説明

陰極酸化アルミニウムテンプレートを用いたリチウム添加シリカナノチューブの製造方法および貯蔵体としての用途

本発明は、陰極酸化アルミニウム(AAO)テンプレートを用いたリチウム添加シリカナノチューブの製造方法と製造されたリチウム−シリカナノチューブを用いたエネルギー貯蔵方法に関する。
本発明によるリチウム添加シリカナノチューブの製造方法は、従来における金属ナノチューブの製造方法とは異なり、穏やかな条件下でリチウム前駆体、シリカゾルと陰極酸化アルミニウムテンプレートを使用し、乾燥過程時に減圧乾燥することによりリチウム添加シリカゾルを陰極酸化アルミニウムテンプレートの表面に吸着させてナノチューブの形状を形成した後に維持し、これを乾燥することにより均一なサイズのナノチューブを容易に得ることができる。
本発明の製造方法により製作されたリチウム添加シリカナノチューブは、経済的な水素貯蔵体やリチウム2次電池の電極または自動車およびその他の移動エネルギーの貯蔵源として活用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム前駆体、シリカゾル及び陰極酸化アルミニウム(AAO;anodic aluminum oxide)テンプレートを用いて経済的で且つ効果的に製造可能なリチウム添加シリカナノチューブの製造方法と、該製造されたリチウム−シリカナノチューブを用いたエネルギー貯蔵に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極酸化アルミニウム(以下、「AAO」と略称する。)テンプレートを用いたナノ構造体の合成は、AAOテンプレートに化学的蒸着法を用いた炭素ナノチューブの合成、AAOテンプレートの内壁へのナトリウムナノチューブの形成、AAOテンプレートを用いたLiMnナノワイヤーの合成など、これまで多くの試みがなされてきている。
一般に、AAOテンプレートを用いたナノ構造体の製造方法(合成法)が有するメリットの一つは、製作されたナノ構造体の形状が真っ直ぐで且つ均一なシリンダー状を有し、しかも、高密度であるという点である。AAOテンプレートはナノチューブ/ナノ棒の生成反応に直接的に参与はしないものの、ナノ構造体の物理的な形状に多大な影響を及ぼす。
前記ナノ構造体は種々の用途にて種々の産業分野において活用可能であるが、代表的な用途としては、水素を貯蔵するエネルギー貯蔵体としての役割が挙げられる。
水素は地球上の水から得られ、燃焼後に再び水に循環することから、枯渇の可能性がほとんどない無限な清浄資源である。このように水素(エネルギー)は燃焼時に水以外のいかなる公害物質も発生させない清浄エネルギーであることから、各種の輸送手段や発電システムなど周りのほとんどの分野において利用可能である。
しかしながら、かような水素エネルギーの利用に当たっての問題点は、便利で且つ経済的であり、しかも安全な水素貯蔵システムが未だ開発されていないという点である。
伝統的な水素貯蔵法の一つとして、水素を高圧容器内に100気圧以上に圧縮・貯蔵する物理的な方法が挙げられるが、このような高圧容器を輸送手段に搭載して使用することは安全性の面から極めて危険である。水素を貯蔵する他の物理的な方法としては、水素を沸騰点(20.3K)以下の極低温において貯蔵する方法があるが、前記方法は水素の貯蔵体積をかなり低減することにより、多量の水素を貯蔵することが可能であるというメリットはあるが、極低温を維持するための付帯装置(冷凍装置)が必要となるため、経済的な側面から極めて不都合である。
一方、水素貯蔵合金を用いた化学的な貯蔵方法は、水素の貯蔵効率が高いというメリットがあるが、水素の貯蔵および放出を繰り返し行う場合に水素内の不純物により水素貯蔵合金の変形が伴われ、これにより、水素貯蔵容量が経時的に低減するという不都合がある。さらに、合金を水素貯蔵媒体として使用するため、単位体積当たりの重量が増大して輸送手段に搭載して使用することが決して容易ではないという短所がある。
水素を貯蔵するさらに他の方法としては、固体物質にガス相の水素を吸着させて貯蔵する方法がある。これらの吸着方法のうち、炭素ナノチューブやナノ構造の炭素材料を用いた水素貯蔵方法の効率に関する各種の報告書によれば、10重量%を遥かに上回る水素貯蔵効率を示しているとはいえ、これらの結果は再現性に欠くため、まだ盛んな研究がなされている。
