説明

隊列走行制御装置および隊列走行制御方法

【課題】渋滞箇所に到達する以前に渋滞を検出して、渋滞を悪化させないような隊列走行制御を実施する。
【解決手段】隊列走行制御装置は、無線信号を受信する受信手段と、受信された無線信号から遠方における通信状況を検知する通信状況検知手段と、遠方における通信状況の変化に基づいて近傍の通信状況が混雑すると予測される場合に、隊列走行を解除する、車群の台数を減少させる、または、車間距離を広げる、のいずれかの制御を行う隊列制御手段と、を備える。遠方からの通信状況は、遠方からの受信パケット数であっても良いし、ノイズレベルの大きさであっても良い。これら遠方からの通信状況に対応させて隊列走行制御の内容をルックアップテーブルに定義しておくことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隊列走行制御装置および隊列走行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の車両を隊列で走行させるためのシステムが研究・開発されている。車車間通信などを用いて車両の制御情報を交換することで、前方車両との間の車間距離を短く保つことができる。隊列走行により、交通流の改善と、空気抵抗の低減に起因する燃費向上とが見込まれている。
【0003】
ところで、サグ部やトンネルは渋滞が発生する箇所として知られている。このような渋滞箇所に、密度の高い大きな車群が到着すると、渋滞がさらに悪化することが知られている(非特許文献1)。
【0004】
交通渋滞の削減のためには、車群が渋滞に到達する以前に渋滞の存在を検知して、あらかじめ車群の大きさを小さくしたり車間距離を広げたりしておくことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−244121号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】牧野浩志 他3名、「車線利用率適正化によるサグ部交通状態の削減」、土木技術資料 47(10)、38−43、2005−10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、渋滞箇所に到着する以前に渋滞を検知する技術を提供することであり、さらには渋滞に到着する以前に渋滞を悪化させないように隊列走行制御を行う技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る隊列走行制御装置は、無線信号を受信する受信手段と、受信された無線信号から遠方における通信状況を検知する通信状況検知手段と、遠方における通信状況の変化に基づいて近傍の通信状況が混雑すると予測される場合に、隊列走行を解除する、車群の台数を減少させる、または、車間距離を広げる、のいずれかの制御を行う隊列制御手段と、を備える。
【0009】
車車間通信を用いる隊列走行システムでは、制御を確実にするために、高いパケット到達率が求められる。たとえば、パケット到達率95%という通信要件を満たすために、近距離(100メートル程度)から送信されるパケットにしたがって、隊列走行制御が行われる。本明細書では、隊列走行制御に利用される通信を「近傍通信」、近傍通信が行われる範囲を「近傍」と称する。
【0010】
逆に、遠方からの通信は受信(復調)できたとしても、隊列走行制御には用いられない。本明細書では、上記の「近傍」よりも遠い領域のことを「遠方」と称する。
【0011】
本発明においては、遠方からの無線信号、すなわち隊列走行に直接利用しない無線信号
、に基づいて遠方における通信状況の変化を把握する。遠方における通信状況の変化を利用することで、隊列走行に利用する近傍通信が実際に変化するよりも前に、近傍通信の変化を予測可能となる。近傍通信が混雑すると予測される場合というのは、前方で渋滞が発生している場合である。したがって、隊列が渋滞に到着する前に、隊列走行を解除したり、台数を減少させたり、車間距離を広げたりといった制御をあらかじめ行うことで、渋滞の悪化を抑制することが可能となる。
【0012】
遠方における通信状況は、受信したパケットの数と、受信したパケットに含まれる送信元の位置情報とに基づいて検知することができる。すなわち、パケットに含まれる位置情報からそのパケットがどの位置から送信されたか把握可能である。そして、各位置から受信したパケットの数に基づいて、遠方における通信状況を把握可能である。
【0013】
あるいは、遠方における通信状況は、受信した無線信号におけるノイズレベルに基づいて検知することもできる。遠方において渋滞が発生している場合はノイズレベルが高く、接近にしたがってさらにノイズレベルが上昇する。したがって、ノイズレベルに基づいて、遠方における通信状況を把握可能である。
【0014】
