説明

陶磁器タイルの敷設方法

【課題】 木質床下地材上に貼合され敷設された陶磁器タイルの割れを防止する。
【解決手段】 木質床下地材上に、特定の接着剤を用いて陶磁器タイルを貼合し敷設する方法を採用することによって、上記課題を解決する。特定の接着剤は、ウレタンプレポリマー(A)20〜40質量%と、無機質充填材(B)55〜70質量%と、クルードMDI(C)1〜10質量%よりなる1液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤である。ウレタンプレポリマー(A)は、ポリオキシプロピレンポリオールとイソシアネートとを反応させて得られたNCO%が5〜10質量%であるウレタンプレポリマー(a1)70〜95質量%と、ひまし油系ポリオールとイソシアネートとを反応させて得られたNCO%が15〜20質量%であるウレタンプレポリマー(a2)5〜30質量%との混合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質床下地材上に接着剤を用いて陶磁器タイルを貼合して敷設する方法に関し、特に敷設後において陶磁器タイルの割れを防止する敷設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陶磁器タイルが敷設されてなる床表面は、見た目の高級感や敷設後のメンテナンスのし易さ等の理由から需要が増大している。たとえば、ホテルやビルのロビー、アパレル店舗やコンビニエンスストア等の商用施設、戸建て住宅やマンション等の住居等に広く採用されている。陶磁器タイルの敷設は、床下地材にモルタル等のセメント系接着剤を用いて陶磁器タイルを貼合することによって行われている。しかしながら、セメント系接着剤は接着力が相対的に低く、陶磁器タイルの剥がれ、或いは剥がれによる浮き、或いは陶磁器タイルの割れが生じやすく問題となっていた。
【0003】
このため、近年ではセメント系接着剤に比べて接着力の高い有機系接着剤を用いて、床下地材と陶磁器タイルを貼合することが行われている。しかし、有機系接着剤はセメント系接着剤に比べて弾力性があり、敷設後の陶磁器タイルに衝撃や荷重が加わった際に、陶磁器タイルが割れやすいという欠点があった。すなわち、木質製の変形しやすい床下地材上に陶磁器タイルを敷設すると、陶磁器タイル表面から下方へ向けて衝撃や荷重が負荷されると、床下地材が下方へ撓むことになる。陶磁器タイルと床下地材の間に存在する有機系接着剤層は弾力性があるため、床下地材と同様に下方へ撓むことになる。しかし、陶磁器タイルは剛直であるため、有機系接着剤層に追随して撓むことができず、この結果、陶磁器タイルに割れが生じるということになる。なお、床下地材としてコンクリート製の変形しにくいものを採用したときには、床下地材が撓みにくく、上記したような欠点は生じにくい。
【0004】
上記した欠点を解決するために、特許文献1では、弾力性接着剤層の一部に剛直な金属板を挿入することが提案されている。すなわち、木質床下地材のつなぎ目部位、つまり最も床下地材が下方へ撓みやすい部位に、金属板を挿入し、床下地材が下方へ撓むのを防止し、もって陶磁器タイルの割れを防止することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4100136号公報(特許請求の範囲及び図面)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、特許文献1と同様に、陶磁器タイルの割れを防止することにある。しかしながら、課題解決の原理が特許文献1とは異なる。すなわち、本発明は、有機系接着剤でありながら、硬化して皮膜状接着剤層となったときに、弾力性を低下させ剛直にすることによって、陶磁器タイルの割れを防止しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、木質床下地材と陶磁器タイルとを接着剤で貼合して、該陶磁器タイルを該木質床下地材上に敷設する陶磁器タイルの敷設方法において、前記接着剤として、ウレタンプレポリマー(A)20〜40質量%と、無機質充填材(B)55〜70質量%と、クルードMDI(C)1〜10質量%よりなる組成物であって、該ウレタンプレポリマー(A)が、ポリオキシプロピレンポリオールとイソシアネートとを反応させて得られたNCO%が5〜10質量%であるウレタンプレポリマー(a1)70〜95質量%と、ひまし油系ポリオールとイソシアネートとを反応させて得られたNCO%が15〜20質量%であるウレタンプレポリマー(a2)5〜30質量%との混合物である1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いることを特徴とする陶磁器タイルの敷設方法に関するものである。また、かかる陶磁器タイルの敷設方法に用いる1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤及びかかる陶磁器タイルの敷設方法で得られた床構造体に関するものである。
【0008】
木質床下地材としては、従来公知の合板等が用いられる。木質床下地材の下方には、従来公知のように、根太組み等がなされている。また、木質床下地材の下方に、床暖房パネルが挿入されていてもよい。床暖房パネルが挿入されている場合、根太組みの上に木質下地材が置かれ、その上に床暖房パネルが置かれ、さらに床暖房パネルの上に木質系床下地材が置かれるのが一般的である。いずれにしても、本発明では、木質床下地材の下方の構造は、いかなる構造であっても差し支えない。