上記の理由から、現在、アメリカエネルギー部(DOE)の水素貯蔵目標値である6.5重量%以上の水素貯蔵効率と上述した種々の問題点が排除された、安定性および経済性が確保された水素貯蔵方法を開発するための研究が盛んになされている。
ナノレベルの界面化学制御が核心技術である代表分野としては、リチウムイオン2次電池が挙げられる。リチウムイオン2次電池は他の電池よりも相対的に軽量であるだけではなく、エネルギー変換効率が高くて携帯用の小型電子機器の電力供給源として汎用されている。黒鉛を陰極材料とし、且つ、LiCoOを陽極材料として1991年に日本のソニー社において初めてリチウムイオン電池が商用化されて市場に上市して以来、より優れた性能を有する電極材料を開発するために全世界的に多くのグループ社が競争的に研究を行っている。小型電子製品の普及が拡大されるに伴い、電力供給源としてのリチウム2次電池に対する世界市場の規模も毎年30%以上増加中にある。LiCoOと炭素物質をそれぞれ陽極および陰極物質とするリチウムイオン電池が商用化されて以来、リチウムイオン電池は、現在最も汎用されている2次電池の一つとなっている。
リチウムイオン2次電池の構成要素のうち、最も重要な部分の一つは陽極であって、全体の研究論文の60%以上が陽極材料の合成と反応に関するものである。現在最も汎用されている陽極材料は、層状構造のLi(Co、Ni、Mn)Oとスピネル構造のLiMnなどの複合金属酸化物である。
リチウムイオン2次電池において、陽極の充放電容量は陽極材料の粒径と粒子構造によって異なってくる。すなわち、陽極材料の粒径が小さくなるほどリチウムイオンの拡散が高速になるため陽極の充放電容量を増大することができ、リチウムイオンの拡散が容易に起こる粒子構造を有する場合であっても陽極そのものの充放電容量を増大することができる。また、結晶構造の安定性は可逆性と密接な関連性を有するため、電池の寿命と密接な関係がある。結局、異物がなく、且つ、結晶性に優れた粉末を製造することが電池の性能を左右する鍵となる。
しかしながら、従来の複合金属酸化物を製造する方法は複雑な多段階を経、しかも、多大な設備と時間を要するという短所がある。また、既存の複合金属酸化物に対する合成法は合成温度が高く、反応物の粒径が比較的に大きい他、生成される粒子の形状や表面特性などの物理的性質を調節することが困難であり、しかも、酸化物などの限定された出発物質を使用することを余儀なくされる。このため、リチウムのドープされたナノチューブ形状の純粋な化合物が簡単な製造方法により得られる限り、リチウム2次電池の陽極材料として利用することができると予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の技術的課題の一つは、リチウム前駆体添加のシリカゾルと陰極酸化アルミニウムテンプレートを用いて穏やかな条件下で均一なナノ寸法の気孔を有するリチウム添加シリカナノチューブを効率よく製造可能な方法を提供するところにある。
本発明が解決しようとする他の技術的な課題は、前記製造方法により製造されたリチウム添加シリカナノチューブを用いて、従来の水素貯蔵法よりも水素の貯蔵効率が高くて且つ安全であり、しかも再現性にも優れた経済的な水素貯蔵方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明は、(A)AAOテンプレートをリチウム前駆体添加のシリカゾル溶液に漬持して、リチウム前駆体とシリカゾルをAAOテンプレートに吸着させる浸漬過程と、(B)リチウム前駆体およびシリカゾルの吸着されたAAOテンプレートを溶液相から分離した後に減圧乾燥して、AAOに吸着されたリチウム前駆体とシリカゾルを除く残部を除去する減圧乾燥過程と、(C)乾燥されたリチウム前駆体およびシリカゲルの吸着されたAAOテンプレートを酸素存在下において熱処理して、表面に吸着されたリチウム前駆体とシリカゲルを酸化させる酸化過程と、(D)前記酸化されたリチウム前駆体およびシリカゲル吸着のAAOテンプレートをNaOHまたはKOH水溶液に漬持して、AAOテンプレートのみを溶解する溶解過程と、(E)前記溶解過程において生成されたAAO溶液と固体状のリチウム添加シリカナノチューブを固液分離するろ過過程と、(F)AAOから分離されたリチウム添加シリカナノチューブを乾燥する乾燥過程と、(G)乾燥過程において水分の除去されたリチウム添加シリカナノチューブをか焼するか焼過程と、を含むことを特徴とするリチウム添加シリカナノチューブの製造方法によりリチウム添加シリカナノチューブが製造されることを特徴とする。