遠方から受信される受信パケット数あるいはノイズレベル(以下、受信パケット数等という)から、近傍通信が変化するまでの時間あるいは距離と、近傍通信がどの程度の混雑度になるかを、決定可能とすることが好ましい。そのためには、遠方の車両数に関し種々の条件で実測やシミュレーションを行い、受信パケット数等を求めればよい。そして、受信パケット数等と近傍通信が変化するまでの時間や距離および近傍通信が混雑度との対応関係をルックアップテーブルの形式で格納しておけばよい。隊列制御手段は、受信パケット数等とルックアップテーブルから、近傍通信が変化するまでの時間や混雑度を取得可能であり、これらの情報に基づいて、隊列走行制御が可能である。
【0015】
なお、近傍通信が変化するまでの時間および混雑度から隊列走行の制御方法を直接に決定できるのであれば、ルックアップテーブルに、遠方から受信されるパケット数あるいはノイズレベルと、隊列走行の制御方法とを関連づけても構わない。この場合、ルックアップテーブルを参照することで、近傍の通信状況が混雑すると予測でき、かつ、どのような隊列走行制御を行うべきかも同時に取得できる。
【0016】
別の手法として、ルックアップテーブルの代わりに、受信パケット数等と、近傍通信が変化するまでの時間や距離および近傍通信の混雑度との関係を表す数式をあらかじめ求めておくことが考えられる。そして、この関係式に基づいて遠方からの受信パケット数等から近傍通信が変化するまでの時間や距離および近傍通信の混雑度を求めても良い。隊列走行制御手段は、このようにして決定された近傍通信が変化するまでの時間や距離および近傍通信の混雑度に基づいて、隊列走行制御の方法を決定することができる。
【0017】
また、更に別の手法として、隊列制御を実行するための条件を、受信パケット数等およびその変化率に関する条件式としてあらかじめ定めておいても良い。そして、受信パケット数等およびその変化率がこの条件式を満たす時に、隊列制御を実行しても良い。
【0018】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する隊列走行制御装置として捉えることができる。また、本発明はこれら隊列走行制御装置を有する複数の車両から構成される隊列走行システムとして捉えることもできる。また、本発明は上記処理を実行する隊列走行制御方法、またはこの方法を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、渋滞箇所に到着する以前に渋滞を検知し、さらに、渋滞を悪化させないような隊列走行制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】隊列走行システムを構成する車両に搭載される隊列制御装置の機能ブロックを示す図である。
【図2】車車間通信のパケットフォーマットを示す図である。
【図3】渋滞からの距離とパケット到達率の関係を示す図である。
【図4】渋滞からの距離とパケット受信数の関係を示す図である。
【図5】受信パケット数およびその変化率と隊列走行制御の内容を関係づけるルックアップテーブルの例を示す図である。
【図6】第1の実施形態における、隊列走行制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態にかかる隊列走行制御システムにおける各車両が有する隊列走行制御装置の機能構成を示す概略図である。隊列走行制御装置1は、ミリ波レーダ2、GPS装置3、車車間通信装置4、隊列走行制御ECU5を備える。隊列走行制御ECU5は、CPU、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータであって、CPUがプログラムを実行することで、以下で説明する機能を実現する。
【0023】
隊列走行制御ECU5は、ミリ波レーダ2から周囲の車両との距離、GPS装置3から現在位置を取得するとともに、車車間通信装置4によって周囲の車両から種々の情報を取得する。車車間通信では、各車両が、自車両の現在位置、目標加速度、目標速度、現在の加速度、現在の速度、車群内での順番などの情報を交換する。車車間通信装置4は、たとえば、100ミリ秒ごとに1回などの頻度で、車両情報を送信する。
【0024】
隊列走行を維持・管理するための車車間通信の詳細処理については省略するが、例えば、車群内の管理リーダーが定期的にメッセージ送信し、これに応答する形で他の車両がメッセージを送信する形態が採用可能である。
【0025】
図2に、車車間通信に用いられるパケットフォーマットの例を示す。図に示すように、パケットは、送信元ID201、宛先ID202、送信元車両の位置情報203、その他の隊列制御用情報204を含む。図示はしていないが、これらのペイロードに対して、各種プロトコルにしたがったヘッダ情報およびフッタ情報が付加される。
【0026】
隊列走行制御ECU5は、ミリ波レーダ2、GPS装置3、車車間通信装置4などから得られる情報に基づいて、自車の目標加速度、目標速度、目標位置などを決定し、それを実現するように、スロットル6、ブレーキ7、ステアリング8などを制御する。各種入力情報に基づいて、車両の制御量を決定する処理は、従来の隊列走行制御と同様に行えば良いので、詳細な説明は省略する。
