sn、Si及びBPOをベースにした本発明による材料の充電/放電ポテンシャルの変化を示す。この図において、「NLi」は介在するLiの数を示し、「P」はリチウム金属のポテンシャルに対するV(ボルト)でのポテンシャルであり、「Cs」はmAh/gでの重量測定におけるキャパシタンスである。
【図10】図10は、Sn及びCaSiOをベースにした本発明による材料で得られたディフラクトグラム(Cu Ka)である。結晶相CaSiO、SnO、CaSnSiO及びSnに関連したピークは、アスタリスク、円、ポンド記号及びクロスによってそれぞれ確認される。
【図11】図11は、Sn及びCaSiOをベースにした本発明による材料上の119Snのメスバウアー・スペクトルである。スペクトルは、Sn(サブスペクトル1)SnII(サブスペクトル2)、SnO(サブスペクトル3)及びCaSnSiO(サブスペクトル4)の存在を示す。
【図12】図12は、0.1〜1.2Vの範囲での、Sn及びCaSiOをベースにした本発明による材料の充電/放電ポテンシャルの変化を示す。この図において、「NLi」は介在するLiの数を示し、「P」はリチウム金属のポテンシャルに対するV(ボルト)でのポテンシャルであり、「Cs」はmAh/gでの重量測定におけるキャパシタンスである。
【図13】図13は、Sn、Si及びCaSiOをベースにした本発明による材料で得られたディフラクトグラム(Cu Ka)である。結晶相CaSiO、Si及びSnに関連したピークは、アスタリスク、円及びクロスによってそれぞれ確認される。
【図14】図14は、0.1〜1.2Vの範囲での、Sn、Si及びCaSiOをベースにした本発明による材料の充電/放電ポテンシャルの変化を示す。この図において、「NLi」は介在するLiの数を示し、「P」はリチウム金属のポテンシャルに対するV(ボルト)でのポテンシャルであり、「Cs」はmAh/gでの重量測定におけるキャパシタンスである。
【符号の説明】
【0127】
1 正極缶
3 負極電池ターミナル
5 グローメット
7 アノード
9 セパレータ
11 カソードコレクタ
13 カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al、Si、Sn、Sb又はこれらの組合せを主成分とした材料Mからなる活性相と、材料Xからなる支持相と、を備える陰極材料であって、
Oは、酸素であり、
Yは、酸化度m=3、4、5又は6を有するカチオンであり、
Xは、酸化度d=1、2、3、4又は5を有するカチオンであって、Xの電気的中性を保証するものであり、
cは、2≦c≦10であり、
bは、1≦b≦4であり、
a=(2c−bm)/dであって、
前記活性相及び前記支持相の間に存在している混合組成物の接触部を備え、前記接触部は、元素M、X、Y及びOからなる、陰極材料。
【請求項2】
前記Yは、BIII、AlIII、SiIV、GeIV、P、Sb、SVI、又はこれらの組合せ、から選択される、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
(i)四面体ユニットYOを主成分とする化学式(Yを有する陰イオン複合体、及び/又は、
(ii)陰イオン存在物(Yの無限配列で形成される、連続的な一次元、二次元、又は三次元の連続格子、
を有し、
(i)、(ii)において、
n=bm−2c≦0であって、1≦b≦4で、mはYの酸化度であって、3、4、5又は6に等しく、そして、2≦c≦10である、請求項1に記載の材料。
【請求項4】
前記Xは、アルカリ元素、アルカリ土類元素、1及び5間の酸化度を有する遷移元素、酸化度3又は5を有する元素p、又はこれらの組合せ、から選択されるカチオンである、請求項1に記載の材料。
【請求項5】
前記M及び前記Xのモル比率[M]/[X]は、0.1及び100の間にある、請求項1に記載の材料。
【請求項6】
前記材料Mにおいて、元素Al、Si、Sn及びSbは、カーボンに最大1:1のモル比率で結合される、請求項1に記載の材料。
【請求項7】
支持相BPOと相互作用して、Sn、Si又はAl、又はこれらの組合せを主成分とする活性相Mと、
前記活性相及び前記支持相の間に存在している混合組成物の接触部と、を備え、
前記接触部は、元素M、B、P及びOからなる、材料。
【請求項8】
Al、Si、Sn、Sb又はこれらの組合せを主成分とした材料Mからなる活性相と、材料Xからなる支持相と、を備える、陰極材料を製造するための方法であって、
Oは、酸素であり、
Yは、酸化度m=3、4、5又は6を有するカチオンであり、
Xは、酸化度d=1、2、3、4又は5を有するカチオンであって、Xの電気的中性を保証するものであり、
cは、2≦c≦10であり、
bは、1≦b≦4であり、
a=(2c−bm)/dであって、
前記活性相及び前記支持相の間に存在している混合組成物の接触部を備え、前記接触部は、元素M、X、Y及びOからなり、