前記シリカゾル溶液は、シリカ前駆体をアルコールおよび/または水に攪拌して重合することにより製造することができる。塩酸は前記反応の触媒として働くため、前記反応液への投入時よりも早い時間内にシリカゾル溶液を製造することが可能になる。前記シリカ前駆体の例としてはテトラアルコキシシランが挙げられ、このとき、アルコキシ基はC1〜C5の直鎖または側鎖のアルコキシ基であることが好ましい。また、AAOテンプレートに吸着されて乾燥および酸化過程においてシリカを形成可能なものであれば、いかなるものもシリカ前駆体として使用することができ、本発明がテトラアルコキシシランに限定されることはない。
この実施例においては、前記リチウム前駆体としてLiNOを使用しているが、AAOテンプレートに吸着されて乾燥過程において酸化リチウムを形成可能であり、しかも、蒸留水に溶解可能なものであればいかなるものも使用可能であり、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、リチウムの水酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩または硫黄酸塩などのリチウム塩もリチウム添加シリカナノチューブの製造に使用可能であることは当業者にとって自明である。シリコン前駆体:リチウム前駆体のモル比は1:(1〜10)であることが好ましい。さらに好ましくは、リチウム前駆体がシリコン前駆体に対して1:(1〜3)のモル比にて添加される。
この実施例によれば、従来のナノチューブの製造工程とは異なり、穏やかな条件下においてナノ寸法の均一な気孔を有するリチウム添加シリカナノチューブを合成することができる。
また、AAOテンプレートとしては、気孔径が180〜250nmであり、且つ、厚さが40〜80μmであるAAOテンプレートを使用することが好ましい。平均気孔が180nm以下のテンプレートを使用すれば、チューブの形状が正常に形成されない。これに対し、気孔が250nm以上のAAOテンプレートは、ナノ構造体、特にエネルギー貯蔵体として使用するためのナノ構造体を形成する上で気孔径があまりにも大きいため意味がない。
前記浸漬過程において、リチウム添加シリカゾルは、AAOテンプレートを十分に濡らせる程度の量を使用しなければならないため、テンプレートのサイズに応じて使用量が決定される。テンプレートが完全に濡らされていなければ、濡らされていない個所にリチウム添加シリカゾルが吸着されないため、完全に濡らせる程度のリチウム添加シリカゾルを十分に使用しなければならない。リチウム添加シリカゾルは、吸着されずに残留した分はろ過過程において除去されるため、過量に使用しても構わないが、この場合、経済的な観点から損失が多いため、AAOテンプレートのサイズを考慮して適量を使用することが好ましい。前記浸漬過程は、常温下において1〜5時間行われることが好ましい。
【0005】
前記減圧乾燥過程は、40〜80℃の温度範囲内において2〜5時間行われることが好ましい。乾燥温度が低過ぎたり、乾燥時間が短過ぎたりすると、乾燥が十分に行われない。AAOテンプレートに残留する水分を減圧乾燥した後に酸化させなければ、リチウム添加シリカナノチューブを製造することができず、水分が十分に減圧乾燥されなければ、ナノチューブが形成されない。減圧乾燥時に乾燥温度が高かったり、乾燥時間が長引いたりすることはナノチューブ形状の形成には影響しないが、効率が低下するという不都合がある。