【0027】
本実施形態にかかる隊列走行制御ECU5は、通信状況の変化に基づいて、隊列走行を解除等する制御を行う。隊列走行中の車群は狭い車間距離で密集して走行している。従来の隊列走行制御では、このような車群が渋滞箇所に接近した時点で、隊列走行を解除したり車間距離を広げたりする制御を行うことになる。そうすると、渋滞がさらに悪化してし
まう。そこで、本実施形態に係る隊列走行制御ECU5では、隊列走行中の車群が渋滞箇所に到達するよりも充分前に、隊列走行制御を解除したり、車間距離を広げたり、車群の台数を削減したりといった制御をあらかじめ行うことで、渋滞の悪化を抑制する。
【0028】
隊列走行制御においては利用される車車間通信では、高い通信品質が要求される。例えば、パケット到達率95%といった通信要件が課されることがある。この要件を満たすために、隊列走行制御に利用する車車間通信は所定距離(例えば100メートル)以内から送信されたパケットのみを参照するように構成される。
【0029】
ここで、渋滞箇所に車群が接近する場合の通信状況の変化を説明する。図3は、1500メートルにおよぶ渋滞に隊列が接近する場合の、接近する車群におけるパケット到達率を示すグラフである。なお、渋滞には約130台の通信車両が存在し、車群には約40台の通信車両が存在することを仮定している。このグラフにおいて、横軸は渋滞最後尾からの距離であり、縦軸は通信相手までの距離である。たとえば、渋滞最後尾の後方500メートル以内の距離においては、約50メートルから約200メートル離れた通信相手とは、パケット到達率95%から99%で通信できることが読み取れる。
【0030】
図3から分かるように、渋滞箇所に接近するにしたがって、通信品質が悪化することがわかる。すなわち、通信距離が同じ場合、渋滞箇所に接近するにしたがってパケット到達率が悪化する。なお、図3では明示していないが、パケット到達率が90%未満の領域(網掛けしていない部分)でも、渋滞箇所への接近についてパケット到達率は悪化している。
【0031】
図3はパケット到達率を表した図であるが、図4は、同じ状況において、通信距離別に単位時間あたりのパケット受信数を表したグラフである。実線は100メートル離れた車両から受信するパケット受信数を表し、点線は500メートル離れた車両から受信するパケット受信数を表す。図から分かるように、100メートル離れた車両からのパケット受信数は、渋滞最後尾の近くになってから急激に上昇する(領域A)。一方、500メートル離れた車両からのパケット受信数は、渋滞最後尾よりも離れた位置から、緩やかに上昇する(領域B)。したがって、500メートル離れた車両からのパケット数を監視することで、渋滞に到達するよりも前に、渋滞の存在を検知することができる。
【0032】
なお、上記の説明で利用した100メートル、500メートルという値は例示であって、システムの要件に応じて適宜変更可能である。より一般的には、隊列走行に利用する車車間通信の距離以内の領域を「近傍」と定義し、それよりも遠い領域を「遠方」と定義した時に、遠方からのパケット受信数を監視することで、渋滞の近傍に接近する前に、渋滞の存在を検知できる。
【0033】
このように、遠方からの受信パケット数に応じて隊列制御を行うために、隊列走行制御ECU5は、遠方通信状況判定部51、ルックアップテーブル52、隊列走行制御部53を有する。
【0034】
遠方通信状況判定部51は、遠方から受信されたパケット数を数える。ここで遠方から受信されたパケットを、450〜550メートル離れた位置から受信されたパケットと定義しても良いし、500メートル以遠の範囲から受信されたパケットと定義しても良い。パケット送信元の位置はパケット位置情報203として受信パケットに含まれているので、遠方通信状況判定部51は、GPS装置3から得られる自車両の位置情報とを比較することで、パケットの通信距離を算出可能である。
【0035】
ルックアップテーブル52には、遠方からのパケット受信数およびその変化率に対応さ
せて、どのような隊列制御を行うかを格納している。図5にルックアップテーブル52の例を示す。この例では、パケット受信数が多く、かつ、増加率が高い場合(領域1)には、隊列(車群)を解消する。また、パケット受信数およびその変化率が中程度(領域2)の場合には、隊列走行の車間距離を広げるか車群サイズを削減する制御を行う。すなわち、必要な車間距離にしても隊列の長さが許容範囲内であれば車間距離を広げるだけにし、隊列の長さが許容範囲を超える場合には隊列に含まれる車両数を少なくして対応する。また、パケット受信数およびその変化率が少ない場合(領域3)には、特段の隊列走行制御は行わない。
【0036】
このようなルックアップテーブル52は、いろいろなサイズの渋滞に対して隊列を接近させる実験あるいはシミュレーション計算を行うことによって作成できる。すなわち、渋滞サイズごとに、接近につれて受信パケット数およびその変化率を測定する。渋滞のサイズによってどのような隊列走行制御を行うべきか判断可能であるので、受信パケット数およびその変化率と、制御方法とを対応付けるテーブルを作成可能である。