【0009】
本発明においては、木質床下地材上に接着剤が塗布されて、当該接着剤によって陶磁器タイルを貼合する。陶磁器タイルは、一般的にタイルと呼ばれているもので、適宜の大きさのものを用いることができる。接着剤としては、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤が用いられる。この接着剤は、ウレタンプレポリマー(A)20〜40質量%と、無機質充填材(B)55〜70質量%と、クルードMDI(C)1〜10質量%よりなる組成物からなっている。なお、各成分の質量%は、ウレタンプレポリマー(A)と無機質充填材(B)とクルードMDI(C)の合計を100質量%にしたときのものである。以下、各成分について詳述する。
【0010】
ウレタンプレポリマー(A)は20〜40質量%含有されている。ウレタンプレポリマー(A)は、陶磁器タイル敷設後の接着剤層における母体となるものであるから、この程度の割合で含有されている必要がある。ウレタンプレポリマー(A)が20質量%未満となると、相対的に無機質充填材(B)の量が多くなって接着力が低下し、その結果、密着不良が生じて陶磁器タイルと接着剤層との間に空隙が生じる恐れがあり、陶磁器タイルに割れが生じやすくなるので、好ましくない。また、ウレタンプレポリマー(A)が40質量%を超えると、相対的に無機質充填材(B)の量が少なくなって、陶磁器タイル敷設後の接着剤層が高弾力性となり、陶磁器タイルに割れが生じやすくなるので、好ましくない。
【0011】
ウレタンプレポリマー(A)は、ポリオキシプロピレンポリオールとイソシアネートとを反応させて得られたNCO%が5〜10質量%であるウレタンプレポリマー(a1)70〜95質量%と、ひまし油系ポリオールとイソシアネートとを反応させて得られたNCO%が15〜20質量%であるウレタンプレポリマー(a2)5〜30質量%との混合物である。ポリオキシプロピレンポリオールとしては、分子量が1000〜5000程度のものが用いられる。ここで、ポリオキシプロピレンポリオールとは、プロピレングリコールやグリセリン等のジオール又はトリオールを出発原料とし、これにプロピレンオキシドを適宜のモル数で付加したものである。ひまし油系ポリオールとしては、分子量が400〜3000程度のものが用いられる。ここで、ひまし油系ポリオールとは、グリセリンとリシノレイン酸とのエステル化物であるひまし油を出発原料とし、これにオキシアルキレンや芳香族などにより変性したポリオール化合物又は変性していないポリオール化合物を指す。ひまし油系ポリオールは多くの市販品があり、これを使用することができる。具体的には、URIC H−30、URIC H−31、URIC H−52、URIC H−57、URIC H−62、URIC H−73X、URIC H−81、URIC H−102、URIC H−420、URIC H−854、URIC Y−202、URIC Y−403、URIC Y−406、URIC Y−332、URIC AC−005、URIC AC−006、URIC H−368、URIC PH−5001、URIC PH−5002、URIC SE−2606、URIC SE−3506、URIC F−15、URIC F−25、URIC F−40(以上、伊藤製油株式会社製/商品名)、TLM、LAV、LM−R、ELA−DR、HS 3G−100M、HS 3G−500B、HS PPE−12H、HS KA−001、HS CO−MG(以上、豊国製油株式会社製/商品名)等が挙げられる。イソシアネートとしては、従来公知のポリイソシアネート化合物が用いられる。たとえば、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族又は芳香族ポリイソシアネート系化合物が用いられる。一般的には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが用いられる。
【0012】
ウレタンプレポリマー(a1)は、ポリオキシプロピレン骨格を持つもので、空気中に存在する水分との親和性が高く、これを呼び込みやすいため、NCO%を相対的に少なくした。すなわち、水分を呼び込みやすいウレタンプレポリマー(a1)は、水分とNCO基とが反応して炭酸ガスを発生しやすく、陶磁器タイル敷設時に接着剤層が膨張して、その厚さが変化するということがある。このような変化が起こると、敷設した陶磁器タイルの面一が損なわれ、仕上がりの美観を損なうという欠点が生じる。したがって、ウレタンプレポリマー(a1)のNCO%は5〜10質量%としたのである。一方、ウレタンプレポリマー(a2)は、ひまし油系ポリオールであり、ひまし油骨格は空気中に存在する水分との親和性が低く、これを呼び込みにくいものであるため、NCO%を相対的に多くした。すなわち、水分を呼び込みにくいウレタンプレポリマー(a2)は、硬化速度が遅いため炭酸ガスを発生しにくく、上記したような仕上がりの美観を損なうことが少ない。したがって、ウレタンプレポリマー(a2)のNCO%は15〜20質量%としたのである。
【0013】
硬化速度の速いウレタンプレポリマー(a1)と、炭酸ガスを発生しにくいウレタンプレポリマー(a2)とを混合することにより、適当な硬化速度と炭酸ガスの発生を抑制したのであるが、両者の混合割合も、この観点から一定の範囲内とした。すなわち、ウレタンプレポリマー(a1):ウレタンプレポリマー(a2)=70〜95:30〜5(質量%)とした。ウレタンプレポリマー(a1)の量が70質量%未満となったり、或いはウレタンプレポリマー(a2)の量が30質量%を超えると、硬化速度が遅くなるので好ましくない。また、ウレタンプレポリマー(a1)の量が95質量%を超えたり、或いはウレタンプレポリマー(a2)の量が5質量%未満になると、炭酸ガスが発生しやすくなり、仕上がりの美観を損なうので、好ましくない。