リチウム添加シリカゲルを酸化させるための前記酸化過程は、吸着されたリチウム添加シリカゲルを十分に酸化させるように、酸素存在下、80〜150℃の温度範囲内において1〜4時間行われることが好ましい。前記「酸素存在下」とは、熱処理時にシリコン前駆体と反応する酸素が必ず存在しなければならないことを意味する。このため、酸素の供給のためには、酸素ガスを乾燥機の内部に充填して熱処理することもできるが、経済的な負担が伴われるため、単に空気の存在下において熱処理するだけでも十分である。
前記溶解過程において使われるNaOHまたはKOH水溶液は、その濃度が1〜5Mの水溶液であることが好ましく、AAOテンプレートを十分に溶解できるようにAAO0.174g当たりに50mL以上の水溶液を使用することが好ましい。
溶解過程において溶液状態となったAAOテンプレートは、ろ過過程において固体の状態で残留しているリチウム添加シリカナノチューブから分離される。AAOテンプレートが溶解されているNaOHまたはKOH溶液がナノチューブに残留しないように、ろ過過程において精精水を用いて十分に洗浄する。
本発明による上記のろ過過程により得られたリチウム添加シリカナノチューブは、ろ過時に水分が少量残留しているため、これを除去するために80〜150℃の温度範囲内において1〜4時間処理して乾燥する。乾燥後に450〜550℃の温度範囲内において2〜3時間か焼すれば、より効率よく水分を除去することが可能になるだけではなく、残留する不純物をも除去することができる。
本発明によるリチウム添加シリカナノチューブは、エネルギー貯蔵物質、すなわち、リチウムイオン2次電池物質および水素を貯蔵可能な水素貯蔵物質として応用可能である。特に、本発明のリチウム添加シリカナノチューブは、リチウム未添加のシリカナノチューブに比べて、水素貯蔵能が約2.5倍向上されて、リチウムの添加が水素貯蔵能の向上に顕著な効果をもたらすことを確認することができた。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、リチウム添加シリカナノチューブの製造に当たって、リチウム前駆体、シリカゾルおよびAAOテンプレートだけを用いて穏やかな条件下で所定のサイズのナノチューブを製造することができる。
また、本発明の製造方法により得られたリチウム添加シリカナノチューブによれば、比表面積が広くて相対的に小さな体積内に大量にて水素を貯蔵することができ、これを安全に輸送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】は、本発明の一実施例によるリチウム添加シリカナノチューブの走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】は、本発明の一実施例によるリチウム添加シリカナノチューブの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図3】は、本発明の一比較例によるシリカナノチューブのSEM写真である。
【図4】は、本発明の一比較例によるシリカナノチューブのX−レイ回折を示すグラフである。
【図5】は、製造されたリチウム添加シリカナノチューブの水素貯蔵量の測定のためのRUBOTHERM装置の写真である。
【図6】は、本発明の比較例によるシリカナノチューブの水素吸着量評価グラフである。
【図7】は、本発明の実施例によるリチウム添加シリカナノチューブの水素吸着量評価グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面および下記の実施例に基づいて、本発明の構成および作用・効果を詳述する。ここで、下記の実施例は単なる例示的なものに過ぎず、本発明の保護範囲が下記の実施例の範囲に縮小・限定されることはない。
【実施例1】
【0009】
リチウム添加シリカナノチューブの製造
先ず、23gのテトラエトキシシラン(TEOS、アルドリッチ社製)、5gのエタノール(メルク社製)、5.9gの蒸留水と2.2gの0.1MHCl(アルドリッチ社製)を混ぜた後、約70℃の温度において5分間激しく混合して反応した。反応が完了した時点で、不透明なシリカ混合液がシリカゾルを形成して透明に変化していた。前記シリカゾルに、10mLのエタノールに3.1gのLiNO(アルドリッチ社製 、99.9%)を溶かしたリチウム前駆体溶液を添加してリチウム添加シリカゾルを製造した。