【0037】
図6は、本実施形態における隊列走行制御の方法を示すフローチャートである。まず、車車間通信装置4によって他の車両からのパケットを受信・復調する(ステップS601)。遠方通信状況判定部51は、受信パケットに含まれる位置情報と自車両の位置情報との比較に基づいて、受信パケットが遠方(所定の領域)から送信されたものであるか判断し、遠方からの受信パケット数をカウントする(ステップS602)。遠方通信状況判定部51は、所定時間おきに、パケット受信数と、その変化率とを算出して隊列走行制御部53に通知する(ステップS603)。隊列走行制御部53は、通知された受信パケット数およびその変化率における隊列制御方法を、ルックアップテーブル52を参照して決定し(ステップS604)、その制御内容を実施する(ステップS605)。
【0038】
本実施形態によれば、通常の隊列走行制御には使用されない遠方からのパケットを監視することで、近傍通信の状況変化(すなわち、渋滞への接近)を早期に把握することが可能となる。さらに、近傍通信が変化するよりも前に、あらかじめ隊列のサイズを適切に調整したり、隊列を解除したりという制御が可能になる。これによって、渋滞箇所に隊列が接近する際に、さらに渋滞の悪化を招くという事態を回避できる。
【0039】
なお、上記の説明において、図5に示すルックアップテーブルの制御は一例であり、必ずしも状況に応じて異なる複数の制御を行う必要はない。すなわち、遠方での通信状況が特定の条件を満たす場合に、隊列を解除するという制御のみを行うような定義であっても構わない。また、隊列の解除ではなく、車群サイズの削減のみや車間距離の増大のみの制御であっても構わない。
【0040】
また、上記の説明においては、遠方における通信状況として特定範囲から受信するパケット受信数のみを考慮していた。しかしながら、複数の領域を遠方に設定して、それぞれの領域から受信されるパケット数およびその変化に基づいて隊列走行制御を判断しても構わない。例えば、1000〜300メートル離れた車両から受信するパケット受信数と、300〜500メートル離れた車両から受信するパケット受信数とを測定し、これらのパケット受信数およびその変化率に基づいて隊列走行制御を実施することが考えられる。
【0041】
また、上記の説明では、受信パケット数とその変化(一次微分)に基づいて隊列制御を決定していたが、二次あるいはそれ以上の微分値も利用して隊列走行制御を決定することも好ましい。
【0042】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、ルックアップテーブル52に、遠方からの受信パケット数お
よびその変化率と、隊列制御方法についての関係を定義した。本実施形態では、ルックアップテーブルに、遠方からの受信パケット数およびその変化と、渋滞に到達するまでの距離および渋滞の度合いとを関連づける。ルックアップテーブルの作成方法は、上記と同様に、実測またはシミュレーション計算によって行うことができる。
【0043】
本実施形態では、隊列走行制御部53は、遠方からのパケット受信数およびその変化率とルックアップテーブルとに基づいて、渋滞に到達するまでの距離および渋滞の度合いを取得することができる。そして、得られた渋滞の度合いや渋滞までの距離に基づいて、どのような隊列走行制御を行うかを決定する。
【0044】
具体的には、第1の実施形態と同様に、車両密度が大きい渋滞に到達する場合には隊列走行を解除し、車両密度が中程度の渋滞に到達する場合には車間距離を広げたり車群のサイズを削減したりすることができる。なお、本実施形態では、渋滞に到達するまでの距離(さらには、走行速度を考慮することで、到達までの時間)が分かるので、隊列走行制御を開始するタイミングを、渋滞の検知よりも遅らせることも可能となる。
【0045】
(第3の実施形態)
本実施形態においては、ルックアップテーブルを利用せずに、計算式を用いて隊列走行制御の内容を決定する。
【0046】
このような手法の例として、隊列走行制御を開始するための、遠方からの受信パケット数およびその変化率についての条件式をあらかじめ定義しておくことが考えられる。たとえば、受信パケット数が所定数以上であって、その変化率が閾値以上である場合に、隊列走行を解除するなどという条件式である。このようにすることでも、遠方からの受信パケット数に基づいて、渋滞に到達する前に、隊列走行をあらかじめ適切に調整できる。
【0047】
また、別の例として、受信パケット数およびその変化率から、渋滞に到達するまでの距離および渋滞の混雑度を算出するための関係式をあらかじめ算出しておくことも考えられる。算出に必要であれば、受信パケットの変化率(1次微分)だけでなく、その変化率(2次微分)なども利用することが好ましい。渋滞までの距離や渋滞の混雑度が分かれば、隊列走行制御の内容を決定できる。