前記方法は、下記の段階を含み、
酸化物前駆体X及びYを混合すること、
酸化物前駆体X及びYの混合物を第1熱処理して材料Xを得ること、
前記得られた材料Xを冷却して、粉砕すること、
前記得られた粉砕された材料Xを前記活性相Mと混合すること、
前記材料Mに対して非酸化雰囲気下で、そして、前記材料Xの融点の下の温度であって、材料MがXと化学的に反応して前記活性相及び前記支持相の間に接触部を形成するための十分に高い温度で、第2熱処理して、これによって前記陰極材料を得ること、
前記得られた陰極材料を冷却すること、
を含む、方法。
【請求項9】
前記第1熱処理は、1から20℃/分の温度上昇の後で、2から12時間の間に、100から1200℃の温度で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記粉砕は、マイクロ・メートルサイズ及び/又はナノ・メートルサイズの粒子粒度分布を得るために、実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第2熱処理は、2から12時間の間に、不活性雰囲気下で、100から1200℃の温度で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記得られた材料は、外気温度での不活性雰囲気下で、急冷によって冷却される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記Yは、BIII、AlIII、SiIV、GeIV、P、Sb、SVI、又はこれらの組合せ、から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
(i)四面体ユニットYOを主成分とする化学式(Yを有する陰イオン複合体、及び/又は、
(ii)陰イオン存在物(Yの無限配列で形成される、連続的な一次元、二次元、又は三次元の連続格子、
を有し、
(i)、(ii)において、
n=bm−2c≦0であって、1≦b≦4で、mはYの酸化度であって、3、4、5又は6に等しく、そして、2≦c≦10である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記Xは、アルカリ元素、アルカリ土類元素、1及び5間の酸化度を有する遷移元素、酸化度3又は5を有する元素p、又はこれらの組合せ、から選択されるカチオンである、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記M及び前記Xのモル比率[M]/[X]は、0.1及び100の間にある、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記酸化物前駆体Xは、B及び/又はHBOであり、前記酸化物前駆体Yは、P及び/又はNHPOであり、製造された前記支持相Xは、BPOであり、前記混合組成物の接触部は、元素M、B、P及びOから成る、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記活性相M中において、元素Al、Si、Sn及びSbは、最大1:1のモル比率でカーボンと結合される、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
再充電可能なリチウムイオン電池の陰極であって、
請求項1に記載の材料を備えていることを特徴とする、陰極。
【請求項20】
少なくとも1つの陽極、少なくとも1つの陰極、電解質、を備える、再充電可能なリチウムイオン電池であって、
前記少なくとも1つの陰極は、請求項1による陰極を備える、
再充電可能なリチウムイオン電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−508670(P2008−508670A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523135(P2007−523135)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050627
【国際公開番号】WO2006/021714
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(500201613)センタ・ナショナル・デチュード・スパティアレ (5)
【出願人】(598118019)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (15)
【出願人】(307028839)ユニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエ・ドゥ (2)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
【Fターム(参考)】