【0014】
無機質充填材(B)としては、従来公知のものが用いられる。具体的には、重質炭酸カルシウム粉末、軽質炭酸カルシウム粉末、表面処理された重質又は軽質炭酸カルシウム粉末等の炭酸カルシウム系充填材;シラスバルーン、ガラスバルーン(中空ガラス粉末)、セラミックバルーン等の中空無機系充填材;中実の珪砂(珪砂5号,珪砂7号,珪砂8号等)や中実ガラス粉末等の中実無機系充填材等が単独で又は混合して用いられる。好ましいのは、重質炭酸カルシウム粉末(b1)30〜50質量%、表面処理を施した軽質炭酸カルシウム粉末(b2)20〜50質量%及びガラス粉末(b3)0.5〜5質量%を混合したものである。重質炭酸カルシウム粉末(b1)の量が30質量%未満であると、陶磁器タイル敷設後の接着剤層が高弾力性となる傾向が生じる。重質炭酸カルシウム粉末(b1)の量が50質量%を超えると、塗布性等の作業性が低下する傾向が生じる。表面処理を施した軽質炭酸カルシウム粉末(b2)の量が20質量%未満であると、塗布性等の作業性が低下する傾向が生じる。表面処理を施した軽質炭酸カルシウム粉末(b2)の量が50質量%を超えると、陶磁器タイル敷設後の接着剤層が高弾力性となる傾向が生じる。ガラス粉末(b3)の量が0.5質量%未満であると、陶磁器タイル敷設後の接着剤層の剛直性が低下し、陶磁器タイルが割れやすくなる傾向が生じる。ガラス粉末(b3)の量が5質量%を超えると、塗布性等の作業性が低下する傾向が生じる。なお、表面処理を施した軽質炭酸カルシウム粉末(b2)は、軽質炭酸カルシウム粉末の表面を、親油性を増加させるため脂肪酸(塩)等のカルボン酸(塩)や界面活性剤等で処理したもので、分散性を高めたものである。また、ガラス粉末(b3)としては、中空ガラス粉末を用いるのが好ましい。
【0015】
無機質充填材(B)は、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤中に55〜70質量%含有されている。無機質充填材(B)の量が55質量%未満になると、陶磁器タイル敷設後の接着剤層の剛直性が低下し、陶磁器タイルに割れが生じやすくなるので、好ましくない。無機質充填材(B)の量が70質量%を超えると、相対的にウレタンプレポリマー(A)の量が少なくなって接着力が低下し、その結果、密着不良が生じて陶磁器タイルと接着剤層との間に空隙が生じる恐れがあり、陶磁器タイルに割れが生じやすくなるので、好ましくない。なお、無機質充填材(B)にはイソシアネート化合物と反応する水分を含有することがあるため、含水率が0.2%以下、好ましくは0.1%以下となるように脱水処理を行ってから添加含有するのが好ましい。
【0016】
クルードMDI(C)はポリメリックMDIのことであり、一般に市販されている公知のものが用いられる。クルードMDI(C)の具体的内容は、ジフェニルメタンジイソシアネートとベンゼン核を3個以上持つポリフェニルメタンポリイソシアネートとの混合物である。クルードMDI(C)は、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤中に1〜10質量%含有されている。クルードMDI(C)の量が1質量%未満であると、硬化時におけるウレタンプレポリマー(A)との架橋の程度が低下し、陶磁器タイル敷設後の接着剤層の剛直性が低下して、陶磁器タイルに割れが生じやすくなるので、好ましくない。クルードMDI(C)の量が10質量%を超えると、接着剤中のNCO%が高くなり、接着剤の硬化時に炭酸ガスが発生しやすくなる。したがって、接着剤層の厚さが変化し、陶磁器タイルが面一に敷設しにくくなり、仕上がりの美観を損なうので、好ましくない。
【0017】
1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤中には、ウレタンプレポリマー(A)、無機質充填材(B)及びクルードMDI(C)の他に、若干量の任意の成分が含有されていてもよい。たとえば、接着剤中の水分を除去するための脱水剤や、接着剤の粘度を調整するための希釈剤が含有されていてもよい。
【0018】
上記した1液湿気硬化ウレタン樹脂系接着剤を、主として床下地材上に塗布した(場合によっては或いは追加的に、陶磁器タイルの裏面に塗布した)後、そこに陶磁器タイルを貼合しながら敷設することにより、タイル貼りされた床表面が得られる。すなわち、塗布及び敷設後に、接着剤が硬化して、床下地材と陶磁器タイルとが強固に接着されて、タイル貼りされた床表面が得られるのである。接着剤の塗布量は1.5〜2.5kg/m2程度であり、接着剤層の厚さは1.0〜3.0mm程度である。接着剤の塗布量が1.5kg/m2未満になると、硬化後の接着剤層の厚さが薄くなり、接着剤層の剛直性が低下し、陶磁器タイルに割れが生じやすくなる。また、接着剤の塗布量を2.5kg/m2超としても、剛直性や接着力がさほど変わらず、接着剤が無駄になる。以上のようにして得られた床は、木質床下地材、接着剤層及び陶磁器タイルの順で積層されてなる床構造体となっている。