【0048】
(第4の実施形態)
上記第1から第3の実施形態では、遠方からの受信パケット数を利用して、隊列走行制御を決定していた。本実施形態においては、遠方における通信状況を把握するために、ノイズレベルの大きさを利用する。
【0049】
本実施形態においては、遠方通信状況判定部51が車車間通信装置4からノイズレベルの大きさを取得する。ルックアップテーブル52には、ノイズレベルの大きさおよびその変化率と、隊列制御方法とが対応付けて格納される。ルックアップテーブルの作成は、種々のサイズの渋滞に対して接近しつつノイズレベルを計測する実験あるいはシミュレーション計算を行うことで行える。
【0050】
隊列走行制御部53は、ノイズレベルの大きさおよびその変化とルックアップテーブル52とから決定された隊列走行制御を実施する。
【0051】
このような手法によっても、渋滞に到達するよりも前に、渋滞の存在を把握して、隊列を解除したり、車間距離を広げたり、車群の台数を減らしたりといった隊列の適切な調整が可能となる。また、それにより、渋滞をさらに悪化させることを抑制できる。
【0052】
なお、第2および第3の実施形態と同様に、ルックアップテーブルにノイズレベルと渋滞までの距離と渋滞の大きさを定義したり、ルックアップテーブルの代わりに計算式を利用しても構わない。このような手法によっても同等の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 隊列走行装置
2 ミリ波レーダ
3 GPS装置
4 車車間通信装置
5 隊列走行制御ECU
51 遠方通信状況判定部
52 ルックアップテーブル
53 隊列走行制御部
6 スロットル
7 ブレーキ
8 ステアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を受信する受信手段と、
受信された無線信号から遠方における通信状況を検知する通信状況検知手段と、
遠方における通信状況の変化に基づいて近傍の通信状況が混雑すると予測される場合に、隊列走行を解除する、車群の台数を減少させる、または、車間距離を広げる、のいずれかの制御を行う隊列制御手段と、
を備える隊列走行制御装置。
【請求項2】
前記通信状況検知手段は、受信したパケットの数と、受信したパケットに含まれる送信元の位置情報とに基づいて、遠方における通信状況を検知する、
請求項1に記載の隊列走行制御装置。
【請求項3】
前記通信状況検知手段は、受信した無線信号におけるノイズレベルに基づいて、遠方における通信状況を検知する、
請求項1に記載の隊列走行制御装置。
【請求項4】
前記隊列制御手段は、遠方における通信状況の変化と隊列走行の制御方法とを対応付けたテーブルを用いて、近傍での通信状況が混雑されると予測される場合の隊列制御方法を決定する、
請求項1〜3のいずれかに記載の隊列走行制御装置。
【請求項5】
前記隊列制御手段は、隊列制御方法と、当該隊列制御方法を実施するために遠方から受信したパケット数または受信した無線信号におけるノイズレベルが満たすべき条件式を記憶しており、前記通信状況検知手段が検知した遠方における通信状況と当該条件式とに基づいて隊列制御方法を決定する、
請求項1〜3のいずれかに記載の隊列走行制御装置。
【請求項6】
無線信号を受信する受信ステップと、
受信された無線信号から遠方における通信状況を検知する通信状況検知ステップと、
遠方における通信状況の変化に基づいて近傍の通信状況が混雑すると予測される場合は、隊列走行を解除する、車群の台数を減少させる、または、車間距離を広げる、のいずれかの制御を行う隊列制御ステップと、
を含む隊列走行制御方法。
【請求項7】
前記通信状況検知ステップでは、受信したパケットの数と、受信したパケットに含まれる送信元の位置情報とに基づいて、遠方における通信状況を検知する、
請求項6に記載の隊列走行制御方法。
【請求項8】
前記通信状況検知ステップでは、受信した無線信号におけるノイズレベルに基づいて、遠方における通信状況を検知する、
請求項6に記載の隊列走行制御方法。
【請求項9】
前記隊列制御ステップでは、遠方における通信状況の変化と隊列走行の制御方法とを対応付けたテーブルを用いて、近傍での通信状況が混雑すると予測される場合の隊列制御方法を決定する、
請求項6〜8のいずれかに記載の隊列走行制御方法。
【請求項10】
隊列制御方法と、当該隊列制御方法を実施するために遠方から受信したパケット数または受信した無線信号におけるノイズレベルが満たすべき条件式をあらかじめ記憶しており

前記隊列制御ステップでは、前記通信状況検知ステップにおいて検知した遠方における通信状況と当該条件式とに基づいて隊列制御方法を決定する、
請求項6〜8のいずれかに記載の隊列走行制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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