前記リチウム添加シリカゾルに4.35gのAAO(Anodisc47、ワットマン社製)テンプレートを2時間かけて浸漬した。前記Anodisc47の主成分は陰極酸化アルミニウム(anodisc aluminum oxide;AAO)であり、主な物理的性質を表1に示す。この後、AAOテンプレートを溶液から分離し、AAOテンプレートと吸着できなかったリチウム添加シリカゾルを除去するために40℃の減圧乾燥機により4時間乾燥した。乾燥されたAAOテンプレートは、十分に酸化させるために、空気の雰囲気下、100℃の温度において2時間乾燥した。乾燥されたAAOテンプレートからリチウム添加シリカナノチューブだけを得るために、1MNaOH溶液に3時間浸漬した後、NaOH溶液に溶解されているアルミナメンブレインを蒸留水により数回に亘って繰り返し除去した。ろ過後に得られたリチウム添加シリカナノチューブは、空気の雰囲気下、100℃の乾燥機において3時間乾燥し、乾燥されたリチウム添加シリカナノチューブを500℃の空気雰囲気下の電気炉において2時間か焼させる過程を経て、約50んm厚の壁を有するリチウム添加シリカナノチューブを製造した。
図1及び図2は、この実施例の製造方法に従い製造されたリチウム添加シリカナノチューブのSEM写真及びTEM写真を示すものであり、同写真から明らかなように、この実施例1に従い製造されたリチウム添加シリカナノチューブは、約50nm厚のチューブ壁を形成し、所定のサイズを有しているだけではなく、表面積も極めて広くて水素を貯蔵する上で極めて有利な構造である。
比較例:シリカゾルのみを用いたシリカナノチューブの製造。
シリカゾルにLiClを添加しなかった以外は、上記の実施例の方法と同様にしてシリカナノチューブを製造した。
図3は、この比較例の製造方法に従い製作されたシリカナノチューブのSEM写真を示すものであり、同写真から明らかなように、この比較例に従い製造されたシリカナノチューブも約50nmのチューブ壁を形成し、所定のサイズを有しているだけではなく、一定方向に揃っている。
図4は、500℃の温度においてか焼したシリカナノチューブのX−レイ回折グラフを示すものである。約20−35°の温度において単一の広いピークだけが観察された。これより、シリカナノチューブの構造が無定形であることが分かる。
【実施例2】
【0010】
ナノチューブの水素貯蔵量の測定。
比較例によるシリカナノチューブおよび実施例1に従い製造されたリチウム添加シリカナノチューブに対し、下記の方法により水素貯蔵量を測定した。図5から明らかなように、先ず、高圧(135bar)と高温(525K)において吸着等温実験が行えるRUBOTHERMシステム(分析のためのバランス、磁気的カップリングと吸着チャンバーから構成されている)を利用した。
水素貯蔵量の測定のためのサンプルは、サンプル内の異物を除去するために、298Kの温度、10−3paの圧力において12時間真空状態を維持した。
先ず、サンプルの水素貯蔵量を測定するときには、常にそのサンプルの体積に対する浮力効果に対して校正をしなければならない。このようなサンプルの体積に対する浮力効果は、サンプルに不活性ガス(ヘリウムまたは窒素)を吹き込むことにより測定した。
水素吸着のキネチック測定のための手順は簡単である。少量の水素が吸着チャンバーに流れ込んだ後、質量と圧力に対する平衡テストを行った。この圧力と温度は、水素貯蔵測定装置に接続されているコンピュータにデータファイルとしてリアルタイムにて格納される。これらのデータは浮力効果に対する値に補正した。
水素の吸着量の測定については、シリカナノチューブの場合には77Kにおいて圧力変化による水素吸着量を測定して図6に示し、リチウム添加シリカナノチューブの場合には45bar、77Kにおいて経時による水素吸着量を測定して図7に示す。
図6から明らかなように、圧力の変化による水素貯蔵結果において、シリカナノチューブは77K、15barにおいて最大1.0wt%の水素が吸着され、45barにおいては約0.88wtの水素が吸着された。