木質床下地材の下方は、たとえば根太上にさらに合板が置かれていたり、床暖房パネルが置かれていたり、従来公知の各種の構造となっている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る陶磁器タイルの敷設方法は、木質床下地材と陶磁器タイルとを、特定のウレタンプレポリマー(A)、無機質充填材(B)及びクルードMDI(C)が特定の配合量で含有されてなる1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤で貼合して敷設するものである。そして、硬化後の接着剤層がある程度の剛直性を持っているため、陶磁器タイル面から衝撃等の負荷がかかって木質床下地材が撓んでも、この撓みに追随して撓みにくくなる。したがって、陶磁器タイルの撓みも少なくなり、陶磁器タイルに割れが生じにくいという効果を奏する。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、木質床下地材と陶磁器タイルとを、特定の1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤で貼合して敷設したため、陶磁器タイルに衝撃等の負荷がかかっても、陶磁器タイルに割れが生じにくくなるという技術的思想に基づくものであるとして解釈されるべきである。
【0021】
[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(1)の調製]
2Lのプラネタリーミキサーに、ポリオキシプロピレンポリオール(分子量約4000:三井化学製、商品名「アクトコールD−4000」)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業製、商品名「ミリオネートMT」)とを反応させて得られたNCO%が5質量%であるウレタンプレポリマー(a1)300質量部と、ひまし油系ポリオール(分子量約1000:伊藤製油製、商品名「URIC H−30」)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させて得られたNCO%が17質量%であるウレタンプレポリマー(a2)50部を投入し、混合してウレタンプレポリマー(A)350質量部を得た。その後、ウレタンプレポリマー(A)350質量部に、重質炭酸カルシウム粉末(b1)(日東粉化工業株式会社製、商品名「NS100」)400質量部と、表面処理軽質炭酸カルシウム粉末(b2)(丸尾カルシウム株式会社製、商品名「シーレッツ200」)200質量部と、クルードMDI(C)(Bayer社製、商品名「44V20」)30質量部と、脱水剤であるパラトルエンスルホニルイソシアネート(PTSI)(Vandemark社製)3質量部と、希釈剤であるイソパラフィン系炭化水素(出光興産株式会社製、商品名「IPソルベント1620」)60質量部とを添加混合して、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(1)を調製した。
【0022】
[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(2)の調製]
ウレタンプレポリマー(A)350質量部に、さらにガラスバルーン(b3)(住友スリーエム株式会社製、商品名「グラスバブルズS22」)10質量部添加することを付加する他は、前記[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(1)の調製]と同様にして、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(2)を調製した。
【0023】
[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(3)の調製]
ポリオキシプロピレンポリオール(分子量約4000)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させて得られたNCO%が5質量%であるウレタンプレポリマー(a1)に代えて、ポリオキシプロピレンポリオール(分子量約2000:三井化学製、商品名「アクトコールD−2000」)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させて得られたNCO%が10質量%であるウレタンプレポリマー(a1)を用いる他は、前記[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(1)の調製]と同様にして、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(3)を調製した。
【0024】
[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(4)の調製]
ウレタンプレポリマー(a2)を用いずに、かつ、ウレタンプレポリマー(a1)の使用量を300質量部から350質量部に変更した他は、前記[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(1)の調製]と同様にして、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(4)を調製した。
【0025】
[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(5)の調製]
ウレタンプレポリマー(a1)を用いずに、かつ、ウレタンプレポリマー(a2)の使用量を50質量部から350質量部に変更した他は、前記[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(1)の調製]と同様にして、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(5)を調製した。
【0026】
[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(6)の調製]
クルードMDI(C)を用いない他は、前記[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(1)の調製]と同様にして、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(6)を調製した。
【0027】
[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(7)の調製]
ポリオキシプロピレンポリオール(分子量約4000)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させて得られたNCO%が5質量%であるウレタンプレポリマー(a1)に代えて、ポリオキシプロピレンポリオール(分子量約2000)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させて得られたNCO%が19質量%であるウレタンプレポリマーを用いる他は、前記[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(1)の調製]と同様にして、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(7)を調製した。
【0028】
[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(8)の調製]
クルードMDI(C)を用いない他は、前記[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(4)の調製]と同様にして、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(8)を調製した。
【0029】
[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(9)の調製]
重質炭酸カルシウム粉末(b1)の使用量を400質量部から200質量部に変更し、かつ、表面処理軽質炭酸カルシウム粉末(b2)の使用量を200質量部から100質量部に変更した他は、前記[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(4)の調製]と同様にして、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(9)を調製した。
【0030】
[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(10)の調製]
重質炭酸カルシウム粉末(b1)の使用量を400質量部から1000質量部に変更した他は、前記[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(4)の調製]と同様にして、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(10)を調製した。
【0031】
[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(11)の調製]
表面処理軽質炭酸カルシウム粉末を用いない他は、前記[1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(9)の調製]と同様にして、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(11)を調製した。
【0032】
実施例1〜3及び比較例1〜8
断面が縦45mmで横45mmの根太組みを300mm間隔で設置した上に、厚さ12mmの合板製床下地材をスクリュー釘にて300mmの間隔で打ちつけて、床組下地を施工した。そして、合板製床下地材上に、前記1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(1)〜(11)を各々、塗布量2kg/m2となるように塗布した。その後、接着剤(1)〜(11)の各々の上に、大きさ300mm×300mmの陶磁器タイル(セラミカ・クレオパトラ・ジャパン株式会社製、商品名「ハイテクストーン ラムセス」)を貼合して隙間なく敷設した。以上のようにして、11種類の床構造体を得た。なお、1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤(1)を用いて陶磁器タイルを敷設した例を実施例1とし、接着剤(2)を用いた例を実施例2とし、接着剤(3)を用いた例を実施例3とし、接着剤(4)を用いた例を比較例1とし、接着剤(5)を用いた例を比較例2とし、接着剤(6)を用いた例を比較例3とし、接着剤(7)を用いた例を比較例4とし、接着剤(8)を用いた例を比較例5とし、接着剤(9)を用いた例を比較例6とし、接着剤(10)を用いた例を比較例7とし、接着剤(11)を用いた例を比較例8とした。
【0033】
[タイル割れ評価]