これに対し、リチウム添加シリカナノチューブの場合には、図6から明らかなように、77Kの温度と45barにおいては2.16wt%の水素が吸着されて、水素貯蔵能がリチウム添加前に比べて2倍以上増大された。また、水素ガスがリチウム添加シリカナノチューブサンプルの入っているチャンバーに導入されてから約2分後に既に水素貯蔵の飽和量に達することが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明によれば、リチウム添加シリカナノチューブの製造に当たって、リチウム前駆体、シリカゾルおよびAAOテンプレートのみを用いて穏やかな条件下で所定のサイズのナノチューブを製造することができる。
また、本発明によるリチウム添加シリカナノチューブは、エネルギー貯蔵物質、すなわち、リチウムイオン2次電池物質および水素を貯蔵可能な水素貯蔵物質として応用可能である。特に、本発明のリチウム添加シリカナノチューブは、リチウム未添加のシリカナノチューブに比べて水素貯蔵能が約2.5倍向上されて、リチウムの添加が水素貯蔵能の向上に顕著な効果をもたらすことを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)AAOテンプレートをリチウム前駆体添加のシリカゾル溶液に漬持して、リチウム前駆体とシリカゾルをAAOテンプレートに吸着させる浸漬過程と、
(B)リチウム前駆体およびシリカゾルの吸着されたAAOテンプレートを溶液相から分離した後に減圧乾燥して、AAOに吸着されたリチウム前駆体とシリカゾルを除く残部を除去する減圧乾燥過程と、
(C)乾燥されたリチウム前駆体およびシリカゲルの吸着されたAAOテンプレートを酸素存在下において熱処理して、表面に吸着されたリチウム前駆体とシリカゲルを酸化させる酸化過程と、
(D)前記酸化されたリチウム前駆体およびシリカゲル吸着のAAOテンプレートをNaOHまたはKOH水溶液に漬持して、AAOテンプレートのみを溶解する溶解過程と、
(E)前記溶解過程において生成されたAAO溶液と固体状のリチウム添加シリカナノチューブを固液分離するろ過過程と、
(F)AAOから分離されたリチウム添加シリカナノチューブを乾燥する乾燥過程と、
(G)乾燥過程において水分の除去されたリチウム添加シリカナノチューブをか焼するか焼過程と、
を含むことを特徴とするリチウム添加シリカナノチューブの製造方法。
【請求項2】
前記リチウム前駆体は、リチウムの水酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩または硫黄酸塩よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の塩であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム添加シリカナノチューブの製造方法。
【請求項3】
前記陰極酸化アルミニウムテンプレートは、気孔径が180〜250nmであり、且つ、厚さが40〜80μmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム添加シリカナノチューブの製造方法。
【請求項4】
前記減圧乾燥過程は、40〜80℃の温度範囲内において2〜5時間行われることを特徴とする請求項1に記載のリチウム添加シリカナノチューブの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法により製造されたリチウム添加シリカナノチューブの水素貯蔵体としての用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−509169(P2010−509169A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536149(P2009−536149)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/KR2007/004971
【国際公開番号】WO2008/056891
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(509115605)コリア ベイシック サイエンス インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】