陶磁器タイルを敷設した後、温度23℃で湿度55%の条件下で7日間放置した。その後、一枚の陶磁器タイルの中央部位表面に、直径80mmの金属板を当接し、この金属板を下降速度1mm/minで押し付けてゆき、陶磁器タイルが割れるときの荷重を測定し、この荷重を破壊荷重(N)とした。そして、以下の基準でタイル割れ評価を行い、その結果を表1に示した。
◎:破壊荷重が5000N以上のとき、タイル割れ評価を◎とした。
○:破壊荷重が4000N以上で5000N未満のとき、タイル割れ評価を○とした。
△:破壊荷重が3500N以上で4000N未満のとき、タイル割れ評価を△とした。
×:破壊荷重が3500N未満のとき、タイル割れ評価を×とした。
【0034】
[タイルの浮き評価]
陶磁器タイルを敷設した後、温度23℃で湿度55%の条件下で7日間放置した。そして、各陶磁器タイルが面一になっているかどうかを、以下の基準で目視によって評価した。
○:各陶磁器タイルが面一になっており、各タイルの浮きは全く見られない。
△:各陶磁器タイルがわずかに面一になっておらず、若干のタイルの浮きが見られる。
×:各陶磁器タイルが面一になっておらず、明らかにタイルの浮きが見られる。
【0035】
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
タイル割れ評価 タイルの浮き評価
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 ○ ○
実施例2 ◎ ○
実施例3 ◎ ○
比較例1 × ○
比較例2 ◎ △
比較例3 × ○
比較例4 ◎ △
比較例5 △ △
比較例6 × ×
比較例7 △ ○
比較例8 × ×
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【0036】
表1の結果から、特定のウレタンプレポリマー(a1)、特定のウレタンプレポリマー(a2)、無機質充填材(B)及びクルードMDI(C)を特定量配合してなる1液湿気硬化型ウレタン系樹脂系接着剤を用いて、木質床下地材に陶磁器タイルを貼合して敷設した実施例1〜3で得られた床構造体は、陶磁器タイルに衝撃等の荷重が負荷されても、陶磁器タイルに割れが生じにくいこと及び陶磁器タイルが面一に敷設されていることが分かる。これに対して、比較例1で得られた床構造体は、NCO%の多い特定のウレタンプレポリマー(a2)が配合されていないため、硬化時における接着剤の架橋が不十分で接着剤層に剛直性がないため、陶磁器タイルが割れやすくなっている。また、比較例2で得られた床構造体は、NCO%の少ない特定のウレタンプレポリマー(a1)を配合せずに、NCO%の多い特定のウレタンプレポリマー(a2)のみを配合したため、接着剤の塗布後架橋硬化する際に発泡しやすくなっており、陶磁器タイルが面一になりにくくなっている。比較例3で得られた床構造体は、クルードMDI(C)を配合していないため、硬化時における接着剤の架橋が不十分で接着剤層に剛直性がないため、陶磁器タイルが割れやすくなっている。比較例4で得られたNCO%の少ない特定のウレタンプレポリマー(a1)に代えて、NCO%の多いウレタンプレポリマーを用いたため、接着剤の塗布後架橋硬化する際に発泡しやすくなっており、陶磁器タイルが面一になりにくくなっている。比較例5〜8は、いずれも、比較例3で用いた接着剤において、さらにクルードMDI(C)の使用を省略したり、無機質充填材(B)の含有量を多くしたり又は少なくしたりしたものであるため、陶磁器タイルが割れやすくなっていたり、陶磁器タイルが面一になりにくくなっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質床下地材と陶磁器タイルとを接着剤で貼合して、該陶磁器タイルを該木質床下地材上に敷設する陶磁器タイルの敷設方法において、
前記接着剤として、ウレタンプレポリマー(A)20〜40質量%と、無機質充填材(B)55〜70質量%と、クルードMDI(C)1〜10質量%よりなる組成物であって、該ウレタンプレポリマー(A)が、ポリオキシプロピレンポリオールとイソシアネートとを反応させて得られたNCO%が5〜10質量%であるウレタンプレポリマー(a1)70〜95質量%と、ひまし油系ポリオールとイソシアネートとを反応させて得られたNCO%が15〜20質量%であるウレタンプレポリマー(a2)5〜30質量%との混合物である1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いることを特徴とする陶磁器タイルの敷設方法。
【請求項2】
無機質充填材(B)が、重質炭酸カルシウム粉末(b1)30〜50質量%、表面処理を施した軽質炭酸カルシウム粉末(b2)20〜50質量%及びガラス粉末(b3)0.5〜5質量%の混合物である請求項1記載の陶磁器タイルの敷設方法。
【請求項3】
ガラス粉末(b3)が、中空ガラス粉末である請求項2記載の陶磁器タイルの敷設方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の陶磁器タイルの敷設方法に用いる1液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の陶磁器タイルの敷設方法によって得られる、木質床下地材、接着剤層及び陶磁器タイルの順で積層されてなる床構造体。

【公開番号】特開2010−281086(P2010−281086A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134436(P2009−134436)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】